
『波間のダージュ』
のネタバレがあります。
クトゥルフ神話TRPG 目次
波間のダージュ 一覧
本編見る!
KP
糸が上がったら次は涸れ井戸だ。
マキシ

「最初はこれ、苦労したよな。手が真っ赤になっちゃってさ」
車椅子を押して涸れ井戸まで向かいながら、サクラとそんな話をする。
車椅子を押して涸れ井戸まで向かいながら、サクラとそんな話をする。
▶涸れ井戸で糸を洗う
KP
涸れ井戸から流れ出る魔力の量が少なくなっているような気がした。
★10:【涸れ井戸の異変】を入手
★10:【涸れ井戸の異変】を入手
KP
コウのみ魔力減少に気付かない&くみ上げ失敗か。
必死すぎて気付かなかったかな。
サクラの分もくんでくれて疲れたのかも知れない。
必死すぎて気付かなかったかな。
サクラの分もくんでくれて疲れたのかも知れない。
コウ
なるほど、かも。
クウ

「うおおおおお!」
マキシ

「うおおおおおお!!」
ちょうど横でクウが張り切って煙を汲んでいる。
それに乗って手押しポンプを動かすと、みるみるうちに煙が満ちて……
ちょうど横でクウが張り切って煙を汲んでいる。
それに乗って手押しポンプを動かすと、みるみるうちに煙が満ちて……
マキシ

「あれ?」
あんまり出てこない。
あんまり出てこない。
マキシ

「あれ??」
何度も繰り返しても、やっぱりあんまり出てこない。
何度も繰り返しても、やっぱりあんまり出てこない。
カイ

「今日、出が少ないよね」
マキシ

「だよな」
クウ

「だなー、壊れたのかな?」
クウが高速で跳ねながら何度も汲み上げを繰り返している。
クウが高速で跳ねながら何度も汲み上げを繰り返している。
マキシ

「うわっ、そんなにやるとほんとに壊れる」
ミユキ

「うーん。まあでも今日はなんとかなりそう? 明日からでなくなっちゃったりしたら困るね」
シノノメ

「後でダージュに相談しましょ」
クウ

「だなー」
サクラ

「…………」
コウ

「ん?」
サクラの分の汲み上げを手伝っていたコウは汗でびっしょりだ。
少ししてから、ようやく周囲のざわめきに気づく。
サクラの分の汲み上げを手伝っていたコウは汗でびっしょりだ。
少ししてから、ようやく周囲のざわめきに気づく。
サクラ

「あ、サンキュ、悪いな、俺の分までやらせちゃって。
代わりにコウの分は俺が洗うからさ」
代わりにコウの分は俺が洗うからさ」
KP
コウの分の糸を引き取って、膝に乗せたたらいの上で押し込むようにして洗う。
コウ

「いや、いいよ。じゃあ頼む」
KP
煙は出は悪かったが何とか足りたので、仕事に支障はないだろう。
最後は茨の壁に糸を干して、干し上がっている分を回収したら今日の仕事は終わりだ。
最後は茨の壁に糸を干して、干し上がっている分を回収したら今日の仕事は終わりだ。
▶茨の壁に糸を干す
マキシ

「みんな、ようやく調子が出てきたって感じだな」
きれいに干せた糸が風に揺れるのを見て笑む。
きれいに干せた糸が風に揺れるのを見て笑む。
クウ

「今日の分終わっちゃったけどな!」
ミユキ

「実力実力ー!」
サクラ

「久しぶりにしちゃあうまくいったな」
KP
言って振る手の指先から白化した欠片がぱらりと散った。
マキシ

茨の壁に揺れる糸は、さらさらと鳴ってきれいだった。
同じ時間にサクラがいる。みんながいる。
どうしてかちょっと涙が出そうになって、目をまたたいた。
同じ時間にサクラがいる。みんながいる。
どうしてかちょっと涙が出そうになって、目をまたたいた。
サクラ

「さてと、神殿へ成果をお届けだ。
俺の分はないけど礼拝はしたいし、あと少し、頼むよ」
俺の分はないけど礼拝はしたいし、あと少し、頼むよ」
KP
さすがに屋外で自力で車椅子を動かすのは結構大変だ。
マキシ

「うん」
車椅子に手をかけ、押していく。
車椅子に手をかけ、押していく。
クウ

「俺も押すー」
KP
パセリとタイムがサクラの膝に飛び乗って「きゅきゅー!」と鳴き声を上げる。
サクラ

「おい、重いって」
KP
言いながらもサクラは二匹を追い払うことはしない。
すっかり蜘蛛たちの乗り物と化した車椅子を押して、あなた方は神殿へと向かう。
すっかり蜘蛛たちの乗り物と化した車椅子を押して、あなた方は神殿へと向かう。
レン

「あれ、なんか神殿の方賑やか、っていうか、蜘蛛多いね」
KP
神殿の周りは遠目に見ても様子が違っていた。
何やら木々に装飾が施されているのだ。
華やかな模様の布や、リボン、蜘蛛のようなモチーフの掘り込まれたレリーフなど。
この変化のない世界で、このようなことは初めてだった。
何やら木々に装飾が施されているのだ。
華やかな模様の布や、リボン、蜘蛛のようなモチーフの掘り込まれたレリーフなど。
この変化のない世界で、このようなことは初めてだった。
シノノメ

「まあ、綺麗!」
マキシ

「あれっ、ほんとだ。
何だろ、まるで……、お祝いの日みたい?」
何だろ、まるで……、お祝いの日みたい?」
クウ

「ほんとだ! 何かあんのかな?」
カイ

「ほんとだね。何かいいことでもあったのかな」
コウ

「楽しそうだな。何があるんだろう」
レン

「今日は色々あるなぁ~」
ミユキ

「何かの記念日かな!」
サクラ

「……そうかもな……」
マキシ

「……、いいこと」
口々に言い合うみんなの横顔を見ながら、無意識にローズマリーの小さな背中を撫でた。
口々に言い合うみんなの横顔を見ながら、無意識にローズマリーの小さな背中を撫でた。
マキシ

冷たくて、仕事のことしか見てくれない、灰色の織り手たち。
もしもあれが、あいつらのためのものだとしたら……。
彼らの“いいこと”って。
もしもあれが、あいつらのためのものだとしたら……。
彼らの“いいこと”って。
KP
あなた方だけではなく、紡ぎ手たちはみな歓声を上げたりぽかんと口を開けて驚いたり、
この世界に訪れた変化にそれぞれの反応を示した。
この世界に訪れた変化にそれぞれの反応を示した。
KP
それでもやることはいつもと同じ。
ダージュは神殿の前で待っており、訪れる紡ぎ手たちから糸を受け取っていた。
ダージュは神殿の前で待っており、訪れる紡ぎ手たちから糸を受け取っていた。
クウ

「ダージュ! 今日何かあんの?」
真っ先にクウがダージュに駆け寄り、糸を渡す。
真っ先にクウがダージュに駆け寄り、糸を渡す。
カイ

「お祝いの日?
そんなのあるんだね。初めて見た」
そんなのあるんだね。初めて見た」
KP
『ええ。皆の努力の甲斐あって神殿の巣は完成間近。
もうすぐ“アトラック= ナチャ”様がおいでになるのですよ』
ダージュの言葉にはその文言以上の意味が込められている。
密談をしたあなた方にだけはそれが分かるだろう。
何をもってして完成なのか、あなたにとってはさっぱり分からないが、
神殿奥の巣は幾重にもベールのように重なり、薄明かりの中でつやつやと輝いている。
あれを架け橋にして、レンの蜘蛛たちの親にして、灰色の織り手らの統領たる蜘蛛神“アトラック= ナチャ”が到来するのだ。
遠い未来の話だと思っていたことが、もうすぐ現実になる。その実感が、背筋に冷たい物を伝わせた。
もうすぐ“アトラック= ナチャ”様がおいでになるのですよ』
ダージュの言葉にはその文言以上の意味が込められている。
密談をしたあなた方にだけはそれが分かるだろう。
何をもってして完成なのか、あなたにとってはさっぱり分からないが、
神殿奥の巣は幾重にもベールのように重なり、薄明かりの中でつやつやと輝いている。
あれを架け橋にして、レンの蜘蛛たちの親にして、灰色の織り手らの統領たる蜘蛛神“アトラック= ナチャ”が到来するのだ。
遠い未来の話だと思っていたことが、もうすぐ現実になる。その実感が、背筋に冷たい物を伝わせた。
KP
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
また、〈目星〉〈心理学〉。サクラの様子が読み取れる。
また、〈目星〉〈心理学〉。サクラの様子が読み取れる。
判定
マキシ

1d100 38 マキシ《SANチェック》 Sasa 1d100→ 81→失敗
マキシ

SAN 38 → 37
1d100 51 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 9→成功
1d100 51 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 9→成功
コウ

1d100 67 コウ《SANチェック》 Sasa 1d100→ 77→失敗
SAN 67 → 66
SAN 67 → 66
マキシ

1d100 77 マキシの〈心理学〉 Sasa 1d100→ 81→失敗
カイ

1d100 70 カイの〈目星〉 Sasa 1d100→ 93→失敗
コウ

1d100 76 コウの〈目星〉 Sasa 1d100→ 91→失敗
マキシ
なんてこった。マキシ〈目星〉で振ればよかったなぁ。
シノノメさん頼むぜ。
シノノメさん頼むぜ。
KP
シノノメさんどっちもそんなに高くないよ~
シノノメ

1d100 74 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 71→成功
1d100 55〈目星〉! Sasa 1d100→ 41→成功
1d100 55〈目星〉! Sasa 1d100→ 41→成功
マキシ
ナイス!
KP
危ない危ない! 今日は本当にみんな調子が悪いな。
マキシ
ほんとにな!
せっかくだから〈心理学〉でと思ったら、まさか全員失敗するとは。シノノメさんがいてくれてよかった。
マキシは〈目星〉なら成功してた値だけにくやしい。
せっかくだから〈心理学〉でと思ったら、まさか全員失敗するとは。シノノメさんがいてくれてよかった。
マキシは〈目星〉なら成功してた値だけにくやしい。
シノノメ

「…………」
クウ

「えっ」
カイ

「えっ……」
マキシ

「……!」
きっとそのときサクラの顔を見る余裕がなかったのは、震える肩を、強張る顔を、恐らく怒りと恐怖の浮かんだまぶたを、押し殺すのに精一杯だったんだ。
きっとそのときサクラの顔を見る余裕がなかったのは、震える肩を、強張る顔を、恐らく怒りと恐怖の浮かんだまぶたを、押し殺すのに精一杯だったんだ。
KP
コウはシノノメがサクラを気にしているのに気付くだろう。
とはいえ礼拝中に言葉を発することはできない。
話すなら終わってからになるだろう。
とはいえ礼拝中に言葉を発することはできない。
話すなら終わってからになるだろう。
コウ

何かに気づいたのか、と、僅かにシノノメさんに注意を向けた。
クウ

「てことは、もうすぐ仕事終わんだな」
笑おうとしたクウの表情がぎこちない。
笑おうとしたクウの表情がぎこちない。
レン

「仕事終わったら……」
俺たちはどうなるんだろう。
密談の前には考えもしなかった未来が、じわりと嫌な予感となって忍び寄った。
俺たちはどうなるんだろう。
密談の前には考えもしなかった未来が、じわりと嫌な予感となって忍び寄った。
KP
礼拝自体はいつも通りだった。
ダージュが祈りの言葉を念じ、紡ぎ手も織り手も心を一つに神の到来を祈り願う。
今にも完成しようとしている神の巣の中、心を神から背けようとしている者達がいることを知っているのは、あなた方だけだ。
ダージュが祈りの言葉を念じ、紡ぎ手も織り手も心を一つに神の到来を祈り願う。
今にも完成しようとしている神の巣の中、心を神から背けようとしている者達がいることを知っているのは、あなた方だけだ。
KP
祈りの時間は終わり、紡ぎ手たちはやっと得た自由を満喫すべく神殿から駆けだしてゆこうとした。
それをダージュが呼び止める。
『今日は皆さんにお知らせがあります。
皆さんがご存じの通り、アトラック=ナチャ様を迎えるための架け橋は、完成しようとしています。
来る2週間後、かの神を迎える祭りを行います。その日、我々の悲願はついに叶うでしょう』
それをダージュが呼び止める。
『今日は皆さんにお知らせがあります。
皆さんがご存じの通り、アトラック=ナチャ様を迎えるための架け橋は、完成しようとしています。
来る2週間後、かの神を迎える祭りを行います。その日、我々の悲願はついに叶うでしょう』
KP
紡ぎ手たちは歓声を上げた。やっと全てが実るのだ。
KP
『今まで本当にお疲れ様でした。
そして祭りの日まで、どうか気を抜かず仕事に励んでください』
そして祭りの日まで、どうか気を抜かず仕事に励んでください』
KP
紡ぎ手たちは口々に元気な返事をして外へと飛び出していった。自由時間だ!
KP
サクラも嬉しそうな声を上げた。
サクラ

「行こうぜ、マキシ、みんな!」
KP
背後で灰色の織り手たちが囁きあっているのが意識のすみに引っかかってガサガサと音を立てた。
それは不快な響きで、明らかに役立たずのサクラに対する侮蔑、中傷だろうと思われた。
それは不快な響きで、明らかに役立たずのサクラに対する侮蔑、中傷だろうと思われた。
マキシ

「うん、行こう」
サクラの手を取る。笑う。
意識の隅で囁きあう声とサクラの間に、いつものようにただ割り込もうとした。
あいつらがいる所で、おれたちだけ違うって気づかれるわけに……、いかないよな。
笑みが強張ってなかった自信はない。
サクラの手を取る。笑う。
意識の隅で囁きあう声とサクラの間に、いつものようにただ割り込もうとした。
あいつらがいる所で、おれたちだけ違うって気づかれるわけに……、いかないよな。
笑みが強張ってなかった自信はない。
コウ

「行こうか」
シノノメさんの手を取る。その手には少し、いままでとは別種の緊張が滲んでいる。
シノノメさんの手を取る。その手には少し、いままでとは別種の緊張が滲んでいる。
クウ

「行こうぜ! なあなにする? サクラいるしキャッチボールにする?」
いつものように上げる声も、どこか上滑りする。
いつものように上げる声も、どこか上滑りする。
カイ

「そっか。煙が出てこないの、もうおしまいだったからなんだね」
カイの声も少し強張っている。
カイの声も少し強張っている。
マキシ
この無邪気に喜ぶ子供達も、どこからか連れてこられた探索者なんだなぁと思うととても不気味なシーンですね
KP
実は中身大人である可能性高いですからねぇ
マキシ
そうそう。そこが更に不気味。
KP
ここが最後の茶番タイムになります。
マキシ
不穏な茶番だなぁ。はーい。
KP
好きなように遊んで構いませんし、スキップしても大丈夫です。
ちなみにシナリオ上にも遊ぶネタはいくつかあります。
ちなみにシナリオ上にも遊ぶネタはいくつかあります。
マキシ
遊びにくい精神状態だけど、せっかくだから好きなように遊びつつ色々話そう。
KP
神殿から充分離れた時、シノノメがぽつりと呟いた。
シノノメ

「サクラさん……さっき、何を見ていたの」
サクラ

「……巣を見ていた」
シノノメ

「とても怖い顔してたわ」
サクラ

「嘘だろ。俺怖くて震えてたんだよ」
KP
★11:【サクラの決意】を入手
マキシ

その会話を……、傍らで聞いている。
マキシ

「そっか……、気づかなかった。
なあ、サクラ。あともうちょっとだな。あともうちょっと、なんだよな。きっと」
サクラの手を取ろうとする。
なあ、サクラ。あともうちょっとだな。あともうちょっと、なんだよな。きっと」
サクラの手を取ろうとする。
サクラ

「ああ。あと少しで終わる」
サクラ

「何が終わるかは俺たち次第だけどな。少なくとも……」
KP
何かを言いかけて、サクラは首を振った。
サクラ

「折角の自由時間だ、楽しくやろうぜ。なー、タイム」
KP
タイムは「きゅ~」と鳴いた。ほんの少しその声が沈んでいた気がした。
サクラ

「大丈夫だよ、相棒。うまくいくって」
KP
サクラはぱし、と音を立ててマキシの手を掴んだ。
マキシ

掴んだ手を、少し戸惑って見つめた。それでも、その手を離すことはない。
マキシ

「相棒……、か……」
マキシ

「そっか……」
その手が少し震えた。何かが、かたかたと震えている気がした。
それはきっとまだ開けちゃいけない蓋で、でも、ずっとおれはサクラの隣に立ちたかったんだって、その一言で気づく。
その手が少し震えた。何かが、かたかたと震えている気がした。
それはきっとまだ開けちゃいけない蓋で、でも、ずっとおれはサクラの隣に立ちたかったんだって、その一言で気づく。
マキシ

「そうだな。きっと……、うまくいく」
ぎゅっと、強くサクラの手を握った。
ぎゅっと、強くサクラの手を握った。
相棒
KP
神殿に入る前には「相棒」っていうのやめといたんだよな……
マキシ
「相棒」だー!!
この世界のマキシはまだあまりにも無力で、知らないことが多すぎて、到底「相棒」とは言えない関係性だけど、それでも「相棒」だと初めて呼んでくれるんだなぁ。
この世界のマキシはまだあまりにも無力で、知らないことが多すぎて、到底「相棒」とは言えない関係性だけど、それでも「相棒」だと初めて呼んでくれるんだなぁ。
KP
それも大きなワードだから口にしないようにしてた、というのもあります。
マキシ
ですよね。絶対に記憶に引っかかるもんな。
ここまで遠い関係性のマキシの呼び方が「サクラ」で、本来の牧志は「佐倉さん」なの、今後のシーンが面白くなりそう。
ここまで遠い関係性のマキシの呼び方が「サクラ」で、本来の牧志は「佐倉さん」なの、今後のシーンが面白くなりそう。
KP
距離が近くなると敬称がつく……
マキシ
そう……。
クウ

「おーい、キャッチボールしようぜー」
少し向こうからクウが誘っている。乗ってもよいし乗らなくてもよい。
少し向こうからクウが誘っている。乗ってもよいし乗らなくてもよい。
サクラ

「やるやるー」
レン

「おれもー」
サクラ

「この車椅子スポーツに向いてねーんだよなぁ」
クウ

「おっ、やった!
じゃあ全員その場を動かないルールな! 上半身動かすのとフェイントはアリ! ジャンプは禁止!」
じゃあ全員その場を動かないルールな! 上半身動かすのとフェイントはアリ! ジャンプは禁止!」
レン

「おっ、望むところっ!」
KP
「きゅ!!!」
マキシ

「おっ、タイムたちも一緒にやるか?」
KP
「きゅっきゅー!」
ミユキ

「うみちゃーん、昨日教えてもらったステップ踏めるようになったよー」
カイ

「おっ、もう覚えたの? すごいじゃん。踊ろう踊ろう」
シノノメ

「コウさんも踊りましょ!」
コウ

「う、うん。一緒に踊ろう」
ちょっと照れくさそうに踊りの輪に入る。
ちょっと照れくさそうに踊りの輪に入る。
ミユキ

「……あ、おべんと持ってこなきゃね。ちょっと行ってくるよ。
うみちゃんも行こうよ!」
うみちゃんも行こうよ!」
カイ

「おっ、もうお昼だもんね。あいつらの分も持ってこようか」
キャッチボールを始めるマキシたちを見ながら言う。
キャッチボールを始めるマキシたちを見ながら言う。
ミユキ

「うんうん! 先につくのどっちが早いか勝負ー!」
KP
言うなりかけだしてゆく。
カイ

「おっ、足なら負けないよ!」
ミユキとともに駆け出していく。
ミユキとともに駆け出していく。
サクラ

キャッチは子蜘蛛に任せて投擲だけ行う。
マキシ

「食らえー!」
子蜘蛛&サクラがチームを組むのを見ながら、レンにフェイントをかけてボールを投擲だ。
子蜘蛛&サクラがチームを組むのを見ながら、レンにフェイントをかけてボールを投擲だ。
レン

「おっ、おぉぉぉ足使えないのつらい!」
KP
短い手を伸ばしてボールをキャッチしようと試みた。
レン

「よいしょっ!」
KP
とりきれなかったのでクウの方へ弾く。
クウ

「任せろ!」
こぼれてくるボールを伸び上がって素早くキャッチし、サクラに向かって投げる。
真っ直ぐだがパワフルな球だ。
こぼれてくるボールを伸び上がって素早くキャッチし、サクラに向かって投げる。
真っ直ぐだがパワフルな球だ。
サクラ

「タイムっ!」
KP
「きゅゅ!」
子蜘蛛はサクラの声と同時に糸を噴き出した。ボールをタイミングでくっつけ引き寄せる。
間髪入れずにサクラがマキシにスロー!
子蜘蛛はサクラの声と同時に糸を噴き出した。ボールをタイミングでくっつけ引き寄せる。
間髪入れずにサクラがマキシにスロー!
マキシ

「おっ、タイムもやるな!」
大きく身をひねり、今度は変則的な軌道でレンにボールを投げる。
大きく身をひねり、今度は変則的な軌道でレンにボールを投げる。
レン

「うわっ、とっ、とっ、とっ」
後ろにヨタヨタと倒れ込みそうになりながらキャッチ。
後ろにヨタヨタと倒れ込みそうになりながらキャッチ。
レン

「足使わないの難しいよー」
クウ

「だろ? 面白いルールだろ」
にっと笑う。
にっと笑う。
ミユキ

「とうちゃくー! おべんとゲット! いくついるんだっけ?」
カイ

「ミユキ速っ! 頑張ったのになぁ」
息を切らせてすぐ後に到着。
息を切らせてすぐ後に到着。
カイ

「えっと、マキシとサクラ、クウとレンでしょ。それからコウのぶんとシノノメのぶん、それからあたし達の分ふたつ。あとタイムたちの分もかな?」
タイムたちはお弁当食べるんだっけ?
タイムたちはお弁当食べるんだっけ?
KP
タイムたちはもらえば食べる、という程度。
食事をしているというよりは好意を食べている感じだ。
食事をしているというよりは好意を食べている感じだ。
ミユキ

「ねえうみちゃん、本当に終わりってくるのかなぁ」
カイ

「来る……、んじゃないかなぁ。ダージュ、冗談以外でそんなに嘘つかないし。
実感、ないけどさ。ほら、井戸から煙が出なくなったじゃない。
あれって、もうおしまいだってことなんじゃないの」
子供たちが遊びに行ってがらんとした食堂の中で、お弁当を数えながらぽつぽつと言う。
実感、ないけどさ。ほら、井戸から煙が出なくなったじゃない。
あれって、もうおしまいだってことなんじゃないの」
子供たちが遊びに行ってがらんとした食堂の中で、お弁当を数えながらぽつぽつと言う。
ミユキ

「終わったら、神様が来たら、どうなるのかな。
私たち帰れるのかな。
帰ったらみんなと別れちゃうんだったらちょっと、やだな」
私たち帰れるのかな。
帰ったらみんなと別れちゃうんだったらちょっと、やだな」
カイ

「どう……、なんだろうね。
あたし、考えないようにしてたな。
神様が来たら、仕事が終わったら、どうなるんだろ。
帰ったらみんなと別れちゃうんだったら、帰りたくなくなっちゃうからさ。
そっか……、もうすぐなんだ。
死んじゃう以外でお別れになることがあるなんて、思ってなかったな」
がらんとした食堂を見渡す。
グレースが貼ってくれたレシピは、まだ壁に残ったままだ。
マルタが飾った手作りの造花だって、テーブルの上にある。
あたし、考えないようにしてたな。
神様が来たら、仕事が終わったら、どうなるんだろ。
帰ったらみんなと別れちゃうんだったら、帰りたくなくなっちゃうからさ。
そっか……、もうすぐなんだ。
死んじゃう以外でお別れになることがあるなんて、思ってなかったな」
がらんとした食堂を見渡す。
グレースが貼ってくれたレシピは、まだ壁に残ったままだ。
マルタが飾った手作りの造花だって、テーブルの上にある。
ミユキ

「仕事が終わったら何をするつもりなのか、サクラもダージュも教えてくれればいいのに。
そうしたらきっとこんな気持ちにならないのに。
二人ともけちんぼだ」
そうしたらきっとこんな気持ちにならないのに。
二人ともけちんぼだ」
カイ

「まあまあ。……わけがあるんだよ、きっと。
教えてくれたらいいのになって、あたしも思うけどさ」
教えてくれたらいいのになって、あたしも思うけどさ」
カイ

「ねえ……、ミユキ。
約束しようよ、気休めだけど。
帰っても、ミユキのこと、みんなのこと、忘れない。
忘れないし、いつかきっとまた会うんだ」
ミユキに手を差し出す。
約束しようよ、気休めだけど。
帰っても、ミユキのこと、みんなのこと、忘れない。
忘れないし、いつかきっとまた会うんだ」
ミユキに手を差し出す。
ミユキ

「うん。忘れないようにする。いっぱい覚える。
こんなに楽しいんだもの。こんなに大好きなんだもの。忘れないよ、みんなのこと」
こんなに楽しいんだもの。こんなに大好きなんだもの。忘れないよ、みんなのこと」
ミユキ

「ゆびきりだね、うみちゃん!」
こちらも手を出す。
こちらも手を出す。
カイ

「うん。指切りしよう」
そっと指を絡ませる。
そっと指を絡ませる。
カイ

「指切りげんまん、嘘なんかつかない。絶対に、また会う」
ミユキ

「指切りげんまん、嘘なんかつかないよ、絶対にまた会える!」
KP
そっとゆびきりをして、ミユキはくすくすと笑った。
ミユキ

「どうしてうみちゃんなのかな、って思ったらさ、絶対また会えるって気がしてきた!」
カイ

「うみちゃん……、か。最初びっくりしたな、いきなり違う名前で呼んでくるんだもん。
もしかしたらその名前も、あたしたちが来た所から持ってきたのかもね。
ううん、きっとそうだよ。絶対そう。あたしたち、また会えるんだ」
もしかしたらその名前も、あたしたちが来た所から持ってきたのかもね。
ううん、きっとそうだよ。絶対そう。あたしたち、また会えるんだ」
ミユキ

「うん、きっとね!」
カイ

食堂の窓から外を眺める。揺れるヒースの花、回る風車。
ずっと見てきた、楽しくて、たまに悲しい、あたしたちの世界。
この世界が終わっても、きっとまた会うんだ。
きっと。
そう、信じてたい。
ずっと見てきた、楽しくて、たまに悲しい、あたしたちの世界。
この世界が終わっても、きっとまた会うんだ。
きっと。
そう、信じてたい。
カイ

「あ、そろそろ弁当持ってかなきゃ。みんなが腹空かしちゃう」
お弁当をバスケットに詰め込む。
お弁当をバスケットに詰め込む。
ミユキ

「そうだね、おべんと持ってこ。お腹すいちゃった」
ミユキ

「みんなで食べようよ!」
KP
お弁当を包んで持つ。
カイ

「うん!」
KP
最初はふたりとも同じ動きで踊る。
しかしコウは次第にゆったりと風のように波のように手の先をたなびかせ、足をする動きに。
シノノメはリズムを強調するようにダイナミックに足を上げ、体をしなやかに捻るような動きになってゆく。
しかしコウは次第にゆったりと風のように波のように手の先をたなびかせ、足をする動きに。
シノノメはリズムを強調するようにダイナミックに足を上げ、体をしなやかに捻るような動きになってゆく。
コウ

手を取ってともに踊りながら、しなやかに伸びる肢体に見惚れた。
リズムに身を任せ、まるで夢の中のように彼女の躍動を受け止めていると、自然と身体が動く。
リズムに身を任せ、まるで夢の中のように彼女の躍動を受け止めていると、自然と身体が動く。
シノノメ

「これはただの癖なのかなと思っていたのだけれど、何か違うものだったりするのかしらね」
コウ

すっかり意識がお留守になっていて、シノノメさんの言葉に気づくのがちょっと遅れた。
コウ

「あ……、ああ、なんだって、ごめん。
そっか、もしかしたらこれも、僕らの『いままで』に関わるかもしれないのか」
そっか、もしかしたらこれも、僕らの『いままで』に関わるかもしれないのか」
KP
踊る二人の背で青い翅が光を反射してきらきらと輝いた。
コウ

ああ、……呪いだけど、きれいだ。
きらきら光る髪と、青い翅。
きらきら光る髪と、青い翅。
シノノメ

「ずっとずっとここにいるのに、考えたこともなかった。
踊り方を知っている子、歌い方を知っている子、料理が上手な子。
みんな忘れてしまっているだけで、上手な理由があるのかもしれないのね」
踊り方を知っている子、歌い方を知っている子、料理が上手な子。
みんな忘れてしまっているだけで、上手な理由があるのかもしれないのね」
コウ

「僕も、考えたことがなかった。
そういうものだと思ってた。
そうかもしれない。きっと、そうだ。
クウが元気なのだって、カイの糸紡ぎが上手なのだって、きっと理由があるんだ」
そういうものだと思ってた。
そうかもしれない。きっと、そうだ。
クウが元気なのだって、カイの糸紡ぎが上手なのだって、きっと理由があるんだ」
シノノメ

「私はコウさんの踊り、好き」
KP
コウの手の下でくるりと回って、シノノメは内緒話をするように囁いた。
コウ

「っ」
ひそやかな囁き声が耳から顔に吹き込まれて、ぱあっと顔が真っ赤になった。
ひそやかな囁き声が耳から顔に吹き込まれて、ぱあっと顔が真っ赤になった。
コウ

「ぼ、ぼくも。ぼくも……、シノノメさんの。シノノメさんが」
うっかり何かを言いかけた、そのとき。
うっかり何かを言いかけた、そのとき。
マキシ

「ご、ごめーーーん!」
向こうでキャッチボールしていたマキシがうっかり大暴投!
すんでの所でコウがボールをキャッチ。
向こうでキャッチボールしていたマキシがうっかり大暴投!
すんでの所でコウがボールをキャッチ。
コウ

「あ、危ないな!」
マキシ

「ごめん、気をつける」
KP
ボールを投げ返したコウの背に、シノノメは呟いた。
シノノメ

「きっと理由があるのよ。
私たちだけ星が見えるのにも、私のこの気持ちにも、きっと」
私たちだけ星が見えるのにも、私のこの気持ちにも、きっと」
KP
そろそろお弁当担当戻ってくるかな。
カイ

「みんなー、お弁当持ってきたよー」
そんな頃にお弁当担当が到着。
そんな頃にお弁当担当が到着。
クウ

「やったー! 弁当だ!」
マキシ

「えっ、持ってきてくれたのか! ありがとう」
ミユキ

「今日はサンドイッチとフルーツ!
冷製スープもあるよー」
冷製スープもあるよー」
KP
みんなに配ってゆく。
クウ

「うまそう!」
マキシ

「いただきます」
小さく手を合わせて、サンドイッチを手に取る。
小さく手を合わせて、サンドイッチを手に取る。
サクラ

「外で食うのもいいもんだなー」
KP
空を見上げてサクラはしみじみと呟いた。
マキシ

「……美味しい」
サクラがしみじみと呟く姿を見て、うんうんと頷く。
サクラがしみじみと呟く姿を見て、うんうんと頷く。
KP
サクラはサンドイッチをかじりながら、コウをじっと見ていた。
サクラ

「コウ、シノノメ、もし何か思い出すことがあったら、何でもいい、教えてくれよな」
コウ

「……いいのか?
まだ……、って言ってただろう」
サクラの目を見返す。
まだ……、って言ってただろう」
サクラの目を見返す。
サクラ

「思い出したら、だよ」
コウ

「……、分かった。
その時は伝えるよ」
サクラの目を見て、頷く。
その時は伝えるよ」
サクラの目を見て、頷く。
シノノメ

「…………? 私たちだけ?」
サクラ

「まあね」
KP
だって状況が分かれば、助けに行けるかもしれないからね。
後でゆっくり聞く余裕ないかも知れないし。
後でゆっくり聞く余裕ないかも知れないし。
マキシ
肉体どこかにあるんだもんなぁ。
明らかに連れ去られたっぽい状況だったし。
明らかに連れ去られたっぽい状況だったし。
KP
まだ遊びたいこと話したいことがあれば遊んでもいいし、夕暮れが訪れてもよいです。
マキシ
一通り話したし、こんなものでいいかな。夕暮れにしましょう。
KP
ココフォリアルーム、シーンに合わせて変えました
マキシ
おおお、夕暮れだぁ。
おそらくは最後の穏やかな夕暮れかぁ
おそらくは最後の穏やかな夕暮れかぁ
KP
食事をしたらまた日が暮れるまで限られた自由を満喫する時間だ。
レンの蜘蛛たちも加わってひたすらに楽しんだ。
レンの蜘蛛たちも加わってひたすらに楽しんだ。
マキシ

蜘蛛たちも加わって、サクラも一緒に、みんなで思いっきり遊んだ!
マキシ

その日はこの数百年で、一番楽しかった気がした。
クトゥルフ神話TRPG 目次
波間のダージュ 一覧
コメント By.KP(佐倉)
平穏を噛みしめるように過ごす。
手放したい。手放したくない。揺れ動く想い。
平穏を噛みしめるように過ごす。
手放したい。手放したくない。揺れ動く想い。
メインルート
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塔牧志ルート
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【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
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