TRPGリプレイ【置】CoC『スペクト・ラム』 佐倉&牧志 6

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こちらには『スペクト・ラム』
『ヒナドリ ・ イングレイヴド 』
ネタバレがあります。

本編見る!
KP
けたたましいアラーム音で目が覚める。
今日も、身体は動かせない。

あのベルトが、あなた達の身体を仰向けに固定している。
動かせるのは僅かに、指先と首くらいだ。

今日も今日とて大村が、薄気味悪い微笑みを口元に浮かべながらあなた達を見下ろしている。

「おはようございます。ただいまより実験を開始いたします」
首を動かせば、あの機械とコードが視界の端に見えた。
前に「8」を表示していた画面には、「67」と表示されている。
佐倉 光
大変イヤンな予感がいたしますね。
佐倉 光
「今日は何をする予定なんだよ」
喋れるかどうかの確認兼ねて、訊いてみた。
冷静な自分の声を耳にすることで、
なるべく自分の精神を安定させるためでもある。
KP
「今日は他者に正気度の譲渡をするための実験を行います」

「どのような実験かというとですね、まず二人の人間を用意し、片方から血液を採取します。
その血液を機械にかけて正気だけを回収します。
その正気が凝縮されたものをもう片方に投与する……といった流れです。」

あなたは喋ることができる。
大村の人間味のない声を聞いていると、冷静であろうとするあなたの声が随分上擦っていることが分かってしまう。
佐倉 光
それ以上声を出すのはやめておいた。
思っていたほど落ち着けてはいない。逆効果だ……
佐倉 光
牧志のベッドの方を確認。
数値が表示されてるって事はいると思うけど。
KP
反対側のベッドには、ちゃんと牧志が寝かされていた。
昨日のように抵抗することはなく、ぐっと拳を握ってあなた達の間に立つ大村と、その向こうのあなたを見つめていた。

彼もまた、生き残ろうとしているのだろう。
佐倉 光
正気って血液中にあるのかーしらなかったなー
ずっと眠らされてて仮想空間におり、点滴され続けている……いやしかしそれだと血を移動させる実験を仮想空間でやる意味がわかんないな。
いみわかんないことも普通に起きるかも知れないけど。
KP
あるらしいんですよしらなかったなー
佐倉 光
要はただの輸血だ。
注入されるものも昨日と大して変わりはない。
実験台に括り付けられ、身動きひとつできず、これからまた注射針を……あまり考えないことにしよう。
佐倉 光
普通に考えて、どちらかから採血して移動させる気なんだろうな。
俺と牧志って血液型どうなんだ?
いや、正気に型とかあるのか?

つーか正気って血液内成分なのか?
マグネタイトの一種、またはその逆、関連成分?
KP
なるほど生体マグネタイトも扱うもんな佐倉さん。そういう概念に馴染めちゃう。
大村は正気にしか関心がないけど、いろんなものが欲しがりそう、牧志の血液。
佐倉 光
欲しがりそう。
結構混ざり物ある気がするけどね。最近血を吸ったり吸われたり虫入ったりいろいろあったし。
KP
確かに。>混ざり物
それはそれで何らか役に立ちそうではある。
KP
「今まで人工の正気を投与する実験を行ってきましたが、今回は人間から採取した正気を扱う実験なので非常に楽しみです。
どのような反応が観察できるのでしょうか」

大村は機械のモニターに視線を走らせ、数値を確認してひとつ頷く。
あなた達の間に置かれた机には、回転部分らしいものを持つ透明なカバーのかかった機械と、太いシリンジ部分を持つ凶悪な注射器が置かれていた。
佐倉 光
ただの輸血ただの輸血……
抽出するだのなんだの処理をすることで、昨日は害がなかった【正気】に不純物が混じってどうこうは……考えないことにしよう。
とりあえずされている処置を見逃さないように、できる限り観察する。
後で役に立つ……かもしれないしな。
KP
大村は表情を変えず牧志に近寄り、彼の腕に注射針を突き刺した。
先日のものより太いそれが腕の内側に食い込み、牧志の肩が僅かに跳ねる。

見慣れた赤黒い色の血液が、みるみるうちにシリンジの中を染めてゆく。
佐倉 光
拳を握りしめ、奥歯を噛みしめてその光景を見つめる。
どれだけ採血する気なんだ。
KP
たっぷりと血を吸い上げて、注射器のピストンは止まった。

大村は採取した血液を容器に移し、その容器に透明な液体を振り混ぜると、大村の腰ほどまである大きさの機械にその中身を流し込んだ。

暫くの間、回転する機械の稼働音がうるさく病室の中で響く。
透明なカバーの中で赤い色が踊った。
佐倉 光
献血なんかで見るヤツだな。
正気あんなんで分離できるのかよ。

牧志の様子は大丈夫そうかな。
KP
牧志の様子を見ると、彼はじっと拳を握り、血を奪われる違和感に耐えているようだった。
幸い、血色が悪くなっていたり、気を失っているような様子はない。

かしゅ、と機械から小さな音がした。青色の発光する液体が入った試験管が機械から排出される。

大村はその青い液体の試験管をしばらく眺めた後、満足そうにうなずき、その中身を注射針の中へと吸い取っていく。

「うまく血液と正気を分離できました。それでは早速、正気の受け渡しを行いましょうか」
牧志 浩太
「分離できたんなら、血、返せよ……」

牧志が力なく呟いた。
佐倉 光
牧志は今のところ命に別状はなさそうだ。
そのことにひとまずほっとする。
佐倉 光
【正気】が詰められてゆく注射器。
針先を見るとどうしようもなく怖気が走った。

無数に打ち込まれている恐怖が暴れ始める。
心拍が上がり、体が震える。
無意識のうちに視線は逃げ場を探す。
牧志 浩太
「佐倉さん、」
牧志 浩太
「大丈夫、きっと、大丈夫だから」
KP
牧志がくまなく縛られた手で、あなたに手を伸ばそうとしていた。

その姿と、腕に走った痛みが絡み合う。
佐倉 光
笑おうとした。笑えたかどうかは分からない。
KP
あなたの恐怖を微風ほども気にすることなく、あなたの腕の内側に針が刺し込まれていた。
佐倉 光
針の痛みが冷気とともに恐慌を打ち込んでくる。
自分が書き換えられるという恐怖が押し寄せてくる。
指先を引きつらせながらも、牧志の声に集中した。
KP
青く光る液体があなたの中に吸い込まれていく。皮膚の下に生暖かいものが入り込む違和感。
ひやりとしていた前回のものとは違い、確かにそれは人間から採られたものであるらしかった。

僅かな痛みとともに針が抜ける。
空になった注射器が、あなたから離れる。

最初、あなたには何の異変もなかった。
まるで自分の中身を返されただけだとでもいうように、あなたの意識は連続していた。
佐倉 光
引きつって早くなって行く呼吸を深呼吸を繰り返すことで抑えようと試みる。
大丈夫、問題ない。痛みもさほどでもない。
心拍が早いのは、俺の中に巣くう恐怖のせいだ。落ち着けば、収まる……
KP
どうにか鼓動を落ち着けようと、深く息を吸った、次の瞬間だった。

あなたの内側を流れていくそれが、不意に燃え上がった。

針を刺されていた腕から体の隅へ向けて、花や緑が咲き乱れていくような多幸感が、瞬く間にあなたを呑み込む。
快感が泉のように止めどなく湧き出て、あまりの心地よさに目が回る。

あなたはそれに抵抗できない。何に抵抗していいのかも分からない。
なぜなら、それはあなた自身だったからだ。あなた自身の正気だったからだ。
佐倉 光
正気って気持ちいいの!?
KP
気持ち悪いのも気持ちいいのも割と訳が分からない。
元から抵抗はできませんが、それにしても驚くほど抵抗できないのにはシナリオにない特殊事情があります。
佐倉 光
呼吸も心拍も収まらない。
次第に耳の中で聞こえる血液の音がはっきりと聞こえてくる。
針を刺された腕が疼く。
腕を掻き毟りたくなったが、体は動かない。
佐倉 光
なんだ、これは?
体が急速に暖かくなり、腕の部分から得体の知れない感覚が広がってくる。
佐倉 光
「う、く……」
違和感のあまりに声が漏れた。
わけの分からない感覚に押し流される。
腕の血管の中でゆるりと花が開いた。指先まで春風のように吹き抜ける、異様な感覚。
佐倉 光
「うぅ……っ」
それは肩へ、首へ、垂らしたインクが広がってゆくように全身に伝わってゆく。
筋肉が弛緩する。色とりどりの色彩が、指先に、胸に、首筋から頭にまで、
自分の感情とはまるで関係ない震えを齎した。
抵抗することを考える余裕もなく溺れてゆく。
佐倉 光
「あぁぁあああ」
言葉が消え去った。思考がちぎれてぼやける。
何もかもが制御を外れてゆく。
KP
しかし、それは長くは続かなかった。実際、たった一瞬のことだった。

絶頂へと放り出されたあなたの意識はそのまま漂うことはなく、足掻くことも叶わないような底なしの奈落へとただ、落ちてゆく。

落ちてゆく。
落ちてゆく。

果てのない垂直落下。
あなたは小さく小さくなって、嵐の中の紙切れのように、もみくちゃにされながら落ちてゆく。
佐倉 光
「―――!」
自分に何が起きているのか、全く把握する術を持たないまま翻弄された。
思考もできず、ただ恐慌に落ちる。
KP
また、放り投げられる。
上る。
落ちる。
上る。
落ちて、上る。

その感覚はジェットコースターのそれに少しだけ似ていた。
これも伏線?
佐倉 光
忙しいなぁこのシナリオ。
なるほどFUJIYAMA!
KP
かぶったァ!
本当は上って落ちるだけなんですが、せっかくなので何回かアップダウンを盛っておきました
佐倉 光
酔う!!
KP
精神だけだから【CON】ロールは入らないよよかったね!
佐倉 光
良くないよ!?
精神衛生上良くないよ!?
KP
それはそう!
正気とはなんだったのか
佐倉 光
絶対注射されてるの正気じゃない。
KP
でも正気度はなぜか上がる。
佐倉 光
これ絶対結果として正気度が上がってるだけだぁぁぁ!(急降下中)

佐倉 光
舞い上がり、叩き落とされ、また快感が訪れては奈落へ墜ちる。
言葉を真っ先に払い落とされてはもう思考することなどできはしない。
ただただ与えられる刺激になすすべもなく振り回されるのみだ。
泣き声のような嗚咽を切れ切れに上げながら、白目を剥く。
KP
大丈夫、という声はもう聞こえなかった。あなたの名を呼ぶ牧志の声が、切れ切れに瞬く意識の中に明滅するだけだ。

あなたの嗚咽が病室に響く中、あなた達に悪意も興味も抱いていない大村の声が、淡々と落ちた。

「なるほど、正気とは量ではなく、体内での濃さの可能性が出てきましたね」

「量であれば、牧志さんの正気度が減少するはず。
ですが正気度はそのままで佐倉さんの正気度だけが上昇したということは、そういうことかもしれません。

新たな疑問を発見することができました。実にいいですね」
▼あなたの正気度が「67」になる。
佐倉 光
SAN 56→67
わぁい、一気に上がったぁ。
佐倉 光
何も聞こえない、見えない……
原始的な感覚に翻弄され、ちかちかと意識に光が飛び散っている。
まともに呼吸と思考ができるようになるまで目を見開いて虚空を見つめている。
KP
あなたの意識は小刻みに上昇と下降を繰り返し、やがてようやくいまここに戻ってくる。
視界がちかちかと瞬き、思い出すように時折身体が跳ねた。
佐倉 光
疲弊してベッドの上に溶け広がっていきそうな錯覚に襲われる。
やっと戻ってきた言語が、恐ろしい単語をとらえた。
【新たな疑問】?
今度は何をする気なんだ。
KP
今度は自分の番かと、牧志の全身が強張る。
今度は何をする気かと、あなたは思わず身構える。

そんなあなた達の様子とは裏腹に、大村はけろりとした声音で実験の終了を告げる。

「それでは本日の実験を終了します。お疲れさまでした」
佐倉 光
ほっとした。
昨日に比べれば随分とマシだった。
……なんか気分がシェイクされすぎて気持ち悪いけど。
KP
大村は息も絶え絶えになっているあなたの拘束を解き、機械を片付けて去っていく。

牧志 浩太
「佐倉さん、生きてる…… よな?」
拘束されたままの牧志がこちらに首を向ける。
佐倉 光
「……」
虚ろな目で浅い息をつき続けている。
やがてぽつりと一言。
佐倉 光
「……強烈だった……」
牧志 浩太
「すごい声上げてたもんな……」
佐倉 光
「……」
なんかしらんが恥ずかしい。
誤魔化すように起き上がろうとする。
佐倉 光
「くそ、まだチカチカしやがる……」
正直、昇ってくとこはもう一度体験するのもいいかななどと思えるくらいだったが、その後が奈落だったので複雑な気分だ。
佐倉 光
「牧志は大丈夫? 結局返して貰ってないんだろ?」
KP
牧志は手を数度握って、開いて感触を確かめる。
牧志 浩太
「俺は大丈夫そうだ。
少しくらっと来たけど、その程度。
特に、不安になったような感じもしない。

それにしても、あの青いのが俺の血から取られたと思うと、何だか自分の体が不気味に思えてくるな……」
佐倉 光
「普通の処理じゃあんなの出ないだろうし、気にすることはないと思うぜ……
おかしいのはあいつとここの機械だ」

問題なく起きられるかな。
牧志がまだ拘束されているようなら外す。
佐倉 光
「随分ぐちゃぐちゃにされた気がするのに、
頭がすっきりした」
謎。
佐倉 光
必要だったり必然だったりで仕方ないんだけど、最近のシナリオでシモの話出す率高い気がする。
KP
確かに。トイレが事態打開のキーになったこともありましたしね(Blood red decadence)
佐倉 光
その場で佐倉の意識がぶっ飛んでたから突っ込めなかったけど、
血液に正気が巡っていて、それを採血によって抜いたなら、牧志の方の正気濃度下がってる筈だよね!?
KP
濃度的には誤差の範疇ってことなのかも(?)
大村の結論も謎なら状況も謎ってことかもしれない。
佐倉 光
ネスプレッソでラズベリーの香りがするフレーバーコーヒーが売ってる……!
KP
ラズベリー!!
牧志も佐倉さんもコメントに困りそうな香り(PLは好き)
佐倉 光
ポチってやりました。
KP
いいなぁ
ネスプレッソ、フレーバーコーヒーのバリエーション多くていいですよね

KP
随分と頭がすっきりしている感覚を覚え、あなたは問題なく立ち上がることができる。
牧志の拘束を外すと、彼は大きく伸びをして肩を回した。

あなたの背は先程の一件で、汗でぐっしょりと濡れていた。
牧志 浩太
「受け取る感覚と自分の状態が合わなくて、頭が混乱するな」
佐倉 光
「そうだな。吐きそうな気持ち悪さだったのに、もうだいぶ本調子に戻ってる感じだ」
佐倉 光
「風呂入りてぇ……」

そういやここに来てから風呂はともかくトイレって行ってない、って認識でいいかな。この部屋にそんな設備無かったし、外には出られないし。
KP
行ってない認識で大丈夫です。
そういえばここには、シャワールームもトイレもない。
牧志 浩太
「そういえば、もう五日捕まってるはずなのに、あんまり臭くないな」
牧志は自分の髪を嗅ぐ。
佐倉 光
「やっぱここ現実じゃねぇよな」
佐倉 光
「あの男の子はそのことを知っている、ってことか?」
牧志 浩太
「かもしれないな、それであの子は現実に出る手段を知ってる?」

その時、低い位置から、小さく扉を叩く音がした。
佐倉 光
噂をすれば、だ!

彼以外の物音はないだろうか。
なければ扉のところへ行ってノックを返す。
KP
他に、物音はないようだ。
あなたはひっそりとノックを返す。

「ちず! かいた。みて!」
カチャリ、扉の鍵が開く音がする。
少年は少しだけ隙間を開けると、そこからあなた達に自作の地図を渡してくる。

地図を見てみると、それはクレヨンで可愛らしく画用紙に描かれており、おそらく出口だと思われる場所まで赤い線が引かれていた。

「いま、おーむらいない! でれるよ!」
佐倉 光
「いない……? ありがとう!」
まずは彼が自分たちを助けようとしてくれていることに礼を言う。
佐倉 光
「牧志、チャンスかも知れない」

地図をチェックする。昨日見た視界と一致するだろうか。三つの扉のどれかが出口ということになっているのかな?
牧志 浩太
「ああ。
今日の“実験”が短かったのも、外出するから、ってことだったのかもしれない」
頷いて、一緒に地図をチェックする。
KP
三つではなく、「三方向に扉がそれぞれいくつもある」ですね。結構でかい。

三方向にある幾つかの扉。
地図を見れば、そのうちの一つが上への階段になっているようだ。
佐倉 光
「あの子が【出口だ】、と示してくれた方へ行ってみるか。

あとは、あの子に関してあの男が実験をしていたなら、それに関する資料を探したいところだ。
あいつがあの子の力について知っていて、封じる方法も研究済みで、
それでも彼の力の研究のためにそのままにしている、という可能性もある。

ここがリアルじゃないにしても、正確に再現されているなら
やっぱり俺達はあの子の顔を見ない方がいいんだろうな。
目隠しをすれば連れ歩ける、位の保証は欲しいよな……」
牧志 浩太
「そうだな……。あんまり時間をかけるわけには、いかないけど」

珍しいチャンス、かもしれないのだ。
あいつは時折外出するようではあるが、明日以降もそうだとは限らない。
牧志はそんな可能性を考えて口に出しながら、できればあなたと同様、希望を探したいと思っているのが言葉尻から推し量れた。
佐倉 光
「……なんか【あの子】じゃ呼びづらいな」

名付けは呪術的には色々な意味を持つ。
軽々しく名付けるのはいいことじゃないんだが……
まあ仮の名前くらいなら。
牧志 浩太
「名前、か。そうだな、呼びづらい。
あいつは、この子を呼んだりしなかったんだろうな」
佐倉 光
彼に何も与えられず空白であったのなら。

扉越しに話しかける。
佐倉 光
「これから君のことをシローって呼んでいいかな」
KP
「しろ? まっしろ?」
少年は扉の向こうで、不思議そうに問い返す。
佐倉 光
「うん。僕たちが勝手に呼ぶだけだから、あまり気にしなくてもいいけどね。

ありがとう。この地図の場所に行ってみるよ」
KP
「しろ! ぼく、しろ!」
扉の向こうで、少年は今までで一番嬉しそうに、あなたから貰った名を転がした。

「うん!」


……あなた達は、ここで選ぶことができる。
少年を連れていくか、連れていかないかを。

ここで思いつくことは何でもできる。
少年に外に出たいか問うてもいいし、ここで何かをしてもいい。
来るかどうか、少年に任せてもいい。

但し、上を調べて回ってから、またこの部屋まで戻ってくるのであれば、時間がかかる。大村が戻ってきてしまうリスクがあるだろう。
佐倉 光
一緒に来たいか問うかちょっと考えたんだよねー
KP
確実な情報がないタイミングで重ための決断を強いてごめんな……。
せっかくの置きだし、どうするかお悩み頂いて大丈夫です。
佐倉 光
「……シローくん、きみ、少しでも外に行ってみたいと思う?
外に行くなら、目で見ることは一切できなくなるとしても?」
子供にこんな選択をさせるのは、正直酷だと思う。
けれど知らせずにここに閉じ込めておくのは我慢ならなかった。
KP
外。
その言葉を聞いて、扉の向こうで少年は声を上げた。

「う、うん! そと、いくしたい。
おとうさん、ぼくさがすしたい!」

お父さん。
あなたは、あのファイルの内容を思い出すだろう。
彼をここに預けて去っていったという何者かのことを、少年も読んだのだ。

「みる、ない?」
少年は不思議そうにあなたに問いかける。その意味を。
牧志はあなたの言葉に一つも口を挟まず、機械のコードを自分たちから剥がし、荷物をまとめて外に出る準備をしていた。
佐倉 光
「世界がずっと真っ暗になることだよ。

寝るときには目を閉じるだろう?
ずっとそのままにしてなきゃいけないんだ。
そうしないと、きみは外で生きてゆけないし、
ここにいるよりずっと酷い目に遭うことになる」

本当に彼がそうなのかも分からないが、
残念ながら実験できるような内容でもない。
そうしなくてもいい方法を探すつもりではいるが、保証など何もない。
曖昧な希望など口にすべきではない。

問題は、彼の目を塞ぐだけで効力が遮断されるのか、というところだが。
あとは、彼の父親が生きている望みも、探す手段も、見つけるのは難しいだろう、といったところだが……それは出てから考えればいい。
KP
「まっくら?」

少年は不思議そうに言って、んー、と少し考えた。
ぺた、ぺたと、小さく丸い手で、扉に触れる音。

沈黙は長かったのか、短かったのか分からない。

「みる、なかったら……、ぼくみるひと、おかしくならない?」
佐倉 光
「正直、分からない」
佐倉 光
「だから詳しく聞かせて欲しいんだ。
きみは他の人たちを見たことはある?
あれば、その人たちがどうなったかを教えて」
さすがに自分を実験台にできるような内容ではない。
証言としては頼りないが、話は聞いておくべきだろう。
KP
「ぼくみるひと、とてもへんになる。
あしと、てと、あたまいっぱいうごかす。おおきいこえだす。
かべにあたまぶつける。
ぼく、びっくりする」

「それで、そのへんなったひと、いなくなる」
「きっと、それ、だめなこと」
佐倉 光
「なるほど……」
力があるのは間違いないみたいだ。
彼を連れ歩こうというなら自分たちがそうなるリスク、
下手をすると大量の人間が死ぬリスクを負うことになる。
佐倉 光
「目を隠して誰かを見たことはある?
そういう人が変になったかどうか知りたいんだ」
KP
「ううん、ない。
おーむら、かくす、いわなかった」
佐倉 光
それなら無理か。そう一瞬考えた。
牧志 浩太
「……」
ふっと、牧志が躊躇いがちに口を開いた。
牧志 浩太
「佐倉さん。そこに、機械のコードあるだろ。結構な長さのあるやつ。
それで縛っておいてもらえれば、佐倉さんでも俺を取り押さえておけると思う?」
佐倉 光
〈精神分析〉25しかないんだよねー。
KP
このシナリオでは「殴って正気に戻す」も可能です。>〈精神分析〉
佐倉 光
「え、あ……」
例がない、というなら実験するしかない。
佐倉 光
「……そうだな、全身の動きを封じて、口にも何か噛ませて……おけば」
佐倉 光
「万一のことがあった場合、あいつが実験とやらで正気に戻してくれる可能性も、なくはない、けど……そのまま捨てられる可能性もあるぜ」

そういやベッドの拘束具って使えないかな?
佐倉 光
「つーかむしろそれなら実験台は俺になるべきだろ。
俺が抑えられなかったら終わる」
KP
なるほど。
拘束具はベッドに固定されているけど、ベッドに身体を拘束することはできます。
佐倉 光
「コードなんて不確実なヤツより、もっと使えるのがある」
ベッドを見下ろす。
佐倉 光
「ムカつくくらい何もできなくなるからな、これ」
牧志 浩太
「いいのか、佐倉さ……、いや、違うな。
俺ならいいけど、佐倉さんがやろうとしたら止めるようじゃ、背負えないな。この子を。

……ごめん、佐倉さん。頼む。
何かあった時は、俺が佐倉さんを背負っていく。
絶対に、正気に戻すから」
牧志は拘束具の様子を確かめた。
破損してはおらず、鍵や認証がある様子もない。
問題なく使えそうだ。
衣服やハンカチなどを使えば、口を塞ぐこともできるだろう。
あの時あなたの喪失をあれだけ嘆いたくせに、彼は目の前のものを諦められないらしかった。
佐倉 光
「……よし。まず牧志が部屋を出る。
それからシローの目を閉じてもらって、この部屋に入れて俺がいる方を見て貰う。
何事もなければ目を何かで塞いで連れていこう。
ダメだったら……」
少し考えて苦笑した。
佐倉 光
「何とかしてくれ」
佐倉 光
まあ正直、怖さはあるが、そんな不思議な力を目の当たりにしたいという欲もあるんだ。
何事もなければラッキー、あればあったで貴重な体験ができるかも知れないな。
牧志 浩太
「分かった、何とかするよ」

牧志はあなたを扉から近い方の寝台に寝かせ、その構造を辿るように拘束具で縛っていく。
ベルトがぎしりと鳴り、あなたの身体は寝台の上に閉じられていく。

そういえば、拘束される所を目の当たりにしたことはないのだった。二日とも、目を覚ましたら縛られていたから。
佐倉 光
体が固定されていくと、恐怖心がつま先から忍び寄ってくる。
何が起きても逃げることができない状況にされてゆくのは怖い。

俺が望んでやっていることだ。
固定しているのは牧志だ。
人を救えるかの第一歩だ。

恐怖心に抗って深呼吸をしながら牧志を見つめる。
牧志 浩太
「佐倉さん、……ありがとう。任せた」

牧志はあなたの震える肩を、恐怖を宥めるように一度撫でて、力強く微笑んだ。
その眼には少しだけ不安が見てとれて、それでも、あなたと共に背負う気でいた。
佐倉 光
シローくんとの段取りは牧志に任せよう。
とにかく彼に目を閉じた状態でこちらを見て貰うこと、
牧志が彼と同じ空間に入らないことに気をつければいい。
目を閉じた状態の彼に見て貰うには、こちらの声で誘導したらいいだろう。
KP
牧志が背を向け、動けないあなたを置いて部屋を出てゆく。
あなたはひとり、残された。
佐倉 光
ここは大事なところだが、時間をかけすぎるわけにも行かない。
奴が戻ってきて脱出に失敗したのでは元も子もない。
呪文のように大丈夫と繰り返す。
佐倉 光
「よし」
佐倉 光
「いつでもいいよ」
KP
きい、と微かに扉が鳴った。
入ってきたのは、7歳ほどの幼い少年だった。

あなたの視線がその姿を正確にとらえる前に、“それ”は、あなたへと届いた。
まるで凍り付いた矢のような鋭さをもった視線が、閉じられた瞼の向こうのふたつの球体から、絶え間なく発せられていた。

視線があなたの眼を貫く。割れるような頭の痛みが突如として襲い来る。
今まで体感してきたどの痛みもこの痛みに及ばないほど、何かがあなたの頭部で醜く暴れまわっている。

恐怖、不安、脅威、畏怖、それら全てが威圧的に精神を揺るがしていく。そしてあなたは、その苦しみから逃れたいと望むだろう。

あの時のように。
すべてを感じない無の境地、

即ち”死”へと。

【POW】×5+50%の補正あり。
佐倉 光
1d100 99 【POW】(75+50) ☆ささぼっと☆ 1d100→77→成功
残念
佐倉 光
だめかー。
あとは目を潰すか何か封印する方法でもないとだな。
KP
目を覆っていても変化がない、ってあるんですよね……。
佐倉 光
目玉自体に魔力が宿っているのか。
もうそっち見るという概念自体が毒なのか。
残念ながら十分な実験をする時間も道具もないな。
KP
なのです。せめて、〈クトゥルフ神話〉成功すれば何か分かるかも、くらいかな。
佐倉 光
頑張れ牧志!!
なんかシナリオ的には「どうしようもない」で終わりそうな気もしてきたが!
KP
シナリオ的には「連れ出してもいい」んですよ、実は。連れ出すルートはある。
ただ、確実な情報は手に入らないんだ……。

佐倉 光
「あ……ああ……あああぁぁッ!」
悶える。叫ぶ。逃げ出さなければ、たった今この場で終わらせなければ!
佐倉 光
「うあぁぁぁぁぁ! 痛いいたいいたいいたい!!」
自らを終わらせたいと望むも全身を押さえつける拘束具は慈悲深く、
叫び声は布に塞がれてくぐもる。
何とか舌で布を押しだして、舌を噛もうとする。

舌を噛んだくらいで人は死ねないんだけどな。
万一噛み千切ったら死ぬほど痛いだろ?

拘束してもらうときに恐怖心を誤魔化すために言った自分の言葉が、嘲笑うように聞こえた。
KP
直前までの意志をあらゆる脈絡を押しのけてあなたの内側で恐怖が荒れ狂う。あなたはあらゆる手段をもって死へと向かおうとする。

そのとき、言葉が聞こえた。

「やわらかい、むきしつな、ねこみみ、おとずれる、しょうき。
ねこみみ、やわらかい、しょうき、おとずれる、むきしつな」

唱えるような言葉が聞こえた。
あなたが、少年に渡した言葉だった。

少年は祈るようにその言葉を唱えていた。

「しろ」

目の前の恐怖が、あなたが手を差し伸べたいと願ったあの少年であったことを、あなたは思い出した。
恐怖が荒波が頭を割る痛みが、少しずつ治まっていく。

再び少年に目を向ければ、そこには白い布をたっぷりと使った服装に身を包む、絶世の美少年が佇んでいた。

オパールのような輝く髪に、真珠に似たきめ細やかな肌が良く似合っている。心配そうにあなたを見つめる瞳はまさに夜空に浮かぶ一等星のように燦然ときらめいており、同時に魅力ある愛らしさも滲ませていた。
佐倉 光
「うぅ……あ……」
激しく息をついて少年を見る。声を聞く。
相手はヒトだ。恐ろしい力を宿してはいるが、無垢な少年だ。
KP
「だいじょうぶ? へんなった? なってない?」
少年は、心配そうにあなたの眼を覗き込む。
何度見ても、人間離れしたほど美しい少年だった。
佐倉 光
「……」
口に物が詰まっているためまともな返答はできない。
頷く。
そして口の中から布きれを何とか追い出して、唾を飲んで、ゆっくりと応える。
佐倉 光
「だいじょうぶ。
牧志……もう一人と話したい……きみは一度部屋に戻っていて」
KP
「うん、わかった。……よかった、うれしい!」
あなたがきちんと返答してくれたこと、“へん”にならなかったことを、それだけでも少年は喜んだ。
きっと、こんなことはなかったのだろう。
少年は白い衣装をなびかせ、部屋に戻っていった。入れ替わりに、牧志が室内に戻ってくる。
牧志 浩太
「ただいま。……すごい汗だ。
大丈夫じゃ、なかったんだな」
佐倉 光
「さっきのと違う意味で強烈だった。今んとこ何とか無事だけどな。
拘束しといてもらって良かったぜ」
佐倉 光
「目の魔力、あれマジだ。しかも相当ヤバい。
あいつが意識していようといまいと、目が開いてようと塞がれていようと、あの目は人を殺す。

ただ、何とかなる可能性はある。
一回乗り越えれば大丈夫なのか、時間でヤバくなってくのかそのへんは全く分からないけど、検証する時間はない」
牧志 浩太
「そうか……、駄目だったか。目を、閉じてても。
うっかりこっちを向くだけで、歩いてる途中に誰かを見てしまうだけで、人が死ぬんだ。
佐倉さんだって、ずっと大丈夫とは限らない」

牧志は忘れまいとするように、強調した。
佐倉 光
「まだ諦めるほど【どうにもならない】って情報は出てない。
俺はあいつを助けてやりたいと思ってる」
牧志 浩太
「俺もだよ。もう置いていける気がしない」
佐倉 光
牧志の方は一切見ないようにしてもらうか……いや、無理だな。現実的に。
佐倉 光
「……予防接種しとくか?」
牧志 浩太
「ああ、そうする。
俺だってあの子を受け止めたいしさ」
佐倉 光
「よし、交代。急ごう」
佐倉 光
俺があっち行ってもっかいシローに見られて本格的にバグったら……
佐倉 光
そんときゃあの男が牧志だけでも何とかしてくれるのを祈るしかねぇな。
佐倉 光
拘束を解いてもらって、今度は牧志を寝かせて拘束をかける。
KP
寝台に横たわる牧志の身体を、あなたは拘束していく。動けない形になっていく手足は自然と強張っていたが、つとめて穏やかであろうとしているらしかった。
佐倉 光
「大丈夫、俺は平気だった。気楽に行けよ」
間違いなく動きが封じられているのを確認したらシローを呼びに行く。
佐倉 光
二度目に見られても問題ないかのテストも兼ねているので、彼と顔を合わせる前に、自分がおかしくなったら牧志に会いに行くのはやめておいてくれと頼んでおこう。
了承が得られたらシローの部屋のドアを開けて彼を見る。
KP
再び少年の顔があなたの目に触れる。そこにいたのは、あなたがシローと呼んだ愛らしい少年だった。
怖気のするほど愛らしい少年、それだけだと、今のあなたにはきちんと分かる。

少年は少し怖れるようにあなたを見上げると、あなたが“へんになる”様子のないことを認めて、ふわりと嬉しそうに笑った。
佐倉 光
シローの微笑みは確信をくれた。
牧志の方が上手く行けば、どれくらいの間かは分からないが一緒に行動できる。
佐倉 光
「一緒に隣の部屋に行こう」

自分が彼の視線を浴びたときのことを考えれば、正気を保てるだけの情報があればいいのではないかと思った。
KP
少年は嬉しそうに、少し心細そうに笑って、あなたと手を繋ごうと手を伸ばす。
佐倉 光
では手を引いて隣の部屋へ。
佐倉 光
「入るぞ」と声をかけて扉を開ける。
KP
あなたは少年の手を引いて扉を開ける。
音に反応して、寝台に縛られた牧志がこちらを向いた。

その瞳孔が音を立てる程の速度で膨張した。
牧志 浩太
「──!!」

布を噛まされた口が、声にならない悲鳴と涎を垂れ流す。苦痛を振り解こうと寝台の上で髪を振り乱す姿に、意志の光は存在しなかった。

彼の眼は初めて見る色をしていた。
その中に、死への渇望が一杯に詰まっていた。
死なせてほしい、とあなたに訴える色だった。

もはや他に手段はないのではないか、
そう、一瞬ばかり思わせてしまうほどの。

牧志のみ、【POW】×5+50%で判定。
1d100 99 ☆ささぼっと☆ 1d100→79→成功
あぶない
KP
+50%ないとどちらも失敗していた出目出しているのがとても危うい
佐倉 光
それなんの50%なんだろ。言葉かな。
KP
言葉です。
佐倉 光
『狂気』を渡さなくて良かった。

佐倉 光
「大丈夫、落ち着いて、よく見るんだ」
声をかける。
KP
彼の眼が絶えず収縮と膨張を繰り返しながらあなたを見た。
喉をひくつかせて、彼は数度呼吸をする。
嚙まされた布をわずかに引き込みながら、無理矢理頭の中に差し込まれた狂気と苦痛と死の企図を、大きく胸を上下させ、それごと呑み込もうとするかのように。

少年が彼の名を呼んだ。

彼はだらだらと涙を流しながら、焦点の合わない眼であなたと少年を見る。必死にそちらへ焦点を合わせようとする。
佐倉 光
「痛いよな、苦しいよな。分かるぜ。
大丈夫、よく見ろ、ただの男の子だ」
ゆっくりと、少年の声に被らないように語りかける。
手に触れるか。
KP
痙攣するように跳ねる指先が、あなたの指を強い力で掴む。不随意に反応する身体と精神を押さえつけて、彼はこちらを見ようとしていた。

やがて、その反応が数度、揺り戻しを伴いながら小さくなっていく。
佐倉 光
その目を見ながらゆっくり声をかける。
割と勝ち目のない賭けに勝てたことに、内心心底ほっとしながら。
KP
彼はあなた達と視線を合わせて、そっと頷き、微笑んだ。
佐倉 光
良かった。
これで動ける。これで戦える。
佐倉 光
拘束具を外して牧志に手を貸そう。
佐倉 光
「互いに何かあったらすぐ言うことにしよう。
自身についても、人についても」
牧志 浩太
「……ありがとう。
確かに、あれは強烈だな。何の脈絡もない。理由も分からない。いきなり頭の中に差し込まれるんだ。

ああ、そうしよう。
少しでも異変があったら、すぐ言おう」

彼の口調の端にも、安堵と、喜びが滲んでいた。
これで、諦めないで済む。
それが例え災厄となる可能性を秘めていても。
佐倉 光
あ、二人して踏み止まったところで、自分の知識(〈クトゥルフ神話〉知識)のどこかに彼に関する知識に近しいものはないか考えたい!
忘れそうなので言っとく。
KP
お。では、〈クトゥルフ神話〉で判定をどうぞ。
佐倉 光
1d100 20〈クトゥルフ神話〉!!  ☆ささぼっと☆ 1d100→15→成功
佐倉 光
成功しちゃったよ。
牧志 浩太
1d100 27〈クトゥルフ神話〉 ☆ささぼっと☆ 1d100→90→失敗
佐倉 光
今回随分とこねくり回されたからその影響で封印の隙間でも覗いたか、その時には関係が無かった今まで読んだ本の知識を思い出したか。
KP
あなたは意識の果てから、希望を求めて知識を引きずり出す。一度はそちらへ渡ろうとしかけたからか、少しだけあなたは手の伸ばし方を思い出していた。

あなたの意識が本をめくるように、知識をひもとく。
何かの姿が見えかけあなたは目を閉じる。
決して飼いならされることのない野生の生命。最も冒涜的なる放蕩。そんな寓意以上にそれを理解しようとすることは、狂気と死を招く。

あなたは書物の一文をひもとく。
その霊妙を宿して生まれてきた子らについては、僅かな記述があるのみだった。

怖れよ。
自然の本来の姿こそ死である。

それは本質、最も冒涜的なる放埒。
人にして人ならぬ子らの力の本質とは、
彼らが抱く遍く欲を恣にする望み、
気紛れなる〈神〉の魅了の碧眼である。
つぶせない
KP
成功したけどなんかCoCっぽい文章しか出てこなくてごめん佐倉さん……。
シナリオには「目を潰したらどうなるのか」という記載がない&マレモンにもパンの子の能力について詳しい描写がないため、ここは改変の範疇です。

このシナリオ中で「視線」が強調された描写になっているので&本来は随意的な「能力」らしいので、このシナリオでは「眼」に力が宿るものとしました。
が、〈クトゥルフ神話〉技能だし、マレモンにも詳しく書いてない範囲だし…… ってことで、ぼんやりした文章にさせていただきました。
佐倉 光
えっ、目を潰す前提無いのか!
普通に出そうな意見なんだけどなぁ。
KP
ないんですよ。

佐倉 光
ぐら、と体が揺れた。
その知識は【毒】のようなものだ。
佐倉 光
死が本来の姿だ? だからどうした。
俺達は生きていたいんだよ。
それを否定するような知識なら今は不要だ。
牧志 浩太
「佐倉さん? 佐倉さん」
あなたの異変を感じて、彼があなたを呼ぶ。
佐倉 光
「いや……大丈夫。
俺の記憶に役立つやつがないか考えてただけ。
碌なのが出てこなかった」
佐倉 光
「行こう」
牧志 浩太
「ああ、行こう」
牧志は頷いて、こめかみの汗を拭いて前を向く。
少年の眼は、初めて目にするのだろう「外」への期待と少しの怖れ、それから、あなた達と共にいられることへの喜びに輝いていた。
佐倉 光
では上のフロアへ。
まずは出口とされている扉の所まで行ってみよう。
そこまで行く道の間にある扉にプレートなど文字があるようならシローに見せて、何の部屋か訊きたいけど。
KP
「じっけんしつ」「ひけんしつ」「そうこ」「かいぼうしつ」「ひょうほんほかんしつ」などと、シローは細々と答えてくれる。
……倉庫はともかく、あまり覗きたい気分にならないものも多かった。
佐倉 光
「できれば、シローくん関係の資料欲しいよな。
見るというだけで駄目、視線は関係ないとすると、シローくんが【見るという行動をする】時点でアウトなんだろうな。
壁越しだとどうなるんだろう。
壁が力を遮断してくれるなら、金属製の眼帯なんかで防げないかな……」
牧志 浩太
「だな。
ああ、そういえば、壁越しだと大丈夫だったな。【見てる】ってことにならないから?
……頭に箱かぶれば大丈夫だったりしないかな」
佐倉 光
「……いや」
ふとばつが悪そうに言葉を止め、話題を変える。
彼の問題を解決したいという気持ちと同時に、知りたいという興味の方が先に立ってしまっているのを自覚し、これではあの男と同じだ、と思ったため自重しました。
佐倉 光
「シローくんが入ったことがある部屋はある?」
KP
シローは不思議そうにあなたを見上げ、あちらこちらとプレートを指さす。
一通りの部屋は覗いたことがあるようだった。
佐倉 光
ひとまず出口までは行ってみよう。
どんな見た目なんだろう。
KP
あなた達は彼が描いた地図に従って進んでいく。扉を開けた向こうにある階段を上り、雑然とした狭いフロアを抜けると、エレベーターのような扉がそこにあった。

どうやらこの実験施設は地下にあり、このエレベーターが地上への出口らしい。
佐倉 光
一番【合理的】なのは、俺と牧志だけで地上に出て逃げることだな。
シローには後で迎えに来るとでも言って。

エレベーターにボタンやカードスロットのような物はついている?
KP
エレベーターのパネルはシンプルなものだ。
大人の目線の高さに、[▲]というボタンがひとつあるだけ。
佐倉 光
「シローくん、今までここを使わなかったのはどうして?」
KP
「かんがえる、なかった」
彼がエレベーターを見つめる眼には、少しばかり戸惑いのようなものが宿っている。

「ねこさわりたかった。そとみる、したい」
でも。
彼は小さく首を振った。

何となく、外に出られる気がしなかった。
少年の足を阻んでいたのは、ただ、今思えばそんな程度のものらしかった。
佐倉 光
「そうか」
そんなものなのかもしれない。
彼にはそんな概念がなかったのだ。
佐倉 光
「シローをこのまま連れていては外には出られないな。
別の廊下も見てみて、めぼしい情報がありそうな部屋を探す。
多分……資料系このフロアにあるんじゃないかって気がするからな」


※前にシローくんから名前が出た部屋は探索可能箇所でしょうか?
KP
そう思いを固めて、あなた達は情報を探す。
しかし……、

彼にプレートの文字を見てもらいながら、情報がないか片端から探しても、用途をあまり想像したくないような器具、中身を詳しく見る気の起きないような標本や、雑多な物が放り込まれた倉庫などがあるだけだった。

あの「資料室」に、大村は大体の資料を集めていたらしい。
唯一の収穫は、倉庫に牧志のペンなどと一緒に、あなたのCOMPが放り込まれていたことくらいだ。

……どれくらい時間が経ったか分からないが、あまり時間をかけすぎるべきではないだろう。
佐倉 光
「くそ、めぼしい情報がない」
結局エレベーターの所に戻ってきた。
佐倉 光
「上に行こう」
最悪シローにはしばらく悪魔と一緒にいてもらうことになるか。
少し焦り始めていた。
牧志 浩太
「結局、情報はなかったな……。
ああ、」
KP
急ごう。
牧志は少年の姿を一度振り返って、前を向いた。
エレベーターに乗る?
佐倉 光
乗るか。
三人で。
とりあえず良いと言うまで下を向いていてくれってお願いしよう。
KP
シローは頷いて下を向く。
意外と
佐倉 光
意外と大村にこの子開放する方法教えてって言ったら教えてくれたりしてな!
KP
シナリオにはないんですが、大村あんまりこの子に関心ないし、なんか普通に言いそう…… って気はしてます。
佐倉 光
研究終わってんのかな。
KP
最近少年の研究してないから放置気味らしい。
佐倉 光
終わった研究対象には興味なくしそうだもんなー。
KP
少年助けたくて研究しているわけではないですしね。

KP
あなた達は、彼とともにエレベーターに乗り込もうとする。

その時。

「キュイ」
背後から、Cuiの電子音が聞こえた。

「大村の許可なく外出は認められません
 病室にお戻りください」
牧志 浩太
「そういえば、見張りって言ってたな! 
部屋出ても動く気配がなかったから、半分忘れてた」
佐倉 光
「俺も。そういえばいたな、こんなの」
佐倉 光
「いい加減飽きたんでね」
佐倉 光
エレベーターのボタン押そう。
こいつが動いている時点でバレるもバレないもないだろう。
KP
「……被験者の脱走を確認 強制手段を開始します」

Cuiの目のように見えるライトが、ぎらりと赤く光った。
猫耳部分が開き、そこから射出式の凶悪な針が覗く。

戦闘だ。

エレベーターは地上階にいるようで(大村が出ていったからだ!)ゴンドラがここに来るまでには、5ラウンドかかる!
【Cui】
【耐久力】 18 【STR】11 【DEX】5 攻撃は〈麻酔針〉45%。

また、戦闘開始時に二人とも【アイデア】
佐倉 光
1d100 85 【アイデア】 ☆ささぼっと☆ 1d100→32→成功
牧志 浩太
1d100 90 【アイデア】 ☆ささぼっと☆ 1d100→60→成功
KP
あなた達は同時に思いついた。

Cuiの脚はキャタピラだ。あれ、横倒しにでもしたら動けなくなるのではないだろうか。

実行する場合は【STR】11との対抗だ。
二人がかりで行うのなら、【STR】を合算できる。
もちろん何かほかの手段を取ってもよい。
佐倉 光
二人がかりなら+30位は入るし、いけるだろ。
牧志くんの【STR】いくつだっけ。
KP
合算するなら【STR】6(佐倉さん)+11(牧志)=17と11の対抗。
佐倉 光
じゃあ80だな。いけるいける。
KP
代表で佐倉さん、対抗ロールどうぞ。
佐倉 光
1d100 80 押せ!  ☆ささぼっと☆ 1d100→43→成功

佐倉 光
「牧志、あいつの足」
牧志 浩太
「ああ。やるか」
佐倉 光
牧志に目配せすると同時、Cuiに横から体当たりをかます。
佐倉 光
「せぇのっ!」
牧志 浩太
「せぇのっ!」
KP
あなた達は二人で息を合わせ、Cuiに体当たりする。
安定感のあるCuiのボディが大きく傾き、臨界点を超えた。

ガッシャン!

横倒しになったCuiは無意味に麻酔針を射出しながら、キャタピラを空転させキュイー、キュイーと声を上げるばかりだ。
牧志 浩太
「行こう!」
KP
エレベーターのゴンドラがあなた達の前に滑り込んでくる。扉が開く。
佐倉 光
シローの手を掴んでエレベーターに乗る。
KP
シローはあなた達と共にエレベーターに乗り込む。ぐんと上昇する感覚。

KP
扉が開いた先には、さらに扉がひとつある空間に出た。ふと、草の匂い。
この扉を開けば、外なのだろう。
KP
「へんなにおい」シローが不思議そうに、下を向いたまま鼻を鳴らす。
想定と違うぞ!?
佐倉 光
えっいきなり外?
KP
外。
地上部分にはあんまり目立つ建造物はないのです。目立つから。
佐倉 光
もう一度くらいストップかかると思ってたなー。
KP
大村は被験者逃げたところで「また捕まえればいいや」くらいのトーンなので、そんなにないんですよねストップ。
もちろんまた研究所に戻ることはできるけど。
佐倉 光
ずっと留まった場合どうなるかは知りたいw
KP
実は留まるルートはシナリオにはないので、大捏造改変ENDにはなるんですが、留まったらどうなるか、大村に聞いたらどうなるかっていうのは考えてはあります。
佐倉 光
ないのか! それまた意外。
どういうルート考えてたか後で教えて欲しい!
とにかく正気をブッ込まれて限界来たらポイされるのかなと思ってた。
KP
ないんですよ。案外想定ルートが少ないんです、このシナリオ。
探索もなんですが、細かい所があんまりないので、解釈の範疇ってことで結構埋め埋めしてます。
お、ではいろいろ考えてた埋め埋めあるので、終わったら改変ポイントと一緒に。トイレがない理由とか。
佐倉 光
結局リアルだったのもびっくり。
後で色々訊きたい!
KP
話したい!
牧志の正気度ブッ込まれた時のシナリオにない事情の話とかもしたい。
佐倉 光
なんだろう!?

佐倉 光
まいったな……。
上にもあいつの住居くらいあるかと思ったのに。
そこに何か希望がある可能性を考えていたのに。

シローにはエレベーター前にいてもらって、草の匂いがする方の扉を開けよう。
KP
扉を開けば、そこには鬱蒼とした森が広がっていた。

木々が空を覆いつくして、今が昼か夜も分からないが、COMPの表示を見れば夜の時刻を示していた。

あなたは、空を見上げた時に気が付く。木々の枝から何か巨大な果物が大量にぶら下がっている。それは縦に長く、時折風に吹かれて少しだけ揺れている。

それをよく見る? 無視する?
佐倉 光
うおぉ脈絡がない! しかし見たことがないものは多分気になる!
佐倉 光
よく見る。
手が届く位置にあるかな?
それはおそらく大村がシローの視線を実験した、その結果だった。

コメント By.佐倉 光
自由を手に入れるために二人は賭けをする。
果たしてこれは、背負いきれるものなのだろうか。

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本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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