
やさしい朝をくださいねです。
両方のネタバレがあります。
十分ご注意ください。
「やさしい朝をくださいね」
By.榎日シユ様

KPのつぶやき
このログの畳んである『KPのつぶやき』は、全てこのシナリオについて知っている前提でのネタバレ上等となっておりますのでご注意ください。
KPのつぶやき(激ネタバレ!!)
・記憶封印で発狂が防げるという解決法を、VOIDワールドに持ち込むのはあまり相性が良くない気がする。
・人間の記憶をピンポイントでいじって都合の良いように書き換えることがイージーにできると、これまた悪影響が出るだろうか?
※これについてはVOIDと同様イス人が関わっていますし、まあいっかな……
人間だけの力ではどうにもならないならギリokかな?
・黒田さんについての協力を蹴った結城が、イス人由来の力に『また』助けられるの?
・最悪結城さん消し飛ぶかも。(この後ハワイ行くのに!?)
※まあ、知れば嫌がるでしょうけど、ね。
ヴィキがあくまでも結城の心を尊重して一緒に出る選択をしたら……怖いなぁ。
かといって選択の自由度が実質ない、というのはどうかな、というのはあります。
・割と今回大事な話(二人の間の恋愛についての話とか)しようと思っているし、ヴィキもそれを期待している節があるので、それがまるっとなかったことになる、となるとヴィキが気の毒すぎる。
※これはもう……二回告白できてラッキーと思うしか、ないかな……ごめんよヴィキ。
開始時、最低限、結城がヴィキに好意を持っていることと、彼の体内に美姫の臓器があることについては告白するつもりでいました。
最終的に、懸念は多いものの、この話とVOIDキャラ、特にヴィキと結城には相性がいいと思ったのと、ヴィキちゃんの話聞きたい! って欲に負けました。
開始前ロストの心配はないか確認されましたが、『ヴィキちゃんにはないよ』と返答しました。
……生き残れますように。

PC
ヴィキ
職業:刑事
年齢:0 / 性別:女性型
出身:リボット社
髪の色:シアン / 瞳の色:赤 / 肌の色:白
身長:154cm 体重:108kg
リボット社が開発した最新型アンドロイド。
声帯からの圧縮音声、指先からの発光によって、集音装備や光学入力装備からアクセスが可能なため、従来のインターフェースに依らず多種多様なデジタルデバイスへの入出力に対応したモデル。
キーボードを叩く、GUIを利用する、といった物理的な制約を受けないため、その反応速度は極めて速い。
とある事件により、内に宿るのが『美姫』という名の少女の心と感情であることが判明。
無類のガンダム好き。

KPC
結城 晃(ゆうき あきら)
人間 男 22歳
職業 刑事
身長 170cmくらい
■能力値■
HP:12 MP:11
SAN:37
ヴィキのバディである人間の刑事であり、『幼なじみ』である。
『やさしい朝をくださいね』
作:榎日シユ
KPは初だよ!
あなたは、結城 晃とともに外出中である。
なんと仕事中ではない。
備品に過ぎなかったVOIDにも『休暇』が取得できるようになったのは、画期的なことだ。


それこそデートでもいいし買い物でもいいが、とにかく外出はあなた主体だ。
『あなたの』休日なのだから。

どこにいきたいという希望がなければ、映画でも観たことにしようか?



「面白かったけどさぁ」

「わかりやすかったでしょ?」

「面白かったなぁー」

「もちろん他のも全部おすすめなんだけど」
「あ、でもAGEとかオルフェンズとかはちょっと上級者向けかな」
「小説だけのシリーズとか、OVAもあるから、今度見せてあげるね」
「富野監督作品だったら、他にもキングゲイナーなんかもおすすめだよ」
「はいはい」という軽い返答にも、言外に「なんか見やすそうなのに絞ってくれ」といったニュアンスが感じ取れる。
オススメ作品を熱弁するあなたと、それに少しあきれ顔で、それでも楽しそうに頷く結城。


「っていうか全部送ってきてないかこれ」

「そんなことないよ、ちゃんと厳選してるよ」

「少なくとも二回は観ないと」

ふっふっ、と口に手を当てて冗談めかして笑う
父との和解のあと、ヴィキは今の自分の体を楽しんでいるようにも見える
お互い帰宅しなければならない。


「ちぇー。楽しい時間てすぐ過ぎちゃうな」


「大きな事件こそ起きていないのは、幸運だと思ってコツコツ頑張らないと」

「本当、大変だったし悲しいことも多かったけれど、今こんなふうに笑っていられるのだけは、良かったと思うよ」


それでも、時流が変わりつつある今は、素晴らしい時間であると思える
あの日のように月は出ていなかったが、平穏を取り戻した人々の作り出す明かりが、星のように輝いていた。

「青木さんに怒られる」





言った数秒後にはリンクがいくつも送られてくる

ふと。
木々の葉が揺れる音が妙に大きく聞こえた。

反射的にそちらを熱光学的スキャン
高く伸びた木々が森を成して、広大な敷地をぐるりと囲むように並んでいる。
複数の熱源がある。
KPのつぶやき
正しくは『この中にアスレチックやハーブ園が広がっている』なんですよね。
神話的に重要だったらごめんなさい……
今考えれば、さすがに熱源センサーの範囲外だった気もしますね!
声は聞こえるけど結構遠いイメージなので。



そちらへと向かいます

怒気のような色をのせた複数の人の声が飛び交っている。




思わず足を止めて結城を振り返る

本編見る!

アンテナを指で小突いて、首を傾げる

聴覚センサーの故障か。

目の前の人物は、ヴィキの反応にはお構いなく喋り続け、そして騒ぎの方へ振り向こうとした。


後を追う
その声を塗り潰す不快な音は、壊れかけた機械の断末魔にすら似ていると思えた。

音だけだったのに。
視界が、歪んだ。

全方位3次元スキャン
何度診断プログラムを走らせようとも、全く問題はない。
あなたは『正常だ』。
にも関わらず、聞こえる音が途切れる。抱える意識が千切れる。

スキャンに対するエコーは無いのかな
ばらばらのビットになって崩れ落ちてゆく、世界。
KPのつぶやき

「何これ……故障? ちょっと……」
「―――美姫!!」
最後に明確にとらえた声は、悲痛にも似た晃の―――


ここでの発狂はおこりません。

KPのつぶやき
描写的にはさほど問題はありませんでしたし、成功で0のチェックだったので……許して。

重力センサー、ジンバルチェック

「ここは……」
ZULU時刻を確認
体内時計を確認



3次元、熱光学スキャン
KPのつぶやき
単純にセンサーが使えないことにすると、彼女は見ることも聞くこともできなくなってしまいますし、さすがに最低限のセンサーしか使えないことにするとVOIDキャラとしての面白みがなくなってしまいます。
そこで少し悩んだ結果、センサー類は使用可能・通信は不可・この部屋は簡易的なCGで作られていると仮定し、『素材』が設定されていればそれに関する情報が返ってくる、ということにしました。
イメージは、ブレンダーで簡単に作ってテクスチャ貼ったような部屋に、二人の言うなれば魂が接続されている状態と仮定しました。
きっと家具は、丸書いて厚み設定してテクスチャはざっくりと木、みたいに作られていて、メーカーは分からないし、釘なども使われていないでしょう。
訊かれませんでしたが、これといった光源もないのに明るい、という設定です。
天井全体が面光源で、あとは壁を透過して光が差し込んでいる感じですかね。
家具がいくつか置かれただけの簡素な部屋。

あなたは、部屋の中央に配されたテーブルに、椅子に腰掛けた状態で突っ伏して眠っていたようだ。
材質は、普通の木製であるようだ。樫だろうか?



じゃぁ、肩に触れる
「あっくん?」

どちらも少し遅いのは、おそらく眠っているためだろう。
KPのつぶやき
スキャン結果はそれを忠実に反映しているに過ぎません。

肩を揺り動かす


言いながら、結城の体をスキャン


「私たち、さっきまで森林公園にいたよね?」

「ああ、そっちに向かってたよな」




「……ここ、どこだ?」

「あらゆる電磁波がシールドされてるみたいで……」
壁には、鳩時計らしきものがかかっていた。
カチカチ、と規則正しい音が響く。

という言葉が電脳の奥で閃く
だが、VOIDと人間を同時に無力化することなどできるだろうか
時計の時刻を確認します
あれから数分経っているが、その通りの時刻を指している。
※メタ情報!
時間制限は、劇中には有りますが、メタ的にはありません。
好きに行動してね。

周囲に爆発物やガスなどの残留物がないか、スキャン
むしろ。
『なさすぎて異様』である。


森林公園の土や砂などは付着していますか
パーツの隙間に入り込んだ土が残留しているようだ。
KPのつぶやき
最低限足を拭いて処置された想定です。


「捕縛した相手に茶菓子出す奴がいるか?」
他にもいくつか乗っているようだ。

「あっくん、念のためだけど、それには手をつけないでね」
ひとまずは脱出路の確認だ
ドアを走査し、錠前の種別などを改めます
単純な構造に見える。錠前の類いは見当たらない。
だが『開くことができない』。

鍵がかかっているのだろうか。
KPのつぶやき
可動・被破壊オブジェクトではないので動かない、という感じです。
ドアノブうっかり動かないことにしてしまいましたが、まあ……異常状態なのはばれちゃってますし、ヨシとしましょう。
きっとこの部屋作った人が急いでいて、細かい設定なんかしていられなかったんです。

腕から肩に内蔵されたアクチュエーターが、モーターのような唸りを発生させる
ここに、あった。










しょんぼりとしつつ


「そうだ、シロウ……お腹空かせてるだろうな……」
「もう、あったま来た」

本棚には本がそこそこの量入っている。
書物机にも何かのっている。
テーブルは茶会でもやるのかといった雰囲気だ。


1d100<=25 〈図書館〉 (1D100<=25) > 55 > 失敗

いくつかのファイルが並んでいる。




その本を、背後からなんとなく覗き込む


「何言ってるんだ?」

何らかのスクラップブックのようだ。
普通に日本語で書かれた、一般的な新聞記事などだ。


指で指す
どう言ったことについての内容ですか


視界に、それぞれの文言を映し出したウィンドウがいくつもオーバーレイする


言って、彼の端末に映像情報を共有しようとして
「あ、無いのか……」




紙面をスキャンして、インクなどの情報を得ることはできますか
不自然なほど均一な情報。
KPのつぶやき





VOIDにだけ見えるデータなんだな、という雑な理解をして済まそうとしている雰囲気を感じる。

「なんか、どれも『言い付けられたタブーを犯してしまって、破綻する物語』ばかりみたい」



しゃがみ込んで拾う
上手く外すなら【DEX】の判定が必要である。
【DEX】×4で

1d100<=64 【DEX】×4 (1D100<=64) > 92 > 失敗
無理だ
崩れ落ちる本。

本雪崩に巻き込まれる

HP-1。
KPのつぶやき
ごめんねヴィキ。

[ ヴィキ ] HP : 26 → 25



「大丈夫?」







結城もその紙片をのぞき込むが、首を振る。
あなたには普通のチラシに見えるが、やはり結城には白紙に見えるらしい。






「もともと、優しい子なんだけど」
「でも、シロウのストレスになってるなら、気をつけてあげないと……」






「その後、なんともない……?」

「忘れたわけじゃないけど、何とかなってるよ」



「今日は、ありがとね」

「まあ、外出に人間必要なくなっても、呼んでくれると嬉しいかな」

「デートは、普通男の子からお誘いするものじゃないの?」

「そうか、これ、デートか」




「ああー、そうか、ごめん。悪かった」


「今度は俺が誘うから! 今日のも、楽しかったし!」

「(あーもー、また春さん達に怒られる……)」

言って、背中を軽く叩く

「なんか緊張感なくなってきたぞ」

くすくす笑いながら、他の本も改めてみる
他にはないかな

書机にも本あるんでしたっけ?
そちらを改めてみましょう


どうやら便せんやレポート用紙のようだ。

「これから何か書く予定……ってことなのかな」
筆記具とかもありますか?


今では珍しい、片面白の紙のチラシ。

開いてみよう
太いフォントで楽しげな装飾がされたそれは、レジャー施設のチラシのようだ。

また、どういう内容でしょう


結城の顔を振り向いて、尋ねる


言って、内容を読み上げる
KPのつぶやき
同様に最初の方に書いてあった『今話題の』のような文言を削っています。
結城が「ツヤ紙だ、雑誌か」と言っていますが、多分紙の雑誌はレアでしょう。
彼は〈図書館〉持ちなので『書物』に触れる機会が多いため知っているのです。

「俺はあまり乗ったことないけど」


「ちょっと面白そうだなー、とおもっただけで」

さて、紙の山だが。
チラシの他に、あなたのスキャナーにごくかすかに引っかかるものがあった。

思いを見透かすように釘を刺しておく




「幽霊が出る場所っていうのはね、電磁波異常があるとか言われてるの! VOIDの……ええと、ソレとっては、致命的なアレとかになったりするの!」
「怖いからじゃないから!」



「カタカタ震えてるなって思ったら、現れたオバケをぶん投げて」
「大騒ぎになったなー、って」

「そういうアンブッシュに備えて、構えてたの! おかげでオバケに襲われなくて済んだでしょ?!」


「来るって教えてくれてれば、目つぶってられるのに!」

「需要とターゲットが大分変わりそうだけど」

「なんで骸骨とか血出てたりするの! 体悪いなら、寝てればいいのに!」

あとオバケって昼は寝てるらしいぞ」

言ってから
「……行かない!」
隠そうとしたようだが、それが余計に事態を悪化させ、笑い出してしまった。


怖くない、という宣言に対してか、行かない、という結城の言葉に対する念押しかはわからないが、とりあえずキッパリと言ってから、怒りに任せるような勢いで、センサーに引っかかったものを取り上げます



〈日本語〉で判定。

何かの投書欄だろうか……

そのメモを黙読




噛み締めるように、ゆっくりと音読した

「俺たちには随分と近しい話題だ」



「初めてドロ課で目を覚ました時の頃、まだ純粋なヴィキだった頃のことも、覚えてるの」




「その時、『ああ、この人って、顔には出さないけど、本当はすごく優しい人なんだな』って思った」
「なんとなく、懐かしい、安心するような……そんな風に感じてたの」

「あの時のことは良く覚えていないんだ」


「美姫に『ヴィキ』って名前をつけた時」
「どうして好きでもない映画のことがパッと頭に浮かんだのか、ずっと不思議だったな」
「いつ見たのかも分からない、映画」
「俺の中の見ていた記憶は消されていたけど、一緒に観たときの楽しさとか」
「美姫と一緒にハラハラしたことなんかは残っていたのかもしれない」
「あの時、『美しい姫』って、自分の名前を言っていたんだ、お前は」
「消されても、忘れても、消えないものはあるんだろうな」

「……記憶って、素敵だね」


「この間までの、辛くて悲しい出来事も」
「それがあったから、今がある」




「……ずっと、忘れないように」

「しかし、この部屋、本当に何なんだ?」

「何をさせたいんだろうね、私たちに」



一応、身構える




言い、テーブルに近づく




過去のテーブル上の映像をオーバーレイして、比較
離れたところから、封筒をスキャン
中には薄いものが入っている。


そして、中には便せんが一枚入っていた。

理由は分からないが、その人はヴィキが結城を連れて奥の部屋まで往く事を望んでいるようだ。

一通り目を通し終え、扉と鳩時計に視線をやる
鳩時計の針は、そろそろ35分くらいになるだろうか。


首を傾げ



この他に、この部屋に調べられそうなところはありますか?
テーブルの他に
テーブルの上には封筒の他に、
2つのポットと2つのティーカップ、砂糖やミルクピッチャーと菓子が盛られた皿が置かれており、
机の中央には、空のガラスのコップが一つだけ見える。

一応、扉の把手を改めてみます
開いたりはしないかな

「0時35分……」
「大丈夫? あっくん眠くない?」

「少し、腹は減ったけど」

「どうかな? 少し様子を見てみようと思うんだけど」

「そうだな」
「よく分からないけど、あまり害がある感じには見えない」



小さく笑いながら、椅子に座る
「でも、どうかな? この間のブレインハンドシェイクの影響で、そういうことももしかしたらあるのかも?」
言いながら、結城にも席を勧める




ティーポットを手に取り、カップの一つに注ぐ
どちらも淹れ立てのように温かく、いい香りがする。

コーヒーと紅茶を




それぞれに口を付け、一口含む
成分解析

毒物などの反応は無し?
毒物反応は一切ない、ごく一般的な、ちょっといい喫茶店で出そうなものだ。

含んだ一口を飲み込み
「飲み物は大丈夫。コーヒーと紅茶、どっちにする?」


コーヒーの入ったカップ、口をつけたところをハンカチで軽く拭い、差し出す





「次は……」
食べ物は、クッキーでしたっけ





「どれがいい?」
「指で指してね」



ヴィキさんの本体にそういう機能が内蔵されているなら話は別だ。


じゃぁ一応紙面をチェックして
毒性が確認されなければそれを使おう
どれも異常なほど綺麗なので、食品をのせても問題ないだろう。

念の為、スキャンして金属などが入っていないかを確認


「じゃぁ、これをね……バンって」
握り拳で、それを叩き壊すような仕草



紙を再び手元に寄せ、開く

1d10 (1D10) > 2
『誕生日はいつ?』

首を傾げる
こりこりとクッキーを噛み砕きながら、紙片を改める


結城に紙片を渡す



「いわゆる御神籤みたいに、中身に占いの内容が書いてあるのが普通なんだけど……」
「なんで誕生日を聞いてくるんだろ」


1d30 (1D30) > 25


少し考えてから
「11月30日」
美姫としての誕生日




「あ、このクッキーは食べても大丈夫だよ。すごく美味しい」

「合同誕生会、したなぁ」

「おばさんが大きなケーキ……焼いてくれた」


そんな思考にながれそうになるのを振り切るように、結城は二個目に手を伸ばした。

どうなっていただろう
そんな、もはやどうしようもない言葉が浮かぶ
「あ、待って」


新たな一枚を広げ、今度は自分がクッキーを選んで置き、砕く
1d10を。

また欠片を口に入れながら
『一年の中で好きな季節は?』

紙片を読み上げる

「春かなー」

「お祭りみたいな賑やかな夏が終わって、少し肌寒くなって……」
「落ち葉が落ちて……少し寂しいような感じがするけど、でも、それが好き」








頷く
「四季は、全部好き」
「どれも、ちょっとずつ違って、それぞれのいいところがあるよね」

「冬は、寒いのはちょっとなぁ」

口元に手を当てて、意地悪そうな顔を作って笑う


「でも……」
テーブルの上のカップに視線を落とす

「……」
「俺は、まだどうしたら良かったのか、分からないよ……」

「……黒田さん?」

「黒田さんの意思がどうとか、そういう最もらしい理由をつけて……
俺は、ただ自分が気に入らないからって理由だけで選択を蹴って、黒田さんの人生を取り戻すチャンスを奪ったんじゃないかと思う時があるんだよ」

「……でも、どう、かな」
思い出すのは、記憶の中、モニターの中の母の顔
「人がVOIDとして生まれ変わるのは……きっと、大変なことだと思う」
それは静かに、その空虚だがあたたかい部屋に響く。


元、人間
食事を味わうことも、四季を感じることもできる
でも、それでも絶対的に人間とは異なる体
結城の顔を見る


種として、生物として
一つの到達点
それを共有できないという事実
絶対に、越えることのできない無尽の谷のごとき境界線
それが、例えば自分達2人の間に見えた時
例えば、彼はどう想うのだろう
自分は、どう想うのだろう
敬愛する、あの『女性』は同じ時、どう想うのだろう

「どうかした?」

首を、ゆっくりとだが、しかし考えを振り払うように大きく振る


「……なんでもない」
「あっくんが、どういう決断をしても、私は否定しないよ」


それとも、自分に対してのことか
ガラスのコップに、薄い青色の花があった。

KPのつぶやき
花言葉は「私を忘れないで」
また、ヴィキのイメージカラーでもあります。

「どこから……」


生花かな? と一応スキャン
ガラスのコップに視線を奪われたあなたは、
コップの下に紙片があるのを発見する。

ほんの二行の言葉が走り書きのように書かれている。
「どうぞ二人で 食べて話して
満足できたら 鍵をあげる」


何が、目的なのだろう
なんだか、ここへ来て、たくさんの話をした気がする
たくさんのことを考えた気がする
これまで、あまり話したり考えたりしたことがないようなことも
「……ん」
「あっくん、どう? お腹は落ち着いた?」




言って、クッキーを一つ取って、新たに割る
『子供の頃の「将来の夢」は?』

「なんだったかな」
なんとなく、天井を仰ぐ

「俺は、ろぼっとをつくるひと、だったな……」

微笑む


頷く
父の作業は、子供にはビジュアル的に分かりづらい分野だったので。

「私は、先生、だったな」




少し考えて
「ある意味、そうかも」
「私、末っ子だったでしょ?」


「パパも、お姉ちゃんも……おじさんも、おばさんも」
「いろいろなことを教えてくれた」


苦笑
「でも、だから、今度は私が自分より小さい子に、うんとたくさんのことを教えてあげられたらいいな、って」

「優しいな」



「お姉ちゃんだけじゃなくって」
「田尾さん、春先輩……ドロ課のみんな……青木さんやレミさんはもちろん、黒田さんや赤星さんも」
「今、この時までも、私は本当にいろんな人に大切にしてもらって、生きてきた」
「だから、今度は私が、苦しんでいる人やVOIDを助けてあげなくちゃ」
「……そう、思うよ」

「そうだな、うん……」
「頑張ろうぜ」

大きく頷いて、微笑んだ
「あ、もちろん、あっくんにもね。感謝してるよ」







まるで人間みたいに怒ったり、VOIDのために一生懸命になったり……
俺を気遣ってくれたり、そういうのひとつひとつ」
「あの時は本当に余裕がなくて、全然見えていなかったけど、今思うと、
救われていたと思うんだ」
「そうだな『ヴィキ』も『美姫』も、お前で、だから違いはないんだけど」
「何言っているのかよく分からなくなってきたけど」
「ともかく、お前が相棒で良かった! そういうことだ!」

「うん。ありがとう」
「私もだよ。あっくんが相棒で、よかった……」
「ずっと、覚えてるから」


そして、もしかしたら彼が本当に隣に立つべき誰かに出会う『その時』まで、自分が彼のそばにあれますように
カチリ、と小さな音が鳴った。

扉の方を見やる


そっと回してみる
扉の向こうから物音はしない。ただ部屋に響く時計の針の音と、結城の呼吸の音だけがセンサーに届いていた。

なぜだか、いろいろなことを考え、話した
ここの主に、心の中で不思議な感謝の気持ちを持ちながら
「……行こうか、あっくん」

組んでから何度となく繰り返された、位置関係とやりとり。
あなたの手が扉を開く……

想定より長くなるだろうなとは思ったけど、予想の倍かかった。


この調子だと終わるのにあと二日は確実だな!!

にん
いいのよいっぱい話聞きたいシナリオだから。

TRPGリプレイ CoC『VOID』継続『靴下が履けない』結城&ヴィキ(終)
『うん。ちょっと横断歩道渡れなくて困ってるお婆さんと、気分悪そうにしてるおじいさんと、風船取れなくて困ってる子がいて』
『……イベント起きすぎじゃない?』

TRPGリプレイ CoC『VOID』23(秘匿オープン版)
CoC
VOID 17日目 open
「俺が簡単に割り切ってると思ったら間違いだ!」
「……なん、だ。ちゃんと、怒れるんじゃ……ないですか……」
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」
※コメントは最大500文字、5回まで送信できます