こちらには『Good morning ALL』の
ネタバレがあります。
本編見る!
サキ
要のそばにいた生き物たちの話を、夢中になって聞く。
牛や鶏や豚が育つまでの話。どうやって生まれるのか。
要がいた頃の世界がどんな形をしていたのか。太陽はどうだったのか。どんな星があったのか。
要のいた世界の月はどんなだったのか。

それから、要が話したがらないってことがなければ、要のいた世界にいた人間たちのこと。
ゴーツウッドまでの旅路のこと。
サキ
要が好きだったものの話を聞きたいな。
KP
ではそれから数日、あなたは要の話を聞いた。
かつての地球に存在した生きるものたちの話を。
地表を覆い尽くしていた植物たち、虫たち、動物たち。
家畜の育ち方については詳細に語られた。
サキ
生まれるってことは特に、すごいことだと思えた。
いままで崩れたり、滅びたり、なくなったりすることしか知らなかったからだ。
生まれる話、育つ話には特に夢中になった。
要 紫苑
「君は生き物の話となると目の色が変わりますね」
KP
自覚していない張本人がそんなことを言う。
サキ
「うん。だって生まれるってすごいことだろ? 
新しいのができるんだ。俺様見たことない」
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
おっ、ナイス話題振り。種まき種まき。
こうなると要が生物オタクだったのは丁度良かったな。

要 紫苑
「新しいの……次の世代のことですね。
生物は多様性を守るために雄と雌の2種が交配して次の世代を産むことが多いですよ。
例えば……」
KP
そこから植物の交配と遺伝についてなんて話までされた。
時折分裂で増える生き物などもいるが、そうすると環境の激変で滅んでしまったりするのだ、など。
要 紫苑
「ここで何があったかは知りませんが、サキが知っている以上、ここにも生命があったのでしょう。
多様性も意味をなさないほどの変化が起きたのですね」
サキ
「そうなのか。
混ざると新しくなるから、それで色んなやつができるんだな!
うまくできてんだな。

でも、すごく変わっちゃうとだめなんだな。そっか」
KP
天体にはそう詳しくはなかったが、今見える空は知っている空とは違うと言っていた。
要 紫苑
「私はよく知りませんが、たかだか数万年でこんなに変わることはないと思います。
もしかすると本当に異世界なのかも知れません」
サキ
「そうなのか。太陽も違うって言ってたもんな。
それならほんとに、違う世界なんだ。きっとそうだよな!
要がいた世界は、どこかにあるんだ!」
KP
だといいですね、と要は口元を緩めていた。
要視点
要 紫苑
ああ、本当にそのようだといい。僕たちは二人ともひとときの悪夢を観ているに過ぎないのだったら。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
神が干渉しているから自然科学の観点では異常な移動してるんですよね。

要 紫苑
「月には兔がいる、などという伝説もあるんですよ。
かと思えば都があり不死の月の民が住んでいるなどという話も。
随分遠くなってしまっていて、月の兔の影はよく見えませんね」
サキ
「不死の月の民かあ。
ほんとにいたら、俺様と友達になれるかな?」
要 紫苑
「そうですね。話し相手にはなるでしょう。
どちらかが老いて片方を置いてゆくなんてこともないでしょうし。
仲違いにだけは気をつけなければなりませんけどね」
KP
要はなんだか真面目な顔で語った。
サキ
「やだなあ喧嘩。でもさ、喧嘩しても仲直りしたいな!
喧嘩してからずっとずっと過ぎたら、喧嘩にも飽きて仲直りしたりしてさ。
……要、誰かと喧嘩したことあんのか?」
要視点
要 紫苑
不意に脳裏をよぎったのは、信じた奴に裏切られた記憶。
僕は本当に愚かだった。何も分かっていなかった。
あいつのことを友人だと思っていたのに、相手は僕のことを都合の良い愚かな道具としか思っていなかった。

一度気づけば、人間社会は詐欺と偽善に満ちていた。誰も本当のことなど言っていなかった。
あんな想いは二度としたくない。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
これについては、あまりに経験が強烈すぎて、人の善意や優しさを一切信じられなくなってしまった、というイメージです。
きっと要のことを本当に心配して気遣って、見ていてくれた人もいたはずなのですが、彼にはもう何も見えなくなっていました。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
ああー……一度の強烈すぎる裏切りが要さんをどうしようもなく傷つけてしまったんだ。
サキと一緒にいる状況でこれを思い出してしまうの、なかなか辛いですね。
そんな要さんに再び他者を教えたのも、サキだったのかもしれないなぁ。
KP
そう、そうなんですよ。
二人とも対話を忘れているところから始まってる話。互いに影響することで他者との対話を取り戻し、理解を経て愛に届く話。
あまりに綺麗すぎる。

要 紫苑
「……ありますよ……」
KP
あからさまに口が重くなった。
サキ
口が重くなったのに気づき、それ以上は追及しない。
要 紫苑
「人間は愚かです。私も含め、ですけどね」
KP
そんなことを言いながらも、彼は人間が生み出した様々なものごとについて語った。
夜も明るい都会や無数の物語、人が発明した色々な技術、乗り物。
ここに来るのに使ったのは飛行機と電車であるとか。
そういったことは生物のことほど詳しくはなかったが、
それでもあなたにとっては目新しく面白く聞こえたことだろう。
サキ
人間が生み出したものの話も、目新しくて楽しかった。
空を飛ぶ車に夜も明るい街、語り継がれる無数の物語。
それにお米を炊く道具! えっ、専用なのか? 
電気の概念はよくわかんなかった。難しい。
要 紫苑
「炊き方によって味が全く変わったりしますから、専用の機械で大事に炊くのです。
……専用のものの方が結局便利だったりするんですよ」
サキ
「そうなのか? じゃあ食べ物ごとに専用の機械があるのか?
ニンジン炊くやつとじゃがいも炊くやつで機械が違うのか? すごいな!」
要 紫苑
「そういえばニンジン専用、じゃがいも専用、というものは見たことがないですね。
米は特別なんだと思います。主食ですしね」
サキ
「そうなのか! 特別? 主食ってなんだ?
すごいな、食べ物から色んなものが作れるのか?
なんで作るんだ? 楽しいからか?」
代わりに、調理の話について聞き始める。
ここに調理という概念はない、そういえば火を起こす道具もない。
KP
ここから調理についての話が始まったりした。
要は一人暮らしをしていたので、それなりに自炊はできる方だったらしい。
要 紫苑
「美味しいからというのはもちろんありますが、効率よく安全に栄養をとるためでもありますね。
日持ちを良くして長く食べられるようにするというのもありますよ。例えばコンニャクという食材が……」
KP
焼く、煮るのほか、魔改造される食材たちの話などもした。
サキ
「なんだそれ! ぶよぶよになるのか! 触ってみたい!
いいなー、俺様料理してみたい」
様々な調理法にきゃっきゃと声を上げる。
サキ
「火かぁ、起こせたら寒くないかな」
要 紫苑
「確かにそうですね。
一般的に火は木をこすり合わせて摩擦熱で起こし、木材を燃焼させることで熱と光を……」
KP
「め、めぇー?」
要 紫苑
「そうですね、他にはレンズなどを使えば太陽光を使って簡単に起こせますが……あのビデオカメラも持ってくるべきだったかもしれません。
その場合も木材に燃え移らせて燃焼させることで……」
KP
「めぇ!?」
要 紫苑
「夜に一度試してもいいかもしれませんが、あまり期待はできませんね」
サキ
「大丈夫、おまえは燃やさない!
燃やすとして剥がした皮だけだよな、な?」
な? と要の顔を見る。
要 紫苑
「メーは燃やしませんよ。
皮が燃えないかな、という話ですし、硬い部分も無さそうでちょっと難しいと思いますし」
サキ
「よかった。大丈夫だからなー」
メーの樹皮を撫でる。
KP
「……めへぇ~」
KP
メーは落ちかけていたスピードを上げた。

KP
メー「モヤサレル!?」
サキ
メーがピンチに!
燃えなさそう
KP
燃えなさそう。皮もクシャクシャゴワゴワで若干柔らかいイメージなんですよね。
サキ
燃えたとしてもすぐに燃え尽きるやつ。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
ここはもう箸休め的にギャグシーンやってました。
ずっとシリアスだと疲れるんだよォ!
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
緩急ありがとうございます。
緩急、大事!
穏やかなシーンはその後のショックも盛り上げますしね。

サキ
俺様の話も、覚えてることがあれば何かする。
まだここに何かがあった頃に見つけたものの話とか。鏡が集まった建造物の話とか。
今まで何して過ごしてたとか。
これから行く場所の話もしよう。

何か覚えてることないかな。記憶を掘り出してみよう。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
うむむ。今から行くところの情報はあんまり出したくないし、そもそも描写などからいって詳しく知らないと思われるんだよなぁ!

KP
あなたに語れることはそう多くはない。
ひたすら岩をもすり切れる長い刻を生きていたせいで、あなたの記憶は薄い。
要がいた建造物もただの模様がついた壁程度にしか思っていなかったのだ。
鏡があったのも知っていたが、それは何を意味するのか考えたこともなかった。
いや、考えて何らかの結論を出したこともあったのかも知れないが、そういったことを忘れたことすら忘れてしまっているのだろう。
サキ
そういえば昔、色んなことを想像して遊んだこともあったのを思い出した。
想像できるような物が少なくなっちゃったんだよな。
砂ばっかりで、どれが何だった砂か、区別もつかなくなってた。
それに、想像もいい加減ネタ切れ。
でも要がいれば、また色んなことを想像できそうだ。

KP
それから更に数日。
夜になって、寒さを凌ぐためにあなたが要の体にくっついて寝ようとすると、要は居心地の悪そうな顔をした。
要視点
KP
サキが成人女性である、と気づいてしまうと、密着したときの柔らかさや暖かさが大変意識される。
要 紫苑
……落ち着かない……。一応、注意した方が、いいのだろうか。

サキ
それから数日後。
いつもみたいにくっついて寝ようとしたら、要が不思議なことを聞いてきた。
要 紫苑
「あの……サキは成人していますよね。いや、年齢の話ではなく。肉体的に」
サキ
「肉体? 俺様の?」
アイデアーッ!
KP
とうとう「あれこれこちらが大きいだけで相手成人女性では」って気付いちゃった。
サキ
気づいちゃいましたねぇ。
しかも「生まれるってすごいこと!」って発言の後。
KP
せっかくだから関連で詳しい話ふっとこう。
このリプレイでは話の時系列順に並び変えられていますが、プレイ当時ここまでの多種の話題は平行してやりとりされていました。

要 紫苑
「あまり触れないほうが良いのではと……その、私は一応男性なので」
サキ
「触れない?
なんでだ? 離れたら寒いぞ?」
不思議そうに返す。
未発達であるわけではなく、単純に、他者という概念が絶えて久しいのだ。
要 紫苑
「気に、なっていないなら、いいんですけど」
要視点
KP
今日もとても寒い。ほとんど裸のあなたにとって、睡眠時にサキが隣に居るといないとでは大違いなのだ。
おそらくそれはサキも同じ事だろう。
要 紫苑
僕が風よけになる……という考え方もある……か。

要 紫苑
「……寒いのは確かですし」
KP
結局くっついて寝た。孤独の寒さに負けたのだ。
サキ
「なにが気になるんだ?」
くっついて眠りにたゆたいながら、不思議そうに聞く。
要 紫苑
「私が男性で、君が女性だからですよ……まかり間違ってそういう気分に……」
要視点
要 紫苑
なっている場合じゃない!
真面目に心配するだけ馬鹿馬鹿しい!
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
ごめんな要さん。

要 紫苑
「なりません!
おやすみなさいっ!」
KP
早口に言って目を閉じ、黙り込んだ。
サキ
「? おやすみ、要」
家畜の生まれる話とは結びつかなかった。
不思議に思いつつ、要が話したくないならいいかと目を閉じる。
要視点
KP
サキは憎たらしいほどあっさりとあなたの腕の中で目を閉じた。
要 紫苑
なんだか……疲れた。
KP
すやすやと寝息を立て始める彼女の体はやはり温かく、柔らかい。
要 紫苑
ずっとこの寒さの中でもひとりで眠っていたのか。
余計なことは考えないことにして、風を防ぐようにサキの体を包む。

KP
さっき雄雌って話はしたけど男女とは結びつかなかった。
サキ
家畜の生まれる話に、具体的なそういう話や抵抗感の話はなさそうだったし。
KP
サイズが違いすぎるし状況が状況だからそんな気分にはならないと思う……
のに、わざわざそんな話振ったことを後悔した。
何より寒いからくっつきたいし。
サキ
そして、要さんのそんな後悔に全然気づかないサキであった。
KP
ちなみにメーのサイズが33で、要と6しか差がないんですよねー。
ルールから考えるとそこまで巨木じゃない。のですが、せっかくなのでとてもデカいイメージでやってます。
サキ
とてもデカい木に二人で乗ってるイメージの方が雰囲気いいですしね。
あんまり差がないと、どっちかというと要さんがサキをのっけてのしのし進むイメージになる。
KP
徒歩何ヶ月の道が二週間になりますし、だいぶ歩幅でっかいんですよねメーちゃん。
サキ
それはなかなかでっかい。
合計【SIZ】では差がなくても、幅がだいぶ違いそう。

KP
そうやって更に10日ほど経過した。
要の話は多岐にわたる。
最近の話題は様々な物語だった。
ドラマ、漫画、映画、童話に至るまで、彼が読んだり見たりしたことのある様々な物語が語られた。
それほど多くのものを読んだことはない、とは言いつつも、語るとなるとかなりの分量だった。
その物語の傾向も、比較的平和だったり生き物が出てくる話の方が詳細に語られる。
今日は朝からシートンという人物が書いたという話が続いていた。
恐ろしく賢い狼は、臆病な羊をまとめている山羊を見抜いて仕留める、なんて話をしている間、メーが何だか落ち着かなかった。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
これは『シートン動物記』の中の『狼王ロボ』の話ですね。
ちょい役ですが山羊が出てくる話であり、ロボとブランカの愛がキーになる話でもあるところもポイントです。

サキ
要の語る話を夢中になって聞く日々。
目まぐるしく展開される無数の物語を想像した。
人間という一つの生き物からこんなにたくさんの物語が生まれることを、夢中になって味わった。
KP
そんな日課になり始めた話のさなか、要が腹を押さえて呟く。
要 紫苑
「少し、空腹感が出てきた気がします……」
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
空腹については、実は要は二日ほど前から異常を感じていたものの、それが何なのか分からなかった、という裏設定があります。
要はサキ同様飲食が必要ない体になったのだと思い込んでいたため、あまりに弱いそれが空腹であると思い至れなかったのです。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
あっ、成程。
異常な体になったし、目の前のサキはこうだから、空腹があるとは思っていなかったんだ。
よりによって異常な世界で「お腹空いて飢えて死ぬ」なんて死に方を突きつけられるのはハードだよなぁ……。

サキ
その時間を不意に、要の呟きが遮った。
要が「いる」ことが、今日眠れば明日も要がいることが、喜ばしい当然になりつつある時間の最中だった。
サキ
「要、腹減ったのか!
どうしよう、食うものないよな? 今から戻るか?」
きょろきょろと周囲を見回す。じわりと喪失の恐怖がよぎった。
どうしよう。要の食べるもの。ここには牛も鶏も豚もない。
要 紫苑
「いえ、少しだけです。まだ大丈夫。
私も君と同じようになったのかと思ったのですが、そうではないようですね。
最悪、メーに樹液を分けてもらいましょうか……」
KP
その表情は暗い。あなたと同じことに思い当たったのだろうか。
要視点
KP
空腹がこのまま強くなっていったらどうなるのか。
あなたの懸念をあざ笑うように、不毛の大地は無限に広がっている。
要 紫苑
このままでは……死ぬ。
要 紫苑
……いや。別に生きていようと、さして違いもないか。

サキ
「そうなのか……。
要も俺様と一緒だったら、よかったのに」

じわりと目が潤んだ。
要もいつかいなくなる。
いなくなったら俺様またひとりだ。
要が教えてくれたことを書いておこうか。
それでもまた削れる。なくなる。

また、退屈になる。
要視点
要 紫苑
泣きそうなサキの顔を見ると、元気づけようという気分にはなった。
数少ない旅の連れだ。あまり悲しい思いをさせたいとは思わない。

要 紫苑
「氷の大陸に建造物があるんでしょう?
寒さが増している、そろそろ着くんじゃないですか?
そこにまた光で開く扉があるかもしれませんよ」
KP
要は困ったような顔でほんの少し微笑んだ。
サキ
「うー、そうだな、要がいればまた扉が開くかも!
俺様気にしてなかったけど、要が食べられるもの、あるかもしんないしな!
冷凍したら物が長持ちすんだろ?」
鼻水をすすり、涙をぬぐう。
あの氷の町まではもうすぐだ。
要 紫苑
「そうです、きっとありますよ、冷凍されたものが。
建造物があるなら、きっと文明が残した物が残っていますよ。
サキには無理でも、私は力があるようですから、冷凍されたものを取り出したりできるかもしれません」
KP
要は明るい声で言う。
左の手を腹に当てたままで。
要視点
KP
楽観的なことを言う間にも、空腹は消え去ってはくれなかった。

サキ
「うん! そうだよな! 要はでっかいし、要が来てから色々変わったんだ!
きっと、食べるものだってあるよな!」
そう少し大きい声で叫んで。目的地を、見つめる。
KP
確かに、翌日にはあの氷に閉ざされた土地に着くだろう。
温度は下がり、夜の気温は凍てつき、肌に突き刺さるほどだった。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
よしっと。良い感じに仲よさげになったイベントやったところで、とうとうイベントポイントに上陸。詳細は……
あれ。「水」がある。え。あるの? 水あるの? ええー? どうしよ。
っていうかサキちゃん今まで時間あったのにどうしてこの要塞入らなかったんだろう。
どうしてルリム・シャイコースは『今』になって突然サキを招く気になったんだろう?
うーん。わっかんねー。
まあ適当に誤魔化しとくか!
終了後トーク(ネタバレ)
KP
『今』になって招いた理由は、これまたサキが他者を認識したからかな、と思います。
外に目を向けずにいたサキは、ルリム・シャイコースから認識できなかったのかも知れないな、と。
で、招かれない限りあの要塞には入ることはできなかった。
そんなところで……いかがだろうかッ!?
サキ
そんな感じでッ!!
ルリム・シャイコースもなかなか、じゃあシュブ=ニグラス食べよう~ってならないと思うので、「他者」を知る前のサキは「人」として認識されていなかったのかもしれませんね。
魂のない生命が他者を認識したときに、人になったのかもしれない。
KP
なるほど食えると思われていなかったわけですね。ルリム・シャイコースにとってはずっと背景だったのかな。
サキ
だったのかなーと思いますね。
「神様」同士で食い合ってるようなダイナミックな世界には見えなかったし。
そういう命の新陳代謝、躍動をしないのが「神」なのかも。
サキ
シナリオ拝見しましたが、描写を流すタイプ(世界設定などが別に書かれていない)なので世界設定を描写から汲むしかなく、確かに回してみて「あれ?」ってなりやすそう。
ざっと読んでも、回すまでなかなか気づかないんですよねこういうの。

KP
翌朝、冷たい空気が早くに目を覚まさせた。
呼気が白い。なんならメーから白い湯気がたちのぼっている。
ここまで来ると、メーの体が意外と温かかったことに気付くだろう。

行く先に黒い水が広がっていた。
その中を白い船のようなものが真っ白な軌跡を残しながら移動している。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
「真っ黒な水」としたのは設定ミスしたことへの抵抗です。
水はないって言ったけど、この怪しい『水』は『水』であって水ではないもんねー。

苦しい。

サキ
その黒い水や白い船は、知っているものだろうか?
それとも、見覚えのない、初めて見るものだろうか?
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
これも難しいな。明らかに他と違うのだから興味持って調べたであろうサキが、どうしてこれらやムーについて詳細を知らないのか。
んーまぁ、ここに関してはルリム・シャイコースに拒否られてた、で何とかなるか……

KP
黒い水はこの辺にあったかもしれない。白い船は見覚えがある。あれこそ目的地だ。
船のように動いているものはよくよく見れば港町が丸ごと動いているかのような形をしている氷山だ。その上に建造物がある。
しかしそれは閉ざされていて人気もなく、そもそも近寄ることもできない場所だった。
サキ
「あった!
なあなあ、あの動いてるやつあるだろ、氷山。
あの上に建物が残ってんだ。

俺様近寄れなかったんだけど、要なら手が届くかな!?」

それは名案なように思えた。
近づくこともできず、いつしかただの風景に見えていたあれに、要なら近づけるんじゃないか。
近づけたらまた、何か見つかるんじゃないか。
KP
あの湖を離れてこの2週間で、始めて見た地表で動くものだった。
要は身を乗り出して動くものに見入った。
やらかしたぜ!!
KP
なんだかとってもしくじったなって思いました~。
サキ
お?
KP
KPのジタバタみせるログ作らなきゃ駄目かこれー
サキ
この状況で一体何が……!?
KP
要が何考えてたかも分かるし、またやるか!!
サキ
要さん視点見たいし、それはそれで楽しみだけど、一体何があったんだろう……
終了後トーク(ネタバレ)
KP
かようにあれこれやらかしてたんですよ。
サキ
開示ありがとうございます。
アドリブするタイプのKPにとってはかなり参考になりますよ、これ。
回す時があったら参考にさせて頂きます。
KP
なるといいなぁこのお見苦しいアレコレ。


要 紫苑
「あれは確かに、何かありそうですね。
到底自然現象とは思えない。
しかしこの距離は私はおろか、メーでも……」
KP
突如、その船の天辺にある城塞から白い風が吹いた。
それは輝きを帯びてまっすぐにあなた方へと届くと同時、凍てついた橋となる。
ぎらぎらと光を反射する氷が歩くに不足のない厚みと幅をもち、
かるがると死した海を越え、白い城塞へとあなた方をさし招く。
要 紫苑
「何……なんだ、これは!?」
KP
あなたはこれが、魔術によって作られたものであると分かる。
魔術を使った何者かがあの城塞にいるのだろう。
サキ
「……!!」
動くとも変化することのない、ただの自然現象。
それが、初めて変化した。
何者かの意思。行動。俺様でも要でもない何者かの意図に、それは見えた。
サキ
すごい。
すごいすごいすごい。
すごい! 本当に要と一緒に来たら、変わった!
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
要たぶん関係ないぞ。
終了後トーク(ネタバレ)
KP
まあ要きっかけで外界に興味持ったサキがルリム・シャイコースに認識され招かれたってことでいいんじゃないですかね。

サキ
「要! あそこに何かいる! 呼んでる!
俺様あいつ知らない! 初めてだ!
なあ、行こう!」
その橋へ向かって飛び出す。
要 紫苑
「あっ、サキ!」
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
いっけね。橋出たと同時にルリム・シャイコース出さなきゃだった。
でないと要が正気度判定している間に置いてかれちゃうぞ。

KP
メーから降りる? 降りるなら要はあなたを追う。
サキ
興奮のあまり、メーから飛び降りて飛び出してしまう。
KP
ではその瞬間、城塞の頂点からのそりと何かが這い上がってくる。

それは、ゾウアザラシほどもある巨大な蛆虫に似た怪虫だった。
円盤のような顔の端から端にかけて、舌の無い青白い色の口が開いていて、鼻腔の間に寄り合った二つの眼窩からは常に目玉の形をした血の色の球体がしたたり落ちている。
SANチェック成功時減少 1D4失敗時減少 2D8
要 紫苑
1d100 40 《SANチェック
Sasa 1d100→ 76→失敗
2d8 Sasa 2d8→4,1→合計5
KP
また発狂か。
あ、前回から何日も経っているのでリセットします。
サキ
はーい。ここでもサキは基本《SANチェック》無しの認識で合っていますか?
KP
あなたはそれを知っています。
知らなくても良いけど、あなたにとってそれは恐怖の対象ではありません。
KP
あなたはあの巨大な白蛆が、昔地球を支配していた神であることを知っている。
もし知識を探るなら、白蛆は、ルリム・シャイコースと呼ばれている旧支配者であり、魔術においては全知全能と称される程の神であるということも思い出せるだろう。
KP
要は恐怖のあまり立ち止まってその場に縫い止められたようになってしまう。
要 紫苑
1d10 Sasa 1d10→9
KP
数分間は喋ることもできずに、その白蛆から目が離せなくなってしまう。
サキ
「神」が姿を見せるのは今まで初めてですか?
それとも、以前にも姿を見せたことはありますか?
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
このへんよく分かんないのよね正直。
こいつについては「引きこもってたから知らない」でいいと思うけど。
この地球には旧支配者たちはシナリオに出てこない分も居るみたいだけど、【不老不死】はそいつらを認識していないんだろうか? 認識しているんだけど人間の遺物にしか興味がない?
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
互いに興味なかったのかもですね。
いるけど喋りもしない! って最初にサキが言ってるし。

KP
地球が滅びてから、あなたがその姿を目にしたのは初めてだ。
あなたはそのまま橋を渡って進む?
サキ
なんだ、「神様」か。
その姿を初めて見た時、ちょっとがっかりした。

俺様知ってる。「神様」たちはなんにも変わらないし、この世界になんの変化も齎さないし、俺様と話もしないし、俺様のこと気にもしないのだ。
この世界が滅んでようが滅んでまいが、なーんにも気にしない。
KP
あなたが駆け出すと、その神はゆっくりときびすを返し、再び城塞へと戻ってゆく。
だが橋は消えずに残っている。
明らかにあなたは――もしかするとあなた方は、だろうか? ――招かれているのだ。
サキ
あれ? でもすぐに気づいた。
あいつ、俺様たちのこと呼んでる!
サキ
「要! あいつ、俺様たちのこと呼んでる!」
なあ行こう! と要に呼びかける。
要 紫苑
「…………」
KP
要はその場に座り込んだまま、もう誰の姿もなくなった城塞を見つめて動かなかった。
「めー」
メーがあなたの呼びかけに応えて要を掴み上げ、あなたについて橋を渡る。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
そろそろメーちゃん退場か……ということで、少しアクション多めになっております。

KP
氷の橋はやがて氷山に空いた洞窟のような入口に突き当たった。
メーのサイズではこの洞窟に入ることはできない。
メーは要をその場に下ろして、少し居心地悪そうにモソモソと氷の上に根を這わせ始める。
要 紫苑
「……すみません」
KP
要は氷の上に下ろされてよろよろと立ち上がろうとした。
サキ
「どうしたんだ? びっくりしたのか?
もしかして、白いぶよぶよってあいつか?」
メーにするように、要の頭を撫でながら聞く。
要視点
KP
サキの手は温かく、撫でられるたびに気が休まってゆくような気がした。
要 紫苑
ああ……気持ちがいい。
要 紫苑
いやこんなことをしている場合ではないだろう。
KP
そう思いながらも、その心地よさにあなたはなかなか声を上げることができない。
それは命の暖かさだ。

要 紫苑
「ち、違う。あれじゃない……あれではない……
あれはもっと恐ろしい、ものだった」
要 紫苑
「あの生き物を知っているのですか?
地球にはもう何もいないのではなかったのですか」
KP
あの城塞には城主たるルリム・シャイコースに招かれない限り入ることもできなかった、ということなのかも知れない。
あれが何を思って呼んだかは不明だが、まちがいなくあの中にはまだあなたが知らない何らかが残されている可能性があるだろう。
要 紫苑
「……あの、もう、歩けますから」
KP
あなたの手を払いのけるわけでもなく、撫でられ続けているのに居心地が悪くなったのだろうか。
この極寒の地で、互いに触れているところだけに暖かさを感じる。
サキ
「よかった。
あれは『神様』ってやつなんだ。
俺様も見たのは初めて! もういないと思ってた。
なあ、行こう! 俺様あそこ入ったことない!
きっと要がいるから呼ぶ気になったんだ!」
撫でる手を放し、要の手に手をやる。
要視点
要 紫苑
あれは、恐ろしいいきものに見えた。背筋が凍るほどに嫌な感じがした。
なるべくサキから離れない方が良いかもしれない。

KP
要は少し考えると、
要 紫苑
「私の肩に乗りますか?」
KP
と問いかけてくる。
要 紫苑
「いや、別に嫌ならいいんですけど」
サキ
「乗る! 要、あったかいもんな」
要の背中に飛びつき、肩に乗る。
要視点
要 紫苑
気にするだけ意味もないし、無駄な気遣いという気もしてきた。
こうしていれば何かあれば乗せたまま逃げられるし、守れる。……温かいし。

KP
「めぇーぇー」
メーがあなた方を見送るように枝を振りざわめく。
要は少し振り返り手を振って呟いた。
要 紫苑
「……お前に任せた、と言われた気がします」
サキ
「メー、またなー!」
肩の上から手を振り返し、前を向く。
要が来てから、退屈ばっかりだと思ってたこの世界が、どんどん開いていく。
ここで知ったものも、またいつかなくなるのかもしれないけど。でも、でも楽しい。嬉しい。
全部、要のおかげだ!
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
ごめんね、サキ。ここで起きることはあまり楽しくはないんだ。

KP
洞窟内はひんやりとしているが、風が遮られているためか外ほどは寒くない。
要は裸足で一歩一歩踏みしめながら洞窟を進む。
すると、行く手の奥の方から先ほどの白蛆が現れた。
要はあなたを守るように一歩足を引いて警戒する。
サキ
お、いたいた。
「こんちはー。お邪魔しまーすの方がいい? 招いてくれてありがと」
現われた白蛆に手を振る。
サキ
ルリム・シャイコース相手にラフが過ぎる。
KP
白蛆はあなたに頷くようにし、あなた方を招くようにゆるゆると先を歩き始める。
洞窟内にずる、ずる、という白蛆が体を引きずる音と、要の足音が響いた。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
要裸足なんだよな。つめてぇー。
さて、どうやって中に連れ込もうか……って思ったけど、予想以上に素直についてきてくれるな。助かるー。

実はこの要塞探索できるようにはできてないけど、どうかなぁ、探索に行こうってなるかなぁー。
シナリオの感じだと他の部屋もありそうな感じに見えるけど、処理めんどいからもう別の部屋はないってことにしちゃえ。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
警戒する意味も概念もなかったんですよね、サキには。
KP
死なないんだから必要なかったんですね。
サキ
サキの方はそうでしたね。飛び降りても粉砕されても死なないんだから。
退屈のあまり恐怖も、痛みを恐れるという感覚も失われていました。

要 紫苑
「私たちに何か用があるのですか?
あなたもここでひとり生きているのですか?
この星で何が起きたか、ご存知ですか?」
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
喋れると面倒だし『ルリム・シャイコース』自身が喋れるかはシナリオからだとよくわからないし、喋らなくていいな。
どうせルリム・シャイコースが用事があるのはサキの方で、要は眼中にないからね、当然無反応だろう。

KP
要の言葉には応えず、白蛆は歩を進める。
やがて、洞窟の中にある一つの部屋にたどり着いた。
そこは客間のようで、ベッドが並べられている。
白蛆はあなたがたを中へ導く。
要はかがまなければ部屋に入れなかったが、入ってしまえば天井は高く不自由しないだろう。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
外から見るとベッドは目立つだろうし、客間と誤解するのはアリだな。んで、中に入ると書斎だと思うんだからきっと本棚があるんだろうなー。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
雰囲気を作って下さったり、行間を埋めて下さったりしてありがとうございます。
こういう補完のおかげで雰囲気が高まります。

サキ
「すごい、部屋だ! 
こんなにちゃんと残ってる部屋見るの、俺様初めて!」
歓声を上げながら、要と共にその客間に入る。

KP
中に入ると多数の本棚が置いてあるのがわかる。
そこにはこれまた多数の本があり、数え切れないほどだ。
ここは客間と言うより書庫なのだろう。
椅子と机が八セット。
ベッドが八脚。
それは紛れもない文明を示すものだった。
白蛆は「ゆっくり寛ぐように」というようにゆるゆると頭を下げると部屋から出ていった。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
まずはここを『安全そうだ、休める』『ここで魔法を習得していこう』と思って貰わないとね。
探索に出た場合、ほかの部屋もあるかも知れないけど、内容のない部屋を描写するくらいだったら入れないことにした方が良いかな。
ルリム・シャイコースだってサキにはさっさと魔法を習得してほしいはずだから、余計な行動は取らせないし、善意だと信じさせようとするだろう。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
んもう! ナイス罠!
劇中でも言いましたが、いかにも役に立ちそうな魔術をお出ししておいて、いざ読んだらいただきます! ってトラップ面白すぎる。
KP
食うために無理矢理勉強させるのひどいですね。
前回強引にやって痛い目みたから今回は優しそうな演技したのかなー。

要 紫苑
「驚いた。ここは比較的暖かいですね」
KP
大量の本が断熱材のようになっているのだろうか。
サキ
「あったかいな!
なあなあ、すごい! ここ、いろんな物がある!
滅びてないみたいだ。すごい。こんなに物が残ってたんだな。
俺様知らなかった。もしかしたら、他にも色んなものが残ってるのかな。
ほんとは、滅びてなかったりするのかな?」
本に向かっていって背表紙を眺める。どんな本があるのだろうか?
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
さて、しっかり見るならこの部屋のおかしな様子に気づくはず。壊れたベッドに拘束具……
この部屋どんな本が……あ。やべ。ここ本棚だの大量の本だのないわ。やらかしたー!

うーん。読める本があってもいいけど、サキは何でも読めちゃうから色々面倒だし、ここは魔法書に注目して貰いたいところだからなぁ……!

本棚ごと凍結してて触れないだと寒そう過ぎて嫌だし「比較的温かい」って書いちゃったしさぁ……
よし、本は全部崩れちゃってて読めなかったことにしよう!
木製の家具が残ってる微生物もいない氷山の部屋で劣化……原因なんだよ! 知るか雰囲気だよ!!
終了後トーク(ネタバレ)
KP
割とノリで好き勝手描写するので、シナリオ把握が足りなくてやらかすことはよくあります。かなしいね。

KP
よくよく部屋を見てみると、一見した雰囲気とはまた違うものが見えてくる。
まずベッドはほとんどが壊れてしまっており、使えるのは二つだけだ。
そして本棚にある本の背表紙はことごとく読解不能なほど傷んでおり、指を触れると砂のように崩れてしまう。
八脚の椅子と机にはよく見ると手枷と足枷がある。そして椅子には鉄製の小さな板が貼り付けてあり、これには文字が書かれているようだ。
机には本が何冊か置いてあったが、これらは他の本とは違う雰囲気を感じるだろう。何よりあなたにはこの本の題名が読めるのだ。
ハイパーボリア語で書かれたそれは、最古の魔術書の題名である。
サキ
「……結構壊れてた」
喜んで本に向かっていくと、そこには滅びの気配がちゃんとあった。
少し肩を落とす。そっか、やっぱりこれも、昔あったもの、なくなっていくものなんだ。
でも、知らなかったものを見つけられたのは、嬉しい。
本なんて、全部崩れてなくなっちゃったから。
要 紫苑
「この家具、随分と古い様式ですね。
私が生きていた時代のものではないし、知っている年代のものでもなさそうです」
サキ
「うん、この本もすっごく古い本だ」
本の背表紙には、それぞれなんと書いてあるだろうか?
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
ここでもっともらしい題名でっち上げられれば格好いいんだけど、あんまり自信ないなぁ。概要にしておくか。
かなり古いってことはやっぱり近代製本された本じゃなくて、紙束に穴開けて纏めたような奴とか巻物なんだろうな。
やっぱ古い紙といえば羊皮紙かパピルスだよね。
この時代になっても無事なのは、守護の魔法でもかかっていたんだろうな。

KP
あなたの知識が囁く。
それはエイボンの書、ネクロノミコンといった魔導書よりさらに古い時代の、秘された知識を記されたものたちだ。
失われた知識の宝庫である。
すべてがハイパーボリア語で記されていて、あなたには少しの時間は必要そうだがそれが読める。明らかに古そうなパピルスだというのに、ページは手にとってもほぼ崩れない。本の形を保つ植物の茎のようなものもしっかりしていて、分解することはなさそうだ。
要 紫苑
「思ったより劣化していますね。
ベッドは使えそうですし、何とか休むことはできるか」
要 紫苑
「その本は何です?
読めるのですか?」
サキ
「うん! すっごく昔の本だ。
人間がぜんぜん知らない? 秘められた知識の本? みたいなやつ。
要も知らないことが書いてあると思う!

なあなあ、ところでこれなに? なんでこんな所にあるんだろ?」
椅子と机についた手枷と足枷を指して聞く。
要 紫苑
「これは……」
KP
要の顔が険しくなった。
要 紫苑
「手枷と足枷。人間の意志を無視してここに繋ぎ止める道具です。
……しかし、椅子にあるとなると、この机で何かをさせていた、ということなのでしょうか。
本を読ませていた? 書き写していた? 自分が知識を得るのではなく? 何のために……」
サキ
「嫌なのにここに繋ぎ止めるのか? なんでだ?
ずっと繋がれてたら退屈だよな?」
要の説明に、それを恐々と見る。
要 紫苑
「とはいえこれは私には小さすぎ、君には大きすぎるようですね。
気味は悪いですが、害はありません、おそらく」
サキ
「要が捕まえられなくてよかった。
要が捕まえられたら、俺様困る」
要視点
要 紫苑
困る、か。
一人にはなりたくないよな。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
少しずつ要さん自身のことを思い始めているんですが、まだ自分中心だった時の言葉しか見つけられていない頃ですね。
KP
あー。だからなんとなく違和感があるんだ!
そんな気がしてました。
サキ
わーい!
そんな気、分かって頂けて嬉しい。

KP
勉強しなさいが高じすぎたお部屋かな!
サキ
なんと恐ろしい!

サキ
椅子についた鉄製の板の記述を読む。
KP
どうやらそれは名札のようだ。
うち6つは読めないが、2つにはハイパーボリア語で「ファラジン」「エヴァグ」と刻まれている。
その名前に心当たりはない。
忘れているのかもしれないが。
サキ
「ファラジンとエヴァグだって。ここに掴まってた人の名前かな?
ずっと昔の人なら、崩れちゃってるよな」
要視点
要 紫苑
名札付きの勉強机に手枷足枷。まさか凄まじく厳しい受験勉強していたわけでもないよな……

サキ
おおー。白蛆の襲来かぁ。>エヴァグ
サキ
鉄板をしばらく見て名前の主のことを思うも、すぐに飽きて本に向かう。
本を解き、内容を読む。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
さて、魔導書に魔法が一つ二つしか載ってないなんてことはないだろうけど、条件的に使えないってことにして、使える魔法を絞ったら情報として出た奴だけだった、にしたらそれっぽいかな。
この状況で特定のアイテムや宴会や大量の生贄や動物が必要な魔法はそもそも使えないもんね。

KP
本には魔法の知識が書かれているようだ。
いくつもの魔法の使い方が書かれている。
とはいえ必要な場所や道具による制限を受ける物がほとんどで、現状の地球では行使は難しいかもしれない。
この星に生贄になるような血が出る生き物が一体どこに残っているのか?

それはともかく、術者の身一つで使えそうなものはいくつかある。
習得に大変な時間がかかりそうなものもあるが、1日もあれば覚えられるし、要にも分かりやすく教えてやれるものもありそうだ。
魔導書についての説明・習得可能呪文一覧。

《引力》引力を強める。習得に10年かかる。
《火焔》核融合反応を起こす。習得に10年かかる。
《鋭敏な二人》記憶力の増加。術者二名の性的接触が必要。術者は血縁などの関係者である必要がある。
《魂の抽出》魂を人形などに移す。生者に移す場合は魂との対抗が発生する場合がある。
《銀の光線》対象から魔力の影響を取り除く光線を放つ。1の正気度が必要。
KP
ちょっとこの魔法(《鋭敏な二人》)を使うという選択肢がある都合で今までそんな感じの話題振ってました。(使わないルートもあるよ!)
サキ
なるほど!
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
やれやれ、やっとお伝えできてほっとした。これで今後の展望も立てやすくなるってものだな。
出てくるものは当然使い途がある可能性があると考えて貰えるだろうし。

サキ
お、熱を出す呪文? もある。
これを延々と読み解いてみるのも楽しそうだ。ちょっとは暇つぶしになりそう。
いまはそれより要と一緒にいたいし、要と話していたいけど。

「神様」のいる世界で、それがただの物語だとは思えなかった。
これは、力のある呪文だ。俺様知ってる。
サキ
ふと、《魂の抽出》に目が留まった。
もし要が食べるものがなくて死んじゃいそうになっても、魂を移せば、それが崩れるまでは一緒にいられるかな。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
お? 『要』の存在そのものに興味持ってくれてる。

サキ
生贄かあ。俺様の血じゃだめかな?
KP
書物には生贄の動物が指定されていたり、血の量がとても多かったり、特別な祭具での殺害が必要だったりと、なかなか難しそうだ。
サキ
「なあなあ、色んな魔術の扱い方が書いてある。
これ読んでっていい?」
要 紫苑
「魔術!?」
KP
そんな馬鹿な。
その言葉は続かなかった。
要 紫苑
「神も化け物も不死の人間もいるなら、魔術もあるのでしょうね。
何かの役に立つかもしれません。
ここの主の厚意かもしれませんね」
サキ
「そっか、あとでお礼を言わないとな!」
要 紫苑
「幸い休む場所もあるのですし、お借りして読んでみても良いのでは?」
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
割とここKP都合ではありますが、
・要は人間不信に陥ってはいるが一般人なのでそんなバリバリ警戒しない。むしろ反動で人間ではないものへの信用が根拠なく高まっている。
・あまりの過酷な環境に現れた休憩できる場所を目の前にして、そうだったらいいなぁ、という希望に惑わされている。

なんて理由で要を積極的にここに留まるようにさせています。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
要さんは突然こんな所へ放り込まれた一般人だし、サキはあれだし。互いに警戒なんてそうそう出てこないですよね、っていうのが新鮮で楽しかったです。

要 紫苑
「その呪文書に、食べ物を出す魔法は載っていないでしょうか。
どんな魔法が載っているんですか?」
サキ
「食べ物出す魔法はなかった。あ、でも熱を出す魔法はあった!
難しいけど、十年くらい読めばわかりそう。
この本、借りられたら借りてこうかな?」
要 紫苑
「そうですね。お願いしてみましょう」
サキ
かくかくしかじか、と現状でも扱えそうな魔法について説明する。
要 紫苑
「引力。いまいち使い道が分からない魔法ですね……
確かに本当なら凄まじい力ではあるのですが」
要 紫苑
「原子核融合!?
とんでもない言葉が出てきましたね。間違いないのですか?
私の時代にそれがあれば歴史が一変するでしょうが、現状はもっと害のない小規模なエネルギーが欲しいところですね……」
要 紫苑
「記憶力の増大!
役に立ちそうですね」
要視点
要 紫苑
考えてみればそんなに記憶することもなさそうだけど、サキが色々忘れてしまうと言っていたから、あって困ることもないかな?

要 紫苑
「……立つかな。
まあさっきのよりは」
要 紫苑
「……なるほど。
この建造物ならもしかすると人形や土器が残っている可能性もありますね。
使えるかもしれない……?」
要 紫苑
「魔術的異常、効果の解除……
私や君のこの不死性や巨大化が魔法によるものなら、解除できる可能性もあるでしょうか。
……役に立つ可能性はありますね」
サキ
「あるかもしれない!
そしたら……」
サキ
続けようとして、次の言葉が飛び込んだ。

解除できるかもしれない。
そう聞いて、あ、と息が漏れる。
サキ
「そっか、解除、できるかもしれないのか。
要が元の大きさに戻ったり、……俺様が、」
ちらりと過ったのは、恐怖だった。

死ぬ。
それが今更にちょっと怖く感じたのは、たぶん今が退屈じゃないからだ。
要視点
要 紫苑
まあ現状普通の体に戻っても死ぬだけか。
ただ、無為に生き続けるよりはいいかもしれない。

KP
この魔術書、したければテイクアウトできます(小声)
サキ
お、それはぜひテイクアウトしたいところ。
要 紫苑
「なるほど。
一応用途が考えられるものもありますし、そうではないものも持っておいて損はないかもしれませんね。
使用に必要な物などあるのですか?」
サキ
「性的な接触ってなんだろ?」
要 紫苑
「……せ? なんて?」
要 紫苑
「性的接触?」
要 紫苑
「……子孫を残す行為のこと、ですかね。
なんですいきなり」
要視点
要 紫苑
どう考えてもサキは知らない知識だと思う。説明……するしかないか。

要 紫苑
「……ちょっと前に、生き物は雄と雌により次世代を作るという話をしたと思いますが。
人間も例外ではないのですよ。
男性と女性がその、交わる、ことによって次世代が生まれます」
要 紫苑
「まさか、魔術にそんなことが必要なんですか? 本当に?
誤読では? いや誤読ですよね?」
要 紫苑
「術者が二人必要……ぇぇ……?」
サキ
「そうなのか!
要と俺様でも次世代できるか? 人間増やせるか?

……? なんで変な顔してんだ?」
要視点
要 紫苑
次世代。ふたりでこの地球の最初の二人になる。そんな物語を読んだことがある……けど、現実的には無理な話だ。
遺伝子の問題とか、そもそも僕の寿命がそんなに保つわけがないとか、僕はとりあえず最後までいなくてもいいけどそうしたらサキと子供だけ残るわけで……っていやそういう問題ではなく。そういう問題じゃないだろう!?

要 紫苑
「いやいやいや、無理ですって。サイズが。
というかこの状況で仮に次世代ができても生存できるかどうか」
サキ
「あ……、そうだな。
餌、あるかどうか分かんないもんな。
要のぶんも探さないといけないし、生まれたばかりだと弱いんだよな?」
小さく息を吐き、肩を落とす。
要 紫苑
「そう、そうですね。
赤ん坊がこの環境で生きて行けるようには思えません、し、
しかし君と同じ不死なら……」
サキ
「俺様と同じ赤ん坊か……。
いいな、それ。
もし、要が、俺様とおんなじ……」
唇が微かに震える。乾いた薄い、飾り気のない、しかし、女の唇。
要視点
要 紫苑
もしもそうすることができたら、サキが孤独ではなくなる?
ふと、考えてしまった。
そんな考えが浮かんだことに酷い恐怖と罪悪感をおぼえた。
要 紫苑
サキはまだ何も知らない。体は大人だって子供みたいなものじゃないか。
時間があれば。時間が。
時間さえあれば、いいのか?
僕は何か勘違いをしていないか。

要 紫苑
「…………」
要は腹に手を当てる。
彼女と自分は違うという懸念。
自分だけ飢えて死ぬという懸念。
サキ
それから少しの沈黙の後、うっかり次の言葉に興味を惹かれた。
要 紫苑
「……その、サキにはそういう概念がなさそうなので伝わるかどうか。
私たちの時代には、男女のそういった行為は、子孫を残す以外に、男女の、コミュニケーションとしても行われていて、ですね。
あとは、そういった事をしたいという、欲、の結果という、ことも……
だからつまり、ですね。なんといったらいいか。
いや、使えませんよ。物理的に無理ですし!」
サキ
「コミュニケーション?
話すのか?
言葉がなくても話せるのか?
欲ってなんだ? 豚の話ではなかったよな?」
要 紫苑
「う、ええと、人は親愛の情が高まったすえに、その、性的接触を求める場合が、ありまして。
さしたる理由もなく、という場合もあるのですが、そもそも、生殖は生物の本能なので、そのようにできているというか」
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
要、サキへの感情が自分でよく分からなくなっています。
この話題に関する自分の興味が、肉欲なのか、一人で生き続けるサキへの哀れみなのか、そうではないのかすらよく分かっていません。
そりゃ人間との付き合いが絶望的に足りていない朴念仁が、ベッドもある今までより格段に落ち着ける空間で不意打ちでそんな話題振られて、自分はほぼ裸で、目の前の女性には友情か同情か性愛かはよくわかんないけど確実に好意はある、相手の女性はその意味も何も分かっていない、となれば混乱するでしょう。

というくらいにしておけば、後でどう転んでも使えるな。よし。
終了後トーク(ネタバレ)
KP
ぶっちゃけ狼狽える要が面白いので、使う使わない関係なく遊んでました。
まさかここで口走った『特別』も伏線になるとは……。
サキ
ごめんな要さん。
こんなのまぁまぁ困る状況なのよ。

オカルト的見地
佐倉 光
「魔術に性的なやつなんてむしろ旧式のやつなら割と1ジャンルあるやつじゃ?」
KP
要さん〈オカルト〉技能はない。
魔術といって想像するものは「ビビディバビディブー」みたいなやつである。
どう考えても要さん恋愛縁がない。
哺乳類の生殖について訊くならしぶしぶですが詳細教えてくれます。
ものすごく生物の授業風に。
サキ
〈オカルト〉のある悪魔使いと〈オカルト〉のない一般人(?)では前提が違う。
要さんPLがリアクションを面白がってごめんな。
KP
魔女の悪魔との交合だの、男女の交わりからエネルギーが発生するだの、ホムンクルスに精液が必要だの、オカルト分野ならそういうネタに事欠きませんからね。

要さんゲームやアニメへの造詣も深くなさそうだから、イメージの基本は童話の魔法ですねぇ。
サキ
ですね。
要さんそういう知識入る糸口なさそうだもんな。
KP
面白すぎて追求される要かわいそ。
サキ
PL的に面白い以外にも、サキはコミュニケーションに飢えてたから興味を惹いちゃった。
恐らくそのコミュニケーションはサキが思ってるのと違う。
KP
話したくないけど魔法で使うかもしれないから仕方なく頑張ってる。
サキ
ごめんな。
適当な所で話を切ってやって。
KP
もう一つの条件教えてあげたら「使えないね!!」ってなりますので。
サキ
物理的に近い存在でないとダメというやつですね。
KP
あと、性的接触するなら少なくとも解呪でサイズを戻す必要がありますが、それが成功したとして、この環境で万一人間に戻ると確実に死にますね。
治ったはずの病気が魔法で抑えられていただけで再発する可能性もあるし。
もし色々うまくいって子供ができたとして、その子が不死ならいいんですが、そうじゃなかった場合のサキちゃんのダメージは計り知れませんね……
この手の話でよくある、「覚悟を決めて新世代のアダムとイブに」みたいなことも現状問題山積みで無理なんだよな。
サキ
そう、いろいろ無理なんですよね。
この環境でただの人間に戻ると確実に死ぬし、要さんは病気を抱えているし、そもそも子供を育てられる環境じゃない。
不死だったらだったで、成長するの? 問題があるし。

サキ
「親愛? 要も求めるのか?
……なんで慌ててるんだ?」
興味が先行していたが、今更要の様子に気づいた。
不思議に思って、一度言葉を切って要を見上げる。
要 紫苑
「相手が誰でも良いというわけでは、なくて、
親愛といっても友人のような関係が高じてもそうなるわけではなく、ましてや血縁がある相手とはそういった感情が湧きづらくできています、遺伝上不都合があるので、それもまた本能的なものでですね、つまりそういうことではなく、私が狼狽しているのは」
要 紫苑
「…………」
要 紫苑
「私はそういった行為を特別なものだと感じているから、かもしれません」
KP
今まで要が語ってきた物語で、男女の組み合わせが他と比較して互いへの強い執着のような行動をとる傾向があることに思い当たっても良い。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
別に男女に限らなくていいけど、一般的なものを語ったとして数の多さで言えば男女が多いだろうから、ざっくりとした印象はそうなるだろうな。

サキ
「特別なのか。
特別じゃないとできないんだな。恋ってやつか?」
要が語った物語には、男女の(たまに男女以外の)恋という関係の素晴らしさや、恐ろしさについて、様々に描かれていた。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
サキは性別による傾向って概念なかったか。それもまたらしくていいかも。

要 紫苑
「とりあえずその話は一旦置いておきましょう」
サキ
「わかった、置いとく」
少し淋しそうに、本に目を落とす。
サキ
「あれ?
でも、この本には血縁って書いてあるぞ?
血縁みたいな近い存在じゃないと、この魔術使えないって」
要 紫苑
「え? あ、そう、ですか。
それでは私たちには使えませんね」
要 紫苑
「せっかくの魔法が使えない、となると惜しい気もしますが……」
KP
要は口元を緩め、ふ、と短い息をつく。
その視線はあなたが手にする魔導書をちらちらと見ていた。
要視点
要 紫苑
ほっとしたような……残念なような。
使える魔法が減ったから残念なのか、それとも……


コメント By.KP(要 紫苑)
揺れ動く心情。そんなのを行間に込めまくってた回。
そういうの全部解説すると風情もクソもありませんが、たまには語りたいんだ!

プレイ日:2025年11月3日 ~ 2025年12月15日

作者名: キメオール

配布・販売サイト: 【CoC】Good morning ALL

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本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」



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