▼曖昧な夢

KP
あなたは温かい森の中に、ひとり座り込んでいた。
深い下生えがあなたをやさしく抱き留め、腹の中の「わが子」を草の鳴る音であやしている。
薄暗く出口のない森を、あなたは恐れることはなかった。
森はあなたを迎えてくれる。森はあなたと繋がっている。
あなたの子が世界を見る日を、今か今かと待ってくれている。

だからあなたは、ただ待つ。
休み、眠り、育てる。
まるで大きな胎のような森の中で、背を丸めて。
佐倉 光
何も心配はない。
大事な俺の子は、この森の子でもある。
ずっとここにいれば何も心配はない。
だって、森がずっと俺を、俺たちを見守っていてくれるのだから。

▼3日目:朝

KP
ふっと布団の中で目を開けたとき、腹の中の寝ぼけたような動きに違和感を覚えることはなかった。
妙な暑さと腹の中の動きで寝苦しいのは相変わらずだが、重たい腹を横たえて眠る姿勢にも慣れてきた。
そこに牧志がいることに、慣れ始めている。
佐倉 光
「おはよう、牧志……」
囁いて腹を撫で、
KP
囁いて撫でた腹から、とくとくと穏やかな鼓動が返ってくる。
牧志 浩太
「……」
KP
眠そうな牧志が声を返すまで、少し間があった。
牧志 浩太
「おはよ、さくらさん」
佐倉 光
少し、おかしいような気がした。
この状態は異常だったはずだ。俺たちはまた、この村に引き込まれつつあるのかも知れない。
俺は子供を身ごもるなんて事はあり得ない男で、腹の中にいるのは俺の相棒、大の大人だ。
佐倉 光
「忘れるな……」
自分に言い聞かせるように呟く。
目を覚まさなくては。微睡みの中にいると勘違いをしそうだ。
佐倉 光
『眠そうだな』
そういえば胎児なのにずっと起きている、ということ自体が異常なのかも知れない。
牧志 浩太
「ずっと暗いから、昼夜の感覚がずれてきちゃってさ……、
佐倉さんの心音とか気配で、佐倉さんが寝てるかどうかは分かるんだけど」
そうやって話していると、牧志の声も少しずつ覚醒してくる。
佐倉 光
『そりゃそうだよな、暇じゃないか?』
牧志 浩太
「ちょっと暇ではあるかな、何もないし」
KP
本当ならずっと寝たり起きたりしますしね胎児。
佐倉 光
ですね!
佐倉 光
冷たい水で勢いよく顔を洗い、乱暴に水を拭き取る。
頭をスッキリさせて、この偽りの世界のほころびを探すんだ。
佐倉 光
身支度をして食事をして、活動を開始しよう。
KP
この状態で靴を履くのにも、少しは慣れてきた。
腹の大きさを前提に動くのに、段々と馴染んでくる。
急速に適応していく身体は、慣れるというより、「慣れを思い出している」ようにも思えた。
佐倉 光
俺たちが何ヶ月もこうしてきたなら、慣れているのは当たり前のことだ。
またこれが当たり前に戻ってゆけば、二度と戻れなくなるに違いない。

KP
外へ出ると相変わらず空は薄暗く、太陽は曖昧だ。
そんな曖昧な空の下、道行く人があなたにおはようと声をかける。
佐倉 光
雑に返事をしながら森へ向かう。
下手にここに情がわいたら面倒なことになりそうだ。
KP
杖をつきながら歩くあなたに、村人が口々に声をかけてくる。
それを振り切って森へ向かうと、森の入り口に小さなお社のようなものを見つけた。

あれが、話に上がっていた「お参りどころ」だろう。
佐倉 光
ここにはあの墓のような不自然な温かさはないのかな。
お参りどころに近づいて、調べてみよう。
佐倉 光
『森へ行く、ってここじゃなくてもっと奥だよな』
牧志 浩太
「着いたのか?
森に入って鳥を獲るって話もしてたし、ここはまだ生活圏内だよな」
KP
近づくと、ぼんやりとした温かさを感じる。
しかし、それはあの墓ほど強いものではなく、この場所特有でもない。
森に近づくほどに、少し温かくなるようだ。
佐倉 光
『温かさの源はここじゃないな。森にあるにしてももっと奥だ』
KP
長老の家にあったものと同じ形の像が、そこには祭られている。
あちらよりも大きさがあり、角もより精緻に刻まれている。
像の背後に壁はなく、像の向こうに深い森の様子が見えるようになっている。
KP
その様子を見たとき、ふと、像の背後の森と目が合った気がした。
KP
声が、聞こえた。

土を擦って発するような、異様な獣の声。
森の木々のひとつひとつの葉が擦れて発するような、捻れた産道を通って響くような声。
この世のいかなる獣にも、まったく似てはいないのに。
あなたは何故か、その声に聞き覚えがあると感じた。
佐倉 光
「…………!」
息をのむ。
何だ、あの声。
その覚えのある響きにとてつもない不安をかき立てられた。
俺はあれを、知っている?

我知らず身構えて杖の先をわずかに上げる。
武器を構えるように。
KP
声と同時に、視界が歪んだ。

あなたは見る。
あなた達は見る。


あなたは土の底で眠るひとりの女であり、女が孕み続ける、全身のあらゆる骨が捻くれた異形の獣だった。
獣は女の腹に角を刺し、女の胎盤に無数の根を生やして、女を森につなぎとめていた。

そうして女はこの地と永遠に交わっていた。
その交わりから千の豊穣が産まれ、地をあまねく満たし続けていた。
その交わりから千の種子が生まれ、人をあまねく満たし続けていた。


KP
幻は、一瞬の余韻だけを残して晴れた。

あなたにはそれが余りにも歓ばしい行為のようにも思えたし、余りにも悍ましい行為のようにも思えた。
ただ唯一確信したのは、その女こそがこの地を維持しているということだ。
佐倉 光
『……今の、見たか?』
牧志に思わず問いかける。
あまりにも悍ましい幻だ。
あの祭壇の下に、あれがいる。
牧志 浩太
「あ……、ああ。見た。骨がねじれて、角が、腹に刺さっていて」
牧志の声は乾いて、強張っていた。
全容を口にするのが憚られる程の内容だからか、全てを口にすることはなかったが、その声から彼も同じ幻を見たのだろうと分かる。
牧志 浩太
「あの人が、いるのか。今も。墓地で、生きてるのか」
KP
森から獣が出てくることはない。
森は穏やかで、どこかで地を走る、小さな獣の気配だけを湛えていた。
佐倉 光
『あの木を燃やせば……』
佐倉 光
『だけどあれも化け物だ、そう簡単にやれるとは思えないけど』
牧志 浩太
「生きてる木だよな? 
やるとすれば、火種と何か、燃やすものが要るな。それも多めに」
佐倉 光
『生木だからな、結構な炎じゃないと無理だ』
佐倉 光
『それに、ここに本体がいる可能性もある。
もっと情報が要るな。
森の奥まで入るのはこの腹じゃ危険だけど、何か分からないかな』

ここからさらに奥の方は入れそう?
KP
村の付近ならば人が踏み入った痕跡があり、道を辿れば入っていける。
道が途切れる辺りになると下生えが濃く、この腹で踏み入るのは危なそうだ。
佐倉 光
無理のない範囲で少し歩いてみよう。
道が途切れるあたりで何か見えないだろうか。
KP
踏み入って分かるのは、枝に生った果実の甘い香りが鼻をくすぐることだ。
鳥がつついたのか果実は割れ、白い乳のような果汁を垂らしている。
その濃い香りもまた、どこかで嗅いだことがあるようなものの気がした。

道が途切れる所から森を眺めれば、重なった葉が重く光を遮っている。
奥の方は、真っ暗闇にすら見えた。
だというのに、木に立ち枯れる様子はない。どの木もみな、夏のさなかのように厚く葉を茂らせている。

森の奥からは鳥の鳴き声が聞こえるが、そこにあの異様な獣の姿が見えることはない。
佐倉 光
『異様だな……』
口を閉じたまま牧志に話しかける。
ここでは別段人の耳など気にする必要はないのだが、少しでも呼吸を抑えたかった。
佐倉 光
変に甘ったるい果汁の香り、白く滴る乳のような汁、嗅いだことのある香り。
それらについて牧志に細かに説明する。
佐倉 光
『なんだか覚えがある気がするんだ。
それも随分と嫌な思い出に繋がっている気がする』
牧志 浩太
「乳の……、香りだって?」
牧志 浩太
「本当だ、甘い匂いがする。
甘い匂い? あれ、おかしいな。腹の中にいるはずなのに、匂いが分かる。
俺も、この匂いを知ってる気がする。どこで嗅いだんだっけな……」
う、と牧志が小さく嘔吐く声がした。
いやなおもいで
佐倉 光
嫌だ遭遇したくない。
えげつなさが酷いなぁこの事件。できれば解放してあげたいなぁ。墓場のお母さん拷問じゃん……
補足:そしてわりと好き系のえげつなさです。
KP
補足ありがとうございます。よかった。
登場神話生物が某なのと、今回のネタの方向性と、因習村ホラーもののエグさを合わせて盛っていったらだいぶんえげつないことになってしまいました。
佐倉 光
解放イコール殺害になりそうだから、そうなると「もりさま」の反撃くらいそう。
これはもし一般配布するなら15禁とかにしなきゃいけない系!
KP
直接実行される描写がないとはいえ、それはあるかも。
都市伝説課のアレと同じ系統の描写ですしねコレ。
佐倉 光
なるほど珍しく開始前に要素確認入ったわけだぁ、とニコニコしています。
佐倉は吐きそうになってるけど。
KP
そういえばまた女性関係(?)で佐倉さんが酷い目にあってる。
佐倉 光
女子と付き合う前に、女悪魔に弄ばれ、牧志の中でモミモミされ、子育てをして、妊娠まで経験してしまった。
順番も体験もぐちゃぐちゃだよ。
生還できたら妊婦さんには優しくできそうだな!
KP
ちょっと妊婦さんに優しくできるし気持ちが分かる佐倉さんに!
しかしこうやって書きだすと本当にぐちゃぐちゃだぁ。

佐倉 光
『駄目だな、俺の足じゃここまでだ。
森に何がいるのか分かったもんじゃない。
少なくとも角が生えた人間らしきものは見えねぇな』
牧志 浩太
「そうか……。
森の中に入って直接どうこう、ってのは難しそうだな。
何とかできる可能性があるとしたら、やっぱりあの人か……」
佐倉 光
白い汁を指に付けてよく嗅いでみようか、と思ったが、とてもつなく嫌な予感がした。
やめておこう……

社の所まで戻って、そこに祭られているものなどをよく見てみる。
縁起など書いていないだろうか。
KP
そこには縁起の類は書かれていなかった。
同じ人間が長く存在し得る場所なのだ、語り継ぐだけで十分だったのかもしれない。
佐倉 光
『ここにあの人の兄がいるって話だったな。
同じように生き延びているかどうかは分からねぇけど』
牧志 浩太
「人の形をしてなかった、って言ってたお兄さんか。
どうなんだろうな……。生きてるのか、それとも」
想像した可能性について、牧志は口をつぐんだ。
牧志 浩太
「……そういえば、兄が二人、って言ってたよな。
あのお婆さん、長老のことを姉さんって呼んでたけど、血が繋がってるわけじゃないのかな」
佐倉 光
『そういえば、そうだな……
単にその母親の胎内から生まれ直したから妹なのかと思っていたけど、それで合っているのかは分からないな』
佐倉 光
『まー、化け物関連と考えればどいつもこいつも皆兄弟なのかもしんねーけど』
牧志 浩太
「そうか、それはありそうだ」
牧志 浩太
「……ややこしいな、この村」
佐倉 光
『そろそろ行こうか。このにおい、頭痛がしてくる』
牧志 浩太
「そうしよう。まずい予感がする。
あまりここに長くいたくない」
佐倉 光
森を出る。変に疲れたな。一度屋敷に戻って休憩だ。

KP
空腹と疲れが、あなたを屋敷へと誘う。
あそこに戻れば昼食と休息がある。
それを裏付けるように、今日は魚を焼く匂いが漂ってきた。
佐倉 光
もしかしたら俺たちはこの村の恵みを破壊するために動いているのかも知れない身だ。
ということは、ここの恵みを享受する間は都合よく忘れておきたい事実だ。
どうせこの村を維持しておきたい人間は遅かれ早かれいなくなって、
外から拉致されて頭を弄られ改造された人間しかいなくなるんだから問題はないだろう。

有り難く昼飯をいただく。
KP
「今日はよく肥えた魚が取れたと、若い衆が届けてくれましてね。
それで、焼いてみたんです。お口に合いなさいますか?」
KP
事実、炭の香りを纏った魚はよく焼けており、ぱりりと音を立てて裂ける皮の中にはふっくらとした白い身が詰まっている。
塩加減も丁度良く、立ちのぼる湯気とともに口に運べば、ほろほろと崩れて滋味深い。
佐倉 光
「美味しい!」
魚ってこんなにぶ厚い味がするものだったかなぁ。
夢中でその身を崩して口へ運び、ふと、森と墓地で見たものを思い出す。
これらを維持するためにコストが払われている。
この魚は俺たちが払わされたコストにより太っているのだ。
佐倉 光
『墓場の女が生け贄にされているとして、他の人間の胎が必要なのはなんでだろうな。
呪術的な意味で生きている『妊婦』が必要なのかね』
牧志 浩太
「もしかしてそれ、食べて考えた? 複雑だ……。
豊かさの象徴だとか見立てだとかなら、それはありそうだよな。
それか、あの人は獣とやらがここに力を及ぼすための媒体。
森に行った人達が生贄で、生贄が捧げられてれば獣が機嫌よくなって恵みをくれる、とか」
佐倉 光
折角の美味い飯がまずくなりそうだ。
さっさとかき込んで出かけよう。
佐倉 光
いつになく不気味な話で楽しい!
KP
わーい、ありがとうございます! >楽しい
そういえばこういう感じの話、意外となかったですもんね。
佐倉 光
『消える人は十中八九餌か養分だよなー』
そうでなければもりさまとやらの同類になるってとこか。
牧志 浩太
「餌か養分か、そうでなければ手下にされるか。
ろくなことになってそうにない」
KP
ふと、ずっと感じているこの妙な暑さの正体、その一つに気づいた。
腹の中が熱いのだ。何か温かいものを呑んだかのように、熱を感じる。
佐倉 光
その熱は『今食事をしたから』というわけではなくて常時かな。
KP
常時だ。
確かに食事をした身体はかっかと熱く、手のひらが熱を宿しているが、それとは別だ。
佐倉 光
『牧志、暑くねーか?
俺、腹が異様に熱い気がするんだよ』
牧志 浩太
「腹が? 俺がってことか?」
何かを確かめようとしてか、腹の中で牧志がもぞもぞと動く。
牧志 浩太
「……本当だ、熱いかもしれない。
手のひらが熱いんだ。脈が速い」
佐倉 光
子供は体温が高い、なんてもんじゃない気がするけど、分かんねぇな、俺『普通』を知らねぇから。
KP
あなたの笑顔を喜ぶ女性に見送られ、外に出る。

▼3日目:昼

佐倉 光
眠気に抗って外に出る。
気合を入れて、村人に避けられている一角に足を運ぶ。
KP
食後の快い眠気に抗って、いっそう重い身を起こす。
そちらへ向かうのを見た村人が、あ、と声を上げたが、視線がためらうだけで、積極的に止めにくることはない。
KP
その一角には、古びた家が並んでいた。
人が立ち入っていないのか、家々は補修されず、朽ちたままにされている。

その中でも、ひときわ朽ちた家が一軒あった。
障子は破れ、戸板は外れ、室内は野ざらしになっている。
佐倉 光
一軒の家じゃないのか。
ここの地面は暖かい?

一軒の家を気をつけながら外からのぞいてみる。
KP
>周囲の家
周囲の家の村人が嫌がって引っ越してしまって、そのまま補修に戻ってくることもないので周囲の家も朽ちている感じですね。
佐倉 光
ああー。なるほど。
KP
外から覗けば、壊れた箪笥から残された衣服がこぼれている。
小物や生活の痕跡を残す品々も、残されたまま時間に晒され朽ちている。

近づくと分かる。ここは、ひやりと冷たい。
村を覆う温もりが、ここでだけは拒絶するように弱い。
佐倉 光
ここが中心、ということは、噂の土地はここか。
佐倉 光
『家は荒れ放題で地面は冷たい。
といっても多分、これが本来の温度なんじゃねぇかな。
引っ越したって感じじゃない。
住人が突然いなくなった感じだ』
牧志 浩太
「そうだな、ここからも少し肌寒く感じる。
突然いなくなったか……、何かあったで間違いなさそうだな」
佐倉 光
外からぐるりと回って様子を見る。
妙な足跡があったり、壁が破壊されていたりしないだろうか。
KP
壁が壊されたあとはない。
足跡を探すなら〈目星〉-15で判定。
あなたは足元が見づらく、屈むこともしづらいためだ。
佐倉 光
それはそう。
佐倉 光
1D100 84 それでも84ある〈目星〉 Sasa 1D100→9→成功
KP
絶えず視界に入り、屈もうとすれば邪魔をしてくる腹の煩わしさに耐えて、室内や地面の上をよく見る。
地面との距離が遠く、見づらい。

よくよく目を凝らすと、床板と鴨居が目に止まった。
朽ちたそれらを、何かが踏んでへこませた跡がある。

恐らくは人間の靴。
ここが朽ちてから、誰かが侵入した跡だ。
佐倉 光
『俺たちみたいに調べに入った奴がいるのかな、足跡がある』
なんとなく呼吸を殺して中に入り込む。
ここに一体何があるというのか。
あの熱を齎す存在が嫌う、もしくは近づけない場所。
追い払う術があるかも知れない。
牧志 浩太
「俺達以外にも、俺達みたいに我に返って調べ始めた人がいるのかな」
KP
そのつもりで見れば、衣服などが出されているのは崩壊のせいだけではなく、何者かが探し回った跡も含まれているようだ。
寝室と兼用だろう居間、水回り、それから納戸があるだけの小さな家だ。
佐倉 光
『そうかもしれない。その人は外に出られたのか、どうなのか』
一部屋ずつ調べてみよう。
牧志 浩太
「出られたとしたら、何か残してくれてるかもしれないな」
KP
まず、小さな所でいうと水回りだ。
干物や漬物などが壷の中に残されているようだが、それごと腐って、乾いてしまっている。
食べるのはよした方がいいだろう。
食器類や調理道具なども、そのまま残されている。

【アイデア】で判定。
佐倉 光
1D100 85【アイデア】 Sasa 1D100→ 88→失敗
KP
生活の痕跡を残したまま朽ちた場所は、静かに沈黙している。
KP
これについては視覚情報から気づくことなので、牧志は判定不可。
▼PL向け情報
探索個所の探索時に失敗した判定については、
探索回数をもう1回分消費し、再度同じ場所を訪れることで再判定が可能。
佐倉 光
『何か気になるんだけど、何だろうな……』
牧志 浩太
「俺にも見えれば、一緒に考えられるんだけどな……」
佐倉 光
その場でいくら考えても答えは出ない。ひとまず先へ進む。
KP
日用品の利便がよいようにか、水回りのそばに納戸がある。
何者かが調べたのか、鍵を無理に開けた痕跡が残り、扉は半分開いたままになっている。
その中から草刈りの道具や物干し竿、籠など、さまざまな日用品が覗いている。
佐倉 光
扉をゆっくり開け、中の物を改める。
KP
籠の中には別の籠が詰められて仕舞われている。
ここにあるのはやはり、室内に置いておくには邪魔な日用品や、外で使うような品々のたぐいだ。

中の物を改めると、草刈り鎌やずだ袋のそばに、乱暴に丸めた布を見つける。
その中には、揺り籠やおくるみ、あなたが着ているような服、杖、恐らく腹を支えるための道具といった……、妊婦や新生児にとって必要なものが詰まっていた。
KP
【アイデア】/2または、〈心理学〉で判定。オープンでよい。
これについては、状況を伝えれば牧志も振ることができる。
佐倉 光
目にしたものは都度牧志に伝えて共有しておく。
佐倉 光
『ここにあるのは子供が産まれたときに使うような道具だな。
これは揺り籠だと思う。これは……赤ん坊包む奴かな』
佐倉 光
1d100 65〈心理学〉 Sasa 1d100→ 76→失敗
牧志 浩太
1d100 77〈心理学〉 Sasa 1d100→ 100→致命的失敗ファンブル
牧志 浩太
oh。
牧志 浩太
「……」
牧志の返事がない。どうやら居眠りしている。
牧志 浩太
「はっ、ごめ、なんだって」
佐倉 光
なんだか勘が鈍っている気がする。
佐倉 光
『今日は駄目かも。
ずーっと頭の中でモヤモヤしてんだ……
出直したほうがいいかもしれないな』
牧志 浩太
「いい加減、疲れが溜まってるのかもしれないな。休んではいるんだけどさ」
KP
納戸には様々な日用品が詰まっている。
この辺りをあまり見たり近寄ったりしたくないのか、ここにいる間だけは村人の視線を感じない。
もし何か必要なものがあるならば、ここから持ち出していくこともできるだろう。
佐倉 光
牧志が産まれたらここにある物を使えば……
佐倉 光
って、違う、そうじゃない。
今後何か使える物があるかも知れない。
例えば火をつける道具、例えば土を掘る道具……
KP
土を掘る道具なら、畑仕事や庭仕事に使うものか、手持ちのスコップや柄の長いシャベルの類がある。
KP
火をつける道具は……、少々難しい。
見た所納戸に火種の類は置かれておらず、ガソリンといったものも見当たらない。

台所に変質した食用油が残されていたので、これを大量に持ち出し、火種を借りて火をつければ木を燃やせるかもしれないが、今のあなたでは準備に丸一日かける必要がある。
牧志 浩太
「色々持つようにしてたけど、そういえば火種はないな」
佐倉 光
『火種か……あの屋敷にはないかな。
料理はしているんだし、火も使っているだろう』
スコップを突き刺したくらいで、あの土の中のものが死ぬだろうか?
不確実すぎる……
牧志 浩太
「確かに、あの屋敷にならありそうだ。
それに、古くから住んでる人が多いなら、煙草吸ってる人がいるかもしれないしな」
佐倉 光
次の所を見に行こう。
KP
布団が敷かれたままの居間には衣類が散乱し、外から吹き込んだ風雨の跡で混沌が生じている。
今まで見たことはないが、この曖昧な場所にも雨が降ることがあるのだろう。
壊れた箪笥、散乱した小物や衣類、朽ちた卓袱台、破れた布団……。

虱潰しに探していては日が暮れそうだ。
ある程度〈目星〉をつけて探すなら、どう探すか宣言するか、または〈目星〉-20で判定。
佐倉 光
『ここでは何か『不幸があった』らしい。
当て推量だけど、ここでは『身ごもること』が何より大事なことだろ。
ここで不幸と言えば妊婦や子供に何かが起きた、ということになるだろうな』
牧志 浩太
「そう、なるな。
妊婦が亡くなった……、とか、死産になったとか、そういうことか?」
佐倉 光
物置には赤ん坊を待ち受ける道具がいれてあった。
ここにはそういったものはあるだろうか。
布団の下に何かあったりしないだろうか。
KP
布団の下に手を伸ばそうとすると、いちいち膨れた腹が邪魔をする。
雨や湿気、その他諸々の時間を吸って重くなった布団を引っ張り、どうにかその下を探ると、何か布に包まれたものを見つける。

それはただの布ではなく、中に何か硬いものを包んでいる。
……意図は明らかだ。
これは、何かの理由で、意図的に隠されたものだ。
佐倉 光
嫌な予感がする。
佐倉 光
『布団の下から布に包まれたものが出てきた』
佐倉 光
深呼吸してから、開けてみる。
牧志 浩太
腹の中で牧志が少し揺れる。息を呑み、身構えた。
KP
……布を開けると、出てきたのは一本の包丁だった。
厚みのある刃は何かの血で茶色く汚れており、にもかかわらず、奇妙なことに錆が回っていない。
長年そのまま放置されたなら、ぼろぼろに錆びていてもおかしくないというのに。

それを目にした瞬間、感じたのは激しい嫌悪感だ。
腹の中で牧志が逃れたがるようにもがく。
腹がどくどくと疼き、あなたにそれから逃げろと命じる。

それと同時に、あなたには分かる。
それは異様な迫力を帯びて見えた。
それは普通の包丁ではない。
激しい敵意が、害意が、憎しみのようなものが、よく研がれた刃から伝わってくるように思える。
佐倉 光
放り出して逃げだしたくなった。
佐倉 光
「包丁、だ……血で汚れている」
かすれた声で呟いた。
佐倉 光
呪物じみたその凄みが、恐怖と興味をかき立てた。
これはただごとじゃない。
これがきっとこの土地から『加護』を避けさせている要因だ。
牧志 浩太
「包丁、だって?
包丁? 首に突きつけられてるみたいだ、本当に包丁なのか?」
牧志の声は震えていた。小刻みな震えが腹の中から伝わってくる。
KP
その持ち手に、何か紙が巻き付けられている。
ありふれたノート用紙には、何かが書かれているようだ。
佐倉 光
『紙が、巻き付いてるな。何か書いてある、みたいだ』
広げて読んでみる。
KP
その紙には、こんな一文で始まる、長い文章が書きつけられていた。
『恐らく僕と同じ運命の誰か、見つけてくれてありがとう。
この包丁が、僕が調べたことが、君の役に立ちますように』
佐倉 光
息を呑む。おそらく、俺たちと同じ立場の誰かが残したメッセージだ!
心の中で牧志に向けてはっきりと一文一文を読み聞かせるようにしながら読む。
牧志 浩太
「……!」
最初の一文を読み上げたとき、腹の震えが止まった。
牧志が身の震えを必死に押さえ込み、一言も聞き逃すまいとしている。
『この包丁は昔、ここに住んでいた人のものだ。
以下の内容は、村の人からどうにか聞き出したことや、残されていた書き置きから推測したことになる。
間違っていたら、ごめん。
彼女は、この村の【加護】を拒絶した。
異様な妊娠を受け入れず、嫌がった。腹の中で喋る子を呪い続けた。
角のある子として生まれてくるだろう子を、膨れていく腹を呪った。

……好きな人がいたようなんだ、彼女。
これは僕の推測だけど、もっと、普通に子を授かりたかったんじゃないかな。

その人の叫びを、村の誰も受け入れなかった。
彼女自身も、日に日に大きくなっていく腹に、できることなんてなかった。
気持ちは分かる。僕もどうしていいのか分からない。
僕の腹の中にいるのは僕の好きな人だ。今は幸せそうに眠っている。彼女のようにすれば僕も彼女も死んでしまう。

彼女は決意を固めた。
包丁を隠し持って産屋に向かって、産まれるその日に、自分ごと赤子を刺したんだ。
それが、彼女にできる精一杯の拒絶だった。


この包丁は、彼女の親が家に持ち帰ったものだ。
彼女の親はその日雷に打たれて死んで、唯一生まれ直すことはなかった。
それから、ここだけは温かくならない。
僕はもう無理だ。産みたくてたまらない。
彼女がお腹の中にいるのが、幸せでたまらない。頭が焼き切れそうだ。
間に合わない。もう腹が痛みだしているんだ。この村はいい所だ。
彼女も出たがっている。

せめて、今日村の外へ出ようと思う。
出たら元に戻れるんじゃないかと望みをかける。

もう少し早く分かっていれば、何かできたかもしれない。
恐らくは、拒絶を、これで』
KP
……文章はそこで終わっている。
この文章を書いた当人のことと、調べた内容が混ざっていて、少々読みづらい。
佐倉 光
何故だろう。あの病院の医師の顔がちらついた。
根拠も何もない。共通点なんて『女の子を産んだ』らしいことくらいだ。

そして、もしそうだとしたなら。
彼は村の外へは出られなかったことになる。
村に取り込まれ、この異常な現象を、当たり前の喜ばしいこととしているのだ。
佐倉 光
『これは、呪具だな。
事実、ここに『加護』がないのは、こいつを本当に嫌がっているからなのかもしれない。
切り札になり得る』
佐倉 光
こいつであの木の下に眠る哀れな女を刺し殺してやれば終わるのか?
そうなんだろうか。
それは恵みを断ち切るだろう。
しかし元凶を滅ぼすことになるのか?
牧志 浩太
「……ああ……。
彼女の憎しみが、包丁をそんなにしたんだ。
それとも、拒絶したことでそうなったとか、そういうのかもしれない。
どっちにしても、切り札になる」
牧志の声は乾いていた。生唾だか羊水だか、ごくりと飲む音がする。
牧志 浩太
「そうか……、普通に人は生まれないのか、ここ。もしかして。
それじゃ、減っていくわけだよな」
佐倉 光
『ああ。ここに未来はないのに、延々と生かされ続けているんだ。
外の人間を無理矢理補充してまで。
それは、何のためだ?』
佐倉 光
森へ行けないという娘の姿が浮かぶ。
ここを維持しているのが、彼女の母親だとしたら?
親は何を望む?
佐倉 光
この包丁は丁寧にまき直して布団の下に戻しておく。
手紙は少し迷って包丁に元通り巻き付けておく。
持ち帰ることを考えなくもなかったが、包丁やそれに類するものを移動させると、地の底に揺蕩うものがそれを察知し、
それにより村人達に喜ばしくないことが起きていることを知らせる危険性があると思えた。
佐倉 光
他に調べられる部屋などはある?
KP
他にもう部屋はない。
崩壊した玄関などもあるが、何も残されていなかった。
今日も赤く陽が落ちていく。この不気味な空の赤さにも、少し慣れてきた。
佐倉 光
『ここは気になる。また今度、もう少し調べよう』
牧志 浩太
「……ああ。
まだ時間はある。あるはずなんだ。
慎重に、行こう。遅くなり過ぎない程度に」
佐倉 光
帰ります。

佐倉 光
・病院に再度行って確認……うーん、意味あるかなぁ。確認するなら手紙は必要そうだけど、彼もう取り込まれている気がする
・娘さんに事情を話す……母親の意思で娘が生きる土地を維持しているのならもしかしたら意味はあるかも
・出口……なんか行っても意味なさげ
・森に消えた兄……意味あるのかなぁ怖いなぁ
かつて戦った誰かの足跡! いいですね、こういうの繋いでいくの楽しいし熱いですね。
もしあれ書いたのが先生だったら救いたいところだけど……!
KP
わーい、ありがとうございます!
道半ばになった誰かの足跡は恐怖でもあるし熱い繋がりでもあるんですよね。楽しい。

KP
帰ると、今日も風呂と夕食が用意されている。
風呂にはたっぷりと湯が満たされ、あなたに思索の時間と、重力から解放される時間を与えてくれるだろう。
佐倉 光
さすがに手足が埃まみれになってしまっていそうだ。
念入りに体を洗い流し、湯の中で手足を広げる。
佐倉 光
『ゆっくりだったら足伸ばしてもいいぜ。少しなら』
牧志だってたまには体を伸ばしたいよな。少しくらい痛みを我慢しても良いだろう。死ぬわけじゃなし。
KP
念入りに身を洗い流すと、汗と埃にまみれた手足から、みるみるうちに不快感が去っていく。
重い身体で動き回ったせいもあり、随分と汗だくだ。
牧志 浩太
「ありがとう、じゃあ言葉に甘えて」
そろそろと牧志が手足を伸ばし、腹が引き伸ばされていく。
肋骨が押し上げられ、臓物が押しのけられ、無理に広げられた臓器が痛む。
とはいえ、盛大に蹴られたあの時よりはだいぶんましだ。
佐倉 光
いててて。
ゆっくりだろうがなんだろうが痛いものは痛いが我慢ならないほどじゃない。
少しの間ならこれでいい。
佐倉 光
『早く外に出たいな。産む、なんてふざけた方法じゃなくてさ』
ぽこんと突き出た腹を見つめ苦笑する。
牧志 浩太
「本当にな、ちゃんと脱出したいよ。角とかそういうの無しでさ」
牧志の声が苦笑し返した。
佐倉 光
『最悪ここの影響からうまいこと外れてもそのままだったら、俺が面倒見てやるか……』
牧志 浩太
「そうなったら、シローに弟ができちゃうな。
シローのこともあるし、ちゃんと元に戻りたい所だけど」
佐倉 光
『冗談冗談! タラレバはなし! 俺に赤ん坊なんか育てられるはずないだろ!』
牧志 浩太
「冗談ってなあ、割と真面目に考えちゃったじゃないか」
佐倉 光
「全部解決して帰るんだよ、一緒に」
牧志 浩太
「……そうだな。全部解決して、ちゃんと帰るんだ」
佐倉 光
『まー、万一の時はなんとかするさ。なんとか』

KP
夕食のメインは、弾力のある鶏肉を卵でとじた丼ものだった。
ふわふわの卵が絡んで美味しいが、料理名を思い浮かべるといささか複雑な気分になるかもしれない。
佐倉 光
あの、親子の命を奪った呪物は何かの役に立つだろうか。
ふわふわの黄色とぷりっとしてしっかりツユがしみ込んだ肉を眺めながらそんなことを考えてしまう。
そんな物騒な思考とか関わりなく、やはり食事は美味い。

こんな恵みを手放すなんて、村の人間は当然嫌がるだろうな。
KP
汚れを流し、身体をほぐし、温かい食事を思うさま腹に収めると、今日も眠気が意識と肉体を掴んで引きずり込もうとする。
今日は、今日も、随分と疲れた気がする。
よるおそい
佐倉 光
話が通じる赤ん坊はさぞ育てやすいことだろうと思いました。
初心者保護者に優しい!
KP
優しい!
いざ生まれたら子供佐倉さんルートみたいに身体に振り回されることもあるだろうけど、その理由も全部聞けますからね。すごくやさしい。
佐倉 光
私ずーっと煮物の冷え待ちしてるから起きてるけど、三時半でございますよ!
KP
煮物! お疲れ様です。
こちらはバルダーズゲート3の善ルートクリアして悪ルート(の予定)やっていました
そろそろ寝よう、ありがとうございました!
佐倉 光
そろそろ冷蔵庫に入れられるから鳥モツ煮つまみ食いして寝よう!
ありがとうございました!

佐倉 光
「ねむ……」
佐倉 光
また夢がこの村の仕組みに引き込もうとしてくるだろうか。
寝る前に今日の出来事や推測をスマートフォンのメモに記録する。

そういえばここ普通に電気あるのかな?
充電できているならそうする。
できないようなら手書きのメモだ。
これは誰にでも見られてしまうからメモするなら何らかの方法で隠す必要があるが。
KP
電気はある。室内を照らしている明かりも電気だ。使えそうなコンセントもある。
スマートフォンのメモに事態を記録することができる。

……ここで数ヶ月を過ごしていたというのに、そういった記録も残していないとは。
どうやらあなたは、対抗の余地もなく呑まれていたらしい。
佐倉 光
これで、もし万一またこの村に呑み込まれた時、これを見て思い出せるだろう。
なにしろ時間がない。一度忘れて調べ直すなどと、悠長なことをしている暇はない。
佐倉 光
日付と時間が良くわからないのは不安要素だが、最悪また病院で診てもらう、ということになるな。
佐倉 光
検査が憂鬱すぎるけど。
自分の体にありえない器官に触れられるのがあんな恐怖だとは思わなかった。
牧志 浩太
「……」
メモしている間に、牧志はすっかり眠り込んでいた。
佐倉 光
『おやすみ』
腹を抱えるように横になって眠る。
牧志 浩太
牧志の寝息のようなそうでないような、曖昧な気配が返った。

コメント By.佐倉 光
なんとも酷いビジョンを見てしまう二人。

折角大事な情報が出そうなシーンなのに、二人とも疲れてしまったのか出目が酷い……。

プレイ日:2025年7月19日 ~ 2025年12月17日

作者名: 闇司祭ファラリス

配布・販売サイト: 胎響の村

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