こちらには『Good morning ALL』の
ネタバレがあります。
本編見る!
KP
翌朝、あなたは目覚めると要の大きな腕に抱かれていた。触れ合っているところが暖かい。
要はまだ眠っている。
サキ
「おはよう要、あれ寝てる」
目を覚ますと大きな腕に抱かれていた。
あったかい。ふふ、すごい。
こんなあったかいの感じたことない。
気持ちよくて、もう一度目を閉じる。

すやぁ……。
そのまま二度寝する。
KP
「んめぇぇーーー」
巨木がわさわさと幹を揺らして枝を伸ばす。
そしてまた歩き始めた。
太陽や地熱とは全く違う生き物の熱は、あなたを包んで暖めていた。
異様に大きくなった心臓が心地よく力強い振動を伝えてくる。

KP
寒すぎて無意識に抱いちゃった
あったけー
サキ
なるほどー
ツンツンでも身を寄せあうほかない
KP
この後「要が先に起きた」ら、「勝手に入ってきたな。子どもだから仕方ないか……」って思ってます。
サキ
無意識だから要さんが先に抱いちゃったことには気づいてないと。
KP
yes
成人女性だっていつ気づくかな!
サキ
かな!
気づいたらよけい不審視されそう。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
この話、性行為が必要になるルートもあるからなぁ。
キャラクターとプレイヤーの意図がかみ合わないと大変だし、少しずつでも「そうなってもおかしくない種」を撒いておこう。
まあー、使い方的に別に詳細な描写が必要なわけでもなし、使うことになっても多分大丈夫だろう。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
そういうことだったんですね。
まさかそんなルートがあるとは思ってもいなかったサキPLなのでした。

要さんがちょっとずつサキの境遇と関心に絆されている……。楽しいなぁ……。
KP
ある意味不意打ちともいえるので、ちょっと扱いが難しいなーと思いました。

ただ、「術者二人が血縁である必要がある」を「もとは他人だが眷属として産み直されたから親子である」で解決するというのは、使用理由はロマンチックではあるのにひどく背徳的で凄く面白いんですよねー。
今回は既定ルートかってくらい綺麗に流れて、フラグ立てておいて良かったと思いました。
サキ
そういう匂いのないお話で突然の性的要素ですから、描写必須でないとはいえ確かにちょっと扱いが難しいですよね。
でも、二人の関係性の最高潮として、とても盛り上がって楽しかった。
種まき、ありがとうございます。おかげで本当に綺麗に流れた。
サキ
確かに。理由はすごくロマンチックなんだけど、やってることが背徳的すぎる。
まさかの解決方法と使い方、楽しかったですね。

要視点
KP
気づけば、あの少女が貴方の身体にぴったりとくっついて寝息を立てていた。
要 紫苑
寒いからか。
KP
確かに触れているところは暖かい。
要 紫苑
こんな得体の知れない子供と一緒に寝ていたなんて。
やっぱり、夢ではないのか。
KP
あの恐ろしい樹の怪物も、延々と続く荒野もそのままだ……

KP
二度目に目覚めた時は揺り起こされたからだった。
日は高くのぼり、不毛の大地を広く照らしていた。
要 紫苑
「いい加減起きてどいてください、サキ」
サキ
「おはよう要! 俺様起きた!」
名残惜しく思いながら、要の腕から這い出す。

いつもと違う朝。
何度も何度も何度も繰り返した朝は、もう朝って意識も夜って意識もなかった。

でも、今日の朝はちゃんと朝だ。
朝だ! おはようの朝だ!
サキ
「おはよう。ふふ、おはよう要。
すごいな、おはようだ」
要の顔を見てにこにこと笑う。
要 紫苑
「何がそんなに……」
要視点
要 紫苑
何がそんなに楽しい。
KP
彼女の背後に広がる果てない荒野が目に入った。
要 紫苑
……本当にこんな世界でひとりで生きてきたなら、無理もないのか。
少なくともこのあたりには本当に何もないようだし。

KP
言いかけて、彼はふ、と息をついた。
要 紫苑
「おはようございます。
君は本当に元気ですね」
KP
少し呆れたような響きだった。
サキ
「元気じゃないと元気じゃなくなっちゃうからな!

それに要がいてくれて嬉しいんだ。
要がいて色んなことが変わった。すごいことばっかりだ」
要 紫苑
「……そうですか」
言いながら要は遠い遠い地平線を眺めた。
要視点
要 紫苑
本当に、何がそんなに楽しい。信じられない。こんな所に居たら気が狂う。

サキ
「……うん」
要視点
要 紫苑
彼女の横顔を見て、本当に狂っているのだろうか、という疑問がわいた。
彼女は紛れもなく正気なのではないのか。
この世界に突然現れた自分に喜びを感じて『元気でいる』のだとしたら。

要 紫苑
「……そう、ですか」
サキ
「要は、もっと賑やかなのを知ってるんだよな。
そっちの方がいいよな。……ごめんな」
笑った顔のまま、眉を下げて背を丸める。
要 紫苑
「いえ……私は騒がしいのが嫌いなので」
要 紫苑
「ただここは少し静かすぎますね。鳥の声や木のざわめき程度がある方が好きです」
KP
「んめェ?」
要 紫苑
「……そういうのではないのですが……」
サキ
「いないもんな鳥。
鳥って色んな色してて鳴くんだろ?
鳥の声ってどんなの?」
要 紫苑
「…………」
要 紫苑
1d100 31〈生物学〉 Sasa 1d100→ 96→致命的失敗ファンブル
KP
成功したら声帯模写できるかの判定でもしようと思ったんだけど、
それどころではなかった。
サキ
これは見事なファンブル
KP
このひと〈博物学〉とか持ってるんだけど、博物(生命体)一個も残ってないな!
サキ
ないな! 〈博物学〉の対象になる物がない!
要視点
要 紫苑
そんなこと急に言われても。

要 紫苑
「チュンチュン、とか、ぴいぴい、とか……」
困惑したような顔で呟いた。
サキ
「ぴーぴー! つんつん!
なあ、おまえつんつんって鳴けるか? 無理かなー」
巨木に無茶振りをする。
KP
「めー……めぇ」
巨木は馬鹿でかい口をはくはくさせて困ったような声を上げる。
サキ
「無理かー。俺様無茶いったな、ありがと」
巨木の背(?)を撫でる。
KP
「めぇ!」
要 紫苑
「…………」
要が口元からぷふ、と息を吹いた。
サキ
「おっ、要笑った!
楽しい? 楽しいか!?」
その場で逆立ちをしたり、面白い顔をしようと試みたりする。
要 紫苑
「笑ってません」
KP
要は顔を背けた。
要 紫苑
「…………こんな状況で笑えるはずがないでしょう」
サキ
「そうか? 笑ってたぞ? 笑ってた。絶対に笑ってた」
要の周囲をちょろちょろと歩き回る。
KP
要は少しの間気まずいような顔で黙り込んだ。
その目には昨日と変わらない荒野がうつっている。
要視点
要 紫苑
この子は本当にずっと孤独だったのか。他の人間も、生き物の話ですら物珍しいと感じるほどに。

要 紫苑
「……君は本当にここでずっと、独りでいたんですね」
サキ
「うん」
何気ない顔で返す。
要 紫苑
「食事もせず、人とも話さず。たったひとりで? 何年も?」
サキ
「うん。
何年? 何十年? 何万年? 忘れた。
昔いろいろ書いたけどな、ぜんぶ崩れて砂になっちゃったんだ。
いや、書いてなかったかも? 忘れた!」
要 紫苑
「おかしくもなるな……」
KP
要は呟いた。
要視点
要 紫苑
少し、哀れみがわいた。邪険にしたことに罪悪感もわく。

要 紫苑
「この木は随分と速い速度で動いていますし、今まで行けなかった場所に行けるかも知れませんよ」
KP
あなたは知っている。
あなたは途方もない時間の中でこの地球の隅々まで歩き尽くしている。それこそ何周も。知らない場所などないし、特別なものがあるのは昨日彼に話した二カ所と、あの湖のある場所くらいしかない。
この星には本当に何も残されてはいないのだ。
サキ
「……」
今まで行ったことのない場所……。
サキ
「……」
ない場所……。

俺様ぜんぶ歩いた、それだけの時間があった、最初あった物もぜんぶ崩れて、黙り込んで……。
サキ
「……かもな!
要が見つかったし、またどっか開いたりするかもだしな!」

顔を上げる。
そうだ、きっとそうだ。
だって俺様、この木と話すこともしなかったんだ。
知らないことだらけだ。きっとまだまだそうなんだ。

要が来てくれた。見つけてくれた。
要と一緒に旅をすれば、きっと何かが変わるんだ。
要 紫苑
「何も無い、誰もいないなんて、そんなこと……ないと思いますから」
要視点
要 紫苑
そうだ。そんなことがあるはずもない。
世界が滅びてしまって何も残っていないなんて、そんなことが。
そんなことが。

KP
その言葉はなかば自分に言い聞かせているようでもあった。
KP
すごい前向きな子だ……
サキ
要さんの登場によって儚い希望を手に入れました。

KP
要は話を振らなければ話すことはせずただ地表を見つめているだろう。
日暮れまでの間にあなたは何か話す?
サキ
「なあなあ要、要が寝る前? にはもっと色んな物があったんだろ?
鳥とか森林? とか以外に何があったんだ?
要はどんなとこで暮らしてたんだ?」
鳥や木の話に興味を惹かれて、要について聞く。
要視点
要 紫苑
ずっと地平線を見つめていると沈黙と空虚さで気が滅入ってきそうだ。
話くらいしてやるか……

要 紫苑
「……何も無かったですよ。私は田舎で暮らしていたので」
要 紫苑
「当時はそう思っていましたが、ここと比べれば色に溢れていましたね」
KP
要はぽつぽつと、彼が住んでいた土地のことを語る。
人が住む土地から離れて畑を作り、動物を飼って過ごしていたこと。
動物は牛や鶏、豚などだ。迷い犬を番犬として軒を貸してもいた。
作っていたのは主に野菜だ。
トマトやピーマン、大根ににんじん、豆や芋。自給自足という程ではないが、それなりの物は作っていたという。
サキ
目を輝かせてその土地の話を聞く。
人はいない。でも人の気配はある。静かで、でも色々いる。
それが要の好きな世界だったんだ。
サキ
「すごいな、作れるのか!
牛! そんなに大きな生き物がいるんだな」
KP
要は動植物の話になると少し口数が増えた。
その見た目、生態のほか、飼っていた動物たちの個性について。
要 紫苑
「一人で作って一人で消費する程度のものですからね、大して美味しく作れるわけではないのですが。
ただ、できるだけ手をかけて育てると半年後に結果となって戻ってくることもある。こないこともある。
そういった変化だけでも楽しかったですよ。
本当にあの頃は楽しかった」
KP
要は、彼が語る青も緑もない大地を、少し目を細めて見つめた。
サキ
それらは「知っている」ものだった。
聞き覚えはあった。でも、それをどこで見たのか、誰から聞いたのか、そんなことはなんにも覚えてない。
ただの知識だ。

要の言葉で、それに色がつく。
瑞々しい光が射す。温かい光が、味気ない知識の群れをぽかぽかと暖める。

それらを見下ろす要の眼差しは、温かかった。
サキ
「何かしたら、何か変わるのか」
それって。
サキ
「すごい」
滅んで崩れて死んでなくなって。
いつか何もかも黙りこくってしまう。
それ以外のことが起きるんだ。それって。
サキ
「すごいな」
要視点
要 紫苑
素直な反応をされるとついつい話が弾んだ。
人に聞いて貰える、というだけでこんなに楽しく感じるものなのか。

サキ
「人がいっぱいいる所にはいなかったのか?
騒がしいのきらいだからか?」
要 紫苑
「私は、騒がしいのは嫌いなんです。そもそも……」
要視点
要 紫苑
人間なんて騒がしくて話が通じない。くだらないことでなんたかんだと騒ぎ立てる醜悪なものだ。
そのくせいらない時に知ったような顔で世話を焼きたがる。
そういう世界と離れたくて人里離れた場所で、一人で生きていたのに。

本当に一人になると人を探してしまうのだ。勝手だな……

サキ
「……?」
途中で要の言葉が止まったことを不思議に思う。
要視点
要 紫苑
もう考えたくない。何でもいい、話を逸らそう。

要 紫苑
「……いえ。
君は日々何をして過ごしていたのですか」
サキ
「俺様? 歩いたり踊ったりしてた!

たまに砂の中を掘ると何か見つかるんだ。
で、何だったんだろうこれって思って遊んだりしてた。

あ、でもだいぶん減っちゃったけどな。
何回か来ると崩れてるんだ。最後は砕けて、砂になる。
そしたらもう、なんにも変わらない」
KP
あなたの話を、要はほとんど口を挟むこともなく聞いていた。
ただどこまでも続く荒野を見つめたまま。
要視点
KP
彼女の話はやはり、おかしいのは彼女ではなくこの世界全体であると物語っているような気がした。
要 紫苑
この光景は限られた範囲の話ではない、というのか?

要 紫苑
「砂に……」
KP
彼はあの洞窟で拾ってきた機械の残骸を包んだ服を見下ろす。
要 紫苑
「それでは、あの洞窟の死体ですら、君にとっては珍しいものだったのですね」
サキ
「うん!
あんなに形が残ってるの、初めて見た。
動くものなんて初めてだ。
俺様以外の声を聞いたの、初めてだ」
要視点
要 紫苑
アレックさんのことを思い出した。
昨日は彼ととるに足らない会話をした。
このあたりに奇妙な遺跡があるらしいが知っているか、とアレックさんの方から話しかけてきたように思う。
ゴーツウッドにそれがあると聞いて、今そこに向かっているところだと返答し、気がつけば彼の巧みな話術で、自分が病に冒されていること、ゴーツウッドの山羊の乳を求めてきたことなどまで話してしまっていた。
僕の興味を引くためだったのだろう、カセットテープや手帳を見せてくれたっけ。

彼は話がうまく、話していてもさほどストレスを感じなかった。
おそらく、彼が追っていたものに近しい情報だと判断して、僕から情報を引き出そうとしたためだとは思うけれど。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
アレックさんとの一幕だ!
この会話の間にそこまで色々と思い出していたとは。
要さんにとっては、たった「昨日」のことなんだなぁ……。
それは驚くし困惑もするし信じ難いのよ。
KP
トレイラーにあるように「おはよう。――世界滅びたよ。」と言われてもね、そんなすぐに信じられないですよ。
真メガテン3のボルテクス界みたいに痕跡が残っていればともかく、何万年も経っていては地形すら残っていないでしょうし、天体も変わってしまっているのでは、「ここは異世界。自分とは関係ない」という思考になるのは自然だと思うのです。
アレックさんは物語的にいい仕事をしたと思います。
サキ
本当にそうなんですよね。
何もかも変わりすぎて、「変な所に来た!」としか思えない。
アレックさん、いい仕事した。

要 紫苑
「私は彼が生きている姿を見ました」
要 紫苑
「まさか、死んでいるなんて」
サキ
「名前? 呼んでたよな。
どんな人だったんだ? だいじなひとか?」
要 紫苑
「ゴーツウッドに来る途中で、隣の席に座っていたから二、三話した。それだけですよ……」
サキ
「そっか……。
声、聞いたことあったんだな。
要はなんでここに来たんだ? 人いっぱいいる? いた? とこ、好きじゃないんだよな?」
要 紫苑
「……全てを失った末の神頼み、ってところですかね……」
要視点
要 紫苑
好きで出てきたわけじゃない。
本当は一生あそこで生きていくつもりだったんだ。
病気のせいで全てがめちゃくちゃだ。

とはいえ、実際病気は治った。
何があろうと生きてさえいれば幸い、何とかなると思っていたのに。
皮肉なものだ。こんな世界に生きていて何の意味がある。
どこかに、動植物がある土地は残っているのだろうか……

要 紫苑
「確かに願いは叶ったようですが」
KP
あからさまに要の口が重くなった。あまり話したくないらしい。
サキ
「……」
それ以上は聞かず、要と一緒に暗くなっていく地平線の先を眺めている。
サキ
あーらら。要さん何されて何やったんだ。
KP
佐倉みたいに「全部空に落ちてしまえ」なんて願ってないよ!
KP
今日はそれなりに長い時間話していたようだ。陽が落ち始めている。
巨木はごつごつとした急な斜面をひょいひょいと降りてゆく。
あなたは知っている。昔ここは海底だったのだ。
だが世界から生命が消えたあの頃に水は消え去った。
今残っているのは、今向かっている大陸に残る氷だけだ。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
要はサキが狂気に冒されているわけではないと悟ってゆくと同時、話を聞いて貰うことに喜びを感じ始めています。
人は失って初めてその大切さに気づくのだ。
KP
水はあとで水星から引っ張ることになるし、大陸間移動も普通に徒歩でできるっぽいから、水はないんだろうなー。
実は後の描写に水出てきます。水位は「極端に下がった」だけだったらしい。なんてこったい!

サキ
「ここな、昔海だったんだ。
でも水はもうないから、歩いていけるようになった」
急な斜面を下っていきながら、そこにあったもののことを発する。
要 紫苑
「海……? まさか海がなくなった? そんな……」
KP
馬鹿な、という言葉は聞かなくともそう言いたいのだろうと察せられる。
水がなくなって久しいため、かつての海底も随分摩耗していた。
ゴツゴツとしていた地形もゆるやかに砕けて削れて、そこが海底だったことを知るのはもうあなたの記憶だけだ。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
海底の地形って結構陸上と違って険しいんだよね。
あんま詳しくないけど、歩くのめっっっちゃくちゃ大変そう。
移動時間の大幅な短縮は、単純な距離だけではなく、こういった地形を仔山羊の身体なら乗り越えられるというのも大きいだろうな。
動植物のいない環境に道なんかできるはずもないから。

サキ
「うん。なくなった。
たぶん、もうちょっとしたら、削れて埋まって、どこがどこか分からなくなるんだ」
呟くのは半分独り言だった。
要 紫苑
「おかしくなっているのはイギリスだけでは……」
要視点
KP
静寂の夕暮れ空に月が昇る。かと思えばそれは月ではなく、青く輝く星だった。月はその遙か向こうにぼんやりと見える。
要 紫苑
こんなに環境が違うのなら、ここは地球ではないのかも知れない。
僕は違う世界に飛ばされてしまったのではないか。

KP
要は昇ってくる青い星を見つめ、ここは本当に地球なのか、と呟いた。
サキ
「ううん、ぜんぶこんな感じ」
要 紫苑
「そうなのですか……本当に」
要 紫苑
「……本当に……」
KP
巨木は坂を下りきったところで足を止めた。そしていそいそとその場に根を張る。
今日はここで休むことにしたらしい。
要視点
KP
夜更けになろうと、あなたは乾きも空腹も感じない。
要 紫苑
どう考えてもおかしい。世界はどうなった。僕に何が起きている。誰か教えてくれ……。
KP
ともにいる少女はずっと、あなたが思い知らされつつあることと矛盾しない言葉を語っている。

要 紫苑
「のども渇かない。空腹にもならない……一体」
KP
要は途方に暮れたように呟いて目を閉じた。
サキ
「そうなのか?
よかった、食べる物がなくても死なないですむ」

要が死なないですむ、よかったと思った。
ここにはなんにもないから。
食べることに伴っていた意味は、もうずっと遠くへ消えた。
サキ
「おやすみ、要」
要視点
要 紫苑
これが現実だなどと、信じたくない……!
とても返事をする気分ではなかった。
要 紫苑
しかしふと、この世界にただ独り生きてきた彼女という存在が現実味を帯びてきた。
彼女には、「おやすみ」を言う相手すらいなかったのだ。

KP
要は随分長いことそのまま沈黙して、「おやすみ……」と呟いた。
KP
その夜も気温は下がる。
眠っている要はカワを引き寄せて縮こまって眠っている。
サキ
寒そうだ。
ここ、寒いんだな。
いつもこんなのだから、俺様ぜんぜん気づいてなかった。

何か他に温かくできる物ないかな?
なかったら、また要に寄り添って寝よう。
KP
外はただひたすらに岩だらけだし、巨木に頼んでも出てくるのはカワだけだろう。
多く貰えばそれなりに暖かいかも知れないが、物がゴワゴワしているので心地が良いかというと微妙ではある。
くっついた方が互いに暖かいし良さそうだ。

要視点
KP
目覚めるとあなたの腕の中にサキが眠っていた。
要 紫苑
また入ってきたのか。
KP
彼女と接触しているところは暖かい。
要 紫苑
この環境では仕方ないか。

要 紫苑
「おはよう、サキ」
KP
目を開くと朝になっていて、要が覗き込んでいた。
サキ
「おはよう、要!
ふふ、要がいる。今日もいる。
呼べる。呼んでくれる。すごい」
にこにこと笑って要の顔を覗き込む。
サキ
「要、寒いんだよな? ごめん、なんにもない」
要 紫苑
「寒いからこっちに来ていたんですね」
サキ
「うん。寒いから」
要視点
要 紫苑
確かに、寒い。
要 紫苑
素直な反応が、少しばかり可愛らしく思えた。

KP
口元がほんの少し微笑んだ。
目覚めたあなたが腕の中から出ていかなくても、追い出そうとはしない。
KP
巨木は今日もひたすらに東を目指し続ける。
一滴の水もなく、生き物の気配もなく、ただただ岩肌がそそり立っている中を歩き続けるだけの一日。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
いい加減要の事情を話してもいいだろう。
暇つぶしに、という理由をつければ話す気にもなるだろう。
要視点
要 紫苑
なんとなく、この不毛な土地に生きる少女に、話をしてやりたくなった。
適切な話題が思いつかなかったので、自分のことを話す。
要 紫苑
この現実とも思えない話を、聞いて欲しくなったのかも知れない。
きっと彼女なら否定せずに聞いてくれるに違いない。

KP
ふと、要が口を開いた。
要 紫苑
「私が住んでいたのは日本です。
こちらに来たのは、病気を治すため……でした」
サキ
「病気? 要、病気だったのか。
今はでっかくなって元気になったか?」
要 紫苑
「大した話ではないのですけれど、暇つぶしになるかも知れませんね」

要 紫苑
「昨日話したとおり、私は農業従事者だったんです。
あまり人と関わるのが得意では、なくて。
それでも別に不自由は感じていませんでしたし、動植物は好きでしたから。

しかし……ある時日本を起点に、奇病が流行り始めたんです。

私も病にかかり、ひどい痛みでまともに動けなくなり酷い咳が出る。
肺から血が出ることも多々ありました。
ただの肺炎ではなく、治療法も良く分からないもので、どうしようもなかった。
畑も動物の世話もできなくなりました」
要 紫苑
「恐ろしかったですよ。日本全国でその病気でばたばたと人が死んだのです」
サキ
「死んじゃったのか。人間がいっぱいいたのに。みんな」
それがどれくらい怖いことなのか、よく分からなかった。
人間はどうせいなくなった。

でも、要の話し方は、それが怖いことだって言ってた。
要もそれでいなくなってたのかもしれないと思うと、怖い気がした。
要 紫苑
「私は死にたくなかった。
病院ではことごとく原因不明、治療不能と言われ、薬は一つも効かなかった。
体は日々痩せ細って、毎日眠る時に「明日は目覚めないんじゃないか」と怯えていました。

あまりにそんな日が続いて、きっと、おかしくなってしまったのですね。
ネットで『ゴーツウッドの山羊の乳は病に効く』などという愚にもつかない噂話を目にして、全財産はたいてイギリスに向かったんです」
サキ
「それで神頼みなのか。
でも、死んじゃうんだもんな。死んじゃうなら何でもする? よな。

それでここに来たのか。
さっき言ってた、隣にいたひと? もそうだったのか?」
要 紫苑
「アレックさんとはブリチェスターへ向かう電車で会いましたね。
奇妙な建造物について取材に行く途中だと言っていました。
記者さんでしたよ。レトロ趣味の」
サキ
「そうなんだな。……それで要、あの死体見つけたときにびっくりしてたんだ。
知ってる人だったから」
要 紫苑
「そういえば電車の中から、丘の上に円錐状の奇妙な建造物が建っているのが見えましたね。
変にキラキラ光っていたな。あれは今思えば鏡だったのかな……」
サキ
「鏡! あのな、俺様見たんだ。
要が寝てた湖のとこ、あるだろ。あそこ、鏡が集まった建物があったんだ。

要が目を覚ます前。あの扉が開く前に、鏡に月の光が反射して、あの扉を照らしてたんだ。
あの日まで、そんなこと一度もなかった。
要が寝てたのと、関係あるのかな」
要視点
要 紫苑
違う世界だ、というのも僕の希望的観測に過ぎない。
彼女が言うように、世界は本当に滅びてしまったのか。

要 紫苑
「……おそらく、私が見た建造物が、私が倒れていた場所で間違いないでしょう。
その建物を調べていた記者さんがあそこで死んでいた。
地形も似ていました」
要 紫苑
「ゴーツウッドの駅に着いた時、病の発作が起きて、私は倒れてしまったのです」
要 紫苑
「それからしばらくして目が覚めると、私は先ほどの円錐状の建物の近くに仰向けに寝かされていました。
近くに、閉じた大扉がありました。
私が倒れていた洞窟のすぐ外ですね。

意識がはっきりしなかったのであまりよく覚えてはいないのですが、その時にはもうこれに着替えさせられていたと思います」
KP
今やただの腰布のようになっているローブを指す。
要 紫苑
「私の横には、顔色の悪い人間と、頭に山羊の角を生やした者どもがいました。
最初は仮面かと思っていたんですが、何故かそれは頭から角を生やした半人半獣のものだと分かったのです」
要 紫苑
「それらは私の口に、黄ばんだ乳のような物を無理矢理流し込みました。
今思えばあれは何かの儀式めいていたと思います」
サキ
「角を生やした人間? そんな人間もいるんだな。俺様はじめて聞いた。
乳? そのおかげで要、病気治ったのか?」
要 紫苑
「噂は正しかった、ということなのでしょうね。
おそらくあの湖の水と同じ物です。
飲むと同時、体が灼けるように熱くなりました」
要 紫苑
「そのまま丘の壁面に作られた扉の前に引きずってゆかれました。
今は摩滅してしまったようですが、当時は幾何学模様が刻んでありました。
そこに光が当たると、誰も手を触れていないのに扉が開き、私はその中に放り込まれました」
サキ
「あれ、光当てたら開くんだったのか!
俺様知らなかった。鏡いじってみたらよかったな」
サキ
「そいつ、なんで要をあそこに入れたんだろ?」
要 紫苑
「おそらく、ですが。
その中にいたものの餌だったのでしょう」
要 紫苑
「洞窟の中にいた、虫のような足をつけた白い肉塊が、私に近寄ってきたんです。
……といっても私は意識が朦朧としていた上にうつ伏せになっていてよく分かりませんでした」
要視点
要 紫苑
あの化け物はなんだったのか。
僕はあれの餌だと思った。
きっとそうだったはずだ。
サキがあれから助けてくれたというわけでもなさそうだ、本当に、あれは一体……
KP
考えようとすると胸の奥がざわついた。
これ以上考えてはならない。そんな気がする。

要 紫苑
「ただただ、恐ろしかった」
要 紫苑
「それで、気がついたら君に起こされていた、というわけです」
寝よう
KP
なんて壮絶な目に遭ってました。
サキ
えらい目に遭ってる。日本が破滅するし自分も病気になるし望みを賭けて行ったら生贄だし。
果たしてその病気はゴーツウッドの連中が絡んでたのか、彼らの目的はなんだったのか。
グロース呼んじゃったのはゴーツウッドの連中だったのかなぁ。

KP
といったところで私は寝ないとヤバいので! 寝ます!!
これ語りきりたくて夜更かししちゃった。
サキ
ありがとうございました!
思わず聞き入っちゃった。そんな目に遭ってたとはなぁ。
KP
ねーほんと酷い。クリティカル出したからこれでもマシな方。
サキ
クリティカル出してなかったらもっと酷い事になってたのかぁ。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
【INT】【APP】低下して、頭に角生えて手からは鈎爪が生えて、大混乱してましたね。


要 紫苑
「体は巨大化し、痛みも苦しさも消えました。望み通り病気は治ったのに、いつの間にか世界がこんなことになっているとは。
まるで悪夢ですよ」
サキ
「それが、要が言ってた白いぶよぶよだったのか」
要 紫苑
「ただ、痛みも咳もなく、夜ぐっすり眠れる、泣き叫んで起きるようなこともないのは、本当に……幸せなことだと……思いますね」
サキ
「でも……、うん。
要が元気で、俺様もうれしい」
要の胸に手を伸ばす。
要視点
要 紫苑
反射的に身を離しかけて、思いとどまる。
要 紫苑
もしかしたら僕たちは本当に、世界に二人だけの人間なのかも知れない。
それなら、少しくらいはいいだろう。
実際、この星は寒すぎる。

KP
胸に手を当てようとすると、要は一瞬身を引こうとしたが、それ以上は動かずあなたが触れるに任せた。
サキ
「じゃあ……、要は、人間とか生き物がまだいた頃から、ずっと寝てたんだな。
あっ、ほんとにここが地球なら、だけど。俺様わかんないけど」
要 紫苑
「馬鹿げた話です。
どんなにあの洞窟がものの保存に適していたからといって、数万年も無事でいられるはずがない」
要視点
KP
そんな筈がない。その言葉はもはや、希望でしかない。そんな気がしてならなかった。
少なくとも今、あなたと彼女にとってこの世界は現実なのだ。

要 紫苑
「……君が法螺吹きならどんなに良かったかと思いますよ」
KP
要の目はどこか諦めたように荒野を見つめた。
サキ
「……うん。そう思う。
俺様何か勘違いしてて、ほんとはここは地球じゃなくて、要がいた地球は別のところにあるんだ。
だったら、いいな」
要 紫苑
「そうですね。帰れたら。
有難いことに今の時代、配送サービスで何でも手に入ります。この図体でも衣服以外はそう不自由はないでしょう」
要 紫苑
「あの洞窟のように時を超える場所がまだある、なんて荒唐無稽なことも、信じたくなってしまいますよ」
要視点
要 紫苑
馬鹿げた夢物語だ。

サキ
「俺様も。
そんなとこがまだあったら、俺様も行ってみたいな。
そこはここみたいに、人間いなくなったりしないかもしれないし」
胸に手を当てて、耳を澄ませるように鼓動や、呼吸の音を感じようとする。
KP
心臓はゆっくりと強く鼓動を打ち、呼吸は緩やかに続いていた。
要 紫苑
「もし……元の世界に戻れる方法が見つかったら、来るといいですよ……」
要 紫苑
「君なら飽きずに過ごせるでしょう」
要視点
要 紫苑
そうなればいいと、思った。
帰れたらいい。この孤独な少女も一緒に。

要 紫苑
「私は、どうしてこんな体になったのでしょうね。
そもそもあの化け物は何だったのか。
餌にされていたにしては何も起きていないし、私が意識していない何かを食ったのでしょうか。
……病とか、命の終わりとか?
だとしたら感謝すべきかもしれません。
君も私のように呪術的な何かをされて、生きながらえているのかもしれませんね」
要視点
要 紫苑
そんなふうに思えてきた。
彼女もまた自分と同じようにわけのわからない目に遭っている被害者なのだ。
飲まず食わずで平気、というのも自分の状況を考えれば信じざるを得ない。
なんとなく、仲間であるような気もしてきた。

サキ
「要も俺様みたいになったとか?
だったらいいな! 要がいたら退屈じゃない!」
要 紫苑
「少しの間なら。それもいいかも知れませんね」
要 紫苑
「…………」
KP
要はしばし沈黙した。
あなたの体が要の体に密着して、その体の丸みを伝える。
要視点
要 紫苑
この子は何なのだろう。
本当に何も覚えていないのか?
というか今更気づいたけど、この子……本当に子供?
言動が幼いだけでは?
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
同情と仲間意識の芽生えにより、要がようやく『サキ』に興味を持ちました。やったね!
ついでに女性として意識してしまうイベントを突っ込んでおこう。のちのちのためにね。
といってもまあ、この二人はそういうルートには入りそうにないな。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
入っちゃったんだよなぁ。
KP
ラストバトルに至っても使うルートになるとは思ってませんでしたよ!
ただその頃には要は「サキを独りきりにしたくない」と強く思っていたので、それはイコール愛だなとは思っていました。

要 紫苑
「君は本当に何も覚えていないのですか。
世界がこんなふうになったり歩き回る前にしていたことは?
家族のことは?
どこに住んでいた、なんてことも?」
サキ
「忘れた!」
けろりとして言う。
サキ
「昔はたぶん覚えてたんだけど、長すぎて忘れた。
こうなってからの方が長いし? たぶん?」
頭を覆うように布をかぶった格好、その腕には錨と羽のように見える大きなタトゥーが入っている。
要 紫苑
「その刺青についても?
あまりこのあたりの風俗ではなさそうな格好ですが……」
サキ
「なんだろうなこれ?
海の模様っぽいよな? たぶん。
俺様海のそばに住んでたのかな?」
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
なんだろ。シュブ=ニグラスが人間としての姿を取ったときに近くにあったか居たかしたものの写しかなぁ?
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
人の姿を取った時に近くにあったはありそう。
何かの伏線になったらいいなーと立ち絵に色々オプションを生やしてましたが、今回は展開上あまり関係しませんでしたね。
KP
あまりにも何も残っていなかったですからね。

要 紫苑
「碇に羽根……何でしょうね」
KP
太陽が空をゆっくりとよぎる。
巨木はゆさゆさと体を揺らしながらでこぼこの谷を渡ってゆく。
サキ
谷を見下ろす。
もともとここが海だったなら、俺様このへんに住んでたのかな?
要視点
要 紫苑
いや、やっぱり思い違いじゃない。体格が成人だ。そんな気がする。

要 紫苑
「……あの。夜に……」
サキ
「夜? なんかあったっけ?」
要 紫苑
「いえ、何でも」
要 紫苑
「…………」
要視点
要 紫苑
なんだか……気まずい。
こういう環境だから、気にされていないのかな。

KP
言葉が途切れると、周囲がしんと静まりかえった。
ただ巨木が歩を進める音が聞こえてくる。
KP
あなたは何か話す?
サキ
「要は海好き? 要が知ってる海にはなんかいた?
なんか、魚? とかっているんだろ?」
ちょっとした沈黙の後、海の話を振る。
要視点
要 紫苑
あまりの気まずさに息を殺すようにするのも疲れたところだ。渡りに船とはこのことか。

要 紫苑
「日本は海に囲まれた島国ですが、私がいたのは内陸の方です。あまりよくは知りませんが……」
KP
こんな言葉を皮切りに、日本近海の魚たちについての講義が始まった。
よく知らない、という割に結構な数の魚の名前と特徴が出てくる。
〈生物学〉31、〈博物学〉70の知識をふんだんに披露されるだろう。
要 紫苑
「一応川でも魚は捕れますね。私は釣りは得意ではありませんが、希に罠で捕らえることはしていました。例えば鮎のような……」
KP
要はそういった生き物を語るとき、食する対象ではなく生き物そのものについて語る。そして目が少しずつ輝きを増し口数が目に見えて増える。
次々と知識がリンクして「これに似たようなものでは……」と話が次々と繋がってゆく。

あなたがこういった話に興味を持って真面目に聞いたなら、〈生物学〉または〈博物学〉に+1D3してよい。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
何も知らないところに専門知識を語られて、しかもそれを真剣に聞いていたなら知識が得られたとして良いんじゃないかな。
考えてみれば後で海も生命も作り直すんだし、こういう話はいい伏線になりそう。

KP
生き物オタクだな。
サキ
人間嫌いなぶん生き物は好きなんだなぁ。
KP
動植物全般大好きです。
だから人が消えたことより大地が不毛になり海が消えたことの方が悲しい。
サキ
「海! そこらじゅう海なのか! すごいな!
そんなにいろんな魚がいるのか!? 水の中なのに! 生き物!
そんな狭い水にも魚がいるのか! きらきら光ってるのか、すごいな、そんな綺麗な生き物がいるんだ。
餌! 食べるのか! いもむし食べるのか!」

すごいすごい、と夢中になって聞く。
要は宝箱みたいだ。俺様の知らないことが、忘れちゃったことが、次から次へと出てくる。
すごい。要がいれば退屈しない。
夢中になって話を聞く。要はすっごく細かいところまで知ってて、聞いてると目の前にそいつらがいるみたいだ。
サキ
1d3〈生物学〉 Sasa 1d3→1
〈生物学〉 1 → 2
KP
あなたが熱心に聴いているからだろうか、要はどこか嬉しそうだった。

KP
気がつけば夕暮れになっていた。
巨木はのっしのっしと進みながら時折速度を落として、根を張る場所を探し始めているようだ。
要 紫苑
「この木は何なのでしょうね。
動物でもなく植物でもない。
そういえばこれに名前はあるのですか?」
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
要はサキを起点にこの世界そのものを「絶望の悪夢」としてではなく、そこに存在するものとして意識し始めています。
ついでに、後でドラマチックなイベントが用意されている仔山羊さんにもスポットライトを当てておきましょう。
要は生命あるものが好きなので、慣れてしまえばこの不気味な化け物にでさえ愛着がわくのもおかしくありません。
終了後トーク(ネタバレ)
サキ
このイベント、よかったなぁ。
ここでサキに他の生き物の概念がインプットされた→要さんが愛着を持ってくれた→名前がついた→サキが対話可能と見なした→仲間になった の流れがあまりにも美しい。
KP
人によっては死ぬのが分かっているものに「名前をつけて愛着を持たせるイベント」を追加するのは酷い仕打ちだと思うんですが、サキPLさんなら楽しんでくれると思ったので!
サキのメーへの想いは本当にいい流れだったと思います。
メーがいたからこそ、二人きりの世界では終わらなかったかなと。
サキ
読み通り楽しませて頂きました! 盛り上がった!

メーがいたからこそ「二人きりの世界」では終わらなかったし、メーがいたからこそ、「他者はいたのに、変化はあったのに、気づいていなかっただけなのだ」という物悲しさが増えたし、
さらには「サキが他者の存在に気づいたことによって、全てが変化する」という美しすぎる流れに繋がりましたね。
あまりにもナイス追加でした。

サキ
「名前? 木に名前がつくのか?
あー、要が知ってる木にはあったんだよな?
わかんない。ないかも。
こいつら以外の木、もういないし。
あったとしても忘れた」
要 紫苑
「面白いですね。どう見ても怪物なのに、見慣れると変に可愛げがある」
KP
「んめェ?」
要 紫苑
「こちらの言葉もある程度分かっているようだし、知性もあるのでしょうね。
鳴き声はなんとなく山羊に似ているでしょうか?」
KP
要くんそいつ見て発狂した挙げ句乳ペロペロしましたけど……
あの時のことはあまりよく覚えてない。
サキ
あまりよく覚えていないおかげで平和的に旅の連れに。
要さん生き物は好きなのがいい方向に働いてますね。
要 紫苑
「連れに名前がないとやりづらいです。彼にも名前を付けた方がいいかも知れませんね」
サキ
「そうか、そうだな!
要と俺様とこいつがいるもんな。
なんて付けよう? なあ何がいい?」
木の表面を撫でる。
KP
「めーえーぇ」
木は答えるようにがばりと口を開けて吼えた。
要 紫苑
「人間の口に似た形状なのに、その音しか出ないんですね」
サキ
「メーかー。メーだなぁ。
みたいだな、どうする? メーでいいか?」
KP
「めぇー」
巨木は歯を剥き出しにして鳴いた。
要 紫苑
「肯定なのか否定なのかも分かりませんが。
良いんじゃないですか?」
KP
巨木は笑ったのだろうか。
何故だかそんな気がした。
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
メーちゃん、シュブ=ニグラスそのひとに注目してもらって名前まで貰えるなんて、嬉しかっただろうなぁ。

サキ
「よし、お前はこれからメーだ!
改めてよろしくな、メー。
ふふ、ふふふ。要とサキとメーだ。名前だ。すごい」
巨木の触肢の間に手を伸ばして笑う。
KP
巨木は、『メー』は、あなたの呼びかけに反応して枝を振った。
ずっと存在していたのにあなたには見えていなかったものがここにある。
もしかするとあなたは、思っているよりずっと多くのことが見えなくなっているのかも知れなかった。
何度も飽きるほど歩いたこの大地にも、もしかすると希望が宿っているのかも知れなかった。
サキ
希望が、あるのかもしれなかった。
ううん、きっとある。
だって俺様、こいつのことにも気づいてなかったんだ。
扉に光を当ててみようとか、そんなこともしてなかった。

時間はあんなにあったのにな。
俺様、あきらめてたのかもしんない。
たいくつ以外のものがここにはあった。たいくつ、たいくつって言い過ぎたんだ。
言葉ってこわいな。言葉にしたこと以外のことがわかんなくなる。
でも、言葉のおかげで要と話せた!

KP
※あとは10日ほどメーに乗って移動を続けます。
話したいことや聞いておきたいことがあればこの期間で話せます。
要の態度も随分と軟化しているので、大体のことには答えてもらえるでしょう。
何か聞いておきたいことはありますか?
その内容や量によって10日間のイベントどう生やすか決めます。(出発から到着までは完全にシナリオにはないデッチアップでございます)
KPのひとりごと(ネタバレ)
KP
ここまでで何とか同行者にはなった。
よーし、好感度上げパートだ!
二人を戦友として戦えるように仲良くさせつつ、《鋭敏な二人》を使うルートへの最低限の種まきをするぞ!

終了後トーク(ネタバレ)
サキ
そういえば、サキは最初「自分にとっての他者の存在」を喜び、「自分にとっての唯一の他者がいなくなる」ことを怖れて要さんを心配していた=自分中心だったんですが、
途中(ルリム・シャイコース戦付近)から「要さん」を思うようになってきています。
KP
急に心配してくれるようになった気がしたけどやっぱり気のせいじゃなかった!
サキ
気づいて下さってた! 嬉しい!
そう、最初サキには他者がいなかった、他者のいない世界にいたから、どこまでも自分中心だったんですね。
KP
要も最初は
「どこかに人間いるかも」→「こんな世界で生き延びてもなぁ……」→「サキを孤独にしないために生きるのもまあ悪くないか」→「サキを独りにしたくない」
みたいな変遷辿っています。
サキ
要さんも最初は「サキ」を見ていなかったし、途中からちゃんと互いを見るようになっていっているんですよね。
KP
やっぱりこれ愛の話だったんだなぁ。
サキ
愛の話だった。美しい。


コメント By.KP(要 紫苑)
終わってみれば、要の「生物好き」というのは本当にいい設定だったなと思います。

プレイ日:2025年11月2日 ~ 2025年12月19日

作者名: キメオール

配布・販売サイト: 【CoC】Good morning ALL

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これはシナリオをクリアした方、シナリオを全て知っている方向けのリプレイ(?)です。
KPC側の事情だけでなく、KPが背景で何を考えていたか、なんてのを基本伏せナシで出しています。



本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」



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