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こちらには
『夢の果てならきみが正しい』のネタバレがあります。

本編見る!
佐倉 光
けふ、と息が漏れた。
見た事もない存在なのに、名前は何故か頭にすっと浮かんだ。
佐倉 光
「ガダモン……」
冷や汗が流れ落ちる。
どう見ても高レベル悪魔だ。自分たちなどひとひねりにできる。
それよりも生理的な嫌悪感が酷い。
佐倉 光
「ど……どもー。おはようございまーす」
混乱のあまり普通に話しかけてしまった!
KP
「おはよう。がだもんはいいこだから、おはようをしってる」

『それ』は声をあげる。『それ』は本当に声をあげるようなものだろうか。
けれど『それ』は確かにあなた達に話しだすのだ。
KP
「がだもんをほめる?」
奇妙な甲殻類のような形をした縫いぐるみを抱きながら、それは少し期待したような声で言う。
佐倉 光
「あ、ああ、うん、えらいよ!」
佐倉 光
「挨拶は大事だからね!」
佐倉 光
奇妙な見た目の生き物から普通の子供のような言葉が出る事に面食らったが、まあ今の牧志も同じ状態だ。
……精神状態まで牧志のように人間と同じなんて保障はないんだけどな。所詮悪魔だ。

とりあえず落ち着かなければならない。
牧志があいつの側にいる。機嫌を損ねたらまずい。
それに話し合いで解決するなら喜ばしい事じゃないか。
佐倉 光
牧志の精神状態も今回は随分人間離れしてるけどなー。
いや、アクションが人間離れしてるだけか。
KP
しかし二つに増えた。
佐倉 光
千切れちゃうとはなぁ。
KP
「んふ、んふ」
ぷすー、ぷすー、とそれは鼻をつく腐敗臭のするガスを吹き出しながら、満足そうに身を揺らす。
KP
「でもほんとは、パパたちにほめられたい……」
それからちょっとさみしそうに、縫いぐるみを粘ついた触手でぎゅっと抱いた。
佐倉 光
「ご、ごめんね? 勝手にお邪魔して」
KP
「ううん。だれかくるのはめずらしい。
しょごすのかおしたにんげんと、にんげん? 

がだもんはしょごすをはじめてみた。ちょっと、にてる」
『それ』は無邪気な様子で、足元(?)にへばりつく牧志をそのむかつくような触手でつついた。
牧志 浩太
「ともだち、ともだち、」
するすると触手が巻きつく。
牧志 浩太
あなたの腕の中にいる方の牧志は呆気に取られてしまっているのか、あなたの腕の中で固まっている。
佐倉 光
その寂しそうな様子に何となくシローと重ねてしまって慌てて首を振る。
違う違う、こいつは人間じゃない。別世界のものだ。
実際こいつが寂しさを感じていたとして、人間の子供のようなやり方でそれを発散するとは限らないんだぞ。
悪魔の親愛の抱擁は容易く人間を殺すんだ。
佐倉 光
「あんまり抱きしめないでね、潰れちゃうから。
僕の大事な友達なんだ」
慌てて声をかける。手の中の牧志の半分を反射的に抱く。
牧志 浩太
牧志の半分はようやく状況を認識したらしい。
あなたの腕に走る緊張に呼応して緊張を走らせた。
KP
「わかった」
それは足元の牧志から、そろりと触手を離す。
KP
「にんげんがふたつもいるのめずらしい。
ゆめみるひと、つくられたひと、どうしてここにいるの? がだもんとおんなじ?」
佐倉 光
「僕は……えっ?」
眉根を寄せる。
佐倉 光
「ガダモン……くんからは、僕と牧志は違うように見えてるの?」
ゆめみるひと、はまあいい。なんとなく意味するところは分かる。
唾を飲み込んで問いかける。
佐倉 光
「つくられたひと って、なに?」
KP
「つくりものはつくりもの。がだもんとおんなじ?
がだもんはパパたちにつくられた」
佐倉 光
どういう意味だ。俺か牧志のどちらかが、「自分」ではないってことなのか?
牧志 浩太
その辺りで、ようやくベッドの上の牧志が我に返りだしたらしい。
牧志 浩太
「ともだち…… あれ? うわ」
ものすごく今更感のある声が聞こえた。
佐倉 光
「あー、落ち着いて。大丈夫。今話聞かせて貰ってるとこ」
こっちの牧志とあっちの牧志は繋がってないのか。難儀だな。
牧志 浩太
「あ、ああ、うん」
上の牧志は邪魔をしないことにしたのか、ぽかんと『がだもん』の巨体を見上げている。
佐倉 光
「つくりもの、って、例えば〈夢見〉……とかで?」
眉根を寄せる。
思わず胸元のクリオネを握りしめた。
KP
「ゆめ? ここはゆめ。がだもんのおうち」
〈夢見〉はよく分からないのだろうか。
佐倉 光
そうか、俺達が何か、って事は分かるけど詳細は分からない、ということかな。
ここにおいて作られたものとそうでないものにそれほど差はないんじゃないかという気はしている。
佐倉 光
俺が作り物……だったら、まあ……いいだろう。
あのときの逆ってことだ。
俺が微妙な気分になる程度だ。大きな問題じゃない。
いまいち飲み込みづらいが。
佐倉 光
ただ……牧志が作り物だった場合。
俺の行動に意味はあるのか、ということになる。
こんな所で時間を潰してないで、別の手段を探すべきなのかも知れない。
佐倉 光
息をつく。
折角話が通じるのだ。すべきことをしようか。
佐倉 光
「僕は友達の体を探しているんだ。
君のベッドにもしかしたらそれがあるかも知れないんだ。
上がって探してもいいかな?」
KP
「がだもん、それもってる。のうみその形してるやつ」
KP
「でも、あげない。がだもん、いつかパパたちがあいにきてくれたら、プレゼントするの」
KP
「パパたち、ひとののうみそすきだから、がだもんのことほめてくれるかもしれないの」
KP
「でも……」
不浄な粘性の怪物は、ぬいぐるみを守るように、大事そうに強く抱きしめながら言う。
その声色はどこか寂しげで、ひどく幼かった。
KP
「ともだち、がだもんとあそんでくれるなら……
がだもん、たのしかったら、のうみそあげてもいい」
佐倉 光
遊んでほしい、か。
不覚にも今度こそシローと重なってしまった。

いつもいつも心配掛けてる。
約束を破る気はないのに、遊びに行く予定は潰れたり台無しになることもしょっちゅうだ。
仕方ないと思う。
だから休みの日には積極的に遊びに行くことにしているのだ。
……今まさに、シローは一人で家に残されて、また一人になることを恐れているのかもしれない。

くそ、卑怯だぞ。放っておけないじゃないか……!
佐倉 光
「分かったよ、内容によっちゃいいぜ。
何をするんだ」
佐倉 光
俺が、自分の夢の中で牧志を探し出す夢を見て、どうにもならない現実から逃避してるだけ、なんてことだけは考えたくもないな。
牧志 浩太
「……そういえば、またシローを置いてっちゃってるな」
あなたの思ったことが何となく分かったのだろう、あなたの腕の中で牧志が呟いた。
KP
「んー……。なんでもいい」
あなた達のそんな物思いをよそに、一番困るやつが飛んできた。
佐倉 光
うーん。丸投げか。
ボドゲあたりが平和だと思うが、勝敗でキレられても困るな。
うーん。
佐倉 光
できれば一人でも遊べるやつがいいか。
何がいいかな……こいつ何が楽しいんだろう。
腕組みをして考え込む。

※リアルで考えてきます。うーん。
KP
※ガダモンはここでずっとひとり(?)きりで眠っているので、本当に何でも喜びます。
好きに遊んでやってください。
KP
あ、そういえば。
あの後確認したところ、〈夢見〉〈夢の知識〉は通常成長対象だそうです。幻夢郷p.12。
佐倉 光
おっ。やったぜ。
KP
成長チェックおめでとうございます。

佐倉 光
ブロック遊び……地味かな?
レゴやら大量に出して組む。
不定形だと色々遊べそうだなぁと思ったんだけどね。
いつ消えるか分からないというのがネックだが!
KP
なるほど。
ここは【がだもんのおうち】であるため、【POW】×5での判定に成功してブロックの概念を『がだもん』に伝えることができれば、判定・MP消費なしでブロックを出せてよい。
佐倉 光
よし。じゃあそれでやってみよう。
自分で出せるようになれは一人でもそれで遊べるしな。
1d100 70 【POW】×5 Sasa BOT 1d100→ 39→成功
佐倉 光
「こう、小さいパーツをくっつけて遊ぶ玩具なんだ。
形は最初は単純な方が融通利いて面白いと思うぜ」
例えば……とブロックをいつものように形作ろうと集中し始める。
KP
「つける?」
牧志 浩太
「そうそう。くっつけて、物の形を作ったりするんだ」
KP
あなたは夢見、想像しようとする。
しかし目の前のそれがぷすー、ぷすーと呼吸する度に有害なガスの臭いが立ち込め、想像がうまく続かない。

そのとき巨大な赤子が粘土をこねるようにして触手をこねた。
そうすると頭の上にちかちかとした光がまたたきだし、その光が簡素な木のブロックとなってクッションの上に落ちてきた。
KP
▽技能判定〈回避〉
失敗するとHPは減らないが、いたい。
佐倉 光
1d100 33 〈回避〉!  Sasa BOT 1d100→ 35→失敗
牧志 浩太
1d100 16 〈回避〉 Sasa BOT 1d100→ 58→失敗
KP
コツンコツンコツンツンツン…… いたい!
佐倉 光
「いててててて」
牧志 浩太
「ああああ佐倉さん」
牧志たちは痛くはないようだが、あなたを庇うのには間に合わなかった。【DEX】が足りない。
佐倉 光
「木か。まあそれでもいいなっていてぇ!」
慌てて逃げ出す。
アーチでも組むか……
KP
降り注ぐブロックから慌てて逃げ出すと、やがて雨は止む。
KP
『がだもん』は降り積もったブロックの山を不思議そうに見ている。
柔らかなクッションの上にブロックが積もっているさまは、その上にいるのが膿胞の塊でさえなければ、愛情と孤独に埋もれて眠る子供の寝床のようだ。
佐倉 光
よし、こういうやつのお約束。ひたすらレンガ状に組んでどこまで積めるか勝負だ。
適当なブロック積んで塔を作り始める。
佐倉 光
「こうやって思いついた物作るんだよ」
KP
『がだもん』は不思議そうにあなたが塔を作っているのを眺めていたが、しばらくするとそれが長い構造物になりだしたことに気づいたようだ。
KP
かちゃかちゃとブロックをこね合わせ、何かを作り始める。
牧志 浩太
「お、じゃあ俺も」
しばらくその空間に、あなた達がブロックを組み合わせる音だけが響いた。
佐倉 光
適当に積んだら、折角複数人いるし、俺の塔でジェンガもどきでもするか。
佐倉 光
「これでゲームするんだ。
下の方からブロック抜いて上に積む。それだけ。
崩したヤツが負けな」
と説明。
俺が一番不利な気がしなくもない。
KP
「のうみそ」
『がだもん』が作り上げたのは特徴的な半球状の…… のうみそだった。
もちろん牧志のではない。
牧志 浩太
「おっ、結構リアル。やるなー」
佐倉 光
「脳味噌かー。皺の表現が変にリアル」
KP
「つむ」
不思議そうにしている。示してやったほうがいいかもしれない。
佐倉 光
塔の下の方から適当なブロックを引き抜いて上に積む。
佐倉 光
「はい次牧志ね」
牧志 浩太
「オッケー。次は……、こっちなら崩れにくそうだな。
うわっ危ない危ない……、よし、崩れてない」
牧志は動作を解説しながら、ブロックを抜いて上に積む。
触手が無意識に出かけてぷるぷる震えたが、我慢して手だけを使った。
牧志 浩太
もう片方の牧志はそんなあなた達のプレーをゆっくり眺める構えらしい。
KP
『がだもん』はよく分からないのか、あなた達の動作をまねてブロックを引き抜き、抜いたブロックをしげしげと見て? から上に積んだ。
佐倉 光
そうやって暫く順々に積む。
いい感じにぐらぐらしてきた。
【DEX】で判定しようかな?
KP
【DEX】×5でどうぞ!
佐倉 光
1d100 45 積む!  Sasa BOT 1d100→ 71→失敗
佐倉 光
あっ。
ていうか牧志はいつになったらくっつく気なんだ。大丈夫なのかあの状態。
KP
あっ……
長大な塔があなためがけて降ってきた! ダメージはないが、いたい!
佐倉 光
「いててて」
佐倉 光
「ちぇ、僕の負けだ」
遊んでいると割と本当に楽しくなってきてしまった。
KP
幸い痛みはすぐに消えるが、そんな様子を見て『がだもん』は楽しそうにぷくぷくとガスを吐くと、もう1回やろうとせがんできた。
佐倉 光
「オッケー、もう一回ね」
塔を建て始める。
佐倉 光
「そういえばガダモンさぁ、僕とあいつ、どっちが作られた方なの?」
積みながらさらっと問いかける。
佐倉 光
おっと。すごく気になるシーンなのに一時過ぎてるじゃないか……
ガダモンと一晩ゆっくり遊ぶか……
KP
おやすみなさいませ、粘体濃度の高い空間だ。
KP
どちらなのかとあなたに問われて、触手がふらふらとあなたと彼の間を指した。
なんだかよく分かっていないような気もする。
佐倉 光
「そうか」
彼がいうことが全て真実とも限らない。
情報のひとつとしていただいておこう。

しかし、自分が自分で思っている存在ではないかもしれない、とか、もしかしたらやっていること全てが無駄かもしれないというのはなかなかヘヴィだ。
牧志 浩太
「じゃあ、今度は俺が」
見ていた方の牧志がのそのそとやってきて、位置を入れ替える。
KP
『がだもん』はあなたを真似するように、手元で歪みねじれた塔を作り始めた。
ちょっとあれに人間がブロックを積むのは大変そうだ。
そもそもあの形で安定するようには見えないのに、重力があちらこちらへ向いているかのように塔は崩れない。
佐倉 光
「おー、すっげ」
じゃあ城でも建てるか。
と始めようとして、ガダモンの建造物に目を奪われる。なんだあれ。
ついしげしげと見てしまう。
ガダモンの建造物に感心しつつブロックを積もう。
考え事をするにも忘れるにもこういう作業は適している。
KP
つむつむつむつむ。
つむつむつむつむ。

つむつむつむつむ。
つむつむつむつむ。
牧志 浩太
「佐倉さん、佐倉さーん」
KP
はっと気がつくと、随分高い塔ができていた。
三人(?)のギャラリー(?)が目を輝かせてあなたの力作を見ている!
佐倉 光
人間の子供に対してはアリなんだけど、こういう存在に対してはナシの提案を考えついてしまった。
まあいいかやっちゃえ。
KP
やってみても損はない(?)し、やってみちゃえ。
佐倉 光
つい夢中になってしまった。随分大きくなったな。
佐倉 光
そうだな、よーし。
佐倉 光
「これ壊してみたい?」
ガダモンに訊いてみる。
KP
『がだもん』は高い塔をじっと覗き込むように、触手をもたげた。
KP
じーーーー。
KP
「みたい」
佐倉 光
「壊していいぜー」
KP
あなたはふっと嫌な予感がした。
もしかして、もしかするとだが。

あなたは、本能的な破壊欲というものを持たなかったように見えるこの赤子に、初めて『そういうもの』を教えてしまったのではないか?
佐倉 光
言ってからそんな可能性に思い当たった。
佐倉 光
まあ……ほっといてもそういうのをいずれ知るかも知れないし。
それを生き物とか世界とかで発散する前にブロックで発散できるかも知れないし。
な?
佐倉 光
「自分で作った物とか、作った奴が壊していいって言ったヤツならいいんだぜ!」

一応付け加えておこう!
KP
聞いちゃいなかった。
こわしていい
佐倉 光
それがいきついて「それがどうしました? すべてはわたしがつくったものなのです!」って自作の世界で遊び始める『かみ』爆誕の可能性。
KP
その世界に「あそぼう!」って悪気無く呼ばれちゃう二人ですって? シナリオフックだ
佐倉 光
でもさー、独りきりで遊ぶなら壊して新しい物作ってってのも必要なサイクルなんだよ。
人間なら壊すために作るってのもいいんだけどなぁ。
KP
ちょっと【SIZ】が35程ある何かなんですよねぇ。
自作の世界で遊び始める『かみ』……某ゲームラスボスに限らず、こんなこと言い出す超越存在わりといるよね。

牧志 浩太
「うわっ、ちょ待って待って」
慌てて牧志たちがあなたに飛びついて庇う。
KP
『がだもん』は思いっ切り、濃い鼻水のようにしなる触手を振り回した。
汚らしい粘性の音とともに、高い塔が、自身が作り上げた歪んだ塔が、ついでに牧志が作っていた小さい何かも、がらがらと崩れて小さな木へ還っていく。
佐倉 光
一気に塔が吹っ飛んだのを見て、ちょっとスカッとした。
「そうそう、後生大事に取っといたって新しいものは生まれないからな!
たまにはこうやってぶっ壊して……」

牧志に押し倒され、直後頭の真上を触手が払った。
KP
触手はまるで砂場のような木の海をかき回し、その感触を楽しみながら、
KP
「たのしい!」
と、晴れやかな声で叫んだ。
佐倉 光
粉々になった塔の残骸が一瞬、破壊された都市に見えた。
そういえばこれは神の子供だったのだ。
たった今、ただの神を破壊神にしてしまった……なんてことは?
佐倉 光
「まずい事教えた……かな?」
ちょっと冷や汗が伝った。
佐倉 光
「つーか、俺のは壊していいって言ったけど、牧志のはいいって言われてなかったろ!」
KP
「?」
木の海を触手でかちゃかちゃとやっているが、いまいちぴんと来ていないようだ……。
牧志 浩太
「これはサイズの違いで悲劇が生まれるやつだな……?」
牧志の声が引きつっている……。
佐倉 光
「人が作った物は勝手に壊したらダメだぞ! ダメだからな!!」
うっかりしていた。
自分たちが去ったらこの子供は独りきりで、作っては壊す遊びをするかも知れない。
それ自体はいいが、「他人」との関わりは忘れていくかも知れない。
「ひとがつくったものをこわしてはいけない」なんていうのは、
壊す事で人から嫌われたり、関わりを切られる事を嫌う集団生活を基盤とする生き物の発想だ。
この生き物にそれがあるのか?
佐倉 光
「……やらかしたかな?」
KP
あなたに遊んでもらい、新しい遊びを教えてもらったガダモンは、嬉しそうにぷうぷうとガスを吐いていた。
佐倉 光
「いやともかく! ガダモン! 君が持っている玩具の中を探させてくれよ」
必要な事をするのだ!
KP
あなたの叫びを聞いて、一本の触手を己の体内に引っ込める。
やがて、泡立つ膿の中から薄桃色のパーツを取り出した。
それはあなた達が持つ他のパーツと同じく石膏のような質感で、確かに脳の形をしている。
KP
「あげる」
ぽつんと落とされた声は、楽しい時間の終わりを、なんとなく悟っていた。
佐倉 光
「ありがとう。確かにそれっぽいな」
牧志 浩太
「ありがとう、がだもん。
ちゃんと返してくれて、助かったよ」
KP
「たすかる?」
牧志 浩太
「うれしい、ってこと」
佐倉 光
契約は完了だ。お互いにいい取引ができたって事でいいだろ。
そんな素直に返してくれる上に、人間っぽい、シローみたいな反応するなんてずるいぞ。
もう少しならいいかなとか思ってしまうじゃないか。
こっちには時間があるのかないのかも分からないっていうのに。

牧志レーダーを取り出して、ここにもう必要な物が残っていないかチェックする。
石膏像のような物を見つめていると、さっきの「つくりもの」という言葉が重くのしかかる。
俺は正しい道を歩けているのか?
KP
眼は階段の上を眺めている。ここでの用事は、もう終わったのだ、きっと。
佐倉 光
ところで牧志はまだ分裂したままなのかな。
KP
まだ分裂している。
うっかり一つに戻ることを忘れているんじゃないだろうか?
佐倉 光
じゃあ牧志をおもむろに一個抱え上げて、もう一個の上にソッと重ねよう。
くっつくかなぁこれ。
牧志 浩太
抱え上げて重ねると、自重で僅かに潰れるぶぢゅう…… という音がして、断面が泡立ちながら混じり合っていく。

そのうち二つだった牧志はすっかり潰れて平たい何かになり、木のブロックを巻き込みながら捲れ上がると、元と同じひとつの塊になった。
佐倉 光
「おぉ……くっついた」
意識どうなってるんだろうなぁ。
どこまで千切れられるんだろう。
KP
何となくそれが、出立の準備だと分かったのかもしれない。
『がだもん』は最初に会った時のように、縫いぐるみをぎゅうと抱いた。
KP
「がだもんは、ずっとねむってる。ずっとゆめをみてる。もっとそだって、りっぱな神さまになるまで。
がだもんはまだまだ、めざめの世界には行けないの。
だから、またここにきたら、がだもんとあそんでね」
佐倉 光
「今日みたいにちいさいものに優しくしてくれると嬉しいかな。
そうしたら、また来たときに一緒に遊べるよ」
佐倉 光
「楽しかったよ。じゃあな、ガダモン」

楽しかったのは事実だ。
例え相手が不定形の『かみ』だったとしても。
彼が今の、比較的人間に近い思考と認識を持ったままでいてくれる事を願うばかりだ。

つくりものの脳味噌を持って、牧志に行こうぜと声をかける。
牧志 浩太
「だな。じゃあな、がだもん」

またな、と言いかけたらしい。
彼は言い直して、塊の中から突き出した手を振る。
KP
「またね」

KP
馬は階段の傍に、変わらず興味もなさそうに佇んでいた。
佐倉 光
よし、馬の荷袋に脳味噌を納めて、手綱があればそれを引いて階段を登ろう。

かみのゆりかごを見下ろして先へ進もう。
破壊衝動はブロックで発散しててくれよな、と思いつつ。
KP
元々車に繋がれていた馬は、ちゃんと手綱を備えていた。
馬は苦労する様子もなく階段に脚をかけ、引かれるより先に上っていく。

引かれるのは不服であるらしい。
KP
いっぱいの愛情と孤独のように見える柔らかさに包まれて眠るかみのこどもが、少しずつ小さくなっていく。

佐倉 光
「……牧志、さっきガダモンが言ってたヤツ、どう思う?」
問いかけてみる。

そもそもが、かれが「つくられた」といっていたからと言って、俺たちが認識する意味と同じとは限らないんだよな。
牧志 浩太
「つくられたひと、か……」
彼はぽつりと呟いて、塊から突き出した手を、どこからともなく辺りを薄暗く照らす光に透かした。
絶えず蠢き揺らめく複雑な色合いの光が、彼の朧気な輪郭の向こうから微かに透けて見えた。
牧志 浩太
「確かに、さっきからあんまり実感がないんだ。
体を手に入れてる、近づいてるはずなのにさ……」
佐倉 光
「もしかしたら俺は、から回っているだけなのかもしれないなぁ」

もう変貌してしまっている牧志に、不要な体を集めているのか。
自分が知っている彼と全く関わりのない、つくりものを集めているのか。
もしかしたら自分がつくりもので、今までの記憶全てが偽りなのか。
佐倉 光
「けどなー、ゼロじゃないんだ」
自分が知っている牧志を取り戻すのに必要な行動である可能性。
夢で自分を見失っている彼自身である可能性。
俺が、牧志を救うための役割を与えられた『佐倉』である可能性。
考えたってきりがない。
佐倉 光
「まあ、いいや。集めきってから考えよう。
少なくともお前は夢に人形を砕くシーン見たんだし……」
牧志 浩太
「何だか、ごめんな。
俺が何か思い出せたらいいんだけど」
牧志は何となく人間大の塊のような形を取り、あなたの傍らに並んだ。
丁度、人間の牧志くらいの背丈だった。
あなたを一度包み込んだことで、少しなりとも人間の形が分かるようになったのだろうか。

手はうっかり顔の真ん中辺りから出ていたが。
佐倉 光
「夢か。そういや俺、ここに来るときに、粉々にされるようなひどい目に遭った気がする」
牧志 浩太
「……え、佐倉さんまで一緒に壊しちゃったんじゃない……、よな?」
えっ、と声が驚く。
いつかやったように、牧志はぺたぺたとあなたの腹に触れようとする。
佐倉 光
「やめろってくすぐったい」
触れられたら少し触らせてから軽く身をかわす。
きっとそうしたほうが安心するだろうから。
佐倉 光
「少なくとも今俺は欠けている自覚はないかな」
牧志 浩太
「よかった、ちゃんとあるみたいだ」
牧志はあなたの腹に触れてそこに中身があることを確認し、ふっと安堵を含んだ声を漏らした。
佐倉 光
正直、二人とも困ってはいないんだよな。現状、今ここで、に限定すると。
眠っている牧志の横顔を見つめ続けていた焦燥感がウソのように、
この異常で心を削られる世界を俺は楽しいと感じている。
たぶんこのままこの世界で過ごせば、俺も牧志もあの石膏人形みたいに粉々になっちまうんだろうけど。
佐倉 光
「実感がないのは自分が人間だって事とことん忘れちまってるせいかもしれないしさ。
今はこれ集めてくしか思いつかないし。
こいつが見つけた物をとりあえず集め続けようか」
あの働き者の小瓶を軽く振る。
ひたむきな目は迷惑そうにするかもしれないが。
牧志 浩太
「だな。全部集まってもくっつかなかったら考えよう。
……ありがとう、佐倉さん」
耳の辺りに開いた眼をふっと伏せて、牧志は微笑んだ、ように見えた。
絶えず蠢く表面が見せた錯覚かもしれなかったが。
KP
瓶はぱちゃぱちゃと海辺で遊ぶような音を立てたが、眼は構うことなく階段の上を見ていた。
佐倉 光
「後は、足と目と頭と下半身ってとこかなぁ。いや、骨とか血管もあるかもしんねーけどさ」
佐倉 光
「さすがに神経系はカンベンして欲しいなぁ……」
半ば本気でぼやきながら階段を登り続ける。
腕って手首ついてるんですかねそういえば。
牧志 浩太
「骨とか血管とか神経ってなってきたら、もう人形っていうより人体模型だな。
内臓これだけあるんだし、あってもおかしくないかもしれないけど」
KP
腕に手首はちゃんとあるし、手もある。
目の前の塊から突き出している手によく似た牧志の両手だ。
佐倉 光
「ま、あん時よりは少し気が楽だ。
集めてるのがナマモノじゃないからかな、お前がわりかし平気そうだからかも」
なんだか見た目やら被さるやらを置いておけば、いつもとあまり変わらないなという気すらするのだ。

階段の上を見上げる。
牧志 浩太
「あの時はな……。俺も死にかけてたし、あいつが何がしたかったのかギリギリまで分からなかったし。

確かにそれに比べたら、いつも通りだ」
佐倉 光
「そういや、前にこの世界で螺旋階段登り切ったときに、ユキさんと会ったんだった」
牧志 浩太
「そういえば、ずっとぐるぐる回ってる気がしてたな、あの時。
あの時みたいに、登りきったらユキがいたりしてな?」
牧志はあなたの傍らで微かに笑う。
KP
あなた達は話しながら階段を登る。螺旋階段でこそなかったが、上に続く階段はやたらと長い。
その先にあるものが地上なのかそうでないのかすらも、よくわからない。

KP
階段を上っているうちに、両側の壁や階段自体が無骨な岩造りになっていく。周囲の風景の変化からして、進んではいるようだった。
KP
気づけば周囲はすっかり洞窟の風景だ。その中を掘って造られたような階段が続いている。
佐倉 光
「なげぇよ」
汗だくである。
牧志 浩太
「……本当にこれ長いな。
見た感じ風景は変わってきてるみたいだから、前みたいに繰り返し、ってわけじゃなさそうだけど」
佐倉 光
「くそ、頭がくらくらしてきた」
どこまで登らされるのか。こちらもスライムのごとく、足を引きずりながら登っている。
KP
洞窟の中を掘り進んだ階段は岩を並べただけのようなつくりで、先程よりも登りづらく、あなたをよりうんざりさせるだろう。
馬は不服そうでありながら、疲れた様子も見せずに淡々と階段を上る。
牧志 浩太
「佐倉さん、こいつに乗れないかな。
荷物は俺が持つから」
傍らの馬を振り返って牧志が言う。
佐倉 光
〈乗馬〉スキル持ってないけど運転できたりするのかしら。
佐倉 光
「そうだな……掴まってるだけでいいなら何とかなるかな」
正直限界だ。もうむりだ。馬に乗ってる方が疲れるんだろうか? くたびれすぎて思考できない。
乗馬チャレンジする。
KP
この馬は不服そうではあるが、あなたの指示をよく聞くようだ。

背に乗って歩く、走るなどするのは難しいが、今なら階段を登っている関係で速度は遅い。
横から牧志に支えてもらって本当に乗っているだけなら、なんとかなるかもしれない。
佐倉 光
じゃあ乗る。つかれた。
荷物になって極力動かない。
KP
あなたの身体が乗ってきて、馬はより不服そうな顔になったが拒むことはなかった。
牧志 浩太
牧志が自分の一部をちぎって、あなたを後ろから支えるように馬の背に乗せた。
また、手を塊の肩あたりに移動させ、あなたの背に手を添える。
状況は異様だが安定感が増した。
佐倉 光
それこそ体力回復のマジックアイテムとか作れねーかな。
なんか食べる物と飲み物だそうか。乗りながら。
KP
なるほど。
体力回復の助けとなる食べ物と飲み物、程度なら両方合わせてMP【1】でよい。
魔術的な効果をもたらそうとするのならばMP【3】消費。
佐倉 光
よーし折角だから3!
この状態でも牧志にも協力して貰える?
牧志 浩太
牧志も要領を得てきたようで、必ずしも包み込まなくても協力できそうだ。
背を支えている手から牧志の気配を強く感じる。
佐倉 光
では集中!
1d100 15 なんか食べる物ー Sasa BOT 1d100→ 80→失敗
1d100 15 おなかすいた気がするー Sasa BOT 1d100→ 60→失敗
1d100 15 飲み物もほしーーー Sasa BOT 1d100→ 18→失敗
佐倉 光
おしい……
佐倉 光
「むり」
馬の首にくたっと寄りかかった。
KP
食事を得るための集中が保てなくて食事を呼び出せない。
疲れすぎていて夕食を作れない時と共通の何かを感じる。
佐倉 光
そういえばエネルギーバーとワインが残っていたはずで。
KP
残ってますね。
佐倉 光
エネルギーバーの残り半分を二つに割って、牧志に半分渡す。
ワインも半分飲んで渡そうか。
佐倉 光
「このワインスパイス臭きっつい」
KP
濃厚な蜜の味とナッツの濃さが、疲れきった身体を直撃するカロリーとして染み渡る。

スパイスの強いワインを喉に注ぎ込むと、ふっと浮き立つような酩酊が訪れたが、その酩酊は活力感だけを残してふっと消えた。
牧志 浩太
「ありがとう、確かに効きそうな香りだな。
俺そんなに腹減ってないけど、貰っちゃっていいのか?」
佐倉 光
「いいよ。気分だって必要だろ」
食事も要らないのかな、『この』牧志は。
牧志 浩太
「そうだな、確かに。
あー、これ甘そうだな、効きそう」
気分だって必要、と言われてあなたの意図に気づいたらしい。

牧志は触手を伸ばすとエネルギーバーを馬の尻の上にいる方の自分と分け、ゆっくりと味わう。
牧志 浩太
「っは、やっぱりすごく甘い、これ。体力出てきた」
KP
そういえばあなたはひどく疲労しているが、あの時とは違い、なぜか空腹感や喉の渇きを感じていなかったように思う。
佐倉 光
「正直、腹は減ってないし、喉も渇いていないんだと思う。
疲れたからそういうのが欲しい、というのは俺の思い込みなんだ、きっと」
牧志 浩太
「でも何となく回復する気がするよな、腹に落ちるっていうか。
おかげで、久々にそういう感じを思い出したよ」
ワインの袋を体表に近づけ、噛み締めるようにアルコールとスパイスの香りを嗅いでいるようだった。
牧志 浩太
「はは、ほんと臭いきついなこのワイン。保存性重視だ」
佐倉 光
そういえば、HP減ってるの直して貰おうと思ってて言うの忘れてたんですよ。
寝るときにでも言えば丁度良かったな。
KP
そういえば。〈応急手当〉を頼む?
佐倉 光
「そういえば、粉々になる夢を見たせいかいつもの奴がずいぶんキツくてさ。
《ディア》いまいち効きが良くなくてまだ痛いんだ。看て貰えるかな」

そういえば自分がここに来た経緯とか、牧志がどうなってるって話ちゃんとしてなかったと思うし、今ついでにしとこう。
牧志 浩太
「うわ、四日も経ってたのか。シローのことありがとう、ごめん。
帰ったらシローにも謝らないとな。

鍵……? それは見てないな」

言いながら、牧志はあなたの背をそっと撫でる。痛みの源を探し、そこをゆっくりと揉みほぐすように。
それはあなたの身体に、繋がって存在しているあなたの存在を教えるような手つきだった。
1d100 59 〈応急手当〉 Sasa BOT 1d100→ 90→失敗
KP
少し楽になったような気はしたが、偶に疼く痛みが完全に去ることはなかった。
佐倉 光
「だからさー、俺は一応お前を助けに来た気でいるんだよ。
もう良く分かんなくなっちゃったけどな」
牧志 浩太
「そう聞くと改めて帰りたくなってきたし、佐倉さんが来てくれなかったら、俺ずっとあそこで身体を探してたと思うよ。

頭がぼんやりして、何考えてるのかよく分からなかったんだ。
佐倉さんと話してようやく、頭がはっきりした。

だから、佐倉さんは俺を助けに来てくれたんだよ」
間違いない、と牧志はそっとあなたの背をさすった。
佐倉 光
「少し楽になった。サンキュ」
自分が存在するか否か。
そんな迷いもひととき忘れる暖かさだった。
どっちがどうだって、いつものようにやればいい。
佐倉 光
眠気と快感は感じるのに空腹は遠いのかー。同じ三大欲求がらみなのになー。
なんてどうでもいいような事を考えた。
馬と牧志にあまり負担をかけないように、乗馬したまま休憩をとる。
佐倉 光
「牧志は疲れてないか? 交代しなくていい?」
牧志 浩太
「俺は大丈夫。疲れたって感じはしないんだ。
そもそもこの身体に疲れってあるのかな? 筋肉があるようには思えないのに普通に動けるしな」
佐倉 光
「そうか、ならいいんだけど」
いつも通りの会話をしているとなんとなく疲弊した心が癒えてゆく気がした。
佐倉 光
「その体も便利そうだけど、俺としては人間に戻って欲しい、かな」
牧志 浩太
「そうだな、俺も。慣れてきちゃってたけど、きっとこの身体ではできないこととか、忘れてしまってることが、色々あると思うしさ」

佐倉 光
それにしてもこの階段はどこまで続いているのだろう。
見上げてみる。
KP
見上げたその時、ふと上の方に灯りが見えた。揺らぐ仄かな灯りは、おそらく篝火のものだろうか。
上には広い空間があるようだった。この階段には終わりがあるのだ。
佐倉 光
「やっとゴールみたいだ」
ほっとした。あのかみのゆりかごからどれだけ登ってきた事やら。
佐倉 光
「ただ、こっち来てから化け物にしか遭ってないしな、十分注意しないと」
牧志に包んで貰おうかと考えて少し躊躇する。
さっきのようなことにならないように、自分が先に様子を見るべきだろうか。
牧志 浩太
「確かにな、さっきはごめん。危なかったな。
あいつがああじゃなかったらそのまま喰われてたかもしれないし、佐倉さんを巻き込んでたかもしれなかった」
佐倉 光
先だろーが後だろーが見ればダメージなんだけど、「見ないように警告する」ことくらいはできるかなー
KP
「見ないように警告すること」はできるでしょう。
佐倉 光
それじゃ馬から下りて、先行しよう。
様子が見えるところまで行ったら足音消す努力して観察する。
KP
あなたは牧志と馬を待たせ、ひっそりと先行する。先程食事と会話を楽しんだおかげか、疲労感は少しましになっていた。
KP
広い空間が近づいてくる。
階段の向こうに風景として遠く見えていただけだったそれが、階段の終わりとして現実味を持ってくる。
KP
あなたのもとに強い悪臭が漂ってくる。

▽技能判定【アイデア】または【知識】
佐倉 光
1d100 85 【知識】!  Sasa BOT 1d100→ 73→成功
KP
これは血肉の臭いだ。
しかし、新鮮な流血の臭いとは少し違う。

これは人間にとって本能的に吐き気を催させる臭い。
腐った血肉の匂いだ。
佐倉 光
「…………」
とても碌でもない予感がする。
なんだろう。爪の中で蠢く土を思い出した。
牧志の方を振り返って、鼻をつまんでみせる。
それからゆっくりと上へ移動。この部屋には何が待ち受けているんだ。
牧志 浩太
薄暗い中に立つ牧志は、微かに頭のような部分をもたげて頷いた。
佐倉 光
何があるか確認したら、ちょっと戻って知らせようと思っているよ。
KP
あなたはゆっくりと上へ移動する。
上った先は大きく開けていた。

それは、石や岩がそこら中に転がる荒れた平野だった。
あなたは以前、どこかでその風景を見たような気がした。

先程までいた狭い空間に比べれば開放的な風景ではあったが、平野といっても爽やかな印象はなく、高い空は沈み込むように黒い。
地面には丸い石の板のようなものが無数にはめ込まれており、マンホールに似た印象を受けた。

空気は澱んで溜まり、呼吸するたびに腐った血肉の匂いが体に染みてくるような感覚がする。
匂いのもとを探るように視線を彷徨わせれば、平野の一か所に集められた何かの山があった。
佐倉 光
最悪だけど、とりあえず登るしかないようだし。
牧志を呼びに行こう。

佐倉 光
「すっっっっっげー臭い。死体とか腐った肉とかそんな感じ。
つーか俺ここ来た事あると思う。
死体の山とか絶対ありそうだし、なんならおっそろしい化け物も居ると思う」
牧志 浩太
「うぇ……。前に骨だらけの谷があったって言ってたよな、そんな感じか?
死体の山探し回る羽目になるだけならまだよくて、最悪化け物に喰われるとか、そういう……。
……夢の中で喰われたらどうなるのか、想像もつかないな。ずっと眠りっぱなしになるのか? 嫌過ぎる。

でも、こいつが上を見てるってことは、そこにあるんだよな、パーツが。
だとすれば出るしかない。何かいてもなるべく見ないように下でも向きながら、こっそり隠れて行くか?

あとは、どっちか一人が先行するかどうかだけど……」
牧志は触手で自分の中を掻き回しながら、考えを取り出してはよく噛み、飲み込むことを繰り返していた。
あれは情報を咀嚼している、ということなのだろうか。
佐倉 光
「骨だらけの谷はそれこそ骨しかなくてそんな臭いって感じしなかったんだけど、似たようなとこかもな。
空真っ暗だし地下かも知れない」
佐倉 光
「少し遅れて着いてきて」
言って、再度階段を登る。
牧志 浩太
「……分かった」
牧志の体表の胞の間で、空気の塊が微かに汚らしい音を立てて潰れた。
それが少し、牧志が息を呑んだ音のように聞こえた。
佐倉 光
さあ、ひどい物を見る覚悟をしよう。
そして牧志を探すんだ。
今度は推定死体の山に近づいてみるか……

コメント By.佐倉 光
奇妙な世界を彷徨い続けるふたり。
とりあえず遊ぼうか……

TRPGリプレイ CoC『瓶の中の君』牧志&佐倉 1

「……そのうち見つかる、か。そうだな、そうかもしれない。なくして忘れても、それはそれで何とかなることもあるしな」

TRPGリプレイ CoC『機械仕掛けの街』佐倉&牧志 1

「正直俺にもどっちが正解かわかんねぇよ……」

TRPGリプレイ CoC『地獄はやさしい』 佐倉 2(参加者限定公開中)(終)

「俺は運が良い。お前もそうだろ、多分な」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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