こちらには
『対の棲みか』
『地獄はやさしい』
ネタバレがあります。

佐倉の視点を追加しました。
このリプレイには、本シナリオのほか、『地獄はやさしい』『鱗の眼』のネタバレが含まれます。
本編見る!
KP
海を突き進む。
決意をともに陸を蹴ってからどれだけの時間が流れただろう。
どれだけ飛べば果てなのか。
そもそも果てなんかあるのか。
そんな疑問を抱き始めた頃、周囲が次第に暗くなってくる。
牧志 浩太
部屋に横たわりながら、ただその感覚を共に味わう。もう殆ど動かない身体を寝床に横たえ、胸の上に置いた手は祈りのように組み合わされていた。
■佐倉視点
KP
海の果てに柱が立っている。
それは一対、天を貫くかのようだった。
その間から一筋の光が天に伸びている。
どうやらそれは水の流れで、重力に逆らうように果てなき天へと続いていた。

佐倉 光
「うわ……もしかしてあれか?」
佐倉が呆然と呟いた。
牧志 浩太
「見えたのか」
佐倉 光
「広い海の向こうに、めちゃくちゃ高い柱が二本立ってんだ。
その間から、水が流れ出ているらしい。
その先が宇宙らしいんだ……
今更だけどファンタジー過ぎて笑うしかねぇな」
牧志 浩太
「夢の中らしい、とも言えるな」
KP
神の靴が海の上を滑る。
佐倉 光
「ここが夢ならもうちょっと都合が良くったっていいと思う」
牧志 浩太
「そうか? 夢って、意外にままならなくはないか。食べ物が出てきても食べることができなかったり、見えている場所に何時まで経っても辿りつけなかったりする」
微かに表情が動き、声の調子が上向く。その変化は実際に声を発してから一拍遅れてやってきた、意図的にそうしているのだ。
佐倉 光
(もうすぐだ……)
「そういや俺の夢もここにあるって言ってたな!
碌なもんじゃなかったけどな!」
牧志 浩太
「あの町か」
佐倉 光
「あの店だけはもう一度行ってみたいけどな!」
牧志 浩太
「そうだな、あの時の佐倉さんは楽しそうだった。別の世界の店に迷い込んだ時も、そうだったな」
■佐倉視点
KP
柱はみるみる迫ってくる。その向こうには何も見えない。ここが世界の果てだ。
佐倉 光
落ちたらどうなる、は、考えないでおこう。

KP
靴が水を渡る。
柱の間をたちのぼる滝を駆け上る。
佐倉 光
「牧志……」
牧志 浩太
「佐倉さん?」
佐倉 光
「いいや、後だ!」
牧志 浩太
「……? そうだな?」
■佐倉視点
佐倉 光
今更あの夜の事を謝ったって何にもならない。
青臭い決意表明なんてもっと意味がない。
俺たちはいけるんだ。

KP
水から飛び出す。
牧志 浩太
平坦ながらも不思議そうな、しかし疑ってはいない、と分かる、その声。
「今、昇っているんだな? 分かる。飛び出したな」
佐倉 光
「凄い絶景だ。夢の世界がまるでミニチュアだ。
落ちてるのか飛んでるのか良くわからないけど、雲が近づいてくるから飛んでるんだろうな。
……空気、大丈夫かな……」
牧志 浩太
「そこは一緒に面倒を見てくれるもの、と思っておきたいな。そうでなければ困る」
佐倉 光
「確かに! 今更気にしてもしょうがねぇか!」
牧志 浩太
「ああ。進むだけだ、それで間違っていない。
佐倉さん」
佐倉 光
「どうした?」
牧志 浩太
「少し、不思議に思う。感情も、意志も、どうやら残っていないようなのに」微かに手を動かして、胸に当てた。
「それでも、間違っていないという確信がある」
佐倉 光
「そうか、なら大丈夫だな。
信じてるよ」
牧志 浩太
「そうだな。……そうだ。信じている、で合っている。
信じているな。これは」
ゆるやかに手を上げて、室内の電気の白い明かりの中、手を光にかざした。
ずっと眩しい、光を見ている。
KP
〈聞き耳〉をどうぞ
牧志 浩太
CCB<=84 〈聞き耳〉 (1D100<=84) > 90 > 失敗
ぬおおお
84あるのに失敗するぅー
KP
では、佐倉が何事か呟いた気がした。
■佐倉視点
佐倉 光
「後悔には、しねぇよ……」
あの日電話したことも、牧志と一緒に駆け回った事も、何もかも。

牧志 浩太
「……佐倉さん?
何か、言ったか?」
風の音か、それとも自分の血流の音か。何かに紛れて聞こえなかった。
佐倉 光
「頑張ろうって言ったんだ」
牧志 浩太
「そうだな。頑張ろう」
佐倉 光
まあ正確には違うけどさ。
牧志 浩太
終わったら何を言ったのか知りたいな……

■佐倉視点
KP
あなたの肌に何者かが触れる。
それはなんとも言えず不快な感覚だった。
それは確かに確実な感触として感じられたのに、触れた者の姿はなかった。

KP
一瞬、佐倉が体をこわばらせた。
佐倉 光
「なんだ?」
牧志 浩太
「……佐倉さん?
何か、あったのか」
KP
あなたにも感じられただろう。
何者かが体に触れた。
足に、腕に。さらりと撫でるように。
牧志 浩太
発した直後、その感触を感じ取る。
佐倉 光
「何も、いないぞ……?」
KP
また触れる。足首に、手首に。
今度はねっとりと。
牧志 浩太
「目に見えない何かがいるのか?」
それが異変であることは分かった。佐倉の緊張が流れ込んでくる。
佐倉 光
「え、何これ気持ち悪」
ぬるりとした指先が肌を撫でる。
無数の手が、腕を、足を掴み、引きずり落とそうとする。
確かにそんな不気味な感覚があった。
■佐倉視点
KP
あなたの体に触れる異様な感覚は、物理的な干渉はしてこない。
ただ、あなたの行く手を阻もうとする悪意は感じられた。
佐倉 光
あの蟲野郎の差し金か? 怒りがわき上がる。
※実はそういう訳ではない。
アザトースに近づく者を妨害せんとするニャルラトホテプの意思であるようだ……多分。

背をなで上げる嫌悪。それを覆い隠すように満ちる怒り。
だがそれは物理的なものではなかったのか。
佐倉は進む速度を上げた。
KP
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1
牧志 浩太
CCB<=46 《SANチェック》 (1D100<=46) > 71 > 失敗
[ 牧志 浩太 ] SAN : 46 → 45
佐倉 光
CCB<=57 【《SANチェック》 (1D100<=57) > 28 > 成功
「なんかが邪魔しに来てる感じだ」
牧志 浩太
「前の囁き声と似ているな。……少し、重く感じる」
佐倉 光
「大丈夫か?」
牧志 浩太
身体を寝床に縛りつけるひどい重さとない交ぜになって、飛ぶ身体を下へ引きずり落そうとするように感じた。
「大丈夫だ。却って幸いなのかな、佐倉さん程には嫌悪を感じずに済んでいる。佐倉さんは、大丈夫か?」
佐倉 光
「こんなの多少気持ち悪いだけだ。一気に突っ切る!」
牧志 浩太
「分かった。頼む」
■佐倉視点
KP
手足に絡みつく感覚は、遠くなり消える。
周囲はさらに暗くなり、風が止む。分厚い雲が地上を覆い隠し、まるで現実味がない。

KP
さらに速度を上げる。
風が止み、気温が下がり、周囲はさらに暗くなってゆく。
果てへ、果てへと。
牧志 浩太
「……寒いな」微かに、呟く。
■佐倉視点
佐倉 光
「ああ、上着を借りてくるんだったな」

KP
佐倉が同意した。それは分かったが、声が聞こえない。
牧志 浩太
「……佐倉さん?」


【遠い記憶】星空


同時、あなたは星空を【見て】いた。
それは遠い記憶の向こう。
冷たい夜風を肌に受け、白い息を吐き、果てなき空を見上げて夢中で何かを探した記憶。
■佐倉視点
KP
あなたの言葉に、返事は返らない。
貴方の視界には、今見ている空とは別に、ぼんやりと満天の星空が重なって見える。
佐倉 光
また夢……想い出を見ているのか。
人の大事な記憶に触れるのは、興味はあるがなんとなく居心地が悪い。
KP
『あなた』は幼い少年であるようだった。
彼がどんな想い出天を見上げているのかは分からないが、その頬は上気していた。

牧志 浩太
遠い── 記憶。
冷たい夜風を肌に受けながら、いくつもいくつも星が散らばった空の中、飽きずに光を探した。
もう一度会いたかったのだ。あの、微かな夢のような思い出の光に。
母さんも父さんも、みんなただの夢だって言う。でも、あれがただの夢だなんて、どうしても思えなかった。
KP
誰の思い出なんだろうな……
KP
しんしんと冷え込む夜気はどこまでも澄み渡り、遠く遠く宇宙の果てまでも見えそうだった。
牧志 浩太
どうしたら、また会えるかな。どうしたら、もう一度あの手を取れるかな。秋を告げる北風は過ぎて、いちばん寒い時期、空はしんと澄み渡っていた。どこまでも見渡せそうなのに、あの日流れた星の姿はなかった。
友達だったんだ。僕はそう思ってた。手をつないで一緒に空を飛んだ、どんなお話をしたのか、ちゃんと覚えてないけど。
KP
飛行機の光。
人工衛星の光。
ねぼけていただけ。
大人はそんな風に笑った。
KP
おっ、彼のあのイベントの詳しいところが聞けるか?
牧志 浩太
どうしたら、また来てくれるかな。どうしたら、あの空に歩いていけるかな。父さんも母さんもおじぃも笑ったけど、そういえば、何を喋ってるのかよくわかんないおばぁだけ、静かに頷いてくれたっけ。
KP
晴れた星空は吸い込まれそうに綺麗で、遠くて、少しだけ不気味で、どんな不思議な事だって起きてもおかしくないと思えるのに、あの星だけはどれだけ探しても見つからない。
■佐倉視点
KP
あなたはふと気付く。もはや現実の視界も星空だ。
シャンを、探さなければならない。
佐倉 光
想い出を見ている牧志に声をかける。急がなくては。

牧志 浩太
あの時、ほんとに、ほんとに見たんだ。大きな大きな流れ星が光って、僕の前に降りてくるのを。
あの光が空を照らし出すのを、今だってちゃんと覚えてる。いつのことかも覚えてるんだ、今日みたいにいちばん寒い日だった。星座の本に載ってた十字星が、水平線の上で顔だけ出して燃えていた。
KP
白い息で空がくもる。
大分前に風邪を引くからもう帰るようにと言われたのも忘れて、あなたは、彼は、空を見上げていた。
牧志 浩太
ずっと、ずっと、空を見上げていた。
水平線に十字星は見えないけど、今もどこかで、僕はあの空を見上げ続けているのだろう。
KP
上気した顔で星空を見上げていたのは、誰だっただろう。
牧志 浩太
ずっとずっと空を見上げ続けているのは、誰だっただろう。
彼岸のほとりで空を見上げているのは、俺は、僕は。
■佐倉視点
KP
あなたが見ている幻の星空がぼけてゆく。
同時に、牧志と繋いだ手が離れてゆく感覚があった。
いや、離れているのではない。牧志の存在が消えかかっているのだ。
佐倉 光
「牧志! しっかりしろ牧志! 牧志浩太! ここまできて消えちまうのかよ!
そんなの許さねぇぞ!」

KP
「兄! コウ兄ぃ!」
遠くで呼ぶのは誰だろう。
牧志 浩太
その声は小さいくせに一丁前に苦笑いなんかする妹のようだった気もするし、俺よりたまにしっかりした顔する弟のようでもあったし、紅、と俺を呼ぶ誰かのようでもあった。
ただ波の音が聞こえていた。ずっと、ずっと。
ずっと、耳の中で波の音が聞こえていた……。
牧志 浩太
そもそも波照間自身からその時の記憶が抜けてしまっているので詳細不明なんですよねぇ。>あの時のイベント
佐倉 光
そっかぁー
KP
「コウ……コウ……!」
牧志 浩太
誰かの声が聞こえる。
「紅?」微かに返事をした、かもしれない。声は出ただろうか。
■佐倉視点
KP
急速に牧志の輪郭がぶれ、薄くなってゆく。
佐倉 光
「牧志! おい、起きろ! 勝手に消えるな!」

KP
目を覚ますように、と誰かが言う。
牧志 浩太
辺りが真っ白なような真っ暗なような、俺はどこにいるのか、還ってきたのだろうか。地獄の釜の蓋の下に。
KP
ここにきてはいけない、と誰かが言う。
牧志 浩太
誰かの声が呼んでいる。
誰かのやさしい眼が、誰かの寂しそうな眼が、誰かの温かい眼が、

きらめく星の色をした誰かの眼が。

俺を、見送っていた。
佐倉 光
「コウタ!」
記憶が薄れると同時、あなたはどこにいるのか分からなくなった。
あなた自身は自室にいるのを知っているのに、それをどうしても信じる事ができなかった。

今まで以上に佐倉の存在を強く感じるのは、自らが希薄になった故か。
あなたは、あなたという存在を成す最後のひとかけらが、いずこかへと奪われようとしているのを知るだろう。
■佐倉視点
KP
牧志の意識が戻った、と感じられる。
だがそれはもはや明滅して消えるばかりに見えた。
佐倉 光
それはつまり、ヤツが近くにいるという事かも知れない。
できる限り自分の近くに引寄せるイメージで呼びかける。

牧志 浩太
は、と眼を開く。眼を開くことができたかどうか分からなかった。
佐倉 光
「牧志!
あと少し、頑張れ!」
牧志 浩太
眩しい、光が見える。
奪われていく意識で、そちらへ手を伸ばそうとした。
佐倉 光
「教えてくれ、俺独りじゃ無理なんだ!
どこへ行けばいいのか分からない!」
牧志 浩太
分からない、その声はそう叫んでいた。
ふと、車の助手席にいる気がした。運転席に誰かがいて、俺はその横で何か調べ物をしていた。
白い服の肩が見えた。
黒いパーカーの肩が見えた。
佐倉 光
「あいつを、あいつを探すんだ!
シャンを、もうひとりのお前を!
お前にしかできない事なんだよ、牧志浩太!」
牧志 浩太
「分かった、探せばいいんだな。少し待ってくれ、いま調べる」
そう返事をした気がした。
運転席にいるその誰かの傍らで、スマートフォンに目を落として、
そして、顔を上げた。
傍らにいる人の顔が、今度は── 見えた。
牧志 浩太
うたかた第二話の時にも、牧志くんが助手席にいて車内で調べものをしていて、佐倉くんが運転しているシーンがあったはず。
調べ物のタイミングそこだったかちょっとうろ覚えですが。

KP
では、これからもう一人の牧志を探す特殊処理を開始します。
全部で3ターン。

KP
1ターン目。
佐倉が目で探します。〈追跡〉〈目星〉
佐倉 光
CCB<=85 〈目星〉 (1D100<=85) > 26 > 成功
KP
成功しました。

KP
では次に牧志。
佐倉の成功分10%と、時間ボーナス(☆)10%。計20%の補正を付けて……
〈ナビゲート〉など[もう一人の牧志]がどこにいるか伝えるに適切な技能でロールします。
牧志 浩太
星かぁ。背景画像通り宇宙空間ということで合っていますか? いまいるの
KP
宇宙です。
牧志 浩太
星の位置と配置を手掛かりに、〈天文学〉で伝えることはできますか?
KP
ok!
牧志 浩太
CCB<=70+20 〈天文学〉 (1D100<=90) > 66 > 成功
KP
おっ、めっちゃ簡単でしたね!
KP
マイナス補正入れても良かったかもね!
牧志 浩太
い、入れなくてもいいんですよさっきから出目がちょっと危うめだから!

牧志 浩太
「見えるか、あの星のあたりだ。星雲の頭とあの星と、あの星を線で結んだ所」
■佐倉視点
KP
あなたは星の事など知らない。ただ牧志が示していると感じる方を見た。

佐倉 光
「……
ok見えた!」
牧志 浩太
「よし」
KP
佐倉は猛スピードで飛び始める。
目指すは宇宙空間をはしる白いUFO……いや、小舟だ。
幸い僅かに先んじていたためか、もうひとりの牧志の前に回り込む。
貴方を通じて追跡に気付いただろうもうひとりの牧志は、身構えていた。
■佐倉視点
佐倉 光
(駄目だ。あいつに気付かれたら俺じゃ太刀打ちできない。
しかし牧志と繋がっている以上、俺たちの動きは筒抜けだ。それなら、一か八か……)

佐倉 光
では佐倉はここで『心を閉ざす』宣言をする。
KP
一瞬、あなたの感覚が現実に戻された。
牧志 浩太
「──、あ、」綱が、切れた気がした。
違う。彼はあえてそうした。
■佐倉視点
KP
あなたと牧志の繋がりが完全に切れる。
それは牧志を守るものが何もなくなるという事だ。
佐倉 光
確実な勝利のための賭けだ。
軌道を変え、ヤツの下から背後に回り込む。船の下に入り込めば姿は見えない。
小回りの効く靴と、黒い服が役に立つ。
KP
【牧志】は慌てていた。
佐倉 光
まだヤツは牧志を奪いきれていない。一撃で、確実に、やる。
聖水のイルカを握りしめて【牧志】の背後に入り込むと同時に、牧志と【繋ぐ】。

最後の瞬間にばれてしまうが、これだけは二人でやりたかった。

KP
そして次の瞬間、あなたは指先に冷たいものを感じ取る。
牧志 浩太
「……」
KP
佐倉があのイルカを握りしめて、【あなたの背後にいた】。
同時にあなたは、イルカを握りしめ、目の前で振り向こうとするあなたに向かい、それを叩きつける。
叩きつけているのが、あなたか、佐倉か。
それは判然としなかった。
牧志 浩太
振り向こうとした。叫んだ。叩きつけた。叩きつけられた。あらゆる感覚が地獄の釜の底で渦巻いた。
すべてが遅く、目の前で流れた。
佐倉 光
「このクソ蟲が」
KP
佐倉の怒りと喜びに満ちた声が聞こえた。
ぱしゃり、と軽い音を立ててイルカが砕け、【彼】は【あなた】は水を浴びる。
怒号と、悲鳴が耳をつんざいた。
牧志 浩太
ああ、

これで間違っていないという確信が満ちていた。
KP
あなたには何の痛みもない。
苦痛と恐怖、怒りと苦悩の叫び声を上げ、もう一人のあなたがのたうち回る。
あなたの体から蟲が這い出て、再び宿る宿主を求め、飛び上がる。
今や、もう一人の貴方の体はぐったりと船底に倒れ伏していた。
牧志 浩太
するべきことは分かっていた。
もはや阻むものはない。導かれるまま、そちらへ手を伸ばす。
KP
あなたがそれを望むと同時、目の前であなたは砕け散る。
光となって、あなたに還る。
貴方の身に力が満ちる。
心が満ちる。
魂が満ちる。
牧志 浩太
真っ先に戻ってきたのは、心を満たしていた確信の正体。
次々と、この手の中に戻ってくる。
信頼。喜び。苦しみ。恐怖。──怒り!
KP
蟲は佐倉に飛びかかろうとしていた。
佐倉 光
ボコす!!!
佐倉 光
「二度同じ手を……」
牧志 浩太
一瞬で拳を握り、蟲目がけて殴りかかる!
これまでの全ての分の怒りを込めた拳。
佐倉 光
「喰らうかよ!」
KP
二人の拳が、蟲を叩き落とす。
船底に溜まっていた水を浴び、蟲は再度もがき苦しんだ。
牧志 浩太
「いい加減……っ、くたばれ!」
KP
あなたの足が、佐倉の足が、蟲を踏みつけた。
ばりん、と甲殻が砕ける。
ギィィ、と声を上げ。蟲は動かなくなった。
同時、船底に穴が開く。
牧志 浩太
「え、うわっ!?」
佐倉 光
「うわ!」
牧志 浩太
「ちょ、まさかの落下オチ!
佐倉さん!」咄嗟に佐倉へと手を伸ばす。
KP
そう、今やあなたは宇宙にいた。
取り戻した肉体があった、宇宙に。
佐倉も手を伸ばす。
牧志 浩太
手を、伸ばす。
今なら分かる。あの時の虚ろだった自分が、ずっと眩いばかりの光として見ていた、友達に。
佐倉さんに。
KP
指が触れ、その手首を掴み合う。
同時、船は限界を迎えて砕けた。
あなたがたはふたり、宇宙空間で手を握って浮いていた。
佐倉が貴方を引っ張り上げる形で、ゆらゆらと揺れながら。
牧志 浩太
「……佐倉さん」確かめるように、名を呼ぶ。自分が何だったかも、きちんと思い出していた。
俺は、あの日の紅で、いまここにいる牧志浩太。佐倉さんの、友達。
佐倉 光
「牧志? 牧志だな?」
牧志 浩太
「うん、牧志だよ。牧志浩太」
佐倉 光
「は、ははは。
なんだよ、上手くいったじゃねぇか!」
牧志 浩太
「……だな!
佐倉さん、ありがとう!」
佐倉 光
「ああ! そりゃこっちの台詞だ!」
KP
あなたがたふたりの体は、ゆっくりと降下し始めている。
牧志 浩太
「じゃあ、俺と佐倉さん、どっちにも大きな貸しと借り、一つずつってことで! ……あー、でもこんな所まで命賭けて来てくれたし、俺の借りの方が大きいかな」
佐倉 光
「そんなんもうどっちだっていいよ、めんどくせぇ!」
牧志 浩太
「……そうだな!」
佐倉 光
「後悔にならなくて、良かった……」
牧志 浩太
「後悔?」
佐倉 光
「俺はずっと、あの日お前に電話した事を後悔してた」
牧志 浩太
「あの日って、手紙の?」
佐倉 光
「いや……俺のコピーが俺の部屋に現れたときだよ」
牧志 浩太
「え? 電話貰ってなかったら、気づくのが遅れてたと思うけど」
佐倉 光
「少なくとも巻き込まずに、済んだろ」
牧志 浩太
「それは困るな。俺が後悔する羽目になる」
佐倉 光
「いいんだよ、もう。終わったんだ。俺は間違ってなかった。
後悔なんかしてねぇ」
牧志 浩太
「ああ、佐倉さんは間違ってなかったよ。全然間違ってなかった。
おかげで、全部うまくいった」
KP
パキッ
足元からかすかな音がした。
牧志 浩太
「俺さ、感情も意志もなくなっても、佐倉さんが間違ってると思ったことだけはなかっ……、って、パキッ?」
足元を見る。
佐倉 光
「パキッ?
……あー。
悪い、牧志。やっぱり俺後悔してるかも知れない」
牧志 浩太
「え?」
KP
二人の体は急速に落ち始めていた。
牧志 浩太
「……もしかして、改めて落下オチ?」
笑顔が強張る。
佐倉 光
「この靴、二人の体重は無理だわ」
牧志 浩太
「そ、そこをなんとか」
佐倉 光
「無理くせぇなー」
KP
ぴしぴし、とひびが入る音がし、虹色の破片が舞い散る。
光を放つ破片が佐倉の足から中空へと飛び散ってゆく。
牧志 浩太
「うわわわわわ、」空の上でばたばたと、無駄なあがきをしてみるけれど。
KP
落下速度はどんどん上がる。
牧志 浩太
「ちょ、ちょ、も、もうちょっとだけ! そこをなんとか!」
自分達が流れ星になるのは…… 困る!
佐倉 光
「なんで宇宙に重力があるんだよ」
牧志 浩太
「案外重力圏がでかいのかもしれない!」
KP
急速に大地が近づいてくる。
手を繋いだままなすすべもなく落ちるあなたの視界は、雲に突っ込んで真っ白になった。
牧志 浩太
「っぶぁ!」
KP
全身の感覚が失われてゆく。
気絶の前兆か、視界がかすむ。
牧志 浩太
走馬灯のように東京行きの飛行機を思い出していた。着陸態勢に入る飛行機が雲を突き抜ける瞬間。今は…… 翼は、ないけど!
KP
なんで宇宙に重力がって言うけど、普通に音も空気もあったわよ?
牧志 浩太
なんならイルカ投げつけたりできてましたしねぇ。

KP
その時、あなたの目の前に、ぼんやりとした風景が見えた。
祖父の背中が、見えた。
牧志 浩太
「爺ちゃん」
あの時の呼び方で、背中に呼びかけた。これが誰の記憶か、今ならちゃんと分かる。
KP
彼は幼い貴方を伴い、よく機械いじりをしていた。
ユキは二人を見下ろす特等席で、いつも半分眠っているような顔で見ていた。
牧志 浩太
機械油の匂いが好きだった。大きな掌が好きだった。鉄くさい、その空間が好きだった。
幼い自分にとって、その場所は魔法のお城のように見えた。
KP
祖父は作業をしながら、いろいろな事を話してくれていた。
子供にも分かるような簡単な事から、大人にも難しいような専門的な事まで、分け隔てなく、童話を語るように。

KP
牧志君の賢さってこのへんからきてんのかなって。
牧志 浩太
ありそう。
KP
古いお守り、じいちゃんからもらった、でよいですか……
牧志 浩太
おっ、大丈夫ですぜ!

牧志 浩太
雪に閉ざされた世界の中で、ストーブの音がやさしく響いていた。
低く、しわがれたその声が語るあらゆることが、俺は大好きだった。
俺には難しいこともいっぱいあったけど、俺がよく分からなさそうな顔をしていれば、爺ちゃんは何度も、何度でもよく話してくれた。
KP
その日、祖父は不思議な話をしてくれた。
何もかもが機械でできた不思議な町に迷い込んだ、なんていうおとぎ話を、いつもの語り口で。
牧志 浩太
「全部機械なの? すごい、すごい!」
機械が大好きになっていた俺は、歓声を上げて。
KP
そのときにふしぎな人にお守りをもらったのだと。
KP
今後の話に関係あるかは……知らない。
牧志 浩太
しーらない。
あ、「夢」について言及したりしなかったりしても大丈夫ですか?
KP
okですよ
なんだろうな、お守りの文字。皇津神社でいいかなぁ。
牧志 浩太
いいんじゃないでしょうか。縁。
KP
夢を継ぐときに継承されたって感じで。
牧志 浩太
「お守り?」その時確か、見てみたいってせがんだっけ。
KP
何度もせがむ貴方に根負けして、見せてくれたお守りには【皇津神社】と書かれていた。
ほとんどすり切れていたけれど、その頃はまだ、読めたのだ。
牧志 浩太
わずかに読めた文字。どこにあるんだろう、いつか絶対探すなんて思ってて、結局実行したかどうかは覚えていない。
KP
色々な話をした。
なぜかその話のほとんどは、ぼやけていてよく聞こえなかった。
確かに聞いていたはずなのに。
牧志 浩太
確かに、聞いたはずなのに。
日記にもちゃんと書いたはずなのに。
なにもかもがぼやけていて、そこだけが思い出せない。
ただ夢のように、いつもは絵空事を語らない爺ちゃんが語る、不思議なおとぎばなしを夢中になって聞いていた。
そういえば。
いつもは神頼みをしない爺ちゃんが、一年に一度だけ、山に向かって誰かに礼を言うのだった。
……その夜、爺ちゃんは俺にそのお守りをくれた。
いいの? と聞けば、いいんだよ、と、いつもよりもっと優しく笑っていて。
別れの日の前の夜だった。
爺ちゃんは何か、何かとても大きなことを目指しているらしかった。でも、それが何かだけは、最後まで一度も俺に話さなかった。

自分で見つけろ、ってさ。
その時だけ俺はちょっと膨れたけど、それが爺ちゃんのやさしさだと知るのは、もっと後になってからだった。
爺ちゃんはこの町と、俺達が大好きだった。
爺ちゃんはこの町と俺達のために、何かとても、大きなことをしようとしていた。
俺が知ってるのは、それだけ。
……ストーブのやさしい音が聞こえていた。
KP
ぱちぱち、ぱちぱち、かすかな音が遠ざかる。
KP
何をしていたんだろうなぁ……
牧志 浩太
継いだ要素もありつつ、牧志くんの夢は牧志くん自身の夢であってほしかったので、具体的には話さなかったことにしました。
KP
記憶の旅はこれで終わりです。
はじまり
牧志 浩太
具体的な内容こそついぞ思い出さないままだけど、牧志くんは自分の夢のはじまりと、誰のために何をしたかったかを思い出したので、将来はきっと機械系に進むでしょうね。
KP
道の始まりには立てたね……
牧志 浩太
それからはきっと、道を歩きながら見つけていくんでしょう。

綺麗な砂浜の写真
牧志 浩太
うおぉ綺麗
KP
ふたりは真っ青な海に浮かんでいた。
■佐倉視点
KP
あなたが目を覚ますと、あなたと手を繋いだままの牧志の寝顔が見えた。
その顔は穏やかで、微笑んでいる。
憎しみや怒りはない、穏やかな、あなたがよく知っている牧志浩太の寝顔だった。
彼の表情こそ違え、あなたは初めて彼と出逢った時のことを思い出すかも知れない。
佐倉 光
あの時は、一刻も早く離れるために駆け回っていたな。
いい夢を見ているみたいだから、しばらく起こさないでおこう。
KP
波はゆっくりとあなた方を何処かへと運んでいる。
やがて牧志の瞼が動いた。目覚めようとしている。

佐倉 光
「牧志!」
牧志 浩太
「……佐倉さん。
夢を、見てたみたいだ。ずっと昔の思い出を、思い出してた」
佐倉 光
「……良かった。
もう俺には、お前が何を見ていたかなんて分からないけど。
寝顔は幸せそうだったから」
牧志 浩太
「うん」静かに、笑みがこぼれた。
「とても、大事な夢だった」
「どうして忘れてたんだろうってくらい、とても、大事な夢」
佐倉 光
「そうか……取り戻せたんだな、夢」
牧志 浩太
「……うん。何がしたかったか、具体的なことは言ってくれなかったんだけどさ」
「何がしたいかは、ちゃんと思い出したよ」
手を握って、開く。あの時に比べたらずっと大きくなった、自分の掌の確かな感触があった。
佐倉 光
「そうか……悪い事ばかりじゃ、なかったな」
牧志 浩太
「だな!」
KP
美しい音楽がどこからともなく流れてくる。
やわらかな光があたりに満ちている。
波は貴方方を美しい浜辺へと運んだ。
アロエやビャクダンがかぐわしく香りたつ森林。緑の生い茂る牧草地。水晶の尖塔。見たことのない虹。
人間は誰もいない。
牧志 浩太
「すごい、綺麗だ。綺麗だけど……、誰もいないんだな」
KP
あまりにも美しい景色であるのに、どこか拒絶されているような気がした。
佐倉 光
「どこなんだ、ここは……」
牧志 浩太
「ちょっと寂しいな。俺達のいる所はここじゃない、って感じ。
あー、あの本に書いてないか?」
KP
牧志。あなたはいつの間にか、飾り箱を手に持っていた。
蓋は開きかかっている。
牧志 浩太
「……あれ?」
ふと、手の中にある感触に気づく。
「何だろ、これ。開けても爺さんになったりしないよな?」
佐倉 光
「鶴になるんじゃねぇのか? どっちも嫌だけど」
牧志 浩太
「鶴になったら佐倉さんに恩返ししに来ないとな。開きかかってる」
佐倉 光
「それ、皇津様の箱だろ? 必要なときくれるとか言ってたな」
牧志 浩太
「じゃあ、今が必要な時なのかな」
開けてみます。
KP
音もなく箱が開く。
すると二人の目の前に、銀の髭をたたえた老人が立っていた。
牧志 浩太
「……皇津様」静かに、軽く頭を垂れる。
佐倉 光
「あっ、皇津様」
KP
「これはこれは、人間としては最良の、そして最も招かれざる場所へたどり着いたものだ」
老人は髭を撫でて呟いた。
牧志 浩太
「今回の件、本当にありがとうございました。牧志浩一郎の孫、牧志浩太が深くお礼を申し上げます」
KP
老人は眉をピクリと動かして牧志を見ると、何度か頷いた。
「途切れたものが再び繋がったと思ったが、更なる古い絆も繋がったようだな」
牧志 浩太
「はい」
これまでのどの時よりも清々しい顔で、笑う。
KP
老人は優しい笑みを浮かべた。
そして、二人に美しい大地を指し示す。
「ここはカトゥリア。希望の地。人類がなにもかもをやっきになって欲しがるゆえ、人間からこの地は取り除かれたのだ」
佐倉 光
「カトゥリア……?
エデン、みたいな?」
牧志 浩太
「保護区みたいなものなのかな」
KP
「人類にとって最も良いものは全てここにある。
しかしここに留まるためには、完全に無垢にならねばならぬ。
カトゥリアを流れる川、ナルグ川の水を飲めば、水を飲んだものは無垢だった時代まで運ばれるであろう。
無垢なる者になりたければ、この水を飲みなさい。
ここに留まれば、もう二度と怪奇も不幸もおまえたちのもとに訪れることはないだろう。
ここは希望の地。希望だけがここにあるのだ」
牧志 浩太
「だってさ。佐倉さん、どう思う?」傍らの友を振り返る。
佐倉 光
「……へぇ……
興味ない。
いや、知りたいけど、留まりたくはない」
牧志 浩太
「俺も。ここには希望があるようだけど、ここにはきっと、夢がない」
佐倉 光
「いいこと言うじゃん」
牧志 浩太
「だろ」
佐倉 光
「だいたい、こんな綺麗なだけの所なんて退屈で死んじゃうよ、俺」
牧志 浩太
「俺も。こんな所で静かに暮らすのも楽しそうだけど、それは隠居してからでいいかな」
佐倉 光
「よし、帰ろうぜ!」
牧志 浩太
「ああ」
第一部 完
牧志 浩太
もっともっとやりたいシナリオはもちろんあるけど、第一部・完って感じがあるなぁ……。牧志くんが牧志くんになるための道を、佐倉くんと共にここまで歩いてきた感じがします。
KP
いろいろそんな感じはするなぁー
牧志 浩太
つまり次回からは第二部スタート!!
KP
そういうことだ!
牧志 浩太
第二部いきなりコミカルな話から始まるっぽいのもそれっぽいなぁ

牧志 浩太
「皇津様、ここから帰るにはどうしたら? 俺達、帰りたいんです。俺達のいた世界に」
KP
皇津様は。ノーデンスは。包み込むように微笑んだ。
ノーデンスは牧志たちの手を取り、光の中へと導いた。
圧倒的な光が牧志たちを焼く。
けれどその光は、何を失わせることもなかった。
何も失わずに進むことを望んだのだから。
そして、ふたりの意識は一瞬、ふっ、と消える。

KP
ふたりは向かい合って、木のテーブルに座っていた。
牧志 浩太
ゆっくりと周囲を見回す。
佐倉 光
「あれ、ここ……」
KP
そこは明るい雰囲気のバーの一角だった。
聞き覚えのある声の女性が、明るく話しかけてくる。
番井ニコ
「あら!  あなたたち、いつ帰ってきたの?」
牧志 浩太
「ニコさん!
お久し振りです。ちょっと長い旅に行ってて」
番井ニコ
「ええ、大変だったのでしょうね」
KP
番井は二人の前に、あの夜と同じ飲み物を出してくれる。
番井ニコ
「おかえりなさい!  おつかれさま!」
牧志 浩太
微かに立ち昇る黒糖の香り。
「ええ、ただいま!」満面の笑顔で、返した。
佐倉 光
「祝杯だな!」
言いながらグラスを上げる。
牧志 浩太
「ああ!」応えてグラスを上げる。
「長い旅の終わりに、乾杯!」
佐倉 光
「乾杯!」


あなたたちはひとしく他者である。
だから支えあえた。だからここまで来れた。
大丈夫。すべては取り戻せた。
ここにあるのはただの現実。
一対の生き物の、ただの棲みかである。




『対の棲みか』
かなむら様 作


両生還 END


KP
乾杯の後で佐倉は目をしばたいて言うだろう。
佐倉 光
「あれ、車……
置き去りじゃ……」
牧志 浩太
ふふふwwwww そうね
牧志 浩太
「……あー。
うーん、またか」
佐倉 光
「そこまではサービスしてもらえないよなー」
牧志 浩太
「皇津様、車のこと知ってるかわかんないしな。まあ、後で回収に行こうか」
佐倉 光
「ついでにお参り行けそうなら行くか!」
牧志 浩太
「賛成! あと、行きついでに旅の思い出話でもしよう。色々感じそびれたからさ、辿り直したいんだ」
佐倉 光
「色々あったもんな!
その時は忙しくて話せなかった事もいっぱいあるしさ!」
牧志 浩太
「ああ。そうだ、佐倉さん」
佐倉 光
「ん?」
牧志 浩太
「俺、また一度実家に帰ってこようと思うよ。探したいものが、色々あるんだ。あと……、今の俺のこと、家族にもちゃんと話してこようと思う」
佐倉 光
「そっか、色々見つかるといいな!」
牧志 浩太
牧志くんの家は仏間に遺影があるタイプのお家だと思います。
第一部と第二部の間に実家に帰ってるイメージです。>牧志くん
牧志 浩太
「ああ。
今なら、ちゃんと懐かしく感じられそうだ」
失ったものは戻らない。それでも、一番大事なものだけ拾えたから、きっと。大丈夫だと思えた。
佐倉 光
「家か……」
少し、羨ましいと思う。
「俺もお前の話いろいろ聞きたい。
今回、ずっと話してたのに、結局何も同じモン見てねぇだろ」
彼が何を得て、こんな晴れやかになっているかすら、実は良くわからないのだ。
牧志 浩太
「話すよ、俺が見たもののこと。あー、でも先輩のプライベートも混じってるな、最後の方……」
佐倉 光
そんな真面目な物言いが急に嬉しく思えて
佐倉は高らかに笑った。
牧志 浩太
つられるように、笑った。


■END-E
対の棲みか(ついのすみか)


KP
どうもありがとうございました!
牧志 浩太
ありがとうございました! 第一部・完!
次回からは第二部、はっじまっるよー!
佐倉 光
はっじまっるよー
KP
ではまず忘れないうちに報酬提示だよ!
牧志 浩太
おおっとそれは大事!
報酬・成長
◎報酬
・生還→1D10+10
・生還→<夢の【知識】5%(※初期値は〈クトゥルフ神話技能〉の半分)
・生還→「自分の作り出した理想の自分」との融合を果たしたため、PC自身の気に入らないところ(ステータスや正気度、設定上の個人的な不都合など)や後遺症などを修正できてもよい。KP・PLで話し合って任意に定めてよいし、「結局自分自身が考え出したものにすぎないので影響力はない」としてこのボーナスを採用しなくてもよい。


・まだダオロスの叡智ボーナスを行使していない場合→技能値1点以上と〈クトゥルフ神話技能〉1点以上を得る。値は探索中提示されたルールに則って自由に決めえてよい。
佐倉 光
ダオロスの叡智かー
牧志の記憶封印してやろうかな
牧志 浩太
「え、それは困る。やるなら力ずくで阻止する!」【STR】11
佐倉 光
ケンカになったら勝てないんだよなー
牧志 浩太
【DEX】はどっこいどっこいなんですけどね。牧志くんの方が【STR】/【CON】が高いんだよな。
佐倉 光
冗談はさておき、とりあえず正気度報酬ふっとこうかな。
1D10+10 (1D10+10) > 7[7]+10 > 17
牧志 浩太
1d10+10 (1D10+10) > 10[10]+10 > 20
佐倉 光
おおー
牧志 浩太
!? やる気だ
佐倉 光
夢の力凄い
[ 佐倉 光 ] SAN : 57 → 74
牧志 浩太
牧志くん、たまにダイス目に意地を出しますね?
[ 牧志 浩太 ] SAN : 45 → 65
佐倉 光
大体問題ない数値まで戻ったね
牧志 浩太
ですねっていうか、初期値66でスタートして65まで戻すの意地では?
佐倉 光
こちらもほぼ初期値かな?
牧志 浩太
これが二人の帰るという気持ちかぁ
KP
まあこの二人ならこのエンドだろうと思っていたよ……
ダオロスの叡智どうするかなぁ……
もらわない、というのも手だけど、それも佐倉っぽくはない気がするし
牧志 浩太
佐倉くんは貰って帰りそう。
牧志くんは「彼はあちらを選ばなかった」とすれば受け取らないで帰るのもありだし、「今回の旅の軌跡」とすれば受け取るのもアリだしでめちゃ迷う
今回の二人の旅のおみやげだもん持って帰りたいよぉ という気持ちもだいぶんある
KP
悩むなぁ……
うーん、今回の事で心や精神について興味を持ったって事で、〈精神分析〉ちょっともらっとくかなぁ?
ほぼフレーバーだけど。
牧志 浩太
お、いいと思います。

牧志 浩太
あ、とりあえず普通の成長判定振ろう
KP
どうぞどうぞ
こっちはSANでファンブル出しただけだったな。
牧志 浩太
CCB<=70 〈歴史〉成長判定ー (1D100<=70) > 78 > 失敗
1d10 (1D10) > 9
!? 79 驚き やっぱり自分の歴史の始まりを取り戻したからかなぁ
CCB<=25 〈水泳〉成長ロール (1D100<=25) > 9 > 成功
こっちは伸びなかった!

牧志 浩太
牧志くんどうしようかなぁ。〈電子工学〉/〈機械修理〉/〈電気修理〉には絶対入れないだろうし、かといって持ってない技能新規で増やしても有為な値にすると〈神話技能〉がえらいことになるんですよね。
KP
もともとちょい高めだもんね。
牧志 浩太
なんですよね。
佐倉 光
〈精神分析〉16もらって、〈神話技能〉8もらっとこ。
今回の事でいろいろ神話系の【知識】も得ただろうから、その演出兼ねて。
「神の【知識】っていうにはちょいショボいけど……
詰め込み勉強なんて身にならねぇしな」
牧志 浩太
「確かにな」
佐倉くんは積極的に行使してたし、ドリームランドのことも大量に調べましたもんね。
佐倉 光
なにげにアザトースの事までついでに調べてるからな。
あまり詳しく書いてなかったのか、《SANチェック》も〈神話技能〉も入らなかったけど。
牧志 浩太
ですねぇ。マイルド仕様だったのかもしれない。>アザトースの事
KP
いやあ楽しかったなー!
ありがとうございました!
牧志 浩太
ありがとうございました!
ほんとにほんとにほんとに楽しかったです

エンディング分岐
KP
それじゃ疑問点色々簡単に消化しておきましょうかっ
夜も遅いし簡単に!!
牧志 浩太
ですね! エンディング何があったかもぜひ!
KP
エンディングはですねー
■END-A:暗点の記(あんてんのき)
【条件】アザトースのもとにたどり着いてしまう
KP
大ダメージくらって、一応生還しますがバーで穏やかに乾杯なんて雰囲気じゃないし、カトゥリアにもいけません。
ぎりぎりのところで神様の加護で逃げおおせる感じですね。
あと普通に諦めると二人して永遠の舞踏して終わり。
これの可能性はあったからちょっとどきどきした。
牧志 浩太
なるほどなるほど。そうなる条件はなんだったんでしょう?
KP
最後の追跡で3連続失敗する、です。
あの追跡判定、佐倉の判定値を加算して3度まで判定できます。
だから〈ナビゲート〉でも佐倉がコケなければ50%まではいくのかな?
牧志 浩太
なるほど!
でもあのイベントの後に〈天文学〉での判定をOKしてもらえたのは、らしくてよかったなぁ
KP
〈天文学〉はOKにしようと思ってた。
だって持ってるものは、つかわなきゃ!
でもさすがに言葉で伝える事を考慮して難易度上げても良かったなって反省しました。ちょっぴり。
牧志 浩太
そうしたらしたでダイスが大暴れしてたかもしれませんし……
SANはそこそこあったから生還する可能性はあったけど、アザトースという「真実」を目の当たりにしてしまった二人のその後やいかに、ですねぇ。もはや素直に日常には戻れなさそう。>END-A(アザトースEND)
KP
震えながらベッドで抱き合ってエンドだからちょっとシマらなさ過ぎる。
■END-B:暗転の終(あんてんのつい)
【条件】カトゥリア・ナルグ川の水を飲まず、カトゥリアに留まる
KP
人間に許されないことしちゃうので両ロストです。
牧志 浩太
「だめです」されちゃった
KP
闇の中にほっぽり出されて永遠にそのままです。
■END-C:終の棲家(ついのすみか)
【条件】カトゥリア・ナルグ川の水を飲み、カトゥリアに留まる
KP
人間じゃなくなっちゃうけどまあ二人とも幸せでいいんじゃない?
両ロスト。
PCによってはこういうエンドを選ぶ人たちもいそう。
牧志 浩太
それはそれで、穏やかで美しいエンディングではあるんですよね。手に手をとりあって、もうどちらを失うこともない未来を選ぶ、っていう。
■END-D:終の澄か(ついのすみか)
【条件】カトゥリア・ナルグ川の水を飲み、記憶喪失になった状態で帰る
KP
記憶を失って戻ります。
一応生還。
牧志 浩太
また記憶がなくなっちゃう!
KP
まあ佐倉はそのまま帰る、以外ないな……
牧志 浩太
ほとんどカトゥリアでの分岐だったんですね。
牧志くんも、夢を思い出していたからなぁ。本編中で言った通り、あの場所に「牧志くんのやりたいこと」はない、んですよね。
KP
第三話はぶっちゃけ、アイテム集める以外なんもないですからね。

盛々
牧志 浩太
☆なんだったんですか?
KP
要は時間で優位に立てるので、追跡判定に☆一個ごとに+10入るのです。
牧志 浩太
ああ~、なるほど! 星ってそういうこと!
てっきりエンディング分岐でなんかあるのかと。
KP
☆なしで〈ナビゲート〉初期値だったら、KPCが補助判定全成功しても40までしか行かないからそこそこきつい。
牧志 浩太
ですねぇ。
KP
第三話、これ資料がないとペラッペラの話になるなぁと思ってるるぶ買ったんですよね。
結果的に良かった。
牧志 浩太
ですねー! 描写がとても分厚くて楽しかった ありがとうございます
KP
記憶ねじ込みも上手く使っていただけたし!
牧志 浩太
佐倉くんと一緒に大冒険ができた!
あと記憶とユキちゃんのこともめちゃめちゃ盛ってくれてありがとうございます あの記憶のおかげで第一部完ができました。
KP
良かった良かった……
思いつきでゴリゴリねじ込んだの美しく作ってもらえてホント良かった。
牧志 浩太
あれほんとに活用させてもらいました よかった 楽しかった
牧志くんが牧志くんになる旅の終わりができたの、記憶シーンのおかげです
KP
闇牧志も見られたし、大変眼福でございました……
あれ、単にほぼ混ざって相手の事が良くわかるなぁってだけのシーンだったからなぁ。
牧志 浩太
あれは新表情ありがとうございましたいやぁ楽しかった
佐倉くんを殴って折ってボコボコにした感触をまざまざと思い出してしまって、後で少し顔を青くしているでしょうね。
牧志くんが絶対にしない表情 が大活躍した。
KP
結構描写的に酷い事になってますからね
殴って破壊しても何故か戻ってるというホラー。
牧志 浩太
そしてそれに怯えて余計に手酷く破壊しようとするという。
佐倉 光
再生しながら恨み言を言うって完全にホラーの悪霊ムーブじゃん。
牧志 浩太
でもあのシーンの佐倉くんは最高にかっこよかった。
佐倉 光
二人で蟲にパンチできてすっきりしたなぁ。
牧志 浩太
ですねー!
牧志くんが「くたばれ」って言った
佐倉 光
多分佐倉あとで思い出して大笑いしてる。
牧志 浩太
人生初くたばれな気がする。
佐倉 光
今回の話で、佐倉は完璧に牧志を信頼したね。
牧志 浩太
ですね。信頼しきれずにすれ違っていた所から、ちゃんと「友達」になったんだなぁ。
佐倉 光
強かさと、意志の強さと、諦めの悪さを知ったから、ただただ巻き込む事への恐怖ってのはなくなったと思う。
牧志 浩太
ひとしく他者であるからこそ、共に支え合えるようになったわけですね。
佐倉 光
というか、そう、「牧志は俺よりも強い部分がある」って認めた。
そう、支え合える存在として認識した。
牧志 浩太
あ~~~~
「一般人だから」「記憶に振り回されてる」って所からスタートして、「牧志くんの」強さを認めたわけだ。波照間のじゃなくて。

佐倉 光
そうそう、途中の〈聞き耳〉ね。
成功したら「後悔にはしねぇよ」ってのが聞こえてました。
まあ後で答え言った気がするけど。
牧志 浩太
ああ~~~!
佐倉 光
解決できなかったら後悔になる。
けど乗り越えれば後悔にはならない。
牧志 浩太
「後悔にしない」かぁ……。

理想の自分ボーナス
牧志 浩太
あ、理想の自分ボーナス、PL的には30~40のフレーバー技能多すぎるとか、オカルトないとか、リビルドしたいポイントいっぱいあるんですけど、牧志くんに「理想の自分」って別になくない? っていうことでこのまま行きます。
今の自分への肯定があまりにも強いんだもの、牧志くん。
佐倉 光
はーい。
じゃあ、取り戻した記憶がボーナスって事でいいんじゃないかな?
牧志 浩太
お、それはいいですね。
佐倉 光
確かになぁ……
あんまり理想の姿って想像つかないなとは思った。
牧志 浩太
そうなんですよね。ほとんどの記憶を失った自分を肯定できるくらいだもの。
佐倉 光
つよい。
牧志 浩太
そう、それは強いんですよ。
85%の記憶を失って、あったはずの夢も忘れてしまって、そこに他人の記憶を詰め込まれて、一度も嘆いていないし否定してない、それどころかあの一日の記憶を「捨てたくない」なんて言う。
佐倉 光
強すぎるんだよ本当に……
誰より強靱な探索者だったじゃないか牧志浩太。
牧志 浩太
あと今回、恐怖が残っても虚ろになってしまっても結局、一度も背を向けませんでしたね、牧志くん。
佐倉 光
博士も見る目ねぇな!
牧志 浩太
それな!
佐倉 光
そう、一度ぐらい心閉ざし使うかなと思ったけど、なかったなー
折角だからラストバトルで使ってみたけど。
牧志 浩太
なかったですねぇ。ラストバトルのあの使い方は最高にかっこよかった
牧志くんと繋がってたら不意討ちできませんもんね。
佐倉 光
そう、不意打ちじゃないと倒せない。
一回殴り合ってそれは知っているから。
牧志 浩太
そうそう。あの使い方はめちゃくちゃかっこよかった。

理想ボーナス
牧志 浩太
あそうだ、じゃあ取り戻した記憶ボーナスっていうことで、〈機械修理〉〈水泳〉になにかプラスいただいてもいいですか? >理想の自分ボーナス
KP
どうぞどうぞ
〈水泳〉かー
具体的に何ポイント、みたいなのはないんだよね。
牧志 浩太
なんですよね。>具体的に
〈天文学〉も考えたけど最初から高いし、そうなると〈水泳〉かなって。
水泳クリティカルで☆取って、追跡判定を天文学で成功して、なんだかんだで波照間の記憶がすごく彼を助けている。
KP
さすがに代償なしだから、それぞれに1d10振れるとかでいかがか。
牧志 浩太
ですね。それで。
1d10 〈機械修理〉ー (1D10) > 1
1d10 〈水泳〉ー (1D10) > 9
KP
Oh
海強い。
牧志 浩太
海強かった。
KP
これもノーデンス様のご加護か。
牧志 浩太
その可能性はある。
爺ちゃんの分も皇津様にお礼を言えましたしね。加護かも。
KP
〈機械修理〉1か……しかしそれが爺ちゃんからもらった1と思えば、数値以上の価値がデスネ!
牧志 浩太
ですね!
それ以上は牧志くんが自分の手で伸ばしていけってことかもしれない。
KP
なるほどおじいちゃん厳しい。
牧志 浩太
爺ちゃんは自分の夢を孫に押しつけたくはなくて、具体的には語らなかったんだと思います。
KP
なるほどなぁー。
ツールとお守りだけ渡して、あとは自分で見つけて歩んでゆけと。
牧志 浩太
そうそう。
KP
必要な知識はきっといっぱいくれてただろうし。
牧志 浩太
牧志くんに「自分で見つけろよ」って言った弟は、その姿を見てたのかもしれませんね。牧志くんと年近いし。
KP
なるほど……おじいさんの言葉だったんだ。
そんな大事な言葉も忘れたお兄ちゃんに、腹を立てていたのかも知れないなぁ。
牧志 浩太
でしょうねぇ。腹を立てていたし、愕然としていたと思います。
ちゃんとそれを思い出して、自分の現状もちゃんと打ち明けたら、驚くだろうけど初めて打ち解けて話せるんじゃないかな。
KP
牧志君が家族にちゃんと自分の事情話すのも、結構大きそう。
牧志 浩太
そうそう。ようやく心を許したってことですからね。それまではきっと、ずっと遠かった。
KP
二人とも大きく成長したなぁ……
牧志 浩太
牧志くんの「心配をかけたくない」も、佐倉くんの「巻き込みたくない」もある種の遠さだったけど。
いや、本当に、大きく成長したなぁ…… ありがとうございます……。
家族の件までここまでの変化が出るとは思わなかった。
KP
良いセッションでございました……
本当に良かった。
牧志 浩太
本当に本当にすごく良いセッションでした。



CoC【ワンナイ卓】収録シナリオ『Escapeghost ~七匹の仔山羊からの脱出~』 佐倉&牧志 3

越えちまったらもう終わりなんだ。
俺達は生き残らなきゃならない。
同情はしてやらない。

【置】CoC『スペクト・ラム』 佐倉&牧志 2

大事な親友の牧志。
とびきり良いマグネタイト、血液、精神力、最高の生け贄体質。
便利な奴だ。使わない手はない。

CoC『静寂舞手』佐倉&牧志 12

「ああ。俺達は戦友だ」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


ゆうやけこやけ 第八話『ふたりの娘』の一

はじまり

真・女神転生 TRPG 魔都東京20XX 第二部 東京侵食 第二話 1

イケニエ

マモノスクランブル『ミス・ミスフォーチュン』 1

「でもこの呪い痛くないやつだよ。よかったね~」
「じわじわ死ぬけどな」
「死にたくない。普通に」