佐倉 光
では匂いからは遠い方、向かって左のドアの様子を見よう。
ここは牢が連なっているわけじゃないのか。
KP
近づいてよく見ると、その扉はあなた達がいたのと同じような檻の扉だった。

今は使われていないのか、鍵は掛かっていない。
牧志 浩太
「奥に何かある……?」

薄暗い牢の奥に、何か白いものが積まれている。
佐倉 光
こういう場所だと即、骨なんじゃないか、という想像がよぎる。
佐倉 光
あまり役立つものがありそうな気はしないが……調べてみるか。

白いものをかき分けてみる。
KP
想像通り、それは骨だった。
黒い蓮の花のような模様が全体に描かれた、工芸品のような美しい……、人骨だ。

人骨と分かる理由は明確で、その中に頭蓋骨と肋骨があったからだ。
砕けたり、壊されたりしている様子はない。

大きさからしても、形からしても、どう見ても本物の人骨なのだが、
表面に刻みつけるようにしてびっしりと描かれた模様のために、そこから現実感は失われていた。
KP
よく探すなら、〈目星〉で判定。
佐倉 光
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 100→致命的失敗ファンブル
佐倉 光
あーあ
KP
溶けてる
牧志 浩太
1d100 99〈目星〉 Sasa 1d100→ 74→成功

佐倉 光
死んだのか。ここで。こんな乾いた骨になって。
佐倉 光
俺たちもそうなりかけてるんじゃないか。
KP
あなたはその人骨から、微かに甘い匂いがすることに気づいた。
あの「水」のにおいだ……。
不安に駆られた脳に、その匂いが深く染み込むような気分になった。
KP
佐倉さんはこの後の技能値マイナス、及び、禁断症状チャート(部屋を出る時に公開)が2段階進む。
牧志 浩太
「あれ……、何だ、これ」
牧志が骨の傍らに屈み込む。
骨の間に落ちていたのは、体液か何かの汚れが染みになった、乾いた布の切れ端だ。

染みに紛れて分かりにくいが、赤茶色の液体で「B4」と書かれているように見える。
佐倉 光
「B4? なんだ、これ」
よほど大事だと思った情報なんだろうか。
なんのことかさっぱり分からないが。
服に紐などあるなら、そこに押し込んで落とさないようにしておこう。
牧志 浩太
「B4、B4、地下四階……、じゃないよな。
何だろうな、これ。
ここまでして残したかったってことは、きっと大事だと思ったことなんだろうけど、なのに受け取れないの、悔しいな」
KP
牢内に、他に目につくものはない……。
遺品の類もなく、生活の痕跡も残っていない。
佐倉 光
「別の所調べよう。
俺たちには時間がないんだ、見切りつけていかないとな」
牢を出る。
牧志 浩太
「ああ、だな。
今はとにかく、俺達自身のことだ」
佐倉 光
「それにしてもあの骨、呪術にでも使われたのかな」
牧志 浩太
「異様だったな、あれ。
異様過ぎて現実感がなかった。
ただの飾りにしては執拗だったし、きっとそうなんだろうな」
KP
あなた達は牢を出ようとする。
KP
不意にその爪先が震えた。
かく、かく、と意図せぬ震えが走り、脚の筋肉から絶えずポンプか何かで筋力を抜かれ続けているような違和感。
うまく脚に力が入らない。歩いたり走ったりすることはできるが、力が抜ける度にふらつきそうになる。
牧志 浩太
「う、」
KP
牧志が呻いて目元を押さえた。その指先が小刻みに震えている。
それを見るあなたの視界も小刻みに震えている。ものが見づらい。
佐倉 光
「く……」
足を引く、押し寄せる。立っている場所が不確かになる。
佐倉 光
「目が、おかしい……」
牧志 浩太
「俺も……、」
KP
あなたの指先も小刻みに震えている。
ぐねぐねと腕が蠢いている。
KP
突然、その理由が分かった。

皮膚の下で蟲が這っている。ちくちくと真皮を噛みながら、もぞもぞ、もぞもぞと腕の、足の指先から這い上がって、心臓を目指そうと絶えず蠢いている。

無数の蟲があなたの皮膚の下にいる。
目に見えることはないが、確かに、いる。
その無数の羽ばたきのせいで、指が、脚が震えているのだ。
▼禁断症状の悪化
牧志・佐倉さん:1段階目 技能値 -10%:指先が震え、細かい作業に困難を覚える。つま先が震え、脚に力を込めにくくなる。
視線が震え、物が見づらくなる。
▼禁断症状の悪化
佐倉さんのみ:2段階目 技能値 合計 -20%:全身の皮膚の中を蟲が這い回る感覚がする。
佐倉 光
ばちん、と腕を叩く。体を、足を、それからぐいぐいと押して、中にいる何かを潰そうと、押さえようとする。
佐倉 光
「うう、何かいる、何かいる、何かいる」
無意識のうちに身体をこすり、掻く。
KP
叩く。擦る。擦る。
震える手で「何か」を叩くと、ぞわぞわとした痒みが痛みで少し紛れる。
擦る。押す、押す。押すと「何か」は皮膚の奥に逃げて、血管をかじり始める。

もぞもぞと血管の上で「何か」が這っている。
骨の上で。腕の中心で。這っている這っている這っている。
牧志 浩太
「何かいる、だって。
まさか、「水」だけじゃなくて、何かにとりつかれてるのか」

牧志は確かめようとあなたの腕に手を伸ばす。
KP
牧志の震える手があなたの肌に触れると、指先が呼応してぶうんぶうんと震え始める。
不快で不快で不快で堪らない。耐えられない。この肌を切って中の物を取り出したい!
佐倉 光
「うぅぅぅああ気持ち悪いなんだこれ」
佐倉 光
「いるんだよ、虫が這って、羽ばたいて、血管囓って……うううぅぅ」
指先を囓る。
牧志 浩太
「だめだ佐倉さん、傷がつく」
牧志があなたの手を掴もうとする。
佐倉 光
「おかしいよなぁ、おかしいこんなの、こんなとこに虫がいるわけない、偽物だ、偽物なんだまたにせもの……」
偽物だろうがなんだろうが、辛いのは事実だ、どうにもならない。
KP
痒い痒い痛い痒い、辛い!
叫び出しそうな心地に襲われる。耐えられない。早くあの「水」が欲しい。「水」を飲めば、きっと全部収まる。
佐倉 光
「みず」
口に出したら頭がすっきりした。そうだ、それだ。
佐倉 光
「みずがあれば、治るんじゃ、ないか」
体が渇望している。
これは禁断症状だ。
どうしてこんな簡単な事に気付かなかったのか。
牧志 浩太
「み、ず」
牧志が唾を飲む音が、いやに大きく聞こえた。
佐倉 光
「急ごう……」
その渇望に全力で背を向けた。従っていては破滅だと確信できた。

皮膚をさすりながら、あえて匂いから遠い、部屋から出て右手の角の向こうを確認する。
※マップの通路左端
牧志 浩太
「あ、ああ、急ごう」
牧志が浅く速い息をつきながら前を向いた。
匂いから意識を引き剥がすように首を持ち上げる。

佐倉 光
震えかすむ目をこらして壁に貼り付いて角の向こうの様子をうかがう。
KP
霞む目をこらして右手の角の向こうを確かめると、そこには上に向かう階段らしいものがあった。
しかし、階段は途中で金属製の扉によって遮られているようだ。
突き当かりにある階段の前で通路は折れ曲がり、右に続いている。


KP
※白い人影:なんとなくの現在地。
佐倉 光
ではそのまま進んでまず右の様子を確認しつつ扉を調べる。
KP
それはどうやら、先程と同じような檻の扉だ。
こちらも使われていないらしく、鍵はかかっていない。
こちらに骨は落ちていない。
物置代わりにされているのか、掃除用具などがごちゃごちゃと壁に立てかけられている。
牧志 浩太
「掃除用具か、最悪武器になるかな」
KP
右の通路の奥は、扉の前を過ぎて突き当たりになっている。
そこから、右方へ折れ曲がる通路が見える。
どうやら、この通路はここで一周しているようだ、と推測がつく。


佐倉 光
このフロアには誰もいないんだろうか。
掃除用具の中に使えそうなものはないか調べてみよう。
KP
掃除用具の中には手拭、バケツ、雑巾、デッキブラシ、洗剤、柄の長い柄杓と密閉できる桶(これらは大層臭う。明らかに汲み取り用途だ)などが揃っている。
必要な物があれば持っていくことができるだろう。

漂白剤の類はない。
KP
詳しく調べるなら、〈目星〉〈聞き耳〉〈隠す〉のいずれかで判定。同一情報。
佐倉 光
とりあえず〈目星〉で調査だー
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 28→成功
KP
佐倉さんはすべての技能値-20%、牧志は-10%がかかっているので、お気を付け下さい。
でも成功ですね。
佐倉 光
あ、そうだった。
牧志 浩太
1d100 89〈目星〉 Sasa 1d100→ 95→失敗
牧志 浩太
「うう、うう、目が霞む」
牧志は苦しげに唸って、何度も目を擦る。
眼球が小刻みに揺れているのが見てとれた。
KP
掃除用具に紛れて、背後の壁に違和感のある場所を見つけた。
壁の岩が、少し浮いている。
佐倉 光
「なんだここ?」
震える指で掃除用具を慎重に寄せて手で探ってみる。
動きそう? または向こうに空洞ありそう?
KP
手で探ると、指先の振動に合わせて微かに動いた。
また、下の方に空洞がありそうだ。
力をかければずらせそうに思える。
牧志 浩太
「何だこれ、裏に……空洞?」
佐倉 光
「どう見ても通風口って感じじゃないな」
ズラして中を覗いてみよう。向こうに部屋があって人がいたら最悪だから、そっと音がしないように努力しつつ。
KP
それは、恐らくは手で掘った穴だった。
ここにいた囚人は自分たちよりも長く囚われていたのか、囚人がそうしたとすれば、どれだけの時間をかけて掘ったのだろうか。
そして、囚人はどこにいったのだろうか。

階段の方向に向かって掘った穴は、しかし貫通すると思われる直前で力尽きている。
人が寝てようやく身を通せるほどの狭い穴だが、先程の掃除用具などを使えば、「有効活用」してやることはできそうだ。
牧志 浩太
「穴だ……!
……凄いな、手で掘ったのか、これ……」
佐倉 光
「何か使える物があるかも。もう一つ部屋がありそうだったし、そっちも見よう」
牧志 浩太
「ああ、今の所この階には誰もいないみたいだしな。
見に行ってみよう。
階段から人が来たら、さっきの牢に逃げ込めばいい」
佐倉 光
壁を戻し、掃除用具を元の位置に戻す。
考えなしにここを貫通させると、進む以外の選択肢がなくなってしまうだろう。
佐倉 光
「鍵壊しちまったし、隠す意味があるかどうかは疑問だけどな」
牧志 浩太
「そうなんだよな、あれじゃ脱走したのはバレバレだ。
とはいえ、隠しといて損はないんじゃないか」
佐倉 光
部屋を出て、左手の通路へ行こう。
※地図で言うと右の通路。右の部屋をチェックしに行く。
牧志 浩太
牧志は頷いて、あなたと共に牢を出ようとする。
佐倉 光
しかし佐倉3段階目なんだよなぁ
KP
3段階目なんですねぇ。
KP
その時、行く先の通路に落ちる影の中に、知った後ろ姿が見えた。
波照間 紅
波照間だ。
傍らに、ふわふわと浮かぶアラミタマの姿もある。

彼らは互いに何か話しながら、あなた達がこれから行こうとしていた扉の向こうへと入っていく。
波照間 紅
もしかして……、もしかして、助けに、来たのだろうか。
佐倉 光
「波照間さん! どうやってここに!?」
思わず声を上げていた。
佐倉 光
「牧志、波照間さんがいる。アラミタマも。合流……」

どうやって? 扉が開いた音はしたか?
廊下に駆けだそうとした足が一瞬迷った。
波照間 紅
迷っている間に、彼の姿は扉の向こうに消えてしまった。
牧志 浩太
「うう、くそ、痒、痒い……、うう、佐倉さん、なんだって」
牧志が胸の痣をしきりに引っ掻きながら、顔を上げる。
佐倉 光
「その部屋に波照間さんが入っていったんだ。アラミタマを連れていた。
見ていないのか?」
こちらも自らの腕をこすりながら扉を見つめた。
あれは本当に波照間さんだったか?
佐倉 光
「様子、見に行く。本物だったら合流しないと」
足音を忍ばせて見に行こうとする。
牧志 浩太
「なんだって、先輩が!?
見てなかったんだ、でも、そうか、もう数日経ってる。もしかしたら……、ああ、頼む」
KP
足音を忍ばせ、あなたは扉をくぐる。

……、波照間の姿など、どこにもなかった。
そこはただ大きな水甕のいくつもいくつも並べられた部屋で、その全ての水甕から、あの「水」の甘い匂いが室内をもうもうと埋めていた。
KP
ここは恐らく、貯蔵庫だ。
佐倉 光
「みず……」
ごくりと喉が鳴った。
佐倉 光
慌てて目をそらす。
佐倉 光
「波照間さん、いないな。もう部屋を出たのか?
ここに隠し通路が……」
そんなはずないだろう。
入ってすぐ後を追ったのだ。
佐倉 光
波照間さんはここには……
牧志 浩太
「なんだ、幻か。佐倉さんも当てにならないな」
背後から、牧志の失望したような溜息が聞こえた。
佐倉 光
鋭く振り向く。
牧志らしからぬ言葉。
いや、こんな状況だ、牧志だって失望することもある、だろう。
佐倉 光
「悪かったな」
ぶっきらぼうに言って、水がめのあたりを探す。
あるかもしれないだろ、隠し通路。
牧志 浩太
「えっ……、何がだ?
先輩、いないんだな……、見間違いか、幻だったのかな」

振り向いて目に入ったのは、絶えず腕を引っ掻いている牧志の不安そうな顔だった。
佐倉 光
「……何も言っていないし、見ていない?」
あんなにはっきり聞こえたというのに?
あんなにはっきり見えたというのに?
俺は何を聞いて、何を見ていた?
牧志 浩太
「ああ……、胸の奥に何かいて、気を取られてたんだ。
だから、見逃しただけかもしれない。
でも、俺は先輩を見てない。それに、何か言ってもない」
佐倉 光
「まいったな。何がおかしいのか、よく分からなくなってきた……」
震えながら腕をこすり続ける。
▼禁断症状の悪化
牧志:2段階目 技能値合計-20%
皮膚の中を蟲が這い回る感覚がする。

佐倉さん:3段階目 技能値合計-30%
傍らの相手の声で自分を罵る幻聴が聞こえる。
知っている人の幻を見る。
知っている人が助けに来る幻を見る。
佐倉 光
※ここの調査は可能?
 三段階目の判定はここで調査前に起きる?
KP
ここの調査は可能。
【POW】ロールが発生するのは「3段階目到達時」ではなく、「3部屋探索後」なので、ここの調査が終わった時点で発生します。
佐倉 光
ああ、そうなんだ。了解。
では調査しよう。
佐倉 光
「……とにかく、調べよう」
どことなく気味の悪いものをおぼえながら、思い切って水のある部屋を調べる。
しかし……この状態で正気で調べられるものなのだろうか。
そんな不安を感じつつ。
牧志 浩太
牧志が縋らせるようにか、それとも縋るようにか、あなたの腕に手をかける。
その指はひくひくと震えていた。
KP
大量に並べられた水甕から、「水」の匂いが立ち昇る。
鼻に入り込んだ匂いが満ちて、喉をひりひりと痙攣させた。
喉が渇く。全身が枯れて死ぬ恐怖がぞわりと忍び寄る。

……これだけ「水」があるのだ。
少しくらい、少し、少し舐めてから、それから調べてもいいのではないか?
牧志 浩太
「うう、」
事実、牧志の手があなたの腕から離れた。
両手で水甕を抱え、いまにも手が蓋にかかろうとする。
牧志 浩太
「佐倉さん、やっぱり喉が渇いたよ。一緒に飲もう」
あなたの耳元で牧志の声がした。
佐倉 光
「…………」
ごくり、と喉を鳴らした。
佐倉 光
「もし、ここで……水を飲んで、我を忘れたら……」
逃げたのがバレてしまう。それは、まずい。
佐倉 光
いや、しかし……考えてもみろ。鍵は壊されている。俺たちが外に出たのはもう明白なんだ。牢の中にいようとここにいようと大して変わらないじゃないか。
むしろ。鍵を壊しても、飲みたかっただけ、と見做されるのではないのか。
それはかえって安全なのでは?
佐倉 光
「俺、ちゃんと考えられているのかな……
ただ飲みたいだけ、なんじゃ」
牧志 浩太
「佐倉さん、もしかしてまた、何か聞いてるのか。
だめだ……、だめだよ、また我を取り戻せるかどうか分からないんだ」
牧志は縋るように、再びあなたの手を取った。
KP
大量の「水」の誘惑に耐えて水甕の周囲を調べるなら、【POW】×5で判定。
ただし、この判定には禁断症状による技能値のマイナス補正がかかる。
佐倉 光
1d100 55 Sasa 1d100→ 57→失敗
佐倉 光
頑張ったんだけどなー
-30だったから頑張れてなかった。
45だったね判定値。
牧志 浩太
1d100 40 Sasa 1d100→ 26→成功
KP
喉が渇く。顔を上げれば波照間の背中が水甕の間にちらついた。
気がつくと手が水甕に伸びていた。蓋を開こうとしていた。
指先が震えて、視界が震えてまともに物が調べられない。
牧志 浩太
「ひどいな佐倉さん。それ、もう飲んだ方がいいやつだよ。
少しだけ。少しだけだから大丈夫」
耳元で囁く牧志の声と、震える手であなたの腕を必死に握る牧志の姿が重なって、何が真実なのか分からなくなる。
佐倉 光
「飲んだ方がいい? そう、思うか?」
震える手で持っているためか水がはねて誘う。
変だなぁ、牧志、言ってる事とやってる事がぐちゃぐちゃだ。
ぐちゃぐちゃなのは俺なのかなぁ。
牧志 浩太
「!」
牧志の手が水甕の間から何かを拾い上げた。
小さな冊子のようだ。
牧志 浩太
「佐倉さん、何か見つけた。本か何かだ」
牧志 浩太
「うう、視界が揺れる……」
佐倉 光
「本?」
ぼんやりとオウム返しをする。
変だなぁ、欲しいのは本じゃなくて水で、でも俺、何か探してたはずで
佐倉 光
「何が書いてある?」
牧志 浩太
「待って、今読む……、
……この「水」がどこから来たか、が書いてある。

特殊な黒い蓮の花から絞った汁を、神の恩寵で賜って……、何かの儀式で「水」に変えるらしい。
ごめん、全部は読み切れない、でも、こいつらは「水」の力を信じきってて、疑ってないみたいだ。
神から賜ったものだから、なのかな」

佐倉 光
またおまえか案件!?
KP
黒い蓮そのものはまたおまえとは関係なかった……はず!
そこからの薬の改変(賜りの儀式)についてはシナリオオリジナル要素です。
佐倉 光
違うのかー。花と言えばまたアレかと思った。というかまんまブラックロータスなのか。
KP
ブラックロータスです。チョー=チョー人が育てていて、そこから睡眠薬ができたり不思議な夢を見る依存性のある薬が作れたりするらしい。

佐倉 光
「ああ、ただの麻薬じゃないのかな……」
それが分かったところで、今どうにかなるワケでもないな。
佐倉 光
「隠し通路みたいなものはないか。やっぱりいなかったのかな、波照間さん……」
牧志 浩太
「うん……、通路はなかった、と思う。
ここにあったのは、この冊子と水甕だけだ」
牧志は少しあなたを慮るように、そしてそれ以上に悔しそうに首を振った。
佐倉 光
「掃除用具部屋に行って……掘れるか試してみるか」
牧志 浩太
「そうするか。あの部屋からバケツ取ってくれば、これ汲んでいけるもんな」
耳元で囁く弾んだ声は牧志の声色をしていたが、もしかするとあなた自身の声なのかもしれない。
佐倉 光
「そうか、水が運べれば便利かも知れないな……」
ぶつぶつと呟きながらさっき行った部屋へ行こうとする。
牧志 浩太
「え、水? 佐倉さん、なんだって……、
えっ、待って佐倉さん、」
牧志はあなたに続いて部屋を出ようとしたが、
牧志 浩太
「……え、」
何かにひどく驚いて、一瞬立ち止まる。
KP
牧志はめちゃくちゃだ。自分も、どうやらめちゃくちゃだ。
身体がひどく痛んだ。何が真実かもわからない。
これは、もう駄目なのではないか。身体が激しく痛んだ。
骨の中で絶えず虫が這っている。身体の感覚が分からない。

身体が渇いて、渇いて、裂けてしまう!
あなたは酷く激しい不安に襲われる。
▼ 禁断症状の悪化

牧志:3段階目 技能値合計-30%
絶えず傍らの相手の声で自分を罵る幻聴が聞こえる。
知っている人の幻覚を見る。知っている人が助けに来る幻を見る。

佐倉さん:4段階目 技能値合計-40%
激しい不安、「水」がないと身体がばらばらに崩壊する恐怖に襲われる。
KP
▼強制【POW】ロール
二人とも【POW】×5で判定。
この判定には技能値のマイナス補正はかからない。
佐倉 光
1d100 75 【POW】 Sasa 1d100→ 60→成功
牧志 浩太
1d100 60 POW Sasa 1d100→ 42→成功
KP
身体に纏わりついて尾を引く「水」の誘惑から意識を引き剥がし、あなた達は本来の目的を思い出すことができる。

「水」の在処から離れるのは、喉を裂かれるような激しい苦痛だった。
少し、少しならいいはずだ、少しだけ、あの手この手で「水」に口をつけさせようとしてくる自らの思考と互いの声の幻聴に抗うのは、並大抵の努力ではならない。
牧志 浩太
「えっ、佐倉さん何言ってるんだよ、だめ、飲んじゃだめだって」

あなたをふらふらと追いかけようとしていた牧志は、何もない所の壁の凹凸に縋っている。
佐倉 光
「波照間さん……」
佐倉 光
「こんなところにいるわけがない。行かないと。自分でここから逃げ出さないと。
さっきの部屋に戻る。戻って掘る」
フラフラしながら部屋を出る。ひと足ごとに体が軋んだ。
胸元のお守りを握りしめるとその指が力に耐えかね崩壊する気がした。
佐倉 光
「どうした牧志……俺はこっちだ。そいつは俺じゃない」
牧志の肩にかけて引いた腕がもげ落ちた。うわ、と悲鳴を上げてよろける。
それでも牧志の手を引いて歩く。
佐倉 光
「全部幻覚だ、幻覚、幻覚……こんなことあるはずがない」
呪いのように繰り返して何とか進もうとする。
牧志 浩太
「あ……、そうか、そうなんだな、俺達、幻を見てるんだ。
そうだ幻、先輩はいない、この佐倉さんも幻、ここを出ないと、幻、幻幻幻」
何もない所を見ては身を竦ませながら、牧志はあなたと共にもがくように進む。
KP
意識が逸れるたびに立ち現れては消える幻の中、二人とも辛うじて、前だけは見えていた。

KP
無限にも思える幻との戦いの中、あの穴の前に辿り着く。
岩の隙間には不定形の蟲がうぞうぞと蠢いていて、知っている人の影が何人も、何人も穴の中に現れては消え、牧志の声は恐ろしいことをあなたの耳につぶやく。
それでも穴はそこにあった。
以前に誰かが、同じように必死にもがいた跡だ。
KP
宣言のみで穴を貫通し、穴の向こうに出ることができる。
時間経過の処理もない。
禁断症状とクリファン
KP
ちなみに、この禁断症状表は-99%まであります。
佐倉 光
それもう見たいけど何もできない状態……
KP
クリティカル出さない限り何もできない……

(あのあと考えまして、ファンブルと不均衡になっちゃうしクリティカル決定的成功なんだから成功でいいよな、と思ったので、技能値5%未満でもクリティカル成功として扱うことにしました)
佐倉 光
不均衡でいいと思いますけどね。別に。
……別に不均衡ではないルールでもファンブルばかり出ているのは気のせいではないような……
ともかくりょうかーい
KP
ファンブルが逆奇跡での失敗なら、クリティカルはどんなに目がなくても奇跡的に成功する、でもいいかなって。

気の所為ではないような気がします……。>ファンブル
クリティカルも出てるはずなんですが、まずファンブルから始まることが多いような。

佐倉 光
穴を貫通させる。
向こう側を……
警戒したくとも、自分が見ているものが真実かどうかも全く分からないんだよな。
小さく穴を開けて向こう側を見る。
佐倉 光
「牧志、交代して、俺が見ているものと同じか見て……」
牧志の言葉が本当かも分からないのでは、何も確認できないのではないだろうか。
それでも、俺一人で見るよりはいいかもしれない。
牧志 浩太
「ここを覗いて、佐倉さんと一緒に警戒するんだよな?
俺、聞こえてるよな?」

牧志は聞きづらそうにしながらも頷いて、穴の向こうを覗き込む。
進もう、と言うあなたの声だけは真実だと、彼はそう決めることにしたらしかった。
佐倉 光
「ああ、考えよう」
KP
穴の向こうには、上り階段が続いていた。
あの扉のすぐ向こうに出るようだ。
牧志 浩太
「出られそうだよ佐倉さん。先に出てよ。俺、水を独り占めしたいんだ」
KP
階段の上にちらちらと見える人影が幻か現実か分からない、視界が揺れてよく見えない。
牧志 浩太
「階段には誰もいないみたいだ、上には人影が色々見えてよく分からない。

分かった、先に出……、違う、これは幻聴だ、そうだよな、俺を盾にするなんて佐倉さん、自分から言わないよな」
佐倉 光
「牧志が独り占めしたいなんて言うわけないだろ。
もし思ってたらもっと違う言い方するよ牧志は……
記憶にある信頼を元にしなきゃ何もできない。何の冗談だよ、くそ」
牧志 浩太
「ああ、そうだよな。そうだよ。
佐倉さんはそんなこと、絶対に言わない。
思ってたとしたら、わざわざ言ったりしないで、ちゃんと俺を油断させてやる」
佐倉 光
「俺にも階段の上には人がいるように見える。そうすると、本当にいるのかも……
時間が経てば俺たちの状態、悪くなっていくみたいだし、いつ正常と異常が判断できなくなるか分からない。
ここから出た状態で見つかったら、この穴も塞がれるかも知れない。慎重になりたい所なんだけど」
佐倉 光
「少なくとも今は、変な情報が増えている。あるものが見えなくなるってことはないように思える……」
佐倉 光
「多分な」
その基準さえ分からないんだが。
佐倉 光
「だからここで暫く、上の人影がいなくなる事がないか、様子を見ようと思う。
あと、喋るときは……腕を叩く」
牧志の腕を叩きながら言った。これは気休めにしかならないが、やらないよりはマシかもしれない。
牧志 浩太
「分かった。腕を……、殴る? 違う、叩く」
牧志はあなたの眼を見ながら頷いた。
目を凝らし、唇を読もうとしているようだった。

そういえば彼の声が悪意を囁くとき、唇の動きまでは追従していない。
牧志 浩太
「様子を、みる」
佐倉 光
「オーケー」
なるほど、唇か。変な事を言われたら見てみよう。

小さな穴で交互に外の様子を見ながら、人通りの様子を見よう。
そんな大通りじゃあるまいし、人が常に行き来している、なんてこともないだろう。
佐倉 光
「もし階段から人が来る気配があったら、ここは塞いで貯蔵部屋に戻ろう」
KP
あなた達は絶えず感覚を揺さぶる幻の中、互いの信頼を手繰り寄せる。
そこにあるものだけは、見えている。聞こえている。
あがけ
佐倉 光
まだ八日もあるなら、最初はある程度考えた行動取れる方が楽しいかなぁ、と思って色々足掻いております。
お薬系の譫妄ってこういう対処できるのかどうかは知らないや。
KP
幻だらけの中でどうにか工夫して動こうとするの、見ていて楽しいです。
禁断症状表自体も現実には即していませんし、そこは緩い解釈で楽しんでいいかなーと思います。>対処できるか分からない
まったく対処できないとすると、そもそも探索できなくなっちゃいますしね。

KP
大丈夫だと微笑んだり、真剣な目でこちらに来るよう合図をしたり。
現われては立ち消える知人の幻のうち、どれが本物なのかよく分からない。
しかし暫く目を凝らしていれば、その中にあの簡素な衣装を着た見知らぬ姿がよぎった。

それが本物なのかどうか確証はない。
彼らは階段に関心はなく、何事か話しながら通路を通り過ぎていく。

それから暫く、誰かが来る様子はない。
佐倉 光
出てみるか。いつまでもここにいても状況は悪化するばかりだ。
佐倉 光
本当に波照間さんや春日さん、他のみんなが来てくれていれば……
いや、そんなものを期待してはいけない。
佐倉 光
「穴、広げよう」
今にももげ落ちそうな指を押しつけるようにして穴を広げる。向こう側の様子を見る。
牧志 浩太
輻輳する幻の中で、牧志ははっきりと頷いた。
KP
岩で埋められていた先程までの壁と違い、ここは岩の分布にばらつきがある。
所々が土壁になっているようだった。
高い所に通気口が見えるが、人の入れる大きさではないように見える。

目の前は上り階段だ。
「簡素な衣装を着た見知らぬ人影」に限れば、階段と、その出口に人影はないように見えた。
佐倉 光
「行ってみる」
牧志の腕を叩いて、足を踏み出した。
振り返って、その穴がすぐ塞げそうか様子を見る。
思った以上に足が震えるし、息が乱れている。
これではいつも通りには動けないだろうな、と思うが、それでも階段をそっと登って様子を見ようとする。
通路に知り合い以外いなければ牧志を呼ぼう。
KP
出てみれば、扉の前に細々とした物が置かれていた。
それらを置けば、誤魔化すことくらいはできるかもしれない。

通路に今の所、誰か来る気配はない。
牧志 浩太
「佐倉さん、これ持ってきたよ」
震える爪先で階段を踏みしめ、上ってきた牧志は何かを抱えていた。
……「水」がなみなみと満たされた、あの水甕。

牧志の手がそこから「水」を掬い、あなたの目の前に差し出そうとする。
佐倉 光
「水……?」
目をこすって、牧志がそれを喋っているのか確認する。
牧志 浩太
牧志の唇は、動いていなかった。
水甕だって、あんな重い物をここに持ってこられるはずがない。

「水」の揺らめきがあなたを誘う。
佐倉 光
水に触れてみる。
KP
「水」に触れると、「水」は勝手にあなたの手を這い上がってきた。
いや、それは幻だ。あなたが「水」を掬っているだけだ。

あなたの手はあなたの意思に反して動き、その雫を唇へと導く。

ひどく遅くなった視界の中、雫が少しずつ、少しずつ、じわじわとあなたの唇へと滑り落ちてくる……。
佐倉 光
「…………」
一滴でも舌に触れれば、頭がすっきりするに違いない。
ほんの少しならきっと、我を忘れるような事には、ならない……
KP
するりと水が口の中に入り込んできた、直後。

水は消えてしまった。
あの甘さも極彩色の夢も心地よさも齎すことなく、消えてしまった。
牧志 浩太
牧志は水甕なんか持っていない。
あなたの手には「水」なんかない。
KP
全部幻だったのだ。
全身が震え、わななく。
意識が、肉体が、すべてが「水」の甘みを期待していたのに、「水」はそこにない!
佐倉 光
「!? どこだ!?」
思わず牧志の腕を掴んだ。
牧志 浩太
「えっ、どこだって何が」
何があったのかと、牧志が周囲を見回す。
佐倉 光
「……何でもない」
佐倉 光
胸糞悪い。こんなのは俺じゃない。
いや、俺なのか?
佐倉 光
「ごめん、上の方見てくる」
階段登ります。

KP
すぐ横に上り階段がある。
階段は先程同様に扉で閉じられている。
閂はないが、鍵の代わりに光り輝く糸のようなものが掛けられている。

前方に続く通路と、左側に続く通路がある。
左側に続く通路には、少し向こうに扉が見える。


佐倉 光
「牧志」
振り向いてはっきり見えるように大きめに口を開けて、しかし声は小さく発音した。
こっちに来いとボディランゲージをする。
牧志 浩太
「佐倉さん」
大きく口を開け、応えて名を呼ぶ。
大振りに頷いて、牧志はあなたの所まで来る。
佐倉 光
では左の通路を歩いてゆく。部屋はどんな部屋だろう。今までのような牢?
KP
その扉は牢ではなかった。木の扉だ。
窓はなく、室内の様子は分からない。
佐倉 光
ではその前を通り過ぎて、全体を把握しよう。そのまま進んで、道がどう進んでいて、どんな扉があるか探る。
佐倉 光
あっ、穂坂さんだ。
KP
影の中に消えていく穂坂や洞川の姿を見ながら、ぐるりと全体を回る。
先程見た人影は室内にいるのだろうか? それとも、幻だったのだろうか?
大きく一回りしても、同じ人影を見ることはなかった。

そうして階段の前まで戻ってくる。
扉の配置を見るに、先程の地下牢があった階と大体同じ部屋構成なのではないか、と推測がつくだろう。
ただ、あなた達がいた地下牢のある位置に当たる部屋だけ、扉が金属でできている。
また、地下牢のものより少し大ぶりの南京錠がかかっているようだ。


コメント By.佐倉 光
痛み、痒み、違和感、幻覚、不安、渇望。
あまりの辛さに意思が挫けかけたとき、牧志は囁く。
少しくらい意志を曲げてもいいじゃないか。
水が欲しいんだ。

プレイ日:2025年4月10日 ~ 2025年12月15日

作者名: 闇司祭ファラリス

配布・販売サイト: 光を溶かす水(オリジナルシナリオ)

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