はじまり
シャーリー
こんばんはー
高瀬川の和樹
ウオオーッ今日!
風馬
コーコケキョ!
羽生 慧
お待たせしました!
風馬
HUBさん
シロ
こんばんは
羽生 慧
ハニュウです……
風馬
羽生蛇さん
羽生 慧
蕎麦の上にいちごジャムをドバドバと
語り手
というわけで私です
シャーリー
こんばんは
高瀬川の和樹
こんばんは~!
シャーリー
将棋に強いわけではない。なるほど。
シロ
そんな物騒な電車じゃないお祭り
高瀬川の和樹
お疲れ様です
シャーリー
スケートが得意。なるほど。

語り手
さてさて、すごく時間が空きましたね
みなさん、お話は覚えていますか?
とりあえず、ここでシーンを一度切ります
幕間
風馬
はぁい
高瀬川の和樹
河原がないのに拳で分かり合う話だったはず
シャーリー
はぁい
高瀬川の和樹
分かり合ったがしかしねぶたは戻らずどうしたもんか
シロ
結局解決したようでしてないんだよな
語り手
シロだったら一発でペシャンコになりそうな拳で語り合いました
シロ
ぺたーん
高瀬川の和樹
シロがのしロに!
語り手
能代
シャーリー
せやったわ
語り手
おじさんから和樹へ2→3いたします
高瀬川の和樹
秋田になったところでおじさんとシロを2→3します
お、ありがとうございます
シロ
風馬を3にするよー
シャーリー
こちらも風馬くん3に
風馬
むむむ、悩ましいけどシャーリーを3に
シャーリー
ありがとうございます!
風馬
あ、まだ5点だからシロも!
シロ
にーちゃんズありがとー!
風馬
ありがとう!
語り手
ではでは
シーン展開いたします

語り手
お時間は夕方!
アスパムから飛び出ると、ほぼ夜に差し掛かろうかという、紫色の空が広がっています
そして、ハネトの格好をした人たちが、街の中心へと歩いて行く、その中を
みんなは掻き分けるようにしてテントの方へと戻ってきました
あ、そうそう描写しちゃったけど
登場処理をどうぞどうぞ
高瀬川の和樹
完全変身で登場! おもいから6消費。
シャーリー
こちらも完全変身でおもい6消費。
シロ
こちらもにんげんになっとくぞ
へーんしん!
風馬
おもい6消費で完全変身!
シャーリー
よしよし
語り手
ではでは
みんなでテントへと戻ってくる間、
一郎
一郎さんは、田村麻呂と阿弖流為に、必死に事情を説明していました
シロ
なかなか難易度の高い
語り手
おじさん2人は、それを聞いて、
阿弖流為
「さてもさても」
坂上田村麻呂
「面妖な」
語り手
と、なんとも言えぬ顔で顎を撫でていました
シロ
そらそうよ
シャーリー
そだねぇ
高瀬川の和樹
「まぁ、言われる方からしたら面妖だわなぁ。言う側からしても面妖だが」
語り手
そうこうして、ようやくテントが見えてきた頃
ちょうど、大通りへと続く道へと辿り着いた時
テントと反対側の方から、わぁっ、という歓声が聞こえてきました
シロ
なにごとだ。みてみる。
風馬
「なんだ?」
シャーリー
様子を見守る。
高瀬川の和樹
「おお、なんだなんだ」そっちを見る。
語り手
大通りへと向かう人たちの頭越しに、回されるねぶたが揺られながら、運行してゆきます
その有り様は、まるで本当にその登場人物たちが、舞台の上で戦い舞っているように見えます
風馬
「すごいな、動いてる!」
語り手
周りを囲む人たちは、口々にラッセラーと叫びながら、興奮して嬉しそうに、跳ねます
高瀬川の和樹
「ううむ、来ちまったか」
シロ
「らっせらー!!」
ぴょんぴょん
風馬
「らっせらー!」
シャーリー
「わ……」
阿弖流為
「ほぉ……!」
坂上田村麻呂
「これは……!」
高瀬川の和樹
「あんだけ作り直してようやく二人が会えたんだ、関係ねぇ話とは思えんのだがなぁ……」
阿弖流為
「いや、和樹よ」
おじさんは、腕組みで唸りながら
しかしニヤリと笑いながら言いました
高瀬川の和樹
「ん?」
阿弖流為
「貴様が言う通り、関係が全く無いことなどあるまい」
坂上田村麻呂
「そうだな」
シロ
「うんうん! ぜったいそうだ!」
シャーリー
「そうです……」
坂上田村麻呂
「一郎や皆の言うこと、どうにも合点が行かずにいたが」
「なるほど、これがねぶたか……」
おじさんたちは、目をきらきらとさせながら、人の波に乗って揺れ動くねぶたを眺めていました
シロ
「すっごいよなー、おじさんたちほんとにあれなのか?」
風馬
「なのか?」
シロ
「ぴょんぴょんするとたのしいんだぞ!」
阿弖流為
「……」
阿弖流為は、田村麻呂の顔を見やりました
坂上田村麻呂
田村麻呂も、阿弖流為を見やります
阿弖流為
そして、一つ大きく頷きあうと
「うむ。わかったような気がするぞ」
高瀬川の和樹
「分かった? 何か思い出したのか?」
阿弖流為
「永きこと、どことも知れぬところを彷徨い歩いていたような気がするが、思えば何やら強き力に惹かれて、この地へと舞い戻った気がする」
坂上田村麻呂
「うむ。元は我らの所縁なのであろうが、それを紡ぎ、引き合わせてくれた者がいたようだ」
高瀬川の和樹
「そうか……。あながち絵空事、って訳でもなかったんだなあ」
「見立て、形代、紡いだ物語が当人を呼んだか。俺らが言うのもなんだが、すげぇ所に出会ってるな、こいつぁ」
シロ
ご本人召喚したのか
風馬
1200年ぶり
シロ
なにげにすごい

阿弖流為
「一郎よ」
阿弖流為は一郎さんに向き直ります
一郎
「あ、は、はい?!」
阿弖流為
「貴様、やってくれたな。これまで、我らの一人だけが呼ばれ、祀られておったものを、貴様が確かに今、この神事に呼び下ろしたのだ」
シロ
「ふたりそろうのがすごいんだな?」
坂上田村麻呂
「おっと、無論、君たちの力ぞえのことも忘れてはいないぞ?」
田村麻呂はみんなに対して片目を瞑りました
風馬
「……会ったらケンカしたぞ」
シロ
どうすごいのかはよくわかんないけど、すごいひとをふたりもよべるのがすごいってことかな? と雑な理解をした。
高瀬川の和樹
「これまで千年余り、ずっと揃わんかった所で、ようやく会えたんだ。そう思うとすごかろう?」と、シロと風馬に片目をつぶってみせる。
高瀬川の和樹
「ま、ケンカはしたがね」
阿弖流為
「はっはっは! まぁ、そう言うな!」
シャーリー
「……本当に……」
阿弖流為
「我らにとっては、ちょいとしたこづき合いよ」
シャーリー
「こづきあい……?」
シロ
「あれがぁ?」
「すっごいながいきだ。カミサマみたいだなぁー」
風馬
「神様なのか?」
坂上田村麻呂
「神などと名乗るは烏滸がましいが」
「一郎……彼の想いとわざすべは確かなものだったということなのだろう」
「いずれにしろ」
「我らが抱えた千代のわだかまりを解き放ってくれたのだ。このまま礼の一つもせずにいるわけにはいくまいな? 阿弖流為」
阿弖流為
「おうとも」
シロ
からだではらってもらおうかー
阿弖流為
「一郎、像を見せぃ」
一郎
言われて、一郎さんは像を差し出します
阿弖流為と、田村麻呂の像
それらはバラバラでしたが、一郎さんが2体を真正面から向かい合わせてみると
それぞれの像は、互いに手と手をがっちりと組み合わせ、開いた体のその先で握り拳を握った姿
それは、互いに戦おうと握り拳を固めながら、しかし互いのもう片方の手はがっしりと握り合った、なんとも躍動感のある像となったのです
シロ
二体だったんだな。二人を一体として彫ってるのかと思ってた。
シロ
「おおー、なんかでっかいのっぽくなった」
高瀬川の和樹
「おお、こうして揃うとねぶたの姿が見えるようだなぁ」
風馬
「ちいさいけどちゃんとねぶたみたいだ!」
阿弖流為
「いやはや、さてもさても」
坂上田村麻呂
「これは見事な益荒雄ぶり」
阿弖流為
「一郎」
坂上田村麻呂
「そして皆よ」
シャーリー
「……はい」
風馬
「なんだ」
語り手
『返し返し、御礼申し上げる』
そう言って、頭を下げると
シロ
「うん」
語り手
その姿はたちまちに光に包まれ、解けると
風馬
「うわっ」
語り手
一郎さんの持った像と共に、びゅわ、とテントの方へと飛び去ってしまいました
シロ
「とんだとんだ!!」
おっかけてく。
高瀬川の和樹
「うわちゃ。しかし、こいつぁもしかしたらもしかするかもしれんな、急ごうぜ」一郎に呼びかけてテントへGO。
一郎
「お、おお……」
風馬
「そっちか!」
シャーリー
テントへ行こう。
一郎
一郎さんも走ってゆきます
シロ
ねぶたのなかにいる!
なんてことになったらこまるから、みんなどいてるんだぞ!
語り手
そしてみんながテントにたどり着く頃には
それはそれはもう、大変な騒ぎになっていました
シロ
そらそうよ(二回目)
語り手
「あっ、一郎さん!」
あの空っぽだったテントの前で、見たことのあるおじさんが、みんなと一緒に帰ってきた一郎さんに声を掛けます
シロ
最初に追い出してた人か
シャーリー
おわ……。
一郎
「どうすたんだ!」
語り手
「ねぶだが、戻ってぎだんだ!」
シャーリー
「……良かった……」安堵している。
一郎
「お、おぅ。んだが」
語り手
「んだが、っで……」
あまり驚いた様子でもない一郎さんに、おじさんはぽかんとしてしまいます
風馬
「ほんとにねぶただったんだな」
シロ
「だったんだなぁー」
テントの中をのぞき込む。
シャーリー
「ですね……」テントの中をチラ見。
語り手
みんなが覗き込むとそこには
まるで最初からそこにあったでも言うように、ねぶたが台車に乗せられた状態で収まっていました
シロ
「おおー、でっかいおじさんがもっとでっかいおじさんになった!!」
ハネながら二人に手を振る。
高瀬川の和樹
「あいつら二人の礼、ってとこか。一郎さん、こいつぁちゃんとあんたが作ったねぶたかい?」
一郎
「あ、ああ……」
風馬
「どうした? はやくださないとお祭り終わっちゃうぞ?」
一郎
「いや、ちょっと、違う……」
シャーリー
「……違う……?」
「どういうことなんです……?」
一郎
「こぃは、わー後がら作った像ど同ずものだ」
一郎さんはそういうと、ジャケットの内ポケットから、一枚の写真を取り出しました
ねぶたと見比べるようにすると、みんなの目にもそれが見えます
シロ
物理的に変形したのか。
高瀬川の和樹
「そういうことか、二人の魂を込めた像が二人を呼んで、その二人がねぶたになった……」
「ううん、作ったと言うか言わんか、難しいなこりゃ」
一郎
それは、互いに剣と甲冑で武装した二人が、睨み合うような構図のねぶたが写っていました
「ああ……」
「でも」
シロ
「こっちのほーがいいぞ!」
風馬
「こわいかおよりこっちのほうがいいぞ!」
一郎
「こっちの方、なもいじゃ」
3人の言葉が重なり
思わずシロと風馬の顔を見遣って、一郎さんは吹き出しました
シャーリー
その様子を見て目をきょとんとさせる。
「……そう……ですね」
ゆり
「確かに、こっちの方があの二人らしいわ」
シロ
こっちのほーが、あのおじさんたちっぽいもんな!!
高瀬川の和樹
「ああそうだ、この二人は殴り合おうとしちゃあいるが、固く分かり合っている」
「あいつららしいぜ」
シャーリー
そうですね……。
語り手
「一郎!」
おじいさんも、みんなに肩を貸してもらいながら、歩いて来ます
シャーリー
「……あ……」
「無事で良かったです……」
高瀬川の和樹
「おお、八郎さん、大丈夫か」
語り手
「ああ、おかげさまで、この通り」
まだ顔色は少し優れませんが、にっこりと笑います
風馬
「じいちゃん、ねぶた戻ったぞ!」
語り手
「ええ」
頷き
シロ
「よかったな!!」
「イチがんばったぞ!」
語り手
「一郎、おめ、やったな!」
一郎
「じっちゃ……」
語り手
おじいさんは、大きく深く頷いて
「さ、いづまでぼけらっとしてらじゃ!」
「こぃは一番いねぶただ。今すぐに取りまわすだ!」
シャーリー
「……大仕事の後ですから……」
高瀬川の和樹
「さあてそれじゃ、風馬と爺さんの言うとおりだ、早く出さにゃ夜が明けらぁ!」
シャーリー
「そう……ですね」
高瀬川の和樹
八郎のその言葉を聞いて、「やったな!」と言うように、一郎にニッと笑ってみせる。
一郎
「……ああ!」
和樹に、一郎さんは満面の笑みで頷きます
シャーリー
「その後に美味しい物でも……食べに行きませんか……」
シロ
「おいしいもの!!」
ぴょんぴょん跳ねる腰で鈴が鳴る。
おいしいもの
シャーリー
ラグノオのチョコレートケーキとか! って言いたかったけどシャーリーさんラグノオ知らない。
シロ
中の人が漏れてる。
シャーリー
そうなんですよね
高瀬川の和樹
あれおいしいから仕方ないね
シャーリー
あと青森=ラグノオか林檎ってイメージ。
風馬
鳥はチョコNGなんじゃよ……
語り手
シャイニーのリンゴジュースも忘れずに
高瀬川の和樹
お、しらんやつだ
シャーリー
人間の身体だったら消化できるかもしれへんやろ!!! >チョコ

風馬
「オレもひっぱっていいか?」
語り手
「よーーーし、人足集めぇ!」
周りのおじさんたちも、大きな声で拳を突き上げてがなります
「おめたづも手伝いへ!」
そう言って、みんなの肩や背中をばんばんとたたきます
シャーリー
「はい……」
風馬
「ああ!」
高瀬川の和樹
「おうよ!
語り手
そうして、みんなは田澤工房の名が染め抜かれた揃いの半被や着物をもらい
二人のねぶたに取り付いたのでした
シャーリー
「……」
普段洋服なために着方が判らない……と困惑している。
シロ
「あたしもか!」
(せがとどかないな……)
さすがに危ないから、前後でハネトしてるね……
シロ
できないとこまる
風馬
「シロについてくぞ!」
高瀬川の和樹
「シロ、頼むぜ。前で道を開いてくれ」
シャーリー
「お願いします……」
語り手
ねぶたは、みんなに導かれ、大通りへと向かいます
やがて、運行のスタート地点である青森駅前へと辿り着き
一郎
「さぁ、いよぇよわんどの番だ」
シャーリー
青森弁 むずかしい
なんでだろう
いよいよわれわれのでばんだ?
一郎
「行ぐど、おめたづ!」
高瀬川の和樹
「おう!」
シロ
「わーい」
シャーリー
「おー……!」
風馬
「おう!」
シャーリー
「……」
語り手
ゆっくりと、二人のねぶたは大通りへと進んで行きます
やがて、それらが大通りで待ち構える人たちの間へと姿を表した時
ど、っと
大きな大きな声が、通りの端々から上がります
「なんだ? あのねぶだは?」
「阿弖流為ど……田村麻呂?」
それを見たみんなは、口々に驚いたり、意外そうなどよめきを見せたりしますが
でも、その戸惑いのような雰囲気はすぐに消えて、たちまちに歓声を上げます
歩道のところで、ねぶたを眺めていた人たちも、一人、二人と通りへと躍り出て
やがてそれはたくさんの人の波となって、みんなで跳ねて踊ります
ラッセラー、ラッセラー、という大きな声が響き渡ります
シロ
「らっせらー らっせらー!」
ぴょんぴょんはねて、おじさんたちのねぶたを見上げる。
語り手
みんなが跳ねるその足踏みで、まるで地面が揺れているようでした
風馬
のけぞって上を見上げる
シャーリー
「らっせーらー……」
一緒に見上げて大きさの迫力に慄いている。
高瀬川の和樹
「おお、おお、旅の道にゃあ最高の経験だ、まさかこんな場所で祭りを味わえるとはなぁ」
風馬
「おじさん、みんなみてるぞー」
語り手
風馬とシャーリーが見上げる先
シャーリー
「……ちょっとだけ……怖い……ですかね……?」迫力があるよぉ!!!
語り手
台車の上で見栄を切るおじさん二人の顔
その瞳が、ギロ、と下を向いて二人と合うと
ニヤリ、とその口元が笑った気がしました
シャーリー
「あ……」
「いま……笑った……ような」
シロ
ニマッと笑い返す。
ちびきつねさま
「うわ、うわわわわ」
不意に、ちびぎつね様の慌てる声がしました
シャーリー
「えっ……」きつねさまの方を見る!
ちびきつねさま
ちびぎつね様が、ゆりに背負われた鞄から乗り出して、慌てています
その手には、神様を探すための羅盤
シロ
「ヒトいっぱいなのにでてだいじょうぶなのか?」
風馬
「きつね?」
高瀬川の和樹
「えっおい、お方様?」エンジョイしつつも、慣れないねぶた引きで振り返る余裕がない。声だけで呼びかける。
ちびきつねさま
見ると、羅盤の上で、針がこれまでに見たことのないほどの勢いでぐるぐると回っていました
「とんでもない神気だよ……」
シロ
「ふわぁ、めがまわるぅ」
風馬
「かみさまがいるのか!」
ちびきつねさま
「みんなが注いだ神通力を呼び水に、それぞれのねぶたに込められた想いと、周りの人たちの想いが集まって……」
「こりゃぁ、とんでもないことが起きるぞぅ……」
シャーリー
もしかして、このねぶたが全部神様ってコト!?
「はわ……」
シロ
「ななな、なになに?」
語り手
『東西、東西ぃぃぃぃ!!!』
不意に、みんなの頭の上から、割れ鐘のような大音声が響き渡りました
シャーリー
「わ……」
びっくりしそう……?
高瀬川の和樹
「そうか、こいつら一つ一つに、想いが…… うぉあ!?」
シロ
大騒ぎの予感。
百鬼夜行かな?
語り手
見上げると、そこには
阿弖流為
大きな姿の阿弖流為と
坂上田村麻呂
同じく大きな大きな田村麻呂が、獰猛な笑みで睨み合っていました
シロ
「きゃっ!?」
コロコロコロ
シャーリー
びっくりしそうなのを着物を汚したくない一心で我慢する。乙女心ってやつ。
「わー……」
阿弖流為
『ご覧あれぇい!!!』
シロ
「わあぁ、わあぁ、ほんとにねぶただ!」
シャーリー
シロちゃんが迷子にならないように回収しておきますね。
風馬
「な、なんだ!?」
阿弖流為
歌舞伎役者のように手のひらを突き出した阿弖流為が吠えます
『黒雲入道、雷鳴遊覧!!』
『悪鬼妖魔神喰!!!』
坂上田村麻呂
『おいでませぇい!!!』
同じく手のひらを突き出した田村麻呂が応えます
『罪禍乱闘、災難遊覧!!』
『斉天大聖 孫悟空!!』
風馬
なんか違う人になってるぞ
シロ
豪華だなー
阿弖流為
『嬌事纏うは、ここ一番の大道芸夢!!』
坂上田村麻呂
『全ては皆々様のお陰事!!』
『いざ、極めて尋常に!!!』
語り手
『勝負!!!』
その掛け声と共に、二人は台車の上で取っ組み合いを始めました
高瀬川の和樹
「おお、おいおい、そこで大舞台をやろうってのか!」
「最高じゃねぇか!」
「くっそ、ここに居ちゃあ見えん! それだけは悔しいなぁおい!」
言いながらチラチラ見上げている。
シロ
うわーうわー!
「すっごぉぉぉぃ!」
シャーリー
「これが……真夏の夜の夢……」何かが違う。
シロ
せおうひとたいへんそう
シャーリー
それはそう
語り手
それだけのことが起きていると言うのに
周りの人たちはびっくりするどころか、大いに盛り上がります
風馬
「またケンカ、じゃないな。楽しそうだ」
シロ
「わあぁ! どっちもがんばれー!」
語り手
そして、同じような騒ぎが、ねぶたの運行する道路のあらゆるところで湧き上がります
見渡せば、あるところでは日本武尊と八岐大蛇の決闘が
あるところでは、安珍の隠れた鐘に炎を吹き付ける清姫が
シロ
スペクタクルだなー
シャーリー
地方新聞の一面飾れる出来事だ。
シロ
安珍www
高瀬川の和樹
「ひょう、すげぇな! 百花繚乱、あらゆる想いがここに降りてやがる。お方様、確かにこいつぁすげぇや」
シャーリー
「わ……わぁっ……」和樹さんの後ろに隠れる。
語り手
あるところでは、天照大神が隠れた岩戸をこじ開けようとする手力男が
中にはアニメのキャラクターまでもが、たちまちにそれぞれの舞台を演じ始めました
風馬
「なんだ、ねぶたって動くんだな!」
シロ
「わぁ、すごいすごいすごい!」
走り回って全部のねぶた見物に行っちゃう。
足速くて良かった!
高瀬川の和樹
「シロよう、後で詳しく聞かせてくれー!」
語り手
シロが跳ねる人たちの脛をこすりながら走り回ると
今晩に運行しているねぶたの全てが、現身を得て舞い踊っていました
シロ
すごい ですまされるね!
「まっかせてぇー」
「でっかいさるが!!! あばれてる!!!」
「ヘビのたばがうねうねしてる!!!」
ごめんなキーちゃん。報告はあまりアテにしないでくれ……
高瀬川の和樹
和樹もノリで叫んでるだけだからいいのよ
シャーリー
綺麗だけどやっぱりほんのちょっとだけ怖いのでちらちらと見ている。
シャーリー
ド〇ブラザーズのねぶたとかあるのかなぁ……。
シロ
あるかもねー
語り手
大立ち回りが行われるたびに、台車は大きく揺れ、それに負けじと引き手が押し返します
高瀬川の和樹
「っとぉ、いかんいかん!」慌てて揺れるのを押し返す。
シャーリー
「あっ……和樹さん待ってください……!」一人にしないで!
ゆり
「とんでもないことになったわね……」
語り手
みんなの上では、阿弖流為と田村麻呂が、がっぷり四つに組んで、互いに投げ投げられの大乱闘
とんでもない騒ぎと熱狂の中をねぶたは通りを進み
大きな交差点では、更に大きな大一番を展開しながら
そしてやがて、ぐるりと街を回ってたどり着くのは、青森の港
そこから、ねぶたたちは、たどり着いたものから順番に、海へと進んで行きます
風馬
「海まできちゃったぞ」
語り手
引き手の手から放たれたねぶたは、船の上へと乗せられ
黒々とした海の上へと滑り出してゆきます
未だ、舞と戦いを繰り広げたまま
一つ、また一つとねぶたが遠ざかってゆきます
シロ
「わぁー、もうとおいいー」
語り手
やがて、一番最後
ゆり
「いよいよ、海上運行ね」
ゆりが、呟きます
風馬
「海でもするのか!」
高瀬川の和樹
「そういやぁ、ねぶたが道を回った後どこへ行くかなんて、知らんかったな」
シャーリー
「ですねぇ……」
シロ
「きれいだけど、どんどんとおくなっちゃうなー」
シャーリー
解体だと思ってた>ねぶた
ゆり
「ねぶたは、最後、こうして海に流されて行くのよ」
シロ
「いつもどってくるんだ?」
ゆり
「……」
風馬
「ゆり?」
シャーリー
「……」なんとなく察した。
ちびきつねさま
「戻ってはこないさ」
高瀬川の和樹
「そうか」
風馬
「そうなのか」
シャーリー
「多くの人の夢を乗せて流れていくんですね……」
高瀬川の和樹
「ああして、あいつらは天に還るのか」
シロ
「たびにでちゃうのか……?」
シャーリー
「かも……しれません……」
ちびきつねさま
「そう。こうして、彼らは彼岸へと向かうのさ」
阿弖流為
気がつくと
阿弖流為と田村麻呂は相撲をやめ、海の向こうと、みんなを見下ろしていました
さよならにはまだ早い
シロ
「まだちゃんとさよならっていってないのにな」
語り手
あ、もう流れちゃってた?w
風馬
おっとなかったことに!
高瀬川の和樹
そんなことはなかった
シロ
なったのか
一番って言っていたから、最初に行ってしまった物かと
語り手
一番最後よ
シロ
さいごか!
シャーリー
最後かぁ!

高瀬川の和樹
「よう、阿弖流為さん、坂上田村麻呂さん」
阿弖流為
『おぅ、皆よ』
『どうであった、我らが戦舞』
シロ
「かっこよかった!!」
高瀬川の和樹
「おう、見事なもんだったぜ。他の連中がみんな揃って目ぇ覚ます程にゃあな」
シロ
「こわくなかった! ……あんまり。ほんきのけんかよりは」
風馬
「すごかったな!」
坂上田村麻呂
『それは有り難い』
高瀬川の和樹
「こんなもん、一生に一度も見られんぜ。目の当たりにできてよかった」
シャーリー
「ですね……」
シロ
二人の声ってやっぱりでかいのかな?
語り手
大きいですが、静かに語りかけます
阿弖流為
『色々と世話を掛けたな』
『だが、皆のお陰でいよいよ全てのわだかまりを解いて、流れ行くことができる』
坂上田村麻呂
『そうだな。また盆になれば見えることもあるやもしれぬ』
高瀬川の和樹
「そうさな、そん時ゃキュウリ用意して待ってるぜ」
「……あの文化っていつからあんだ? まあいいや」
坂上田村麻呂
『ああ。一番の早馬を頼む』
シャーリー
「では私は茄子を……」
阿弖流為
『おう、一番の遅いやつをな』
阿弖流為は、一郎さんを見やり
『一郎よ。貴様もねぶた作りのわざすべ、見事であった』
坂上田村麻呂
『そのわざすべ、幾久しく継いでゆかれよ』
一郎
「……ああ。あ、有り難き幸せ!」
まっすぐな体を折って、頭を下げます
シロ
「もっとドヤッ!! てていいんだぞ」
シャーリー
「どや……! ……こうです」
一郎
「え、そ、そうだな……?」
語り手
「けっ、10年ぇじゃ」
おじいさんの言葉に、一郎さんは、口を尖らせます
そのやりとりに、台車の上の二人もみんなも笑い合います
シロ
じいちゃんも降ろしたことありそうだな
坂上田村麻呂
『さて、ではそろそろ』
阿弖流為
『おぅ。行こうか』
高瀬川の和樹
「ああ。……あっちでも壮健でな、阿弖流為さん、坂上田村麻呂さん」
阿弖流為
『おぅ。たとえ殺されても、魂までは死なぬわ』
風馬
「こんどはなかよくな」
シロ
「そうだぞ!! けんかはだめだぞ」
坂上田村麻呂
『さても耳の痛い言葉よ』
高瀬川の和樹
「あんたらの舞は、きっとここの連中の心にも響いて、新しい物語になるろうさ」
語り手
和樹の言葉に、二人はいつものようにニヤリと、でもすごく嬉しそうに笑い
『それでは』
その言葉と共に、台車は押し出され、海へと滑り出します
黒い波は、二人を乗せた台車をするすると夜の海へと導いて
どんどんとその姿は小さくなって行きます
シロ
「またなぁぁぁぁぁ!」
叫ぶ。
高瀬川の和樹
「またなーーーー!」シロの声につられるように、大きな声を張り上げて、叫ぶ。
語り手
遠く、二人が拳を突き上げて応えるのが見えました
シャーリー
「お元気でーー……!」
語り手
やがて、幾つもの花火が空へと打ち上がり
海を行くねぶたたちを、色とりどりの光で照らします
シロ
「キャッ!」
風馬
「花火だ!」
シャーリー
「綺麗……ですね……」
シャーリー
ヴッ(悲しいことを思い出した)
各地方の花火大会……復活して……。
語り手
海沿いの人たちは、その様子を、先ほどまでの熱狂と打って変わって、静かに見守ります
阿弖流為
遠く遠く離れた阿弖流為が、ふと口元に手を当て
『貴様らの旅の道行にぃぃぃ!』
坂上田村麻呂
田村麻呂も並び
『数多の幸あらんことをぉぉぉ!』
シロ
「あぁりがとぉぉぉー!!」
高瀬川の和樹
「ありがとよーーーーーーーーー!」
シャーリー
「そちらもーー……!」
声を張り上げる。
風馬
「ありがとー!」
語り手
そして、締めくくりの一際大きな花火が夜空に咲いたと思うと
遠く遠く、点のようになったねぶたたちから、お返しのようにたくさんの光が打ち上がり
シロ
「わー、きれいだな! はなび? じゃないのか」
語り手
それはまっすぐにみんなのところへと降り来ります
風馬
「わわっ」
シロ
「ニャッ!?」
語り手
それは、いつの間にか開いていたちびぎつね様の巻き物の上へと順番に吸い込まれてゆき
次々とたくさんの名前が記されて行きます
シャーリー
お?
「……!?」
語り手
そして鼓を打つような音と共に、それぞれの名前の下に朱印が押され
見れば、どれも先刻戦舞を演じた者たちのもの
シロ
ふぃぃばぁぁぁ!
二人に隠れているけど、かなりの大物揃いよね。
風馬
それな
高瀬川の和樹
「みんなで一斉に結んでくれたのか、こいつぁ助かる。……ああ、有難ぇもんだ」
静かに手を合わせ、祈るようにいちど目を閉じる。
風馬
「すごいな、かみさまがたくさんいるのか」
シャーリー
「ええ……」
シロ
「あれぜぇぇぇんぶカミサマだったのか!」
語り手
そして、一番最後に
『荒波吐』
『日本武尊』
と記され、それぞれの朱印が押されました
シロ
大物過ぎる。
シャーリー
わぁ……
ちびきつねさま
「ありがたや、ありがたや」
「みんなも覚えておおき」
「これが、この国の神の有り様なんだよ」
高瀬川の和樹
「……ああ」
シロ
「うん……うん……カミサマってすごいな!!」
ちびきつねさま
ちびぎつねさまは、巻物をありがたそうに巻取り
恭しくそれに頭を下げて、背中へ背負い直しました
語り手
こうして
青森でのねぶたの夜は終わったのでした
という〆でございます
シロ
ありがとうございました!
高瀬川の和樹
お疲れ様でした!
風馬
お疲れ様でした!

青森のお話おしまい
シャーリー
https://www.youtube.com/watch?v=HH0_YM5BOgk
YouTube
CH Music Channel
【HD】Fate/Zero OST – Kalafina – 満天【中日字幕】
画像
イメソンどうぞ……。
高瀬川の和樹
この曲がクライマックスのシーンで流れたらめちゃくちゃ盛り上がりそう 海に向かって灯がひとつひとつと流れていくところにもきっと似合う
ねぶたって最後海に流れていくんだなぁ、がぜん見てみたくなった
語り手
そうなんですよ
シロ
めっちゃきれい
風馬
だなぁ
高瀬川の和樹
知らなかった
語り手
やっぱり精霊流しの流れを汲んでるからなんでしょうな
高瀬川の和樹
精霊流し的なルーツがあるからなんでしょうねぇ
語り手
これが見られるのは、当然最終日だけなので、めっちゃ混みます
高瀬川の和樹
海の近い地域では、あの世は海の向こうにあると言われる、というのも思い出しましたね、今回
語り手
ですな、ニライカナイ
高瀬川の和樹
そうそう
描かれる情景がすごく美しくて、盛り上がって、今回のお話のラストシーンすごく好き
風馬
うんうん暗闇に浮かぶ極彩色
高瀬川の和樹
そうそう 極彩色の灯りが花火と共に海に消えていくのが、次第に静かになっていくのが見えるようだった
語り手
旅するゆうこやでは、なんとかねぶたはやりたかったので……
あと、阿弖流為と坂上田村麻呂のエピソードを……
満足です
シロ
うごくねぶたは中の人が見たいんですけど、どこで見られますか?
高瀬川の和樹
ARで作ろうぜ
語り手
和ラッセでは見られるとかなんとか
シロ
ワ・ラッセにそういうのあったっけ……
高瀬川の和樹
えぇー行きたい
そう、今回のエピソードめっちゃ面白かった 好き
語り手
ありがとうございます!
高瀬川の和樹
面白かったし青森行きたい度数がガチ上がりした
語り手
そう思っていただけたなら、本当に嬉しいです
ニライカナイが出たので、旅するゆうこやでは琉球もやってみたみあるんですが
日程が足りない
シロ
車で行くのは大変そうだなぁー
語り手
地元の人から『まじむん』と呼ばれるもののけたち
シロ
ゆりさん飛べなーい?
語り手
飛べるけど勝手に飛んだら国際問題になる
シロ
現実の壁!!
高瀬川の和樹
日程が足りない! 琉球編は超見たいけど日程の壁よ
シャーリー
うみぶどう(寝言)
高瀬川の和樹
お船になって海路行こうぜと言いたいけど他の船と衝突をキメそう
語り手
衝突は流石に無いだろうけど、どうやって港に入るかが問題
シロ
じゃあここは私が道を!!
何日かかるかはしらんがな!!
語り手
シロの能力って、ルーラと同じで行ったことないと行けないのでは
シロ
そんなせいげんあったかなぁ?
語り手
あと琉球の神様、ヤマトンチュの神様に力貸してくれるのかな、って
シロ
「いけないよ」って言われたらどうしようもないけど。
わりとおおきめのもんだい。
語り手
琉球神道も多神教だから、割と許してくれるかな
高瀬川の和樹
日程(物理)が!>何日かかるか
北海道のカムイが力を貸してくれたんだからなんとか、と思ったけどあれはいとちゃんベースか
語り手
多分、釧路から小樽への道行で、細々したカムイは拾っていってそうではあるw
特に動物系
シロ
クマとかオオカミとかこわいのばっかりだとおもっている
語り手
キムンカムイはのんびりでおおらかで優しいかも
「はんこおすのぉ~?いいよぉ~?」ぺたし
ウェンカムイとかオヤウカムイに出会したらバトル
高瀬川の和樹
こわいやつじゃないですか



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ゆうやけこやけ

第一~二話『龍の眠る滝』『ともだち』
第三話『ふしぎなともだち』
第四~六話『ふたりのかげ』『たそがれのまど』『とびらをひらいて』
第七話 『さくら咲く頃』
第八話 『ふたりの娘』
第九話『みあげればそこに』
第十話『旅するゆうこや』 1 2 3 4 5 6
番外 こどもとTRPG 準備 『まいご』 『たからもの』 『化けニャン』

これは『インコグ・ラボ』が権利を有する『ふしぎもののけRPGゆうやけこやけ』の二次創作物です。