
『おまえがフィギュアになるんかい』
のネタバレがあります。
クトゥルフ神話TRPG 目次
おまえがフィギュアになるんかい 一覧
参加キャラクター

佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。とある事件より、体中の痛みに悩まされている。
基本悪魔を召喚して戦うが、悪魔との契約のカードを使ってその力を一時的に借りることもできる。
巻き込まれ体質らしい。
牧志とは一蓮托生の相棒。

牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
とある事件以降、胃袋が独立した生命体になってしまった。
佐倉とは一蓮托生の相棒。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。
牧志s
少し前に現れた牧志そっくりの6人の異星人。佐倉と契約して彼の仲魔として存在している。旭橋はそのうちのひとり。ガタイがいい。
その正体は、何にでも変身して喰らい殖える不定形生物だったが、『人間』としての意識を持ち、この星での人間との共存を試みている。
・一人または牧志以外とゲームセンターへ行き、クレーンゲームをプレイすることが必須です。

まあ一人で行くかな!
東浪見を本格的に怪奇現象に巻き込まず、序盤だけ居てリアクションしてもらうことも可能です。
CoC 6版
おまえがフィギュアになるんかい
水切書房 様
Miss This Train. 後日談(微バレ)
あなたはあれから、なぜか警察官やパトカーを見ると酷い胸騒ぎに襲われるようになってしまい、思わず逃げ隠れしてはいらぬトラブルに巻き込まれたりしていた。

それにしたっておかしかった。
理由もないのに反射的に逃げなくてはと思ってしまうのだ。
日常ならともかく、仕事中はガチで捕まるとまずい品を持っていたりするのでなるべく気にされたくないのに。
万一騒ぎになってもあいつに泣きつけばまあ何とかなるとはしても、だ。


何かがぱんぱんに詰まって裂けそうな口を、必死で縫い閉じているような顔をしていた。

落ち込む波照間を見て複雑そうな顔をするときがあった。
電車に乗るとき、車両を見上げて困惑したようにすることがあった。
何かを黙っているわけではなく、牧志自身にもその理由が分からないらしかった。

夏の暑さでも避けるためか、東浪見にでも誘われたのか、単純に気が向いたのか。
あなたは今、ゲームセンターにいる。
牧志は同行していない。
それ以外なら誰かと一緒でもよいし、一人でもよい。

別に一緒に遊びに行ったわけではなくて、なんとなく前で遭遇したからそのまま一緒にぶらついているって感じだ。

よろしくお願いします!
ゲームセンターの中は、様々な機体から放たれる爆音で満ちている。

様々な筐体を眺めながら、東浪見が言う。

クイズゲーとガンシューかな」

確かに佐倉さん、ゾンビの頭ぶちぬくの得意そうな顔してるもんなー」
どんな顔だ。

だってメガテンでもショットガンの技能値30くらいしかないもん。

クレーンゲーはそんなに得意でもない。
だってあれ、機械の機嫌次第、つまりギャンブルに近いもんがあるからな。
シローにねだられた時に手を出してみるくらいだ。
室内の実に半分を占める巨大なプライズコーナーにはお菓子やフィギュアがずらりと並べられ、ギラギラとした照明で客の関心を煽っている。
奇妙な模様の描かれた黒塗りの箱だ。
何かのアニメのフィギュアと思いきや、それにはロゴも何も無い。
チープな観光地にあるような福袋風の箱だろうか。
どうせ大したものは入っていないのだろうが、ちょっと好奇心を唆られる。

いつもならそんな物気にならないのだが、手元には入り口で配っていたワンプレイ無料券がある。
なんか適当なので消費しようかと思ってうろついていたところだ。
こういうので使うのも良いかもしれない。
店員さん呼んで遊べるようにしてもらおう。
店員は朗らかな笑顔で券を受け取ると、IDカードをタッチして何事か操作した。
ゲーム台がぱっと光り、0の表示になっていた残プレイ数が2になる。
クレーンゲームは2プレイできるらしい。



横に回り込んだりしてみて、どう攻めたら良さそうか考えてみる。
まずは引っ掛けてずらして……
【アイデア】で判定。


その代わりに、斜め後ろからアームを箱にぶつけることを思いつく。
少し細長い箱は、うまくバランスを崩してやれば落ちそうだ。
実行するなら、【DEX】×5+20%で判定。

1d100 70 【DEX】 Sasa 1d100→ 48→成功

箱はバランスを崩し、落下口の端にひっかかりそうになりつつ、ことんと落下口の中へ落ちた。
もう1プレイ残っているので、何かを狙うことができそうだ。
あとは有名アニメのフィギュアや、ドールの服セット、ミニチュアレトロパソコン(動作はしません)などが並んでいる。
何かを狙うなら、狙う物を宣言して【DEX】×3で判定。

1d100 30 Sasa 1d100→ 2→決定的成功(クリティカル)!

これ以上はないというタイミングでボタンを叩いた。
狙いすましたアームさばきで、あなたは見事に目的のレトロパソコンを釣り上げた!
上手くひっかけて、ちょうど横にあったドールの服セットも一緒に釣れた。
実に3つの景品を手に入れて、あなたの胸に達成感がこみ上げる。
正気度 +1。

景品の取り出し口から箱を引っ張り出す。


東浪見も興味深そうに箱を覗き込む。



どうやら、何かの箱を黒い箱で包んであったようだ。
箱の上面には「愛され系ヒューマン」とかっこいいフォントで書かれており、アニメっぽい歯車のような模様が印刷されている。
何となくフィギュアの箱っぽい。

知らない作品だな、とちょっと中を覗いてみる。


パッケージの前面って大体でっかくあいてて、何のキャラクターなのか分かるものだしさ。
最近よくあるアイドルグッズの類だろうか?
パッケージの前面は大きく透明になっているようで、もう少しよく覗けばフィギュアの顔が判別できそうだ。

何の気なしに引っ張り出す。
牧志だ。どう見ても牧志だ。
大学でノートに向かう牧志の真剣な顔を背景写真に、ブリスターパッケージに包まれて、小さな牧志がそこにいる。
デフォルメされたものではなく、大きさこそ小さいが牧志そのものだ。
まるで、人間がそのまま小さくなったような。
まるで生きているような精巧さにか、あなたは何となく嫌な胸騒ぎを覚えた。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》。



東浪見が何気なく覗き込もうとしてくる。

俺はなにも見ていない。
内心そう唱えながら黒い箱の蓋を閉じて、テイクアウト袋にそっと入れる。

東浪見は不思議そうにしつつも、それ以上追及して来ない。


先程すぐに覗いて来なかったのは、どうやらスマホに来たメッセージを見ていたかららしい。
おかげで東浪見はそれを目にせずに済んでいる。

東浪見を見送る。


機嫌よく手を振って去っていく東浪見を見送り、あなたはトイレに入る。
何だか、前にもこんなことをしたような。
それは、いつ撮ったのか、大学の構内でノートへ真剣な目線を向ける牧志の姿を大きく印刷したパッケージに包まれていた。
それだけを見ると、まるでアイドルグッズか何かのようで格好良く見える。
そして、パッケージの透明部分の奥には。
自然な様子で両手を降ろし、こちらに見慣れた笑顔を向ける牧志が、いた。
その手や脚に継ぎ目が見えることで、それが本物の人間でないと分かる。
どうやらそれは、任意のポーズを取らせることのできる可動式フィギュアのようだ。
服も着脱式であり、同サイズのもの……例えばさっき取った服セットのような、があれば着替えさせることも出来そうだ。

まずは写真撮って牧志にメッセージ送る。

送ってから「あるわけねーだろ!」と自らツッコミ。
どうやら最悪の事態を想像して混乱しているぞ、俺。
返事は来る? どこかで音が鳴ったりする?
今の時間なら、牧志は家にいるはずだが……。
本編見る!

「さくら! まきしがへんなった!」

それから僅かな間を置き、今度は牧志の声が飛び込んでくる。



すーはー、と数度息を落ち着けているような声がする。

喋ったりすることはできるんだけど、手足も首も動かせない。
ごめん、メッセージくれたよな。
スマホが手に取れなくて見られなかった」


シローの真剣な声。
スマホをどこかに置いたのか、微かにコトンという音。

でも佐倉さんはこんなん見つけたら牧志確認しちゃうよなって。
一応後でポージングさせるようにそそのかすシーンはやろうと思っていますが、ダイナミックなポーズはしにくくなったかもしれない。

そして人形を箱から取り出してみる。
外すときは、関節が変な方向に曲がったりしないように、慎重に。
ブリスターを裏から押して、無理矢理引っ張り出さないようにする。
〈目星〉で判定。

しかも可動式で、関節を見れば可動域が大きい。少々無理なポーズだってできそうだ。
間違いなくクレーンゲームの景品のクオリティではなく、職人が自ら手掛けた一品ものの傑作とでも言われた方が納得できる。
今にもあなたの手の中で目を覚まし、呼吸を始めそうにすら見える。
ぞくりとするほどの完成度だ。

SAN 58 → 57

いやいやそんなわけないじゃないか。
牧志人形のポーズを変える。
ここはあえて牧志が絶対取りそうにない……
グリコのポーズにしてみよ。ひとつぶ300mってあれだ。
牧志があのポーズを取っている姿はギャップが強く、ちょっと面白い。

ポーズを変えると、電話の向こうで牧志の驚いた声と、シローの悲鳴が聞こえた……。


うん、突然手足が勝手に動いて、何だろうこれ、走ってる人? みたいな格好で止まった。
バランス悪くて足が、足が、あああ」







これはこれでガッツポーズのようだ。
シローがあなたに駆け寄ってくる。


今日は午後から授業ないから、昼食べて片付けしようと思ったら、いきなり動けなくなって」
あなたがフィギュアを見つけたのは、昼過ぎのことだ。

製造元の住所も記されている。
しかし、調べるとそこは山奥の湖だ。
外装を作った担当者が間違ってしまったのだろうか? そうだったら確実に始末書ものだ。

しかし、同じ会社から製造されている別のフィギュアがネットオークションサイトで見つかる。
現在の価格は四〇万円。
何の商業的キャラクターでもない異様なクオリティのフィギュアが人知れずクレーンゲームの景品として出荷されているという都市伝説もあって、プレミア価格が付いているらしい。
この手元にあるフィギュアも出品すれば大金に化けるかもしれない。もしかしたら、四〇万円以上……。

動揺のあまりわけの分からないことを口走った。
どうやら牧志の身体を操れるこのフィギュア、もしも奪われでもして、どこかで流通してしまったら……。
住所の記載がされているのは、今あなたが手にしているものだけらしい。

ので、遊べるように(?)この辺から余計なイベントを追加してまいります。

立って両腕を振り上げた姿勢を取らされたままの牧志の腕が、ぷるぷると震えている。
もうちょっとましな姿勢を取らせてやるべきかもしれない。

牧志のフィギュアを椅子に座っているような姿勢に……
牧志を移動させる手段……
足をぎっこばったと動かして歩かせられるかやってみる。
可能ならソファまで歩かせよう。

あなたが牧志の足を歩いているように動かすと、牧志の足がぎこちなく動く。
しかしフィギュアの足元に重力は働かないせいで、どうしても危なっかしいような、ちょっとユーモラスな歩き方になる。

牧志は本来あるべきリラックスを無視し、ぴったりと同じポーズでソファに座っている。

おっと、もしかしてと気づいたようだ。

なるべくリラックスした姿勢になるように微調整……


物理的にソファを突き抜けることはできないので、調整しながらソファに身を預けさせることで、どうにかソファにもたれた姿勢になった。

牧志に箱と人形見せる。

何だこれ、こんな写真撮らせた覚えないぞ。
こうして見ると、完全に商品だな。不気味だ」


夏で陽が高いとはいえ、今から向かうと着く頃には日が暮れてしまいそうだ。
闇に乗じて動くつもりならもっと夜中に行くべきだろうし、そうでなければ、明日にするのが賢明だろう。
幸い? 今すぐ牧志に生命の変調や、重大な異変が起きる気配はない。
動けないけど。
持ち歩く時に何かあったら困るし調べておかないとなー
シナリオの想定的に一人で外出なのかな、車に乗っけて連れて行くのはありなのかな。
連れて行くのはアリです。
シナリオにはどちらとも書かれてないし、連れて行っても問題ない展開。

いわゆる呪いの人形ってやつだろうか。
ピンを刺したら本人も苦痛を感じるとかそういう。

フィギュアの手などに触ってみる。


俺が力を入れてポーズ取ってるわけじゃないのに、筋肉に力は入るの理不尽」
しっとりとした樹脂の手触りだ。

影響するのは動きだけなんだろうか。
……着替えさせたらどうなるのだろうか?

力を入れて外してみる。
心臓を掴むような痣の這い方も、牧志のそれそっくりだ。

外したと同時に、牧志の驚いた声。


いや、違う。牧志は同じ姿勢で座ったままで、その身体から服がまるで外されたように、勝手に滑り落ちている。
どうやら服の状態も反映される。何だこれ。


興味が。わいてしまった。
とってきた服はこの家にはないわけだが、それをくっつけたらどうなるんだろう?

ドールの、とあったがパッケージが雑なようで、実際に入っていたのはフィギュア用の衣装パーツだ。
シャツ、ズボン、変なTシャツ、スカート、魔法少女の衣装、ゲームキャラ風のかっこいい衣装、メイド服、それからそれから……。
※入っていてほしい物があれば、入っていてよい。

あくまで実験だし?
うちに絶対ないような服の方が検証として適してるし?
そうすると……
ソッと魔法少女の衣装を手に取って牧志から見えないところで装着してみる。

牧志の身体が光を放った。
かと思うと、そこになかったはずのレースたっぷりの衣装が、平然と牧志に着せられていた。

何重にも織り込まれた可憐なレース。
胸元を飾るフリル。きらきらと室内の明かりにきらめく、ハート型の装飾。
それから手に持った、リボンのなびく魔法の杖も!
手元のフィギュアを飾る衣装そっくりの衣装を、牧志が纏っていた。
その姿はまるで、牧志が大きなフィギュアになったようだ。


棒立ちじゃいまいちだな。
さりげなくそれっぽい格好にしてみる。
片足でこう、片手でスティック振り上げる感じで……
動かすとき、人体には動かせない方向に動いたりしないだろうか?
動いてしまうようなら注意して動かす。
それを無視して無理やり動かすと、パーツが取れてしまうタイプのやつである。

牧志の手足が動き、杖を握って大きく掲げる。
片足を踏み出したポーズにスカートがなびき、驚いた顔を除けば、実に…… ノリノリだ!

完璧だ! 俺こういうのよく知らねーけど。
出来映え確認!


暫く呼吸困難に陥った。




佐倉さん好奇心に火がついちゃってるな?」

牧志の方の服の作りなんかを見る。
サイズとかどうなってるんだ!?
フィギュアのそれと違い、硬いパーツではない。
コスプレ衣装のような風合いだ。
男女の体格差があるはずなのに、その衣装は牧志の身体にぴったりと沿っている。

これこっちで脱いだらどうなんだろ」
牧志の手を包む白い手袋を抜き取ろうとしてみる。

抜けた手袋はそのまま?

何だこれ」

衣装って前後から挟み込むタイプかな。
前と後ろで別の服を無理矢理くっつけることはできるかな?
無理やりくっつけようとすると凹凸が合わなかったりするが、押し込んで強引に噛ませればくっつかないことはない。

前は白いタキシードで後ろはカラフルなドレスでこう、むりやりくっつけてみる。
明らかに断面がずれているが、些事些事。

牧志の身体が発光する。
白いタキシードの後ろに、燕尾のようにドレスのフリルが生える。


本来筒状になっているはずのボトムの布が前半分で切られ、引っ張るとぺろりとめくれる。

何だつまらん。いや待て。どうやって半分だけで引っかかっているんだ。
フィギュアは持ったまま牧志の着衣をよく見る。
やっぱり引っかかってるだけで、すぐ滑り落ちそうかな。
落ちそうなら落ちないような姿勢を取らせよう。
引っかかっているだけではないようだ。
あなたが調査? 遊び? 始めたので、シローも興味を唆られだしてしまったらしい。
あなたの手元を覗き込む。

これじゃあんまりだからなんか着せよう。何にしようかな。
フィギュアを置いて服の箱を引っかき回す。
ぱっと目についたファンタジーな服をセット。
魔法使いみたいな格好になった。

うーん。牧志の目元に困惑が浮かぶ。
ポーズを取ったまま魔法少女から魔術師の格好へと変じた牧志は、ちょっと様にならなくもない。

散る桜や稲妻、波、呪文のような模様、飛び交うハート、自由に描いて消せる板など色々ある。


牧志の周囲にぱっと桜が散った。
桜は実体ではなく、レーザーエフェクトのように映し出されるもので、光っては地面に落ちる前に消えていく。

一件
落着

何がだ、と思いつつ写真撮って牧志に見せる。
字とかも映し出されてるだけか。

あんまりにもあんまりな絵面に、そこにいるのが動けない自分なことも忘れて思わず吹き出してしまう。


どうなってんだこれ?」


動けないのがなければ、役に立つし需要ありそうなものだけど。
好きなフィギュアの服を着られるってことだろ? これ」




あなたの胸の奥から、じわじわと好奇心と楽しみが湧き上がってくる。
これは……、牧志には悪いが、面白い。
かなり面白い。
もっと色々なポーズをさせてみたくなる。
幸い牧志を傷つける心配はなさそうだし、もっとアクロバティックなポーズを取らせてみてもいいんじゃないか?

まるで孫悟空がやるみたいな片足上げて武器を……棒代わりに鉛筆でも持たせてみるか。
どうなるんだこれ?

ここであえてストップモーションアニメーション撮ってみるなんてのも……
そのへんの適当なものフィギュアに持たせたら巨大化したやつが出てくるのかな!?



牧志はまずいムードを感じ取った!
しかし、今の彼があなたに抗うことはできない。

諦めたのか、楽しそうなあなたを止め難かったのか、牧志は妙なことを口走りながら承諾する。
魔術師の衣装を翻して片足を上げる牧志の手に、巨大な鉛筆が現われた。
巨大な鉛筆を見て興奮したシローが、スケッチブックを持ってきて鉛筆の先に擦りつけようとする。
しかし、紙に黒鉛がつくことはないようだ。

期待した通りのことが起きて、思わず興奮のあまり鉛筆に触る。触れるのかな?
巨大な鉛筆は、すべすべとした塗装された木の感触であなたに触れる。





その手の上に、シローのオヤツのチロルチョコを置いてみた。
牧志の手とフィギュアの手の比率そのままに、大きなチロルチョコが牧志の手の中に現われた。
シローは大興奮だ!
早速巨大なチョコの包みを開けようとする……が、開かない。

元のチョコの包み紙を開けてみる。
しかしこれ出てくるのはそのものじゃないくさいかな。
中から同じチョコレートが出てきた。
しかし、シローが舐めてみても味がしないようだ。


プラスチックを舐めた味がするわけでもなく、ただそこにあるだけだ。
ちょっとチョコレートが食べたくなってきた。




どこまでリアリティあるんだろうなー」
言いながら牧志を座らせてあげよう。


後ろに黒い炎でも上げとけば魔王っぽくない?

魔術師の衣装を垂らし、黒い炎を背景に悠然と座る牧志は、よく分からない迫力を持っているようにも見えた。
さっきの白タキシードが似合いそうだ。おや、アクセサリーの中に角やコウモリの羽も入っている。

角やコウモリの羽もつけてみるか。ローブもタキシードも味わいが代わって面白いな。
完成したら見せてやろう。

二枚合わせてフィギュアの身長の三分の二ほどの全長がある翼は、人間大の大きさになるとなかなかの迫力だ。

スマホ構えてる。

牧志もちょっと乗ってきた。





写真撮る。
なるほどフィギュアってこうやって遊ぶんだな! おもしれー!

さすがに佐倉にそんな知識ない。


一応口は開くから、食べさせてもらえば食べられるとは思うんだけど。
言われたら腹が減ってきた」
シローがパンなどを入れている箱を探る。

ごそごそと探って袋からあんパンだのランチパックだの取り出す。





そうだな、まず牧志の格好つけたフィギュアのワイン持った方の手を良い感じに広げるだろ。で、リアル牧志の広がった手にサンドイッチのせて、
フィギュア牧志の指曲げてサンドイッチ固定して、ゆっくり口の方に近づけ……

シローが大きく口を開ける横で、あなたは牧志と二人羽織を演じる。
手を広げてサンドイッチを乗せて指を曲げて……おっと口に近づきかけて微妙に位置がずれて、なかなか難しい。

じわじわと近づいてくるサンドイッチを見ながら、牧志は舌を伸ばして……



もぐもぐ。幸い口はちゃんと動くようだ。

牧志が食べ始めたのを見て自分もぱくつく。

これで顔も固定だったら喋れもしないし目も当てられない」

それで意識だけそのままとか、怖気がする」
牧志は首を振ろうと表情を歪めたが、首を動かすことはできないらしい。



コップに麦茶をついで……さすがにこれは直接顔に近づけてやった方が良さそうだ。
唇に近づけてゆっくり傾けてゆく。


見ていると、喉の動きなど細かい動作はそのままなようだと分かる。

イブクロのヤツも元気なのかな。

シローは不思議そうにしながら横でちゃっかり楽しんでますきっと。


何だか動けないのに慣れてきた気もするけど、ずっと動けないままじゃ不便でしょうがないしな。
そもそも、何でこんなことになってるのかも気になる」

ふと嫌なことに気づいてしまった。
風呂はまあ一日二日我慢する事はできる。トイレはそうはいかないし。

oh。牧志の顔がひきつった。

シローが手を上げて言い出す。
シローは先日、赤ちゃんに関する本を読んでいたのだ。oh。

1回はなんとかなるにしても、その後困るしシローに付け替えてくれというのも無理ゲーだ。

シローよりおんなじか小さな子じゃないと、おむつを換えるのはうまくできないんだ」


シローにおむつを換えられるのは色々な意味でNOだ!
ここ、実はちょっとKPがシナリオを読み違えた箇所がありまして……。
終了後にお話しします。牧志ゴメン。
そもそもの状態についてKPの読み違いがありました。

波照間さんに頼んでみるか……?」


どっちの場合もシローはお留守番かな。
車でみんなで行くならシローも行く、はまあありかも。

シローが納得したのを見てふぅと息をつき、改めて考える。

あっちで俺を元に戻せる可能性を考えると、俺が行った方がいいかもしれない。
ただ、フィギュアって媒体がある以上、俺がいなければいけないって可能性は低いか。
正直分からない以上、どっちもどっちだな」
連れて行く場合は《SANチェック》が発生しますが、その分牧志も生還時の回復対象になります。
連れて行かない場合は牧志に《SANチェック》が入りませんが、牧志は生還時のSAN回復対象になりません。
牧志に何が起こっているか分からなくて面白いかな……&動きやすいかな。
常に電話かテレビ会議ツールみたいなので様子が分かるようにしとくか。
ということで一人で行こうかなと思います。

向こうで何が起きるか分からない以上、旭橋にここにいてもらうってわけには行かない」

電話しよう。

最近調子が出ないらしい波照間は、少し仕事の量を減らしている。
そのせいか、すぐに連絡がついた。
まだ少し落ち込んだ声が、電話の向こうから返る。

かくかくしかじかと波照間に説明して、自分がいない間牧志を助けてやって欲しいが、明日動けるか訊く。


明日なら動ける。引き受けよう」
まさかの事態に波照間の落ち込みも吹っ飛んだ。
飛んでくるのは驚いた声だ。

首を回して、ふと思いついて牧志のフィギュアの首や腕などをゆっくり回す。

その動きに身を任せるように力を抜く。


まっすぐにすりゃいいってもんじゃないし」

大体なんで牧志がこんなことになってるんだ」
自分も手首を回して、牧志の服をとりあえず普通のシャツとパンツに変更して……

知らないうちにフィギュア作られて動けなくなってるって、どういうことなんだよ」


牧志sに連絡して状況を伝え、今日は旭橋に来て貰おう!
トイレ行かなきゃって時にえっちらおっちら歩かせてる場合じゃねぇんだよ。
時間的にもう誰か喚んでたと思うけど交代して貰おう。

呼び声に応えて旭橋が姿を現した。

遊んだ痕跡を見て複雑な顔をする。

うん。遊んでた。

人形を見つけたときのこと、体と人形の繋がり、着衣や周囲に置いたものの反映など説明する。

接触や範囲が条件じゃなくて『これを飾る』って意思が必要なんだろうな」

それに、フィギュアを傾けても俺が倒れたりしない。
『ポーズを取らせる』『飾る』って意思が必要なのか……」

誰がいつそんなの作って、よりによってゲーセンに入れたんだよ」

箱に書いてる住所に行ってみる」

思わずトイレの扉を見てしまった。大層複雑な顔をする。






ウォシュレットくらいはあるだろう、きっと!
クトゥルフ神話TRPG 目次
おまえがフィギュアになるんかい 一覧
ゲーセンで牧志のフィギュアをゲット!
……えっ、どうしてそんなことに?
わけがわからない始まり方をするシナリオ。
こんなのもう遊ぶしかないだろ!?
メインルート
メインルート
子供佐倉ルート
子供佐倉&デビルシフター牧志ルート
塔牧志ルート
塔牧志&佐倉ルート
Nルート
N牧志&N佐倉ルート
波照間ルート
波照間(&東雲)ルート
佐倉~月影ルート
佐倉・アナザールート
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」











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