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こちらには『スペクト・ラム』
『ヒナドリ ・ イングレイヴド 』
ネタバレがあります。

佐倉 光
「はー、最高だったなー!
もうクタクタだ」
牧志 浩太
「俺も! こんなに乗ったの初めてかも」
KP
あなた達は口々に言い合いながら、夜の道を歩く。
ふと美味しそうな匂いがした。
牧志 浩太
「腹減ったな。そば屋は…… やってないのか。
あ、やってる店がある」
KP
牧志は匂いに惹かれるように、とある『中華料理店』へと足を向けた。

その料理店は特に有名というわけでもなく、ありふれた中華料理店だったのだが、胡麻油とスパイスの効いた香りは空腹のあなたを惹きつける。
佐倉 光
「晩飯あそこにしようぜ。いい匂いだ」
牧志 浩太
「そうしよう。腹減った」
KP
扉を開き、店内へと足を踏み入れたあなた達を店員が迎え入れるだろう。
人柄の良さそうな中年の女性だった。

彼女は手馴れた様子で話しかけてくる。

「いらっしゃいませー お好きな席へどうぞ」

貴方たちがそれぞれ席に着くと先ほどの女性が水と温かいおしぼりを持ってくるだろう。

さて、何を食べようか?
KP
間が空いたので再度。
〈PL へ〉
このシナリオでは、描写に時折『』で括られた単語が表示されることがあります。

PL はこの単語に対し、”回収”することが可能です。
回収を宣言すると、その単語に対する説明文が開示される他、その単語を集めることが可能です。
佐倉 光
ああー、そういうシステムだった。
『中華料理店』を回収する。
KP
ピコーン!
『中華料理店』…【名詞】この世の中華料理店はだいたい三つに分類することができる。
高級中華料理店と大衆中華料理店、そして中華そば店。
佐倉 光
なんだろ。街とか428みたいな。
そのふたつだと、そっから隠しザッピングできたりするけど。
KP
割と後の方で役に立つものです。
牧志 浩太
「あれ、さっき何か音がした?」
牧志は辺りを見回すが、呼び出し音などのシステムがあるわけでもなく、よくわからなかったようだ。
佐倉 光
えっリアルで音がしてるの!? ここデヴァ・ユガ?  w
KP
失礼しました。そんなことはない。
佐倉 光
ネタだった!

佐倉 光
「いや? ただのシステムメッセージだろ?」
佐倉 光
「何食おうかなー。酢豚もいいし、担々麺もいいなー」
牧志 浩太
「システムメッセージ?
まあいいや、何がいいかな。麻婆豆腐とか青椒肉絲もいいな」
KP
牧志はうきうきとメニューを見る。
見た所、日本の中華料理店と聞いてなんとなく浮かぶメニューは大体あるようだ。
あんまりニッチなメニューはない。
佐倉 光
担々麺と、青菜とカシューナッツの炒め物注文しよう。
今食べたい。
牧志 浩太
牧志は青椒肉絲と炒飯を頼んだようだ。
たっぷり動いた後は肉々しいメニューが欲しくなるものである。
KP
しばらくすると、これまたよくある中華料理店で出るような、ほのかに脂っぽい美味そうな料理を彼女が運んできてくれる。
牧志 浩太
「頂きます」
待ちきれない様子で牧志が箸を手に取る。
箸先が肉をつまみ、肉の細切れが牧志の口の中へ消えていく。
KP
※佐倉さんが守ってくれたおかげで、牧志は肉に思う所を背負わないで済みました
佐倉 光
そうだな。牧志の場合、砕けちゃったヤツ以外に思うところ生える可能性あったもんな。
よくぞ【STR】判定成功できたよ我ながら。
佐倉 光
それをじっと見て、それから少し安心したように自分の食事を始める。
野菜が、美味い!!
スパイシーな麺を啜り、挽肉をすくってゆっくり食べる。
牧志 浩太
「はぁ、美味い」
噛みしめるように、嬉しそうに彼は呟く。
何かを確認するように、ふと腹を撫でた。
佐倉 光
「どうかした?」
牧志 浩太
「ああ、いや、なんでもない。
食べたら何か動きそうな気が、ついして」
佐倉 光
「冗談のつもりならやめろよ……
あと本当に何かあったらすぐ教えろよ?」
目が真剣である。
牧志 浩太
「ごめん、そんなつもりじゃなかった。
ああ、もし本当に何かあったら、今度はすぐ伝えるよ」
佐倉 光
「分かったからって何ができるってワケでもないかもしんねーけどさ」
ナッツをつまんで口に運ぶ。
普通の食事が楽しめるようになったのは幸いだ。
牧志 浩太
「何かできた時も、してくれた時もあっただろ」
杏仁豆腐の小鉢を手に取り、スプーンで掬う。
KP
可もなく不可もなくといった味だが、よほど肥えた舌を持つ者でなければ総合して『美味しかった』と言える満足感が、あなた達の腹を満たしていた。
佐倉 光
「ふー、食ったぁ……」
背もたれに寄りかかって息をつく。
今日はなんだかんだでちょっと食べ過ぎているな。
まあ叫んでエネルギー使ってるし、朝は仕事だったし、いいよなこれくらい!
牧志 浩太
「だな、ちょっと食い過ぎたかも。まあ、少しくらいいいか」
佐倉 光
少し話して、落ち着いたら会計済ませて店を出よう。
KP
そこで【アイデア】
佐倉 光
1d100 85 【アイデア】 ☆ささぼっと☆ 1d100→51→成功
牧志 浩太
d100 90 ☆ささぼっと☆ 1d100→3→決定的成功クリティカル)!
FANBOX開設したで
佐倉 光
おっ
KP
佐倉さん、あなたはこの料理が平坦であると感じる。
まるでコンピューターが計算した”料理”という概念を食べているかのようだと思う。

牧志、あなたはこの料理が美味しかったことは間違いないのだが…… 何か、ひどく不自然なものを感じる。
まるで、コンピューターが計算した”料理”という概念を食べているかのような、“味”を知らない何かがはじき出したかのような。
佐倉 光
まあ、面白みはない味だった。リピートはないな。
牧志 浩太
その平坦さは何となく、嫌な予感を覚えさせるような気がした。いや、気のせいだよな。
美味しかったのは、美味しかったし……。
佐倉 光
いや、ある意味【面白い】っていうのかな、これは。
なんとなく眉根を寄せて担々麺のスープをすくって首をひねる。
KP
──席を立って会計をしようとしたあなた達を、不意に強烈な眠気が襲う。

立ち上がろうとした足から力という力が抜ける。
牧志は何か叫ぼうとしたようだった、しかし声は出ない。
引きずり込むような重さに、あなた達は意識もろとも体が崩れ落ちるように床に倒れた。
KP
ごめんな二人とも
佐倉 光
こんな、時にまで!?
時と場所を選んでくれない無慈悲な異変に、特定の誰かを思い浮かべて罵倒したかも知れない。
KP
あなたの罵倒は届かない。
声は、出ない。

脳裏にイルカの嘲笑が見えた気がした。気のせいだ。
訪れる異変
KP
この瞬間の「ごめんな二人とも」感がすごいですね
佐倉 光
PLたちの方がニャルより余程たち悪いよねって常日頃思いながらやってるよ。
CoCの佐倉は第四の壁への貫通力を失ってるけど、知ったら間違いなく殴りにくるね。
KP
全くだ。貫通力を失っていてよかった。
むしろPLたちこそがニャルラトホテプなのかもしれない
佐倉 光
それはいつも思っている。
楽しむために困難に放り込んで、なんならシナリオよりさらに彼らの弱点をせめるイベント生やして喜んでるんだもの。
やってることがそのものだからね。
KP
全くだ。俺が、俺達がニャルラトホテプだったのかもしれない。
なるほど元々暗黒神だし問題はない。
(ファラリス神よりニャル様の方がはるかにたちわるいけど)

KP
帳を上げるように、ゆっくりと瞼を持ち上げる。
牧志 浩太
「佐倉さん?」
確かめるような牧志の声がした。
佐倉 光
ああ、と息をつく。牧志の声がする。少なくとも独りではない。良かった。
目を開ける。
KP
そこはひどく殺風景な白一色の空間で、壁や天井がなくとても広いようだ。

あまりにも白が続く空間の奥行きを見渡していると、どこまでこの空間が続いているのかと不安になるだろう。

傍らに倒れていた牧志が身を起こす。
あなたの顔を見て、ほっと少し安堵したような息をついた。
牧志 浩太
「よかった、いた……」
KP
あなた達は二人とも、簡単な病衣のような服を着せられていた。
元々着ていた服や持ち物は、見当たらない。
佐倉 光
「……なにこの格好」
牧志 浩太
「……え、格好?」
牧志 浩太
「うわ、本当だ。何だこの格好」
牧志 浩太
「しかも、また持ってた物なくなってるし」
佐倉 光
「戦慄病棟はナシだって言ったじゃねぇかよ。なんだよこれ……」
牧志 浩太
「ここまで来るといっそ呆れるな……。
もうちょっと平穏でいたかった」
佐倉 光
壁も天井もない?
異常すぎるな。
佐倉 光
「これ、仮想空間みたいだな……」
ビルがふってきたりしないだろうな?
牧志 浩太
「ああ、確かに、そう見えるな。
何だろう、前の時に見た空間に似てる、どこまでも真っ白な……」
佐倉は真・女神転生TRPGにて仮想空間を体験し、その時に降ってきたビルに潰されている。
そのときの仮想空間の名称が『デヴァ・ユガ』といった。
また、牧志も仮想空間じみたものを体験している。
どちらも二人とも知っている。
KP
そこで〈聞き耳〉
牧志 浩太
1d100 97 ☆ささぼっと☆ 1d100→37→成功
佐倉 光
1d100 79〈聞き耳〉 ☆ささぼっと☆ 1d100→33→成功
佐倉 光
何かが起きた。何が起きても冷静に対処しよう。
そう思った矢先だった。
KP
どこかから微かにノイズ音が流れ始めた。
よく耳を澄ますと、そこに人間の声が混じっていることがわかる。

「意識レベル正常。バイタル問題なし。
実験プロトコル続行可能。プログラム送信中……5、4、3、2、1」
牧志 浩太
「あ、おい、何だよそれ──」
KP
その冷静な声は、その内容は、あなたに酷く嫌な記憶を思い起こさせるかもしれない。
本編見る!
佐倉 光
「!」
忘れようったって忘れられない忌まわしい記憶だ。
佐倉 光
「う、あ……嫌だ、あんなのは、もう」
頭を抱えて座り込む。
KP
佐倉さん、と牧志が声を出しかけた。
その瞬間だった。

ノイズ音が鳴り止む。

そして次に戻ってきた静寂が、

圧倒的すぎる存在を、あなた達の前に連れてきた。

それはこの世の理不尽と畏怖の概念を常にその体から溢れさせ、振りまいている。
泡立つ雲のような奇妙に爛れた肉が積み重なった姿。
悍ましく揺らめく黒い触手と、黒い蹄を伴った不揃いな足、聞く者の脳髄を揺るがすような気味の悪い呻き声を発する巨大な口。

あなた達はそれを前にして恐怖する以外のことはできない。
なぜならば、それこそが宇宙の真理であり、人間という極端に小さな存在が覆しようのない事実を暴かれているのだから。

SANチェック成功時減少 1d100失敗時減少 強制SAN0》。
一時的狂気・不定の狂気の処理は不要です。
それどころじゃなく遠慮なくどうしようもなく正気を吹き飛ばされてください。
牧志 浩太
1d100 71 《SANチェック》 ☆ささぼっと☆ 1d100→31→成功
1d100 ☆ささぼっと☆ 1d100→90
SAN 71 → 0
佐倉 光
1d100 60 SAN ☆ささぼっと☆ 1d100→53→成功
1d100 ☆ささぼっと☆ 1d100→85
SAN 60→0
牧志 浩太
「あ……、ぁ。
あ、あ、あああああああああ、」
KP
目の前で、傍らにいた青年の眼から光が吹き飛んだ。
恐怖という概念すら吹き飛び、思考が吹き飛び、概念が吹き飛び、破壊される。

蹂躙される。

あらゆる言語から意味が喪失する。
ぽっかりと空いた眼から光がしたたり落ちて潰えた。制御を失った青年の唇から涎がぽたり、ぽたりと落ちる。

あなたにはもはや、その意味は分からない。傍らにいたものが何だったのか、あなたがどこにいるのか、あなたとは何だったのか、何、とは何だったのか。

問いとは何だったのか。

あなた達を人間たらしめるための理性が、『正気』が、音もなく崩壊して消えていく。

それは人間という存在の価値を思い知らされるようにも感じられた。

そして暗転。虚無という暗黒をあなた達は漂うことになる。
佐倉 光
何かを見た。
恐れた。恐れていた。
佐倉 光
かちん、と何かが落ちた。
頭がクリアになった。
佐倉 光
どうして恐れる必要があった?
あれは向こう側を覗ける窓だ。
向こう側へ行くには?
扉に変えないと。
扉なら俺のなかにある。
必要な知識もある、どうしてか隠れてるからほじらないと。
そうだな代償が必要だ。

左手には何もない。
あれがあれば楽なのに。
どうして俺、あれを使おうとしなかったんだ?

今までなにも見えていなかった自分を嗤う。
ああそうだな、自分のなかに受け入れることをどうして恐れていたんだろう。
叡智を恐れるなんて愚かなことを。

まあでも目の前にちょうどいいのがあるし、これ使えばいいか。
大事な親友の牧志。
彼なら役に立つ。
とびきり良いマグネタイト、血液、精神力、最高の生け贄体質。
便利な奴だ。使わない手はない。

少し前に来た彼も色々積んでいて便利そうだった。羨ましかった。交換すれば良かったのに、どうしてこっちの手を掴んだんだろう。理解に苦しむ。

しかしここ何もないのか。
生け贄だけあってもなぁ。
回復どころか正気度吹き飛んだ
KP
※次のシーンまで遠慮なくSAN0ロールができます。
佐倉 光
いきなり吹っ飛ばしてくる!
佐倉 光
知性とかそのままで大事なとこ吹っ飛んでサイコになった感じのにした。
KP
佐倉さんのSAN0は踏み越えてしまうこと、って話がありましたもんね。最高。
佐倉 光
自分のなかには神が封印した知識があって、隣には最高の生け贄がいるのに、どうして使わなかったんだろうね?
KP
どうしてでしょうね?
佐倉 光
っていうかなんで神様に封印してなんて頼んだんだろうね、バカな奴。

KP
あらゆるものの意味を引き剥がされた青年が、あなたの横でたゆたっている。

ああ、いくら親友でも、やはり彼は“人間”だったのだろう。耐えられなかったのだ。彼の思考は、眼は確かにあちらを視ていたはずだったのに、“彼”という自我は矮小な認識と理解に根差し過ぎていた。

あなたの目の前で絶対の真理が手を招いている。『正気』などという概念に最初から意味はなかったのだ。

ああ、少しもどかしい。
暗黒のうちであなたは穏やかに思う。
せめてナイフのひとつでもあれば、彼を通じて扉を開けただろうに。
佐倉 光
そうだなぁ、ナイフでもあれば、血を使って陣を描くとかできたのに。
爪でなんとかなるだろうか?
牧志の手を取る。彼の腕を引っ掻いて、ため息をつく。
跡がつく程と考えると爪が痛むな。すぐにでも試したいんだけど。
KP
手を取っても、爪で腕を引っ掻いても、彼は何の反応も返さなかった。
唇からこぽこぽと意味のない声がこぼれ、その内側に躍動に足る何かが残っていないことを示していた。

それはもう生贄でしかなかった。
ふとあなたは暗黒の中に何か光を見た気がした。気のせいかもしれなかった。
今のあなたが関心を向けるべきものとも思えなかった。
ぽっかりと瞳孔を開けた彼の眼がつうとその光を追った。
KP
※もうちょっと見ていたい気持ちになるKP
佐倉 光
なんだ、吹っ飛んじゃったのか。つまらないな。
牧志と話すのは好きだ。俺の話についてくる唯一の奴だから。同じのを……それこそ他のところから連れて来たらいいのか。いっぱいいるもんな。

真っ赤な筋が刻まれた手を離す。
なにか道具なしで扉を開ける手段はないかな。例えば手軽なところだと呪文とか……
この頭の中をこじ開ければひとつやふたつ出てきそうなものだけど。
そういえば牧志も同じ知識を持ってるんだっけ?
佐倉 光
「牧志、牧志?
世界の境界こえる魔法覚えてないか?」

境界と言えば波照間さんだな。
あっちに帰ったら波照間さん使って手っ取り早く向こうに行って……
佐倉 光
「牧志。牧志?  おーい」
無遠慮に揺さぶる。吹っ飛ばれると不便だなぁ。
KP
あなたは知識を求めて身体を揺さぶり、その眼を覗き込んだ。

強制的に注ぎ込まれた。光が。
あなたは知覚する。
どこからか注ぎ込まれた光が、彼の開ききった眼の中にあえかに宿っていた。

彼が、緩やかに、数度、瞬きをする。
光が明滅して、その中で膨張する。

終わりのない暗黒に、音もなく一石が投じられた。
少しずつ光は確実になり、視界が開けていく。

そしてあなたは微かに思い出すのだ。
己が暗黒のうちにあったことを。

▼牧志、佐倉ともに、SANが+10されます。
牧志 浩太
SAN 0 → 10
牧志 浩太
「あ、あああ、あああああああ!!」
KP
牧志の叫び声であなたは目を覚ます。
※直前までの出来事と、その時にあなたが何を思っていたかは覚えていて構いません。
但し、“見たもの”のディテールは精神の防衛機構により、朧げになっています。
佐倉 光
混乱する。
ちょっとした出っぱりを踏み越えたような気がして。

SAN 0→10
佐倉 光
牧志に怪我、させたな。
佐倉 光
「…………」
佐倉 光
はぁ? なんで?

困惑する。混乱する。
佐倉 光
俺なんでそんなことしたんだ?
佐倉 光
「気持ち悪……」
繋がらない。直前までの自分と、何かが変わったと思えないのに繋がらない。


ここは真っ白の空間?
牧志の腕に傷はある?
佐倉 光
ところで正気に戻ったところで
『正気』を獲得することは可能?
KP
可能です。
ピコーン!
『正気』…【名詞】どうやら人間の体内には血液の他、正気という言い知れぬ物が廻り続けているようだ。
KP
あなた達が目覚めた場所は、どこか知らない病室ような場所だった。
ただ、ここに窓のような外の景色を見ることができる物はなく、それがこの病室をひどく閉鎖的に見せていた。
牧志 浩太
「あ、あ、ああ……、」
牧志はひどく青い顔でがたがたと震えていた。

あなたと自分自身を交互に見ながら、自分が、あなたが、肉体が、意識が、認識が、人間にとって理解可能なそれらが、そこにあることを確認する。
KP
牧志の腕を見ようとしてあなたは気づく。
病衣を着た彼の身体は、コードや点滴によって傍らの機械に繋がれていた。
佐倉 光
「大丈夫か? おい」
声をかけて初めて気付く。
佐倉 光
俺、さっき、牧志を生贄とか、取り替えれば良かったとか、考えて……
自覚なく、変に
佐倉 光
この状況、かなりまずいんじゃないのか。

自分の腕は繋がれている?
佐倉 光
あ、【美味しかった】拾い忘れちゃった。
このシステム気をつけてないと抜けるなぁ。
KP
描写の中にしれっと入ってきますからね。
牧志 浩太
「あ……、ああ。ああ、だ、大丈夫。たぶん、きっと。
お、俺、生きてるよな? 佐倉さん、生きて、生きてる? 生きてるって……、み、見たんだ。覚えてないけど、何か、……何か。

理解できなかった。
理解、できないってことが、こわ、くて、

……冷たい目が。
冷たい、真っ黒な目が、俺を見てた、気がするんだ」

彼は点滴の繋がれた腕で、確かめるようにあなたに縋りつく。
縋りつかれたあなたの腕も、コードと点滴でもう一つある機械に繋がれていた。
KP
※吹き飛んでたからちゃんと認識できていないけど、佐倉さんが牧志を見ていた視線をわずかに覚えてる。
KP
あ、描写漏れ。
牧志の腕には、あなたがつけた傷がちゃんとある。
佐倉 光
「あー……」
理解したくないことを理解してしまった。
さっき自分が考えていたこと。
普通に考えてあり得ないことだが。
今の自分と地続きにそんな考えに至る、道はあるのだ。自分の中に。

ひとまずあの空間に刃物などがなかったことを喜ぶ。
あの時手元に刃物があったら自分は何をしただろう。
想像するだに恐ろしい。
佐倉 光
黙っとこう。そうしよう。
その方が……平和だな。うん。怖いし。

怖い。
そんな考えが当たり前のように浮かんだことに動揺しながらも、
おどおどと牧志の手に手を伸ばす。
佐倉 光
「大丈夫か? 痛くないか? 俺、動揺しすぎて、引っ掻いた、みたいで」
自分の声とは思えないほどの震え声だった。

またいつ自分があんな状態になるか分からない、という恐怖が纏わり付いていた。
牧志 浩太
「佐倉、さん? 俺は、大丈夫、傷は……、そんなに痛くない。
ここ、何だろう。病室?」
あなたの震え声に彼は何か異質なものを感じ、しかしその理由が分からないようだった。
恐る恐る、辺りを見回す。

今もなお動揺が彼を揺さぶり、いまここにしがみついていなければ忘我に持っていかれてしまいそうな、そんな危うさを感じる。
KP
ふと、あなた達に繋がれた機械を見ると、モニターに以下のような数字が表示されていた。

>10
>10
佐倉 光
「病室、みたいだな。
何だこの機械? 心電図なんかじゃねぇな……」
機械をよく調べる。どう繋がっているんだろう。
何か何を図っているのか分かるような記載はあるだろうか。
KP
あなたが機械を調べようとした時、
不意に知らない声がした。

「おはようございます。佐倉さん、牧志さん」

突然、あなた達の名前が呼ばれる。
いつの間に部屋にいたのだろうか、見知らぬ人物があなた達の近くまでやってきていた。

あなた達を見下ろしているのは、銀の丸眼鏡をかけた黒髪の男性だ。
医者というよりかは、科学者に近い印象を受ける。

なぜならば、彼から貴方たちへと向けられた視線が養護すべき者を見るものではなく、例えるなら箱の中の『マウス』を見るものに近しいからだろう。

その視線はあの蛇どもよりもなお、無機質で、無関心だった。
佐倉 光
「何者だ、貴様」
強い敵意をぶつける。
繕う余裕などありはしない。
これは、敵だ。
佐倉 光
「俺達に何をした」
ベッドに固定されている、というわけでなければ立とうとする。
KP
あなた達はベッドに固定されてはいない。立ち上がることもできるし、コード類は室内を歩き回れる程度の長さもあるようだ。
その緩い拘束感が逆に不気味でもあった。
佐倉 光
立てるなら男の胸ぐら掴もうとするけど。
牧志 浩太
「あ……、何だ、お前。
なんで、俺の名前を知ってるんだ」
普段より力ない視線で、それでも彼は前を向き、突然現れた男を睨む。
KP
「便宜上、皆さんのような被験者の方々には、私のことを「大村」と呼ぶようにいつも指示しています。
まぁ、科学者とでも思っていてください」
あなたの敵意を意にも介さず、男は言う。
あなたが男に近寄り胸倉を掴んでも、意に介した様子はなかった。

「被験者として、あなた達は人々の中から無作為に選ばれました。
あなた達を私の実験に利用させていただきます」
牧志 浩太
「実験、だって……、くそ、俺達に何をするつもりだ」
佐倉 光
「ふざけんな、俺達を元の場所に戻せ!」
いつもより幾分性急に、攻撃的に、手をひねって身勝手な男の言葉を止めようとする。
KP
あなたが手を捻り男を締め上げると、男の言葉は止まる。男は締め上げられても意にも介さず、説明しなくていいのか、とでも言いたげな視線でこちらを見るだけだった。

あなたの腕に繋がった点滴の管が揺れた。
佐倉 光
「……」
荒くなった息をゆっくり整え、怒りをゆっくり静めてゆく。
ここで怒りに流されても、益はない……
舌打ちをして手を離す。
KP
「実験が上手くいけば、貴方たちを解放することは可能でしょう。
ただ、この施設及び実験のことは強制的に忘れていただく必要がありますね」

男は手が離れるや否や、平然とあなたの言葉に答えた。質問をされたので答えた、といった風にしか見えなかった。
佐倉 光
「何の実験だよ」
目の前で何かがぐるぐると渦巻いている心地がする。
さっき見えた何か。
いきなり歪められた……いや、今でも何かがおかしい気がしている自分と牧志。
どう考えても自分たちに理のあることには思えなかった。
KP
「言葉数を極限まで減らして説明すると、その数字を増やしたりする実験ですよ」

そう言って“大村”は数字を表示しているモニターを指さす。

「これは人間の理性、或いは正気と呼ばれる精神的な不可視物質を『数値化』したものです。正気を表す数値、それを私は正気度と呼んでいます。
呼びやすいですから」

大村は続ける。

「先ほど、皆さんにとっては想像もつかないような大いなる者をご覧になったと思います。
そのヴァーチャルモデルを見た貴方たちの正気度を計測した結果、大幅な減少を観測することができました」

「このように、知的生命体特有の”正気”と呼ばれる精神的で不可視な物質は、ある一定の精神的許容量を超えた事象を目撃、或いは体験をすることでその正気を擦り減らすということがわかってきました」
大村はそこで一呼吸をおいた。
一瞬だけ生まれた静寂は、どこか異質な香りがする。
佐倉 光
『数値化』を取得するー
KP
ピコーン!
『数値化』…【動詞】あらゆる物事において、その実態を数値化することで説得力や安心感を増すことができる。
佐倉 光
「理性? 正気度?」
牧志 浩太
「ヴァーチャルモデル、だって?
じゃあ、俺が、見た、あれ……、も、幻だった、のか。
あんな、匂いも気配も感覚もある、まるで、目の前にいる、みたいな、」

思い出しそうになったのか、牧志の肩が一瞬震えた。
佐倉 光
理性を失った佐倉は親友を生贄と認識し、正気を失った牧志は我を忘れた……と。
KP
そういうことですな。
デヴァ・ユガのことは牧志も覚えているんだけど、見たものがあまりにあまりすぎて。
佐倉 光
そういうのはもう経験済だ。
実際に目の前に存在するように感じさせることだってできるだろう。
問題は【何を再現したのか】だ。
大体何を言っているんだ、この男は。
何を再現したんだ。あれは何だ。
そんな場合ではないのに。
佐倉 光
「正気かどうかなんて数値でどうやって示すんだ。何を基準に?
計測しているのは何だ? 点滴くらいしか繋がっていないじゃないか」
佐倉 光
正気度低いから割と色々歯止めがきかない……
KP
いいと思います 牧志は忘我に近いところにいて、佐倉さんは理性を失いかけている
牧志 浩太
「佐倉、さん?」
牧志がどこか不安そうに、あなたの腕に触れる。確かめるように。
佐倉 光
牧志に触れられてびくりと体を震わせる。
こんな事をしている場合ではない、とやっと思い出した。
随分と苦労して感情を抑え込む。
冷静に情報を得なければ。
実験が上手くゆけば戻す、とこの男は言った。
KP
大村はあなたの頭に繋がっているコードを示す。
数本が絡まりあい、脈動するように時折揺れるコードは、あの機械に繋がっていた。
佐倉 光
あ、頭にも繋がってるのか。
KP
あ、そうかさっき腕の方しか描写してませんでしたな。失礼しました。いろいろ繋がってます。
佐倉 光
それじゃ下手に動けないな。
KP
長さはあるし、絡まったりしそうなほど数が多くはないので、室内を動き回ったり男の胸倉を掴んだりするのには問題ありません。
KP
「説明しても構いませんが、あなた達には理解困難かと思いますが」
佐倉 光
「それならまずは必要と思われることを説明しろ。
俺達を怒らせに来たわけじゃないんだろう」
KP
「私は、正気度の増加を目的に今実験を進めている最中です。
貴方たちよりも前の被験者の時点で、正気度を増加させる手段はいくつか発見されていまして」

彼はあなた達の腕に繋げられた点滴の管に目線を向けた。
その目線は管を上行し、ぶら下がっている液体の詰まった袋でその目線の移動は止まった。

「そのうちの一つが……、点滴による静脈への正気度投与。
この方法は確実に効果は出るのですが、ただ、問題点としては効果が出るまでが遅すぎますね。
正気度をここまで増やすのに丸三日もかかるんです」
牧志 浩太
「何を、言ってるんだ。
正気を、投与する、だって?」
牧志は当惑して目を瞬く。男の発している言葉と言葉が、うまくつながらない。
佐倉 光
もう三日間拉致されてるー!
KP
実は三日間経過していました。
佐倉 光
「正気度の投与!? なんだそれ。
何を投与してんだ? 成分は?」
佐倉 光
「10は低いのか? どこまで行けばいいんだ? 最大値とかあるのか?
つまり今俺達正気度ってヤツが低い状態なワケだな!?」
KP
「さて、それでは私はここらで失礼しますね。
明日から貴方たちの実験プログラムが本格的に開始されるので、よく体と精神を休ませておいてください」

彼はあなたの叫びにも、牧志の言葉にも聞く耳を持たず、半ば無視する形でこの『無機質な』部屋から不意に姿を消した。

あなたは男にとって対話相手ではなく、箱の中の『マウス』に過ぎないと知らしめるように。
佐倉 光
「おい、俺からの質問……!」
佐倉 光
「ああ、畜生、何なんだよマジで!」
佐倉 光
「あいついきなり消えやがったな。
ここもデヴァ・ユガみたいな?」
早口でぶつぶつと悪態と疑問とその他の脳味噌の中身をまき散らす。
牧志 浩太
「消えた、な……。かも、しれない。さっきも、ヴァーチャルモデルって、言ってたし」
牧志は不安そうに辺りを見回した。
牧志 浩太
「あいつ、何を言ってたんだろう。
正気が、数値で表せるって?
ああ、でも分かるんだ、正気度、が、確かに低いのかもしれない。
頭の奥がぐらぐらと揺らいでる気がする。目の前のものがすり替わってしまいそうだ。
何を、信じていいのか、分からない」

悪態と疑問をまき散らすあなたの腕に、また牧志の手が触れた。
佐倉 光
「正気度を増やす実験とか言いやがったなあいつ。
さっきからイライラしてまともに考えられない。
これも正気度ってヤツが低いせいか……」
牧志の手が触れると、少しだけ落ち着くような気がした。
こんな事が前にもあったような気がする。
佐倉 光
「大体さっきの話だと、俺達の正気度ってヤツをあいつが強制的に低くしたってことだろ!
勝手に人の中身弄くりやがって……!」
佐倉 光
『マウス』『無機質な』をゲットだぜ!
KP
ピココーン!
『無機質な』…【形容動詞】生命が感じられない様子などを意味するが、同時に死を意味することはない。

『マウス』…【名詞】知的生命体の科学技術は実験体となる下等生物なくして進歩はできない。しかし実験体は同族である場合もままある。
佐倉 光
どのタイミングで言うかも難しいけど、PLがゲットするんだから離れすぎなければいつでもいいのか……
KP
特にすぐ宣言しないといけない! とは書いてないので、あんまり離れなければOKとします。
佐倉 光
できるだけ直後に言うよう心がけよう。忘れそう
牧志 浩太
「そう……、なるな。俺達にあれを見せて、俺達を……。それから、ゆっくり“増やして”いく、つもりなんだ」
彼は苛立ちを抑えきれないあなたを宥めるように、点滴の管とコードを避けて、ゆっくりとあなたの腕をさすった。
落ち着いてくれ、という頼りない願いがそこにあるようにも思えた。
佐倉 光
「……くそっ……」
呻いてベッドに座る。
頭の中で言葉が、感情が渦巻いていて纏まらない。整理できない。気を抜くと束になって漏れ出しそうだ。

知りたくて仕方がない。
あの男が何を考えているのか。
正気度とは。
具体的にはどのような反応が起こって精神に影響が出ているのか。
自分の変化の理由は。
あの何かはなんだったのか。
佐倉 光
頭をかきむしってその全てをなんとか追い出した。
佐倉 光
「大体なんでよりによって病院なんだ!」
KP
その閉鎖的で薄ら寒い雰囲気の、無闇に清潔な空間は、否応なしに古い記憶を呼び起こした。
あなたの腕や頭に繋がっているコードと、点滴の管も。
佐倉 光
吐き気がする。
幼い頃の嫌な記憶も、つい数ヶ月前の最悪の記憶も、代わる代わるにあらわれては背筋をなで上げる。
冷静に考えるなんて事がこんな状態でできよう筈もない。
全身の管を引き抜きたい衝動に駆られてしまう。
佐倉 光
胸に手をやったが、何も無い、んだろうなぁ。
KP
あなたの胸元には何もなかった。
佐倉 光
体にどんな悪影響があるか分からない物を引き抜くのは危険すぎる。
衝動を、腕をかきむしって耐えた。


ひとこと
佐倉 光
いつも通り異変に巻き込まれる佐倉と牧志。

おかしい。回復シナリオに来たはずなのに普通に酷い目に遭ってる。


【置】CoC【タイマン限2】収録シナリオ『Look,LOOK Everyone!』 佐倉&牧志 2

「さーて、実験……じゃなかった、食事を始めよう」
「い、いただきます。佐倉さん、こぼさないように頼む」

CoC『欠落コディペンデント』牧志&佐倉 4

(くそ、何が不安だ……、それどころじゃなかった!)

CoC『100万回目のハッピーバースデー』佐倉&牧志 5

「誕生日、おめでとう」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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【置】CoC『夢の果てならきみが正しい』 佐倉&牧志 1

「……どう、なってんだ? 牧志?」
「俺のこと、分かってくれるんだな」

BEAST BIND 月が見ている 第二章 エイプリルフール

四月馬鹿

【置】CoC『Hazy Night』 佐倉&牧志(塔) 1

それでもいいって思ってたんだ、独りになってもいいって。
なのに、日常がそこにあると失うのが惜しくなるなんて、弱いなと苦笑する。