こんばんは
語り手
います
高瀬川の和樹
寒いィ
こんばんは~!
語り手
こんばんはー
めっちゃ冷える
さすがに窓閉めた
高瀬川の和樹
急にボンと冷えましたよねぇ
語り手
昨日までは全然だったのになぁ
神津 樹
さむいねー
シロ
ふぅ
高瀬川の和樹
ですよねぇ あったかかった所から急にいきなり冷えた
こんばんは~
シロ
毛玉になりたい。
高瀬川の和樹
シロの毛皮に埋まろう
シロ
クマさんでも抱いておくか。
一応シロいし。
高瀬川の和樹
なるほど。
風馬
おります!
高瀬川の和樹
こんばんはー!
語り手
いらっしゃいまし
よーし
本日も頑張ってまいりましょう
高瀬川の和樹
むりせず楽しくまいりましょう
(気温がこれなので全方位の体調が心配)
語り手
頑張ればなんでもできる!
高瀬川の和樹
できても後で倒れるやつだァ!

語り手
ようやく藤葛木へと帰ってきたみんなが目にしたのは、大きな地震によって傷んだいくつもの家々と、お社のある里山を囲うマンションを建てるための工事現場と、バラバラに解体されたお社でした
工事現場はすっかりと覆われていたために、みんなは他の人も避難しているという公民館を目指してみることにしたのでした
シロ
たーたーりーじゃー
(順番が逆)
語り手
って感じだったかな
シロ
うむ。
高瀬川の和樹
ですな
語り手
みんなが公民館へやってまいりますと
炊き出しや、生活必需品を配る人たちと、それらに並ぶ人たちの姿でした
みんな一様にくたびれた顔をし、口々に不安を語っています
風馬
年季入ってる
シロ
こすりたいけど自重
風馬
「……なんだか様子がへんだ」
高瀬川の和樹
「無理もねぇよ。……ずっとやってきた店だって崩れちまったし、住むとこも駄目になっちまった。その状況で、いつなんどきここもまた揺れるかわかんねぇんだ」
シロ
「お方様どこいったか、だれかしらないかな……」
高瀬川の和樹
みんなそれ所じゃないだろう、とは思うが、止めはしない。
もしかすると、お方様のことを気にかけてくれてる人がいるかもしれん。
シロ
「ねえ、ねえねえ、おやまのおやしろのお方様、どこいったの?」
語り手
シロの問いかけには、みんな、疲れたような顔で首をかしげるばかりです
シロ
ずっと守ってくれていたのに誰も知らないなんて!
自分のことを棚に上げてプンスコします。
風馬
「おばあちゃんに聞いてみよう」
語り手
では、風馬がそう考えて視線を巡らせると、公民館の建物の中の片隅、みんながそれぞれに辛うじて自分たちの居場所を確保した段ボールの仕切りから少し離れた場所で
おばあさんが一人、ビニールシートを広げて、座っています
ビニールシートの上には、色とりどりの小さなお菓子の箱やおもちゃなどが並べられています
風馬
「おばあちゃんだ!」駆け寄る
高瀬川の和樹
風馬が駆け寄った後からついていく。
語り手
風馬の言う通り、それは最初に猫と出会った、傾いたお店をやっていたおばあさんでした
語り手
「おや」
おばあさんが顔を上げます
「よかった、あんたたちも逃げてこられたんだねぇ。お家は大丈夫だったかい、怪我はしてないかい」
風馬
「だいじょうぶか? さがしてたんだ」
語り手
「あたしは、大丈夫さ。店の方は傾いでしまったけれどね。品物はいくらか持ち出せたから」
高瀬川の和樹
「ああ。悪ぃ、ちょうど町を空けてたんだ。大変な時なのに、ありがとう」
語り手
「あんたたちも、入用のものがあったら、持っておゆき」
シロ
「おばーちゃん!
いたいとこないか?」
語り手
「ああ、大丈夫だよ。お腹はすいてないかい。お菓子やせんべいくらいしかないけれど」
高瀬川の和樹
「俺は大丈夫。婆ちゃんやみんなのために使ってくれよ」
語り手
「どうせ箱も少し傷んだりして、売り物にゃならないからね。お代も遠慮もいらないんだよ」
風馬
「……シロ、おかしたべるか?」
シロ
「たべる!!」
一応遠慮らしきものはして半分だけ貰う!
語り手
「ああ、お食べ、お食べ」
言いながら、おばあさんは適当に袋や箱を開けて、みんなに振る舞ってくれます
シロ
「おいしい!」
語り手
それをなんとなく見ていた、町の子供たちにも、みんなに分けたあとの袋を、そのまま渡してあげます
シロ
そういえば半変身だから耳が丸出しでしたわ。
慌てて帽子を被る。
おばあちゃんには変な耳についてはバレてそう。
語り手
目がお悪いのでね
高瀬川の和樹
なるほど
高瀬川の和樹
「……ありがとう」
遠慮がちに、その懐かしい味を小さな粒ひとつだけいただく。
残りは他の子供達にあげてしまう。
風馬
「……おばあちゃん、オレたちきつねを探してるんだ。山のいえがなくなってる、しらないか」
語り手
「山のきつね……ああ。
お稲荷さんだね」
シロ
これでよし……
語り手
「なんでも、お祀りしていた大岩が崩れてしまったりして、大変だと聞いているねぇ。
お稲荷さんも、困ってなければいいのだけれど」
シロ
「こまってるよ……」ションモリ
風馬
「あたらしくつくらなきゃいけないんだ。だからきつねを探してる」
語り手
「新しく……?」
高瀬川の和樹
「ああ。社が壊れちまったみてぇでさ。
だからお稲荷さんも居所がねぇんじゃねぇかと思って、探してんだ」
語り手
「なんとまぁ、そうだったのかい。
でも、そういえばあっこはなんでも新しくマンションを建てるとかなんとか……」
と、そうおばあさんが口にした時
語り手
みんなが避難している、この大きな部屋の入口の方から、何やらたくさんの人の大きな声が聞こえてきました
なんだか、怒っているような、そんな怒鳴り声のようなものも聞こえてきます
語り手
「何しにきやがったんだ! えぇ!?」
高瀬川の和樹
半分大変な状況のおばぁちゃんの心情を慮り、半分口に出しづらくてダイレクト口にしない、そんな和樹

高瀬川の和樹
腰を上げてそちらへ向かう。
シロ
「なんだ?」
語り手
そちらを見やると、揃いの薄青い作業着を着たおじさんたちが、避難してきたと思われるおじさんやおばさんたちに、入口で通せんぼをされているようでした
通せんぼされている、作業着を着たおじさんたちの中、他の作業着の人に守られるようにして後ろにいるおじさんには、なんとなく見覚えがあります
みんなが出発する直前、マンションを建てる、という話をしていたおじさんですね
シロ
「ころばせていい?」
むっとする。
語り手
そういえばあの時も、シロが転ばせていました
シロ
使いたいが力がないのだった。
変身といて足元にダイレクトアタックかけるしか!
しかしそれをやると正体曝して「ばーかばーかあはははは!」ってやらなきゃいけないんだこの子。

風馬
「なんだろうな」
高瀬川の和樹
「おう、転ばすなら一番後ろのおっちゃんにしとけ」
語り手
「みなさん、みなさん、どうか落ち着いて……」
前に立つ作業着のおじさんが、必死に怒る人たちをなだめています
語り手
「何しに来た、ってんだよ! 市長様が!」
語り手
「いえ、皆さんがお困りと思いましてですね、慰問に……」
高瀬川の和樹
「あ、市長さんだ。お久しぶり」
ひらっと前に出る。
語り手
和樹が、両方のおじさんたちの間に立つと、必死になだめていたおじさんが、汗をふきふき
語り手
「ああ、どうも。お困りのことはありませんか、大丈夫ですか」
答えるのは、市長さんの前でみんなをなだめているおじさんです
シロ
シロはそんな疑問抱けないんだけど、どうしてこの市長嫌われてるんだ?
おやまを勝手に切り開いて観光地にしようとしているから、で良かったっけ。
語り手
言い分としては、それも含めて、外からの住人誘致だったりにお金を使ったりしてるから、って感じですかね
シロ
ふむふむなるほど
語り手
「お困りもお困りなんだよ!」
「あんたらが、マンション建てるだの、駅だの綺麗にしてばかりで金使ってばかりだから、こんなにみんな困ってんじゃねぇか!」
高瀬川の和樹
「ああ、そうそう。俺いますごく困ってるんだ! 市長さんにガツンとやってほしいことがあるんだよ」
語り手
「そうよそうよ、このご時世、災害対策にも力を入れないで、外からのお客さんにばかりおべっか使ってるからでしょうよ!」
おばさんも声を荒げています
高瀬川の和樹
「ここんとこ地震ばっかりでさ。
まだいつ揺れるかわかんないってのに、もうマンション建て始めちゃってる業者がいるんだよ!
崩れたら危ないし、ガツンと言ってやってくんないかな」
語り手
「お兄さん、そんなことこいつに言ったってしょうがねぇよ!」
語り手
「なんでって、こいつがそこの会社の社長なんだからよ!」
語り手
「自分とこの事業ばっか、心配なんだろ! この有り様でもまだ工事やってんだからな!」
高瀬川の和樹
「そうなの? だってそれってダメなやつだろ?
市長さんが自分でそんなことさせないよな?」
語り手
「いや、それとこれとは……」
応対をしているおじさんは、顔を青くしたり白くしたりしながら
ゆり
「ま、法律ではね」
語り手
「こいつは、地元の土建屋の倅だからな! 金と土地の転がし方だけはうまいことやってやがんだよ!」

シロ
あーあ
高瀬川の和樹
なお和樹は大したことをしたいわけではなく、アングリーの持って行き所がないだけです。
高瀬川の和樹
ここの和樹は計算を投げ捨てている。
シロ
プンスコプンスコ
高瀬川の和樹
外から戻ってきて煽るのが必ずしも状況にとってプラスにならないことも分かっていつつ、れいせいに なれない !

風馬
「きつねのいえ、どうするんだ?」ひょいっと
高瀬川の和樹
「ああ、お山の上のお社のことだな? いま工事してるとこの」
風馬
「また、赤いいえつくるのか?」
シロ
「そうだぞ! おうちつくってよ! お方様のおうち!」
語り手
みんなの言葉に、声を荒げていたみんなは、一瞬ぽかんとしますが
語り手
「そう、そう。あそこのお山には、昔からお稲荷さんがいてねぇ。そのお社をどけてまで、あんた、とんでもないことをしてるわねぇ」
年を取ったおばあさんが、そうぽつりと漏らすと
語り手
「ああ、思い出した!」
おじさんが、手を叩きます
「そうだ、あそこにゃちっせぇけど、お社があったんだよ」
語り手
「ああ、そういえば、小さい頃そこで遊んだこともあったわ」
高瀬川の和樹
「ああ、そうそう。壊れちまったんだっけ、壊しちまったんだっけ、バラバラになっててびっくりしたよ」
語り手
「あんた、そんな大切な場所に、なんてことしてるんだ!」
シロ
「お方様ぁ……どこいっちゃったんだよぉ」
高瀬川の和樹
「……覚えてくれてんだなぁ、みんな」
ふと怒りが引っ込んで、ぽつりと呟く。
高瀬川の和樹
そして和樹がアングリーなせいでシロの気持ちをフォローするものがいない
シロ
シクシク
語り手
「地元出身の市長が聞いてあきれるぜ! 里山が大切なもんだ、ってさんざあちこちで言われてるご時世に」
語り手
「この地震も、あんたがそんなことを仕出かすから、神様が怒ってんじゃねぇのか!」
語り手
などと
さんざに責められる、矢面に立ったおじさんの後ろで
「……いえ、決してそのようなことは」
それまで難しい顔で黙っていたおじさんが口を開きました
語り手
「まずは、申し訳ない、って言えないのかよ!」
しかし、そんな言葉にすぐに切り捨てられ
不意に誰かが口にした『帰れ』の一言がきっかけとなり
市長さんたちを責めるみんなから、帰れ、帰れという言葉が、投げつけられます
語り手
市長さんは、なおも何かを言おうとしますが、とうとう物までもが投げつけられはじめ
その内の一つが、市長さんの頭にがつんとぶつかり
たまらず怯んだ市長さんを庇うようにして、作業着のおじさんたちは、慌ててその場を離れてゆきます
高瀬川の和樹
「いかんな、こりゃ煽り過ぎた」その様子を見て今更反省。
ゆり
「とんでもない騒ぎになったものね」
シロ
「コワイ」
高瀬川の和樹
「ああ。怪我させちまったのは、流石にちっとな」
シロ
カエレ・コール!
街の人々のためには土地を守りたいけど、商売に使おうッてんなら投げ捨てるぜ!!
まあ1000年も経過すりゃ、そんなこともあるだろう。
そうなってから「やめたいな」と思ってもやめられないのか、ご神体的な物を害されたりしたら消えるのかな。
語り手
市長さんを責めていた人たちは、なおも暫く乱暴な言葉を浴びせていましたが
作業着のおじさんたちの姿が見えなくなると、次第にではありますがようやく落ち着き始め、みんな散ってゆきました
シロ
「……やだなぁ」
ゆり
その様子を横目で見やりながら
「ずいぶん、嫌われてんのねぇ、あの市長」
シロ
「わるいやつなのか?」
ゆり
「それを外様のあたしに聞かないでよ。あんたたちのが詳しいんじゃないの」
高瀬川の和樹
「さぁな、悪いのかどうかはわからん。
もしかしたら、あれがこの町にとっていいと思ってるからやってんのかもしれねぇし。

ただ、俺達にとっては悪いな。
お社壊しちまうし、まだ揺れるかもしんねぇのに工事するし。
そもそも、俺達の話聞く気がねぇのが悪いな。
もうちょっと先に話聞いててくれりゃ、ここまでこじれまいよ」
シロ
「むー」
ゆり
「聞く気もなにも、不安と感情爆発で問答無用な感じだったけれどね」
シロ
「わかんないけど、なんかいやだった」
高瀬川の和樹
「そりゃ、こうなる前によ」
ゆり
「まぁ、それについてはあたしが口挟める道理じゃないけどさ。でも」
言って、バッグから巻物を取り出します
これまでにみんなが集めてきた勧進帳
「きつねもどこにいるやらだし、これをどうしたものかしらね」
ゆり
「ていうか、この町、どうにか落ち着かせたとして、どうにかなるの? こんな有様で」
シロ
「……うん……
おばーちゃんのおみせはこわれたらやだけど、あそこのじしんをとめて、そんでまんしょん がたったら?
おやまにはしるとこなくなっちゃう」
高瀬川の和樹
「それは町走ってもいいんじゃねえの。でも、町がこの有様なのは、ほんとに参ったよ」
ゆり
「いいんじゃないの。
そしたら、あんたたちがここに縛られる必要もなくなるわけじゃない」
ゆり
「人がいなくなるなら、無理に守らなくても―――」
つい、そう口にしてしまってから
ゆり
「……ごめん。なんでもないわ」
シロ
「なんか、やだな……」
何度目かのやだをつぶやく。
高瀬川の和樹
「いや、まぁ正直町のみんな次第だよ。みんながここに愛想尽かすってんなら、その通りさ」
語り手
「あんたたち―――」
みんなが、なんとなく、沈んだ様子で話していると
件のお店のおばあさんが、声を掛けてきました
「大丈夫かい」
高瀬川の和樹
「ああ、おばぁちゃん、悪ぃ。
どうにも腹に据えかねて、煽ったみたいになっちまった」
シロ
「おばーちゃん……ごちそうさまでした」
高瀬川の和樹
「居具合が悪かったよな」
語り手
「いや、いいんだよ。でも―――」
そう言って、段ボールの仕切りの間で不安そうにしているみんなの様子を眺めて
「いやだねぇ。みんな、殺気立っちまって。
不安なのはわかるけど、こんな仕切りを挟んで、バラバラでさ。みんな、この町が好きでいついてるはずなのに」
風馬
「……ああ、ケンカはだめだ」

高瀬川の和樹
飯能で検索した結果的に、駅のあるような大きめの集落からちょっと離れた、山あいの町みたいなところなのかな、藤葛木
語り手
ですです
ですが、今の市長になってから、プチ特急が止まるようになったり、それに合わせて駅や住宅街なんか整備されたりし始めた感じですね
高瀬川の和樹
なるほどなるほど
風馬
市長なりにまちおこししようとしてる感じかもね
高瀬川の和樹
でしょうね。悪評は全部真というわけではなさそう
シロ
旅立ち前は「そんな所かな、だけど物の怪的には理解できないな」って話をした覚えがある。

語り手
「あの子だって、あんなむつかしい顔で、むっつりと黙っちまってさ」
そう言って、顔を反対側―――市長さんたちが立ち去った方へと向け
「昔は、あんなじゃなくて、そこらの原っぱや、お山でのびのび遊んでたってのに……。これも、時代ってやつなのかねぇ」
そう、寂しそうに呟きました
シロ
「あいつもあそんでたのか」
語り手
「そりゃそうだよ。あの子も、藤葛木の子だからね。
親父さんは、昔からの土地持ちで、名士だなんだ、なんて言われてたりもしてたけれど。
学校が終わったら、ランドセルをウチの店にほっぽらかして、野山を友達と駆けずり回ってたもんさ」
高瀬川の和樹
「まあな。地元の土建屋だなんだ、あの辺の噂話はちょっと言い過ぎだろうとは思うよ」
シロ
「わすれちゃったのか」
語り手
「大人になると、色々なしがらみが出てきて、それが足にまとわりつくものさ」
高瀬川の和樹
「忘れちゃねぇんじゃねぇかな。市長さんなりに、ここを盛り上げようとはしてんだろう。
ただ、考えることが多すぎて、足元のことを忘れちまったのかもな」
語り手
「あ―――」
和樹の言葉に、おばあさんは少しだけぽかんとして
「ああ、ああ、そうだろうともさ。
いつだったか、あの子も目をキラキラさせて言ってたっけね……。藤葛木が好きだ、って」
風馬
「そうか」
語り手
「でも、忘れちまったのかねぇ」
シロ
しかし夢を見せたりする特技持ちはおらず、そもそも不思議が全然溜まっていないのだった!
高瀬川の和樹
ないのであった!
夢を見せられるの、狐だからお方様だ!!!!
シロ
結局お方様を探さないと話にならない!?
風馬
「おばあちゃん、あいつみずあめなめてたやつか?」お菓子は適当
語り手
「え?」
風馬の突然の言葉に、少しぽかんとしてから
「ああ―――。そういえば、学校帰りによく水あめ煎餅を買ってたっけねぇ。真っ白になるまでよく練りな、って言って。なのに、いっつも待ちきれないで、煎餅よこせ、って」
おばあさんは、遠くを思い出すようにしながら、手で何かをこねるような真似をしながら、小さく、寂しそうに笑いました
高瀬川の和樹
風馬くん100年前から家の上だもんな
風馬
ばあちゃんの嫁入りもみてたぜ
語り手
そうなんですよね
きっとその頃はおばあちゃんじゃなくて、おばさんだった
風馬
「そうか……まだあるか?」
語り手
「え? 水あめかい? ……ああ、あるけれど……」
風馬
「あいつにあげてくる!」受け取るやいなや駆け出す
語り手
おばあさんが、取り出した水あめと割りばしをつかんで、風馬は駆けだしました
シロ
「ふーちゃん!?」
まってー! おいかける
ゆり
「あ、ちょっと!?」
高瀬川の和樹
「おわ」
慌てて追いかける。
ゆり
「おばあさん、ごめんなさいね、これ、お釣りはいいから」
がま口からお札を渡し、ゆりも草履で追いかけます

語り手
みんなが公民館を後にして、
少し走って行きますと
川にかかった小さな橋の手前のところに、一台の車が止まっておりました
白い車には、その横のところに『藤葛木町役場』と漢字で書かれており、大きく開いた荷台のところに、先ほどの市長さんが腰かけ、一緒にいた作業着のおじさんがその頭に包帯を巻いておりました
語り手
「痛みますか」
「大丈夫。大げさだよ、こんな」
そんな話をしていたところ
風馬
「こんにちは」
語り手
「ん? 何だい君は」
手当をしていた方のおじさんが、振り返ります
高瀬川の和樹
煽った当人なので、少し遠くで様子を見ながら待つ。
シロ
「………………」
風馬
「オレは風馬」
語り手
「風馬、くん? 何か、用事かな?」
風馬
「さっきケンカしてておばあちゃんのとこいけなかったんだろ、だからもってきた」水飴の小瓶を差し出す
手当してたほうじゃなくて市長に向かって
語り手
さっきのケンカ、という言葉に、手当をしていたおじさんが少し険しい顔をして、前に出ようとしますが
語り手
「……待ちなさい」
市長さんは、それをとどめます
語り手
「市長?」
「いいから」
語り手
市長さんは、風馬から小瓶を受け取ります
風馬
「今日はここにありんこがいるのか?」
語り手
「あり?」
風馬
「おせんべいとあめをいっつも分けてやってた。
ありんこが並んでるところに」
語り手
「……ああ」
その言葉に、市長さんは小さく笑いました
シロ
ミテター
語り手
「懐かしいな」
言って、手の中の小瓶に視線を落とし
語り手
「きみ、風馬くん、と言ったかな」
風馬
「ああ」
語り手
「これは、竹中商店の……お店のおばあさんのところの?」
風馬
「ああ、今日はこうみんかんのいえで売ってたぞ」
語り手
「そうか……お怪我はされていなかったかな?」
風馬
「げんきだぞ、でも、みせはこわれてる」
語り手
「ああ……そうだったね」
市長さんは、少し、悲しそうな顔をしました
「ありがとう」
そう言って、市長さんは小瓶を風馬に返そうとします
風馬
「おまえ、いえつくれるんだろ」
語り手
「……ん? 家を、作る?」
風馬
「じしんがなくなったら、いえつくれるか?」
語り手
その突然の言葉に、市長さんは少し、ぽかんとしてから
「ああ。もちろん」
頷きます
風馬
「いえがたくさんこわれたんだ、ぜんぶなおせるか?」
語り手
「ああ」
風馬
「そうか、すごいな」
語り手
真っすぐな、風馬の言葉に
「……ふ」
市長さんは、小さく笑います
「ふふふ。
風馬くん、ありがとう。この水あめは、私に?」
風馬
「そうだ、ずっと前から買えてないだろ」
語り手
「ああ……もう、ずいぶんと……ご無沙汰だった、な」
そう言って、
「きみ、小銭、持ってるか」
手当をしていたおじさんに、声を掛けます
語り手
「……は? 小銭、ですか?」
風馬
「じゃあ、オレたちはじしんをとめるから。ちゃんと全部いえなおすんだぞ」
語り手
「ああ、そうだな」
風馬の言葉にうなずき
ポケットの中からおじさんが取り出した小銭から、100円玉を一枚取り出し、それに自分が取り出した一枚を足して、200円を風馬に差し出します
風馬
「そうだ、きつねみなかったか? やまにいたんだ」
語り手
「……きつね?」
風馬
「ああ、ずっとやまのうえのいえにいたきつねだ」
語り手
「きつねか……どうだろうな。この辺りじゃ、あまり見なくなったが……」
ごめんな、このおじさんピンと来てない
風馬
「おかねはゆりがはらったからいいぞ」
風馬
ATMゆり
語り手
「この水あめ、一人で食べるのは大変だろう? だからみんなでお金を出し合って買って食べるものなんだ。一瓶300円。私ときみ、そして彼とで100円ずつ。だから取っておきなさい」
風馬
「みずあめはくちばしがくっつくからにがてなんだよな……」
語り手
「くちばし……? 食べ方を知らないのかい。じゃぁ、教えてやろう。
おばあさんから、割りばし、もらってないかい」
風馬
「あるぞ!」
語り手
「お、やっぱりな。よしよし、それじゃ久しぶりにやってみるか」
語り手
「と、その前に。
後ろのみんなは、友だちかな? よかったら、君たちもどうだい」
言って、和樹たちに顔を向けます
高瀬川の和樹
「あー……、さっきは悪ぃ。煽っちまった」
ばつが悪そうな顔で顔を出す。
「ちょっとやりすぎたよ。そこは反省してる」
語り手
「なに、構わないさ。こんな大変な時なんだ。気も立つだろうさ」
言いながら、市長さんは小瓶の蓋を開けると、その中に割った割りばしを突き込んで、みずあめを絡めて取り出すと、みんなに分けっこします
みんなに割りばし2本ずつ
みずあめを絡めて、とりわけます
風馬
「和樹、シロ、ゆり、みずあめつくってくれるぞ」
シロ
「たべる!!
お、おこってるけどっ」
おちるおちる! 二本の割り箸をあっちにやったりこっちにやったり。
高瀬川の和樹
「頂くよ。なんだか懐かしいな」少し陽に透かして光を楽しんでから頂く。
語り手
「ああ、ダメダメ」
早速舐め始めた和樹を、止めます
「いきなり食べるやつがあるもんか」
語り手
手渡された水あめを、同じように早速食べようとしていたもう一人のおじさんも、慌てて手を止めます
高瀬川の和樹
「ああ、そっか混ぜなきゃ。久しぶりすぎて忘れてた」
語り手
「そうさ。おばちゃんの店の水あめは、それだけでも充分甘い。
でも、それだけで食べたらもったいないんだ」
言いながら、二本の割りばしの間で、水あめを練り始めます
風馬
その様子をじーっと見ている
語り手
「こうして、練って、伸ばして―――。
じっくりと、こねくり回す。
そうすると、ほら。だんだんと空気の泡が入って、白くなってくるだろう」
風馬
「今日はちゃんと白くなるまでやったんだな」
語り手
「まだまだ、もっとさ」
高瀬川の和樹
「おお、おお、垂れる垂れる」まきまき
シロ
「むー」
てろんてろんと伸びるばかり
手ごと回してるから混ざらないのだ。
ゆり
「不器用ね、あんた。ほら、こうして」
自分の水あめを落とさないように注意しながら、シロの両手に自分の手を重ねて、手伝ってやります
シロ
「こう。こうか。わかった」
語り手
「この空に浮かんでる、雲と同じくらいになるまで」
風馬
「そうか、わかった」割り箸に聞きながらうまいことやる
シロ
割り箸さん知識!
語り手
「……おばちゃんにも、そういわれたっけな」
語り手
「―――家を建てられる、か」
水あめを練りながら、市長さん
高瀬川の和樹
「おばあちゃん、市長さんのこと覚えてたよ」
語り手
「えっ、そうなのかい。
そりゃぁ、参ったなぁ。何か恥ずかしいこと、聞いたりしなかっただろうね?」
高瀬川の和樹
「ああ。いいや、楽しそうな話ばっかり聞いたよ。その話聞いて、風馬が水あめ持って走り出しちゃってさ。
お山や原っぱでずうっと遊んで、この町が好きだって言ってたってさ」
語り手
「そうだったのか……」
風馬
「すきなんだろ?」
語り手
「ああ……」
見つめる先で、どんどんと白くなってゆく水あめ
「そりゃぁ、好きさ。好きに決まってる」
高瀬川の和樹
「マンション作ったり特急止めたりしてんのも、そのため?」
語り手
「……」
高瀬川の和樹
「……なあ、なんで俺達が怒ってるか、聞いてくれた?」
語り手
「ああ。
……特殊工法」
口にしてから、首を振って
「難しい話はやめよう。今建てているマンションはね。特別に地震に強い仕組みなんだ」
風馬
「そうなのか」
語り手
「あの里山は、ね。これまでに何度も、崩れたことがあるんだ」
じかんだ
語り手
って、すごい時間だ
高瀬川の和樹
実はそう
語り手
すみません、一度ここで切りましょうか
市長さんのお話は、また次回にしつつ
シロ
きづいてらっしゃらなかったか。
語り手
全然気付いてなかった
高瀬川の和樹
キリが悪いのでそのまま行く感じなのかなと思っておりました それは失礼
シロ
切りがいいとこまでやりたいんだなーと思いながら見てた。
風馬
うふふ
高瀬川の和樹
同じく
語り手
せっかくなので、次回とっくりと
大変失礼しました
風馬
いよいよ本心に!


コメント By.シロ
じゃあくのげんきょうをやっつけろ!!
……あれ、なんだか違うみたい?

ゆうやけこやけ

第一~二話『龍の眠る滝』『ともだち』
第三話『ふしぎなともだち』
第四~六話『ふたりのかげ』『たそがれのまど』『とびらをひらいて』
第七話 『さくら咲く頃』
第八話 『ふたりの娘』
第九話『みあげればそこに』
第十話『旅するゆうこや』 1 2 3 4 5 6
番外 こどもとTRPG 準備 『まいご』 『たからもの』 『化けニャン』

これは『インコグ・ラボ』が権利を有する『ふしぎもののけRPGゆうやけこやけ』の二次創作物です。