インセイン　カゴメ 3

※犯人はこの中にいる!!

※閑話休題。

※結局GMがBGM追加した。

「ふう」
空になった容器を適当に放りだし、一息つく。
古ぼけたイスに腰掛ける青年の前には、男の生首が一つ。

「ご無沙汰です。あなたにはさんざんお世話になりましたね。その節は、どうも」
灯油の香りがただようその中で、躊躇なくタバコに火をつけ、紫煙を吐き出す。

「思えば、もうずいぶん昔のような気がしますよ。ここへ復讐のために乗り込んできたのがね。あの時、僕の心の中はドス黒いものでいっぱいだった。この」
懐から取り出すのは、赤茶けた何かが付着した大振りのナイフだ。
「得物を振り回すのに、何もためらいは無かった」

暫くタバコを吹かし、再び口を開く。

「でもね、気付いたんです。彼女の……スージーの暖かさと、姉を思う気持ちに。彼女の……シャルの、命を無残に奪われてもなお、愛する妹を幸せにしたいという、その気持ちから。……僕は……あなたと同じことをしてしまったのだ、ということに、ね」

うつむき、呟く。

「ああ、勘違いはしないでください。僕はあなたを殺したことだけは決して後悔はしていない。僕はあなたに全てを奪われたのだから」

「あなたの全てを奪う。その意志だけは変わらない。……彼女は、スージーは僕の養子になってくれるそうです。これで、あなたにはもう、何も無いですね。このボロな屋敷も、これで」

「彼女は、必ず幸せにします。……彼女だけは幸せになってもらわなければ。それが、僕のあなたへの復讐であり、ただひとつの罪滅ぼしだ……」

「それじゃ。ここへは二度と戻りません。あなたとも、僕の忌まわしい過去とも、ここでお別れだ」
言って立ち上がると、背後へと未だ煙を上げるタバコを放り投げる。
たちまち吹き上がるであろう炎を気にすることもなく、ゆったりと屋敷を出て行く。

その途中の庭で、比較的新しい土の盛り上がりの前で足を止め、その上のペンダントを拾い上げる。
そしてしばらく黙祷を捧げてから
「約束しますよ……。必ず」
呟き、青年は立ち去った。