世界樹の迷宮『世界樹の迷宮を彷徨う者達 1』第三階層


世界樹の迷宮を彷徨う者たち
これは、世界樹の迷宮の第三階層のネタバレ文章です。

020 地下十一階


更に降りた先にあったのは、まるで水晶でできたような幻想的な森でした。
ゴート二世
「触ると手がくっついちまいそうだ」
ルシオン
「樹海というより樹氷の森ですね」
チェ=パウ
「はっくしょ! う~、寒いよぉ」
ルシオン
「その格好じゃあ仕方ありませんね」
キリク
「地下六階のことを考えると、注意したほうが良さそうだ」
ラピス
「そうね、油断は禁物よ」
ルシオン
「まずは執政院に報告、それからできる限りクエストを受けてしまいましょう」

ルシオン
「このフロアの地形を把握したいから地図を書くようにという仕事が来ました!」
ゴート二世
「ほんとかよ」
ケイン
「地図を描くための口実じゃないだろうな」
バルロンド
「依頼が来ようが来るまいが書くのだ、今更そんな嘘を言う理由がない」
ゴート二世
「それもそうか。考えてみりゃいつもやってる事だもんな。
それにそういやしょっぱなの試験が地下一階のマッピングだっけ」
ルシオン
「ふふふ、これを期に地図職人としての名を売れば、きっと別の地へ行っても地図作りの依頼が……」


ゴート二世
「敵の強さは大したことねーな。正直拍子抜けだ」
ルシオン
「あっ、誰かいますよ」
先に入って地図を作っていたという執政院派遣の兵士さんでした。
彼は怯えたように自分が描いた地図をくれて、足早に去っていきました。
ゴート二世
「ラッキー。これでこの範囲は歩かなくてすむわけだな」
ルシオン
「どれどれ……あら、これだけですか……これじゃほとんど意味がありませんね」
ゴート二世
「おい、何床消してんだよ」
ルシオン
「やはり自分の足で歩いて確認しなければ。壁だけは参考のために残しておきましょう」
ゴート二世
「結局全部歩くのかよ……」
ルビー
「まァ、そんなことだろうと思ったよ」

ラピス
「あら? ここって地図では壁なのに……」
ゴート二世
「何をどーやったらこんなわかりやすい階段見落とすんだ? 
あの野郎、下まで行きたくないからわざと壁にしたんじゃねーのか?」
ルシオン
「マッパーとして失格ですね。修正修正……」
ルビー
「やれやれ、この調子じゃあ、かえって手間が増えそうだねぇ……」

ラピス
「あら、これはまた中途半端な地図ねえ」
ゴート二世
「あの野郎、本当に見て書いたのか? 
構造から言ってここはこうだろう、とか憶測で描いてんじゃねーのか?」
ラチェスタ
「ありえるな。さきほどf.o.e.らしき影が見えた。
一般兵が一人でこんな所をうろついていたのでは、まともなマッピングはおろか、生きて帰るのも難しいだろう」
ラピス
「そうよねぇ。あんなに怖がっているのに、どうしてばらばらに歩いてるのかしら」
ゴート二世
「おおかた、面倒くさいから手分けして描いたほうが早い、なんて言い出した馬鹿がいたんだろ」
ルシオン
「執政院の方がその程度の思いでマッピングをしているなどとは思いたくありませんが……」

ラチェスタ
「前からf.o.e.が来るぞ。我々には気づいていないようだが……どうする」
ゴート二世
「戦ってみようぜ。このへんの敵じゃ歯ごたえがなさすぎら」

ルシオン
「亀……ですね」
ゴート二世
「いかにも硬そうだな。
俺はヤツの足を縛ってみる。突進系がくるかもしれねぇ。
あんな重そうなのにのしかかられたらひとたまりもないからな」
ラピス
「いつもの作戦ね? 医術防御いくわよ」
ラチェスタ
「トリックステップを使用する」
バルロンド
「亀ということは変温動物だな。冷気の術を使ってみるか」

ゴート二世
「いきなり冷気ブレスだとっ!?」
ラピス
「みんな、生きてる?」
ラチェスタ
「何とかな。しかし連続は危険だ」
バルロンド
「く、調合選択を間違えたか」
ルシオン
「攻撃も重い! みんな、気をつけて!」

ゴート二世
「ぐあッ! なんかさっきよりブレスが痛ぇ!」
ラピス
「……あっ、医術防御の効果が切れてる! でももう薬がないのよ。エリアキュアももう使えないわ!」
バルロンド
「もう炎熱の触媒が切れる。まだ倒れないのか、奴は!」
ルシオン
「た、多分かなりバルロンドの火炎術が効いてるとは思うけど」
ゴート二世
「ちくしょう、あの野郎、頭に攻撃してるのに鞭が上手く巻きつかねー!」
ラチェスタ
「バルロンド、アムリタだ」
バルロンド
「すまん。これで後一回は攻撃できる」
ゴート二世
「やばいな、俺死ぬかもしれん」
ルシオン
「もう少し頑張ってください! バルロンドの術が切れたら、あとはあなたの技にしか頼れないんですから!」
ゴート二世
「ったってよォ。くそ、いきなりこんな強いのがいるなんて、詐欺だぜ!」

ラピス
「なんとか……勝てたわね」
ゴート二世
「俺もう限界」
ルシオン
「あちこちで手に入れてきた薬類が役に立ちましたね。これからは少しアムリタも持っておかなくては。
それから、もう準備は出来ていたけれど、フリーズガードを使えるようにならなくてはいけませんね」
ラチェスタ
「甲羅がとれた。これほどの素材なら何か作れるのではないか?」
ゴート二世
「とにかく、帰ろうぜ。いくらここの敵が強くはないったって、全員ボロボロのからっけつじゃさすがに死ねる」

迷宮内を歩いていると、以前何度か会った事のある、ブシドーのレンさんにお会いしました。
レンさんは我々に、何のために迷宮の奥へ進むのかと問いかけ、私は謎を解くためだと答えました。
ルシオン
「そして、ブシドーの秘伝の書をいただいたんです」
ルビー
「それは、お宝だねぇ」
ルシオン
「ギルドに持っていったら、これでブシドーが新たに育つかもしれないとのことでした」

というわけで数日後、我らがシェルナギルドに新たなメンバーが増えました。
ブシドーのジンライさんです。
遠い祖先がブシドーだったそうで、最低限の知識と腕はあるのだそうですが、全く実戦経験がないため、最初は戦力にはならないと豪語しておいででした。
……そんな事、豪語するような事ではないと思うのですが。
ジンライ
「いや~、悪いな。何しろ竹光は飽きるほど振り回してきたんだが、真剣持つのは初めてでよォ」
ゴート二世
「おいおい、そんなんでいいのかよ。つか、なんで上半身脱いでんだよ」
ジンライ
「ブシドーとは死ぬことと見つけたりって言葉があってな。
死のぎりぎりで振るう刀こそ魂の力を持つんだ。本当かどうかは知らねぇけどな。はっはっはっ」
本当に大丈夫なんでしょうか、この方。


さて、それからしばらく歩いたのですが、どうしても道が見つかりません。どこへ行っても行き止まりなのです。
これは考えたくありませんが……
ゴート二世
「またマップ間違えたんじゃねーの?」
ルシオン
「うう……外周を歩いてみましょう」
三日ほど迷い続けて、やっとマップでは壁、本当は通路の道を発見できました。
ルシオン
「ここ……あの兵士さんからもらった地図で描いてあったところです……」
ラチェスタ
「そういえばこの地図は、中の小部屋がないものとして描かれていたな」
ゴート二世
「こっちにも道あんじゃねーか。これはもうマップ云々じゃなくて罠だろ」
ルシオン
「うう……私がこんないい加減なマップに騙されるなんて……」
執政院の地図かきした皆さんは、まとめて一階からやりなおした方がいいと思いました。
これは恐らく、階段があろうと扉があろうと、道がない部分には壁が描かれてしまうというシナリオキャラクターが描く地図の仕様のせいです。
結局現地に足を運ばなければ使い物にならないのは間違いないですね。

021 地下十二階

どうにか次のフロアにたどり着くことはできました。
しかしそこは蟻の巣でした。

ルビー
「気持ち悪いねぇ……あたしこういうの苦手なんだよ」
ジンライ
「おっ、奇遇だね。実は俺もそうさ」
キリク
「……さっきから躊躇いなく斬ってるように見えますけど」
ジンライ
「俺が苦手なのは小さいほうでね。これだけ大きいと気持ち悪いって感じはしねぇや」
ラチェスタ
「……早く行こう」
ケイン
「顔色が悪いな。戦後手当てだけでは足りなかったのかな」
ラチェスタ
「怪我ではない……気にするな」
ケイン
「へー(意外な弱点があったな)」


ケイン
「強くないのに次から次へときりがないな。
下等生物はこれだから……」
バルロンド
「……あの蟻、動いていない。
ほかは全部歩いているというのに、妙だな」
ジンライ
「ふん、斬ってみりゃあなんだか解るだろうよッ!」

キリク
「蟻が消えた! こいつがここのボスだったのかな」
バルロンド
「そのようだな」
ジンライ
「てことは、動かねぇヤツを斬っていきゃあ、この鬱陶しい虫どもを掃除できるってぇ寸法か。
へっ、話が簡単でいいぜ」
キリク
「乱入が激しいから、それでいなくなってくれるなら何とか進めそうだ」

キリク
「……あれ?」
ジンライ
「どうした、坊主」
キリク
「元の場所に戻ってきちゃったんです。この道はこれで終わりだ。多分ここに隠し通路が……この道が、地図のここで見つけた道につながって……」
バルロンド
「ふむ? だがここ以外に先へつながりそうなところはないのだが」
ケイン
「おおかたまた道を見落としたんだろ? マッパーの責任だぞ、これは」
キリク
「僕は見落としていない……と思うけど」
ラチェスタ
「ここでこうしていても仕方があるまい、戻って調べてみるぞ」

ジンライ
「蟻はもういないな」
ケイン
「ふーん、見落としってわけじゃないのか」
キリク
「道があったとしてもこっちじゃないと思う。地図から言って、道があるとしたらここかここ。
外からの道は偽地図に騙されたときに調べつくしたはずだから、たぶんこの辺に何かあるんじゃないかな……」
ラチェスタ
「……道だ。いい勘だな、キリク」
ケイン
「そ、そんなのオレだって気づいてたさ」
ラチェスタ
「見たところ……真ん中に大きなアレが一体、周囲に働きアリがいるようだな」
バルロンド
「ひとまず戻るとしよう。おそらく大物だろうから、突っ込むのはやめた方がいい」

ルビー
「多分今までのアリの行動から言って、周りを潰そうとすると面倒なことになるんじゃないかねぇ。
狭いからどんどん乱入されそうだよ。沸く速度も速いしねぇ」
ルシオン
「でも、最初はセオリーから攻めてみましょう」


ゴート二世
「おっ、やっぱりただの働き蟻だな。ちっと硬ぇが、大したことねーや!」
ジンライ
「物足りねぇくらいだッ!」
ルビー
「ちょっと、後ろで音が……」
ケイン
「うわ! なんだこの数! 帰り道塞がれてるし!」
ジンライ
「とんでもねぇな。二ターンで沸きやがるのか!」
ゴート二世
「大丈夫、この一撃で勝てる! そしてそれなら隣に出たばかりの蟻は気づかねー!」

ルビー
「ふう、冷や冷やさせンじゃないよ。こんなの全部相手にしてられるかい」
ジンライ
「だなぁ。こいつは倒しきる前に乱入されて数で負けちまわァ」
ケイン
「雑魚から潰す手は使えそうにないか。みんなに報告しよう」
ゴート二世
「……あ」
ルビー
「なんだい。早く糸使っておくれ。あたしはもうこの見渡す限り蟻なんて風景は飽きちまったよ」
ゴート二世
「……みんな、覚悟を決めよう」
一同
「……」
ジンライ
「お前さん、まさか、ここまで来てそんなお約束はナシだぞ」
ゴート二世
「今まで一度も忘れたことがない、予備も必ず用意ってのが自慢だったんだけどなー」
ケイン
「うわ~! 蟻にかじられて死ぬのは嫌だぁぁぁぁぁ!」

ルシオン
「そういう時に猛進逃走があれば何とかなったんですけどね」
ルビー
「今更誰の責任かなんて言ったって仕方ないけどね。よりによって糸を忘れるなんてねぇ」
ルシオン
「それより、蟻です。たぶん真ん中は女王蟻だと思います。
スノードリフトの時と同じで、ボスをなるべく早く潰していくしかないと思います」
ゴート二世
「よし、じゃあ俺とキリクが行くぜ。あと、蟻の乱入が激しいだろうからバルロンドとルビーで全体術連発してくれ。回復はラピスだ」
ルビー
「乱暴だねぇ」


バルロンド
「(火炎の術式)」
ゴート二世
「いいぞ、バルロンド! すげー効いてるぜ!」
キリク
「僕たちの攻撃も結構通ってるみたいだ!」
ゴート二世
「頭くくれたし、いけるぜ!」
ラピス
「でも、大丈夫? すごい怪我……」
キリク
「攻撃が重くて……こんな時にルシオンがいてくれたらな」
ルビー
「無駄口叩くんじゃないよ、増援が来るよ!」
ゴート二世
「ちっくしょう、あの大顎めちゃくちゃ痛ぇっ!」
ルビー
「やっぱりあたしの氷じゃ、バルロンドの炎ほどダメージが入らないね。敵を減らす役には立つみたいだけど」
キリク
「くっ、くそ……」
ゴート二世
「うわッ! キリク、おい、しっかりしろッ!」
ラピス
「リザレクション!」
キリク
「ただで殺されるもんか……パワークラッシュ!」
ラピス
「だめ、回復が追いつかない!」
ゴート二世
「ちくしょう、あと少しなのに……ぐはッ!」
ラピス
「きゃー!」
ルビー
「バルロンド! ちょっ、みんなやられちまったよ!」
バルロンド
「落ち着け! 俺たちが今更薬を使おうが立て直せはしない! 
それよりあの女王はもう死にかけだ。ヤツを仕留めれば増援はやみ、倒すべき敵はあの雑魚三体だけだ!」
ルビー
「そうだけど……あんた存外肝が据わってるね」
バルロンド
「俺が火炎で女王を殺る。あとは雑魚が何発で消えてくれるかの勝負だ」
女王はバルロンドの攻撃で死亡。増援は止まった。
ルビーの魔法が雑魚を凍てつかせる。だが蟻はまだ生きていた。
ルビー
「し損じた!」
蟻に食いつかれてルビーは死亡。
バルロンド
「奴らの体力はあとわずか。この炎で削りきれるかどうか……賭けだな」
だが、本当にあと少し、というところでアリたちは生き残ってしまった。
バルロンド
「ちっ、俺の運もここまでか……」

壮絶な戦いの後、私たちはバルロンドの炎を主軸にしたパーティーを組み、私とラピスの防御技で何とかパーティーを守りきりました。それでも死亡者は出てしまいましたが……。
恐ろしい敵でした。

022 地下十三階

女王を倒したことを執政院に報告すると、このような話を聞くことができました。
世界樹の迷宮には、人間に似た生物、亜人間がいるらしい、と。
私たちはその調査をするため、更に奥へと降りてゆきました。
バルロンド
「人に似た別の生き物か……本当に存在するなら、おそらく世界樹のことも我々よりは詳しいのだろうな。話を聞いてみたいものだ」
ケイン
「ったって、そいつらが友好的かどうかわかんねぇっていうし、大体こういう場合分からず屋って相場が決まっているさ」
チェ=パウ
「わかんないよ。妖精さんかもしれないもの。会ってみたいな」
ケイン
「そんな非科学的なこと、本当に考えてるんじゃないだろうな」
チェ=パウ
「夢がないなー」
ケイン
「今までこの世界樹の迷宮から出てきた亜人なんかいない。逆にオレたちが散々っぱら苦労してたどり着いた深層にいる。つまりそれだけ強いってことだ。
もし話が通じるような奴らなら、今まで交流がなかったことのほうがおかしいぜ。オレたちだけじゃない、今までに人間は数え切れないくらい樹海に入ってんだからな。
大体そいつら、どうやって生きてるんだよ。怪物どもの中に人間っぽい形をした奴がいるだけだって。
会ったってロクなことにならないのは目に見えてる」


階段を下りた私たちの目の前には、水の世界が広がっていました。
向こう岸とは水路で隔てられています。
チェ=パウ
「きゃ、冷た~い!」
ラチェスタ
「地下水脈だな。まさかこの下は水で行き止まりなどということはないだろうな……」
ルシオン
「泳ぎは、ちょっと……」
チェ=パウ
「その格好で泳いだら沈んじゃうね」
ケイン
「オレも濡れるのはゴメンだぜ」
チェ=パウ
「でも、綺麗だね」

ジンライ
「おっ、泉があるぜ」
ケイン
「便利な所にあるな。街からすぐだ」
ルシオン
「最近お財布が軽くなってきていましたし、ちょうどいいですね。
ではしばらくここを拠点に……」
ケイン
「待った待った! 
前々から言おうと思ってたんだけどな、ルシオン。
いくら泉の水を飲めば元気になるからって、一睡もせずにひたすら戦い続けるのは断固拒否する!」
チェ=パウ
「そうだよねー。やっぱりお布団で寝たいよねー」
ルシオン
「でも、お金が……うち人数多くて、すぐにお金がなくなっちゃうんですから、仕方ないじゃないですか」
ジンライ
「まあまあ、嬢ちゃんよ。
効率ばかり追ッかけたっていい事なんざありゃしねぇさ」
ルシオン
「宿泊は馬小屋、それも眠れるのは魔法使い職だけで、戦士系は魔法で回復だけしてすぐ出発なんて街もあるのに、贅沢な人たちですねぇ……」
ケイン
「……それ、どこの世界の話だ?」


ラチェスタ
「……?」
ゴート二世
「どうした?」
ラチェスタ
「今f.o.e.の気配があったのだが……気のせいか?」

キリク
「!?」
ラピス
「何かいた?」
キリク
「今、後ろに何か……」
ラチェスタ
「間違いない、何かがいるぞ。気をつけろ」

キリク
「僕たちが戦っていると、水の中からあがってくるみたいだ」
ゴート二世
「鬱陶しいな……何だか知らねぇがイラつくぜ」
キリク
「ここの敵は結構強いし、油断はできないね」
ラピス
「あの蝙蝠がちょっと怖いわね。前列後列関係無しに集中攻撃してくるみたい」
キリク
「蛙の呪いの歌も危ないけどね。
呪われるとダメージが返ってくるから、迂闊に大技出せないよ」
ゴート二世
「とにかく! 今度近くにあのf.o.e.の野郎が出たら、こっちから突っ込む。いいな」
キリク
「わかった」

ラチェスタ
「今だ!」
ゴート二世
「おらぁ、顔見せやがれッ! 
か……蟹? でけぇ鋏だな!」
キリク
「うわっ、硬いッ!」
バルロンド
「(火炎の術式)」
ゴート二世
「あの鋏ヤバい気がする。腕封じしとこう」

ラピス
「みんな、大丈夫?」
ゴート二世
「へっ、大したことなかったな」
キリク
「僕はあまり役に立てなかったけどね」
バルロンド
「あの甲羅はかなりの硬度のようだ」
ゴート二世
「しかし、水辺で戦闘しているといつ狙われるかわからんってのは不気味だな」


ルシオン
「また、f.o.e.……」
ジンライ
「動かねぇな……三体いやがる」
ルビー
「避けて行くことはできそうだね」
ゴート二世
「試しに一回戦ってみるか」
ラピス
「……そうね。どう動くかわからないし、どんな敵なのか見ておくのはいいことだわ」

這い寄る暗殺者が現れた
ジンライ
「何でぇ、この宇宙生物みたいな奴ァ!」
ゴート二世
「見るからに口がやべーな。封じてみよう」
ルシオン
「守備を固めます!」
ルビー
「特製の毒をくらいなァ!」

ルシオン
「きゃーっ!」
ジンライ
「うっ、くそ、腕が持っていかれるかと思ったぜ」
ルシオン
「つ、強い!」
ゴート二世
「バカみたいに痛ぇけど、それほど鱗が硬いわけでもないし、さっきの毒がかなり効いてる! もう少しで倒せ……!」
ラピス
「どうしたのっ?」
ゴート二世
「おい、嘘だろ……」
ジンライ
「へッ、祭り好きな畜生どもだ」
増援が現れた
ルシオン
「そんな、こんなのが二体も……」
ジンライ
「モテる男は辛ぇな」
ゴート二世
「くそっ、その後ろにも一匹順番待ちしてやがる!」
ルビー
「早くとどめを刺……いや、新しい奴に毒かね?」
ルシオン
「……甘かったわ……」
ゴート二世
「ま、こんな事もあらァ。せいぜい奴らの喉につっかえてやるさ!」

023 地下十四階

鰐地帯を抜けて更に下へと降りると、そこは地底湖でした。
どこまでも広がる水の上にぽつりぽつりと巨大な蓮の花のようなものが浮かんでいます。

ゴート二世
「おい、この花、ひょっとして乗れるんじゃないか? 
もし船の代わりに使えるなら、ここを自由に動けて楽じゃねーか?」
ケイン
「はっ、何言ってんだか。そんな物にオレたち全員が支えきれるわけないじゃないか。
大体、乗ったから何だって言うんだ? 水の上で立ち往生がオチに決まってら」
バルロンド
「強度は申し分ない。浮力も十分なようだな……」
ジンライ
「ほー、面白ぇ植物もあったモンだな」
ケイン
「もし乗れたって、コイツが化け物じゃないって保障はどこにあるんだ。水の上でパクッとやられたら逃げ場ないぜ」
ラチェスタ
「糸はある」
ゴート二世
「そうか。よし、乗ってみようぜ。どのみち行き止まりだ、試す価値はあるだろ」
ケイン
「まったく、そんな非科学的というかファンタジーなシロモノに頼ろうなんて奴の気が知れ……
あっ、おい、オレを置いて行くなよ!」

バルロンド
「この植物は特定の方向にしか進めないようだな」
ジンライ
「十分十分。
ん? 大丈夫か、ボウズ。あまり縁に行くと落っこっちまうぞ。
ここでの寒中水泳は勧められねェな」
ケイン
「……うえ~。酔い止めなんか持ってねえよ~……」
ラチェスタ
「しかし、こうなると地図にはどう記したら良いものか……」
バルロンド
「島は普通に線で囲み、花はワープゾーン扱い、あとはよく使う道を壁無しで床塗り……これでどうだ」


ルシオン
「ここが丁度フロアの真ん中あたりでしょうか」
バルロンド
「ふむ、構造のせいか体感的に狭いな」
チェ=パウ
「こっから上に行く道と下に行く道があるんだね。
上に行けば、さっき上の階で川向こうに見えた所へ行けるんじゃないかな」
キリク
「……あれ。人がいる」
ルシオン
「人? こんな所に?」
どこか植物を思わせる、人の形をしたものがそこにいました。
そのひとは、疑問を差し挟む余地もなく、これ以上入ってくるな、とだけ告げて去ってゆきました。
確かにそれは、人間の形をしてはいましたが、人間ではない、異種の生物のようでした。
ルシオン
「本当にいたんですね、亜人……」
バルロンド
「追うぞ」
キリク
「え、でも今こっちへ来るなって……」
ルシオン
「私たちは彼らの調査に来たのですから、ひとまず追ってみましょう」
キリク
「なんだか嫌な予感がするなあ」
ケイン
「(かわいいな……あの子)」
チェ=パウ
「おーい、ケインくん、行くよ?」

024 地下十五階

それからしばらくは亜人の手がかりもなく、私たちは迷宮をさ迷い続けました。
地下十五階に下りてすぐでした、恐ろしい気配を感じたのは……。

ジンライ
「殺気だ。これは大物だぜ」
チェ=パウ
「こ、このまま進む? 今単純に地図書きと訓練のための潜りでしょ?」
ルシオン
「……進みましょう」
ケイン
「おいおい、ホントかよ……」
ルシオン
「きっと何とかなりますよ。ね」
バルロンド
「あの亜人にもう一度会えるかも知れない。先を急ぐのには賛成だ。
それにここから先は未知の領域、多少の危険を恐れていては世界樹の謎など解けはしない」
ケイン
「(あの子にまた会えるかもしれないのか……)
そうだな、オレたちは先を急がなきゃいけない」
ルシオン
「じゃ、開けますよ……」
広い部屋の中央に亜人がいました。ですがその人は強い拒絶の意志を示し、怪物をけしかけてきました。
幸い、この階層の主と思われるその怪物はそう強敵でもなく、私たちは戦闘に勝利することができました。
が、亜人は迷宮の更に奥へと姿を消してしまい、そこには謎のプレートだけが残されました。
バルロンド
「あの亜人、盟約により人間が聖域に入るのは許されていないと言っていたな」
ルシオン
「昔の人が、あの亜人と、ここには入らないって約束したということ?」
バルロンド
「恐らくな。だが何故人間が立ち入ってはいけないというのだ? 
それにこの魔物の巣窟が聖域とは、どういう意味だ?」
チェ=パウ
「んー、魔物がいっぱいいるのは、人間をここに入れないためなの?」
バルロンド
「解らないな……ここで昔何があったというのだ? 
尚更あの亜人に話を聞かなくては」
ルシオン
「まだ先があるようですものね。我々に敵意がないことを知ってくれれば、話を聞いてくれるかもしれません。」
チェ=パウ
「あっ、この階はこれだけみたい」
ケイン
「(このまま降りていけば、またあの子に逢えるかな?)」
バルロンド
「このプレート、何か書かれているようだな……
俺には読めないが」
ルシオン
「持って帰って提出しましょう。何かわかるかも知れません」