シャーリー
風馬
高瀬川の和樹
みそ?
語り手
ウォォン
駆け込み!
お待たせいたしました
高瀬川の和樹
お疲れ様です!
風馬
ココッコ
語り手
早速始めさせていただきます

語り手
翌朝
風馬
なかない!
語り手
朝一番早いのは……っておや?
どうした
シロ
風馬が啼かない朝!
風馬
部屋の隅っこで体操座りしています
高瀬川の和樹
こちらは運転疲れでグースカ寝てる。
シャーリー
こちらもふわふわねんねしてる。
もふ……。
語り手
では
いつもならとっくに朝一番の声を響かせていたはずの風馬の声も無かったためか
昨日の強行軍と遅い就寝時間の疲れもあって、みんなが起きてきたのは、もうお昼になろうかという時間でした

高瀬川の和樹
「はぁ、寝た寝た」むくりと起きてくる。
風馬
「……」
高瀬川の和樹
「風馬、我慢させてすまんなぁ」体操座りしてる風馬に機嫌よく声をかけよう。
風馬
「……家がずっと揺れてるし、水の音がするんだ。今日は嵐だから動かないほうがいい」
高瀬川の和樹
「あぁ、大丈夫だ。嵐じゃねえよ、ほれ」風馬をよいしょっと方向転換させて窓の外を見せよう。
風馬
「雨じゃないな。でも地面が、青いぞ?」
高瀬川の和樹
「ありゃ地面じゃねえ、海だ。俺らが海の…… 水の上にいるだけだよ」
風馬
「水の上?これ全部池なのか?」
高瀬川の和樹
「ああ。池っつか、海だがな。地面の外は水で覆われてんのさ」

シロ
「うーーーーん」
敷物になってる
ゆり
「うーーーーーーーーーん」
窓から差し込む陽光を浴びて、思い切り伸びをするゆり
「ああ、久方ぶりによく寝たわ。やっぱり男女別室にして正解だったわねぇ」
晴れ晴れ
「って、あら」
ようやくシロに気付きました
シロ
「しぬぅ」
ゆり
「アンタ、どうしたのよ」
シロ
「どげる゛ぅ゛」
ケホケホ、と毛玉を吐きます。
風馬
溶けるのか
シャーリー
溶けないで~~~!!!?
ゆり
「はぁ?」
「やだ、ちょっと!」
慌ててシロを床から拾い上げます
シロ
「みちー、じめんー」
ゆり
「地面なら、そこここにあるでしょうが」
シロ
「みちのけは大地から離れて生きてはゆけないのよ」
言うと同時にまたぺたりと突っ伏す。
ゆり
「ああ……って、死ぬの!?」
シロ
「みちのけは大地から離れて生きてはいけない?」
さぁ、知らない……
ゆり
「大変!」
シロを抱え上げ、部屋を飛び出します
シャーリー
「……よく見る光景ですね……」
渡り鳥、海を比較的よく見る。
シロ
「ゆれるぅ……」
「あるいてないのにゆれるぅ」
ゆり
「ちょっと、しっかりしなさい!」
気付をするように、シロを揺さぶりつつ
シロ
「ふにゃー」
部屋から出たので化けなきゃと思ったらしい。
ゆり
和樹と風馬が産みについて話している部屋のドアがどんどんと叩かれます
『和樹!?きつねは起きてる!?』
ドア越しのくぐもったゆりの声
風馬
「なんだ?」がちゃ
高瀬川の和樹
「って、なんだなんだ。どうした」
シロ
「いままでおせわになりました」
風馬
「シロどうした?」
シロ
「たぶんさよならです……」
シャーリー
「……大丈夫です……」
「案外なんとかなるものですよ……多分」多分は小声。
高瀬川の和樹
「うぇ、なんだどうした。おおいお方様あ」お方様を呼びます。
ちびきつねさま
「あぶらげ……」
よだれを垂らして、床で大の字で寝ています
シロ
「うぷー」
高瀬川の和樹
「おうお方様、いい夢見てるとこすまんが起きてくれ。何かあったらしい」
寝てるお方様をそのままドアの前まで運搬。
ちびきつねさま
「ううん、なんだい、いったい」
前足で目を擦りつつ、ちびぎつねさまは目を覚まします
ゆり
「シロが死んじゃいそうなのよ!」
ドアが開くや、ゆりがシロを抱えて飛び込んできます
シロ
「きっとつちからはなれて、ヒトのいえにながいこといたからだよぅ」
風馬
「シロ?大丈夫か?」
シロ
「おえー」
「たてないし、からだからいろいろぬけてるし」
ゆり
「道の怪は、道と大地から離れると死んでしまうんでしょ!?」
シロ
真に受けられちゃった
ちびきつねさま
「うん……?」
「そんな話は聞いたことないけれどもなぁ」
シロ
「だってしにそーなんだもん……」
ちびきつねさま
「シロ、ただ死にそう、ではわからないよ。どんな風で死にそうなんだい」
シャーリー
「……生きて……」
シロ
「からだつめたいし、おなかのなかもごもごするし、ぐらぐらするしー」
「おええぇぇぇ」
シャーリー
船酔いという概念を知らない鳥であった……。
「……?」
「……どう……どう……?」
シロ
鳥さんは無縁だよなぁ
高瀬川の和樹
「あっ」すかさずエチケット袋をGO。
ちびきつねさま
「体が冷たくて、お腹がもごもご、そして吐き気」
風馬
「病気か?」
シロ
「まっすぐあるけないし、だるいし」
「みちからはなれたからだよぅ」
ちびきつねさま
「うーん、これは」
高瀬川の和樹
「もしかせんでも、船酔いか」
ちびきつねさま
「船酔い、だねぇ」
和樹に頷きます
シロ
皆さん船酔い平気なんですねッ
風馬
三半規管の存在があやしい
シャーリー
まぁ鳥だし。
高瀬川の和樹
河童は水の中で生活してるから
シャーリー
あと三半規管がやばかったらずっと寝てるって荒業も(使ったことある)
シロ
そうね!!!
風馬
「ふなよい?」
シロ
エチケット袋に、盛大に謎の物質を吐く。
シャーリー
「船酔いって……?」
風馬
「シロ吐いた……」
シロ
なんか毛の塊のようなやつを。
ゆり
「はぁぁ?船酔い?」
シロ
「ふなよいってびょうきなのか……」
シクシク泣いてる。
シャーリー
「……びょうき……?」
ゆり
「死んだりしないし、病気でもないわよ」
風馬
「……そうなのか?」
ゆり
「全く、一人で大騒ぎして恥ずかしいやら、拍子抜けやら……」
言いながら、シロの背中をさすってやリます
高瀬川の和樹
「水の上は揺れてっだろ。人によっては、こう…… その揺れのせいで感覚が狂っちまうのさ」
原理はよく知らない顔で説明。
「道の上は普段揺れねぇからなぁ」
シロ
みちからはなれたからじゃん!!
「なんだかわかんないけどおえぇぇぇぇ」
ぺたりと突っ伏してまた敷物になる
たぶんねー、航路も道だって教えてもらったらなおるw
ちびきつねさま
「シロは船は初めてかい」
シロ
「ふね? てなに?」
ちびきつねさま
「それなら、外へ出てみると良いよ。気も晴れるし、良い空気も吸えるだろうから」
ゆり
「そうねぇ。それがいいかもしれないわ」
「きっと、酔いも吹っ飛ぶくらい驚くわよぉ」
風馬
「家の外は水だぞ」
シロ
「みず?」
シャーリー
「おいしいやつ……」水のこと。
シロ
そとがおいしいやつ?
なんだろうなぁ、らーめんだったらちょっとうれしいかもしれないけどおぼれちゃうよね。
ゆり
「いいから、ほらほら」
シロを再び抱え上げ、ゆりは部屋から出て、廊下を進みます
シロ
ぐったりと抱えられたままモゾモゾしてる。
ゆり
「アンタたちも、来る?」
和樹と風馬を振り返り
風馬
てくてくついていく
高瀬川の和樹
「おう。籠ってちゃ損だからな」
シャーリー
ついてこ~~~。

語り手
そのまま、みんなは絨毯の敷かれた廊下を歩き、階段を登り
鉄でできた大きな扉を抜けるとーーー
突然の、強い風
風馬
「!」
シロ
「!?」
語り手
そこには、一面の紺と青が広がっていました
シロ
「なにこれ?」
風馬
「水しかない!ここはどこだ?」
シロ
「こおり??」
高瀬川の和樹
「おお! 久々に見るなぁ」 両手を広げて歓声を上げる。
ゆり
「海よ」
シロ
「うねうねしてるぞ」
ゆり
「たくさんの水だもの」
シャーリー
「……この景色は初めて見ます……」
「……いつもは……空から……」
ゆり
「たまにはこういうのもいいでしょう?」
シャーリーに微笑みます
シャーリー
「ええ……とても……」にこ……っと笑顔。
シロ
「じめんがないぞ!?」
ゆり
「あるわよ。このたくさんの水のズーー~っと下にね」
シロ
「しずんじゃうぞ!?」
ガタガタブルブルしながら海見てる。
風馬
「……変だな、晴れてるのに風が重たい」
シャーリー
「……風……重いですか?」
高瀬川の和樹
「重たい?」
風馬
「雨が降った後の風みたいだ」
シャーリー
詩的な言い回しへの夢をどうぞ……。
風馬
ありがとう、ありがとう
シロ
「なんかくさい」
シャーリー
「くさい……ですか……?」
磯の香?
ちびきつねさま
「潮の香りだねぇ」
シロ
そうそう
シャーリー
「そんな……におい……します……?」
シロ
「なんかぁ……えーと」
「さかな? みたいな??」
「カタツムリ? みたいな??」
「コケ? みたいな???」
シャーリー
カタツムリ マイエネミー……
シロ
もう意味はなくとも夢投げ
高瀬川の和樹
「磯の香だなぁ。海には魚もいりゃあ海苔もある」
ちびきつねさま
「違うよ、シロ。海が魚の匂いがするんじゃぁなくて」
風馬
「これだけ大きな池なら、魚がたくさんいそうだな」
ちびきつねさま
「魚が、海の匂い、なのさ」
シロ
「そうか!」
「あれうみのにおいなのかぁ!」
風馬
「海、これが海か」
高瀬川の和樹
「ああ」
「魚も居るなぁ。船の上じゃなけりゃ糸でも垂れるんだが」
Q: 河童なのに釣りするの? A: それはそれこれはこれ
語り手
餌をつけずに釣り糸だけ垂らしてそう>和樹
高瀬川の和樹
あー、やりそう>釣り糸だけ
シロ
えいっとひっかけて?
太公望か
ゆり
「そうよ」
「そして、この乗り物、船はね」
「この海の上にある見えない道―――航路を行き交う、1番大きな乗り物なのよ」
風馬
「乗り物?家じゃないのか?」
シロ
「……みち? みちあるのか!?」
高瀬川の和樹
お、和樹が説明しないからゆりが説明してくれた
ゆり
「あるわよ」
高瀬川の和樹
「ん? ああ、あるぜ。ほれ」スマホを取り出して航路図を見せよう。
ゆり
「ほら、シロ」
シロ
「みちだー!」
「道あるー!」
ゆり
「スマホもいいけど、こっちも―――」
シロを抱え上げて、頭の上に乗せます
そのまま振り替えると、そこは船尾
その後ろには、船が蹴立てて生み出した白い波が、まるで道のように遠くまで伸びていました
シロ
「みちだーーーーー! なんかしろいみちー」
キャッキャしてる。
高瀬川の和樹
「おお、確かにこりゃあ道だ」
シャーリー
可愛い
「本当……」
これはかわいい代。
ここでシロちゃんを下手に抱き上げたら怯えさせるなって思ってステイしてるシャーリー。
風馬
「水にも道があるんだな、よかったな、シロ」
シロ
風馬に「わん!」と返事して、ソワソワと足を動かす。
高瀬川の和樹
「船をこかしに行くなよう、落ちるから」
シロ
船が転んだら大変だ……
シャーリー
タイタニックはあかん。
ゆり
『転』覆
シャーリー
やめろやめろ!
シロ
それは本当にしんでしまうのでやめよう。
風馬
沈むぅ
シャーリー
炊いた肉……なんでもないです。
シロ
でも海に沈んでも、シャーリー飛べるし和樹泳げるし風馬は沈んじゃうにしても死にはしないような。
風馬
錆びるのでやめていただきたい
シャーリー
和樹さんがシロちゃん回収すればおっけーだな!
シロ
落ちたらよろしくお願いします……

風馬
「船って大きいんだな……」
ゆり
「そうよ。なんたって、世界で1番大きな乗り物なんだから」
なぜか誇らしげなゆり
高瀬川の和樹
「はは、そうか。乗り物だったな、船も」
ゆり
えへん、とわざとらしい咳払いで微笑む
「中には、街が丸ごと載ってるような船もあるのよぉ。飛鳥Ⅱもいいけど、オーバーシーズという豪華客船もあるし、ああ、そういえばアメリカ合衆国空母のエンタープライズなんてのは、千人単位の乗組員が―――」
なにやらまた始まったゆりの乗り物講座
シロ
「かぜがふいてるんじゃなくて、うごいてるのか!」
高瀬川の和樹
「そうそう、こっちが動いてんだ。まぁ海の上は風も強いがな」
風馬
「それで揺れてたんだな」
高瀬川の和樹
「そういうこと」
シロ
「そーかーそーかー、すごいんだなー」
シロ
「わすれてたぁ」
シレッと変身。
シャーリー
「……しゅわしゅわが飲みたいですね……」
「……しゅわっとしたもの……売ってないんですか……?」ゆりさんに。
シャーリー
船の話をすると大和思い出してサイダー飲みたくなる……。
ゆり
「―――かの悲劇の客船、タイタニックが沈んだ理由にも諸説あって―――。何よ、いいところで」
演説と止めて、シャーリーに振り返り
「シュワシュワ?」
「炭酸飲料?」
シロ
「髭の鯛肉?」
高瀬川の和樹
「例によって俺以外に通じてねぇよそれ。サイダーか? 売店でも行きゃあるかね」
シャーリー
「あの……透明な入れ物に入った……」そうそれ!
ゆり
「サイダーなんて言わず、なんでもあるわよ」
シャーリー
「……さいだー……っていうんですか……」
ゆり
「コンビニだって入ってるんだから」
シャーリー
やった!!!
ゆり
「そういえば、朝ご飯も食べずに寝こけていたわね……。優雅に、船上のブランチと洒落込みますか!」
シャーリー
「……買いに行きます……」
シャーリー
軍資金はお方様が出してくれるさ!!!
風馬
「店があるのか、本当に町みたいだな」
シロ
もう何を言っているかよくわかんないけど、ごはんだ!
高瀬川の和樹
「賛成。船の上の飯は醍醐味だ」
「船ってのはでかいわりに、遅いからなぁ。長旅になりがちだから、色々あると捗るのさ」
ちびきつねさま
「具合が良くなって、よかったねぇ、シロ」
シロ
「あれ、ほんとだ」
「なおった!」
ちびきつねさま
「いいことだねぇ。きっとご飯もおいしかろうね」
にこにことちびぎつねさま
風馬
「ふなよいは外に出れば治るんだな」
シロ
それはそれで間違った知識だ。
マシになる(場合もある)。
シロの中の人は無理だった。
高瀬川の和樹
「道があったからじゃねえか? シロの場合」
シロ
「あー……」
「そうかも!!!」
シロ
道ってついてれば何でもいいッ
茶番へのお付き合いありがとうございました…
シャーリー
海いいなぁ……。瀬戸内海の船旅がいいなぁ……。
語り手
などと話しながら、みんなは船の中へ戻りました
ゆり
「そういえば、あたし襦袢のままだったわ……」
語り手
途中で、真っ赤な顔をしたゆりが、部屋へ戻っていったりしましたけれど。
高瀬川の和樹
「あーあー、慌てて来たもんなぁ……」
「っつか俺も寝巻だわ」着替えてくる。
シャーリー
「ああ……」
「私も……パジャマですね……」
着替えよ。
シロ
そのまま化けたからいつもの格好だぜ! 走るぜ! ヤッホゥ!
風馬
「?」
同じく化けとるのでそのままだ!
高瀬川の和樹
そういえば今回のシーンの登場やみんなのつながりや変身コストやそういうアレソレは無いのかしら
シャーリー
あ、忘れてた。
ゆり
ここ、一応インターミッションなので(長
高瀬川の和樹
なるほどここはインターミッションだった
シロ
そうなのよっ
シロ
たぶん妖怪のシロにとって酔いはちょっとしたきっかけに過ぎず、八割気の持ちようで症状出ただけなのよ……
高瀬川の和樹
ですねぇ……

語り手
そうして、みんなでちょっと早めのお昼ご飯を食べて。
シロ
さっきまでのぐったりはどこへやら。モリモリ食べる。
高瀬川の和樹
「旅の空だと二割増し、海の上だと三割増しでうめぇんだよなあ、こういうのは!」
ゆり
「気楽に言ってくれるわね……」
がまぐちを帯の間に戻しながら、ゆりが恨めしそうに呻きます
シャーリー
「……このふわっとした卵美味しいです……」
風馬
「煮豆があってよかった(チリコンカン)」
ゆり
「すごい赤いけど、辛くないの?それ」
風馬
鶏の味覚ってどうなんだろう
風馬
にわとりは辛みを感じない!やったぜ!
シロ
ヒトに化けてもその特性引き継がれるの
風馬
それ以前に風見鶏の味覚とか…
シロ
食べたければあるんじゃないかな……
シャーリー
「このソーセージも……美味しいですね……」もくもく。
ちびきつねさま
『おぅい、私にもおくれよぅ。さっきのソーセージの続き』
足元の鞄の中から、ちびぎつねさま
ゆり
「さ、それはそれとして」
聞こえないような様子で、ゆり
高瀬川の和樹
「へいへい」こっそりソーセージあげよう。>お方様
ゆり
「作戦会議よ」
言いながら、食器の下げられたテーブルの上に地図を広げます
そこには、港まちと思われる町が、たくさんの線で描かれています
「この船が着くのが、釧路港」
言い、指を差します
シャーリー
「くしろ」
風馬
「ずいぶん上のほうだな」
ゆり
「で、この真ん中にあるのが鹿児川」
※釧路川と書いてあるのは、幻です
シロ
なんてこったい
幣舞橋は鹿児川にかかっていたのだわ。
シロ
厳島神社の横を河童の川流れしてたと思うとちょっと笑える元地元民
高瀬川の和樹
じゃばー
シャーリー
厳島神社!?
厳島神社
結構あちこちにあるらしい。釧路のは江戸時代からあるらしいよ。
風馬
「和樹の」
高瀬川の和樹
「おう」
シロ
「ここにいたのか」
高瀬川の和樹
「ああ。いやしかし、こうやって見ると北海道だなァ……」
ゆり
「鹿児川のこっち側」
右側を指差し、
「こっち側が、鹿角町ね」
「港からは、そんなに離れてないわね」
「で、目的地の候補なんだけど……」
語り手
※註)フェリーの釧路便は、本来東京発であり、大洗発のさんふらわあは苫小牧着です
シロ
ここは半分釧路じゃないからねしょうがないね
ちびきつねさま
「うーん」
シロ
「またあなのあいたやつぶらーってすればわかるんじゃないのか?」
ちびきつねさま
ちびぎつねさまは、シロに言われて紐付き5円玉を取り出し、ぶら下げました
そのまま暫く、じっとしていると
ほんの少し、ゆら、ゆら、と揺れ始めました
でも、その揺れは本当に小さくて、どこがその揺れの元であるのかなんて、到底わかりそうもありません
「やっぱり、新しい神だと、うまく気も掴めないみたい……」
しょんぼりと俯くちびぎつねさま
シロ
「またさがすとこからかー」
ちびきつねさま
「すまないねぇ」
高瀬川の和樹
「なかなかならんもんだなァ。ま、それも旅の一環よ」
ゆり
「ていうか、和樹。アンタここの生まれなんでしょう?どっか知らないの」
高瀬川の和樹
「あぁ? ったって出て長いぜ、もう。っつか。住んでた川のこと以外詳しかねぇよ」
と言いつつ心当たりを考えてみますが、何かある?
シロ
「きーちゃんのかぞくとかにきいたらわかるんじゃないのか!?」
語り手
鹿児川を上っていった先、そう高くもない山の中腹に、小さなお稲荷さんの社が昔からあることは、知っているかもしれません
思い出そうとすると、ある一人の河童の姿がちらつきます
高瀬川の和樹
「あー……うーん…… そういや山の方に稲荷の社があったなぁ。そんで……」
語り手
相撲の取り方や、泳ぎ方を教えてくれた、大きな手と、甲羅。
ちびきつねさま
「それで?」
高瀬川の和樹
「そんで……んー……。なんだったか。覚えてねぇや。まあ、でも確か親父に聞きゃ何か分かるかもな。親父は山で狸連中と相撲取んのも好きだったし」
シャーリー
ほほえましい……。
ゆり
「そっか、お父様なら長く住んでらっしゃるから、何かご存知かもしれないわねぇ」
「じゃぁ、まずは鹿児川の上流の方を目指しましょうか」
風馬
「和樹の親がいるのか、他の河童を見るのは初めてだな」
高瀬川の和樹
「ああ。……はー、まさか帰るたぁ思わなかったぜ。座りがわりぃや」
シロ
流されて消えちゃった子供ががっつり人間にかぶれて戻ってくる。
ゆり
「あら、どうして?『こんなの』とはいえ、神のお手伝いの勧進旅よ。故郷に錦じゃないの」
ちびぎつねさまを指差して、言います
高瀬川の和樹
「俺達ぁそうそう里帰りなんかしねぇんだよ。川を離れたら独り立ちだ。たいがい年でも食ったら別だがな」
「だから、こう、あー…… なんか座りが悪ぃ」
ちびきつねさま
「こんなの……」
へにょ、と糸の垂れた5円玉を寂しげに手繰りながら、ちびぎつねさま
シロ
「お方様は『こんなの』じゃないぞ!! えーと、こんなのじゃなくて、えーと」
高瀬川の和樹
「お方様はお方様だろ」
風馬
「きつねはきつねだ」
シロ
「そうだ!!」
ちびきつねさま
「うん……、みんなは優しいねぇ」
シロ
「巣にかえれたらうれしくないのか?」
ゆり
「つまり、照れくさいってわけね。可愛いとこあるじゃない」
にや、と笑うゆり
高瀬川の和樹
「あー、そうだよ、その通りだ。くそ」わしゃわしゃと髪をかき回す。
ゆり
「うふふふ、いいじゃないの、たまの親子水いらず、お酒でも持っていって楽しんでいらっしゃいな」
高瀬川の和樹
「いやまぁ、懐かしいのは懐かしいがよ。思ってもなかったタイミングっつかなんつうか……」
シャーリー
「ほほえましいですね……」
にっこりこりあんだー……。
ゆり
「さて、じゃぁ作戦も決まったところで―――」
立ち上がり
「お風呂よ!」
シロ
「ふろ!!」
シャーリー
お風呂ー!
「……」今何時だっけって思う顔。
シロ
「……」
疑わしげに周囲の水を見回す。
「ここで?」
ゆり
「いいからいいから。ここはお風呂もとびきりよ」
高瀬川の和樹
「ゆり、お前本当に風呂が好きだなぁ。ま、俺も風呂は好きだが」
ゆり
「そりゃぁそうよ。レディですもの」

シロ
牛車もやっぱり洗ったのかなぁ
そら洗うよな……
シャーリー
はー、すごい。お風呂付の船もあるんだ。
語り手
などと盛り上がりながら、海に浮かんだ船の中のお風呂を堪能し―――
ゲームセンターでクレーンゲームなどを楽しんで―――
シャーリー
「……あ、ビートの達人……」
語り手
晩御飯を―――
ちびきつねさま
「ねぇ、ゆり」
ご飯を食べているところで、ちびぎつねさまが呟きました
「……まだ着かないのかい。もう夜になってしまったよ」
ゆり
「まだもう少し、かかるわよ」
あっけらかん、とゆりは答えました
シロ
「とーいんだな、ホカイドーて」
ゆり
「フェリーだからね。19時間はかかるのよ」
高瀬川の和樹
「まぁ遠いわな。飛行機ならもうちっと早いんだが、んな金はねぇし」
シロ
「ふーん?」
よくわかってない顔
シロ
てかむしろフェリーの方が高くない?
ゆり
飛行機の釧路便よりは安いぞ
シロ
電車代合わせると……って今回は車旅だったな。
語り手
それから、しっかりデザートまでいただいた頃
『ご乗船のお客様へご案内いたします―――』
船の中に、男の人の声が響きました
風馬
「なんだ?」
上を見上げつつ
ゆり
「おっと。いよいよ、到着ね」
シャーリー
ついたー!
シロ
「ついたのか」
高瀬川の和樹
「おお、そろそろか。降りる準備せにゃな」
シャーリー
「えっと……荷物……」
「忘れ物……してないですか……ね?」
風馬
「和樹、ここにもバイクがたくさんいる」@駐車場
シロ
あ、戻っておかなきゃ。
高瀬川の和樹
「ああ、北海道ってのは広いんだ。バイクで走りてぇ奴も多いのさ」
シロ
「はしりたいとこなのか!!」
高瀬川の和樹
「おう。シロも長っげえ道があったら走るだろ」
シロ
「はしる!!」
シャーリー
地平線が見えるもんな……。
語り手
残念ながら、バイクはいません
何故なら―――
『釧路港の天気は、雪。少々、風も強く吹いております。降雪もございますので、タイヤチェーンなどの装備を今一度お確かめください』
そんなアナウンスが流れてきました
シロ
冬なの
シャーリー
冬かぁ。
語り手
今は1月なので……
高瀬川の和樹
「ありゃ、雪だとよ。それもそうか。下手に走ったら埋もれるぜ」一月だったのか
シロ
なんの、シロは喜び庭駆け回っちゃうぞ。
語り手
シロが行方不明になりそう
雪原のシロ
風馬
むしろスノーモービル出さなきゃ
シロ
そしてコタツで丸くなってミカンを食うのだ。
シャーリー
みかん食べたい
ゆり
「道理で冷えるはずだわ……っていうか、外気の入る駐車エリアだと、むしろ痛いくらいね」
「アンタたち、早く乗りなさい。ここで話してるよりいくらかマシだわ」
風馬
「わかった」
シロ
後部座席の足下のとこに丸くなる。
「なんかさむい」
シャーリー
小鳥にもどってシロちゃんの上でぬくぬくします。
ぬく……。
ぬくぬく……。
風馬
ところでこの車スタッドレス履いてるの?
シロ
ゆりさんなら自在なのかと
風馬
なんならキャタピラにもできそう
シャーリー
わぁ
ゆり
お望みなら。
シロ
爪出したり引っ込めたりするノリでスタッドレス付けたり外したりする車
風馬
そんなこと言われると多脚まで欲張りたくなっちゃう
高瀬川の和樹
タチ〇マの運転免許は無いからやめていただきたい
シロ
免許要るのかなあれ

高瀬川の和樹
「おお、寒。っつかゆり、タイヤどうすんだ」
ゆり
「大丈夫よ。今スタッドレスに変えたから」
高瀬川の和樹
「流石。こういう時ぁ便利なもんだな」
シャーリー
「……便利ですね……」
ゆり
ふふん、と誇らしげに、ゆり
語り手
そして、待つことしばし
高瀬川の和樹
「問題があるとすりゃ、こっちの雪道なんぞまともに走ったことねえんだよなあ」
シロ
「ユキミチ?」
ああでも、住んでたとこ雪くらいは降るのかな。
語り手
船に載ってきた時と同じように、案内のおじさんに順番に案内されて、車たちは順番に船を降りて行きます
外の世界は、真っ白でした
※ホワイトアウト気味な雪国の画像
シャーリー
すっごい雪だー
シロ
釧路でこれは相当大雪だー
シャーリー
大変そうだけどたまに行くには楽しそうだな……。
風馬
こんなんで運転した友人は無事スピン
※釧路は比較的雪は降らない地方なのだ。あくまで比較的。

風馬
「真っ白だ」
シロ
「しろいぞ!」
あっという間に曇る窓硝子に顔くっつけてる。
高瀬川の和樹
文明生活始めたり車運転しはじめたのは生まれた川を出てからだろうから、こっちで運転したことなさそう
シロ
「しろーーーー!」
高瀬川の和樹
「っぶわ、ひでえもんだ。随分降ってねえか? ゆりよう、ちと慎重に行くぞ。事故りたかねぇだろ」
シロ
「これユキ? おおいぞ!」
ゆり
「ええ。車重があるから、そんなに簡単には滑らないけれど、その代わり滑り出したら止まらないからね。気をつけて」
シャーリー
「……」
風馬
「水ばっかりかと思ったら、今度は雪ばっかりだな」
ちびきつねさま
「ホッカイドはすごい雪国なのだねぇ」
シャーリー
そっとシロちゃんのふわふわボディに身をぐい、と寄せる。
「ふわふわ……」
シロ
ふわふわボディはちょっとヒンヤリしてる。
シャーリー
ひんやりしてるぅ……。
シロ
大丈夫本体は暖かいよ!!
高瀬川の和樹
「こりゃちと多いんじゃねえかと思うが、まあ雪国は雪国だわな」
シロ
「まえみえないぞ」
「まよいそうだなーーー」
風馬
「道はあるぞ」
高瀬川の和樹
「放っとくと埋もれるがね」
風馬
「埋まるのか……」
シロ
「うもれたらみちじゃなくなるなー」
高瀬川の和樹
「そりゃ、冬になったらこれがそれなりに続くんだ。除けにゃ埋もれる」
シャーリー
道あるけどないのとほぼ同じでは?
シロ
除雪車が寄せた雪山が歩行者信号に立ち塞がんのよねー
シャーリー
北海道 すごいなぁ
シロ
小学生は埋まるわ滑るわでアブナイ
ご年配は? 歩いて外なんかでない。

ゆり
「でも、釧路ってあまり積もらない、って聞いたんだけど……。こんなものなのかしらね」
シロ
……ドコ見ても白いからちょっと飽きた。
高瀬川の和樹
「ここまで多かった覚えはねえんだがなぁ。ああ、でもたまの大雪はあったぜ」
「丁度ぶち当たっちまったんだとすれば、運が悪ぃんだかいいんだか」
語り手
そんな雪みちを走ることしばし
キャンピングカーは、一つの川を渡りました
それは、海が近いこともあってか、幅も広く立派な川に見えました
風馬
「川だけ黒いんだな」
語り手
川岸のところには、何羽かの大きな白い鳥が、長い足で立ち、時折羽繕いをしているのが見えます
その頭のてっぺんには、目を引く鮮やかな赤い丸が
風馬
「シャーリー、とりがいる」
シロ
「とりだ」
「でかーーーーー」
シャーリー
話せるかな?
語り手
外は吹雪ですが、出ますか?
シャーリー
「ほんとですね……」
出てみましょうか。
同族を見ると話したくなるのが人間の性というもの。
高瀬川の和樹
「あっおい窓開けるな、雪が入る」
シャーリー
「……はい」Uターンします!!!
ゆり
「そうよ、アンタ渡鳥でしょう?凍えちゃうわよ」
シロ
しあわせのおうじという恐ろしいお話がね……
ゆり
悲しい話だったね
シャーリー
かなしいね……。
シロ
3月くらいなら、さすがに町中に丹頂は居ないけど白鳥ならごく希に来るよ。
風馬
はえー
高瀬川の和樹
ほあー
シロ
狐&タヌキはキタキツネとエゾタヌキだったのかぁ

語り手
そんな光景を横目に橋を渡り切る頃
道路の脇には看板
白地に
『鹿角町』
という青い文字が書かれていました
高瀬川の和樹
「お」
ゆり
「入ったわね」
シロ
「お?」
こちらは二人の反応に。
風馬
「ついたのか?」
ゆり
「目的地までは、もう少しあるわね」
シャーリー
「ほわ……」
シロ
「うみくさい!」
高瀬川の和樹
「鹿角町に入ったんだ」言いながら、昔の記憶をたどる。
語り手
今渡った川が鹿児川ならば、これに沿って北上すると良いでしょう
左に折れ、川沿いの道に。
高瀬川の和樹
「そうかそうか、あの川がなァ、そうだったか……」噛みしめるように。
語り手
それから暫く走ってから
ゆり
「……ねぇ」
高瀬川の和樹
「あん?」
ゆり
「少し、静かすぎない?」
高瀬川の和樹
「……あ?」
「雪のせいかと思ってたが……、」
速度を下げて耳をそばだてる。
語り手
橋が渡っていた大きな通りでは、行き交う車もあったのですが、鹿角に入ってからは、一台の車ともすれ違いません
ゆり
「雪のせいかしらね……」
風馬
「とりしかいないな」
語り手
車の外からは、雪をタイヤが踏み分ける連続した音が響いてきます
ゆり
「これだけの大雪だと、そんなに人も出歩かないのかしらね」
シロ
「そうかなー」
「ヒトはこんなユキの中よろこんであるかないんだろ?」
ゆり
「まぁ……それはそうだけれどね」
高瀬川の和樹
「酷ぇ雪だからなあ。だが、トラックの一台もいねぇってのは変だな……?」
シロ
「みーんなこおっちゃってたりして」
ゆり
「やめてよ、冬の怪談なんて、ミスマッチもいいとこよ」
高瀬川の和樹
「おいおい、怖ぇこと言うなよ。俺の故郷だぞ」
シャーリー
「……くしゅっ」
ゆり
「なんだか、薄寒いわ。ラジオでもつけましょ」
言って、ゆりはラジオのボタンに手を伸ばしました
語り手
やがて、ラジオからは音楽が流れ始めました
尚も、人気のない道を走るキャンピングカー
さらに走っておりますと
不意に、白い景色の中から、鮮やかな紫の色彩が現れ、横を通り過ぎてゆきました
シロ
「にゃ!?」
ゆり
「……あら?」
高瀬川の和樹
「っつか、こんなに雪が酷ぇなら、除雪車の一台や……うぉ!?」
風馬
「何だ今の」
ゆり
助手席のミラーを覗き込むゆり
「……なんだ、傘よ。人、いたわね」
心なしか、ほっとしたように笑います
高瀬川の和樹
「は? こんな雪ん中に徒歩でか?」
ゆり
「こんな土地だもの。慣れているんじゃないの?」
シロ
「ユキオンナだったりして!」
あれごく最近会ったぞ。
シャーリー
エアコン女……!?
高瀬川の和樹
「いや、つってもなあ……」
語り手
そんなことを話しながら、進んでゆくキャンピングカー
その走り抜けた後ろのところで、鮮やかな傘はふと立ち止まっておりました
風馬
「……」なんとなくみてよう
シロ
なんか色彩が気になるから見てるー
語り手
そうと知らずに走ってゆくキャンピングカーを、眺めるその傘の主は
窓の向こう、白い景色の向こう
紫の色彩の下、ゆりが着るような着物も銀の色のその女性は、こちらを見ているように思えました
高瀬川の和樹
引っかかるものを覚えるが、運転が大変でそれどころじゃない。
語り手
女性は、走っていった車には聞こえぬ声で、小さくうふふ、と傘の下で微笑みました
「あらあら。珍しいですわね―――外からのお客様だなんて」
白い景色の中で、薄桃色の唇が笑みを浮かべていました
~~第2話~~
かすみ
始まります
シャーリー
誰だ……?
高瀬川の和樹
あらあら誰だろう
シロ
だれかなぁー
ココは既にドミニオンなのかッ

語り手
今日はこれまで!
シロ
はーい
風馬
おつかれさまでした!
シャーリー
おつどみにおんでした!
高瀬川の和樹
おつかれさまでみにおん!

ゆうやけこやけ

第一~二話『龍の眠る滝』『ともだち』
第三話『ふしぎなともだち』
第四~六話『ふたりのかげ』『たそがれのまど』『とびらをひらいて』
第七話 『さくら咲く頃』
第八話 『ふたりの娘』
第九話『みあげればそこに』
第十話『旅するゆうこや』 1 2 3 4 5 6
番外 こどもとTRPG 準備 『まいご』 『たからもの』 『化けニャン』

これは『インコグ・ラボ』が権利を有する『ふしぎもののけRPGゆうやけこやけ』の二次創作物です。