こちらには
『対の棲みか』
『地獄はやさしい』
『鱗の眼』
ネタバレがあります。

佐倉の視点を追加しました。
このリプレイには、本シナリオのほか、『地獄はやさしい』『鱗の眼』のネタバレが含まれます。
本編見る!
■佐倉視点
KP
あなたは強い疲労と空腹に苛まれている。
佐倉 光
そういえば昨日の夜から結構忙しかったし、食事なんかしている場合じゃなかった。
KP
あなたが普段あまり体を使っていないせいもあるだろう。
明らかに限界を超えているのに気づけなかった。
体はだるく、頭がぼんやりする。時折意識が消し飛ぶ。
佐倉 光
休めるような気分でもない。今は進む事しか考えられない。

KP
どれだけの時間が過ぎただろうか。
長い鍾乳洞を駆け続ける佐倉の口数が少なくなってきた。
牧志 浩太
「佐倉さん?」
口数が減る度に、何度も呼びかけるだろう。その声には不安そうな、縋るような響きがあった。
佐倉 光
「おっと……
悪い、頭が働かなくなってきてて」
KP
彼は言いながら、再び柱状のものにぶつかりかける。
飛び始めた頃は軽いため息だったものが、深く、長いものになっているのに気付くかも知れない。
牧志 浩太
「眠いのか? 休憩、取るか?」
■佐倉視点
KP
牧志の声は冷静だ。ちょうどいつものあなたのようだと感じるかも知れない。
こういう時に真っ先に休憩を言い出すのは、あなただったはずだ。
佐倉 光
分かってるんだよ、そんな事は。
そんな場合じゃないんだ。

佐倉 光
「……くそっ」
KP
強い、焦燥と怒りがない交ぜになった感情が流れてくる。
絶え間なく渦巻く迷い。
手足は氷のように冷たく、空腹と眠気が体を重くする。
牧志 浩太
「ごめん。焦らせてるのは、俺だな。でも、今の佐倉さんは少しまずい気がする」
それを否定したくなくて、繰り返し言葉を選ぶ。自分の心から焦りが── 消えてしまっていて、急ぐべきなのかどうか、出来事でしか判断できない。でも、冷たく聞こえさせたくはなかった。
佐倉 光
「……そうだな、今の俺は、限界超えてる。
そろそろ休まないと、ヤバい……そうだな。
ここから先休めそうな場所は、あまりない……
休むべき、なんだな……くそっ。
そんな時間、あるかよ……」
■佐倉視点
佐倉 光
もし間に合わなかったら、犠牲になるのは牧志だ。
そのことが恐ろしくてたまらない。

牧志 浩太
「今のうちに、休んでおこう。高速道路とかを運転する時と一緒だ、休める時に休んでおかないと、事故る、と思う……」
佐倉 光
「ああ、そうだ、確かに、俺は焦ってるな。
冷静に判断できてない。
今休まないと命取りだ」
自分に言い聞かせるように繰り返し、繰り返し、呟きながら速度を落とす。
牧志 浩太
「それに、最後にあいつをなんとかしないといけない、だから……、」
佐倉が速度を落としたとき、困惑のような恐怖のような、祈り、のような、微かな感情が流れてくるだろう。
佐倉 光
「そうだ、あいつを何とかするためにも、体力が要る」
■佐倉視点
佐倉 光
黒い水が視界にない場所を探す。
KP
幸い、休むに丁度良さそうな地形はあった。ここに害のある生物はいないように見える。
ただ、すさまじく寒い。
佐倉 光
飛んで風を受けているよりはマシだろう。

KP
その足が地面につき、それから数歩よろよろと歩く。
佐倉はくしゃみをして震えた。
牧志 浩太
「うん……、そうだ」
揺らめくように霧がかるように伝わってくるその感情は、迷い、だった。
自分が信じられない、そんな迷い。
その筈、と微かに呟いた。
KP
ふう、とついた息も震えている。彼はそのまま座り込んだようで、尻と背中から冷気が立ち上ってくる。
佐倉 光
「ああ、お前は間違ってない……
大丈夫だ、間違ってない……」
その言葉は、牧志に言い聞かせるようでもあり、自分に言い聞かせるようでもあった。
■佐倉視点
佐倉 光
間違っていないなんてどうして分かる。ここで休んだせいで間に合わなかったらどうする。

牧志 浩太
「……」
誤魔化すように、麦茶のカップを電子レンジに突っ込む。1分弱程温めて啜った。温かいという感覚が伝わればいいんだが。
■佐倉視点
KP
わずかだが、指、それから喉から腹に暖かさが伝わる。それは実際の熱以上に身に染みるだろう。

KP
佐倉はまた浅く息をついた。
佐倉 光
「お茶か、暖かいな……」
牧志 浩太
「ああ、伝わったのか、よかった」
佐倉 光
「俺も少し、食事をする……
うっかり寝てたら、声をかけて起こしてくれ……」
牧志 浩太
「うん、そうしよう。そういえば俺も食べてない、何か……。分かった、目覚まし代わりになるよ」数度ふらついて肩をぶつけながら、棚を探る。
KP
あなたの買い置きはきちんと棚に収めてあった。
一人暮らしの備えとして、病気の時に簡単に食べられそうなものも少しは揃っている。
KP
そういうのちゃんとしてそうなイメージ。
牧志 浩太
牧志と波照間、どちらもちゃんとしてそうなイメージありますね。割と。
牧志 浩太
「あった……」ゼリー飲料やら、レトルトのお粥やら、それからカップそば。あと、厚めの鰹節。これに湯を注いで飲むと美味しい。
■佐倉視点
KP
空腹だというのに、いまのあなたには食欲がない。疲れすぎていてものを食べる事ですら億劫だ。
佐倉 光
神官が用意してくれた美味しそうな弁当も、今は見たくない。
それでも何かは腹に入れるべきだと思えたので、林檎をひとつ少しずつかじる。
KP
爽やかな甘さが、ほんの少しだが活力をくれた。
喋る気力はまだある。
佐倉 光
黙るわけにはいかない。この会話は命綱に等しい。

KP
佐倉は何か甘い物を食べながら、それが林檎だという。
爽やかな酸味と甘さが伝わってくる。
佐倉 光
「もう少し、体を鍛えておくんだった。
飯を持たせてもらったのに、食べるのもきつい」
牧志 浩太
「こうなるとは思わなかったもんな。俺も、もう少し体を鍛えてたらよかったかなって、ずっと思ってる」ふわり、とお湯と鰹節の香りがした。
佐倉 光
「……
鰹節か、久しぶりに嗅いだな」
牧志 浩太
「お湯入れて飲むと美味しいんだ。味噌があるともっといいんだけど、取り回しが面倒で」
KP
ワカルゥ
牧志 浩太
それからレトルトのお粥を開封。玉子粥のやさしい味が美味しい。
佐倉 光
「……いい匂いだ。匂いだけでも元気って出るもんなんだな」
牧志 浩太
「……よかった」
佐倉 光
「俺に、あいつみたいな体があれば、こんな、飯食う事もできないほどヘロヘロになったりしなかっただろうな」
■佐倉視点
佐倉 光
自分がああだったら、ふと思った。
何故か、願えば叶うような気もした。
だが、疲労困憊の思考は纏まらない。

牧志 浩太
「でも、ええと……、なんだろうな。佐倉さんが」言葉を探すように、数度言いよどんだ。
佐倉 光
「なんだ……?」
KP
問いかける言葉には力がない。
牧志 浩太
「今は、こんな状況だけどさ。体を鍛えるんじゃなくて、ずっとそうしてきたから、佐倉さん、あれだけ強かったんだよ。
ええと、何言ってるか分からないな。佐倉さんは強かった。佐倉さんは、強い」
自分でも少し混乱したように、訴えかけたいことを探している。
佐倉 光
「何だよ、それ……」
自虐的な言葉を口に上らせかけ、やめた。
牧志 浩太
「だってそうだったから、何度も窮地を突破してこれただろう。本当にまずい時に、踏み止まってくれたんだ。佐倉さんと、佐倉さんの仲間達が」
佐倉 光
「悪魔使いは引き際が肝心……か」
■佐倉視点
佐倉 光
踏みとどまるには、引き際を見極めなければならない。
早すぎれば損をする。遅すぎれば命取りだ。
今回は明らかに遅すぎた。踏みとどまる力も逃げる力も残っていない。明らかに判断ミスだ。らしくない。

牧志 浩太
「だから、たぶん、そういうこと……。佐倉さん、退かないでいてくれた。
だめだな、何が言いたいのかは分かるのに、何を言っているのか分からない」少し眼を伏せた。
佐倉 光
「いや……
ありがとう、俺にも良くわからないけど、元気は出た」
牧志 浩太
「そうか、……ならよかった」少し緩むように、伝わってきたのは温かさだった。
牧志 浩太
波照間「ぶっちゃけた所、リソースの大きさが段違いなんだ。佐倉さんと僕は」
■佐倉視点
佐倉 光
少しでも体力を回復するため、目を閉じて情報を遮断する。
KP
すみやかに魔法にかけられたかのような睡魔が襲ってくる。
目を開く事ができない。
佐倉 光
駄目だ、本当に眠るわけにはいかない。牧志を一人にするわけにはいかない。
KP
眠ってはいけない。思うほどに疲労は全身にのしかかる。ぷつりと意識が途切れる。

KP
佐倉は目を閉じて体を縮めている。
うとうとし始めたのが感じられたかもしれない。
牧志 浩太
「……」一緒に寝る訳にはいかない。もし眠ってしまったり、また何かに引き込まれた時のためにと、スマホの目覚ましをセットする。
KP
寝息が聞こえた。
牧志 浩太
時折手が止まりながら、レトルトのお粥をなんとか完食して、長い息を吐く。……こちらも身体が怠い。
少し自分が混乱してきているのを感じる。頭の中に、雑多な感情が── いや、これは記憶の再生だ。感情ごと再生される記憶が思考をすこし、混乱させる。
それでも、さっき何を伝えたかったかとか、そんな意志だけは残っているから、大丈夫だろうと信じた。



【遠い記憶】猫


不意に、頬に温かい小さな湿った物が触れた。
少しざらりとしたそれは、小さな肉食獣の、あなたの小さな友人の舌だ。

これは、想い出だ。
辛うじてあなたは理解する。

温かい舌があなたの顔をもう一度舐め、ふわふわと温かい毛皮が擦り付けられる。
慰めるように、元気づけるように、何かを要求するように、獣はあなたにすり寄る。
牧志 浩太
ふと、目を開いた。
KP
「にゃあ」
小さな猫はあなたをまっすぐに見上げて鳴いた。
長い尾をあなたの足に絡ませて、体をすり寄せる。
牧志 浩太
柔らかくて温かな毛皮は、ずっと傍らにいてくれた小さな友人のものだった。あの出来事があった時も、自分が混乱している時も、ずっと。

屈んで、その毛皮をやさしく撫でる。
KP
猫は自らの耳をあなたの指にこすりつけ、ミィ、と声を漏らした。
喉が鳴る。
あなたへの強い信頼と安心が伝わってくる。
きおくのつかいかた
牧志 浩太
これが誰の記憶かはこちらで決めちゃっていい感じですか?
KP
もちろん
ただの幻だった、夢だった事にしてしまうのも自由ですよ。
いつ、誰の思い出かはKPしらなーい
このシーンの意図。「ねこはいます」

牧志 浩太
少しくすぐったく感じて笑う。自分の笑い声と猫の声が、気持ちを落ち着けてくれるようだった。
「ありがと、大丈夫だよ、」猫を抱き上げる。
その毛並みはふくふくと丸くて黒かった。海の色を映すような青い子猫の眼が、こちらを見ていた、

その毛並みは少し痩せていて白かった。雪の中に紛れてしまったら分からないような、たよりなくてやさしい形が、こちらを向いていた。
KP
猫は短く鳴いた。
こういう時だけは、いつものようにふいといなくならないで、あなたの側にいてくれる。
牧志 浩太
ふたつの猫の姿がだぶって見えた。少し気弱になった自分が、そのやさしい友人の温もりをたどる。
KP
二匹の目がじっとあなたを見つめる。
その姿は違えども、宿っている感情は同じに見えた。
牧志 浩太
「大丈夫。そうだ、聞いてよ。僕、お兄ちゃんになったんだ」
黒猫の背を撫でて、穏やかな雰囲気に身をあずける。
遠くから父さんが僕を呼ぶ声が聞こえたけど、もう少しこうしていたかった。
KP
猫はゆっくり、「ナァーオ」と鳴いた。
まるで人間の言葉が分かっていて、優しく促しているかのようだ。
牧志 浩太
「いいやつだな、まるで僕の言うことが分かってるみたい。なぁナガグツ、聞いてよ。すごく小っちゃくて、いなくなっちゃいそうだった。顔をくしゃくしゃにして泣くんだよ。ちょっと宇宙人みたいだった。
にーにーだよ、僕。父さんやおじぃから見たらぼうずーなのに」その言葉はまだ対話ではなく、ひとりごとに過ぎなかった。それでも猫はきっと、その言葉をちゃんと聞いていただろう。
KP
猫は首をかしげている。
興味深そうに聞いている、ように見えたかも知れない。
KP
ナガグツ!?
お前こんな所に。
宇宙人だの長靴だの……これは彼の記憶ッ!
『ナガグツ』……佐倉が悪魔使いになった時、初めて得た仲魔が魔獣ケットシーという黒猫の悪魔だった。佐倉は彼が長靴を履いた猫のような姿をしていたため、勝手にナガグツと呼んでいた。
牧志 浩太
「お前、いもうとって知ってる? いもうとだよ、あのちっちゃなのが、僕の……」手を伸ばして猫の頬を引き寄せようとしたとき、その横顔は── 雪のように白い毛並みの猫になっていた。
数度、眼を瞬く。
自分より少し小さな弟が、寝転んでいる猫と自分を見下ろしていた。
KP
まん丸な目を訳知り顔に細め、猫はまたゆっくりと鳴いた。
二匹
KP
つまり、波照間さんが子供の頃に飼ってたニャンコは白い子で、牧志君が飼ってる子は黒いんですな。
ご存命かな黒い子。
牧志 浩太
あ、すみません逆です。ややこしくて失礼しました。
波照間が飼ってた猫が黒い子猫(ナガグツ)で、牧志くんとこの猫が少し痩せた白猫ですね。
KP
なるほど。
あ、目が海の色、
毛並みが雪の色 か。なるほど。
牧志 浩太
海の色の目をした黒猫と、雪の色の毛並みをした白猫の二匹ですね。
分かりづらくてすみません、ちょっと文章整理します!!
なおしました!!
KP
あ、すみません。

KP
暖かな日差しの下、最高の場所で寝転ぶ一人と一匹。
牧志 浩太
「あにき、かーちゃんが料理の支度手伝えって」膝小僧にいくつも擦り傷を作った、やんちゃな弟が言う。そのとき自分がどう返したのか分かる前に、周囲の風景は温かな陽射しに白く染まっていく。
KP
白い霧の中に姿が消えても、その瞳だけがずっとあなたを見ていた。
牧志 浩太
二つにだぶる声と風景。その中でも、ずっとこちらを見てくれている眼のやさしさだけは、同じだった。

■佐倉視点
KP
唐突にあなたは、眠ってしまっていた事に気付く。
佐倉 光
慌てて牧志に声をかける。持って行かれてしまってはいないか。
KP
彼はまた何かを見ているらしくぼんやりととしている。
佐倉 光
一抹の不安と後悔を……いや、後悔しても仕方ない。その感情を横に置いて洞窟を進む。
KP
幸い牧志は安定しており、安らいでいるような雰囲気だ。
またあなた自身も睡眠と食事を取ったためか体力が少し戻っており、まっとうに腹が減っている。
佐倉 光
目的地はタールみたいな水の海だ。とするとここの黒い水と繋がっている可能性が高い。黒い水を追って進みつつ、袋から弁当を出して食べる。
KP
干し肉と乾パンのようなものは、極上の味がする。一口ごとに力が涌いてくる心地だ。

急に視界が開け、一面、べたつくタールのような物質をたたえた広大な海に出た。
目的の水はここのものの筈だ。
佐倉 光
タンカー船がぶっ壊れたみたいになってるな……



瀝青(れきせい)の海


佐倉の感覚を通じ、眼下に重たい何かの気配を感じる。
気温は少し上がったようだが、味がするほどのねっとりと凝った大気を感じる。
服にしみ込んだ汗までもが、粘性の液体に変じてしまったのではないかと思わされる。
佐倉 光
「牧志、牧志?
起きてるか?」
牧志 浩太
「…………ああ、ごめん、佐倉さん。こちらが寝ていたか……、」
数度眼をまたたき、ぼんやりと感覚を合わせる。
佐倉 光
「大丈夫か、牧志」
その言葉に安堵が混じる。
「うっかりちょっと長く寝ちまったけど……あいつの方は進んでないか?」
牧志 浩太
「大丈夫、だと思う。ただそれは分からない、今度はあいつの様子は見えなかった」
佐倉 光
「なんか気持ちよさそうに寝ていた……みたいだったから」
KP
喋りながら、佐倉は何かを噛みしめる。
じわりと肉の味が広がった。
牧志 浩太
「そうか、それならそうなんだろうと思う。猫の夢を見ていたんだ」
佐倉 光
「猫……?」
牧志 浩太
「ああ、二匹の猫の夢。ただの夢かもしれないけど、なんとなく覚えがある気もするな」
佐倉 光
「もしかすると、それも記憶か?
お前あの時随分猫の扱い慣れてる感じだったもんなぁ……飼ってたのか」
牧志 浩太
「そうだったか? 随分昔の事だけど、忘れていないものなんだな」
少しその声は平坦になっていた。焦りやもどかしさも去って、静かな声。
KP
先ほどまでとは比べものにならないほど、佐倉の声と雰囲気には力が宿っている。
牧志 浩太
その力を取り戻した様子に、微かに安堵だけを感じた。安堵というよりも、よかった、という、素直な喜びだったか。
「ああ、飼ってた。黒い子猫で……、ああ、そうだ。ナガグツって名前だったな」言いながら自分で少し笑ったような、そんな声。
「いや、白いお婆さん猫だった気もするな……?」
佐倉 光
「ナガグツぅ!?
ああ、うん? ああそうか、二人分の記憶、か。
にしてもナガグツって……」
■佐倉視点
佐倉 光
生意気な仲魔のことを思い出すと同時、牧志の言葉に不安を感じた。
彼は彼自身の思い出を語っていない気がする。

牧志 浩太
「……ああ、そうなのか……? そうか、何かおかしいと思ったら、そういうことか」
少し視線をさまよわせた。
佐倉 光
「……
言いにくいけど……大分やられている感じがする」
牧志 浩太
「それは、困ったな……。そうか、やられているのか」
佐倉 光
「お前は牧志浩太。大学生。底抜けのお人好しで、波照間さんの後輩。
あと、なんか工具がすげー好き。それから猫が好き。えーと。
ちゃんと覚えてるか?」
牧志 浩太
数度手を握り、また開く。室内にある物を見回したような、そんな気配がした。それから、縋るように一度、工具箱を手に取って── その瞬間ふらりと手が滑って、激しい音。

工具箱を落としてしまったようだ。
佐倉 光
「数学パズルの新作も……あっ、おい大丈夫か?」
牧志 浩太
「ああ、ごめん、落とした……」床に散らばった工具を見て一度ためらい、それから大切そうに工具を拾い上げて、同じ箱に収める。棚の上に置くのは諦めて、テーブルの上に置く。
工具の持ち手に巻かれたテープを、確かめるように見ていた。
「……これ、本当に俺の名前だったかな」ぽつり、と一言。
■佐倉視点
KP
おそらくあの日にあなたが灰の中から掘りだした工具箱だろうと気付いて良い。
佐倉 光
その時ラベルは目撃したはずだ。

佐倉 光
「え? 書いてあっただろ、牧志って」
牧志 浩太
「ああ……。“K. Makishi” ……」
佐倉 光
「お前の名前じゃないか、しっかりしてくれ」
牧志 浩太
「そう、だったかな……」

牧志 浩太
メッチャ分かりづらいのでPL補足。
牧志くんはどさくさに、工具に書かれた名前が自分の名前ではなかった(祖父の名前だった)ことを思い出しかけています。
佐倉くんに大いに誤解を招く発言なのは、PLは承知の上。>表
KP
大丈夫、KP分かってて誤解してる!

■佐倉視点
KP
目視ではなんとなく水が濃そうな場所に来た。
佐倉 光
これは鬼火と違う意味で触りたくねえ。

佐倉 光
「……くそ、ここらでいいか?」
KP
佐倉は水面で足を止める。
佐倉 光
「このべったべたの水の、一番濃いところを……」
KP
☆▶〈水泳〉〈博物学〉〈化学〉などで補助判定。
〈水泳〉? こんなタールの海を泳げって!?
判定
佐倉 光
CCB<=25 〈水泳〉 (1D100<=25) > 69 > 失敗
無理だよ……
牧志 浩太
CCB<=25 〈水泳〉 (1D100<=25) > 3 > 決定的成功/スペシャル
佐倉 光
わぁ!
牧志 浩太
なんか超がんばったけど佐倉くんが失敗してるぅ
KP
え、クリティカルか。
牧志 浩太
クリティカルですね。
KP
じゃあ両成功として扱おう。
牧志 浩太
やったー! ありがとうございます
KP
(つまりファンブルだったら……ってことでもあるけど)
牧志 浩太
(ですねー)
system
[ 佐倉 光 ] ☆ : 0 → 1

KP
波照間さんの記憶が力を貸してくれたのかも知れない。(牧志が水泳でクリティカル)
KP
あなたは何故か、その海の一番濃い部分を瞬時に感じ取る事ができた。
牧志 浩太
底なしに引きずり込むような見渡す限りの瀝青の海の中、どうしてか僕は、それを海だと認識した。海ならどんな風に流れて、どのように淀むか。どこに流れが集まるか、知っていた気がする。
記憶
KP
波照間さんだったね!
牧志 浩太
ですね!
案外牧志くん側というのも考えたけど、寒い所で山中で内陸っぽい、うーん、ってなってしまいました。
佐倉 光
寒いところは海は入る場所じゃないからなぁー
牧志 浩太
沖縄も実はあんまり入らないらしい(陽射しが強すぎるから?)とは聞きますが、少なくとも海を見たり触れた経験は多いですしね。
佐倉 光
あ、そうなんだ。
確かにあっっっついよね、沖縄の砂浜。
牧志 浩太
日焼け止めないとえらいことになるとは聞きます。
そういえば、牧志が持っている、ノーデンスの加護を受けた『小瓶』には〈水泳〉強化の力があるはず(強すぎるのでそれはPLの意思で無効化されている)なので、それも何らかの影響を及ぼしたかも知れない。

佐倉 光
「こんなの見当も……
? 牧志? 何か言った?」
牧志 浩太
ふと、牧志がいちど眼を開いたような感覚が伝わるだろう。
「佐倉さん、少し止まってくれ。流れの向きがこうなら……、一番濃いのは、あっちだと思う」
佐倉 光
「あっち?」
■佐倉視点
KP
あなたの【隣】にいたのは波照間だった。波照間の声で、波照間のタイミングで、あなたを助けてくれる。
佐倉 光
波照間さんなら間違いない。そう思った。

牧志 浩太
爪先を向けるようにして指し示す。
KP
あなたが示す方を、見る事もできないはずの佐倉は振り向いた。
そして水面にかがむようにして、どよりとよどむ何かを瓶にすくい上げる。
彼は瓶を振り混ぜた。
■佐倉視点
KP
瓶の中身は目に見えて燐光を放ち始めた。

佐倉 光
「光り始めた……!」
牧志 浩太
「よかった、合っていたか」
佐倉 光
「大丈夫そうだ、サンキュー、波照……
……ごめん。
まるっきり言い方が波照間さんだった、今」
KP
深い後悔と強い焦りが流れてくる。
佐倉は水面を離れて飛び上がり、飛び始める。
牧志 浩太
「あ……、ああ。そうか……? 駄目だな、分からなくなってきている」
また、どこか心細そうに数度、手を握ったり、開いたりして。流れ込む強い後悔に、返ってきたのは寂しそうな困惑だった。
佐倉 光
「くそ、こういう時に、厄介だな……
牧志、鏡見ろよ?」
牧志 浩太
「分かった……」身体を引きずるようにしながら、鏡を覗き込んだ。
KP
別人のように憔悴し、色を失ったあなたの顔があった。
それは自分のものというにはあまりにも様変わりしてしまっているように見えた。
牧志 浩太
「駄目だな、これがまずいってことは分かる……」数度、鏡に触れる。まるでその顔は死体のようだった。
死体。その言葉が、どうしてか身に馴染む。自分はいちどはあそこにいたのだ、そんな実感だけが強く身体を地面に引きずり落そうとする。
本当に死んだのは自分だけなのだ。
■佐倉視点
KP
何故かあなたは牧志から強い死のにおいを感じた。
あなたは思い出すかも知れない。一時的にとはいえ、彼は死者だったのだ。

佐倉 光
「おい、おいしっかりしろ、何か碌でもない事考えているだろう。
今のお前は普通じゃない。
普通じゃないときに考えることも普通じゃない。
それを全部信じるのは危険だ」
牧志 浩太
「……佐倉、さん……。俺……」
その事実が逆にかろうじて、自分が何かを実感させてくれている気もしていた。いや、違う。佐倉さんの声がする。俺は俺で、俺はここにいて、佐倉さんが呼ぶのは……、
「佐倉さん、……俺の名前、呼んでくれるか。ちょっと今、不味いらしい……」
佐倉 光
「牧志! 牧志浩太! 大丈夫だ、材料は集まってきてる」
牧志 浩太
名前を呼ぶのは古い呪術のかたちだ。名前を呼ぶことで、人は世界を定義する。それが何かと呼ばわることで、僕らは悪魔と契約する。
佐倉 光
アカーン
いや波照間さんが助けてくれるのか? どっちにしてもアカーーン
牧志 浩太
「佐倉くんも波照間もリアルには一度も死んでない」を拾いました。>アカーン
KP
そうね!
佐倉 光
「俺たちは乗り越えられる。世界を救った男二人で、人間一人助けられないわけないだろう! そうだろ、牧志!」
牧志 浩太
数度、手を開いて、また、握る。……強く。
「……佐倉、さん。そうだな、俺は、俺は牧志浩太。俺は佐倉さんの友達で、紅の戦友で、波照間さんの後輩。
俺は、ここにいる。
大丈夫だ。俺は、ここにいる」宣言するように二度繰り返して、力の入らない手で、それでも拳を強く握りしめた。
佐倉 光
「そうだ! その調子!
この海を越えれば地上だ! そうすりゃ完成は目の前!」
牧志 浩太
「ああ……、大丈夫そうだ。ありがとう、佐倉さん。そうだな、もうすぐ目の前だ!」
ベッドに座り込み、壁に寄り掛かった。壁に身体を押しつけて、どうにかその反作用から力を得ようとする。
佐倉 光
「おし、気合い入れるぞ、牧志浩太ァ!」
牧志 浩太
「ああ、気合入れるぞ、佐倉さん!」
張り上げたはずの声は小さくか弱く、それでも強く響いた。
佐倉 光
「……なんかさっきから。
……いや、まあいいか……」
牧志 浩太
「佐倉さん?」
佐倉 光
「うーん……」
牧志 浩太
「気になったことがあったら、教えてほしい。実は大事なことかもしれない」
佐倉 光
「うーん、こんな時だしな?
俺の考えすぎかも知れないけど。
なんかやたら名前呼ばれまくっている気が。
いつもそんなもんだったような気もするしなぁ」
牧志 浩太
「ああ……、ごめん、鬱陶しかったかな」
佐倉 光
「いや、別に。少し気になっただけだから」
牧志 浩太
「佐倉さん……、ああ、……うん。佐倉さんがそう言うなら、そうなんだと思う。俺、分からないけど、不安みたいだ。怖かったみたい、あの時の孤独が。
呼んでないと、狂ってしまう気が、ずっとしてる……」
佐倉 光
「COMPがあれば、こういうの一発で分かるんだけどな……
いや、夢と現実じゃCOMP使えても無理か。
……
うーん。それあの時からか。
そういえば……そうだな、違和感もそのあたりからだったか」
牧志 浩太
「違和感? ああ、今の俺はおかしいよな、それは分かるんだけど……」
先程明らかに異常をきたしていた口調は、心細そうな牧志の口調に戻ってはいた。いつもなら縋ることはしない彼が、縋るように何度も名を呼んだ。
■佐倉視点
KP
あなたは違和感の正体に気付くだろう。
それは壊れかけた牧志の心が放つSOSだったのだ。
佐倉 光
(どうして今まで気付けなかった? 
何のために繋いだ。こういう事に気付くためだろうが!)

KP
佐倉が息を呑んだ。
牧志 浩太
「佐倉さん? ごめん、俺、おかしいよな、佐倉さん?」不安そうに、また名を呼ぶ。
佐倉 光
「大丈夫、呼びたきゃ呼べ。
呼びたいときいくらでも呼べ。できる限り応える」
牧志 浩太
「邪魔にならないか? 分かるんだ、今の俺はおかしい……。」
佐倉 光
「今はお前がお前自身のままでいられるのが大事だ」
牧志 浩太
「そうか、そうだよな、ごめん。分かるんだ、今の俺は佐倉さんに縋ってしまっている。それ所じゃないのに」
佐倉 光
「俺の名前呼ぶくらいでなんとかなるってんなら、それはそれでいいじゃん」
「そもそもが、話すために繋いでもらってるんだ。
そこ遠慮する必要はねぇからな。俺が神様に頼んだんだ」
牧志 浩太
「ありがとう、佐倉さん……」
その声は先程と比べてもずっと細く弱々しく、まるで真っ暗な闇の中から、一条の光をたぐるような声だった。
佐倉 光
「大体、今まで助けてもらってばかりで情けないとこ晒しっぱなしだったからな。たまにはいいカッコさせろ。
俺にだってプライドってもんがあるんだよ」
牧志 浩太
「え?
そう、だったかな……」
本当に戸惑うような声だった。自覚はないらしい。
佐倉 光
「あるよ!? プライド。
じゃなくて、今までの事覚えてないとか言うんじゃないだろうな!?」
牧志 浩太
「あ、ごめん、違う。大丈夫、覚えてる。えっと、あの手がつながった時も、瓶の時も、猫の時も、夢の街の時も」指を折り、数えるような仕草。
佐倉 光
「我ながら牧志と絡むときの役立たず率が高すぎる」
牧志 浩太
「そうじゃなくて、そうだったかな。ずっと俺が必死に佐倉さんにしがみついてた気がする。このままじゃ終わりたくないって……
だから、うん、助けたって感じじゃないと思う」
普段より気弱にこそなっているが。
今の状況の影響というより、最初からそう思っているようなのが伝わってくる。
■佐倉視点
佐倉 光
何を言っているんだ? 困惑する。

佐倉 光
「いやいやいや、もの凄く助けられてるからな?
俺何度も命救われてるからな?
そこ自覚しといてくれないと、俺が情けなさ過ぎでへこむわ」
牧志 浩太
「そうか、あー、確かに。そういうことになるんだ」
佐倉 光
「えー……お前『助けた』とも思ってねぇの?」
牧志 浩太
「あんまり気づいてなかった」
佐倉 光
「お前ってさぁ……
うん、まだ大丈夫だな、そんな気がする……
お前は誰にも真似できないどうしようもない底抜けのお人好しの牧志浩太だ」
牧志 浩太
「……? なら、よかった」不思議そうに眼を瞬いて、少し笑った。
■佐倉視点
佐倉 光
借りが馬鹿でかすぎる。
KP
あなたの視界の端、暗く波打っていた海がほんの少し先で途切れていた。
果てにたどり着いたのかも知れない。
佐倉 光
視界を広げるために少し高度を上げるか。

佐倉 光
「それはそれとして、どうすりゃいいんだよ俺は……まったく」
KP
軽いため息をついて、佐倉が僅かに高度を上げる。
佐倉 光
「やっと海の果てが見えた。こっから下りだな……」
牧志 浩太
「どうなってるんだ? 海の果てって。陸地があるのか?」
佐倉 光
「ああ、地形どうなってんのか謎だけど、ここから先で海が流れ落ちてて終わり、らしい。
地下だけど、天動説の世界みたいになってんだな」
牧志 浩太
「世界の縁ってやつかな。その下に降りたら何があるんだろうな?」
佐倉 光
「地上へ向かうクソ長い階段があるって……」
それは音も気配もなく突如現れた。
佐倉の心拍が跳ね上がる。
■佐倉視点
KP
こんな巨体がいったいいつから背後にいたのか。
赤く輝く目、人間ほどもある六本足の生き物。黒いタールにまみれたそれは、あなたのそばまで驚くほどの速さで近寄った。
気付いたときにはもうあなたは射程距離内にいた。
気付いたのは全くの奇跡としか言いようがないだろう。

佐倉 光
「……っ!」
KP
佐倉が身構える。その顔の横にしぶきが跳ね、ベタベタと体にくっついた。
牧志 浩太
「佐倉さん?」真っ先に跳ね上がった心臓で異変を感じる。確かめるように、呼ぶ。
「佐倉さん。佐倉さん? 何か、出たんだな?」
佐倉 光
「あ、赤い目の、馬鹿でかい、蜘蛛だッ!」
牧志 浩太
その声の動揺で、不味い状況だというのを悟る。
KP
佐倉の恐怖心があなたに伝染する。
もうほとんどなくなってしまったはずの場所に、恐慌が否応もなく流れ込む。
[佐倉]《SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D6
[牧志]《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D3
牧志 浩太
CCB<=49 《SANチェック》 (1D100<=49) > 85 > 失敗
1d3 (1D3) > 3
[ 牧志 浩太 ] SAN : 49 → 46
佐倉 光
CCB<=58 《SANチェック》 (1D100<=58) > 10 > スペシャル

■佐倉視点
KP
あなたは恐怖に我を忘れずに済んだ。
恐怖に怯えて相手を見失わずに済んだ。
佐倉 光
飛んで逃げればいいだろう。
KP
サンダルはあなたの意志に従い上昇を始める。だがここは依然として敵の射程内だ。攻撃を回避しなければならない。

牧志 浩太
流れ込む感情でぞわりと背が竦んだ。
状況を問おうとしかけた唇が震え、動かない。
佐倉 光
「やってられっか!」
KP
佐倉が素早く速度を上げる。
その足元を掬うようにまた一撃。
佐倉の跳ね上がる呼吸と心拍があなたを揺るがす。
牧志 浩太
自分のものではない感情は、何が恐ろしいのか伝えてはくれなかった。ただ恐ろしい、意味もなく恐ろしいことだけが己を揺るがす。
佐倉 光
「くそ、くそくそ、TALKでもできりゃ……」
■佐倉視点
KP
足を掬う攻撃を何とか避けたあなただったが、二段目は避けられなかった。
あなたは足を掬われ、タールの海の上に倒れる。
サンダルのお陰で海の中に沈む事はなかった。沈んでいたなら二度と浮かび上がっては来られなかっただろう。
狩人は、動きを止めた獲物に歓喜するように醜悪に足を蠢かせる。
もはや逃れるのは不可能だろうと思われた。

KP
佐倉の体が吹っ飛んで水の上を滑る。
牧志 浩太
「佐倉さん、……佐倉さん……、」唇が開いたとき、出てきたのは彼の名だった。祈るような縋るような響きで、名を呼ぶことしかできない。
自分はそこにいないのだと知らしめられるようだった。──何もできない。
KP
何か大きい物が迫る気配に、佐倉は身をすくませた。
そして……
静かになった。
牧志 浩太
「……、佐倉さん……?」
■佐倉視点
KP
大蜘蛛は忽然と姿を消していた。あなたが感じられる範囲には気配もない。
完全に動きを奪った獲物を目の前にして、狩りを諦める狩人がいるだろうか?

KP
ごくり、と唾を飲んで、唇を湿す感覚。
佐倉 光
「……大丈夫、生きてる……
なんだ? いなくなった? まだ下に隠れてるのか?」
牧志 浩太
「あ……、ああ、よかった……、佐倉さん、一瞬、どうなったかと、ああ違う、ごめん。こんなこと考えるべきじゃない。逃げるか、隠れられそうか、今のうちに?」
KP
佐倉は周囲の様子をうかがいながら、浮かび上がる。
佐倉 光
「こんな海の上じゃ、隠れる場所もないし、タールの中に潜ったらあいつに絶対食われるけど……
いなく……なったな?」
牧志 浩太
「高度を離して……、いや、限界があるよな。状況は分からないけど、いなくなったなら今がチャンスかもしれない」
佐倉 光
「このサンダルを見て、怯えたように見えた……」
牧志 浩太
「……その靴を見て?」
佐倉 光
「動きを止めて、明らかに射程範囲にいた俺を襲わずにそのまま後ろへさがっていった」
牧志 浩太
「もしかして皇津様、今も助けてくれているのか?」
佐倉 光
「目線がそういや、このサンダルに集中していた気がする。
……そうかもな」
牧志 浩太
「そうか、それは……、いいことだな」ほとんど枯れた感情の中に、微かに温かみが宿った。
佐倉 光
「上位存在ってもの自体がなんかムカつくけど……
まあ、いろいろ、いるんだろうな……」
牧志 浩太
「佐倉さんだろ。いい人に見えて、いい人みたいに動いてくれるなら、いい人ってことにしようって言ったの」
佐倉 光
「まあな……」
牧志 浩太
「だから、いい人だし、いいことだってことにしとこう。その方が、嬉しいし。ああ、でも、これは俺だけの感情なのかな。佐倉さんのじゃない」
少し笑って、探るように指先を胸に当てた。
佐倉 光
「ああ、今皇津様信じることについちゃ、異論はない。
助けてもらえてなきゃ、ここまで来るどころか、俺はシャンに体取られて死んでる」
牧志 浩太
「俺も」
佐倉 光
「……で、あの人の良さそうな爺さんが、どうしてこんな陰気なとこに神殿作ってるのか、そこが分かんねぇよ俺は。
もっとマシな場所いっぱいありそうなんだけどな、ここ」
牧志 浩太
「どうなんだろうな? 趣味かもしれない」
佐倉 光
「お前ここ見たらそんな事言えなくなるぞ」
牧志 浩太
「うーん、そんなに陰気なのか……」
佐倉 光
「ありえねぇよマジで」
■佐倉視点
佐倉 光
牧志となんとなくの感想なんて無駄話をしていると、少し心が軽くなった。

佐倉 光
いやほんと、なんでノーデンス神殿こんな死体と骨ばっかりのろくでもないとこなの?
牧志 浩太
ほんとにね。必ずしも人間が思うようないい神様というわけではないということなのかもしれない。
佐倉 光
なるほど?
佐倉 光
「海の果てか……」
牧志 浩太
「海の果て……」その声には少し意味ありげな響きがあった。
■佐倉視点
KP
黒い水がどろどろと流れ落ちてゆく。流れた先は闇に沈んで何も見えない。
佐倉 光
この海の水はどうやって海を保つほど供給されているのか気になる。
まあ夢の世界だし、理屈を求めても仕方ないんだろうが……
KP
あなたは圧倒的な視覚情報と考え事に夢中になってしまい、牧志の声に含まれたものを聞き逃した。

佐倉 光
「うわ、くらくらするな。高所恐怖症ならアウトの風景だ。
デロッデロのタールが流れ落ちるナイアガラってある意味すげぇけどな」
牧志 浩太
「巻き込まれたら一巻の終わりだな」
■佐倉視点
佐倉 光
壮大な風景に、少し心が躍った。
気晴らしでもしよう。

KP
佐倉はほぼ自由落下に等しい速度で降りてゆく。
牧志 浩太
「うっぷ、ちょっとフリーフォールの気分だ」
佐倉 光
「おっと、これ以上はやめとこう。
ギリギリ攻めたい気もするけど、今それどころじゃねぇ。
……」
牧志 浩太
「こんな状況じゃなければ、歩き回ってみたら楽しそうなのにな。蜘蛛に襲われるのは困るけど」
■佐倉視点
佐倉 光
まったくだな……急ぎの事情さえなけりゃ、見たい物調べたい物だらけだ。
思うが口には出さない。口に出せばあいつはきっと謝るだろう。
何故かそれを絶対に聞きたくないと思った。
KP
ところでこんな視界の悪い場所でチキンレースまがいのフリーフォールなんて、まったく正気の沙汰とは思えないな。
佐倉 光
俺も緊張の連続で少しおかしくなっているのかも知れない。

■佐倉視点
KP
地に足が着くと、周囲の様子がぼんやりと見えた。
最初、そこは巨大な霊廟ではないか、とあなたは思った。
視界にある建造物は住居のようでもあり神殿のようでもある。
長いこと人が訪れていないのであろう、崩れた壁や倒れた柱がそこは『死んでいる』のだと知らしめる。
佐倉 光
生きている人間もいないのに『都市の死骸』か。
谷を埋め尽くすほどの死者といい、昔はここに人間が大量にいたりしたのだろうか。

佐倉の足が地面につく。
そこはしんと静まりかえり、息を吸うのもはばかられるほどだった。
佐倉 光
「建物が……いやこれ遺跡だな?
崖の下、放棄された都市かなんかだ」
牧志 浩太
その静けさに、ふと一瞬声を止める。
「遺跡……? 建物ってことか? 住んでいたのかな、建物を作るような誰かが」
佐倉 光
「不思議な事はねぇよ。この世界、人間もいっぱいいるみたいだぞ。
……ただ、この地下には死体の方が多そうだけどな」
■佐倉視点
佐倉 光
住んでいる人間がほとんどいないのに死体だけは多い。想像を絶する犠牲者が運ばれているという事だ。
非効率だな。狩り場の近くに棲めばいいのに。
いやここは所詮夢だし、化け物どもは簡単に境界を越える。物理的な距離など意味はないのかも知れない。

牧志 浩太
「え、そうなのか? そういえば人影を見たけど、あれ、人間だったのか。あの人もそうだったのかな」神官のことを指しているらしい。
佐倉 光
「あー、どうなんだろうな、微妙。
人間っぽい姿でもそうではないってこともまああるみたいだし……
あくまでもこれ情報だからなぁ」
言いながらしょった袋を軽く叩く。
■佐倉視点
佐倉 光
情報源が書物一冊というのは心細い限りだ。
今のところ情報は間違っていないようだし、わざわざ皇津様が『これを読め』と渡してきたのだから、疑っても仕方ないのだろうが……せめて3冊くらいは別作者の本が読んでみたいものだ。
書かれている景色からして違ってきそうな気はするが。

牧志 浩太
「そういえば、さっきの蜘蛛のことはそれに書いてないのか? 今更かもしれないけど。あと、どんな場所なんだ? 今いる所」
佐倉 光
「蜘蛛か……あいつは
瀝青グモっていうらしい。あの海でしか生きられない危険な生き物……」
牧志 浩太
「それじゃ、ここまで追いかけてくる心配はないわけか、とりあえず」
佐倉 光
「捕まると海に引きずり込まれて食われる、だってさ。あっぶね。
ああ、そうらしい。海から出ると動けなくなるから、出てくる事はないって書いてある」
牧志 浩太
「それは困るよな。危なかった」
佐倉 光
「ここは……」
■佐倉視点
KP
あなたは何者かの視線を感じる。
敵意があるようには思えないが、じっと肉食獣に見られているような気分だ。

KP
言いかけて佐倉がはっとして後ろを振り向いた。
牧志 浩太
「佐倉さん? 何か来たのか?」
KP
しばらく警戒をしていたが、佐倉は首を振る。
佐倉 光
「何かに見られている気がした。気味が悪いな」 
「場所を移そう。目的地はあの塔か……」
牧志 浩太
「誰かいるのかな、まだ。食屍鬼じゃなければいいんだけど」
佐倉 光
「食屍鬼ってことは、死体しか食わない……
生きている人間を、食えるように死体に変えよう、なんて考えない事を祈るぜ」
牧志 浩太
「本当にな。それは困る」
佐倉 光
「神の墓……か、そんな風にも見えるな」
牧志 浩太
「神の墓?」
佐倉 光
「間違いねぇ、誰かに見られている。けど襲ってくる様子はなさそうだ。
ああ、なんとなくそんな気がしたんだ」
KP
足音が響く。建造物の中に入ったようだ。
冷たい岩肌に触れ、軽く息を整える。
牧志 浩太
「神も死ぬんだな。いや、そんなものかもしれないか」
佐倉 光
「ここは、カロスの廃墟……
ここには、吸血公子が棲んでて……通る者を監視する……
通るだけなら、手は出してこないらしい……」
KP
佐倉が文章を読み上げる声が、岩肌に反射して響いた。
牧志 浩太
「なら、何をしたら手を出してくるんだ?」
佐倉 光
「ケンカを売りに行ったら、皆殺しにされる……だって」
牧志 浩太
「分かりやすい条件でよかった。何をしたら喧嘩を売ったとみなされるとか、そういうのはないか?」
佐倉 光
「隠れていたいだけだから、手を出してはいけない……とか、なんとか……」
KP
佐倉が文章を読む声が、少しずつ遠くなって行く。
牧志 浩太
「何となくだけど、寓話のタブーみたいに聞こえるんだ。……佐倉さん?
佐倉さん?」どうしてそうしていたのかも遠くなってしまいながら、名を呼ぶ。
KP
彼がページを繰る感覚だけが、あなたの指先に鋭敏にふれる。


【遠い記憶】紙の香り


あなたは、書物を手に取っていた。
活字の海に船出するときが、あなたにとっての幸せだった。
あなたは時間も場所も越え、旅をする。
見た事もないような心躍る世界が、そこには無限に広がっている。
牧志 浩太
ふと、書物を手に取った。
KP
ざらりとした紙の感覚、少し古びた紙の香り。
ほんの少し、乾いたインクの匂い。
牧志 浩太
目の前に広がる無限の世界。自分が生きているよりずっと前の世界も、ずっと未来の世界も、海の向こうの世界も、空想の中にしかないだろう未知の世界も、同時にそこにあった。
一生を埋もれ続けて暮らしても、きっと届かないほどの世界がある。自分は昔から、それが好きだった。
KP
文字の海。
そんな世界が常に身近にあったような気がする。
手に取った本は、何度も何度も読まれていて、すり切れていた。
牧志 浩太
何度も籠っては親にたしなめられたような気がする。親は、少し呆れつつも嬉しそうに見守ってくれていた気がする。何度も何度も読んで擦り切れても、まだ理解しきらない一冊の本は、俺の友達になっていた。
KP
あなたの手垢が小口に黒々と跡を残して、少し緩んでしまった栞紐は色あせてはいるが、丁寧に使われているためちぎれてはいない。
牧志 浩太
外がどれだけ閉ざされても、ここには無限の世界があるままだ。
KP
初めて手に取ったときはずしりと重かったその装丁は、今は少し軽く感じる。
牧志 浩太
最初に見た時は、随分大きくて重たくて、本を戻しそこなって何度か落としてしまったのに。
その軽さに、自分がそれだけ変わったことを実感する。
本は時を止めたまま、ずっとそこにある。
最後のページに、誰かの署名があった。
本は死んでいる、と誰かが言った。
本の中の世界は、綴じられた瞬間に終わって、それから変わることがない。
本は、過去の死体の集まりなのだと。
KP
受取手のことを考えていない言葉だなぁ。
牧志 浩太
(それでもいいかな、俺にとってはまだ、持っていない世界だし)
開いて読み終わった時に俺の中に綴じられるなら、その世界は生きているって言えるんじゃないかな。そんなことを思ったのは、その署名が── ぼやけて読めないそれが、知っている名前だったからの感傷かもしれなかった。
最初に一番心が躍ったのは、雪のない町の話を読んだ時だったと思う。
雪がない場所があるなんて、まだ小さかった俺には、想像もできなかった。
KP
なるほど?
KP適当に茶々入れますが、間違ってたらごめんね……
牧志 浩太
いえいえ、茶々をありがたくいただいて好きに広げます!
牧志 浩太
それから夢中になって色々な本に手を出して、それで手に取ったのがこの本だった。
変な本を読みたがるなあ、と父さんはちょっと呆れていたけど、なんだか嬉しそうでもあった。
KP
それは明らかに子供向けの本ではなかったのだ……
牧志 浩太
子供向けの本ではなかったし、入っているのは挿絵というより図だった。小さい時の俺がそれを手に取ったのは、もしかしたら何かの偶然だったかもしれない。なんで手に取ったのかなんて、覚えていないし。
確か最初は全然読めなくて、母さんに読んでとせがんだけど、母さんもまあつっかえつっかえで、それで俺はすっかり膨れちゃったのだ、確か。
KP
大人でも読むのにそれなりの知識を必要とする専門書の、どこにそんなに惹かれたというのだろう。
牧志 浩太
それですっかり拗ねて、じゃあ自分で読んでやるって方向になぜか向かった。変な意地で本にかじりついて、なんとか意味を拾えるようになったのはそれなりに大きくなってからだったと思う。
そういえば、あの本の最後の、署名……。
その署名に、なんだか見覚えがある気がした。
KP
その署名は、何度も見て焼き付いているはずだった。
今のあなたはそれを知っていると確信しているのに、今や白い霧が何もかもを覆っていた。
目が回る。
牧志 浩太
うわ、と呻いて顔を押さえた。疲れが来たかな……。
KP
ぐるぐる、ぐるぐると……
■佐倉視点
KP
あなたは自分が文章に集中しすぎていた事に気付くだろう。
牧志がまたぼんやりしている。
佐倉 光
察するに、また記憶の断片を見ているんだな。この状態の時はそれほど警戒する必要はなさそうだ。
ともあれ螺旋階段を登る。
KP
果てなく続く階段だ。皇津様の靴はあなたに疲労を感じさせる事なく上へと進むだろう。
佐倉 光
間違いなく景色でダメージを負うけどな。

ぐるぐる、ぐるぐる。
回り続ける思考。
ぐるぐる、ぐるぐる。
回り続ける視界。

違う。これは現実ではない。
記憶でもない。
【隣】から伝わってくる、遠い夢の感覚だ。
佐倉 光
「酔いそうだ……」
牧志 浩太
「……佐倉、さん?」
廻る、廻る、廻り続ける。
状況が掴めず、困ったように名を発する。
思考までもがぐるぐると回り続けて、何が起きているのか分からない。
佐倉 光
「ああ、また夢……記憶を見てたんだろ? なんとなく分かるようになってきたよ」
牧志 浩太
「ああ、そうだ、記憶だったと思う……。もしかしたら俺のかもしれない、雪の匂いがした……」
佐倉 光
「そうか、なら、良かったな」
牧志 浩太
「そうだ、俺は雪の匂いと、重さを知ってる……」
佐倉 光
「北国の出だって言ってたもんな」
牧志 浩太
「ああ……。少し、実感できてきた。ストーブの音がした気がする、やさしい記憶だった……」
佐倉 光
「そう、か。良かったな」
牧志 浩太
「そうだ、書いとかないと……、うわ、視界が回る……」
佐倉 光
「それ、俺のせいかも。さっきの建物なかの、螺旋階段を延々登ってるとこ。
このサンダル履いてなきゃ、さっさと逃げ出すところだぜ。
消失点が見える階段って何だよ」
牧志 浩太
「良かった、か……。ありがとう、佐倉さん。……そうだな、これはいいことだ。佐倉さんがそう思ってくれるから、分かる。良かった、って気持ちが」
牧志 浩太
大事そうに、手の中に何かを握るように拳を握った。
佐倉 光
「お前にもあるんだなぁ、お守り」
牧志 浩太
「ああ、お守り。そういえば、佐倉さんにもあるな、ヒランヤ」
佐倉 光
「俺のは、捨てたら呪われそうだから持ってるだけだけどさ……」
牧志 浩太
「でも、捨てる気はないんだろ?」
佐倉 光
「まぁな……」
指先で胸元に触れる。そこにお守りはない。
牧志 浩太
「俺のは、気がついたら持ってたんだ。
擦り切れちゃって、どこのか分からないんだけどな。そんなのだから、古いものだと思う」
佐倉 光
「へー、ってことは、牧志が記憶なくなる前のヤツか」
牧志 浩太
「だと思う。家に戻った時に聞いてみたんだけど、誰も心当たりないみたいでさ。
忘れちゃってるだけかもしれないけど」
佐倉 光
「へぇ……普通お守りって神社の奴ならどこの神社のか書いてないか?」
牧志 浩太
「たぶん、書いてあったと思うんだけど。布が擦り切れちゃって、読めないんだ」
佐倉 光
「そんな古いのか。物持ちいいな。
普通お守りって一年で効力なくなるから返すもんだろ?」
牧志 浩太
「みたいだ。案外、返しそびれてそのままだったとか、その程度のものかもしれないな。それか、何かの記念、誰かからもらったとか」
佐倉 光
「記憶の手がかりになるかもな?」
牧志 浩太
「かもしれないな。もうちょっと、特徴があればよかったんだけど」
KP
ぐるぐる、ぐるぐる、階段は続く。
佐倉は文句を言いながらも登り続ける。
牧志 浩太
「こっちからだと眩暈に感じる……」
佐倉 光
「こっちは酔いそうだよ……サンダルのお陰で疲れないけど」
KP
ぐるぐる、ぐるぐる……
牧志 浩太
「飛べるんだし、真ん中を突っ切ってしまえればいいんだけどな……」
佐倉 光
「それもなんか怖いくらい高いんだよここ……」
牧志 浩太
「スケールがすごいな」
KP
回り、巡り……


【歪む視界】どこかへ


ぐるぐる、ぐるぐる。
思考は回る。視界は回る。意識は回る。
あなたの揺れる視界は垣間見る。ぼんやりと感じ取る。
あなたのかたわれが、どこかへ移動してゆくのを。
牧志 浩太
「……」それを静かに見ていた。ぼんやりとその姿に、ああ、行かなければ、と思う。
あそこへ行かなければならなかったのだ。あれは自分だ。自分のいるところへ行かなければならない。
KP
あなたのあらゆるものは麻痺していた。
牧志 浩太
凪いだように静かに、欠落だけがあった。
■佐倉視点
KP
牧志が黙り込んでから結構長い時間が過ぎた。
果てない螺旋の道は、あなたに焦燥を抱かせる。
佐倉 光
たまに声をかける。
このまま戻らなかったら、などと考えてしまう。
駄目だ、そんな事を考えても何にもならない。進め。
KP
長い長い時が過ぎ、ようやっと螺旋階段のてっぺんにたどり着いた。だが、地上へ続くはずの道は、灰色の巨大な板で塞がれていた。
佐倉 光
絶望しながら板に力を加える。
KP
ほぼ持ち上がらない。あなたはあまりにも非力だった
佐倉 光
積んでね?

苦しげなうめき声が聞こえた。
記憶の世界が途切れ、夢の世界からの感覚が、佐倉が何か大きな物を動かしているらしい事を伝える。
佐倉は汗だくで、歯を食いしばっていた。
佐倉 光
「……はぁ、はぁ、なんだよこれ、重すぎだろ……」
牧志 浩太
佐倉くんが重労働を強いられている
KP
【STR】【CON】一桁の仕事じゃないんだよ
牧志 浩太
本当に。
【STR】11/【CON】12の牧志くん、手伝いたい! 手が出せない! >一桁の仕事じゃない
牧志 浩太
「…………」静かだった。
佐倉 光
「おい牧志、起きてる?」
牧志 浩太
名を呼ぶ声も聞こえない。ただ、静かだった。
佐倉 光
「牧志?
繋がってる、よな」
牧志 浩太
「行かなければ」ひどく平坦な、無機質にさえ聞こえる声だった。
■佐倉視点
佐倉 光
ぞっとする。
いよいよ猶予はもうない。

佐倉 光
「ちょっと待てぇ!」
牧志 浩太
「行かなければ、あちらに」
佐倉 光
「ダメ。それは却下。気をしっかり持て。早まるな。
消えちまうぞ。お前が!
一個に戻るのはあの虫追い出してから!」
牧志 浩太
……ひらり、と眼を瞬いた。
「……えっ、と。ああ……、……佐倉さん?」確かめるようにいちど、名を呼ぶ。
佐倉 光
「っは、戻ってきたな?
良かった、まだ正気だな?」
牧志 浩太
「ごめん、行かなければ、みもとに、……違う。すまない、違うな。僕は混乱している。混乱しているんだな、佐倉さん。俺はおかしい。おかしかった」数度、自分の頬を叩く音。
■佐倉視点
KP
その口調も声も、もはや波照間とも牧志ともつかない、虚ろな声だった。
だがそれでも、牧志である部分が辛うじて自己を保ち、不安定に明滅している。
佐倉 光
一番不安なのは牧志の筈だ。俺が動揺してどうする。

佐倉 光
「また何か見たのか、牧志。
お前は行かない。帰るんだ」
牧志 浩太
「見た。ぐるぐると回る視界の中で、もうひとりの俺がどこかへ行こうとしていた。それを見て、行かなければならないと思った……」
佐倉 光
「これ、外から見るとこんなヤバいんだな……
お前に改めて感謝するわ……」
牧志 浩太
感謝? と不思議そうに聞く。
「そうだな、俺は行かない……。帰るんだ、そのはずだった。俺は、覚えている。俺の望みが何だったか、覚えている……」
言い聞かせるように数度言って、手を握って、開く。先程と同様、手の上に小さな布製の物が乗っていた。
「佐倉さんは今、何をしているんだ?」
佐倉 光
「猫の手もっ! 借りたいっ! 重労働……!
牧志ー、手伝って。
この塔のてっぺん、蓋が閉ってて、これどけないと出られねぇんだよ」
牧志 浩太
「それは重労働だな、うーん、手伝えればよかったんだが。
COMPが使えたら、ラミアさんに手伝ってもらえたのにな」
佐倉 光
「ったくマジでこんなの俺の仕事じゃ……」
■佐倉視点
KP
突如、頭上を覆っていた巨大な岩が動いた。
佐倉 光
警戒する。こんな足場の悪いところで敵意のあるものに出逢ったら最悪だ。
もしバランスを崩して落ちでもしたら……この果てしなく長い道をまた登りなおしだ。そんなの絶対気が狂う。

佐倉 光
「……?
ああ?」
■佐倉視点
KP
岩の隙間に見えたのは巨大な白い獣の姿だ。
その爪にかけられれば、あなたなどひとたまりもないだろう。

佐倉 光
「うわ!?」
牧志 浩太
「佐倉さん?」
冷静な牧志の声が後を追う。驚くこともなくなっているようだった。
■佐倉視点
KP
『そこから出てくるように』と言われた気がした。
白い獣が喋っているように思えた。

佐倉 光
「あ、ども、ちょっとどいていただけると、助かるなー、なんて思うんですけど。
俺の話分かりますかねー?
■佐倉視点
KP
動かされた蓋の隙間から見えていた白い獣の姿が消えた。
佐倉 光
言葉が通じる相手に久しぶりに出逢ったな。
不意打ちを警戒しつつ外に出よう。
KP
這い出した先は、下で見たような遺跡の中であるように思えた。周囲は薄暗いが、地下世界ほどではない。
建造物の隙間から差し込む光が視界を確保している。
僅かな光に輝くような白い獣はあなたが隙間から這い出るのをじっと見ている。
そして、あなたが外へと出るとずれた蓋を頭で押して元通り閉め直した。
それは体長2メートルはある白い巨大な猫だった。
その眼は穏やかで、あなたに危害を加えようとする様子はない。
猫は気遣うように『大丈夫か』と訊いてきた気がする。

佐倉 光
「……あ、ども、はい……」
牧志 浩太
「何かいるのか?」
■佐倉視点
KP
牧志があなたに話しかけてきた途端、白い猫は眼を細めた。
巨大な体が一歩近づく。
再び開いた目は黒さを増していた。
佐倉 光
猫の表情や機嫌なんて分かんねぇ。COMPがあれば精神状態くらいは分かったかもな……

佐倉 光
「えーと……あ、お構いなく」
■佐倉視点
KP
猫は口を開けた。その牙は恐ろしげに見える。
『今あなたが話している遠くの友達に、よろしく伝えて』そう言われた気がした。
佐倉 光
敵意はなさそうだったな。どうやら助けられたらしい。ほっとした。
KP
巨大な猫はほっそりした体を翻すと、走り出して闇へと消えてゆく。

KP
何かに話しかけていた佐倉は、ふう、と息をついた。
佐倉 光
「……猫だ」
牧志 浩太
「猫?」
佐倉 光
「クソでけぇ猫が、塔のてっぺんの蓋、どけてくれた。
なんか……お前にヨロシクって。白いの」
牧志 浩太
「そうなのか、それは良かったな。……俺に?」
佐倉 光
「お前、悪魔使いじゃないよなぁ」
牧志 浩太
「あー、もしかして、だけど。もしかして、少し痩せた白い婆さん猫か?」
佐倉 光
「……あー、そんな感じと言えなくもないけど。
サイズライオン並みだったし」
牧志 浩太
「ええと……、ナガグツ、じゃない。そうじゃなくて……」記憶をかき分けるように、少し考えて、ペンでこめかみを叩いて。
「あの、一つだけ試してみてほしい。“ユキ”って呼んだら、返事するか」
牧志 浩太
ド安直。>ユキ
佐倉 光
「あ、もういなくなりかけてるけど」
牧志 浩太
「そうか、ならいいけど」
佐倉 光
「おーい、ユキさーーーーん!
■佐倉視点
KP
通路の先を曲がって見えなくなりかけていた猫は、ふと振り返って一声鳴いた気がした。

佐倉 光
……振り向いてった」
牧志 浩太
「そうか……、ああ、うん。それはきっと、いいことだ。きっと、俺なら喜んだと思う」一人で納得がいっているように、数度頷いた。
それから、ペンを走らせる音。その音は随分長く続いた。
佐倉 光
「ひょっとしてあれ、お前がさっき言ってた飼い猫?」
牧志 浩太
「だと思う。どうしてそこにいるのかは分からないが、俺によろしくと言う白い猫は、あいつしか心当たりがない。
小さな俺の友人だった、んだと思う。俺が弱っているときに……、横にいてくれた、ように見えた」
佐倉 光
「そう、か、ここは夢の世界だから」
牧志 浩太
「あの記憶の時点で彼女は老いていた。膝小僧しか見えなかったが、記憶の中で見た弟は幼かった。そういうことだ」
佐倉 光
「お前の夢ももしかしたら、ここに繋がっていたのかも知れないな……」
牧志 浩太
「そうかもしれないな」その声は静かで色がなかったが、少しだけ誰かの感慨をなぞるように、時折遅くなった。

佐倉 光
この場所に猫がいるのはアレだけど、まあ、繋がりがあるからレスキューに来てくれたと思って……
猫の町から遠いしなここ
牧志 浩太
繋がりを辿って助けてくれた、と思うと非常によいことなのでよいと思うんです
佐倉 光
カダスの猫イベント見て、牧志君猫との縁が深いなとなったら、どっかで出したかったんですよね猫!
牧志 浩太
なるほどー!! ありがとうございます!
二人分猫との縁があって、さらにmeowでの縁もありますからね 縁が深い

■佐倉視点
佐倉 光
書き付ける内容の多さはきっと、失われた感情の強さだ。
あいつがここにいて、あの猫と話せたら良かったのに。

佐倉 光
「(まだ大丈夫、まだ行ける……間に合う)」
佐倉が呟いた。
牧志 浩太
それらの会話をすら書き留めるように、ペンが長く走った。
きっと全て取り戻したら、その時の感情を辿り直すつもりなのだろう。
佐倉 光
(少なくとも……ああやって書けているうちは大丈夫だ)
「色々助けられまくってるなぁ、俺たち」
牧志 浩太
「そうだな、本当にそう思う。皇津様に、神官さんに、ユキに、家族に、友達に、紅に、佐倉さん。本当に、助けられてばかりだ」
佐倉 光
「返しきれなくなる前に、片を付けなきゃな」
牧志 浩太
「そうだな。片をつけなければ」
■佐倉視点
佐倉 光
そろそろ進まなくてはならない。階段から離れる。
KP
どことなく湿った空気だが、風が動く気配がする。光を感じる。霊廟じみた遺跡からは簡単に出られるだろう。

KP
佐倉は汗を拭いて腰を伸ばした。
牧志 浩太
「僕の夢もどこかに繋がっているのかな、ナガグツのやつもいるんだろうか」
佐倉 光
「……そう、かも」
つい、丁寧語で返しそうになった。
(ったくもう、不意打ち波照間さんやめろよマジで……)
(いつもはジョークで済ませるけど、今は洒落になってねぇんだよ)
牧志 浩太
「あのあと知り合った彼もナガグツだったのは、少し面白かった」
佐倉 光
「俺のネーミングセンスは『波照間さんと』同じだったって事かもな!」
牧志 浩太
「かもしれないな。ユキに、ナガグツだろ。どちらも安直だ」
■佐倉視点
佐倉 光
違和感がある。牧志はもしかして、二人分の記憶の両方を自分の物として語ってはいないか。時々自分を波照間さんと信じ込んでしまうなんて、そんな生やさしいものではなくなっていないか。

佐倉 光
「おい、牧志……」
牧志 浩太
「佐倉さん?」
佐倉 光
「今のお前。『どっち』だ」
牧志 浩太
「どっちって……、何を言ってる?」不思議そうな声が返ってきた。
佐倉 光
(波照間さんだってことを否定するのは、かえって良くないのか、俺には判断つかねぇ)
(考えてみりゃ、あれだって牧志の一部なんだ……)
「いや、何でもない。さっさと進もうぜ。目的地は目の前なんだ」
牧志 浩太
「そうだな、進もう」
■佐倉視点
佐倉 光
大丈夫、あと一つだし、手に入れなくてはならないのはただの土だ。すぐに終わる。
つとめて明るく、会話をするように心がける。
大丈夫に決まっている。
遺跡の通路を足早に、外へ向かって進む。

佐倉 光
「って俺が歩かなきゃ進まねぇんだけどな」
牧志 浩太
「手伝えたらよかったんだけどな。せめて肩でも貸せたら、まだましだっただろうと思うし」
佐倉 光
「それはまたの機会ってことで」
牧志 浩太
「そうだな。またの機会だ」
佐倉 光
「なんにせよ、やっと地上! 明るい夢の世界が……」
■佐倉視点
KP
次第に明るくなってきた。ひときわ強い光の方へ踏み出すと、そこは屋外だ。
地下世界の暗さに慣れた身には眩しいほどだ。
一瞬目が眩む。
だが、すぐさま視界は戻ってくる。あくまで明るいのは地下に比べれば、であり、ここはどんよりと曇っている。

佐倉 光
「……世界が……
……」
牧志 浩太
「あんまり明るくなさそうか?」
■佐倉視点
KP
建造物を出たあなたは、強烈な感覚に打ちのめされるだろう。
それは強烈な腐臭と黴臭が入り交じったような、臭いの暴力だった。
ここの空気を吸うだけで喉の奥から吐き気がこみ上げてくる。

佐倉 光
「臭ッ!?」
遠く遠くから何かが呻くような声が聞こえる。
いや、これは風の音だろうか。
饐えた空気が鼻と喉を刺激する。
佐倉が口元を何かで覆った。

足元はどろどろと柔らかく、靴が沈む。
ねばりつく泥は生き物のように蠢き、指先を捕えるように絡みつく。
牧志 浩太
「うわ、臭いな。何が腐っているんだ? いや、死臭か?」
佐倉 光
「ここは……そうだ、思い出したぞ。
延々死ぬ事を許されないゾンビがうろついてる、死者の国だ!
この世界でヤバい死に方するとここに来るとか……」
牧志 浩太
「……海の果てに、死者の国があるのか。意味ありげだけど、あまり救われてはいないな」
以前、地獄を目の前にして「痛ましい」と言った牧志は、それについて何も言わなかった。
佐倉 光
「……」
牧志 浩太
「佐倉さん?」
■佐倉視点
KP
また失われてしまった。
あなたには否応なくそう知れるだろう。
佐倉 光
大丈夫。俺がそうだったように、奪われたって全部取り戻せる。大丈夫。
何度も何度も心の中で繰り返す。
いつも通りに、俺にできる事を考えろ。手の届く限りの事をやり尽くせ。

佐倉 光
「ここの土でラストだ、手伝ってくれよ」
(そうだ、焦る必要はない。あと一つなんだ)
牧志 浩太
「うん。俺にできることなら」できることなら。そう言った言葉だけが、わずかな強さを痕跡のように残していた。
おしまい
佐倉 光
ラスト曲があまり会わないなw
まあいいか……
牧志 浩太
合わない曲からエンディング曲にいくの、それはそれで「おっ、終わった」って気づきやすくてお疲れ様感があって好きですぜ
KP
本日、ここまで!
牧志 浩太
お疲れ様でしたー!
KP
おつかれさまでーす
あと……一日か二日!
牧志 浩太
盛りたい!
KP
たぶんねー、二日になる……ような気もするんだ。
牧志 浩太
キャンペーンの最後だし遠慮なく二日にしていきたい
KP
牧志君から色々なものが消えていく……
牧志 浩太
「痛ましい」も消えてしまった……。
でも記憶から「自分がどう感じていたか」を辿ろうとしているあたり、律儀ではある。
KP
内心目茶苦茶焦っている佐倉。
牧志 浩太
牧志くんが比較的自分の現状に自覚的なのは、たぶん自分で自分に心理学しています。76ありますからね。
佐倉 光
冷静なんだなぁ
佐倉も経験はあるからそこまで驚いたりはしないけど、それだけにヤバさが分かるのでビビっております。
この状態の時ほぼ自分じゃなくなってたな……! とか
牧志 浩太
冷静なんですねぇ。自分が一度そうだったからこそ分かってしまう佐倉くん、つらいぞ!
牧志くんは平静なのに傍から&佐倉くんから見ると異様なの、PLはたいそう楽しんでおります。
佐倉 光
「落ち着いてるってお前それ、驚けなくなっちゃってるだけだからね!?
それなのに《SANチェック》は入るんだぞ酷くね!?」
牧志 浩太
「うん、分かっている。俺はおかしいし、色々と失っているな? こうやって心が凪いでしまっているのも、そうだと思う」
佐倉 光
「やべぇ、本格的に牧志がおかしい!」
牧志 浩太
「《SANチェック》は、佐倉さんがいるからだな。佐倉さんの心が流れて来るから、辛うじて感情がどういうものだったか忘れずにいられている。
だから、分かる。それはたぶん、いいことだ」
佐倉 光
「えー、そうかぁ? あれ心が壊れてるって事だろ? 壊れる、つまりはあるから確認できる、って、それでしか確認できないのやべぇな」
KP
なるほどそういうことかぁ、と思うkp。
牧志 浩太
ダメージがあることで存在を確認できますからね。
あと、佐倉くんの情動が流れ込んでくるおかげで、感情というものを忘れないでいられる。
佐倉 光
(無表情の牧志ってなんか怖い……)
牧志 浩太
牧志くんが笑わないし笑っていても笑っていない。
牧志くんは自分ともう一人の自分の境界が溶けつつあるせいで、二人の記憶も融合しつつあって、それが「二人分の記憶である」ことが分からなくなりつつあります。戻ったらそれもきっと元に戻る!
KP
なるほどそういう。
お陰で佐倉まで混乱している。
牧志 浩太
「どっちって、何を言ってるんだ?」はそこですね。
KP
おそらく融合したからと言って、上書きされた記憶が消えるわけでもないんですよね。
でも、ばらばらになった記憶の隙間に、なにか今まで見えなかった物が見えるといいなぁ、そんな感じでちょこちょこ記憶シーン突っ込んでます。
想定の記憶は後三個あったかな……4個くらいとか大嘘だったわ。
牧志 浩太
どちらがどちらか区別できなくなって、グチャグチャになってる感じですね。85%と15%の記憶のままなのはいっしょ。

でも、その隙間で忘れられていたものなのか、それともドリームランドに繋がっていた、「上書きされる前の時点で停まったままの」彼の夢なのか、そういうものからなにか今まで見えなかったものが見えているのかな、っていう感じで走っております。
あと3個! 楽しみ!
KP
継ぎ目ののりしろにあったものが見えてるみたいな。
牧志 浩太
そうそう。>のりしろにあったものが
「波照間の」「牧志くんの」ってタグが失われてごちゃごちゃになった分、同一時点の記憶に隠されていた牧志くんの記憶がチラ見えしているみたいな。
KP
いいですねぇ。
ちょっとしたお土産、持って帰って欲しいな。
解決には至らなくてもね……
牧志 浩太
ぜひとも持って帰りたいですね。少なくともユキちゃんの記憶と本の記憶という、とても大事な記憶が彼のノートに刻まれた。
本の記憶、かなり彼の原点に近いところっぽいですしね。
KP
そうですねー、なんとなく配置したものをいい感じに絡めてもらえて、嬉しいです。
牧志 浩太
わーい、こちらこそ好き勝手させてもらえて嬉しいです。
KP
記憶、これからどんなの出るかチラ出しした方がいいですか?
ぶっつけがいいですか?
牧志 浩太
あの署名はたぶん、工具の名前と同じ名前なんじゃないかなぁ。
ぶっつけ本番で口から出任せしますので、伏せておいてください! 出た時の楽しみが欲しい! チラ見せで1週間置かれたらPL爆発しちゃう!
KP
了解でーす!
牧志 浩太
あと、直前でどんな描写したかでだいぶん変わると思うので、事前には考えない方が楽しいかなーって。>記憶の描写
KP
まあ確かに。

KP
やらねば。
やらねばKPも破裂する。
終わりたくはないが進めたい!
牧志 浩太
分かる!!!!!!!!!!!!!!!!!
楽しすぎて終わってほしくないけど進めたい
KP
まだね、我々には予定がいっぱいありますからね!
牧志 浩太
ありますからね! 生還するぞー!
あと記憶もなにげにまだ3つあるので超楽しみなんですよ
KP
いい感じにハマってくれるといいなぁ、記憶……
牧志 浩太
いい感じにはまらなかったら奪取してはめます(強引)
つまり何の問題もありません 楽しみ
KP
キャーステキー!
今回のも録画してるから動画作るけど……
牧志 浩太
あっ楽しみ 牧志くんが終盤ずーーーーっと無表情ということの異様さが際立ちますね
KP
最初撮ってなかったのが残念になっちゃうな。
牧志 浩太
ですねー
なお第三話冒頭から「驚いた顔」「怒った顔」の代わりに「真顔」(今のやつ)を使っているのは意識的にそうしています。
KP
そうなんだろうなぁ! って!!
牧志 浩太
わーいおわかりいただけてた!
録画のおかげで今回終盤(牧志くんがずーーーっと無表情)の異様さが際立ちそうで嬉しい
佐倉 光
「怖いんだよマジで……
俺あそこまでじゃなかったろ!?」
牧志 浩太
「佐倉さんの時よりひどくやられてる、って話だったし、それに異様な物を見過ぎて俺も、ダメージを受けているんだろうな。そんな気がする」



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本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


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Zephyranthes 第九話 『Alice in Mirror World』1

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