TRPGリプレイ CoC『VOID』31（秘匿オープン版）

有馬 真二

「……」結城さん、彼は貴方を睨んだ。その眼は今度こそ、妄執といってよい狂気に染まっていた。

狂気とは何か。それは世界を、人の声を、言葉を──　正しく受け取れないことである。
「はは……、そうか……。そうか。お前は、お前は、お前達は」
「いつも、私達の邪魔をする」
有馬は大きく手を上げた。なにかに合図をするように。
「私の計画には、必要不可欠なものがあった」

結城 晃

「計画？」

有馬 真二

「それは圧倒的な力だ。全てを平伏させるほどの……。私はこの数年間、ずっとそれを求めてきた」
「天城。私はお前達から美姫を取り戻す」

ヴィキ

「パパ……」

結城 晃

「ヴィキはモノじゃない。本人の言葉を聞いて下さい」

有馬 真二

「取り戻して、必ずや新たなる世界を顕現させてみせよう。──私に力を貸せ、チクタクマン」

ヴィキ

「チクタク……何？」

KP

暗闇から突如、高い起動音が聞こえた。
そこから現れたのは、貴方達の優に数倍ある巨大な機械であった。

結城 晃

「なん、だ、これはっ！」

ヴィキ

「……何？」
戸惑いと混乱の声
「こんな大質量が……いつの間に」

春

「な……っ、VOID！？　……いや、違う……？！」

KP

その体からは触手のような配線が伸び、目の部分には文字盤のような部品がついていた。その面は整った形をしており、男とも女ともつかなかった。
そして何より目が行くのは、その体だ。
まるでいくつもの機械を組み合わせているかのような──　否、それは互いに異なる構造をもった機械の群れであった。
その機械の群れの中には──　何人ものVOIDの手や足、そして顔があった。
彼らは、未だ意識があるのか、助けを乞うようにその口を苦しげに動かしていた。

結城 晃

アニメじゃあるまいし、そんな非現実な事があるはずがない。
そんな言葉ががんがんと頭を揺さぶる。
目の前の光景を否定する。

田尾 麗

「…………ひどいものだな。」

有馬 真二

有馬は狂気の機械を背に負い、憎悪と狂気を宿した眼で、じっと貴方達を睨んでいた。

ヴィキ

「なんて、ひどいことを……」

春

「―――惨い」
口元を手で押さえ、苦悶する顔に視線が釘付けとなる

結城 晃

違う。
もう今更これを否定する事がナンセンスだ。あり得ない。
これは『アニメそのもの』だが『あり得る』のだ。

KP

貴方達は呆気にとられたろう。呆然としただろう。それは圧倒的で異様で奇妙で残酷で悍ましい。
しかし、それだけではなかった。

有馬 真二

「夏央。私の夏央」
彼は冷たい声で、傍らの夏央にそっと囁いた。

黄海 夏央

彼女が頷いたように見えただろうか。それとも、一瞬の事で分からなかったかもしれない。

KP

その機械が触手を伸ばした。
それはまるで母が子を抱くように、有馬夏央の身体を抱きとめる。

ヴィキ

「お姉ちゃん！」
思わず駆け寄ろうとする

KP

駆け寄るあなたの脚は機械の触手に弾き飛ばされた。

黄海 夏央

触手は彼女の体を包み、やがて──　彼女の体は機械に取り込まれた。

ヴィキ

脚を払われ、水取打って倒れる

結城 晃

「ヴィキ！　黄海さん！」

春

「……なんてこと……！」

田尾 麗

「クソっ……！」

春

ヒトを背後に庇いながら、慎重にヴィキさんの隣へと近寄る

ヴィキ

「う……」
倒れた衝撃に、呻きながら身を起こす

春

「ヴィキちゃん、大丈夫？　……いける？」
片手で〈拳銃〉に手を掛けながら、声をかける

ヴィキ

「はい……」
春先輩の腕に捕まり立ち上がる

KP

お待たせしました。SANチェックです。
全員、
　“神を取り込んだ機械”の顕現を目の前にした分、1/1d10。
ヴィキさん、
　姉を目の前で取り込まれた分、1d3/1d4＋1。
ヴィキさん以外、　
　同僚を目の前で取り込まれた分、1/1d3。

春

つまり二連SANC……！

KP

いえーす　いっぱいあってごめんな

KP

一度に5以上減った結城さんは【アイデア】ロール。
不定の狂気を発症したことのある人は、不定の狂気が再発します。
一度も発症していなくて、今回初不定の人はいますか？

田尾 麗

もとから不定なので再発ですねぇ

春

元から不定でーす

ヴィキ

鋼の精神搭載VOIDです

春

意外とナイーブなVOIDです

結城 晃

目の前の、VOIDたちの惨状は、まさに『無数の人間の屍体』だった。
「ああぁぁあああああ！」
抑えてきた感情が、怒りが、哀しみが、抑えられない。
目の前が赤くなる。
あの男だ。あの男が全ての元凶だ。
一発殴るだけでいいのか？
どんな事情があるにせよ、多くの心と命を踏みにじった報いは受けるべきではないか。
（“肉体的なヒステリーあるいは感情の噴出”）

春

体の震えが再発している。
―――目の前の存在が、あまりにも悍ましくて。
道具は、……連携を前提として造られたのでもない限り、それ単体で機能が完結するものだ。
それを　それを、こんな。

田尾 麗

不意に音が消える。
いや、俺が聞きたくないだけなのかもしれない。

ヴィキ

「皆さん……」
倒れた際に打った肩を抑え、口を開く
「みんな！」
吠える
「私たちは、暗い霧の向こうに閉ざされた、過去を全て知り、それに打ちのめされながらもここまで歩いて来ました」
「例え、今、私たちの前にどのような『最悪』が現れようと」
「私たちは、その足を止めない」
「止めるわけにはいかない！」
皆に背を向けたまま、毅然と狂気の機械と父を前に、言葉を紡ぐ
「何故なら、私たちには、受け継いできたものがあるから！」
「そうでしょう！」

神を取り込んだ機械

「来て──、くれないのね。
　これだけの力を示しても──　これだけの絶望を与えても」

機械の唇が微かに蠢いた。
首に据えられたスピーカーから響くのは、ひび割れた夏央の声だった。

ヴィキ

その声に、狂気の機械、その仮面を睨みつける
「私たちが、これまでに見聞きしてきたものに比べれば……」
「何よ、そんなガラクタ！」

結城 晃

……そう、だ。
個人的な恨みは捨てて真実を見つけようと、心に決めたのだ。
どんなに恐ろしかろうと、どんなに辛かろうと。
そんな小さなものに拘っていられる状況では、もはやない。
ひび割れそうな心を、わめき出したい気持ちを、彼女の言葉で正気に括る。
電子刀の柄に手を添え身構える。

春

「―――そう、ですね。……ええ、そうですとも！」
がつん、と自分の大腿部に拳を打ち付け、行動選択処理に痛みの信号を差し込んで無理やり震えを抑え込む。
「どんなものが立ちはだかろうとも、捨てられない。……わたしの『根っこ』は、相棒を守ること！」

田尾 麗

ヴィキさんが必死に何かを言っている。
よく聞こえていないけれど、何と言っているのかはなんとなくわかる。
それは自分が、白瀬が思っていたことでもあっただろうから。
喧騒が、戻ってくる。
まだやるべきことも明かさなければならないことも残っている。
「ああ、そうだな……まだ、やることがある。」
何より、託されたものがある。

ヴィキ

眼前の狂気に、精一杯虚勢を張ったものの、萎えそうになった心が、脚が、しかしその背後で立ち上がる皆の言葉と気力に、今一度奮い立つ
そうだ、私たちは―――
「公安局刑事課アンドロイド事件捜査係だ！　神妙に縛に付けぇ！」
叫び、ウィンチェスターをコッキングし、仮面へとポイントした

有馬 真二

「そうか。──夏央」
圧倒的な力を背に、彼の眼からは先程の憎悪が去り、ただ狂って凪いでいた。
少し哀れみすら帯びたような声で、宣言する──
「夏央」
「この人間達を、殺しなさい」

神を取り込んだ機械

その言葉に応えるように、その機械は貴方達へと近づいてくる。
人間の創りだしたあらゆる武器を、害意を、その肉体に宿して。

春

お、人間判定なんだな　まあ「お前たちは」って恨み言吐いてたしそうか

結城 晃

「娘に殺人を命じるんですか……」

ヴィキ

とりあえず発砲してみよう
バキューン

KP

ラウンドコールまだだから待って待って

KP

──戦闘開始。
なお、この戦闘中に会話や質問を行うことができます。
行動順の間にめっちゃ喋ってもいい。
第0ラウンド、ヴィキさん。

ヴィキ

「お姉ちゃんなんか、私に一度も喧嘩勝てなかったくせに！」
顔面にポイントしたまま、発砲

神を取り込んだ機械

「喧嘩なんてしてないわ。美姫、あなたがぽかぽか殴ってきただけよ」

春

スーパー夏央さん、めっちゃ速そうだ
ゴーストインザマシン、ならぬゴッドインザマシンか……

田尾 麗

デウスエクスマキナやぁ

春

機械仕掛けより来る神、転じて機械仕掛けの神……

結城 晃

ご都合主義でいいから家族返して。元の奴と仮の奴。

神を取り込んだ機械

あなたの銃弾は機械の滑らかな表面で跳ね、高く軽やかな音を立てた。

ヴィキ

姉の言葉に、頭の奥がかっと熱くなる
そんなこと、知っていた
姉は、誰よりも優しかったから
「こんの……」
感情的な言動とは裏腹に、視界の中では光の線が走り、脆弱箇所と思われる箇所を走査する
コッキングレバーを引き起こし、次弾装填

神を取り込んだ機械

──激しい跳弾音。雨のように鳴り響く鉛弾の音の中、微かにその本体に傷が走った。
“彼女”は動揺することもなく、自律し駆動する武器を操りながら、静かにその傷を見下ろしている。

ヴィキ

「ざまぁみろ！」

神を取り込んだ機械

「…………」
「大きくなったわね」

つう、と。彼女の眼から、ひとすじ煙が流れた。
まるで涙のように。

ヴィキ

暖かなはずのその言葉が、すごく胸に痛かった

KP

第一ラウンド。
【DEX】18、神を取り込んだ機械。

神を取り込んだ機械

薙ぎ払い。

神を取り込んだ機械

機械は全体に刃の生えた太いケーブルをしならせ、貴方達を薙ぎ払おうとした。

結城 晃

あんな物が飛んできたらただでは済まない。
いつでも伏せられるよう身構える。

神を取り込んだ機械

その凶悪な鞭があらぬ方向へ飛んだのは、機械らしからぬ過ちか、それとも、迷いなのだろうか。

春

いつでも庇えるように身構えていた、が……その様子に、溜息をつく。

ヴィキ

「へたっぴ！」
なぜ、こんな言葉ばかり出るのだろう
これが、あの頃のような姉妹のじゃれあいであってくれたなら
そんな思いが、胸の奥でじくじくと疼く

KP

【DEX】17、春さん。

春

牽制として装甲の隙間に何発か拳銃を放ちながら、叫ぶ形で呼びかけてみましょう
「夏央さん！　まだ自我はあるんですか！？」
「ひとつ聞きたいことがあるんですけど！！」
※パン、パン、と軽い発砲音が空間に響く

神を取り込んだ機械

“彼女”は微かに、その“顔”を貴方の方へ向けた。

春

その仕草を、肯定と解釈する。
「わたしと―――いいえ、『春』と初めて出会った日！」
「10月15日の午後4時頃！　あなた、ゴミ捨て場のVOID達を見てこんな事を言ってましたよね！」
「“人間は悲しまれ、弔われてお墓に入るのに、アンドロイドは人形と同じ、ゴミ箱に入れられるだけ”だって！」
「アレ、もしかしてお母様の件も含んでいたりします！？」
銃声は止まない。しかし、攻撃として集中していないせいで、ロクにダメージも与えていない。

神を取り込んだ機械

彼女はその一瞬首を振った、ように見えただろうか。
ひび割れた声が、呟くように、銃撃の音を背景に微かに落ちる。

「ゴミ箱も、許してもらえなかったわ」

春

「復元できないように念入りにってことですか―――それはお辛かったでしょう」
ぐ、と拳銃のグリップを握る手に力を込めて、悲しそうに微笑む

結城 晃

「人工知能の母に育てられる娘なんて不健康だからそんな母消しちゃえ」って無理矢理消させられるの、どういう状況だったんだろうなぁ。
研究所の施設使っていたとかなのかな。

春

「でもね、夏央さん！　ついでにもう一つお聞きしたくなったんですけど！」
悲しそうな色はそのままにマガジンを捨て去り手早くリロード
「感情を消して犯罪を失くす計画―――聞こえは良いですけど、それ要するに生身だったお母さん（にんげん）はゴミ箱に入れちゃえば良かったってなりますけど！　それが本当にあなたの理想なんですか！？」

ヴィキ

「……春先輩！」
思わず、叫んでいた
自分には、母の記憶というものがほとんど無い
あるのは、嬉しそうに自分のことをモニターの母に報告する、姉の姿だけ
その出来事が、父を、姉を、ここまで追い詰めた
その絶望が、いかばかりのものであったか
記憶を、心を思い出しただけの自分では、察することしかできない、が。
それでも、叫んでしまっていた。

春

「黙って、ヴィキちゃん！」
その言葉に込められた感情を、全てとは言わずとも察し。
その上で、より大きな声で塗りつぶすように叫ぶ。

ヴィキ

「……！」

春

「行動に移してしまっている以上、矛盾の可能性があるなら突きつけないといけないんだよ！！」
「『自分を裏切る』のがどれほど辛いか―――わたしは！　誰にだってそんな思いを、してほしくないんだ！」

ヴィキ

下唇を噛み締める

神を取り込んだ機械

「──……」
彼女は、視線を逸らすようにそっと俯いて、何も答えなかった。

分かって、いるのかもしれない。
この行為は不条理で、非合理だ。これは──　悲哀と憎悪で我を忘れた、父の妄執に過ぎない。
「それでも、」
「それでも、この世界が、許せなかった」
許せなかった。その声の響きに怒りはなかった。むしろ、悲哀のような、諦めのような声だった。

春

「それで破壊的な方向を選んだんです！？」
「もう二度と同じ悲劇を繰り返さない、社会の改革じゃなくて！　その『社会』を消し去ることを復讐として！」
「―――何を傍観者気取ってんですかこのバカ！！　アンドロイドに対する人間達の振る舞いを傲慢って言ってましたけどね、一方的に憐れんで裁定するアンタが一番傲慢だ！」
「アンタなら……あなたなら！　声を上げ続ければ、社会を変えてしまえる可能性だってあったでしょうに！」
怒ったような口調で、ただただ、悲しみをその声色に乗せて銃を……構える。

春

〈二丁拳銃〉で連続攻撃を仕掛けますー！　装甲抜ける気はしないけど！

神を取り込んだ機械

彼女はあなたの叫びと銃弾に、応えず、避けず、ただ微かに目を伏せた。
あなたの銃口が断続的に光る。降り注ぐ弾が彼女の装甲に当たって高い音を立てた。

KP

【DEX】16、ヴィキさん。

ヴィキ

春先輩が言うことは、正論だ
この上ない、正論だ
賢く、大人びた姉のことだ
きっと、そうしたことも考えることはあったに違いない
しかし、ただ1人突っ走り始めた父を
孤独な父を、放っておけなかった
そして、何よりも己自身が、その出来事を許せなかった

神を取り込んだ機械

機械は佇み、自らの父に寄り添うようでもあった。

ヴィキ

そしてここまで来てしまった―――
と、言うのなら。
「せめて、私が止める―――」
止めなければ―――

神を取り込んだ機械

あなたの銃弾が彼女の眼に──　悲しげなその眼に、真っ直ぐに食い込んだ。
闇をかたどったガラスが破裂し、その奥から、つう、と青い液体が流れてくる。

ヴィキ

コッキング
放り出された薬莢が、宙を舞う間に、次の射撃点をポイント
「わかってるよ……お姉ちゃん」

ヴィキ

電力切れだ

春

クリらなかったから省エネしただけかもしれない

ヴィキ

なるほどな！？

神を取り込んだ機械

電力の瞬断を起こしたあなたの腕は銃の反動を支えきれなかった。銃弾が装甲をわずかに掠って明後日の方向へ飛ぶ。

ヴィキ

唇を噛み締める
ちりん、と薬莢が床に落ちた

KP

【DEX】15、結城さん。

結城 晃

まだ曲って流れているのかな

KP

流れていますね。＞曲

結城 晃

有馬に問いかけるように言う。
「パガニーニ作曲『24の奇想曲　第24番』。まだお好きですか」
有馬は良く蓄音機でレコードを聴いていた。特に好きな旋律は、パガニーニ作曲「24の奇想曲　第24番」だと教えてくれた。

有馬 真二

有馬はあなたの言葉に応えなかった。静かに貴方達を見ているその周囲に、彼が愛した曲が流れている。

結城 晃

耳に残る情熱的なメロディ。それは激しい感情の発露を思わせるような。

結城 晃

曲は色々な事を思い出させる。
機械が好きだった。ロボットを作りたかった。
その発端は、美姫と観たアニメであり、二人の父の姿だった。
自分たちが遊んでいる横で討論を戦わせ、あるときは静かに、あるときはほとんど喧嘩のように、それでいながら心底楽しそうにロボットを語り、設計し、まるで子供のように目を輝かせて作る父と有馬が好きだった。
たまに二人のところへのぞきに行って、分からないながら話を聞くのが好きだった。
「ロボットのお友達が欲しい」と、美姫と二人でねだった。
「……何故、父を、俺の家族を殺したんですか」
「そんなに憎くなるような事があったのですか」

有馬 真二

「天城……。天城、か」ふ、と、父と呼ぶあなたの言葉に、彼が反応した。
「天城……、天城圭一。あの男がこの計画において、最も邪魔で、危険な存在だったから──、いや」彼はそう言いかけて、いちど考えるように言葉を切った。
「いや、憎かった、か。そうだな、憎かったよ。あれ以前から、ずっと憎かったし、羨ましかったし、尊敬していた」
「でも、あいつは……、あいつは、最後の最後で裏切った」

結城 晃

あの日記を読んで、有馬の心に鬱屈したものがあるのは分かっていた。
「裏切った？」
美姫に仕込みをしたことじゃないよな。順番おかしくなる。

有馬 真二

「そうだ。あいつなら、私に協力してくれると──、そう思っていたのにな」
「そのはず、だったのに。あいつは私の実験を──、」
憎しみが再びこみ上げてきそうになったのか、有馬はそっと口を閉じた。

結城 晃

「実験を父に邪魔されて……その報復に母と俺を殺そうと？」
淡々と。努めて淡々と語る。
なんて身勝手だ。わめき立てる心を抑えつけて。

有馬 真二

「報復……、だけではないよ。私は今も、あいつを尊敬している」
「尊敬しているからこそ、あいつが居れば間違いなく計画の邪魔になる。そう確信したんだ、あの時に」

結城 晃

「あの時……？」

有馬 真二

ふ、と彼はあなたから視線をそらし、春さんを見た。
「久しぶりだな、X000」

春

「ワオ、覚えてました？　何の声かけもなかったのでてっきりお忘れになったのかと」

有馬 真二

「覚えているさ。天城と共にお前を開発した日が懐かしいよ」
「お前は人類の希望として作られた。お前のデータのおかげで、精神転移手術の研究が進んだ──」
「私が設計し、天城がプログラミングした、お前のデータのおかげでな」

春

その言葉を聞いて、はあ、と重たい息を吐く。
「そのなつかしさを共有できないのが残念です。……記憶のほとんどが消えちゃってましてねえ」
大げさに肩を竦め、寂しそうに眉を下げた

有馬 真二

「そうか。それは残念だ。まだ稼働していると聞いた時は、何か回収できるかもしれないと思ったんだがな」

春

「あなたの仕込みではないんですね、この欠落。実験体の子供達と接している時のわたしにはそれ以前の記憶、あったんですか？」

有馬 真二

「ああ、データはきちんと残っていたよ。お前はお前が何のために存在するか、きちんと知っていた」
「──たとえ天城が憎くなかったとしても、私は天城を殺していただろうな。X000、お前はあのとき完璧な人間だった。完璧な人間の振りをしていたよ」

ヴィキ

「春先輩が……生まれた理由……」

春

哲学的ゾンビィ～

田尾 麗

こいつをヤーヤーヤーしにきたんだぜ

田尾 麗

こんな方法で天城越えしようとすな！　っていいそうになったけどいい場面なので秘匿で壁打つのだった

KP

ｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
うまいことすぎて吹いた

春

「そうですか。まあ、わたしの全盛期、と言った所ですかねえ」
道具としての自覚を持ち、道具として適切に扱われ、道具として十全に機能を発揮していた。ミスのない、完璧な機械。たぶん、いまよりもよっぽど完成していたのだろう

有馬 真二

「天城が生きていれば、私はきっと天城に勝てなかった。今も、これからもな。だからこの計画のためには、天城に死んでもらわねばならなかった」

春

「天城さんが計画に対抗してくると確信していたわけですね」

春

社長の目的は絶対に許せないし止めなければならないし所業に関して怒ってはいるんですけど、それはそれとして自分の開発者の一人なので情は残っちゃってるんですよねえ
社長もまだ愛するべき人類枠だし……
なので感情生やそうとした実験はともかく、子供達の実験に使われたこと自体は怒ってなかったり。道具は道具ですから

結城 晃

「少し、がっかりしましたよ……俺はあなたを尊敬していたんだ」
「勝てない相手を排除したところで、自分の腕が上がるわけでもない……
そんな事も分からなくなるほど、見失っていたんですか」

有馬 真二

「知っているさ」
高速で回転し駆動しながら貴方達に害意をばらまき続ける機械の歯車の後ろで、有馬はそっと口を閉じた。

ヴィキ

「パパ……」

結城 晃

「感情がなければ、怒りも憎しみも哀しみも妬みも。何かを醜いと感じる人はいなくなるかも知れません」
「けれどそれは『そこにあるものを感じなくなる』だけ。世界の不合理や不条理がなくなったりはしない」
「同時に手放す物を考えれば、俺は、あなたを肯定する事はできない」
「止めさせて貰いますよ」
お待たせ殴るぜ！
二刀流で神を殴る。

結城 晃

あの日の二人は、こんな悪夢のような物を作りたかったわけではないはずだ。
電子刀を振り下ろす。
赤星さんが教えてくれたとおりに。
あの赤星さんですら、有馬が作ったのだ！

神を取り込んだ機械

一体成型に見える機械の装甲の、僅かな可動部の継ぎ目をとらえ、あなたは刃を滑り込ませる。激しい火花が散り眼前が真っ白に染まる。その軌道の向こうに、赤星の、気楽そうでいて、いま思えば少し遠慮がちな笑みが見えた。

結城 晃

継ぎ目に更に一撃。
ほぼ同じ箇所を狙って振るう。
もう、怒るべきなのか、哀しむべきなのか、感謝すべきなのか、何も分からない。感情が溢れた心は、無と同じ状態になる。

神を取り込んだ機械

光が晴れた時、装甲に穿たれた僅かな傷跡が見えた。

KP

【DEX】11、田尾さん。

田尾 麗

みんなが一通り物申したであろうところで、静かに口を開く。
「……人とアンドロイドは何が違うのか。」
「そう聞いてきたのは、あなたからでしたよね黄海さん。」

神を取り込んだ機械

「そうね」

田尾 麗

「俺は、『根本的に両者は異なるものだが、扱う側の認識によって同じともいえる。』といったと思います。」
「あなたは、今のあなたに対する扱いに納得しているんですか？」
「ほかのアンドロイドたちに対する扱いに納得しているんですか？」

神を取り込んだ機械

「………」

田尾 麗

「あなたのお父様がどう思われているかは、この際どうだっていい。」
「あなた自身の意志でやっていて、これで満足ですか？」

神を取り込んだ機械

「……、」
首の可動部が、戦闘の激しい物音の中で、キッと微かに軋んだのが、どうしてか聞こえた。
“彼女”は微かに俯いて──、唇を蠢かせて、何か言おうとして、その言葉を飲み込んだ。
そうだ、とも。そうではない、とも。彼女は言えないでいた。

ヴィキ

「お姉ちゃん……。言って、いいんだよ」
「お姉ちゃんは、お姉ちゃんなんだから。一緒に背負って、潰れてしまわないで」

田尾 麗

「割り切れない思いなんてものは、生きていれば星の数ほどあります。復讐してやりたいという気持ちも分からなくはない。」
「ただし、やり方は考えなければいけないでしょう。そんな納得できない方法では、むなしくなるだけですよ。」
「これが終わったら、あなたはどう扱われるのか。どう扱われたいのか。本当はなにをどうしたいのか、よく考えてください。」

神を取り込んだ機械

「……私は、」

田尾 麗

「正直な話、こんな家族の喧嘩に巻き込まれて大変迷惑していますよ。」
「俺が知りたいのは別件ですから。」

ヴィキ

「……ごめんなさい……」

田尾 麗

「白瀬心、あの子は今どこにいる？　あなたたちならご存じなのでは？」

春

こころ。その名前に、応戦する春の動きが一瞬固まる

神を取り込んだ機械

「こころ、」
その名に、不意に彼女が反応した。
「こころ、──こころ、こころ、こころ、こころ、あの子は、あの子は、どうして、」
機械が振動を始める。装甲を青い光が覆う。翼のように反射板が展開されていく。
破裂したガラスの向こうから、青い液体が溢れ出し、彼女の頬を染めていく。

ヴィキ

「……お姉ちゃん？」

神を取り込んだ機械

「私は──、」

結城 晃

「様子が……？」

春

「……っ、こころちゃんがどうかしたんですかっ！！」
焦った様子で、春からも追い打ちがかかる

神を取り込んだ機械

「私は、これで──　いい」
彼女は青い涙を流しながら宣言する。
蠢く全ての武器が整然と貴方達の方を向く。機械の隅々まで電力が行き渡り、青いラインがまばゆく輝き、両眼が燃えるように輝いた。

貴方達は確信する。
この一撃を喰らえば、貴方達は──

KP

全員。
秘匿で、一人ずつ「逃げる」か「立ち向かう」か、宣言してください。

春

少し確認なのですが、ここで逃げたら（絆ロボという不確定要素はいったん除外して）薬物散布が進んで再起の可能性がなさそう、っていう現状認識で大丈夫ですか？

KP

その認識で大丈夫です。

春

ありがとうございます！
では立ち向かう、かな。相棒が逃げることを選んだ場合、少しでも時間を稼ぐ見込みはできるし。
相棒が立ち向かうのであればまさか置いて行くこともできない。
こういう選択を迫られた時のために、わざわざ……自己嫌悪に浸りながらでも優先順位をつけていたのだ。
わたしは、立ち向かう。
しかしこの選択、もし相棒が逃げる選択してた場合怒られそうですわね……
キョウと同じような行動してるんですもの

田尾 麗

立ち向かうでしょうね。
田尾の知りたいことはまだ何もわかってませんし。
逃げたところで現状を打破しなければ同じことですし、頼まれごともありますしね。

結城 晃

ここで逃げても結局『人は死ぬ』のだ。
逃げる事に意味はない。
立ち向かう以外の道など、残されていないのだ。
ただ、もしかすると……
父が残してくれたあの謎のロボット。
あれが動くようになっていたら、結果は変わっていただろうか……？
ふと。苦笑するように思った。
もし、もっと青木を信じて、もっと打ち明けていたら。
そんな軽い後悔とともに。

ヴィキ

この期に及んで、当事者たる自分が何故逃げられようか
追い詰められ、自ら道を絶った家族を見捨てて、何故逃げられようか
静かに目を閉じて、息を一つ吐いて、真っ向から姉と父を見据える