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こちらには『刻の牢獄』
ネタバレがあります。

本編見る!
KP
丘にはだれもいなかった。
無論、最初から誰もいるはずがなかったのだ。

空は曇っていて、星は見えない。
冷たい風にコスモスの花びらが舞い上げられていた。

何時間経とうと、町が眠りについて真っ暗になろうと、東雲はそこに現われなかった。
波照間 紅
空を見上げていれば、呆気なかった。
信じていられると思った気持ちは、何だったのだろう。

彼女は、もういない。

もういないのだろうか。
本当に。

それでも諦めきれずに、夜更けを回るまでそこにいた。
KP
一際強い風が吹き、月の光が雲に覆われる。
雲間からさす僅かな光のもと、あなたは一瞬、目を閉じる。

風が止み、虫の音が消えた。
耳が痛くなるような沈黙のなか目を開くと、舞い上げられたコスモスの花弁が目の前で止まっていた。

世界が沈黙し、止まっている。

その中で、大きな風車の羽根だけがかわらずゆっくりと回り続けていた。
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1d3
波照間 紅
1d100 65 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→3→決定的成功クリティカル)!
KP
覚悟してたのかな!?
波照間 紅
「何も起きないこと」よりはずっとよかったということなのかもしれない
波照間 紅
「──え、」
はっ、と目を開く。座り込んでいた腰を上げる。思わずコスモス畑の中を歩き出す。

世界が。世界が、止まっている。
辺りを見回しながら、停止した世界の中で、唯一動いている風車を見る。
開いていたりしないだろうか、あの扉が。
KP
扉は開いていた。
この静止した世界であなたひとりを誘う食虫植物のように。
波照間 紅
「……、」
ごくり、と息を呑む。
辺りを見回し、誰かいないか、他に気になるものはないか、確認する。

最初からこの風車には、怪しい気配と、不穏な動きばかりがあった。
危険だ。
そう思う。感覚が警戒を訴えていた。

けれど。
ようやく、事態が動き出したんだ。

鞄の中にCOMPがあるのを確認する。
周囲に他に気になるものや人の姿がなければ、扉の前まで行って、中の様子を窺う。
KP
天体や風すら静止した世界に、あなた以外動くものは風車のみだ。
世界が止まっているのか、それともあなたが囚われたのか、
あなたには区別がつかない。

風車の中を覗くと、そこには機械仕掛けの大きな空間があった。
沢山の歯車が噛み合い、回っている。
中央にはその中をぐるりと回って登る螺旋階段があった。

機械がカタカタとぎこちない音を鳴らす中、
歯車とは別にカチリという秒針の動くような音が
上の方から一度だけ聞こえたような気がした。
波照間 紅
その巨大な空間を一度ぐるりと見回す。
まるで時計の中のようだった。脈打つ臓腑の中のようだった。
その巨大な歯車に、嚙み潰されてしまうのではないかという感覚を覚えた。

意を決して、螺旋階段へと踏み込む。
囚われたのではなく、飛び込んだのだと思うことにした。
KP
踏み込む。
回り続ける歯車が、入り込んだあなたを歓迎するように音を鳴らす。
それは機械の話し声のように絶え間なく風車の中に響き続けている。

あなたが階段を上り、音の聞こえた方へ歩いていくと、
そこにはこの場に似つかわしくない、人の背丈以上もある大きな柱時計があった。

時計の傍には「提供:星空時計館」と書かれたプレートがかけてある。
それはまさにあなたがあの時計館で見た時計とそっくりのもので、
こちらも同じく動いてはいない。
時計の針は、0時をさしたまま静止していた。
波照間 紅
時計と正対する。
あの時も時計は動いてはいなかったのに、ここでは、時そのものを止めているようにすら思えた。

階段はまだ続いているだろうか。
ここに、柱時計と歯車以外のものはあるだろうか。
KP
階段はこの時計を目指していたのだろう、
一体何のために設置されているのかも分からない無数の歯車と機械類が覆う壁の中、
上は伽藍堂の塔の中には時計がそびえるばかりだった。

時計の中からカチカチと秒針を刻む音が幾重にも聞こえた。
その中に混じって誰かの声が聞こえてくる。

『もう一度、戻りたい世界は……戻りたい刻はあるか』
それは意味を持たぬ『音』だった。
だというのにあなたの脳裏に意味を結んだ。
波照間 紅
「……」
戻りたい時なら、あった。あるに決まっている。
最初からすべてが遅かったのだから。

ただ悪魔使いとしての感覚が、即答を避けさせた。

「お前は、何者だ。代わりに何を望む」

問い返す。
KP
応えは、ない。

時計に目をやると、止まっていたはずの時計の針は反時計回りに動き出していた。
同時に、風車の中で回っていた歯車もまた、逆方向へと回り出す。

短針が1周、2周、3周と回り、辺りの景色が歪んでいく。

歪んだ景色は空間を曲がりくねらせ、オーロラのように歪んで輝いた。
不自然なまでの歯車が連なる壁だった所に、星空が重なって見えた。
同時に、あなたの体が鈍く輝き、その体から結晶のような何かが浮かんでは弾ける。

歪むオーロラ。体から溢れる光の結晶。
波照間 紅
「!」
しまった、考えただけで心を読んでくる手合いか!?

思わず腕で目の前を防ぐ。その腕から光が弾けて散る。景色が歪んで曲がる。
KP
その中で、あなたは目にする。


星空が広がる丘の上に人影が佇んでいた。
溺れそうな星の海を青白い顔で見上げていたのはひとりの女性。

東雲圓華。

彼女はふと視線を落として、嬉しそうに微笑むと口を開く。
東雲 圓華
「また逢えた……!」
波照間 紅
「あ、」

彼女が、そこにいた。

微笑む彼女の姿と、頬に紅をさして冷たく眠る彼女の姿が、だぶって見えた。

「東雲さん、」
KP
彼女が見ているのはあなたではなかった。

彼女の視線を追えばあなたの背後にはあなた自身が立っており、
怪訝そうに、困ったように首をかしげていた。
東雲は寂しそうに笑って続けた。
東雲 圓華
「ごめんなさい、人違いだったみたいで……
あまりにも兄に似ていたものですから」
KP
それはあなたが知らない、東雲とあなたの出逢いの光景だった。
波照間 紅
その姿は、何の違和感もない、自然な初対面の二人に見えた。

そうか。
これが、本当に初めて僕と彼女が出会った時だったんだ。

それなら、どうして僕はそれを覚えていなかった?
僕はあの時、初めてここに来たはずだ。休みは一週間でぎりぎりだった。

繰り返しているというのか。
時間が、既に。
KP
あなたが見つめる幻影は幾重にもぶれて
違う光景を映し出す。

星空が広がる丘の上に佇む東雲はあなたと出逢う。
東雲 圓華
「私の事を覚えている? 波照間さん」
KP
『あなた』は知らないと答え謝る。
東雲 圓華
「覚えているはずがない……あなたはまだ知らないのだもの」

KP
星空が広がる丘の上に佇む東雲は、あなたと出逢う。
東雲 圓華
「初対面で信じられないと思うのだけれど、
私たちは何度も出逢っているのよ。あなたは波照間さん、そうでしょう?」
KP
『あなた』は不思議そうな顔をし、話すよう促す。
東雲 圓華
「けれどきっと『あなたは』忘れてしまう。
いいえ、起きなかった事になってしまうのですね」

KP
星空が広がる丘の上に佇む東雲は、何度も何度もあなたと出逢う。
東雲 圓華
「私は人間ではありません。
ここにはもういらっしゃらないで」
KP
『あなた』は事情を尋ねようと優しく問いかける。
東雲 圓華
「不思議な方……私が怖くないの?」

KP
星空が広がる丘の上に佇む東雲は、何度も何度もあなたと出逢う。
東雲 圓華
「何も訊かずに私を連れて行って下さいませんか?」
KP
『あなた』は訝しげにしつつも東雲を連れ丘を下るが、東雲の姿は丘を降りると消え去ってしまう。
東雲 圓華
「私はここから離れられない」
KP
絶望の呟きが落ちた。

KP
何度も何度も、『あなた』は初めての出逢いを繰り返していた。
そのたび東雲はあなたと話し、喜び、嘆いていた。
『あなた』は数日間このコスモス畑を訪れ、そしてまた時は戻り、
はじめての『あなた』がここを訪れる。
数え切れないほどの出逢い、気が遠くなるような時間、
あなたと東雲は出会い続けた。
波照間 紅
ああ、そうか。
知っているわけだ。

話していないはずのこと、知らないはずのことまで、知っているわけだ。

あんな、泣きそうな、辛そうな、身を裂く痛みを堪えるような顔を、したわけだ。

繰り返していたんだ。
僕らは、ずっと。

僕が諦めたくないと叫んで伸ばした手だって、彼女はもう、何度も何度も見ていたんだ。
KP
昼間の明るい空の光景もあった。
東雲はコスモスを眺めていたが、訪れたあなたの姿を見て駆け寄る。
東雲 圓華
「昼間のここも素敵でしょう?」
KP
彼女の声にあなたは反応しない。のんびりと風車を眺め、コスモス畑を散歩する。
東雲 圓華
「夜にまた来てください、ここで待っていますから」
KP
誰に届く事もない彼女の声が寂しげに聞こえた。
東雲 圓華
「私はあなたに救われています。だから、私の死を知っても哀しまないで」
KP
ある時のあなたは風車の裏に、彼女の痕跡を発見していた。
東雲 圓華
「これは罰です。私は罪人。
私は報いを受けているだけ」
KP
あなたの隣で東雲は囁いていた。
あなたはやはりそれに反応することはなかった。

あなたは、趣味の話をした。
あなたは、星空の話をした。
あなたは、うっかり仕事の話をしかけて口を濁した。
あなたは、


東雲の手はあなたの体をすり抜ける。
言葉は届かず、虚空に消える。

三度の夜を越えては美しい星空と花畑だけがある刻の牢獄の中、
二人は出会い、別れ続ける。
東雲 圓華
「あなたといきたかった」
KP
最後のときに彼女が口にするのは決まってその言葉だった。
それはあなたに届く事もあれば、
届かない事もあった。

ただ日々を繰り返す彼女にとって、
あなたとの会話だけが唯一の変化であり楽しみだった。
正気を失ってしまいそうな牢獄の中でただひとつの希望だった。
KP
波照間さんが佐倉みたいな事試そうとするかどうかは分からないけど、
あまりに多くのループの中で、波照間さんが悪魔使いだという事を知った彼女が、「悪魔として」この丘から連れ去って欲しいと頼んだループもあったかも知れない。
波照間 紅
それはあったんじゃないかな、と思いますね。悪魔の力を借りて連れ出そうとしたループもあっただろうし、そうしようとしたループもたぶんあった。
KP
当然エラーでます。ただのゴーストじゃないからなぁ……
波照間 紅
廻る、廻る。
出会い、別れ続ける。

そんな別れを、彼女は。
もう、何度。
もう何度、そこから出たいと望んで。僕の手を取ろうとして。
僕は、彼女は何度繰り返して。

それは誰の罪だったんだ。
最初に始めてしまったのは、誰だったんだ。
どこから始まって、……どうやったら、終わらせられる。
KP
赤黒いコスモスの花弁があなたの視界を覆う。
カチリ、と秒針の止まる音と共に、あなたは目を覚ます。

そこは風車の中。
目の前には動き出した時計があり、歯車は正常に回っていた。
波照間 紅
「……」
動き出していた時計を、睨むように見上げる。

戻りたいか、とお前は言った。もし彼女が、戻りたいと望んだことがあったのなら。その結果が、……あれだとすれば。

戻りたいか、とお前は言った。僕は、あのとき戻りたいと望んでしまった。その結果が、……あれだとすれば。

それは、誰の罪なのか。
KP
時計はあなたの問いに答えることなく、歪んだ時を刻み続けていた。
波照間 紅
終わらせる手がかりを求めて、目の前の時計に近づく。
KP
足元で何かがくしゃりと小さな音を立てた。
紙が落ちている。
波照間 紅
音に気づいてそれを拾い上げる。
KP
それは一枚の羊皮紙だった。
日本語で詩のようなものが綴られている。

「我が時 あの頃へ
外なる神 ヨグ=ソトースよ
願い求めた場所へ 我が魂をもう一度
戻したまえ 還したまえ

止まった刻の檻の中 3度唱え
その魂 願った場所へと還される」

波照間 紅
「これは……、」
紙を裏返してみて、裏に何かないか確認する。
KP
裏側には何も記されていない。

また、時計もただ変わらず動き続けているだけだ。
あなたはふと、階下が先ほどより明るいことに気付くかも知れない。
波照間 紅
それは朝が近づいて外が明るくなってきている、といったものだろうか。
それとも、何か別の光だろうか。
KP
朝、という感じではない。
先ほどまではあなたが手にする懐中電灯の明かりがないと物も見えないような暗闇だったのに、
扉からあわい光が差し込んできている。
これは、月明かりだろうか。
波照間 紅
降りて、外の様子を確認する。
KP
大詰めだと思うじゃん?
もうちょっとだけ続くんじゃ。
波照間 紅
ほほぅ。

東雲視点(ネタバレ)
KP
あなたの始まりの時に戻る。いつも通りに。繰り返したままに。
東雲 圓華
切り替えなくちゃ。
切り替えなくちゃ……。
あの波照間さんは行ってしまった。もう二度と会えない。
切り替えなくちゃ……。

空を見上げて星に祈る。

今度は一緒にいけますように。

空しいだけの悲痛な言葉を口にして、星を見上げる。
KP
星ですらも見慣れて、どこにどういう星があるかわかるあなたは、
いつどこに星が流れるかはわかりきっている。
それでも願いは言い切れない。

KP
外を見ると、雲一つない夜空に月が出ていた。
さっきまで雲が天を覆っていたはずなのに。

その月明かりの元、空を見上げている人影があった。
波照間 紅
扉の傍らで、その人影に目を凝らす。
それは。
もしかして。
KP
東雲圓華だ。
あなたに背を向け、時折道路の方を見つめていた。
誰かの訪れを待つように。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
もうすぐ来るはず。
今度の波照間さんがあの坂を登って……

波照間 紅
まさか、と気が逸る。
道路の方から来る誰か。
それは、もしかして。もしかして。

咄嗟に鞄に手をかけながら、彼女のもとへ駆け出す。
KP
ばたん、と背後で扉が閉じる。
びっくりして背を震わせ、東雲がこちらを振り向いた。その口が音のないままにあなたの名を呼んだのが見えた。

彼女は驚いているのか目をぱちくりさせて、それから嬉しそうに笑った。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
波照間さん……!?
KP
今までに波照間があの道以外から現われたことはなかった。
そもそも、あなたの働きかけが変わらなければ、彼は常に同じ行動を取るはずなのだ。
東雲 圓華
私、ぼうっとしていたのかしら?
ううん、とにかく挨拶をしなくちゃ。

東雲 圓華
「こんばんは、お会いできて嬉しいわ、はじめまして」
波照間 紅
「今晩は。僕も、会えて嬉しいです。……すみません、誰かを待っている所でしたか?」

身体が身構える。彼女の背後、道路の方をじっと見据える。
KP
あなたが見つめる先から『あなた』が道を上ってくることはなかった。
東雲視点(ネタバレ)
KP
波照間は、いつも彼が登ってくる道の先を気にしているようだった。
東雲 圓華
一体何が起きているの?
この波照間さんはいつもの波照間さんとは違うの?
どうして?
今までこんな事などなかったから、頭がごちゃごちゃしてしまう。
繰り返しが終わったの?
でも世界は変わらず色がなくて、波照間さんがいて……
KP
あなたはふと、とても嫌な予感に囚われた。
波照間があなたの目の前にいるのはいつものことなのに、決定的に何かが間違っている気がした。

東雲 圓華
「……はい。ええ、そうです」
KP
東雲はまだ動揺しているようだった。
東雲 圓華
「あの、どちらからいらしたのですか?」
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
あなたはどこ・・から来たの?
あなたは何者?
いつもの波照間さんではないみたい……

波照間 紅
「東京から、……僕の名前、ご存知でしたか」

前から視線を外さないまま、一瞬、スマートフォンの画面の日付表示に目を走らせる。
KP
日付は9月7日。夜21時頃だ。
東雲 圓華
「い、いいえ。
どこかでお会いしましたかしら」
KP
瞳に困惑を宿し、東雲はあなたを見つめている。
明らかに、彼女が知る現象ではないのだ。
波照間 紅
「ああ、すみません、名前を呼ばれたような気がして……、気のせいですね」

彼女の顔を、その手を見る。
青白いのか、血の色を宿しているのか。生きているのか、生きていないのか。
KP
彼女は9月6日には既に殺害されている。
その肌は青白く、それを知るあなたには否応もなく彼女が普通の人の身ではないことが知れるだろう。
おそらくほんの少し歩いたところには、殺害された彼女の痕跡が生々しく残っているに違いない。
東雲 圓華
「そうですか、でも私はあなたのお名前を知りません。
せっかく出会えたのですもの、お名前を教えていただいてもよろしいですか?
私は」

彼女は名乗ろうとする。
波照間 紅
身構えていた身体から少し、力が抜ける。微か、眼を伏せる。
そうか、「その時」ではない。やはり全部終わってしまった後で。

それなら、これは一番最初に僕と彼女が出会った、あの時だろうか。

彼女のそれに巻き込まれたのではないかという推測が少しだけ過ったが、どこか、いっそそれでもいいとでもいうような破滅的な想いが心の端を震わせていた。

「失礼しました、僕は──」
応えて、名乗ろうとする。
KP
彼女が名乗る前に東雲の名前を言ったりはしないでおく?
波照間 紅
それはしません。
東雲 圓華
「私は東雲圓華と申します。
波照間さん、とおっしゃるのですね」
KP
彼女は大事そうにあなたの名前を繰り返した。
そして嬉しそうに話しかけてくる。
東雲 圓華
「こちらへは星を見にいらしたのですか? いい時期に来られましたね」
波照間 紅
「ええ、そうです。あなたは、こちらにお住まいですか?」

あの時の会話を辿るようにしながら、コスモス畑を見渡すようにして辺りを見回す。
あの時と比べて、何か他に違いはあるだろうか。
東雲 圓華
「はい……そうです、近くに」
KP
彼女はあなたが旭町に宿泊していることを知っているためだろう、自分の住む町を濁した。

全てはあなたの記憶にあるままだ。
なんなら風にそよぐコスモスの動きですら、あの日と全く同じなのだろう。

違うのはあなた自身だけ。
東雲はあなたが初対面であることを前提に話しかけてくるので、会話の内容は当たり障りのないことから始まる。

東雲はあなたが語っていないことを口にしないように、少しずつあなたから会話を引き出してゆく。
矢継ぎ早な質問攻めは、おそらく早くあなたと気兼ねなく話がしたいためだと気付くかも知れない。
『知らないはずのこと』を少しでも早くなくすためだ。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
少しずつ少しずつ、いつもの流れに戻って行く。
そう、最初が少し違うだけ。
いつも通りに私たちは出会って別れる。
それだけのことよ。
きっと前の波照間さんがいつになく手を伸ばしてくれたから、少しだけ影響が出た、そうなのかも……

波照間 紅
ふと、会話の中の違和感に気づく。
そうか、彼女は。

「東雲さん」
ふと口を閉じて、彼女の眼を真っ直ぐに見た。
「知っているんですね、僕のことを。
あなたにとっても、これは初めてのことではないんですね」

驚きに聞こえないように、問い詰めるようにも聞こえないように。
ただ、静かに事実を確認する調子で、彼女に問うた。
東雲 圓華
「ど、どうしてそんなことを?」
KP
彼女は動揺していた。
東雲 圓華
「あなたは、今日ここに旅行に来たばかり、なのですよね?
あなたも私と話したことがある、とは、どういうことなのですか」
KP
その問いかけには、どこか祈るような響きも混ざっていたように思えた。
波照間 紅
「僕とあなたが会ったのは、これが初めてじゃない。もう、何度も、何度も繰り返している……、そうですよね。

僕は、その殆どを覚えていない。
けど、一度だけ覚えているんです。
9月10日の夜が来たのを。
あの風車の扉が開いて、時計が逆に動き出したのを」

記憶を辿るように、自分の胸に手を当てる。震える彼女の眼を静かに、じっと見つめた。
東雲 圓華
「風車? 時計?」
KP
東雲は不安そうに風車の方に振り返った。
東雲 圓華
「私には、あなたのいっていることがよく分からない、けれど」
KP
彼女の目から涙が溢れた。
東雲 圓華
「あなたは『私』を知っているの?
私がどうしてここにいるのかも?
あなたも未来から?」
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
ああ、そんな、そんなことがある?
この波照間さんは、あの波照間さんの続きだなんてことが?
KP
嫌な感覚は増すばかりだ。
彼は何か、恐ろしいことを行ってここにいるのではないだろうか。
あなたは強くそう感じるだろう。

波照間 紅
「……最後まで、聞けなかったんです。東雲さん、あなたがどうして、そんなことになっているのか。

でも、知っています。僕は前にも今日あなたに会って、三日後に別れて、そして、戻ってきました」
東雲 圓華
「こんなこと、初めてで、どうしたらいいのか」
KP
戸惑いが東雲の表情を満たした。

〈目星〉どうぞ
波照間 紅
1d100 76〈目星〉!  Sasa BOT 1d100→63→成功
東雲 圓華
「ああ、けれど、私、嬉しいです。
きっと、何か危険を冒したのでしょう?
お願いだから、危ないことはしないで……」
KP
東雲の顔には、戸惑いと喜びと、他にも複雑な表情が見えた。
あなたとの『再会』を素直に喜んでいるだけではないのかも知れない。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
嫌な予感に背を向けるように波照間さんとの楽しい話に意識を向ける。
だってこんな素晴らしいこと、二度とないかも知れないんだもの!
私の悩みを知っている波照間さん、私を知っている波照間さんと一緒にいられるなんて!

東雲 圓華
「昨日の……未来のかしら。
前にしたお話の続きをしましょう。
私は、前にあなたが言っていた、人ではないものとの交流の話が聞きたいの」
KP
ともあれこう言った彼女の笑みは嬉しそうだった。
波照間 紅
「……、ええ、そうしましょう。僕も、……嬉しいです。また、あなたと話せて」

嬉しい。
そう言う表情には、喜びだけではなく、悔しさが混じる。
KP
東雲はひたすらに、あなたの話をねだる。
その表情は、今までに見た物の中では一番明るかったかも知れない。

おそらく度重なるループで聞いた話からか、
随分と踏み込んだ話も聞きたがった。
あなたは、どんな話をする?
波照間 紅
人でないものたちとの交流の話をしただろう。不思議な縁で知り合った、ひとりの友人の話をしたかもしれない。

まだ九月なのに、ここは随分と冷え込む。きっと、一番口数が増えたのは、空と海の間に浮かぶ故郷の話だ。
頭だけ覗かせて輝く、十字の星の話。

ふと、こんな話を思い出した。
死んだひとは、海の彼方に流れてゆくのだと。
KP
それは口にしますか?
波照間 紅
口にはしません。
KP
東雲は楽しそうにあなたの話を聞いていた。
下がり続ける気温を気にすることもなく……
いや、実際気にはならないのかも知れなかった。

彼女の故郷は旭町であるらしい。
穏やかで星が綺麗なこの町を、退屈だと思いながらも好きなのだと彼女は語った。
東雲 圓華
「沖縄、いつか行ってみたかった」
KP
憧れを込めて彼女は言う。
星は巡り、夜は更ける。
波照間 紅
寒さを感じて、小さく身を震わせた。どうしていいか分からないまま、あの夜の続きを味わった。

「機会があったら、行きましょう。案内しますよ」
星は巡り、時間がただ過ぎていく。
KP
どれだけ話しただろうか。
空が白み始める頃まで話しただろうか?
波照間 紅
夜が明けるまでずっと話していただろう。別れを惜しみ続けるように。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
ああ、朝が来る。
ずっとずっと夜が続けばいいのに。
朝なんて来なければいいのに。
KP
嫌な予感は、楔のようにぎりぎりと胸に食い込み続けていた。
東雲 圓華
そうか、波照間さんは私が殺されたことを知っているのだ。
もしも私を殺したことについて、あの人に言ったりしたら。
そんなことになったら、波照間さんも兄さんや私と同じように?
KP
嫌な予感の正体はそれだったのかもしれない。
そう思おうとしても、やはり正体不明の不安はつきまとい続けていた。

東雲 圓華
「そろそろ、朝ですね」
KP
空が少し明るくなり始めた頃、東雲はぽつりと呟いた。
東雲 圓華
「とても楽しかった、ありがとう、波照間さん……
もし、できるのなら、明日もお話ししたいです。
ただ……
私が死んでしまったことについてはあまり気になさならいで。
もう終ったことですし……ね」
波照間 紅
「もう、終わったこと……、か。ここに戻ってきたとき、もしかしたら、間に合うかもしれないと思ったのにな」
苦笑のような、泣き言のような一言が、思わず漏れてしまう。

「あなたに……、言うことじゃないな。すまない。また、明日も会いたいな」
KP
間に合うかも知れない、そんなあなたの言葉に、東雲は少し泣きそうな顔をした。
東雲 圓華
「こうして出逢えたことか、私には奇跡に思えるの。
きっと、これ以上を望むべきではないのよ……
また、明日ここで待っているから」
KP
東雲の姿が朝の光の中に溶けてゆく。
波照間 紅
「ええ、また明日……」
朝の光の中に溶けてゆく姿を、最後のひとかけらが溶けきるまで、ずっと、ずっと見送っていた。
東雲視点(ネタバレ)
KP
波照間の目線はあなたを見失ったようだった。
東雲 圓華
昼間見えない、ということは変わらないのね……
少し期待していたのに。

一応波照間さんを追って畑を出てみたけれど。
KP
やはり今までと同様、風車に戻ってきてしまう。
あなたがここに括られているという事実は変わらないようだった。
東雲 圓華
いいわ、今までよりずっといい。
明日の波照間さんは、昨日の話をちゃんと覚えていてくれるのだもの。
今までよりももっと色々な話ができるのだもの。

KP
誰もいなくなった丘の上に9月8日の朝が訪れる。
丘をくだるとそこには、あなたの車が駐車してあった。
あの日あなたは確かにここに車を止めていたのだ。

ここから降りたあなたはどこへ行ったのだろう。
波照間 紅
あの時は確か、キャンプ場に戻ってテントで眠った。起きてから色々と調べ物をして、それから食堂へ向かって食事を取りながら話を聞いたはずだ。

あの時感じた後悔と、いま感じている痛みが、悔しさが、重なる。
KP
姿は見えなくとも、東雲は
今もあなたを見つめているかも知れない。
あなたに話しかけているのかも知れない。
ただ昼間の星のように見えないだけなのだ。

あなたのポケットで、柱時計の前で拾った紙きれが微かな音を立てた。
波照間 紅
それは、手を出すべきものではない。
見るべきものではない。目を向けるべきものではない。
直感が。いや、本能に近いものが、そう訴えていた。

それでも、……それでも、もし。
戻れるのなら。
戻せるのなら。

今更にやってくる眠気を感じながら、暫く、明けてゆく空をぼんやりと眺めていた。
KP
キャンプ地に戻って少し寝ますか?
ほか、何かしたいことなどありますか?
波照間 紅
キャンプ地に戻り、夜に備えて睡眠を取っておきます。
それから風車を調べたり、食堂で話を聞いたりしますが、特に変化はないかな。
KP
そうですね、訊くことが同じなら同じ返事しか帰ってきませんし、風車の扉が開くこともありません。
行く時間帯が違えば、出てくる料理が少し違うかも、くらいでしょうか。
波照間 紅
では、その日は状況が変わっていないことだけを確認して夜を待ちます。
KP
東雲さん、波照間さんを巻き込みたくないと思ってるから、話を振らないなら事件絡みのことは一切語ろうとしません。
波照間 紅
開示ありがとうございます。切り込むか。
KP
かといって、語らせなきゃ進まんというわけでもないので、
波照間さんの思うとおりにしていただければいいと思いますよ。
ちょっと話が分かりやすくなるかな、って情報です。
波照間 紅
お、それは開示ありがとうございます。流れ優先しつつ切り込めそうなら切り込んでみようかなって感じにできそうで助かる。

KP
その日もあの時と同じ日暮れが訪れる。
ラジオやネットなどを見たり聞いたりするのなら、すでに読んだり訊いたりした情報が『最新のニュース』として入ってくるという不思議な感覚を味わうだろう。
風車で起きた殺人事件についてはまだ報道されていない。
あれが報道されるのは、10日の朝だ。
波照間 紅
あの時は何が何だか分からず、随分彷徨ったな……、と、数日前の事なのにもう、懐かしいような気分にすらなっている。

コスモス畑を黄金に染める夕暮れを眺めながら、一つ、決意を固めた。
KP
今日も夜がやってくる。
あなたはもう見慣れたかもしれない、満天の星空とコスモスの海。
この牢獄はあまりにも美しかった。

夜の21時頃にコスモス畑にいると、弾んだ声があなたに呼びかけるだろう。
東雲 圓華
「波照間さん、こんばんは!
今日も来てくれたのね、ありがとう!」
波照間 紅
「今晩は、東雲さん。綺麗な夜ですね」
向かい合う眼は、声は、何かを決めてしまったかのように静かで、真剣だ。
彼女の声を、随分と聴き慣れたような気がする。
東雲 圓華
「ここはいつだって綺麗よ。それだけが救いかしら」
KP
東雲は冗談めかして笑う。
『前』のときより随分と冗談を言ったり笑ったりといったことが増えたと感じるだろう。
だが東雲はあなたの真剣な顔に気付くと、少し怯んだような顔をした。
波照間 紅
「そうですね、本当に。星の数を数えていれば、少しは時間が過ぎるんでしょうか。

……東雲さん。教えて、くれませんか。
あなたがどうして、ここにいるのか。

あなたの『罪』とは、何なのか」
そっと、彼女の手に手を伸ばす。
離すまいとするかのように。
東雲視点(ネタバレ)
KP
波照間の手があなたの手に触れる。
東雲 圓華
このまま手を振りほどいて逃げれば話さなくて済む。
私が犯した恐ろしいの話を。けれど……

嘘はつきたくない。

この波照間さんになら話すべきかもしれない。
私がどんなに酷いことをしたか、私がどうしてここにいるのか。
そんなことであっても知って欲しいと思ってしまった。

彼なら、嫌わずにいてくれるだろうか。
せめて、忘れずにいてくれるだろうか。

KP
東雲は驚いたように手を引こうとした。
しかし引くことはせず、あなたの手に触れられることを選んだ。
時に見捨てられ、生命の熱を持たない冷たい肌が、あなたの手にひやりと触れる。
それはあなたの体温で温まることもなく、ただそうしたものとして在り続ける。
東雲 圓華
「私の、罪の話が聞きたい?」
KP
東雲は深いため息をついた。
東雲 圓華
「そうね、波照間さんには本当に色々なことを話してもらったのだもの。
それでいて私の話をしない、というのは不誠実ね」
KP
東雲はあなたを丘に設置されたベンチに手を引いてさし招いた。
東雲 圓華
「ただ、ひとつ約束して欲しいの。
けっして私の仇を取ろうなどと思わないでくださいね。
これは報いだから」
波照間 紅
「分かりました」
頷いて、彼女の傍らに座る。
「仇を取ろう、なんて、考えないことにします」

東雲 圓華
「私には兄がいたのよ。優しくて勇気ある人だった。
私はよくここの花畑に星を見に連れてきてもらったわ」
KP
東雲はぽつりぽつりと語り始めた。
東雲 圓華
「ある日兄が言ったの。
悪い神様が世界を壊そうとしている、止めなくてはならない、って。
私にはそんな話、信じられなかった。
それから兄はよく一人で出かけていくようになった……」
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
こんな荒唐無稽な話も、彼なら分かってくれると思った。
時折見せるほの暗い部分や、人ではないものに対する視線。
あの不思議な仕掛け弓、そして、一度私を連れ出してくれようとしてしていた何か。
それらはきっと、普通の生活では触れられない世界。
そんな彼ならば、と。
KP
あなたの胸の奥でまた何かが軋む。
そんな彼にこの話をしてしまっていいのだろうか。
東雲 圓華
波照間さんの真剣な目つきに勇気づけられて、話を続ける。

波照間 紅
その言葉を聞いたとき、微かに驚きを目に浮かべる。
それはどこか覚えのあるような驚きだった。
東雲 圓華
「夜に一人で出て行った兄を追ったら、人と争っていた。
意味はわからなかったけれど、兄の言っていたことは正しかったと、
その時に分かったの。

そのひとは何か、不思議な、良くわからない言葉を口にしていたの。
その時のことはよく覚えていない、
ただとても恐ろしいことが起きて、兄は」
KP
東雲は言葉を切った。
眼球がせわしなく彷徨い、呼吸が速くなる。
東雲 圓華
「兄は消えてしまった。
私はただ必死で、その人を落ちていたナイフで刺したのは覚えてる」
波照間 紅
「……」
ベンチの縁にかけた手に、僅かに力が籠もった。
東雲 圓華
「それから二年、私はその日のことを忘れて生きてきました。
身内のかたの怒りに触れるまでずっと。

誰かの大切な人を奪って、都合良く忘れてのうのうと生きているなんて、許されるはずがないでしょう?」

「だから、これは罰。仕方がないのよ」
KP
東雲は目を閉じる。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
そう、仕方のないこと。
私は罪人。私は人殺し。身勝手に人の愛する人を奪った犯罪者。
都合良く全てを忘れてのうのうと生きていた卑怯者。
人の幸せを奪っておいて、自分が幸せになどなれるはずがない。
KP
あなたの内側にナイフをもて刻まれこびり付いた血まみれの言葉は、あなたの内に罪悪感という深い根をはっていた。
それがいつ誰に刻まれたものか。あなたには良くわからなくなってきている。
それはあなたの思考と行動をがんじがらめに幾重にも縛り付けている。
東雲 圓華
これは私の報い。償い。
東雲は終造に殺害されたときに、彼の怒りと哀しみをひたすら浴び続けて死亡し、その影響を大きく受けている。
彼女自身も兄を殺されている、世界を守るためだった、ということを忘れているわけではないのだが、終造に対する負い目と強い自己嫌悪だけを強く抱えている、一種の狂気状態である。
これは彼女が死亡したときのダメージによるものであり、解決する見込みはない。
彼女は同じ時を繰り返しているため、基本前に進むことができないのだ。

波照間 紅
「……」

もう少し強く、力が籠もった。
誰かの大切な人。そんなことを、僕は考えたことがあっただろうか。

考えたことは、多分、なかった。
それよりも優先する事があったからだ。優先したい人がいたからだ。
KP
短期 逃亡
不定 記憶障害
あたりをくらいました。
波照間 紅
なるほど
メガテン本編のことと重なって方向性の違う重さが発生している
なやむ
KP
今、どーしよーかものすごく悩んでいる!!
波照間 紅
また悩ませている!! なんだ何が起きちゃったんだ
KP
いや、波照間さんのせいじゃなくてシナリオの問題、かな?
波照間 紅
なんだろ……
置き卓のいいとこ、そういう事態になった時にじっくり悩めるとこ
KP
まあ、あとで本当にどうしていいかわかんなくなったら相談します。
波照間 紅
はーい、その時はぜひ。綺麗なお話だし綺麗な流れを作っていきたい。
KP
波照間さん絶対気にしちゃうやつだし、東雲さんも気にするからなー。
波照間 紅
なんだろう人間相手のガチバトルかしら……それとも……
KP視点(ネタバレ)
KP
解決したときに、シナリオにはKPCの犯した犯罪についてどうなるかは書いていないけど、普通に考えれば父親殺害については残るんだよね。
悪い奴だったから別にほっといてOkってことだろうか?
いやー、でも東雲さんは思い出したら自首するよね……
まあうまくいけば正当防衛。駄目でも情状酌量で執行猶予ありって感じにするのが妥当だろうか?

この時波照間さんが何を気にするかといえば、人を殺すことに関してだったと思う。
事実的にはなかったことになるとは言え、解決するためには彼は終造を殺す必要があるからだ。


波照間 紅
「あなたは……、優しいんですね」

いちどき思考が彼女のことから自分の記憶に飛んで、ほろりと言葉が漏れていた。

彼女の手に、そっと手を重ねる。
KP
冷たい手は震えていた。
東雲 圓華
「むしろ、ね、私は感謝すべきなのかもしれません。
きれいな景色のなかで、優しいあなたと何度も出会って、ずっと独り占め。
こんな牢獄があるかしら。
もしこれからずっと」
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
ずっとこの波照間さんと繰り返せるなら、幸せかも知れない。

生きているのか死んでいるのかも良くわからない状態に、一緒に閉じ込めるということ。
そんな手段があるのなら。

一瞬とはいえ考えてしまった。
それは波照間さんから未来を奪うということ。
この人に私と同じ苦しみを負わせるということ。

私のような罪人ではない、優しいだけのこの人に。

KP
なにか言いかけて、彼女ははっと息をのんであなたから目をそらした。
東雲 圓華
「ごめんなさい」
KP
さすがに波照間さんそこ(人を殺して世界を救おうとした)までは話していないだろうし、共感はできなかったなー。
波照間 紅
さすがにそこまでは話してないですね。
こんな状況にこそあるけど、東雲さんは戦う人ではないし。彼女の優しさを損ないたくないし。
波照間 紅
「僕も、同じ事を思っていました。あなたをここから出すことができないのなら、いっそ」
彼女も、きっと同じ事を思ってくれていた。それが嬉しいような、どこか凶暴な気持ちが首をもたげる。
「すみません、重たいですね。でも、僕にはそれが罰だとは思えないんです。

僕も、同じ事をしたことがあるから」
波照間 紅
と思ってたけど、ぽろっと漏らしちゃいましたね。詳細は話さないだろうけど。
KP
あなたの言葉を聞いて、東雲の手が強くあなたの手を握った。
冷たく細い指は、猛禽の鉤爪か、犠牲者に食い込むトラバサミなどを思わせるような、
破滅への誘いのように。
東雲 圓華
「そう願ってはいけないと思うのに、ごめんなさい、嬉しいと感じてしまうの」
KP
東雲はあなたの仕事や、奇妙な事件への関わりについて深くは知らない。
しかし、そういった状況になることはあるのだと、薄々感じ取ったかも知れない。
随分と時間をかけて彼女は手の力を緩め、息をついた。
東雲 圓華
「もっと早く出逢えていたら、良かったのにね」
波照間 紅
「僕も、そう思います」

もっと早く出会えていたら。
せめて、あと一日。

そうしたら僕は、相手が何であれ彼女を選んだだろう、きっと。
間に合うかもしれないと思った時、僕は確かに考えていたのだ。それを。
東雲 圓華
「少しここが軽くなったわ。現金ね、私」
KP
東雲は恥じらうように胸に手を当てた。
東雲 圓華
「罪を告白したのは今回が初めて。
こうしたらあなたを巻き込んでしまう気がして、どうしても言えなかったし……」
KP
東雲は首を振って急に話題を変えた。
東雲 圓華
「『あなた』はどうやって『ここ』に戻ってきたの?」
KP
東雲は首をかしげた。
東雲 圓華
「今までは一度だってこんな事はなかったのよ。
あなたがここにいない時のことは私には分からないけれど、
一体何をしたの?」
波照間 紅
「あなたが何も言ってくれなくても、僕は、きっとこうしたと思います。

でも、言ってくれて嬉しい」
どこか悔しさが滲んでいた表情が、ふっと和らいだ。

10日の夜に起きた出来事について、少しずつ話す。
風車の扉が開いていたこと。巨大な柱時計を見つけたこと。時計の針が逆に回りだし、何度も何度も出会っていた自分達の姿を見たこと。
拾った紙のことについてだけ、まだ迷いがあり、口にはしなかった。
東雲 圓華
「そんなことが……」
KP
東雲は風車を見つめた。
東雲 圓華
「でも、あの扉が開いているなんて見たこともないわ。
私がこうなる前にもあの扉は閉じたままだった……」
KP
東雲はしばらく考え込んでいた。
東雲 圓華
「私が兄の言葉を信じるきっかけ……
あの日、あの場所に行くきっかけをくれたのは、
キャロルさんの言葉だった」
波照間 紅
「キャロルさん?」
東雲 圓華
「ええ、墓守の方。
あんな事になる前は、兄がよく相談に行っていたわ。
あなたが私のように捕まってしまわないように、
何か助言を貰えるかも知れません」
波照間 紅
「そう、だったんですね。
実は、僕にここに行くよう言ってくれたのも、あの方だったんです。

不思議な方ですね。
きっと何かをご存知なのに、悪い気がしない」
東雲 圓華
「私はあまり詳しくは知らないのだけれど、兄は頼りにしていたと思います。

ただ、波照間さん、気をつけて。
私は『あなた』が来てくれて本当に嬉しいのに、
どこか不安でたまらないの。
何か間違ったことが起きているような、そんな気がして」
波照間 紅
「間違った、こと……」
知らず、彼女と重ねていない方の手に力が籠もった。

あの紙はまだ、手元にある。
「ありがとう、気をつけることにします」
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
たった今も胸を押さえつける、重苦しい違和感。
彼はここにあってはならない。
彼はここから出て行くべきなのだ……

それは私が罪人だから?
罪人が喜びを得るのは許されないことだから?

東雲 圓華
「ええ、私はあなたが生きていてくれるなら、それだけで嬉しい」
KP
東雲は切り替えるようににこりと微笑んだ。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
別れるまでの少しの間でいい。
あと少しだけ、あと少しだけ側で過ごしたい。
この波照間さんのことを、少しでも多く覚えておきたい。
願わくば、ここを出ても私のことを覚えていてくれたら。

東雲 圓華
「夜は短いのだもの、もっとあなたとお話がしたいわ。
好きな映画の話もいいわね。
今日は踊りを見せてくださらない?
私もジャズダンスなら少しだけできるから。
私は随分前のことだから忘れかけているけれど」
波照間 紅
「えっ? そんな、ちゃんとしたものではないですが」

何か習ったというと小さい頃だけだし、後は何となく踊れるだけだ。ジャズダンスなんて、そんなことを聞いてしまうと照れくさい。

なんだか照れが入ってしまい、普段よりだいぶんぎこちない踊りになった。
KP
東雲のダンスも随分ぎこちない。
東雲 圓華
「踊るの久しぶりだから」
KP
恥ずかしそうに言い訳をしながらも、踊るのも見るのも楽しそうだった。
そうしてその日の夜は更ける。

※何時頃までいますか?
波照間 紅
別れを惜しむように、朝までそこにいるだろう。
KP
朝が訪れる。
東雲は寂しそうに告げる。
東雲 圓華
「また明日会いましょう」
KP
朝の光の中で、東雲はあなたに手を伸ばす。
その手が触れる前に彼女の姿は消え去った。
波照間 紅
「ええ、また……、 明日」
少し躊躇いがちに、明日、と告げて。
姿が消え去ってもなお、暫く彼女が消えた後を見ていた。
そこにいるはずの彼女を探すように。
KP
いまだ彼女はそこにいるのだろう。
あなたに触れているのかも知れない。
あなたに話しかけているのかも知れない。
しかしあなたには一切感じられないのだった。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
さようなら、波照間さん。
囁いてその頬にそっと触れた。


ひとこと
KP
ふたたび出会うはずのない人と会う波照間。
東雲は遂に重い口を開くのであった。


【置】CoC『刻の牢獄』波照間 4

「私の事を覚えている? 波照間さん」

【置】CoC『嗚呼、素晴らしき偶像!』 佐倉&牧志 4

何やってんだよ。何やってんだよもう。
暢気に偶像アイドルやってる場合じゃねぇだろう。

女神転生TRPG派生CoC 4人の牧志について(シリーズ内シナリオバレあり)

これは佐倉と牧志がセットで動くことが多い、女神転生TRPG派生タイマンCoCシリーズのひとつのシナリオについて、大変致命的なネタバレがあります。

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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