TRPGリプレイ CoC『信仰、或いは真実の縮図』1

こちらには
『信仰、或いは真実の縮図』
ネタバレがあります。


【CoCKPレスシナリオ】信仰、或いは真実の縮図


八重樫アキノ 様 作

探索者の能力値・副能力値のみで遊んでいただくシナリオです。名前も決めないでください。
ゲームブック形式となっており、選択肢を選んで進んでいくシナリオです。
もちろんKPを立ててソロシナリオという形式で遊んでいただくことも可能です。

非常に特殊なシナリオであり、生還しても特殊な後遺症を得るシナリオとなっております。
詳しくは1ページ目を御覧ください。

また、本シナリオは「新規探索者限定」のKPレスシナリオとなっています。
既存の探索者でのプレイはお控えください。
能力値・副能力値のみ振った探索者のみのシナリオです。ご留意ください。

1.目覚め
KP
……ゆらり、ゆぅ、らり。
ゆら、り……。
まるで何かの中で揺蕩うような感覚が伝わる。
目が見えない。
手を伸ばせば、何か硬いものに触れた。すべすべとした、硬いものだ。
きみは、それをゆっくりとなぞり、また意識を失う。
“探索者”
なんだろう。
疑問は浮かぶが、すぐにまた沈み行く。
自らの存在が希薄だ……そんな言葉を思い浮かべ、再び沈む。
KP
ふ、と、目が覚めた。
白い部屋だ。体が濡れている。
見下ろせば、きみは全身がずぶ濡れになった状態で床に横たわっていた。
そばには簡素な白い服がある。

はたしてきみは、女性だろうか、男性だろうか。

女性であれば、真っ白いワンピースがおいてあるだろう。
男性であれば、真っ白いシャツとズボンがおいてある。
“探索者”
寒い。
それにこの姿は、なんとも気まずく恥ずかしい。
震えながら衣服を手に取った。
choice 男性 女性 (choice 男性 女性) > 男性
んー、また男か。まあよい。
天の助けとばかりに、白いシャツとズボンを着る。
何故か濡れた体を、なるべくズボンやシャツの裾や袖で拭いて。
下着くらい、あったよね?
あったと思いたい。
KP
服の上には真新しいインカムがおいてある。
“探索者”
「インカム?」
口にする。言葉を喋る。
自分が置かれた状況は全く分からないが
KP
きみは、服を身に着け、それを耳にはめることだろう。
インカムの奥からはざざ、ざ……とノイズの音が響いてくる。
周波数が合ってないのか、ノイズだけが聞こえてくる。
“探索者”
情報を得られるかも知れないとインカムを身につけ、そして落胆する。
誰か話しかけては来ないものか。
デスゲームの始まりですらない。壊れているのか。
本編見る!
KP
きみは周囲を見渡すだろうか。
“探索者”
そりゃあ見渡すだろうね。
何が見える。
KP
周囲を見渡せば、そこには、一枚の大きな姿見があることに気がつくだろう。
覗き込めば姿見の中には見覚えのない人物がいる。
見覚えはないが――それでも、それは自分なのだ、と思い。
そして、きみは、ふと気付いた。
自分の中に、名前から今までの人生に至るまですべての記憶が無いことを。
“探索者”
「……あれ……」
鏡の中にあるのは見知らぬ男の姿だ。
自分か? これは。
覚えていない? 私は誰だ?
鏡を覗いて『自分とは信じられない者がうつる』それはつまり、『自分ではない』からかもしれない。
名前が思い出せない。
そもそも名前はあったのか?
自分の根を探り、そこにあるのが果てない空白であることに絶望する。
自分は何者で、どこにいるのか? 何を期待されているのか。
KP
それは絶望的な不安感となってきみを襲うだろう。
自身の根幹がわからない。自身という存在がわからない。
まるで自分という存在の根本が揺らぐような感覚が襲ってくる。《SANチェック
“探索者”
CCB<=60 《SANチェック》 (1D100<=60) > 52 > 成功> 1
[ 探索者 ] SAN値 : 60 → 59
であっても……そこまで不安になることはなかった。
いずれ分かるだろう。
いずれ思い出せるだろう。
これは自分に備わった楽天性なのか、それともただ投げやりになっているのか。
KP
――は、っは……。
自分の呼吸音が響く。浅く荒い呼吸音。誰かもわからない自分の呼吸の音。
それを聞いていたとき、ふと、耳から響くノイズの音が止まった。
“探索者”
息を詰めて、音がしやしないかと待ち構える。
KP
『――ちは、こんにちは。おはようございます、聞こえていますか』

それは落ち着いた、男性の声だ。
その声にきみはなぜか、聞き覚えがある、と思ってしまうだろう。
“探索者”
「誰? ちょっと訊きたいことが」
縋るように問いかける。
KP
『記憶が、無いのですか』
『嗚呼――それは、それは……最初からです』
『……あなたは、記憶が無い状態でこの病院に運び込まれました』
“探索者”
「病……院? ここが?」
とてもそうは思えなかった。
だったら何故自分は裸でずぶ濡れだったのだ。
そんな患者を放置する病院があるものか。
……しかし病院がどんなものか、この状態がが異常な物であるという判断を下せる『知識』をどうやら自分は持っているらしい……
KP
男にそう言われ、周囲を見回す。
確かに、病院、と言われれば納得してしまうかもしれない。
ここで【アイデア】のダイスロールをする。
“探索者”
あら、そうなんだ。
じゃあ家具はそれっぽいのかな?
そもそもどんな部屋なんだっけ。

いや、床にずぶ濡れで寝かされていて、服も横に置いてあっただけだよ。絶対おかしいじゃん……
CCB<=85 【アイデア】 (1D100<=85) > 67 > 成功
KP
たしかに消毒液のような香りが一瞬したような気がすることに気がつくだろう。
“探索者”
(納得はできないけど……)
KP
『私達は記憶喪失の患者に対して独自の治療方法を試しています』
『その治療方法の実験体としてあなたは選ばれました』
“探索者”
「勝手に?」
少し苛立つ。
KP
『事前にあなたからの了承は得ています』
『……もしかしたら、あなたはそれも覚えていないかもしれませんが……』
男の声はどこか残念そうだ。
“探索者”
「覚えていませんね」
言いながらも、記憶喪失の相手にならなんだって好きなように信じさせることができるじゃないか、と思う。
「とはいえ、貴方を信じてみる以外に、私にはどうしようもない」
肩をすくめて皮肉に笑う。
こんな感じだったのだろうか、自分というものは?
KP
『それでは、私の声に従って進んでいってください』
『あなたの人生を思い出すお手伝いをしましょう』
“探索者”
「頼みますよ」
今はそれしかないようだ。
KP
『目の前の扉に入っていってください』

そういって、男は黙り込む。
――イヤホンの向こうからは、上機嫌な鼻歌が聞こえる。
“探索者”
「まったく、人ごとだと思って」
イヤホンに聞こえるように文句を言った。
「不安でたまらない患者を安心させようとか、そういう配慮はないんですか」
KP
君の文句にはお構いなく、いつの間にか目の前の壁には扉が出現している。
きみは扉に耳をすますだろうか。
それとも扉を、じっくり見てみるだろうか。
そのまま、扉を開けて進むだろうか。
“探索者”
「やれやれ。ゲームですかってんだ」
ため息をついて……
(1D100<=95) > 35 > 成功
扉を見る。
KP
じっくりと扉を見る場合、〈目星〉のロールを行う。
これは初期値でダイスロールし、成功した場合技能成長のロールをこの場で行う。
“探索者”
CCB<=25 〈目星〉 (1D100<=25) > 84 > 失敗
KP
じっくりと扉を見てみる。
扉は簡素な白い扉で、特に装飾などはない。
しかしじっと見ていると、ドアノブに拳銃のような装飾が刻まれていることに気がつくだろう。
“探索者”
(拳銃?)

2.白い部屋(1)
KP
きみはドアを開けて、中に入っていく。
中には机がひとつ。
机の上には様々な武器が乗っていた。
この世に存在する武器ならなんでも存在するだろう。
“探索者”
(ナイフに、剣に斧に、弓、ボーラやただの棒きれまで)
(何に使うのかもよく分からない物も置いてあるな……?)
そこには多種多様な武器が置かれている。
“探索者”
武器、か。
それほど恐怖を感じなかった。つまり、以前扱ったことがあるのかも知れない。
この【STR】【DEX】ならやはり銃だろうな。
銃を手に取ろう。いわゆるピストルだ。
KP
それに、手を伸ばす。
ずっしりと重い鉄の塊に、何故か奇妙に、心が踊る感覚があった。
“探索者”
こいつだ。そんな気がした。
私が求めていたのはこれだ。
我知らず、銃を構える。
KP
覚えがある。ような気がする。
きみはそれを壁に向け、引き金を引く。
“探索者”
絞るように。そう、覚えがある……
KP
〈銃器に該当する技能〉のロールを行う。
これは初期値でダイスロールし、成功した場合技能成長のロールをこの場で行う。
だぁ、ん――。
長く響く音の後、壁にひび割れが走った。
本当に使えたのか。あなたは、そう思うことだろう。
“探索者”
CCB<=20 〈拳銃〉 (1D100<=20) > 25 > 失敗
硝煙の香り、弾丸が壁に弾ける音。
何故か懐かしいような気がした。
この感覚こそが、私をつなぎ止めてくれる。
KP
【記憶ポイント】を1獲得する。
system
[ 探索者 ] 【記憶ポイント】 : 0 → 1
KP
あなたが行動を終えると、男は、
『何か思い出せることはあったでしょうか。それでは、次の部屋です』
と、先程から変わらない落ち着いた口調で言った。
“探索者”
「この銃は持っていって良いのですか?」
回答など期待せず、指を引き金から外して残弾数を確認。
可能なら持って行くとしよう。
KP
気付けば目の前には、扉があった。
あなたは、その扉をくぐっていくことだろう。
“探索者”
「現実とも思えないな」
肩をすくめて扉をくぐった。

3.白い部屋(2)
KP
次の部屋には大量の本が積んである。
天井まで埋め尽くすほどの本の山だ。
“探索者”
(本か……)
KP
『申し訳無いのですが、その中にあなたが最初に持っていた本を置き忘れてしまったんです』
『探してくれませんか? 黒い表紙の本なのですが』
“探索者”
「何かのテストですか?」
返答はどうせないだう。
KP
『少しオカルトチックな本だった気がしますね』
男の声が響く。
この本の山から探すのは至難の業だろう。
“探索者”
「随分と漠然としたヒントだな」
彼は言葉を頼りに本を探した。
KP
……黒い表紙の本を見つけた。
奇妙な本だ。手触りは滑らかで、読んだことがあるような気がしないでもない……。

【記憶ポイント】を1獲得する。
“探索者”
「黒い表紙……これか?」
本を、どこかにあるであろう監視カメラに見えるようにばさばさと振ってみせる。
KP
きみが本を見ていると、耳元から声が響く。
『読んでみたらどうでしょうか』
『もしかしたら何かわかるかもしれませんよ』
“探索者”
「確かに、ごもっとも」
感じの悪い奴に言われるまま、というのがいまいち気に食わないが、折角見つけた本だ。見てみるのも悪くない。
KP
本の山の中に埋もれた椅子が見えた。
“探索者”
おあつらえ向き、というやつだ。
本をどけて積み上げ、場所を空ける。
椅子に座り、黒い本を膝に乗せて開いてみるとしよう。
KP
きみは椅子を本の山から掘り起こし、そこに座る。
ページをぱらぱらと捲っていった。
タイトルは『記憶』。
今のきみに、ぴったりな本かもしれない。
“探索者”
「椅子の使い方、本の読み方、そういうのは覚えているんだな。行動記憶というやつだ」
KP
ふと。
ある一文に、目が吸い寄せられた。
●記憶
『記憶とは、その人の人生を象徴するものである。
 人格を形成するためのものなのかもしれない。
 記憶は、その人の決心を助けるモノになるのかもしれない。
 それと同時に、その人の心を縛るモノになるのかもしれない』
KP
その文に、何故か、ぞっとした。
何故だろうか。記憶が無いから、何故かはわからないが。《SANチェック
“探索者”
CCB<=58 《SANチェック》 (1D100<=58) > 90 > 失敗 > 2
[ 探索者 ] SAN値 : 58 → 56
今の私は何者よりも自由である、ということだ。
心中を誤魔化すように、そんな言葉を呟く。
KP
本を読んだ後、男に話しかけられるだろう。
『面白かったですか? では、次の部屋へどうぞ』
かすかな音を立てて、次の部屋への扉が開いた。
“探索者”
この状況は面白くはない。
ともあれ次の部屋へ。

4.白い部屋(3)
KP
白い部屋だ。
先程の部屋と違うのは、部屋中に機械や車がおいてあること。
『機械にしろ車にしろ、現在の人間の生活には欠かせないものですね』
『何か触れたことはあるでしょうか?』

男が、そう問いかける。
“探索者”
さて、どうだったか。
機械や車を見渡して触れてみよう。
KP
きみは車やバイクの〈運転〉が得意だっただろうか?
それとも、機械の扱いが得意だっただろうか?
または、それらに全く興味がないだろうか?
“探索者”
そうだなー
機械かな。
彼は機械の修理を試みる。
“探索者”
心が落ち着いた。
記憶がないためか、何一つとして形にはならなかったが、不思議と心が静かになってゆく。
しばらく無心に機械を弄り続けた。
KP
いつの間にか、次の部屋のドアが開いていた。

5.白い部屋(4)
KP
次の部屋の中には、様々な学術書が揃っていた。
〈医学〉〈考古学〉〈博物学〉〈歴史〉〈法律〉〈薬学〉〈天文学〉〈生物学〉〈物理学〉……。
そんな本があるのがわかるだろう。
“探索者”
うーん、本か。本はどうだろう。
KP
『興味のある本はありますか?』
『もしあるのなら、読んでみたらどうでしょうか』

きみは、本に手を伸ばすだろうか。
それとも、どれにも興味がないだろうか。
“探索者”
〈機械修理〉をするなら【知識】は必要だろう。
本にも興味があるのではないかな。
KP
きみは、本に手を伸ばした。
〈手を伸ばした本に該当する学術系技能〉のロールを行う。
“探索者”
じゃあバイオミミクリーってことで〈生物学〉をひとつ。
CCB<=1 〈生物学〉 (1D100<=1) > 26 > 失敗
彼は本を読んだ。
“探索者”
「……(何だろう、覚えがある。私はこの本を読んだことがあるのではないか)」
KP
ふと。
本の端にこんな言葉が書いてあるのが目に入る。
「それは、本当のことなの?」
それに何故か、悪寒が走る。
どうしてだろう。
何か、思い出してはいけないことを思い出してしまうような。《SANチェック
“探索者”
CCB<=56 《SANチェック》 (1D100<=56) > 78 > 失敗 > 3
[ 探索者 ] SAN値 : 56 → 53
ふむふむ。本当に過去が存在するのか、怪しいね。
では僅かに青ざめて本を閉じる。
ぱたん、と音が鳴るだろう。
KP
『どうかしましたか?』
『さあ、次の部屋へどうぞ』
“探索者”
段々声の主に、いらだちを通り越して怒りがわいてきた。
KP
いつの間にか、ドアが開いていた。
あなたは、ドアの奥へと進んでいくことだろう。

6.白い部屋(5)
KP
白い部屋だ。部屋には机がひとつ置かれている。
机の上には紙が一枚。
『今までに行ってきた行動を、思い返してみましょうか』
『そうすれば、何か思い出せるものがあるかもしれません』
男はそう言う。
目の前には一枚の紙。真っ白い紙だ。
“探索者”
今度は筆記ときた。
KP
男は問いかける。
『まずひとつめ。武器のある部屋で、あなたは何を手に取りましたか?』
“探索者”
拳銃だな。何故か懐かしい、なじみ深い物のような気がした。
紙に拳銃と書き記す。
KP
『ふたつめ。本のある部屋で、あなたは自分の中の何を頼りにして探しましたか?』
“探索者”
視覚だ。聞いた情報を元に、黒い表紙の本を探したのだ。
目、と書く。
KP
『みっつめ。機械のたくさんある部屋で、あなたは何をしましたか?』
“探索者”
機械の修理だ。懐かしい気がした。
紙には「機械修理」と書く。
KP
『よっつめ。学術書のある部屋で、あなたは何を手に取りましたか?』
“探索者”
生物学の本だ。
……というかここまでの行動、あいつは監視カメラだか何だかで見ていたじゃないか。
馬鹿にしているのか?
イライラとしながら乱暴な字で生物と書き付ける。
KP
答えが並んでいく。
『それは』
『あなたの『人生』ではないでしょうか?』
“探索者”
拳銃 目 機械修理 生物学。
どれもなじみ深い物だ。
少なくとも、そう思った。
KP
男は、きみに問いかける。
『最後の質問です』
『あなたの名前は、何ですか?』
“探索者”
名前……?
KP
その問いかけに、息が詰まった。
きみはこれに答えても、答えなくても良い。
これには正解など存在するはずも無いのだ。
先程までやってきた行為。それで手に入れた感情、記憶のようなもの。
それを思い出して、記述しても良い。
記述しなくても、良い。
“探索者”
「私は……」
「私は、おそらく……生物をこの手で作り上げたかった。そして同時にそれを破壊するものだった」
「破壊することに疲れて、作り上げることに耽溺していった」
両の手を見下ろす。
まるでそんな過去など嘘のように白い手だ。
「私の名前は、ツカサ……」
思い出せたと思ったものを呟いてみるが、あまり実感がない。
KP
あなたは。
自分の『名前』と思しきものを書く。
“探索者”
ツカサ。自分の名前だったような気がする。
何度も口の中で呟く。
KP
それはなぜか、しっくりと胸におさまった。
“探索者”
呟くほどに、「そうだったのだ」という気がしてくる。
私はツカサだ。
KP
嬉しそうな声がする。
『では』
『次の部屋に、進みましょう』
男は、心底嬉しそうだった。
KP
【記憶ポイント】を獲得する。
“探索者”
でっかいな。
> 9
[ 探索者 ] 【記憶ポイント】 : 3 → 12

7.最後の部屋
KP
最後の部屋には、紙束がおいてあった。
きみはそれから悍ましい気配を感じ取るだろう。
“探索者”
顔をしかめる。
近づいてはいけない物であるような気がする。
KP
見てはいけない。飲み込まれてしまう。
理解してはいけない。食われてしまう。
その直感は、あなたの心を蝕むだろう。《SANチェック
“探索者”
CCB<=53 《SANチェック》 (1D100<=53) > 72 > 失敗> 5
おおっと最大値
[ 探索者 ] SAN値 : 53 → 48
発狂だ。
彼はとある指示を受けた。だがその指示に抵抗を感じた彼は全力で抗う。
KP
きみは。必死で、首を振った。
手に入れた記憶が、自我が、人生が。それを見るな、解くなと後押しする。
抗う力をくれたのは、今まできみの手に入れてきたものだった。
“探索者”
私は知っている。
これは見てはならない物だ。解いてはならない物だ。
何故かは知らないが分かる。
言葉に従ってはならない。
紙を握りつぶす。
KP
きみがそれから目をそむけると、ほう、と感心したような声がした。
『素晴らしい。あなたは、記憶を頼りにして、私の命令を拒絶したのですね』
“探索者”
どうしたってこの男の思うとおりに進んでいるのが気に食わない。
顔を見たら殴ってしまいそうなほど、敵意が膨れ上がっている。
何をしている? 何をさせられている?
KP
『次の部屋に進みましょうか』
いつの間にか机からは紙束が消失していた。
扉を開けて、きみは。次の部屋へと、進む。
“探索者”
言葉に従うのではなく、自分の足で真実を知るために。

8.研究室
KP
扉の中に足を踏み入れてきみは、呆然とそれを見つめた。
そこは研究施設のような場所だった。
そこはひどく奇妙な場所で、淡い色の水で満たされた筒のようなものに大量のヒトが入っていた。
“探索者”
息を呑む。
KP
大量のヒト。
否。
大量のきみだ。
“探索者”
おそらく、分かっていた。
自分には『何もなかった』と。
KP
きみは理解する。
自分はここで、造られた存在なのだと。
きみは理解する。
自分には人生など存在しなかったと。
“探索者”
「私は、だれだ」
「ツカサという名でもない。この記憶は、なんだ」
「ただの思い込みに過ぎないというのか」
KP
「こんにちは」
「おはようございます」
いつの間にか目の前に、男が立っていた。
耳元で、目の前で、男の声がする。
「こんにちは」
「私の造った、ホムンクルス」
“探索者”
「ホムンクルス……だって」
CCB<=5 〈オカルト〉 (1D100<=5) > 67 > 失敗
知らない言葉だ。しかし自分を指す言葉だということは分かった。
KP
その言葉は信じがたいものだったが、しかし、それでも。
信じざるを得ない。だって、目の前には。
それがそうだと証明するものが、広がっているのだから。
“探索者”
ああ、ホムンクルスがツクリモノである、ということは知っているのか。
自分のことだものな。
KP
きみは、目をそらそうとするかもしれない。
目を、そらせるだろうか。
“探索者”
「作り物? 私が?」
顔を歪めて笑う。
この感情も、痛みも、怒りも、全て作り物だというのか。
KP
今まで手に入れたすべてが、偽物の記憶だったと知った上で尚、目をそらせるだろうか。
きみ自身の存在を、きみの信じた世界を、自我を揺らがせる光景が目の前に広がっていたとして。
――きみは、目を逸らすことが、出来るのだろうか。
彼は抵抗する。
“探索者”
「作られた? だから何だというのですか」
KP
きみは、目をそらした。
偽りの記憶であったとしても。偽りの人生であったとしても。
……それは、たしかに、あなたの人生だったのだから。
「素晴らしい。素晴らしい!」
“探索者”
目の前で嬉しそうに笑う男が憎い。
この憎しみも、作り物か?
いいや断じて違う。
KP
「そうですね。たとえ偽りだったとしても、あなたの人生は開かれた」
「さて。ひとつ、質問をしましょうか」
「あなたはこれから先、『あなた』として生きていきたいですか?」
「それとも、自分という存在が複数あることに耐えられませんか?」
きみの足元に、ナイフが転がされた。
それを拾い上げて、自害しても良い、ということだろうか。
男は、嬉しそうに微笑んでいる。
“探索者”
自分と同じ顔のホムンクルスと男を全部殺して外に出たいな。
KP
それは残念ながらシナリオには書いていないな。
“探索者”
本当に残念だ。
当然のルートだと思うんだけどな。
まあ、私は近接は得意ではないようだし、全技能が初期値のようだし、仕方ないな。
KP
「自害しないのであれば、最後の扉を開けてあげましょう」
「そうすれば、あなたは世界へ解き放たれる。ヒトに、成る」
「どうしますか? ホムンクルス!」
“探索者”
最後の最後までこの男の言いなりというのが癪だな。
ナイフは貰って外に出よう。
いつか力をつけて破壊しに戻ってきてやろう。
KP
あなたは。
扉に、手を伸ばした。
自分は人間だ。自分は、人間になりたい。
だって、記憶を取り戻したのだから。
自我を、手に入れたのだから。
あなたはそのまま、扉を開ける。
「いってらっしゃい、『人間』」
「どうかその人生に、幸多からんことを」

人間として生きることを選んだあなたに、男はそう声をかけた。
“探索者”
「私が戻ってくるまでせいぜい生きていろ」
『父親』に吐き捨てて扉を出る。

KP
……ふと、あなたは。
見知らぬ路上で目を覚ます。
白昼夢を見ていたのだろうか、と手を握って、開いて。
冬の路上で、目を覚ました。
どうしようもなく頭がいたい。しかしそれでも。
あなたの頭には、今まで生きてきた記憶がある。
自分という人間の記憶が、たしかにある。
“探索者”
「夢……?」
ぼんやりと呟く。
そういえばこんなところで何をしていたのか。
自分の存在が希薄だ。
そんな気がしてならない。
KP
……先程のは、本当に夢なのだろうか?
そう思いながらあなたは街を歩く。

ふと。
風が、あなたの髪を巻き上げた。
あなたの首筋には、製造番号のように見える、痣があった。
生還報酬とこのPCの詳細について
“探索者”
ということは私は22才か。
また22歳男だよ!! 青年22歳ばっかだったよ!?
しかも中身ショゴスなの!?
KP
どれだけ思い出そうとしても記憶は存在しないのである。
生まれたてのホムンクルスだからだ。
探索者を作り出したのは、最初の部屋から探索者を導き続ける研究者の男である。
“探索者”
あいつ殴るわ。
最後になんかよさげなこと言ってたけど殴るわ。
KP
彼は不幸な事故からクルーシュチャ方程式と出会い、それを解くことに成功してしまった。
そのため、彼の魂及び精神は完全にニャルラトテップとなってしまっているのだ。
“探索者”
ニャル様かよ!! 道理で感じ悪いわけだわ。
てかその式といたらニャルになんの? なにそれこわい。
っつか私もニャルになるとこだったの?
あなたもわたしもペルソナつけてだよ
KP
研究者は、「自分が創り出したモノは『人間』といえるのか」「自我や記憶というものを、人間の形を模した何かが得た場合、それは人間になることを望むのか」と考えた。
結果として、実験のために『探索者』というホムンクルスが創造されたのである。
“探索者”
まーた実験だよ。
地球シャーレにしてんじゃねぇぞ。
KP
ホムンクルスである探索者は、シナリオ開始段階では自我を持たない。
いくつもの部屋を経て、「自我」を持つかどうか、「自我」を持ったのであれば果たしてそれは製造過程に問題があったとしても人間と言えるのだろうか。
それをテストするための実験が今シナリオの目的となる。
“探索者”
製造過程に問題ってなんすか。中身漏れるんすか。
全部で忌避感とかやってたらやっぱ自我は芽生えないのか、忌避感持った成の自我が芽生えるのかどーなのか。
途中のイベントについて
“探索者”
最後まで中の人が疑いを持っていたせいでRPがあやふやになって、人格まであやふやになったけどな。
一応名前を作ったのと、その時の出目のお陰で救われた感じだけど、本人にとってそれは幸せだったのかねぇ。
KP
ニャルラトテップと化した研究者は、「自我や記憶を得た人造人間は、果たして創造主である「自身」に逆らうことが出来るのだろうか」という実験としてこの問題を出している。これに探索者が抗えるか抗えないかは問題ではない。
“探索者”
殴りたい気持ちはいっぱいだったから、反骨精神だけで乗り切ったな。
中身ふにゃふにゃのくせに。
人として在ることについて
“探索者”
はえー、なるほどね。
とりあえず創造主への反抗心。それだけで自我を確立させたね。
折角だからツカサは今後も使っていこうかな。
ちょっとぼんやりした感じの青年ってことで。

“探索者”
なるほど、面白かった。
何となく自分は作り物なんだろうな、と思いつつやってたから、方向によっては消滅してたな。
新規キャラ誕生じゃなければ最後絶対「お前は作り物だ」で崩壊して終了だと思ったからさ。
ちょっと特殊な探索者が作れて面白いかも知れないね。
シナリオ作成された八重樫アキノ様、楽しかったです。ありがとうございました。
創造された魂がいつか自分を人と信じ、本当の意味で生きられるようになるまで、育てていけると良いな。

コメント By.“探索者”
特殊なキャラクター作成シナリオ。
どうして最後に暴力に訴える選択肢がないんだぁぁ

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本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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