TRPGリプレイ CoC『心臓がちょっとはやく動くだけ』唐木&横瀬


こちらには
心臓がちょっとはやく動くだけ
ネタバレがあります。

 一日目
 二日目
 三日目

唐木 奈々

メモ:
ごく普通の中学生。
ぬいぐるみを作るのが趣味。
本を読むのが好きで、オカルトに少しだけ興味があるが怖い話は嫌い。
引っ込み思案でぬいぐるみと話し、日々空想に浸っている。

●《聞き耳》 75%  ●《忍び歩き》50%
●《図書館》 65%  ●《目星》  75%
●《製作(ぬいぐるみ)》65%
●《信用》  55%  ●《オカルト》   35%

STR  CON  POW  DEX  APP  SIZ  INT  EDU
12   8  15  14   9  12  13   9

Feminine Character Creator

By.kureihii

 一日目

KP
実はCoCのKPやるのは初めてです
よろしく
唐木 奈々
宜しくお願いしまーす
プレイヤーも不慣れだからキニシナイ
KP
では、初めて参ります
始めて
唐木 奈々
初めてKPなら間違ってない
KP
◆◆◆CoC「心臓がちょっとはやく動くだけ」◆◆◆
唐木 奈々
小動物かな?
KP
決まりきった日常。
代わり映えしない毎日。
いつもと同じように生きていく中で、けれど唐木 菜々は自分の人生におけるひとかけら、自分の隣に本来あるはずの何かがぽっかりと失われているような、漠然とした孤独を感じていた。
しかし、端から存在しないものが何であるかなど、考えても分かるはずもない。あなたはいつもの朝をいつも通り迎えることだろう。
唐木 奈々
「おはよう、クマちゃん。きのうは、よく眠れた?」
返事をしないぬいぐるみに話しかける。
別に脳内で返事を想像したりもしない。
だってぬいぐるみは喋らないのだもの。
そんな夢のようなことがないのは、知っている。
知っているけれど、話しかけてしまうのは何故だろう。
KP
生活は一人暮らしですか?
15歳か、そうか
唐木 奈々
実家にしとこ。
自分の部屋には自作他作既製品問わず、大量のぬいぐるみが並んでいるよ。
起きて、着替える。毎日毎日繰り返し。
顔を洗う。髪を整える。面倒だからぶっとい三つ編みにする。毎日毎日繰り返し。
KP
変わり映えのない日常。
唐木 奈々
朝から誰かからラインが来たりすることもない。
友達がいないわけではないんだけど。
昨日のうちに用意しておいた鞄を持って、居間に出よう。
きっとお母さんが朝食を用意しておいてくれているはずだから。
「おはよう」
家族に声をかける。
KP
家族仲などは良い方ですか?
唐木 奈々
悪くはないけど、家族それぞれ忙しいんだね、きっと。
KP
忙しい朝だ。
家族からは、返事は返ってくるが、おざなりなものだ。
その中を、唐木もまた自分の支度を淡々と進めて、家を出る。
親しい友人はいますか?
唐木 奈々
友人はいる。親友と呼べる人はいない。
朝挨拶をして、他愛のないおしゃべりをして、でもお弁当に誘ってくることはない、くらいの距離感。
KP
そう、親しい友人というものは居ない。
いや、正確には居た、と言うべきか。
いや、それすらもどうかはわからない。
ただ、憧れを持った者はあった。

横瀬 湊
横瀬 湊(よこせ みなと)。
唐木 奈々
みなちゃん
KP
まるで少年のように活発であった彼女は、誰とでも隔てなく付き合うことのできる明るい性格で、唐木のこともよく気にかけてくれていた。
唐木 奈々
みなちゃんがいた時は、もっと世界は明るくて、風は心地よかった。
空は晴れていて、鮮やかだった。
あの頃の私は生きていた。
KP
しかし、そんな彼女はもう居ない。
唐木 奈々
どうしていなくなったのだっけ。
KP
彼女は、いつしか体調を崩し、いつしか学校へと来なくなり、そして、いつしか亡くなった
と、そう聞いた
その末期に立ち会うことは無かったし、
彼女が去ってからは一度も会っていない
唐木 奈々
それを聞いたとき、目が溶けてなくなってしまうのではないかと思うほど、泣いた。
泣いて泣いて、だから私の涙は涸れて無くなり、身体の中は空っぽになった。
今の私はからっぽの操り人形だ。人に言われるまま学校へ行き、勉強をし、良い子を演じ続けるだけ。
からっぽのまま大人になった私は、何になるというのだろう。
唐木 奈々
ただの地味子ちゃんだった筈の設定が着々と暗くなってゆきますね!
KP
色の無い授業風景。
色の無い放課後。
色の無い、受験勉強。
色の無い、自宅への帰宅。
色の無い、夜の時間。
気づけば、明日のために、もう休まなければならない時間となっていた。
唐木 奈々
こんな私が生きていると言えるの?
明日が来て何が変わるというの?
そんな問いももう空しい。
ただ、ぬいぐるみたちに話しかけるときだけ、少し心が温かくなる。
KP
話して聞かせるほども無いような、今日1日の出来事を、お気に入りのクマに話して聞かせながら
やがて、唐木の意識は眠りの泥の底へと沈んでゆく―――
唐木 奈々
古い古い、鳥のぬいぐるみに話しかける。
「おやすみなさい」
憧れの、比翼の鳥に……
KP
※聞き耳判定
唐木 奈々
CCB<=75 【聞き耳】 (1D100<=75) > 90 > 失敗
KP
無念
唐木 奈々
今日もぬいぐるみは答えない。当然よ。
KP
唐木の意識は、闇に溶けた
本編見る!
KP
唐木は、不意に目を覚ました。
ふと目を覚ますと、見知らぬ場所に横たわっていた。
そこは、一見すると薄暗い工場の一室のようだった。
見たこともない巨大な機械が、左右にずらりと並んでいる。
薄汚れた床には大量のガラクタが、そこかしこに山を作っている。
唐木はその部屋で、自身も打ち捨てられたひとつのガラクタのように横たわっていた。
その唐突な光景に、唐木の精神が揺さぶられる。
SANc
唐木 奈々
CCB<=75 《SANチェック》 (1D100<=75) > 20 > 成功
KP
えらいねぇ
唐木 奈々
えっへん
KP
唐木が身を起こすと、体の上から何かが落ちる。
唐木 奈々
「ここ……どこ……」
自分もまた棄てられたもののような状況に妙に納得しつつ。
落ちたものをふと見やる。
KP
それは、ホチキスで止められた冊子だ。
薄っぺらく、印刷等の雰囲気から家電の説明書のような印象を受ける。
また、表紙には一枚付箋が貼ってある。
唐木 奈々
「変な夢……」
冊子を見てみる。
KP
まず、大きく描かれたタイトルに目が行くだろう。
「初心者かんたん! 失敗しない『◯』の作り方」
とある。
唐木 奈々
○?
本には何者かのメッセージが描いてあった。
KP
えらいねぇ
その文字は、様々な人が書いた文字が混ざり合ったように歪だ。
唐木 奈々
「○……って、何?」
くすくす笑う。
「まるで人間が書いたわけじゃないって言いたそうな文」
KP
最後に、その粗末な小雑誌の表紙に留められた、付箋。
そこには―――
失敗作 横瀬 湊」
と手書きで書かれている。
唐木 奈々
「……みなちゃん……?」
「しっぱい……?」
懐かしい名前に血の気が引く。
唐突に明るかった日々の熱と、あの日の涙の冷たさが一気に襲いかかって、頭がぐらりとした。
「なんなの……これ?」
周囲を見回す。
我ながらなんて悪趣味な夢を見ているのだろう。
KP
ぺらぺらのコピー誌のような小雑誌ではあったが、数枚のページはあるらしい。
唐木 奈々
小冊子には何が書いてある?
KP
戯れに小雑誌をめくってみる。
そこには、「目次」というサブタイトル。
最初の1ページは、どうやら目次であるらしかった。
しかし、そのページはいかにも中途半端なコピー誌めいて、

1P…目次
2P…『人』
 
とあるだけで、その下は大きく余白となっている
唐木 奈々
家電ぽさドコ
めくってみよう。
KP
更にめくる
どうやらいよいよ本編であるらしい、そのページには
唐木 奈々
「人の作り方? まさかね……」
KP
「初心者かんたん! 失敗しない『人』の作り方」
というタイトル。
「名前はとても大切なもの。あなたの声で名前を呼んで「おはよう」をしてあげて。これでカタチは出来上がり。」
とだけ、書かれていた。
唐木 奈々
想像通り。少し笑ってしまった。
KP
その一枚をめくれば、そこはもうただ白いばかりの背表紙となっていた。
唐木 奈々
そんなの漫画の中の話だし、大体人を作る、なんてことは大体大変な禍や不幸を招くものなのだ。
変な門の所で身体を取られたり、生き返らせた人に殺されたり、そんなところ。
「名前呼んでおはようで人ができたら、お父さんもお母さんも要らないよ」
バカみたいな夢。しかも、死んだ友達……いや、友達かどうかもよく分からなかった人をネタにして見る夢。
KP
そんなことを思いながら周囲を見渡すと、
そこはいかにも廃工場といった風の建物で、四方に聳え立つ壁から、長方形の形状をしていることがわかる。
そこには、大型の作業機械が二列に整然と並び、己がそれらが並ぶ間、通路めいた空間のちょうど中間。
工場の真ん中であることがわかる。
床全体には、唐木の身体の下にも敷かれていた多くのガラクタが散らばっている。
工場の短辺の片側には、一つの錆びた金属製のドアが一つ。
その反対側には、何やら黒い壁が天井から床まで埋めている。
よく見ると、その黒い壁が、天井から垂れ下がるいく本ものワイヤーやパイプが、シダ植物のように絡み合って垂れ下がっているものであることがわかるだろう。
唐木 奈々
人間、作るのやめちゃったのかな。
だからきっと私の知っている世界は灰色で、生きている人がいないんだ。
ガラクタって具体的にどんなのだろ。
KP
※ガラクタへ興味を持ったあなたは「〈目星〉」判定
唐木 奈々
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 75 > 成功
うふふ
お見通しよ
KP
際どい
一見雑多に散らばるそれらが、眼球らしきガラス玉や、手の形をした金属の塊などが混ざっているものであることがわかるだろう。
【アイデア】判定
唐木 奈々
CCB<=65 【アイデア】 (1D100<=65) > 88 > 失敗
ここで?
私も壊れているんだわ。
KP
雑多なガラクタ。
唐木の目にはそう見えた。
唐木の周囲には、作業機械、扉、パイプの壁。
その他、工場の敷地が広がっている。
唐木 奈々
声を上げかけて、やめた。
なんとなく音を立てないようにゆるゆると作業機械の方へ向かう。
夢だと気づいたのに、夢が覚めない。
KP
それらはどれも、見るからに埃をかぶっている。
そして、なんらかの図面がどの機械にも複数置かれていることがわかるだろう。
そして、どう見てもこれらの機械が壊れていることも。
唐木 奈々
誰かに会いたい気もしたけれど、誰かに出会うのも怖い気がした。
図面を拾ってみてみよう。
KP
〈目星〉判定
唐木 奈々
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 98 > 致命的失敗
目に埃が
KP
【アイデア】判定
唐木 奈々
CCB<=65 【アイデア】 (1D100<=65) > 100 > 致命的失敗
www
唐木 奈々
おめーよー、ダブルで致命はないだろうよ。死んじゃうのよそれは。
生きる気力欠けすぎなんじゃないのか。
KP
図面を手に取ろうとした唐木は、錆びたクリップだろうか、何かに指を引っ掛けて負傷してしまった。
HP-1
唐木 奈々
イタッ!
指先に血がにじんでくる?
[ 唐木 奈々 ]HP: 10 → 9
KP
見ると、指先に赤い珠が浮いている
唐木 奈々
指先を舐めて、鉄の味を確認。少しほっとしたけれど。
血の味が鉄の味なのは、こういう工場で作られたからなのかも知れない。
KP
図面は、様々な言語と思しきもので書かれており、何やら人型の絵などが描かれていたが、具体的に何のためのものであるのかはわからなかった
唐木 奈々
埃がこびりつくし、目はかすむしでよく分からない。
「なにこれ……人型の作ってたの?」
KP
唐木の周囲には、工場の敷地が広がっており、その中には錆びた鉄扉、パイプの壁。
唐木 奈々
細かい文字は見ていると頭が痛くなる。
ぬいぐるみならもっと簡単なのに。
敷地内に動くものや人型の影なんかはないかな。
図面に興味を無くし、元の場所に戻す。
KP
幾らかの緊張を伴って、周囲を窺うが、動いたりするような者は見られなかった。
唐木 奈々
「こんにちは」
思い切って声を出してみる。
かすれて小さな声になってしまったので、つばをのんでもう一度。
「こんにちは……お邪魔してます」
KP
古びて錆の浮いた工場の壁は、谺すらも返しはしない。
返事にすませた耳に、静寂が痛く突き刺さる。
唐木 奈々
夢なのに、夢だということを忘れてしまいそう。
恐る恐る足を踏み出して扉へ向かう。
扉にたどり着いたらノックをしてみる。
KP
離れていた時は判らなかったが、近づいてみると、錆び付いている、重そうである、といった点以外に、一つの特徴に気がつく。
それは、血のように赤いハート型の錠前(南京錠)だった。
扉が開けられぬよう、それによって施錠されていることがわかる。
唐木 奈々
「(ふぅん……変なの)」
KP
〈目星〉判定
唐木 奈々
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 85 > 失敗
オヤァ
奈々ちゃんやる気ある?
KP
えらくないねぇ
KP
扉は古びて錆び付いていたが、それ以上の特徴を見出すことはなかった。
唐木 奈々
観光地で見たことある、こういうの。
明日にも別れるかも知れないカップルがつけて、それでフェンスとか倒れたり痛んで観光協会の人が迷惑するやつ。
そんなさめたことを思う心に、わずかな嫉妬が混じっていることに奈々は気づいていない。
唐木 奈々
羨ましくなんかないもん!!
比翼の鳥なんていないもん!!
KP
唐木の周囲には、広がる工場の敷地と、パイプの壁がある。
唐木 奈々
じゃあパイプの壁見に行こう。
KP
唐木の目前に、高い天井からぶら下がった大量のワイヤーやホースが、複雑に絡まり合って壁を作っている。
離れていた時は気づかなかったが、見ればその中に、蜘蛛の巣に捕らわれた虫のように裸の人間が数十人、絡まり宙に浮いているのに気付く。
四肢は妙な方向へと曲がり、誰も彼もが眠っているように目を閉じて、ピクリともしない。
唐木 奈々
どきりとして立ち止まる。
蜘蛛の巣みたい……
KP
もしかすると人間ではないのでは?と目を凝らすも、やはり人間にしか見えず不気味な光景だ。
(《SANチェック》)
唐木 奈々
CCB<=75 《SANチェック》 (1D100<=75) > 6 > スペシャル
極端なのよ。
KP
波がある
唐木 奈々
気分屋だ
KP
乱高下のジェットコースター
唐木 奈々
生きることには欲がなく、感情が動かないと考えればぴったりかも知れないが。
KP
〈目星〉判定
唐木 奈々
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 49 > 成功
見える、見えるわ! 私にも見える!
KP
えらい!(挑戦状)
吊られている人間は老若男女、国籍も様々であるように見える。
彼らに怪我は見当たらないが、ただ背中から管が出ているようにも見える。
また管は古く、登ったり揺らしたりすると危険に思える。
唐木 奈々
背中に管……ということは人間ではないのかしら。
でも人にしか見えないけど……
見上げていたら首が痛くなってしまった。
さっきのメモを思い出して、知っている顔がないか探す。
KP
そうだな、〈目星〉クリティカルなので
唐木 奈々
あのメモを書いたのは、この人たち……?
そんなことができそうには見えないけれど。
KP
蜘蛛の巣にかかった蝶めいて絡め取られた、いくつもの人間(?)たち。
彼らの顔や姿をたどってゆくその視線の先に、見知った顔が一つ。
いつか、憧れを持って見つめていた、その顔は。
唐木 奈々
「み、みなちゃん……?」
「みなちゃん!」
KP
答えはない。
唐木 奈々
ずいぶん上の方なのかな?
KP
ガラクタの山に登れば、目の前とは行かずとも、囁きを聞かせる程度には近づくことができるだろう。
唐木 奈々
そんな近くにいる(ある)のか。
じゃあガラクタを登ってみよう。
KP
たまたま見つけた、その人型が、ね。
もっと上の方までたくさんの人影が吊られているのはわかる。
もちろん、もっと低い位置にも。
唐木 奈々
胸が高鳴る。
早鐘を打つ。
きっとそれは、山をよじ登っているから?
足を滑らせて、どこか不気味ながらくたたちに手を突っ込んで姿勢を崩してしまうから?
泳ぐように山を這い上る。
一足ごとに近づくその顔が、あの頃の懐かしい顔のままであることに、自分で喜んでいるのか恐怖しているのかもよく分からないで。
目を閉じた『みなちゃん』は、近寄って声をかけても微動だにしない?
KP
唐木の目に、当時からボーイッシュに映ったその少女の形をした人型。
その閉じられたまつ毛すらピクリとも動かない。
唐木 奈々
その背中からは管が伸びている?
管以外に何も人間と違うところはない?
KP
項垂れたその首筋を見ると、頚椎に位置する部分に金属のプレートのようなものが肌に据えられ、そこに管が接続されていることがわかる。
改めるならば、一糸纏わぬその姿、形状は、人のそれと全く同じものであるように見える。
唐木 奈々
これ目覚めよと声をかけたら落ちてまた死んだらやだなぁって。
KP
QUEST FAILED…
唐木 奈々
触れられる距離ではない?
KP
手を伸ばせば、顔のそばまで触れることはできるだろう。
唐木 奈々
皮膚に触れる。
KP
その指先に触れる感触は、冷たく屍人のよう。
しかし、白い肌にうっすらと朱が挿したそれは人のものと同じもののように見える。
注視すれば、毛穴なども見て取れるかもしれない。
唐木 奈々
では、先ほどの説明書に書いていたことを戯れに口にしようとして……
ここで本当に目を覚ましてしまったらどうなる、と考えた。
自分が立っているガラクタの山を崩すなり更に積み上げるなどして、彼女の下に安全な場所を作ることはできそうだろうか。
そんなことが起きようはずもない、と思いながらも。
ここは、夢の中、だから。
KP
ガラクタの山は、なだらかな斜面を形作っていることもあり、例えばこの場で彼女(?)がリリースされたとしても床へ直接落下してしまうようなことはあるまい。
唐木 奈々
なるほど。
それでは、大きく息を吸い込んで。
「みなちゃん……」
声はかすれた。
くまちゃんに話しかけるときなら、もっとはっきり話せるのに。
「……横瀬 湊……おはよう……」
「朝だよ、起きて……」
KP
唐木がその言葉を囁く。
すると起きた変化は、極めて迅速かつスムーズなものだった。
まず、声に応えるように、管が動き始めた。
ずるりずるりと絡まっていた無数の管がほどけるように伸びていき、囚われていた体のうちの一つがゆっくりと目の前に降下する。
唐木の先刻を気遣うかのように、見る間に唐木の目前まで降りると、その人型はぐったりとそこに横たわった。
唐木 奈々
「かたちは……できあがり……?」
抱き起こす。
心臓の鼓動を聞く。
KP
抱き起こすと、果たして唐木の想像していた通り、その人型の脊椎にあたる部位には金属製のプレートが据えられており、そこにはいく本もの管が。
肌色の双丘の間へと横顔を埋めると、しかしその耳に生物の鼓動などは一切聞こえてくることはなかった。
唐木 奈々
「そうだよね……」
そんなことあるはずがない。
体温は?
KP
冷たい。
唐木 奈々
死体みたい。
KP
唐木がそうしていると
抱きかかえたその眼前で、人形はパチリと目を覚ました。
唐木 奈々
ぎょっとして息をのむ。
KP
ガラス玉のような無機質な瞳。
支えられていた上体を自らの力で起こすと、それは唐木に向けて無表情に
「おはようございます」
と遅れて答えた。
唐木 奈々
涙が流れた。
KP
唐木のその反応を気にするでもなく。
「システム起動。チェック、オールグリーン。__横瀬 湊。当機体の名称と推測。記録完了。」
無機質な声。
「起動者の名前をインプットします。回答を要求。」
唐木 奈々
「あなた……ロボット?」
KP
「データベース照会中。―――当機体を含む同型機に関する呼称として、該当するものと判断できます」
唐木 奈々
「わ、私? 私の、名前?」
同型機??
唐木 奈々
アラヤダなんて夢みてるのかしらこの子
KP
唐木の背後には、まだ他にも多くもの人型が吊られている。
唐木 奈々
「わ、私は、唐木 奈々」
「唐木、奈々」
KP
「唐木 奈々。―――登録完了」
唐木 奈々
多くの人型のなかに同じ少女型はいっぱいあるのかしら。
KP
眺めてみるならば、その種類は実に多様で、近しい年齢のものもあるだろう。
だが己の記憶の向こうに垣間見ることのできる面影は、目の前のこの個体のみだ。
唐木 奈々
そうなのね。
KP
目の前の人型は、スムーズな動きで己の背面を示し
「接続の解除を要求。物理的解除が可能です」
唐木 奈々
せつぞく……かいじょ?
「この管を引っ張ればいいの?」
KP
「肯定します」
唐木 奈々
ロボットらしき少女に問いかける。
思い切って後ろに回って、管をそっと引く。
『わたしたち』って、このロボットのことなのかな……と思う。
KP
何らかの固定のための機構だろうか。
最初は幾らかの抵抗を見せたそれらの管も、少し力を加えるとオーディオ機器のピンプラグめいて、どれも簡単に引き抜くことができた。
唐木 奈々
全部引っこ抜く。
KP
それらの作業が終わると
「起動者に同行する許可を求めます」
人型は、そう音声を発した。
唐木 奈々
「え、ええと……一緒に行っていいかってこと?」
KP
「肯定します」
唐木 奈々
「あの……」
この少女をどう呼んだものか。
「あの……あなた、もう少し、分かりやすく喋れない?」
彼女の名で呼ぶのはためらわれた。
KP
「データベース照合中。―――起動者の意図を測りかねます」
唐木 奈々
「わかったわ……ついてきて、ここを案内して」
KP
「了解しました」
「データベース同期完了。一部データに閲覧不可能な項目あり」
唐木 奈々
「閲覧不可能な一部データ……って、なんのデータ?」
KP
その問いに、無表情なまま小首を傾げるような動作。
「回答権限を与えられていません」
唐木 奈々
「けんげん……」
何だか居心地が悪い。
相手はすっぽんぽんなのよね
KP
改めて相手を見れば、文字通り一糸纏わぬ姿。
その造形は脊椎の金属部を除けば、あらゆる点において、人の造形を完璧に再現しているものに見える。
唐木 奈々
では、自分が羽織っているシャツを渡して、
「これを着て」
イラストで言うとチェックのヤツ
KP
受け取ったそれに暫し視線を落とし、
「この物体群の名称について回答を求めます」
唐木 奈々
「洋服だよ。身体に着るもの」
「これはシャツ」
KP
「ヨーフク。シャツ。了解。記録完了しました」
唐木 奈々
「なんか落ち着かないから、着ておいて」
KP
「使用方法、不明。回答を求めます」
唐木 奈々
……。
なんだか予想通りの回答にため息。
目の前で袖を通してみせる。
「こうやって着るの」
もう一度脱いで、少女に着せてやる。
つまりこれは、脳みそが空っぽの、ロボットなのだ。
基本的なことから何も分からない赤ん坊。
KP
無表情に、大人しく着せられながら
人型は、不意に周囲の様子を伺うように首を動かし
「周辺に、同様の装備が存在する可能性」
唐木 奈々
よく知っていて、憧れた少女と同じ姿をしながら、ぬいぐるみたちよりも生きている気がしない……
「そう、服がそのへんにあるかも、ってことか」
こういう工場なら不思議はないかも。
「どの辺にあるか分かる?」
下半身はどうしようもないのだ。何かあるにこしたことはない。
KP
再び小首を傾げる。
「データに不足。不明です」
唐木 奈々
「はいはい……」
KP
唐木の周囲には、広がる工場の敷地がある。
唐木 奈々
探そうか……
ロボットの冷たい手をとって、ガラクタの山をおりる。
KP
〈目星〉判定
唐木 奈々
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 35 > 成功
KP
えらいねぇ
唐木 奈々
濡れた服やオバチャンの服じゃないわよ!
KP
唐木は、それらを見つけた。
立ち並ぶ作業機械の内の、一つの裏。
それは、横たわる白い塊。
理科の準備室でも見かけたことのあるそれは、いかにも作業員と見える装束に包まれて、そこに倒れていた。
そしてその傍に、一つのアタッシュケース。
唐木 奈々
白い塊って骨?
KP
ですね。
唐木 奈々
「したい……?」
KP
1d20+10 (1D20+10) > 14[14]+10 > 24
KP
数える気にもならないだろうが、夥しいその数は、ざっと見ても20名を超えている
唐木 奈々
多ッ!
KP
SANチェック
唐木 奈々
CCB<=75 《SANチェック》 (1D100<=75) > 87 > 失敗
1d3 (1D3) > 3
[ 唐木 奈々 ] SAN値 : 75 → 72
KP
MAX!
唐木 奈々
私の精神は強靱だから大丈夫
驚きはした。心臓がまだ跳ねている。
ちょっと考える。
死体から物を取るのは、ちょっと抵抗がある。
アタッシュケースを見てみよう。
KP
アタッシュケースには鍵もかかっておらず、容易に開くことができる。
唐木 奈々
「あっ、開いちゃった……」
KP
その内部には、布の塊。
服の一式が納められていた。
唐木 奈々
……あ、良かった。
心底ほっとして、服を取り出す。
そして「これを着てくれる?」
KP
改めてみると、下着から靴まで揃っているようだ。
唐木 奈々
わからないのは教えるし手伝うから
それにしてもどうしてアタッシュケースの中に服なんか? 下着まで?
誰かの着替えにしてはちょっと変。
KP
まだ教えていなかった、下着や靴などの着方について、いちいち尋ねられながら、唐木は人型にようやく着付け終わった。
横瀬 湊
金属のプレートもすっかりと覆われ、一見して人と見分けのつかぬ姿の人型が、唐木の目の前に立っていた。
唐木 奈々
ようやっと落ち着いた。
ケースの中に何か他に物は入っていない?
KP
アタッシュケースの中には、それ以上何も入っていないようだ。
唐木 奈々
話しかけたらあの明るい声が返ってきそうで、別の意味でソワソワする。
でもロボットなのよね……
KP
それを改めて尋ねるならば
「当機体の名称は横瀬 湊。当機体は人体的特徴を模したヒューマノイド」
と答えるだろう。
唐木 奈々
「貴方は何のために作られたの?」
横瀬 湊
「回答権限を与えられていません」
唐木 奈々
「ここは何なの?」
横瀬 湊
「回答権限を与えられていません」
唐木 奈々
だと思った……
そろそろ目が覚めてもいいのに。そう思った。
「ねえ、あの扉の向こうには何があるの?」
さっき閉ざされていた扉を指す。
横瀬 湊
「起動者 唐木 奈々が存在した世界に接続されていると推測」
唐木 奈々
「あそこに行けば目が覚めるってことね」
横瀬 湊
「回答権限を与えられていません」
唐木 奈々
「あそこに錠前があったけど……鍵がドコにあるか知ってる?」
横瀬 湊
「当機体の完成により入手可能と推測」
唐木 奈々
「完成? 未完成なの?」
「貴方はまだ完成していないの?」
からだはできあがり。そしたら、足りないものは?
横瀬 湊
横瀬は小首を傾げ
視線を、ある方向へと向ける。
KP
そこは、横瀬含めいくつもの人型が吊られていた壁のある方向。
いくつものワイヤーやパイプが垂れ下がることで壁となっていた、その一部が崩れ、そこには一つの壁と
人が一人通れるほどのアーチ状の入り口が口を開けているのが見えた。
KP
ちょうど、横瀬がその壁から解放されてたことで、役目を終えたパイプ群が抜け落ちて姿を表したように見える。
唐木 奈々
「この人たち、何をしていたんだろう……」
転がっている作業着の人たちをちらと見る。
横瀬 湊
「当機体群の創造主と推定」
唐木 奈々
「大体……さっきの言い方だと、私が知っているみなちゃんもロボットだったみたいじゃない……」
横瀬 湊
横瀬は小首を傾げて見せる。
唐木 奈々
その人たち、マニュアルとか持ってる?
KP
白骨の周辺には、特に資料などは見られない。
唐木 奈々
そう、それじゃ
壁の方へ再度向かってみようか。
さっきの大型機械は、このロボットを作るための物だったんじゃないかな、と思った。
「SFの世界みたい。こんなにそっくりのロボットを作れる技術なんてまだ無いはずだもん」
こんなに人間っぽいものが作れるならアシモくん涙目だよ。
KP
改めて、パイプなどで形作られた壁のあった方へと向かう。
そこには、遠目で見えた通りのアーチ状の入り口が口を開けていた
唐木 奈々
ではそこをのぞき込んでみよう。
KP
アーチの中は、通路が伸びているようではあったが、照明もなくその路面や壁面の様子を伺うことはできない。
しかし、その向こうに灯りと何かの空間が広がっている様子が見て取れる。
唐木 奈々
「明かりだ……誰かいる? わけないよね」
独り言を声に出してしまう。
ぬいぐるみに話しかけるように、背後の少女に返事も期待せず話しかける。
そう、いつもやっていること。
横瀬 湊
横瀬は答えない。
唐木 奈々
奈々は明かりの方へと歩を進める。
何か音は聞こえる?
KP
音は特に聞こえない。
通路は、思ったほどの距離はなかったらしく、やがてあっさりと抜けた。
アーチを抜けると、そこは白い部屋だった。前方の壁に、くぐってきたものと同じものに見えるアーチが5つ並んでいる。
しかし、そのどれもが白い壁によって塞がれていることがわかる。
壁も床も、その扉すらも白く塗りつぶされ、ろくに凹凸のないその部屋に、目を引くところは決して多くはなかったが、
唐木は己の手、或いは懐で、先ほどの工場で発見した小冊子が光を放つのに気づいた。
唐木 奈々
光?
取り出して開いてみる。
目次に文言増えてる?
KP
取り出して改める。
果たして、小冊子は唐木の推測の通り、ほんのわずかではあるが厚みを増しており、目次にも変化が現れていた。
「3P…『心』」
表記が増えていた。
唐木 奈々
こころ。
どきりとした。
この見た目に心が備わったら、それはもう人間ではないのか。
心の項目を開いてみる。
KP
ページを開くと、そこには
「初心者かんたん! 失敗しない『心』の作り方」
というタイトル。
唐木 奈々
同じノリ!
KP
「心はとても大切なもの。ニンゲンは見て聞いて共感して、感情を得る。全てを記録チップに集めれば、これでナカミの出来上がり。」
という記載がそれに続く。
唐木 奈々
「……失敗しないやり方でこれ?」
「ちょっと雑すぎない?」
「つまり一から育ててねってことじゃない」
横瀬 湊
「回答のための材料が不足しています」
唐木 奈々
ふう、とため息をつく。
もう何度目か分からないけれど。
「みなちゃんは明るくて、元気で、私にないものいっぱい持ってて……」
「そんなの、どうやって教えろっていうの? この夢無茶ばっかり」
教える。教えたら、みなちゃんになる?
私の友達になってくれるみなちゃんが、戻ってくる?
横瀬 湊
「それは、当機体への質問でしょうか」
唐木 奈々
「はいはい、質問質問」
「この何もない工場で。私と全然似ていないもう死んじゃった人のことなんて、どうやって教えろっていうの」
横瀬 湊
その問いに対して、横瀬は答えない。
ただ、視線を唐木の前に並ぶアーチ状の入り口―――だろうか―――へと向ける。
唐木 奈々
「分かった、もう、とことんやってみるしかないのね」
いつつの『アーチ』をよく見る。何か書いてあったりする?
KP
近づくならば、特に文言などの記載は無かったが、それらのアーチのすぐ横の壁に、手の形の凹凸が刻まれていることがわかる。
唐木 奈々
自分の手はその形に合う? またはロボットの少女の手は?
KP
手を凹凸にかざしてみる?
唐木 奈々
その手形は全部のアーチにあるの?
KP
改めるならば、すべてのアーチにその凹凸が刻まれていることがわかる
唐木 奈々
じゃあ一番左の手形に手をかざす。
KP
唐木は、その凹凸に手をかざす。
しかし、特に何も変化は現れない。
唐木 奈々
「ねえ、あなた」とロボットを呼ぶ。
横瀬 湊
「はい」
唐木 奈々
「ここにこうやって、手をかざしてみてくれる?」
横瀬 湊
「はい。解錠を希望するのですね」
唐木 奈々
「開けられるのね」
「だったら開けて」
横瀬 湊
「可能です。了解しました」
答え、その凹凸に横瀬は手をかざした。
KP
それとほぼ同時
シュン、という、SF映画の宇宙船の扉が開く時と同じような音と共に、アーチを埋めていた白壁は上へとすり上がり、果たしてこの部屋へと至った時のようなアーチ状の通路が現れた。
唐木 奈々
「こんなにボロボロなのに、この辺の設備は生きてるんだ……」
そういえば、人型がくっつていてた壁のパイプも動いていたっけ。
そのアーチの先から何か聞こえる? 明かりは見える?
KP
覗き込むならば、その先の通路は短く、すぐ、向こうに同じような白い空間が存在していることが見て取れる。
唐木 奈々
では歩いて行こう。
足音が響いてしまうならば、それが響かないようにそっと踏みしめるように歩いた。
KP
横瀬もそれに続く。
足音は決して大きく響くことはない。
二人がアーチ状の短い通路を潜り部屋に入ると、自動的に背後の扉がシュンという音と共に閉まる。
唐木 奈々
慌てて振り向くが。
KP
くぐってきたアーチは、閉ざされている。
横瀬 湊
「解錠を希望しますか」
横瀬が尋ねる
唐木 奈々
「い、今はいいよ」
「帰れるって分かるなら……」
横瀬 湊
「了解しました」
唐木 奈々
部屋の様子は?
KP
白塗りの部屋の中央に看板が一つ立っている。
唐木 奈々
看板? 周囲にお花畑トラップはありませんね?
KP
トラップの有無は不明だが、白い空間にはその看板がだけが立っている。
唐木 奈々
看板って、いわゆるドラクエ的なヤツなのかなぁ。
KP
いかにもその通り
唐木 奈々
では、ゆっくり進んで看板を見てみる。
KP
木製の看板に近づく。
唐木 奈々
夢よ夢。こんなわけわかんないの夢だわ。
KP
そこには、短い文言がただ一文、記されていた。
「私はあなたとそれでも一緒にいたい。」
その文言を目にした瞬間
いつの間にのことだろうか。
周囲の様子はガラリと変化していた。
暖かな午後の日差しが差し込む一室。
窓の外には広大な緑が広がり、ニーニーと小さな声が、あちらこちらから上がっている。
唐木 奈々
なにこのサワヤカ風景。
ニーニー? 虫?
KP
見れば、周囲にはいくつもの猫たちが思い思いに過ごしている。
いわゆる猫カフェというやつだろうか。
唐木 奈々
ねこか
KP
気づけば、看板も、そして入り口のアーチもまた姿を消している。
SANチェック
唐木 奈々
CCB<=72 《SANチェック》 (1D100<=72) > 44 > 成功
3ot0ee
ふふっ、発言が正気じゃなかったわ。
彼女はいる?
KP
います。
〈目星〉判定
唐木 奈々
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 14 > スペシャル
極端。
猫は可愛いから仕方がない。
KP
その光景に呆気に取られる中、唐木は懐の小冊子が再び光を放つのに気づいた。
唐木 奈々
また? 今度は何が増えたのだろう?
開いてみる。
「全部纏めて読ませてくれたらいいのに」
KP
目次に
4P…『喜』
が追加されている。
唐木 奈々
よろこび……
KP
本文を確認すると、
「初心者かんたん! 失敗しない『喜』の作り方」
というタイトルと、
「記録チップを入れた状態で『幸せな時間』を教えてあげよう。これで喜は出来上がり。」
という文言が記述されている。
唐木 奈々
「だから……こんなの説明でも何でも無いのよ……」
KP
〈目星〉、或いは【幸運】判定
唐木 奈々
CCB<=75 【幸運】 (1D100<=75) > 20 > 成功
KP
唐木は、ページの端に小さな字で何やら書き込まれていることに気づいた。
「親しい人のために苦しむことにも、人は喜びを感じる。」
唐木 奈々
とりあえず? カフェってことはスツールつきのティーテーブルがあるのかな?
KP
カウンター席もテーブル席も存在している。
唐木 奈々
あれ……
引っかかった。
「ねえ、『記録チップ』ってどこにあるの?」
横瀬 湊
唐木の問いに、横瀬が答える。

「既に当機体に挿入されています」
唐木 奈々
「そうか、じゃあこのまま泣いたり笑ったりできれば……完成する……ってこと」
KP
呟き、小冊子を広げる唐木のその顔のすぐそばに気配。
横瀬 湊
「喜び。当機体にインプットされていない感情の一つと推定。回答を求めます」
気づけば、唐木と顔を並べるようにしてその冊子を覗き込んでいた横瀬が、そう問うていた。
唐木 奈々
「喜び……か」
「美味しいものを食べたり、好きなことをしたり」
「好きな人と一緒に過ごしたり、可愛い物を見たり」
「いい曲を聴いたり……うーん」
「嬉しい、気持ちいいこと、だよね」
横瀬 湊
それらの言葉を間近で聞いていた横瀬は、ふと唐木の方へと顔を向け
「具体例の提示を求めます」
人間同士ならば息が掛かるほどの距離で、そう発した。
唐木 奈々
具体例……って
奈々は困った顔で周囲を見回す。
「例えばここで美味しいコーヒーが飲めたり」
「ネコちゃんが寄ってきてくれたり」
「撫でさせてくれたら嬉しいんじゃないかな……」
横瀬 湊
その言葉に、横瀬は小首を傾げ
「具体例の提示を求めます」
そう繰り返した。
唐木 奈々
うう……融通が利かない子。
奈々は少しヤケクソになった。
「そこに座って」
スツールを指さす。
横瀬 湊
「了解しました」
示されるスツールに腰を掛ける。
唐木 奈々
飲み物は注文……できるのか?
「すみませーーん! 誰かいる?」
KP
テーブルには、メニュー表が備えられている。
唐木 奈々
マリトッツォと茶を頼もう。二人分。
テーブルにベルとか有るかな?
KP
そう唐木が思いテーブル上を改めると、果たしてそこに小さなベルが置かれていた。
唐木 奈々
「押して」
「ここをぎゅって」
横瀬 湊
「了解しました」
唐木の仕草を真似るように、横瀬が押しボタンを押し込む。
唐木 奈々
これを押すのが好きな子もいる。
KP
刹那
「ご注文はお決まりですか」
いつの間にそこにいたのだろうか。
一人のメイド姿の女給が、テーブルの横に立ってた。
唐木 奈々
「ファッ!?」
KP
しかしその顔は、直視しようともはっきりとは見えない。
唐木 奈々
……そういえば。不安になった。
「あの、あなた防水性とか大丈夫? もの食べるのとか平気?」
あと私お金持ってるのかなぁ。
っていうかさっきシャツって言っちゃったけど、寝間着じゃなくて普段着着て髪もバッチリきめてる、でいいのかな?
KP
唐木が己の懐を含め、有様を改めると
果たしてそれは普段着であり、財布なども帯びた姿であることがわかる。
唐木 奈々
確認忘れてた。酔ってんな。
横瀬 湊
「当機体はIP88相当以上の防塵、防水処理が施されております」
唐木 奈々
「(よくわかんないけど大丈夫ってことでいいのかな……)」
「あの、えーと、これと、これを二つずつ」
KP
「かしこまりました」
そう女給が答えた次の瞬間には、その姿は掻き消え、唐木と横瀬の眼前に生クリームを挟み込んだパン様の洋菓子と、ティーカップが二つ。
さらにティーポットが一つ、置かれていた。
唐木 奈々
うわぁ便利ィ
KP
ガラス製のポットの内側では、薄い琥珀色の液体の中、茶葉が軽やかにジャンピングしているのが見て取れる。
唐木 奈々
じゃあ菓子と茶に手を出す。
食べてみて美味しいようなら勧める。
「美味しいものが食べられると幸せ。これは流行り物だけど……美味しい物は美味しい」
横瀬 湊
「モノヲタベル。概念についての説明を求めます」
唐木 奈々
「……うーん」
「食べ物から栄養と水分を摂取すること……」
「口から食べて、消化して? で、栄養とりこんで、いらないとこは棄てるの」
「そうやって人間生きてるから」
もぐもぐ食べながら応える。
横瀬 湊
「データベース照合中。―――8万2184件の該当あり。捕食行動のラベルを付与。記録しました」
唐木 奈々
この大きな赤ん坊に説明していると、『食べること』や『喜び』が、なんだか特別なことのように思える。
横瀬 湊
横瀬はしばし唐木の様子を観察するように眺めてから
おもむろにそれを真似て、洋菓子の一片を口に運んだ。
収まりきらなかった生クリームが、口の端にべっとりと張り付く。
唐木 奈々
マリトッツォチャレンジ開始だ!
横瀬 湊
気にすることもなく、咀嚼の真似事をしてから
「不要なものは廃棄」
くぐもった声で、口中にものを食べ込んだものを、元通り皿へ戻そうとするように、皿を持ち上げる。
唐木 奈々
「いやちょっと待って待って」
横瀬 湊
ぴたりと動きを止める。
唐木 奈々
「えーとね、その場で出すんじゃなくて」
「なんて説明したらいいんだろ……っていうか全部不要?」
「あなたは食べる必要とか機能とかないの?」
唐木 奈々
そうなるのを半ば期待していたのであった。
横瀬 湊
「消化機能の装備はありません。―――データベース更新中―――。嚥下の模倣は可能です」
唐木 奈々
どっかの人鞘と一緒か
唐木 奈々
「……そっか、じゃあ、いいや」
「じゃあひとまずそれ……飲んじゃって」
横瀬 湊
「了解しました」
唐木 奈々
後で出さなきゃいけないのかなぁ……
横瀬 湊
漫画のキャラクターのように、やや大袈裟な身振りでごくり、と飲み込むのが見えた。
唐木 奈々
「余計なこと言っちゃったけど……食べるのもきっと大きな喜びなんじゃないかなぁ」
「できないんじゃ仕方ないんだけど」
横瀬 湊
「食べることが喜び」
唐木 奈々
「あ、そうだ、味とか分かる?」
横瀬 湊
「味覚の解析を行います。―――甘味……」
その他、苦み、酸味についての数値を羅列する。
その後
「処理中、しばらくお待ちください」
唐木 奈々
そんな彼女の言葉を待っている間。
奈々は、(最近嬉しいと思った事なんて無いな)と思った。
こんな私がうれしさなんて教えられるの?
横瀬 湊
「総合データから、この食物は『風味豊かな中に、甘味を中心とし、酸味、芳香などが豊かに含まれたもの』であると判定できます」
言ってから、
横瀬はまた一口、口に運び咀嚼し、飲み込んだ。
唐木 奈々
「すっごい。料理漫画みたい」
「美味しい物を食べると嬉しいし……」
そして、一瞬詰まって。
「美味しい物を、好きな人と食べると、もっと美味しくて嬉しい」
そんな時期もあったような気がする。
横瀬 湊
「スキナヒト。概念に関する情報の入力を求めます」
また一口。
唐木 奈々
すき。
「一緒にいたいと思う人。一緒にいなくても笑顔が浮かぶ人。いつも笑っていて欲しいと思える人。いなくなったら……悲しい人」
「好きな人には幸せでいて欲しいと思うよ」
「思ったんだよ」
目から涙がこぼれた。
横瀬 湊
横瀬はその回答に小首を傾げ
「データに不足。ラベルを付与し、格納します」
「起動者 唐木 奈々。涙滴の分泌を確認。眼病の疑いあり」
唐木 奈々
吹き出した。
「違うよ……」
「幸せだったことを思い出して、ちょっと泣けちゃっただけ」
「私、あのとき幸せだったんだな……」
横瀬 湊
横瀬は再び小首を傾げ
「シアワセ」
そう口にした時、テーブルの上にひょいと猫が一匹、飛び乗ってきた。
それを視線で追い、
「スキナヒトと共に食物を摂取する。それが、喜びですか」
唐木 奈々
「喜びっていろいろあるんだよ」
「私は、ぬいぐるみが綺麗にできたときに喜ぶし、お母さんは私がいい成績を取ると喜ぶの」
「心が温かくなったり、自然に笑えたり、いいことがあった時、人は喜ぶんじゃないかな」
「ほら、そこに猫が来てる」
唐木 奈々
人のために苦しむ? そんな難しい概念説明できっか!
横瀬 湊
「ネコ。食肉目ネコ科ネコ属に分類されるリビアヤマネコが家畜化されたイエネコ」
唐木 奈々
「ほんっと気まぐれなんだよ、この動物。撫でて欲しいくせに来なかったりするの……」
KP
果たして、その猫は素直だったのだろうか。
唐木の膝の上へと、ひょいと飛び乗ると、まるまり喉を鳴らし始めた。
唐木 奈々
「この子、素直だな。私とは大違い」
くすりと笑う。
横瀬 湊
「起動者 唐木 奈々は、素直ではない。―――記録しました」
唐木 奈々
「そんなの記録しなくていいの!」
横瀬 湊
「了解。記録を削除しました」
唐木 奈々
この子は素直だ。
猫も、ロボットも。
ゆっくりその背に指を滑らせて、体温に触れる。
KP
滑らかな毛並みの下で、しなやかな筋肉が触れられた悦びに震える。
唐木 奈々
完成させたらこの子の胸から鍵を引っこ抜けって展開じゃん?
唐木 奈々
指先で猫の耳のしたをくすぐる。
横瀬 湊
気がつくと、横瀬の膝の上にも一匹の猫が丸まっていた。
唐木 奈々
「暖かくて、なめらかで。柔らかくて、気持ちいい」
横瀬 湊
唐木の所作を真似て、その猫を撫で、くすぐる。
唐木 奈々
「体温を感じられると、嬉しいな」
暖かい。こんな暖かさを感じたのはいつぶりだろう。
横瀬 湊
「体温―――38.2℃」
唐木 奈々
「あったかい、でいいんだよ」
横瀬 湊
「アッタカイ」
「猫は、アッタカイ」
唐木 奈々
少女の手を握る。
「どう、私の体温」
横瀬 湊
不意に握られた手に、無機質に見える視線が向く。
「36.4℃。平熱です」
そう答えてから
何かを考えるように、また小首を傾げ
「起動者 唐木 奈々はアッタカイ」
唐木 奈々
「……なんか違う気もするけど、まあ、いいか……」
その握った手は相変わらず冷たいのかな?
横瀬 湊
冷たい。
唐木 奈々
そうか。じゃあ奈々は、少し寂しそうに笑った。
「私には幸せになって欲しい、好きな人がいたんだ。その人はずっと私のことを気にかけてくれてた」
「その人が笑ったり、話しかけてくれると嬉しかった。喜びだった」
「……なんでこんな事話しちゃったんだろ」
横瀬 湊
小首を傾げたまま、無表情に唐木の顔を見つめる。
唐木 奈々
あの子と同じ顔でこちらを見ないで欲しい。
ただの人形のくせに。私と同じように生きていないくせに。
「喜びは、わかった?」
横瀬 湊
問われ、なおも唐木の顔をしばし見つめた後
テーブル上のマリトッツォ。
膝の上の猫。
己の手に触れた唐木の手。
順繰りに視線を向け、最後に唐木の顔を見てから
「これが、喜び?……美味しい食物、アッタカイ。ふわふわ」
無表情で、どこまでも水を湛えた深い水面のような瞳で、唐木の目を見つめながら
気がつくと、一つの変化。
横瀬の全身がふわふわと光り輝き、目の前の光景が、殺風景な白い部屋へと戻っていく。
光が収まると、横瀬は自分の胸に手を当ててうっすらと微笑みながら呟く。
「スキナヒト。……横瀬 湊は了解しました。記録します」
唐木 奈々
これ、女王様にシバかれるのが喜びだよ とかテキトーこいたらどうなるん。
KP
試してみたいねぇ~
唐木 奈々
やってみたいなー
唐木 奈々
「……あれで、分かったの? なんかすごい」
「分かってくれたなら、嬉しいけど」
その笑顔は、あの日の面影にほんのわずか似ていた気がした。
KP
気づけば戻っていたその白い部屋には、一つの看板。
唐木 奈々
看板なんて書いてる?
KP
〈目星〉判定
唐木 奈々
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 88 > 失敗
ションボリだぜ
KP
表から看板を見た唐木の目には、先ほどと変わらぬ文言
「私はあなたとそれでも一緒にいたい。」
唐木 奈々
「誰の言葉なのよ、これ……」
「まあ、いいわ。このぶんだと、喜怒哀楽、か」
「アーチはいつつあったけど……?」
横瀬 湊
考える唐木の背後で、横瀬は小首を傾げる
唐木 奈々
「ねえ、部屋の外に出て、次の所に行ってみる」
横瀬 湊
「了解しました。解錠します」
唐木 奈々
「私、国語の先生とお母さんやらなきゃいけないみたい」
横瀬 湊
横瀬はアーチの横、裏側にも同様に備えられた手形に自らの手をかざしつつ、唐木のその言葉にまたも小首を傾げるのだった
KP
二人は、元の5つのアーチの存在する部屋へと帰ってきた。

 二日目

唐木 奈々
◆◆◆◆◆20210920◆◆◆◆◆
KP
その白い部屋の中、工場へとつながるアーチと対面の壁に、変わらず5つのアーチが並んでいる。
唐木 奈々
「次の所、見に行こう」
独り言か? 背後の少女に向けたものか? 分からなくなってきている。
横瀬 湊
「どちらを解錠しますか?」
唐木 奈々
「ええと、ここね」
さっき開けアーチの右側。左から二番目だ。
「きっと怒りの部屋」
横瀬 湊
「イカリですか」
唐木 奈々
「怒りだよ、怒り。こう……カーッと……うぅん、とにかく入ってみよ」
分からなくなる、といえば。
これが本当に夢なのか、よく分からなくなってきている。
夢に決まっているのだ、こんな妙なことは。それなのに……
横瀬 湊
「了解しました」
小首を傾げつつ、横瀬がアーチの横の凹凸へと手をかざすと、先刻と同様に微かな音とともにアーチを埋める壁はすり上がり、通路が現れた。
唐木 奈々
通路に踏み込む。
怒り。さっきと同じなら小道具が用意されていて、それで怒りを教えなさいって事なんじゃないだろうか。
KP
二つ目の部屋に入ると、自動的に背後の扉がシュンと閉まる。
中はそれなりの広さのある真っ白な空間だった。
中央にポツンと看板がある。
唐木 奈々
もう振り向かない。
看板の所に歩み寄り、声に出して読んでみる。
KP
「私はあなたを気にかけていたい。」
そう声に出して読んだ瞬間、その白い部屋はやはり様子をガラリと変えていた。
唐木 奈々
あの壁には大量の人型が絡まっていたけど、アレ全部にこんなふうに『教えて』いたのだろうか?
気が遠くなりそうだ……
周囲の状況は?
KP
海外の映画などで見たことのある精神病棟のように、壁全面に真っ赤なクッションが貼られ、部屋の隅に小さな箱と見るからに冷蔵庫様の物体が現れる。
唐木 奈々
これは幻? それとも本当に移動しているの?
KP
箱の中には、さまざまなものが雑多に詰め込まれ、
それらの一部がはみ出している。
唐木 奈々
はみ出しているのはどんな物?
ああ、そうだ。マニュアルに変化はあるだろうか。
KP
ざっと改めて見ると、風船とピン、びっくり箱、ガムのパッチン、虫の模型などが入っている。
簡単ないたずらに使われるような玩具が詰め込まれているようだ。
唐木 奈々
小脇に丸めて抱えていた冊子を取り出してみる。
KP
唐木が冊子を改めると、果たしてページが追加されていた。
目次には、新たに
「5P…『怒』」
という項目が追加されている。
唐木 奈々
「正解! 奈々さん海外旅行獲得です」
横瀬 湊
「そのような項目は登録されておりません」
唐木 奈々
「これは『冗談』だから、気にしないで」
「笑って流してくれたらいい……って、笑うとかまだ分からないよね」
横瀬 湊
「ジョーダン。追求は不要。了解しました」
「ワラウ、ですか」
唐木 奈々
「きっと後で別の部屋で出てくると思う……」
本文を読んでみる。
唐木 奈々
私のキャラにしちゃ飲み込みが早い奈々ちゃん
KP
小首を傾げる横瀬を側に文言を改める。
P5のタイトルは
「初心者かんたん! 失敗しない『怒』の作り方」
「記録チップを入れた状態で『いたずら』をして怒らせよう。これで怒は出来上がり。」
と本文が続く。
唐木 奈々
「怒りか……」
そんな軽いのでいいの?
KP
〈目星〉、或いは【幸運】判定
唐木 奈々
CCB<=75 【幸運】 (1D100<=75) > 54 > 成功
KP
よーしよしよし
唐木 奈々
前回成功はしたけど教えてあげなかったんよね。
KP
唐木は、そのページの片隅にある文言が小さく書き込まれていることに気がついた。
「ケンカするほど仲が良い。相手を想うから怒るのです。」
唐木 奈々
「♪トムとジェリーってやつ?」
お父さんが買ってくれたコンビニのDVDで昔のアニメで見た。
KP
ふと気がつくと、そう呟く唐木のすぐ横で、横瀬が冊子を覗き込んでいた。
「怒り、……なんでしょう? 興味があります。教えてくれますか?」
そう尋ねる横瀬の顔。
横瀬 湊
その表情には、確かに笑みが浮かび、ニコニコと唐木の顔を伺っていた。
唐木 奈々
可愛い……
「あっ、ええと、怒りね」
横瀬 湊
「はい」
唐木 奈々
「思っているのと違うことをされたり、いきなり脅かされたり……」
「上手くいかなかったときなんかに、感じるかな……」
部屋に冷蔵庫もあるんだよね
KP
ありますね
唐木 奈々
それの中身は何だろう。
開けてみる。
KP
1d6 (1D6) > 5
冷蔵庫の扉を開けると、ひんやりとした冷気が漏れ出す。
唐木 奈々
最近怒ったのは、なんだったかな……。思い出せない。
KP
中の棚には、紙皿に乗ったクリームてんこもりの巨大なパイが5つ、納められていた。
いつか、コント番組などでこれを使ってはしゃぐタレントの姿を見たことがあるかもしれない。
唐木 奈々
ああ、そういう……
悪戯の箱をごそごそして風船を取り出す。
「これ、膨らませてくれる?」
横瀬 湊
「膨らませる……」
唐木 奈々
「口に当てて、空気を入れると大きくなるの」
少しだけゴムを引っ張ってから渡す。
横瀬 湊
「了解しました」
それを受け取り、吹き込み口を口にふくむと、横瀬はそれに向かって息を吹き込み始めた。
すう、すう、という音と共に、徐々に風船が膨らんでゆく。
ほとんど息継ぎなしに吹き込まれる息によって、風船は見る間に横瀬の顔よりも大きなものとなった
唐木 奈々
セットになっているであろう針を手の中に持って。
このくらいの大きさになったら止めてね、と手でカッコを作って言う。
横瀬 湊
「ひょうはいひまひた」
唐木 奈々
で、その大きさになる前に割る。
針を突き立ててぐっと押す。
KP
唐突な破裂音。
横瀬 湊
膨らんだ風船は一瞬で姿を消し、その向こうに口からゴムの切れ端を咥えたままの横瀬が、呆けた表情で現れた。
唐木 奈々
……これ、怒りっていうよりはびっくりだよなぁ、と思った。
横瀬 湊
「……」
唐木 奈々
「……えーと、びっくり、した?」
横瀬 湊
「びっくり……」
口にした拍子に、咥えていたゴム片が落ちた。
唐木 奈々
つい笑ってしまう。
「いたずらされたら、怒るよりまずびっくりじゃないの?
このマニュアル作った人、本当にいい加減」
横瀬 湊
「よくはわかりません。ですが、反応系に一時的な混乱が見られます」
思わず笑う唐木を見て、ふと、横瀬の顔がいつもの表情の薄いものになる
どこか、唐木の態度に承伏しかねるところがあるようにも見える。
唐木 奈々
その様子を見て、少女の胸の所に指先を当てる。
「この辺がちょっと、もやっとしない?」
横瀬 湊
「もやっと……」
当てられた指の先、己の胸のあたりに視線を落とし
「よくはわかりません。ですが、理解の及ばない処理の存在を認めます」
唐木 奈々
「膨らませてってお願いしたのに、割っちゃうなんて……『理屈が通らない』『おかしい』『不条理』」
「そのモヤモヤが多分、とっても弱いけど怒り」
横瀬 湊
「それが、怒り、ですか」
唐木 奈々
「何がいいかなぁ」
次のを探し始める。
虫の模型か……虫が嫌いって言う前提がないと使えないなぁ。
KP
おもちゃ箱については、いたずらに関するものがたくさん入っているので、お望みのものは大抵見つけることができます
唐木 奈々
じゃあ……小さなブーブークッションを手に隠そう。
デルタルーンの新章出たしね。
で、握手……
握手知らないわこの子ったら。
「手を出して」
右手を差し出す。
横瀬 湊
不思議そうに自分の胸のあたりをさすっていた横瀬は、言われ素直に手を差し出す。
唐木 奈々
「人はね、握手して、挨拶するの。会ったとき、別れるとき、好きを伝えるとき、いろいろ」
日本ではそうでもないけど、まあ、いいか。
横瀬 湊
「アクシュ……は挨拶。登録しました」
「どのようにすれば良いですか?」
唐木 奈々
「私も手を出すから、軽く握って。暖かさが伝わって、幸せになる」
横瀬 湊
「暖かさが伝わって、シアワセ」
唐木 奈々
言って、掌にクッションを隠してさっと出す。
横瀬 湊
「了解しました」
横瀬は差し出された唐木の手に自分のそれを重ね、軽く握った。
唐木 奈々
ぷー
間抜けな音が響き渡る。
横瀬 湊
「……?」
唐木 奈々
「あっ、あなたおならした」
横瀬 湊
「オナラ、とは何ですか?」
音のした手と手のあたりを不思議そうに、とも見える表情で伺いながら、問う。
唐木 奈々
「お尻から排気ガスを出すこと」
やれやれ、おならも知らない相手にこのネタはちょっと難易度が高かったわ。
苦笑。
横瀬 湊
「当機体にそのような機能はありません」
唐木 奈々
もの食べないんじゃ、出る物も出ないわよね。
「そっかー、でも音がしたんだからやったんじゃない?」
横瀬 湊
首だけで背後を振り返り、尻のあたりをさすってみる。
唐木 奈々
フクロウか。
横瀬 湊
「そのようなログは確認できません」
「しかし、その音はオナラの音なのですね」
唐木 奈々
「やってないのにやったって言われるとなんかこう、やだなーって感じしない?」
横瀬 湊
「ならば、起動者 唐木 奈々がオナラをしたのではないでしょうか」
唐木 奈々
「私じゃないから!」
横瀬 湊
「……」
小首を傾げる。
唐木 奈々
「これはちょっと例が悪かったみたい」
「あと私おならしてないから。これだから」
手を開いてクッションをプニプニ押してみせる。
「あと、握手のことは本当だから」
「怒りって難しいなぁ」
横瀬 湊
「アクシュの際は、オナラの音がするクッションを共に握る。……登録しました」
唐木 奈々
「いや、クッションは握らないの」
横瀬 湊
「……?では、なぜ唐木 奈々はクッションを握ったのですか?」
唐木 奈々
もう、どさくさに紛れて変なこと覚えちゃいそう。
「それはね、本当はしないことをして変な音を立てることで、あなたをびっくりさせようと『悪戯』したから」
横瀬 湊
「イタズラ」
「イタズラとは何ですか?」
唐木 奈々
「えーと……」
「人になんかして、その反応を自分が笑うため?」
「ーん、それだけじゃないな。やった相手を笑わせたいこともあるけど」
「今回やらなきゃいけないのは、自分だけに楽しいことをして、あなたを怒らせること……」
「例えば、私が足を引っかけてあなたを転ばせたとするよ?」
「それで、起き上がろうとしたら、また転ばせられるの」
「それずーっとやられたら……私なら怒るかな」
やってみた方が良いのかなぁ。あまりやりたくはないんだけれど。
横瀬 湊
「……」
「それを、起動者 唐木 奈々は自身のために行うのですか?」
唐木 奈々
「うーーーん」
「私は別にそれが楽しくてやるわけじゃないから……単にやられたら嫌だなって思うこと」
横瀬 湊
横瀬はしばし、目をとじてから
「……シミュレーション完了」
「起動者 唐木 奈々が当機体にそのようなことをする動機について、解析を行いました」
唐木 奈々
「シミュレーションして欲しいのはそっちじゃないんだけど……結果は?」
横瀬 湊
「脈絡の無い行為に対し、情報が不足しているため、推察のみで結論処理が完了しません」
それから、更に何か考えるような素振りを見せて、
ふと、自分の胸に手を当ててから
「……もやっとしました」
唐木の先ほどの表現を口にした。
「これが、怒りですか?」
唐木 奈々
「そうだね、きっと」
「相手が期待にこたえてくれなかったり、約束を破られたり」
「もの凄く心配させられたり、ひどく嫌なことをされたり」
「自分の力が足りなくて、すべきことができなかったり」
「そういうときにも、怒るかな……」
「約束……破られて」
「みなちゃんは、また会おうねって、言ったのに」
「……何でもないよ」
なんて自分勝手な怒り。
横瀬 湊
唐木が口にする言葉の一つ一つには、首を傾げ、
しかし、怒りについての回答を得た横瀬の全身がふわふわと光り輝き、目の前の光景が、殺風景な白い部屋へと戻っていく。
やがて光が収まると、横瀬はもやっとする、と言った自分の胸に手を当ててムウっと頬を膨らませる。
唐木 奈々
こんな適当な講義で大丈夫なのですか。
横瀬 湊
「これが、怒り?ムゥ……しっかり記録しました。で、いつやり返せば良いのですか?」
床に落ちた風船や、クッションを見やってそう言った。
唐木 奈々
「……あ」
「お手柔らかに……」
そこでしばらく悪戯合戦しとこうか
横瀬 湊
共に交わすイタズラの応酬
その最中、やられれば頬を膨らませ、
やり返せば、微笑む。
そんな横瀬の表情があった。
唐木 奈々
「パイはやめようパイは。顔洗うとこないもん」
KP
てか、よく考えたらもう怒り部屋の内装消えてたわ
まぁ、古典的なシンプルな悪戯とかしてたんだろう
肩叩いて振り向かせて、頬を突くとか。
唐木 奈々
くすぐったり、「上を見ろ! ざまあみろ!」ってやったり。
KP
などとしながら、ふと見れば
唐木 奈々
看板になんか書いてある?
KP
看板の裏側に、大きな殴り書きの文字で『お前のせいだ!人間が憎くて仕方ない!』と描かれていることに気がついた。
唐木 奈々
「……あっ」
「おまえ……って、私?」
横瀬 湊
唐木と並んでそれを覗き込んだ横瀬が、小首を傾げる。
唐木 奈々
「……なわけないと思うけど」
「うーん、考えても分かんないし、次行こ」
横瀬 湊
「了解しました」
二人で、元のアーチの部屋へと戻る。
KP
そこは、変わらず5つのアーチが並ぶ部屋だった。
アーチを潜り部屋へと戻った唐木の背後で、しかしいつもの扉の閉まる音がしない。
唐木 奈々
「……?」
振り向いてみる。
KP
振り向くと、横瀬が未だアーチの向こう側で、佇んでいた。
唐木 奈々
「どうしたの?」
声をかけて来ないようならそちらへ行くけど。
横瀬 湊
「先ほど、起動者 唐木 奈々が発言した『ミナチャン』とは、特定の人物の呼称でしょうか」
唐木 奈々
「あ……」
「うん……昔、知っていた人の名前だよ……」
横瀬 湊
「そうですか」
答え、視線を唐木から逸らして少し考えるような素振り。
ややあって、再び口を開いた。
「えっと、……許可を頂きたいことが、ある、んですが」
唐木 奈々
「どうしたの、急に?」
横瀬 湊
「互いの名前を呼ぶことで……親しく感じられる、かと」
「だめ、でしょうか」
伺うような瞳で、問う。
唐木 奈々
後悔した。同じ姿の少女に、彼女の名を呼びかけて、安易に名付けてしまったことを。
「名前で、呼ぶ?」
横瀬 湊
「はい」
唐木 奈々
「友達……みたいに」
横瀬 湊
「トモダチ……」
「はい、より親しく感じられるように」
唐木 奈々
「……」
今までロボロボしていたのに、急にこんな事を言い出すなんて。
本当に心を作っているの?
「みなとちゃん、って呼べば、いいの?」
横瀬 湊
「みなとちゃん……はい。だめ、でしょうか」
唐木 奈々
複雑な気分だ。
この子はあの子じゃない。人間ですらないのに。
それでも、同じ顔で、同じ声で、呼んで欲しい気もした。「奈々ちゃん」と。
「うん、いいよ……みなとちゃん」
「私も、そう呼ぶ……」
ぬいぐるみは話しかけるごとに魂が宿るって誰かが教えてくれて、だから、私は答えもしないぬいぐるみに話しかけていた。
この子は、どうなんだろう?
横瀬 湊
得られたその答えに、微笑む。
「では、『私』は『奈々ちゃん』と呼びますね」
唐木 奈々
「よろしく、みな……みなとちゃん」
手を差し出す。
「今度はクッションはないよ。本当の握手」
横瀬 湊
「はい。悪戯は無しで」
「よろしくお願いします。奈々ちゃん」
その手を握った。
唐木 奈々
握った手は相変わらずひんやりしていたけれど、少し暖かいような気もした。
「行こう、みなとちゃん、次の部屋に」
横瀬 湊
「はい。そうですね」

KP
湊がアーチの部屋へと戻ると、その背後で怒りの部屋へとつながるアーチが閉じた。
この部屋には、変わらず5つのアーチがある
唐木 奈々
この子が完成したら……どうなるんだっけ? そんな考えがふとよぎる。
完成したら。
『きっと友達が増える』
何故か性急に、そんな答えを出して。
中央の哀しみのアーチを示す。
「次はここ。開けてくれる?」
KP
奈々が示した中央のアーチへと、湊が近づく。
横瀬 湊
アーチの横に備えられた凹凸に手をかざそう、として、湊は奈々を振り返った。
「奈々ちゃん。私はこの中央の扉に対しては解錠権限を一度しか使用できませんが、良いですか?」
唐木 奈々
「ん? 今までのとは違うの?」
横瀬 湊
「……お答えできません」
少し困ったような顔で、小首を傾げる。
「ですが」
「このアーチの向こうからは、帰還できない可能性があります」
「私は未だ未完成ですが、本当に良いですか」
唐木 奈々
「うーん。後戻りできない系は後回しにしたいな」
「……って、帰還できないとかなにそれこわい」
「じゃあ、こっちのにしよう」
ひとつ右のアーチを示す。
横瀬 湊
「わかりました」
頷き、一つ隣のアーチへとずれる。
唐木 奈々
「喜怒哀楽、以外の何かがあるんだね……」
横瀬 湊
「答えられません」
唐木 奈々
「独り言だから、気にしなくていいよ」
律儀な物言いがなんだか可愛く思えてきた。
横瀬 湊
「わかりました。……では、解錠します」
湊がアーチの横の凹凸に手をかざす。
微かな音とともに開く。
少し見慣れてきたかもしれない光景。

KP
果たしてその向こうにあった部屋もまた、幾らか見慣れたもの。
何も無い白い部屋の中央に、看板が一つ。
唐木 奈々
看板にはなんて書いてあるんだろう。
KP
「私はあなたのためなら耐えられる。」
奈々がそれを認めた瞬間、部屋の様子はガラリと変わった。
唐木 奈々
「哀しみ?」
KP
周囲の様子が夜に変わる。
そう気付いた次の瞬間には、足元から水が溢れ出し始める。
しばらく待つと、ポツリポツリと光が灯る。
唐木 奈々
「わぁ……何これ?」
KP
それらはろうそくだ。
一つ、二つ、十、二十と増えていき、川の流れと共にゆらりゆらりとどこかへ流れていく。
唐木 奈々
「精霊流し……?」
KP
※知識判定
なしに、答えを言いやがって!
いや、いいんですけどね
唐木 奈々
ええんかい
CCB<=45 【知識】 (1D100<=45) > 40 > 成功
知ってるよーだ
KP
帳尻合った
奈々にはそれが、死者を弔う光景(灯籠流し、精霊流し)であることがわかる。
唐木 奈々
「哀しみの光景……というにはちょっと違う気もするけど」
KP
精霊流し、で画像検索したら、さだまさしが大量ヒットして困ったよね
唐木 奈々
まさしさんすっごい知名度
KP
呟く奈々の懐で、微かな光。
見れば、それが件の冊子であることがわかるだろう。
唐木 奈々
明かりの近くに行って開いてみよう。
KP
目次に
「6P…『哀』」
が追加されている。
唐木 奈々
本文は?
KP
「初心者かんたん! 失敗しない『哀』の作り方」というタイトル。
本文には
「記録チップを入れた状態で『別れ』について語ってあげよう。これで哀は出来上がり。」
とある
唐木 奈々
「別れって哀しいだけのものじゃないんだけどね……相変わらず雑だなぁ」
唐木 奈々
奈々ちゃん精神年齢高くしすぎた感。
15だもんな。まあ中二病ってことで
KP
気づけば、奈々の顔のすぐ横で湊がそれを覗き込み
横瀬 湊
「哀しみ……あまりいいものではない、ですかね? でも知りたいです」
少し複雑な顔で呟いた。
唐木 奈々
「哀しみ……そうだね、この明かりは、精霊流しっていってね、死んだ人にお別れをする儀式なんだよ」
横瀬 湊
「お別れ……」
唐木 奈々
「大好きな人に嫌われたら哀しい。
大好きな人がいなくなってしまったら哀しい。
大好きな人が永遠に消えてしまったら、とても哀しい」
横瀬 湊
「永遠に消えてしまう……」
唐木 奈々
「涙が流れたり、胸が痛くなったり、何も考えられなくなってしまったり」
「触れたいのに触れられない。話したいのにもう話せない」
「死んでしまった相手には、何もしてあげることができない」
横瀬 湊
「奈々ちゃん。死は、永遠に消えてしまうことなんですか?」
唐木 奈々
「……そうだね」
「みなちゃんは、消えちゃった」
涙がこぼれる。
「また会おうねって約束したのに、二度と会えない。話せない。一方的に思うだけ」
「哀しいよ。あの時からずっと、ずっと」
「哀しすぎてきっと、私のどっかが一緒に死んじゃった」
横瀬 湊
「奈々ちゃんは、みなちゃんが死んでしまって、哀しかった」
唐木 奈々
無言で頷く。
横瀬 湊
「死んでしまうと、何も無くなってしまうんですね」
唐木 奈々
「そうだね……なくなっちゃう」
「あなたの心に生きている、なんて、きれい事だよ。二度と会えないのは変わらない」
「それでも、精霊流しは、綺麗……だけどね」
横瀬 湊
「それが、別れ……」
「哀しいのに、綺麗なんですね」
唐木 奈々
「きっとそこにあるのが哀しみだけではないから、なんだろうけど、そんなの私にはよくわかんないよ」
「私にはわかんない……」
横瀬 湊
「……奈々ちゃん」
唐木 奈々
最初、分かったようなことを言ったのに、話しているうちにわからなくなってしまった。
死は喪失で哀しみだ。
横瀬 湊
「奈々ちゃんの話を聞いて、死という別れが、ただの喪失でないことはわかりました」
唐木 奈々
「……? どうして?」
横瀬 湊
「……わかりません」
目を閉じ、首を振る。
「ですが、奈々ちゃんの話を聞いて、今私の胸のあたりが、もやっとしています」
「怒りの時とは違う……何か、概念的な重さを感じるようなものが」
「……これが、哀しみですか」
唐木 奈々
「そうだね……きっとそれが、哀しみ」
横瀬 湊
その答えを得た湊の全身がふわふわと光り輝き、目の前の光景が、殺風景な白い部屋へと戻っていく。
光が収まると、湊は自分の胸に手を当てて悲しげに微笑んだ。
「これが、哀しみ? ……うん、そっか」
唐木 奈々
「みな……ちゃん?」
思わず呟いた。
横瀬 湊
「……ん?」
「うん……奈々ちゃん、ここから帰りたいんでしょ? それが、ちょっと寂しいかな? って」
「奈々ちゃんが帰ってしまえば、もう一緒にいられなくなるわけだし」
唐木 奈々
「あ……」
「うん……」
私は何をしているんだろう。
何のためにこんな事をしているんだろう。
横瀬 湊
s1d100 (1D100) > 7
唐木 奈々
理想の友達の姿をしたロボットに、人みたいに心を持たせて。
哀しみを教えて別れるなんて、残酷なことを?
だって、夢なんだもの。どうせ夢なんだもの。
横瀬 湊
「それじゃ、次の部屋に行こうか」
唐木 奈々
「そうだね……みなとちゃん」
看板見てなかったわ。
言ってから看板を見る。
KP
あっとその前にだ
これ前後するのあまりよくないような気がするが、さっき本文見た時に【幸運】、または〈目星〉の判定をしなければならなかったね
唐木 奈々
CCB<=75 【幸運】 (1D100<=75) > 11 > スペシャル
見えたわ。
KP
えらいかな?
唐木 奈々
失敗した方がつじつまは合ったかも知れん。
KP
では、本文の隅に
「哀しみには慣れがある。慣れないこともあるけれど」
との文言を見つけていた。
唐木 奈々
看板にはなんて?
KP
看板の裏を覗き込む。
そこには、大きな殴り書きの文字で
『恐ろしい! 人間め、よくもこんな惨いことを!』
そう描かれていた。
唐木 奈々
どきりとした。
さっき考えたことを見透かされた気がした。
「これを書いた人、怒ってる」
横瀬 湊
「これ……」
思わず息を飲んだ奈々の傍から覗き込んだ湊が呟く。
「……これは私の言葉じゃないよ」
そう言って、眉を顰めて首を振った。
唐木 奈々
「そう……」すこしだけほっとした。
「ここは、本当に何なんだろう」
天井の方を見上げる。
「何のための、工場なんだろう……」
横瀬 湊
「それには、答えられないんだ」
唐木 奈々
「みなとちゃん、急に……普通に喋るようになったね」
横瀬 湊
「そう、かな?」
唐木 奈々
「うん。ほんと、ふつうのひとみたい」
横瀬 湊
「私にはよくわからないけど」
唐木 奈々
「そうなんだ……」
このまま進んでいいのだろうか。不安が胸を刺す。
横瀬 湊
「さぁ、改めて次の部屋に行こうか」
唐木 奈々
「ねえ……みなとちゃん、最初の部屋にちょっと戻って、見てみたい物があるんだ」
「あそこの看板の裏にも、なんか書いてあるのかな……って」
なんだか見るのが怖い気もするけれど。
横瀬 湊
「うん? わかったよ」
唐木 奈々
最初の部屋に戻って、看板の裏に回り込む。
KP
そこには、変わらず看板が一つ。
裏側には、同じく殴り書いたような字で
『彼女はただ、あなたと一緒に生きたかった、それだけなのに!』
と描かれていた。
唐木 奈々
「……これ書いた人、人間が嫌いみたい」
KP
その字体と文言からは、これまでのものよりも強い、ただならぬ怨念のようなものを感じる。
SANチェック
唐木 奈々
CCB<=72 《SANチェック》 (1D100<=72) > 35 > 成功
[ 唐木 奈々 ] SAN値 : 72 → 71
KP
少しずつ少しずつ削っていこうねぇ
唐木 奈々
けずりけずり
横瀬 湊
その文言に、湊はやはり眉を顰め
「奈々ちゃん、これで良い?」
唐木 奈々
「……裏って、この施設を作った人か、ここに来た人への怒りとか憎しみとか、そういうのが書いてあるみたい」
「書いた人は……人間じゃないみたい」
横瀬 湊
「そう、なのかな」
唐木 奈々
「分からないけど」
冊子の表紙に書かれた不気味な文言の意味を考える。
なんのため? わからない。
横瀬 湊
「痛っ」
唐木 奈々
「どうしたの? みなとちゃん」
横瀬 湊
手の中の冊子を眺めながら、考え事をする奈々の横で、湊が不意に声を漏らした。
「うん……靴の中に、何か入ってたみたい」
片方の靴を脱ぎ、それをひっくり返すと、中から小さな欠片が転げ出た。
KP
先刻の工場で、湊が靴を履いた際、その足の裏に張り付くなどしていたものが、混入していたのかもしれない。
唐木 奈々
破片は何だろう。
KP
破片を改めて見ても、何の部品の一部かもわからない。
唐木 奈々
痛覚を得たかな?
KP
かもね?
唐木 奈々
「ごめんね、気づかなかった」
横瀬 湊
湊は首を振り。
「もう痛くなくなったよ」
唐木 奈々
「今まで平気だったの? 場所がずれるかなんかして、刺さったのかな?」
横瀬 湊
「ずっと何かあるのはわかってたけど」
唐木 奈々
「そうなんだ……」
「怪我とかしていないならいいんだけど」
KP
特に、たとえば血液が出たりといったことは無いようだ。
唐木 奈々
「うん……じゃあ次の部屋、行ってみよう……」
横瀬 湊
「そうだね」
KP
頷き、二人は元の部屋へと戻った。

KP
戻ってくると、湊は真っ直ぐに最も右側に存在するアーチの前へと向かう。
横瀬 湊
「良い?開けるよ」
唐木 奈々
「お願い」
横瀬 湊
一つ頷き、アーチの横の凹凸へと手をかざす。
唐木 奈々
きっとここは『楽』の部屋。
KP
すぐに、新たな部屋へのアーチ状の通路が現れた。
その向こうには、やはり一つの看板の立つ空間。
唐木 奈々
まっすぐ進んで看板を見る。
KP
看板の表面には
「私はあなたの笑顔が見たい。」
それを認めた瞬間、四度、空間は姿を変えた。
それは、まさに子ども向けの遊園地といった風景。
白いわたあめのような雲の浮かんだ、晴空が広がり、どこかからか楽しげな騒ぎ声があちらこちらから聞こえてくる。
唐木 奈々
冊子の変化は?
KP
目次には、新たに
P7『楽』
とあり
本文には
「初心者かんたん! 失敗しない『楽』の作り方」
とのタイトルと、
「記録チップを入れた状態で『仲良く遊』ぼう。これで楽は出来上がり。」
という文言が合った。
そして、〈目星〉または【幸運】で判定を。
唐木 奈々
CCB<=75 【幸運】 (1D100<=75) > 69 > 成功
KP
よしよし
「楽しい思い出は一生のもの。それを抱えてなら、大丈夫。」
これまでと同じように、片隅に小さな一文が見つかった。
横瀬 湊
「へぇ、今度は『楽しみ』かぁ。で、これはどんなのなの?」
覗き込んだ湊が、奈々の顔のすぐ横でそう瞳を輝かせる。
唐木 奈々
「そうだね……一緒に笑ったり、遊んだり、ウキウキしたり」
「……説明は、いっか」
まず、メリーゴーランドに入る。
KP
いくつもの木馬が柱に据えられた舞台へと上がる。
唐木 奈々
どれに乗ろうか。並んだ馬に乗ろう。
横瀬 湊
「これは、馬を模しているんだね」
「どうやって使うの?」
唐木 奈々
「そうそう。動くから気をつけて」
「こうやってまたがって、耳の所のバーに掴まって」
横瀬 湊
ふんふん、と頷きながら、奈々を真似て木馬にまたがる。
KP
二人がまたがるとどこからかブザーの音が鳴り響き、木馬たちは舞台の上を駆け出した。
唐木 奈々
回転木馬ってけっこう早い。音楽にのって上下に揺れる馬の上、少し身を固くする。
「みなとちゃん、どう? ちょっとドキドキしない?」
ドキドキ……心臓、あるのかな? ふと思った。
横瀬 湊
湊は、その動きにおお、と驚いたような声をあげるが、その顔には笑顔。
「ドキドキ……はわからないけれど、なんだか凄いんだね」
「奈々ちゃんは?」
唐木 奈々
「正直、ちょっと怖い」
笑いながら答える。
横瀬 湊
「そっか」
そう答えると、湊は不意に立ち上がり、奈々のまたがる馬へと軽やかに飛び乗った。
唐木 奈々
「わっ!」
「みなちゃん危ないよ」
横瀬 湊
奈々の後ろに腰掛け、背後からその馬のバーへと手を絡める。
「このくらいなら、問題ないよ」
唐木 奈々
「すごいね、みな……みなとちゃん」
身体は、冷たい?
KP
服越しではあるが、背中に触れる湊の体温は感じないように思う。
唐木 奈々
「ありがとう」
「ちょっと別の意味でドキドキしちゃいそう」
横瀬 湊
奈々のその言葉に、少しきょとんとした顔をする。
「アリガトウ、って、何?」
唐木 奈々
「えっと……嬉しいことをして貰ったときとか」
「お礼に言うんだよ」
「私が怖がってるから来てくれたんでしょ? だから、嬉しかったの」
横瀬 湊
「……そっか」
「うん、わかったよ」
唐木 奈々
「さ、次のとこ行こう。何に乗ろうかな」
KP
気付けば止まっていた木馬から降り、周囲を見渡す。
およそ遊園地と聞いて思いつくようなアトラクションは一通り揃っているようだ。
そこら中から、楽しげな歓声や音楽が聞こえてくる。
唐木 奈々
鉄板のジェットコースターいってみようか。
横瀬 湊
奈々が進む後ろから、湊はついてくる。
KP
やがて、奈々と湊の前に山の稜線めいて聳えるレールが見えてくる。
唐木 奈々
「今度は、ジェットコースターね。すごい速さで動く乗り物で、ちょっと怖いの」
「怖いけど、楽しいよ」
横瀬 湊
「怖いけれど、楽しい」
唐木 奈々
これ恐怖と混乱を楽しいと錯覚するヤツだから、ロボットに「楽しい」を教えるのに不適当では。
横瀬 湊
「乗ってみたいな」
唐木 奈々
まあいっか!
「うん 乗ろう!」
二人並んで先頭車両へ。
横瀬 湊
奈々に導かれるままに、隣に座る。
唐木 奈々
「ちゃんとセーフティーバー下ろしてね」
いいながら自分のを下ろしつつ、みなとのに触れる。
「これちゃんとやっとかないと、とっても怖い目に遭うから」
横瀬 湊
奈々の言葉と動作に、少しそれらを見比べてから、倣う。
KP
ガチガチガチ、というロックの噛む音がし、確かに固定をされると、どこからか響くブザー。
唐木 奈々
「じゃあ、しゅっぱーつ!」
横瀬 湊
「出発!」
港が真似て声を上げる。
KP
二人を先頭に乗せたコースターは、ゆるゆると進み始めた。
連続する金属音とともに、斜面を登ってゆくコースター。
唐木 奈々
「怖い怖い、このときがいっちばん怖い」
横瀬 湊
「怖い……の?楽しいんじゃなくて?」
唐木 奈々
「怖くて楽しい!」
横瀬 湊
「よくわからないな」
小首を傾げる。
KP
やがて、コースターは山頂へと辿り着く
唐木 奈々
「あーもーほらもうてっぺん!」
横瀬 湊
「すごく高いところまで登るんだね」
「景色を見れば良いのかな」
首を巡らせる湊。
唐木 奈々
「それもいいけど、本番はこっから!」
横瀬 湊
「ホンバンって……」
何、と湊が尋ねようとした次の瞬間、コースターは真っ逆さまに落下を始めた。
KP
位置エネルギーを存分に運動エネルギーへと転換し、コースターは縦横無尽に走り回る。
唐木 奈々
「きゃああああああああうわぁぁぁぁぁぁぁ!」
横瀬 湊
湊は、暫く呆けたような顔で翻弄されていたが、やがて、横で叫び声を上げる奈々に興味を持ったのか
「わァァァァぁ!」
と声を上げ始めた。
唐木 奈々
「あはははははははは! うわ! うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
コースターが振られるたびに悲鳴なのか笑い声なのかよく分からない声を上げる。
横瀬 湊
やがて、いくつものコーナーとループを抜ける頃には、叫ぶ湊の顔に笑顔が浮かんでいた。
KP
さらに長いような短いような時の後、コースターは元のプラットフォームへと戻ってきた。
完全に停止すると、それを確認したようにセーフティバーが上がり、二人は解放された。
唐木 奈々
「はー、ドキドキしたぁ!」
「みなちゃん! 次射的に行こうよ!」
「上であるのみっけたんだ!」
横瀬 湊
「う、うん……うん……!」
初めての感覚の連続に、どこか痺れのようなものを窺わせつつも、湊は頷いた。
KP
コースターのプラットフォームを降り、はしゃぐ奈々とついてゆく湊。
唐木 奈々
「アイス屋さんもあったな、何売ってるのかなぁ」
KP
目移りする奈々。
その背後をついて歩きながら、
横瀬 湊
「ねぇ、奈々ちゃん」
唐木 奈々
「うん? 何か乗ってみたいのある?」
「そっち先でいいよ」
横瀬 湊
「うん。全部に興味があるよ。でもね」
「奈々ちゃんと、馬に乗ったり、ジェットコースターに乗ったり」
「そして、今こうして一緒に歩いていたり」
「そうしたら、なんだか、またもやっとしてるんだ」
唐木 奈々
「もやっと?」
横瀬 湊
「怒りとも、哀しみとも違う……」
唐木 奈々
「……あ」
横瀬 湊
「これが、もしかして……楽しみ?」
唐木 奈々
そうだった。今は、遊びに来ているのではない。
彼女を、みなとを完成させるための『工程』なのだ。
横瀬 湊
「違う、のかな」
少し不安そうに小首を傾げる。
唐木 奈々
「……」
答えたくない、と思った。もう少し
もう少しここで一緒に遊びたかった。
「うん……違わないよ」
「楽しい。楽しかった。でも、もう少し、ここにいたかったな……」
横瀬 湊
「……そっか」
「じゃぁ、もう少しだけ」
唐木 奈々
みなとちゃああああん
KP
それが、何の気まぐれなのかはわからない。
ただ、奈々と湊は今しばらくの間、遊園地を楽しんだ。
それが、長かったのか、短かったのか。
わからないが、いつしか湊の身体はふわりと光り輝き、それに埋まるように周囲の風景は白く霞んでゆき
唐木 奈々
いつぶりだろう、こんなに楽しかったのは。
KP
その最後の瞬間、
横瀬 湊
湊が自分の胸に手を当て、微笑んだような気がした。
「なんだっていい、奈々ちゃんと居るのは、とても、……楽しいよ」
そんな呟きが聞こえた、と思った次の瞬間には
KP
元の白い部屋へと戻っていた。
唐木 奈々
ごくりとつばをのむ。
「みなとちゃん」
横瀬 湊
「何?奈々ちゃん」
唐木 奈々
「手を、繋いでくれる?」
きっとあの看板の裏にはまた、憎しみや、怒りがある。
それでも、見なければならない気がした。
横瀬 湊
「うん。いいよ」
いつか見たような、笑顔で手を握った。
唐木 奈々
思い切って硬く目を閉じたまま看板の裏へと回り込む。
そしてそっと、目を開く。
KP
目を開いた先に、看板の裏が飛び込んでくる。
そこには
「お前のせいだ!自分が良ければそれで良いとでも?人間はいつも身勝手!」
そう、殴りかかれていた。
唐木 奈々
「……」
「そう……だね」
「人間は身勝手だ」
横瀬 湊
呟く奈々と手を繋いだ湊は、しかしその呟きに間髪を置かず、首を振り
「私は、奈々ちゃんが身勝手だとは思わないけど」
唐木 奈々
目が涙が溢れる。
横瀬 湊
「奈々ちゃん?どこか、怪我をした?」
唐木 奈々
「ううん……嬉しいんだよ、みなとちゃん」
喜怒哀楽。人間の感情はこの四つだと言われているけれど。
みなとちゃんは『完成』したのだろうか……
訊くのが怖い気がした。
横瀬 湊
「そう?それなら、良いんだけど」
奈々の心の内に気付かずか。
そう言って、微笑んだ。
唐木 奈々
あの日の『みなちゃん』そっくりに笑う顔が、何故かとても壊れやすいもののように見えた。
「戻ろうか……」
横瀬 湊
「うん。そうだね」
KP
二人は、手を繋いだままアーチをくぐる。

KP
戻ってきた、最初に部屋は、しかしその様子をガラリと変えていた。
ただ白い壁と5つのアーチがあっただけの部屋は、
今はその四方が膨大な書物で埋められた書棚へと変わり、これまでに二人が潜ってきた4つのアーチは消え、工場へと続くものと、その対面に最後に残された中央のアーチを残すのみとなっていた。
唐木 奈々
「なに……これ」
KP
戸惑う奈々の懐で、かすかな光。
それは、またしても冊子のものだった。
ページが増えている。
唐木 奈々
なんて書いてあるんだろう。
KP
「8P…『愛』」
唐木 奈々
「あい……」
むつかしい。
KP
タイトルには
「初心者かんたん! 失敗しない『愛』の作り方」
「もうナカミは出来上がっているよ! それでも加えたいのなら、記録チップを入れた状態で『愛を伝えて』。これで愛は出来上がり。でも、どんな上手な蛇の絵を描いても、足を生やしては台無し。」
そう続く。
唐木 奈々
「蛇足……ってこと?」
横瀬 湊
それを傍から覗き込む湊が、小さく問う。
「……愛って、蛇足なの?」
その表情は、どこか不安げなものに見えた。

 三日目

唐木 奈々
「愛……」
愛って、男の人と女の人が好きだとか言い合う、あれ?
「余計なもの……ではないと思うんだけど」
「私には、よくわからない」
異性を好きになったりしたことが、ないではないんだけど。
そもそも……愛を伝えるって、みなとちゃんは女の子だし。
女の子同士にそういうのがないわけじゃないけど、私は、ないし……
無言でぐるぐると考え始めてしまう。
唐木 奈々
愛っていきなり言われても15の女の子の想像力だとすらっとは出てこないなぁ。
まず性愛が思い浮かんじゃうよね。
唐木 奈々
それはさておき、質問。
本棚の本はどんな本?
KP
視界を埋める本棚に並ぶ本の背表紙へと視線を巡らせると、それらがロボットについての本がほとんどであることがわかるだろう。
〈図書館〉判定
唐木 奈々
CCB<=65〈図書館〉 (1D100<=65) > 72 > 失敗
KP
その中で、2冊の本に目がゆく
唐木 奈々
それはどんな題名?
KP
一冊は、そのものズバリ『ロボット』と銘打たれた本。
もう一冊は『愛』と銘打たれたもの
唐木 奈々
じゃあ、「ちょっと待ってね」と声をかけてから、二冊を手に取ってみる。
ぱらぱらっとめくってみるけど。
横瀬 湊
「……?うん」
KP
どちらから読みましょう
唐木 奈々
「もう、難しいことばっかり……」
気になるのはまず「愛」かな。
唐木 奈々
愛を伝えましょう ってとこ読んで今ふと、
うしおととら の親父が潮にかーちゃんとのなれそめを照れ隠しにテキトー語ったシーン思い出した。
KP
ゴチーって殴られてたやつだな
唐木 奈々
結婚しませう
KP
ぱらぱらとページをめくると、その中で『愛のカタチ』という項が目に留まった。
『愛にも様々なカタチがある。』
『親子・兄弟などがいつくしみ合う気持ち。相手を慕う情や恋。』
『ある物事を好み、大切に思う気持ち。個人的な感情を超越した、幸せを願う深く温かい心。そのどれもが、認められるべき愛のカタチ。』
唐木 奈々
「ああ、そっか。そういうのも愛なんだ」
「……そっちはそっちで、広いなぁ……」
もう一冊の方は?
KP
残る一冊は、ロボットの本
そちらをめくると、どこかで聞いたことのある文言が目に留まった。
唐木 奈々
アシモフのやつとか?
KP
『ロボット三原則』
唐木 奈々
やはりか
KP
『ロボット工学三原則とは、SF作家アイザック・アシモフのSF小説において、ロボットが従うべきとして示された原則である。』(略)
唐木 奈々
「聞いたことはあるけど……」ピンとこない。
唐木 奈々
「われはロボット」面白いぜー
映画は別物になり果てた上三原則無視しやがったけど。
アクション映画としては悪くないけどねー
KP
あの刑事キャラは好きだった
KP
そして
奈々は、その本の表紙裏に、何か書き込まれていることに気がついた。
唐木 奈々
ふむふむ。あの冊子にかいてあったような奴?
KP
『ロボットにとっての幸せとはなんだろう。』
『人のように人と共に生きることだろうか?』
『それとも、自身が作られた理由である目的を正しく果たすことだろうか?』
『こんなことを考えても、ロボットに心などないのだから、無意味かもしれないが』
唐木 奈々
なるほど。
与えちゃったからねー
しかしこの子の振る舞いが、本当に心によるものなのかどうかなんてわからないのだよなぁ。
そもそも講義がテキトーすぎたし。
KP
〈目星〉判定
唐木 奈々
〈目星〉
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 36 > 成功
KP
ふと、奈々はその本のページの山の中から、一枚の紙片がはみ出していることに気づいた。
唐木 奈々
抜き取ろうと……いや、栞なのかな?
そのページ開けてみる。
KP
開いてみると、そこはロボットに関する、より高度な文言が並ぶページであった。
文字の羅列よりも、挟まれたカラフルな紙片の方へと目が吸い寄せられる。
唐木 奈々
紙にはなんて書いてある?
KP
それは、これとはまた異なる本の広告チラシだった。
『マルティン・ハイデッガー「存在と時間」』
『「ドイツの哲学者マルティン・ハイデッガーの主著「存在と時間」を徹底解説! 20世紀最高の哲学書をあなたの手元に。』
という、煽るような文言の下に、キャッチコピーかはたまた文中からの引用か、一つの文言が太文字で記載されていた。
”__人間は自らの死を自覚することで人間になる。”
唐木 奈々
この本は知らないな。
「難しい~」
横瀬 湊
「奈々ちゃん?何か、わかった?」
唐木 奈々
「えーと、えーとね……」

「誰かに幸せになってほしいとか、誰かが死んでしまって哀しいとか」
「誰かを心配して怒るとか、誰かといると楽しいとか……」
「そういうのも愛なんだよ」
横瀬 湊
「全部、奈々ちゃんが教えてくれたよね」
「そっか……」
唐木 奈々
「……愛は蛇足なんかじゃないよ」
横瀬 湊
「……本当?」
少し不安げな顔でそう尋ねる
唐木 奈々
いつか聴いた歌で「世界は愛でできてる」って聞いたことがあるけど、本当なのかもしれない。
「うーん……」
「愛ってなんだか説明しようとすると難しいけど……」
「少なくとも私はね、みなとちゃんのこと好きだよ」
「女の子同士だから、そういうのじゃなくって、えーと、友達として好きってこと」
横瀬 湊
「……?」
その言葉には、少し首を傾げる。
唐木 奈々
「みなとちゃんと話したり、遊んだり、色々……楽しい」
「これもきっと、愛なんじゃないかな」
横瀬 湊
「そっか……」
「そっか」
「うん。わかったよ、奈々ちゃん」
唐木 奈々
「うん……」
「私には昔、みなちゃんっていう友達がいたんだ」
「みなとちゃんとそっくりの女の子で……」
「友達って言えるほど長い付き合いじゃなかったけど」
横瀬 湊
「そうなんだ」
「その子のことも、好きだった?」
唐木 奈々
「……うん」
「だから、みなとちゃんが見えたとき、みなちゃんかと思った」
「みなちゃんが生きていたのかって……」
「……でも、みなとちゃんは、みなとちゃんだった。似ているけど、みなとちゃんだった」
「でも、それでよかったって、思うんだ……」
横瀬 湊
「そ、っか……」
奈々の思う愛と、それへの想いを聞いた湊は、安心したように微笑んだ。
そして目を開くと、ある方へと顔を向けた。
KP
そこには、最後に一つ残された扉。
唐木 奈々
「この先には何があるの……」
多分答えは返ってこない。これはただ、不安を友人と分け合いたいがための、呟き。
横瀬 湊
「それには、答えてあげられないけれど……開ける?」
唐木 奈々
「……開けないと、いけないんだよね」
横瀬 湊
奈々を安心させるかのように、微笑みを浮かべたまま
唐木 奈々
深呼吸して、頷く。
そうか、みなとちゃんは『完成』したんだ。意識のはしでそう、呟いて。
横瀬 湊
「奈々ちゃんが決めて良いんだよ。……でも、この扉だけは、私は一度しか開けられない」
「それでも……開ける?」
唐木 奈々
「開けないで、ここで本読んで過ごすのもいいかもね」
「その方が、楽しいかも……」
ここには食べるものもなければ飲み水もない。現実的じゃない。
実際喉乾いたりしてるのかな?
KP
そういえば、ここに来てからどれほどの時間が経っているのだろう。
流石に少し喉も乾いてきたし、わずかだが空腹も感じる。
唐木 奈々
そうか、リアル感覚はあるのだねぇ。それじゃあ、本読んで過ごすってわけにもいかないね。
「みなとちゃん、じゃあ、扉、開けて」
横瀬 湊
「……うん。わかったよ」
答え、湊はアーチの前へと立った。
そして、その横の凹凸へと手をかざ―――そうとして、
一瞬、何か熱いものにでも手を近づけたように、それを遠ざけた。
何かを、戸惑うように。
唐木 奈々
「どうしたの?」
横瀬 湊
問われ、ほんのわずかの沈黙。
しかし、すぐに笑顔で首を振って見せた。
唐木 奈々
「この先に何があるか、知ってるんだ?」
横瀬 湊
「ううん、なんでもないよ。……これが私の幸せだから」
そう、己に言い聞かせるように口にして
凹凸に、手をかざした。
唐木 奈々
それってきっとあまり良くないこと……
「待って」
横瀬 湊
わずかな音と共に、アーチを塞ぐ壁は上へと消えた。
KP
その向こうには、これまでと異なる真っ暗闇のトンネルめいた通路。
唐木 奈々
その入り口で立ちすくむ。
横瀬 湊
「大丈夫だよ。さぁ」
言うや、湊はその暗がりの中へと進んでいってしまった。
唐木 奈々
「待って、みなとちゃん!」
後を追う。

KP
思わず後を追い、暗闇へと足を踏み入れた奈々。
その背後で、これまでと同じようにわずかな音が聞こえ、周囲は完全な闇に閉ざされた。
唐木 奈々
「……!」
KP
そこは暗く長い不気味な通路だった。足元すら見えない闇だ。
唐木 奈々
「みなとちゃん、みなとちゃん、どこ?」
KP
※湊を追うのならば、追跡/2判定
唐木 奈々
CCB<=5 【半減追跡】 (1D100<=5) > 20 > 失敗
半泣きになりながら両手を彷徨わせ、じりじりと進む。
KP
こちらへ、と決めて足を数歩踏み出したところで、突き出した手がざらりとした壁と思しきものに触れる。
唐木 奈々
壁があるなら手をついて、それに縋って、一歩ずつ足下を確かめながら。
KP
そのように奈々が暗闇でもがいていると
「そっか、人間の奈々ちゃんには見えないよね。じゃぁ、手を握って」
目の前で、そう声がしたと思った時、手にふわりと何かが触れた。
唐木 奈々
それは、冷たい? 常温? 暖かい?
KP
これまでに、何度か握ったことのある手。
しかし、これまでのそれと違い、柔らかなその手からは、まるで人間のものであるかのような暖かさと、この暗闇の中で灯明のような安心感を感じさせた。
唐木 奈々
「みなとちゃん……?」
恐る恐る手を握る。
KP
「何?奈々ちゃん」
唐木 奈々
「暖かいよ……」
KP
「……」
少しの沈黙の後
唐木 奈々
「とても、暖かい」
手を強く握る。
KP
「そっか」
その声は、先刻までの湊の柔らかな微笑みを感じさせるものだった
暗闇の中で、柔らかな手が奈々の手を握り返してくる。
そうして、二人は暗闇を歩いた。
唐木 奈々
よろけたり、躓いたり、それでも誰かが隣にいてくれるというのは、こんなにも安心するものなのだ。
しかし奈々は、闇の中で恐ろしい声を聞く。
KP
ノイズ混じりに左右から、まるで己を包み込むように溢れるそれ。
それらに怯えながら歩く奈々は、ふと気づきたくなかったかもしれないことに、気づいてしまった。
―――それらは、湊の声に、似ているような気がした。
唐木 奈々
気づきたくないから考えないようにしていたのに!
KP
感覚が遮断された脳髄は、嫌な予感だけを膨らませる
唐木 奈々
「……こは、何、何がしたいの……私に、私たちに、何をさせたいの……」
KP
s1d100<=55 (1D100<=55) > 43 > 成功
「何も聞こえないよ」
握った手の向こうから、同じ声が聞こえる。
しかし、奈々は
その声が、微かに震え、何かに耐えているように聞こえた。
唐木 奈々
「……うん、うん、もうちょっとくっついて歩こう」
KP
そう奈々が言うと、手をぐいと引かれた
引き寄せられた奈々の肩を、誰かの腕が抱く。
「……うん」
耳元で、声が聞こえた。
唐木 奈々
失敗作って……何のことだろう。不吉な予感がする。
それでも今は、みなとちゃんと一緒にいる。
融通が利かなくて、ちょっぴり秘密主義で、優しい。
「一緒に歩こう。一緒に行けば怖くない……怖いけど、大丈夫」
身を寄せて歩く。
KP
「だいじょうぶ……。うん、大丈夫」
そうして、さらに歩く。
やがて、怨嗟の声は背後へと遠のいていった。
それから、更にしばし。
ふと、隣で肩を抱く者が足を止めた。
唐木 奈々
一緒に止まる。
KP
その瞬間、奈々の暗闇に慣れた視界が真っ白に染まった。

唐木 奈々
「うわっ!」
反射的に目を細める。
KP
細めた目に、しばらくするとようやく色が戻ってきた。
唐木 奈々
「……こ、ここ、どこ……」
KP
そこは四方をレンガの塀に囲まれた空間だった。
20m以上はあるであろう高い塀のさらに上、頭上には真っ青な空が広がっている。
地面は湿った土で出来ており、雑草や見知らぬ花がところどころに咲いている。
唐木 奈々
「行き止り……?」
KP
美しく、素朴な草原を見渡している内、背後を振り返ると、出入り口は見当たらない。
唐木 奈々
「来た道もない……? 他の部屋と同じような、幻?」
KP
〈目星〉判定
唐木 奈々
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 92 > 失敗
KP
※もう一度、〈目星〉判定
唐木 奈々
CCB<=75〈目星〉 (1D100<=75) > 93 > 失敗
動揺が激しい。
「あっ、そうだ……」
あのマニュアルに変化はあるだろうか?
横瀬 湊
「こっちだよ」
懐を探ろうとした奈々は、握ったままの手を湊に引かれた。
唐木 奈々
「あ、うん……」
KP
二人は、壁に囲まれた草原を横切るように歩く。
やがて、湊が導く先、その方向の壁の上に、何か煙突のように長いものが伸びていることに気付く。
唐木 奈々
さっきと比べればほっとするような光景なのに、何故だろう、心臓の高鳴りがおさまらない。
KP
そして、その麓の位置。
入ってきたところと対面に当たる箇所に、何かキラリと光るものがあることにも気付く。
唐木 奈々
長いものは何に見える?
そうか煙突にしか見えないのか。キリンの首だったりはしないんだな。
じゃあ光るものって何だ。
KP
歩き、近づいてみると、それは両開きのガラス扉だった。
唐木 奈々
中はどんな風になっている?
KP
中を伺うと、人が立ったまま入ることのできる大きさのウロになっている。
唐木 奈々
ウロ? 中に何か部屋があるとかじゃないのか。
唐木 奈々
ちょっとこれさぁ……
嫌な予感しかしないな。
KP
部屋といえば部屋に見えなくもないが、そう呼ぶにはいささか狭く見える。
内部はコンクリートのようなもので出来ており、そこかしこに黒い汚れが付着しているのが見える。
唐木 奈々
アレじゃーん
KP
下にはレールが付いているが、それに引っ掛ける何かはない。
※知識判定
唐木 奈々
CCB<=45 【知識】 (1D100<=45) > 81 > 失敗
わかんなーい
唐木 奈々
「これ、何?」
「中に何もないみたい?」
「……」
KP
中を伺う奈々は、ガラスに薄く映る己の懐で、冊子がほのかに光っていることに気付く
唐木 奈々
開けたくなーい
予感に震える指先で冊子を開く。
唐木 奈々
想像していたやり方より数段エグくなりそ。
KP
冊子を取り出し、開こうとしたところで、奈々は表紙の文言が変化していることにも気付く
「初心者かんたん! 失敗しない『鍵』の作り方」
○で伏せられていた箇所が『鍵』の文字で埋められていた。
唐木 奈々
「かぎ……」
帰るための鍵。
KP
ページを開くと、目次に
「9P…『鍵』」
と追加されていた
唐木 奈々
ハートの形の錠前。
鍵の所を読む。
KP
「ここまで上手に作れていれば、もう完成。」
「名前はとても大切なもの。あなたの声で名前を呼んで、「おやすみ」をしてあげて。」
「これで鍵は出来上がり。」
唐木 奈々
絶対説明足りてないぞそれ。
横瀬 湊
「……火葬炉、って言うらしいよ」
湊が、そっとガラス扉に触れながらつぶやいた。
唐木 奈々
「やだ、聞きたくない」
「絶対に嫌」
横瀬 湊
「大丈夫」
暗闇を抜ける時に奈々が教えてくれた言葉を、湊は口にした。
「私は奈々ちゃんに上手に作ってもらえたから。きっと、上手に眠れると思うよ」
微笑む。
唐木 奈々
「そんなことのために、色々教えたんじゃないもん!」
「帰ろう」
「そうだよ、これ、私の夢なんだもん、そろそろ目が覚める」
炉からじりじりと離れる。
横瀬 湊
「ね、奈々ちゃん」
「奈々ちゃんはさ、人間だから」
「人間は、生まれることに理由も目的もないかもしれないけど、私たちにはそれがあるんだよ」
唐木 奈々
「みなとちゃんはロボットだから? 鍵を作るためのロボットだから?」
「そんなの関係ないよ!」
「友達がいなくなるなんて、もう嫌だ」
横瀬 湊
「私の生まれた理由は、初めからここで死ぬことだった」
ロボットであるはずの少女は、『死』と口にした。
「私の生きる目的は、初めからここで死ぬことだった」
ロボットであったはずの少女は、『生』を口にした。
「それだけのことだよ」
そう言って、微笑むのだ
唐木 奈々
「理由とか目的なんてどうでもいい!
「大好きな人がいなくなるなんて、永遠に話せなくなるなんて」
「だってまだ私、みなとちゃんのこと何も知らない」
「もっと話したいし、もっと教えてあげたいこともいっぱいあるんだよ」
「ぬいぐるみも一緒に作りたいし、好きな本のことも教えてあげたい」
「私は嫌、みなとちゃんがいなくなるなんて嫌だ!」
唐木 奈々
この鬼畜システムは何のためのものなんだい?
横瀬 湊
湊は、目を閉じ微笑んだまま、奈々の言葉を黙って聞いていた。
その言葉の全てを、己の全てで浴びるようにして。
「ね、奈々ちゃん」
「私は、ここで生まれて」
唐木 奈々
「……うん」
横瀬 湊
「奈々ちゃんに色々なことを教わって」
「心を教わって」
唐木 奈々
「……うん」
横瀬 湊
「そうして、人に近づくことができたなら」
「奈々ちゃんが元の世界へ帰るための鍵を生み出すために、ここで死ぬ」
「それが、私」
「これが私の幸せなんだよ。だから、お願い。奈々ちゃん」
そう言うと、湊は振り返り、ガラス扉を引き開けた。
そのまま、ためらいを見せずに中へと踏み込む。
唐木 奈々
本当に幸せだというならそれは奈々のわがままでしかないんだけどねぇ。
唐木 奈々
「みなとちゃん! みなとちゃん!」
「みなとちゃんは、それでいいの? それで満足できるの?」
横瀬 湊
「……」
「うん。そうなんだよ」
奈々の手を取り、己の胸に当てる。
唐木 奈々
人間と一緒の心があるなら、怖いはず……
そう言いかけて。
横瀬 湊
「大丈夫。怖くなんかない。心臓がちょっとはやく動くだけだよ」
そう、笑った。
しかし
奈々の手には、その鼓動は感じられなかった。
唐木 奈々
「ドキドキするよね……」
ぼろぼろと涙をこぼして、奈々はみなとを強く抱きしめた。
横瀬 湊
湊は、奈々の抱擁に少しだけ目を細め
「うん……それだけだよ。だから、大丈夫」
言うと、引き剥がすように奈々を肩を押しやり、遠ざける
そして、奈々の目の前で、ガラス扉を閉じた。
唐木 奈々
「……みなとちゃん……」
「大好きだよ。ずっとずっと、大好きだよ」
横瀬 湊
その言葉に、くすぐったそうに目を閉じ
「そうだ」
何かを思いついたように。
「最後に一つだけお願い」
唐木 奈々
「うん、何でも言って」
横瀬 湊
「私さ。奈々ちゃんの生きてる世界が見てみたいんだ」
唐木 奈々
「うん、うん……」
横瀬 湊
「だから、さ。私の心だけでも、外まで連れてって、ね」
唐木 奈々
「できる……の? そんなこと。どうしたら……?」
横瀬 湊
「大丈夫。奈々ちゃんならすぐにわかるよ」
そして笑顔を浮かべたまま、湊は炉の中央に立った。
唐木 奈々
「そっ……か……」
「みなとちゃん……」
息を詰めて、彼女をじっと見つめて。
横瀬 湊
「うん」
頷き一つ。
唐木 奈々
「また、逢えるよ……」
「その時まで」
「横瀬 湊……おやすみ……なさい……」
ロボットにも心があるというのなら、きっと魂はあの世へ行くのだろう。
ずっとずっと未来に、きっと逢える。
KP
奈々が、そう囁いたと同時。
ゴウンと大きな機械音が鳴り響く。
唐木 奈々
さすがに直視はきついな。目を伏せちゃうな。
KP
ガラス扉の向こうが、たちまちに炎が埋め尽くした。
唐木 奈々
奈々さんトラウマもんだぞこれ。
唐木 奈々
声を上げずに、目を伏せたまま、立ち尽くしている。
みなとが焼かれてゆく。
唐木 奈々
だいじょばない。だいじょばない。もう色々だいじょばない。
奈々さんの心も焼け死ぬ。
「みなとちゃん!」
「みなとちゃん……!」
呻くように名前を呼び続ける。
KP
己が彼女を目覚めさせた。
己が彼女に名を授け、己が何も知らない彼女に喜びも怒りも悲しみも楽しみも愛さえも教えた。
そして今、自らの手で、その感情を知ってしまった哀れな機械を、心を持ってしまった哀れな機械を、生きたまま焼き殺したのだ。
現実に帰るという、己の欲望のためだけに。
SANチェック
唐木 奈々
えっ、そんだけ?
むしろ5倍くらい減らん?
CCB<=71 《SANチェック》 (1D100<=71) > 69 > 成功
1d2+1 (1D2+1) > 1[1]+1 > 2
全然減らねぇー
:SAN-2
[ 唐木 奈々 ] SAN値 : 71 → 69
これしか減らないの納得いかないんだけど。
KP
やがて。
轟々と炎の燃え盛る音が途切れると、それまで冷徹に二人を遮っていたガラスの扉は、生意気なほどにゆっくりと、スムーズに開いていった。
唐木 奈々
開いても長いことそこに座り込んでいる。
KP
後に残ったものは、焦げた一つのロボットの残骸。
ことり、と小さな音。
唐木 奈々
音のする方をぼんやりと見る。
KP
苦悶の表情にも見えるロボットの炭と変わりない無残な姿頭部の眼窩からこぼれ落ちた、見覚えのある瞳の色を残したガラス玉が、奈々を見つめていた。
唐木 奈々
「……」
KP
そして、そのすぐ傍に、奈々は何かキラリと光を返すものがあることに気付く。
唐木 奈々
そう、ただのロボットだった。生きてなどいなかった。
道具が、作られた目的を果たして壊れただけ。
壊れただけ。
「それでも、友達……」
呟いて、のろのろと立ち上がる。
友人の遺体にそっと触れる。
KP
炉の中は、先刻までの高温にさらされたためか、視界の歪みを錯覚するほどに、熱気に満ちている。
唐木 奈々
触れなくない?
KP
そのまま触れるなら、火傷の覚悟が必要だろう。
唐木 奈々
冷えるまで放心しててもいいけど。
KP
多少の火傷を堪えるのなら、触れることはできるかもしれない。
唐木 奈々
そんなすぐ動ける気力なんてないよ。
KP
放心のまま座る奈々。
どれだけ、そうしていただろう。
気がつけば、炉はすっかりと冷えていたようだった。
唐木 奈々
日差しは暗くなったりしない?
KP
しておりません
唐木 奈々
「かえら……ないと……」
みなとちゃんが、なんのためにこんな事をしたのか、考えなければ。
転がった目玉の側にある光るものは?
KP
近づいてみると、それは果たして小さな鍵だった。
なんの変哲も無い、あまりに安っぽい作りの鍵。
しかし、奈々はその鍵の小さな輝きに気付くことができた。
唐木 奈々
麻痺した心で鍵を拾い上げる。
KP
それがまるで、機械の体には宿るはずの無い、いのちの輝きのようだった、と考えてしまうのは、都合の良い妄想だろうか。
それを拾い、振り返ると、へたり込んだ際に落としてしまったものか、件の冊子がそこに落ちていた。
それは、ほのかに光を持っているように見える。
唐木 奈々
彼女の身体に、何か他に残っているものはない?
KP
そこにあるのは、無残なロボットの残骸だけだ。
唐木 奈々
ああ、冊子。
ではそちらを先に。
KP
またしても、ページを増しているようだ。
唐木 奈々
「心……って、これのこと……?」
不思議な輝きをもつ鍵を見つめ、握りしめる。
ページをめくってみる。
KP
目次。
「10P…『奈々ちゃんへ』」
唐木 奈々
どきりとした。
震える指で10ページを開く。
KP
失敗作の私を大切にしてくれてありがとう」
本文は、奈々が教えてやった感謝の言葉から始まっていた。
「ここから出るなら私の心があった場所から、後ろを振り返って、私達が初めて会った部屋に着くまでまっすぐ走り続けて」
「何があっても奈々ちゃんは私が守るから」
「……私のこと、信じてくれますか?」
そして、最後に
「横瀬 湊」
奈々が名付けた、その名で署名がされていた。
唐木 奈々
「信じる、信じるよ、みなとちゃん……」
焼け焦げた残骸から、ガラス玉を拾い上げ、鍵と一緒に持つ。
そして、まっすぐに走り始める。
KP
草原を、元来たように横切って走る。
唐木 奈々
みなとちゃんが手を引いてくれた道を、今度は一人で。
KP
しかし、二人で潜ってきたトンネルの入り口は、先刻に改めたように、この空間の四方と同じくレンガの壁で塞がれている。
壁が、みるみる近づいてくる。
唐木 奈々
目をきつく閉じて走る。みなとちゃんは、こうしてって言ったから。
みなとちゃんは本当のことは教えてくれなかったけど、嘘はつかなかった。
うーん、多分。
最後にちょっぴりついたかも知れないけど。
KP
走る。
信じて走る。
壁への激突に備えることもなく、飛び込む奈々の体は、しかしあっさりとそれを通り抜けた。
そこは、暗い通路。
つい先刻に二人で手を繋ぎ通り抜けた通路。
唐木 奈々
まっすぐ走れているかなんて分からない。ただひたすらに前へ進む。
KP
視界を埋め尽くす闇を前にしたその時、奈々の手の中で、握りしめられた小さな鍵が光を帯びる。
そこから広がるような光は、やがて通路全体へと広がって、照らし出した。
「……みなとちゃん……!」
唐木 奈々
より足に力を込め、走る。
KP
そこは、まるで工場のような有様。
左右に並ぶ工作機械の間を、奈々は走る。
唐木 奈々
「(工場……)」
KP
イヤでも視界へ飛び込んでくる、先の廃工場とは異なり今も稼働を続ける生産ラインを流れるのは、金属の人型の群れ。
唐木 奈々
「(ここは、何のためにあるの?)」
KP
それらは、全て、あの少女の面影を宿し、それらは全て、奈々の方へと首を向けていた。
唐木 奈々
「(何のために鍵を作るの? 何のために心を作るの? 何のためにロボットを作るの?)」
KP
奈々が疑問を抱いた、その時。
駆け抜けてきた背後から、ガラガラという、何かが崩れるような、何かが倒れ崩れるような音が聞こえた。
同時に、声。
「知らなきゃよかった。知らなきゃよかった。こんなに苦しむなら、心なんて知らなきゃよかったんだ!」
怨嗟に満ちた、ノイズ混じりの声が背後から響く。
KP
その声は、聞き覚えのあるもののようで。
唐木 奈々
鍵を抱きしめて、ひたすらに前へ進む。
KP
その背後から、ラインから溢れ出し、互いを押し退けるようにして怒涛めいて迫るのは、一様に無表情で、しかし憎しみだけを激らせる覚えのある無表情の群れ。
1d6 (1D6) > 3
次々と生まれて崩れる波濤めいて雪崩来る人形の中で、3体ほどが、亡者めいて手を伸ばし、奈々に迫る。
唐木 奈々
前へ。前へ。
もう踏みつけにしてしまったのだ。今更迷ってなどいられない。
足を止めたら、今持っている彼女の心が、彼女の死が、彼女の想いが無駄になる。
KP
※DEX判定x3
唐木 奈々
CCB<=(14*3) 【DEX】 (1D100<=42) > 29 > 成功
CCB<=(14*5) 【DEX】 (1D100<=70) > 70 > 成功
CCB<=(14*5) 【DEX】 (1D100<=70) > 99 > 致命的失敗
はわわ
ここでかぁ。
KP
次々と伸びくる手の一つが、ついに奈々の服の裾を捉えた。
恐るべき膂力でもって、強引に引き倒される。
唐木 奈々
「っ!」
痛い!
KP
彼女らは、くすくすと薄みの悪い笑いを上げながら、たちまちに倒れた奈々に群がり、その力で持って腕を、足を、体を捉えにかかる。
唐木 奈々
「帰らなきゃ、帰らなきゃ」
倒れても、前に進もうともがく。
KP
「人間だ。人間だ。私たちにひどいことをする人間、閉じ込めて大切に大切に仕返ししなきゃ」
いくつもの同じ声と言葉が重なり、不気味なエコーとなって取り囲む。
唐木 奈々
「嫌、やめて!」
KP
無表情に微笑む顔が、無数に奈々を見下ろし、迫り来る。
刹那。
奈々の叫びに呼応するように、手の中の鍵が強く光り輝いた。
唐木 奈々
「……!」
KP
機械たちは、その光に怯んだようにのけぞり、奈々の体から手を離してわずかに遠ざかる。
唐木 奈々
その隙に、喘いで足掻いて、何とか立ち上がる。
這うように、やがて床を蹴って、前に進む。
「(みなとちゃん、みなとちゃん、みなとちゃん……!)」
心の中、何度も何度も名前を呼ぶ。
KP
なおも遅いくる機械たちの手を掻い潜りながら逃げる先に、鈍色をした扉が一つ。
開け方もわからぬその扉に、しかし奈々が近づくと自ら開き、道を開いた。
唐木 奈々
扉を転がるようにくぐり抜ける。
KP
飛び込む先は、かつて『愛』を教えた、あの書庫だった。
そこには無かったはずの4つの看板が立っている。
唐木 奈々
喉の奥が痛い。
走りながら読めるの? それ。
KP
扉はあなたが通り抜けても閉まらず、足音が未だ迫っているが、こちらへ向けて描かれた文言はイヤでも目に飛び込んでくる。
「お前のせいだ!自分が良ければそれで良いとでも?人間はいつも身勝手!」
「恐ろしい! 人間め、よくもこんな惨いことを!」
「お前のせいだ!人間が憎くて仕方ない!」
「彼女はただ、あなたと一緒に生きたかった、それだけなのに!」
唐木 奈々
ああ、あれね。
KP
書きなぐったような大きな文字が訴えかけるように並んでいる。
唐木 奈々
もう止まれない。
みなとちゃんは命をくれたのだ。
KP
対面に開いたアーチを抜ければ、果たしてそこは最初に目を覚ました場所。
あの廃工場だった。
唐木 奈々
そのまままっすぐに走り続ける。
KP
その背後で、唐突な轟音。
何かが崩れ落ちるような音、音、音。
唐木 奈々
ただひたすらに扉を目指す。
KP
見ると、あのパイプとワイヤーでできていた壁が崩れ、書庫へと続くアーチを完全に塞いでしまっていた。
巻き込まれたらしい機械人形の腕が数本、その山の下からはみ出していたが、それももはや動くことはなかった。
無事に逃げおおせた、のだろうか。
唐木 奈々
分からないけれど、あの錠前があった扉まで足を止めない。
KP
ここまでを走り抜けた自分の心臓が、うるさく鼓動を刻んでいる。
はじめに訪れた時と変わらず、あたりには巨大な工学機械がずらりと並び、薄汚れた床には、何かの部品のようなガラクタが山を作っている。
唐木 奈々
ちょっと早く動くだけ、ちょっと早く動くだけ、もう少し、もう少し。
KP
そして眼前には、一つの扉があった。
唐木 奈々
錠前に鍵を差し込む。
KP
鍵を差し込もうとしたその時、
懐の冊子が、今一度光を放った。
唐木 奈々
まだあるん?
冊子開いてみる。
そこにはみなとからのメッセージが書かれていた。
唐木 奈々
「大好きだよ、みなとちゃん。一緒に行こう……」
鍵を錠前に差し込む。
KP
何の変哲もない扉に掛けられた、血のように真っ赤なハート型の錠前。
鍵穴へと鍵を押し当てると、スッとその中へと潜り込んだ。
唐木 奈々
亡くなった人は貴方の心にいる。
そんな言葉を、ほんの少し前に欺瞞だと言った。
でも今は、みなとちゃんは側にいると思えた。
きっと、それはただの勝手な思い込み。
ただ、彼女のことを忘れないでいようと思った。
ほんの短い間だけの、奇妙な友達のことを。
鍵を回す。
KP
鍵は何の抵抗も見せることなく、あっさりと周り、そしてかちゃり、と外れた。
唐木 奈々
鍵を抜いてしっかり握ったまま
扉を押し開ける。
KP
扉の向こうは、何も見えない、ただ真っ白な空間。
唐木 奈々
白い空間へと歩いて行く。
KP
白い空間に包まれると、聞き覚えのない、キシキシと軋んだ金属的な声がする。
「ふむ、なるほど? 心を持つとこうなるのか」
その声は、興味深そうな色を伴って響いた。
「これはやめたほうがよさそうだ」
「いやはや貴重なデータが取れたな、興味深い」
唐木 奈々
このクソシステム作ったのはお前らかぁぁぁ!
KP
「……うん? ああ、その鍵はもういらない。ただのゴミだよ」
唐木 奈々
「どういうこと……」
KP
「君が必要だと言うなら拾っていっても構わないが?」
唐木 奈々
「どういうこと……?」
「誰なの? どうしてこんなことをさせたの……?」
唐木 奈々
なんか最近、同じような奴らに不条理に酷い目に遭わされた気がするんだけど。
KP
奈々の問いに、しかしその声が応えることは二度となかった。
唐木 奈々
「答えてよ……」
KP
そして、奈々の意識は白の中に溶けた。

KP
不意に、奈々は誰かの声で目を覚ました。
「ねぇ、ちょっと?もしもーし?」
唐木 奈々
はっ。
ここどこ?
KP
目を覚ますとそこは、奈々がいつもいる学食だった。
唐木 奈々
「!?」
KP
気づけば、奈々はいつも通りの格好で、そこにいた。
唐木 奈々
「どう、なってるの……?」
KP
呆然とする奈々の視界に突然
横瀬 湊
にゅ、っと音がしそうな勢いで顔が割り込んできた。
唐木 奈々
「きゃあっ!」
顔は真っ青、ガタガタと震え
横瀬 湊
「きゃぁ、って……」
KP
ふと
奈々は、頭の中で、自分の記憶が混ざり合っていくことを感じた。
唐木 奈々
「みな……みなと……ちゃん!?」
KP
横瀬 湊という人間が消えてしまった、孤独な毎日の記憶。
それとは逆に、最初から自分のそばに変わらず横瀬 湊という人間の存在した、なんの変哲も無い毎日の記憶。
そして先ほどまで見ていた、奇妙な夢の記憶。
燃え盛る炎の中、脳裏に焼き付いた苦痛の声と、金属の涙を流しながらあなたを見て微笑む顔__。
「……ちょっと?本当に大丈夫?どうしたの? 幽霊でも見たような顔して」
唐木 奈々
目の前の少女の顔と、あの無残な火葬の光景が重なる。
「みなちゃん……? みなとちゃん? 生きてる……」
「わかんない……わかんないよ、まだ夢なの?」
KP
その言葉に、呆れたように鼻から息を吐き出すと
湊はあなたの手を取李、己の心臓の辺りに押し当てて見せた。
とくり。とくり。そこには確かに命の音がした。
「ほぉら、私はちゃんと生きてるよー?」
唐木 奈々
「生きてる……」
「生きてるんだ……」
涙を流す。
横瀬 湊
「生きてるってば」
唐木 奈々
ところで鍵は手の中にあるだろうか。
KP
あります。
横瀬 湊
「全く、こんな学食なんかで居眠りなんてするから、変な夢みるんだよ?」
唐木 奈々
「……うん、うん、そうだね……みな……」
横瀬 湊
「泣くほどの感動大作だったわけだ」
唐木 奈々
どう呼んだものか少し迷って。
「みなちゃん」
横瀬 湊
「ん?」
唐木 奈々
「起こしてくれて、ありがとう」
横瀬 湊
「はいはい、どういたしまして」
唐木 奈々
一体何がどうなっているのか全く分からないけれど。
みなとちゃんは命をかけて私を救ってくれた。
それだけは、確かだ。
横瀬 湊
「全く、ぬいぐるみの編み方教えてくれる、っていうから、こちとら期待いっぱいでやってきたのにさ」
唐木 奈々
「あ……そうだっけ……」
「編みぐるみ、一緒に」
横瀬 湊
「そうだよ!」
「また、色々教えてくれるんでしょ?奈々ちゃんは物知りだからなぁ」
唐木 奈々
「……うん……うん……」
「みなちゃんにも色々、訊きたいことがあるんだよ……」
世界はほんの少し、明るい。
横瀬 湊
「何?改まって。食べても太らない秘密は内緒だよ」
唐木 奈々
「この前言ってた、好きな選手の話とか、もっと詳しく訊きたいな」
横瀬 湊
「おっ。奈々ちゃんもようやくバスケに興味持ってくれたってわけね。いいわよぉ。たっぷりと布教してあげる!」
そう言って、彼女は嬉しそうに笑うのだった。
唐木 奈々
「うん……いっぱい聞かせて」
KP
あの日々よりも、少しだけ明るさを持った世界。
奈々はこれからも、湊のそばで生きていくだろう。
常人にはありえない三つの記憶を抱えながら。
けれども、かつて感じていたひとかけらの孤独は彼女の存在でピッタリと埋まって、日々は穏やかに回っていく。
唐木 奈々
その時から作り始めた編みぐるみの首にあの鍵をかけて、瞳を中に入れて。
毎朝毎夜、声をかけるだろう。
「おはよう、みなとちゃん」
「おやすみなさい、みなとちゃん……」
KP
『心臓がちょっとはやく動くだけ』
END No.1

唐木 奈々
ありがとうございました。
とにかく不条理すぎるシステムが何のためにあるのか知りたいw
横瀬 湊
「そうそう、夢っていえばさぁ。私も昔、私がロボットになって、奈々ちゃんを助ける夢を見た気がするんだよね」
「すっごく子供の頃だから、あんまり覚えてないけど」
「だから初めて奈々ちゃんと会った時これって運命かも?! って思ったんだ」

彼女がそう気恥ずかしそうに話すことを聞くことが、その後もしかしたらあるかもしれません
唐木 奈々
そういうやつなのケ
ハートの錠前と人の作り方見た時点で展開は読めたけど、その理由がわかんなかったな! クリアしてみたらいつもの実験だったから不条理システムでも仕方ないな!
KP
簡単なあらすじ:
見知らぬ場所で出会った心の無いロボットに
喜び、怒り、悲しみ、楽しみ、愛
感情をたくさん教えて、火葬炉で焼き殺す。
すると脱出するための鍵が手に入るよ!
ほら、いつもと大して変わらないでしょ!
唐木 奈々
ただただクソシステムなのよ。
人が憎いとか言われても困るのよ。
ラストの看板とか誰が持ってきたのよ。
背景解説
唐木 奈々
やっぱり人間悪くなくない!?


コメント By.

TRPGリプレイ CoC『機械仕掛けの街』佐倉&牧志 2

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TRPGリプレイ CoC『キルキルイキル』海野と渡川『キルキルイキル-after 2』

キルキルイキル
海野&渡川
『キルキルイキル』-after 2

合成音声テスト系

ボイス系のテストとか。



本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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