こちらには
『ラストバンケット』
のネタバレがあります。
参加キャラクター

東浪見 海

別世界(本編世界)の東浪見空の姉。
この事件以前に塔の牧志と佐倉ともどもとある事件に巻き込まれたことがあり、直接の面識がある。
ダンサーをしている。


牧志そっくりの異星人で女性。存在としては悪魔だが意識は人間だった。佐倉と契約して彼の仲魔として存在していた時期がある。
今はほかの仲間とともに悪魔として魔界で生きている。
趣味でリコーダーを吹く。



開始前
KP
ラストバンケット - たなばやし
その才能を、活かしてほしい。


こちらのシナリオなのですが、複数人での参加もOkです。
折角なので浩子さんもセッション……

……すっぽんぽんになるシーンで困るかなぁ。主に佐倉が。それなら問題ないか。
えっちなことは起きません。(あくまでもプレイヤー次第だけどPCのみんなは紳士だし)
たぶん人数多い方が色々楽しいし難易度も下がるのでお気軽にどうぞ。
何なら糸の縁がある東浪見さんも参加可能です。
牧志 浩太
ほうほう。
佐倉さんが困っても大丈夫なら浩子さんも参加させようと思います。
前回も一緒にセッションしましたしね。

こちら(塔世界)の東浪見は年取ってるし、何も知らないままなんですよね。
世界を超えて本編の東浪見が参加することになるかな?
KP
参加の場合は本編東浪見ですね。糸を手繰って巻き込まれます。
ダンス持ってるお姉ちゃんを想定してます。
牧志 浩太
ああー、なるほどそうか、ダンス持ってる東浪見姉の方!
ではそれで行きます。糸を辿って再会だ!

男女のバランスがいいパーティだけど佐倉さんと牧志が大変だぁ。
KP
まあダイス目によっては問題ないって……
牧志 浩太
まあ大変になったらなったで塔存在の牧志が久しぶりに人間味(そういうアワアワ)を味わえていいんじゃないでしょうか。佐倉さんがんばれ。

開始前成長
KP
ところで塔の二人成長どうしようかな……普通に成長処理して良いかな。
ああでもそうでもしないと楽器伸びないな。
牧志 浩太
確かに……いいんじゃないですかね。
今までは恐るべき知識ばかり追っていたけど、それとは別の趣味をやりだしたことで成長しはじめたということで。
KP
よーし楽器伸ばすぞー。
今回は2ヶ月ほど平穏だったという感じで。
参加される方は成長okです。
牧志 浩太
はーい!
じゃあ塔牧志は楽器演奏(リュート)を、東浪見海はダンスを伸ばします。

おっと、アイコン入れ替えないと。
牧志 浩太
1d100 33 〈芸術(弦楽器)〉成長(魔きし) Sasa 1d100→ 58→失敗
1d5 成長 Sasa 1d5→5
1d100 38 〈芸術(弦楽器)〉成長(魔きし) Sasa 1d100→ 33→成功
弦楽器 33 → 38
牧志 浩太
結構しっかり練習したようです。趣味に時を忘れられる一ヶ月があったらしい。
東浪見 海
1d100 73 海の〈芸術(ダンス)〉成長 Sasa 1d100→ 21→成功
1d100 57 海の〈キック〉成長 Sasa 1d100→ 35→成功
東浪見 海
海は本業に打ち込んだものの、既にそれなりのプロダンサーである彼女が更に成長するのはなかなか難しいようです。成長なし。
牧志 浩太
浩子さんはデータ無しのゲスト登場。
あ。そういえば魔きしの現在正気度 が糸事件のせいで10しかなかったのですが、大丈夫…… ですか?

大丈夫でなければ成長キャンセルして正気度 回復に宛てます。

KP
ああー。正気度 回復が必要か。ちょっとお待ちくださいな。
牧志 浩太
はーい、お手数をおかけします。
KP
okok、なんかしましょう。
で、塔佐倉のキャラシーがなんかおかしなことになっていたみたいで、いままでの成長内容が反映されていない? 上シートが増殖しまくっておかしなことになっているので再計算します。
牧志 浩太
あらら。もしかして保存する時に複製保存になってしまっていて、保存した時に新しいシートができてしまっていた?
こちらもその現象ありました。一番新しい日付のシートに成長後のデータないかな。
KP
再計算しましたが、「波間のダージュ」がNPC的参加だったってことで正気度 減ってないんだよなー。
あんだけの経験してダメージなしはないでしょ。と思うので適当に削っておきます。
佐倉 光
1d10+5 Sasa 1d10+5→ 3+5→合計8
SAN値 58 → 50
佐倉は楽器の練習をする。
1d100 30 〈芸術(打楽器)〉 Sasa 1d100→ 78→失敗
1d5 Sasa 1d5→2
1d100 32 打楽器 Sasa 1d100→ 15→成功
〈芸術(打楽器)〉 30 → 32
KP
では、そんなこんなで開始いたします……
牧志 浩太
よろしくお願いします!

KP
牧志。
あなたはあの不思議な世界から戻ってからしばらくは、安定した日々を過ごしている。
新たに塔を訪れるようになった【小動物】たちは、忘れた頃に、時折奇妙なトラブルを持ち込むこともあれば、外から面白い物事を持ち込むこともある。
佐倉とただふたりだった世界は、ほんの僅かだが賑やかになっていた。

【小動物】たちは気紛れにあなたの研究に付き合ってくれることもある。
あなたの本来の悲願。
失われた相棒を助け出すこと。
どことも知れない淵へと垂らす糸を、あなたは手に入れたのかも知れない。
小動物たち(ネタバレ)
KP
動物じゃないよなぁ、と思ったけど、そういえば彼らは昆虫ではなく節足動物なので動物で良いらしかった。
牧志 浩太
なるほど!

牧志 浩太
俺の世界はずっと閉ざされていて、それは俺が望んだことだった。

外に向かって繋がる糸は佐倉さんだけで、俺はずっと、ずっと佐倉さんにしがみつきながら、諦められないでい続けていた。
ずっと、ずっと追い求めていた。
ここに変化なんてなかった。
牧志 浩太
それが少し変わったのは、あの出来事に巻き込まれてからだ。
俺達を、違う世界の先輩を、東雲さんを、東浪見を、東浪見の姉さんとその友達を、他の人達を。
連れ去り、捻じ曲げ、佐倉さんに永い永い孤独を背負わせた。
……繋がるはずのなかった世界を、捻じ曲げ。

出会わせた。
牧志 浩太
あの出来事自体は許せない。
でも、あの出来事は、ここに繋がりを残してくれた。
気まぐれにここを訪れる【小動物】たち。
ずっとずっと閉ざされていた世界に、俺達二人だけだった世界に、変化をくれる。
牧志 浩太
そのとき初めて俺達はふたりいるのに行き詰っていたんじゃなく、
ふたりだけだから、行き詰っていたんだと気づいた。
……ちょっと、気づくのが遅かったかもしれないな。
牧志 浩太
そうして俺達は果ての淵へ繋がる糸を手に入れて、
ちょっとだけ賑やかな日々を手に入れて、
もしかしたら、本物の希望を掴んだのかもしれなかった。
KP
あの生き物たちが少し前から遊んで行った、そして演奏を聴いていった、その場所に、何かが落ちていた。
あれらが絡むと、あなた自身の中だというのに時折【何】が入り込んだのか分からないことがある。
基本彼らは【自分たちが面白いと思うもの】を置いてゆくらしく、それほど大きな害があるものが持ち込まれることはなかったが。
佐倉 光
「お? またあいつら何か持ち込んだのか?」
KP
佐倉がそれを拾い上げて初めて、あなたはそれを感知する。
彼らの糸で繋がれた糸電話だ。両端にはどう見ても紙コップがくっついている。
牧志 浩太
「そうらしい。
……変な気分だ。俺の中なのに、俺に分からないなんて。
でも不気味に思わないのは、あいつらだからかな」
牧志 浩太
「何だこれ。糸電話?」
それほど大きな害があるものが持ち込まれたことはないとはいえ、一応、触れずに確認する。
両端以外のどこかと繋がっているか。コップに何か描かれていたり、何か入っていたりしないか。変なものを宿していそうではないか。
佐倉 光
「あいつらの玩具か、でなければ俺たちが面白がりそうなもの、って基準な気がするしなー」
KP
彼らにとってはあなた方はあの頃と変わらず友達なのだろう。
それも他のメンバーに比べて、多少【面白い】ものを持ち込んでも迷惑がったりしない相手と認識されているふしがある。
KP
コップはただの紙。あなた方が知る一般的な厚紙で作られたものだ。底の部分ににょろにょろとした線で落書きがしてある。
糸はどうやら特殊な蜘蛛糸だ。コップに接する部分にのみ粘着するものが使われている。
糸はかつてあなた方が採取して紡いでいたものと同様。彼らのものだろう。
ただつくりはあくまでもちゃちな玩具で、簡単に壊れてしまいそうだった。
KP
ただの糸電話に見えるが、おそらく伝わるのは声だけではないだろうと思えた。
ほんの僅かの魔力、精神力、そんなものが伝わる可能性はある。
……それはもしかすると、魔術を行う者にとっては興味深く魅力的な道具に思えたかも知れない。
KP
紙コップはシナリオと関係ありません。
あなたはそれを使ってもいいし使わなくてもいい。
牧志 浩太
なかった。じゃあせっかくだから使ってみようかな。
KP
MPや精神力をあれこれする魔術にそれなりの代償が必要な物も結構多かったりする事を考えると、人によっては垂涎モノのマジックアイテムかもしれない。
牧志 浩太
これはかなり用途の広がりそうなマジックアイテム。
過去の牧志たちにとってもあればよかった物かもしれない。
牧志 浩太
何を気負うでもないちょっとした友達の存在は、やさしく、くすぐったい。
あいつらに対しては、あの夢の中で一緒に遊んだ時の、そのままの友達でいられた。
牧志 浩太
「だな。
……何だか楽しみでいいよな、こういうの。
前に持ってきた踊るトンボの縫いぐるみは結構大変だったけど、何だかんだで面白かったしさ」
佐倉 光
「あれは厄介だったなー。捕まえられなくてさー。作りが雑で助かったよ」
牧志 浩太
目を細め、壊さないようにそれをそっと手に取る。
牧志 浩太
「お。さすがあいつらの糸だな。
少しだけだけど、この糸で精神力を伝えられそうだ。

普通に役に立つのもそうだし、もしこの糸を【どこか】へ垂らすことができれば、色々できそうだ」

コップを持つ手が少し震える。
これは「繋ぐ」道具だ。
あいつらが作ったんだとしたら、大したものを作った。
そうか、糸だけじゃ不安定だ。意味を固定して【線】にしてやればよかったんだ……。
佐倉 光
「おっとと、牧志!」
KP
佐倉がヨタヨタしていた。
牧志 浩太
思わずそのまま考えに沈み込みそうになって、物理的に足元が沈んだのに気づいて慌てて戻る。
牧志 浩太
「とりあえず、試してみようか」
佐倉さんに片方のコップを差し出す。
佐倉 光
「オッケー」
KP
佐倉はコップを受け取る。糸の長さは1.5m程度だ。
ぴんと糸を張ると、コップの中に振動が満ちた。
佐倉 光
「『本日の流れは荒れに荒れ、大嵐もいいとこです。今日は引きこもるが吉! どぞ!』」
KP
▼1d10
牧志 浩太
1d10 Sasa 1d10→10
KP
お。では正気度 を10回復。
1d5 Sasa 1d5→5
佐倉は15減少。
ただし発狂はなし。
佐倉 光
正気度 50 → 35

KP
佐倉の声が聞こえると同時、何か心が温まるような心地がした。
自らの渇いた心が潤い、欠けた部分が満たされる気がする。
佐倉 光
「……んー? なんか、妙な感じだな……魔術か何か使った時みたいな悪寒がする」
KP
佐倉はぶるっと体を震わせて訝しそうに紙コップを覗き込む。
先ほどまで紙コップに書かれていたミミズがのたくったような線が、滲んだように広がってぼけていた。
KP
※蜘蛛の糸電話(大成功品)(オリジナルアイテム)
四匹の手足作り玩具。話す相手の正気度 が話し手より少ない場合、
1D10の正気度 を譲渡するが、1D5分は余分に漏れる。
一度使うと効果を失う。物理的にも大変弱いので取り扱い注意。
四匹が気紛れに作ったもので再現性はほぼない。
牧志 浩太
なるほど正気度 フォロー! ありがとうございます
牧志 浩太
声が渇いた心に深く深く染み渡る。
落ち着く。潤う。傷ついた所をあまさず埋めて、ひとつになる感覚。

ずっとひび割れて、歪んで曲がっていた所に初めて気づく。
真っ直ぐに伸びていく心地よさに涙がこぼれた。

こんなに心地いいものなんて、感じたことがない。
佐倉 光
「あれー?」
牧志 浩太
もっと、もっと欲しい。
もっと満たされたい。癒やされたい。
佐倉 光
「ん? なんかちょっ、牧志!?」
牧志 浩太
もっと埋めたい。もとに戻りたい。
佐倉 光
「牧志ー? 牧志さーん? 聞こえてるー?」
牧志 浩太
もっと、喰らいたい。
佐倉 光
「そろそろ気付いてくれないとまずいんだけど」
牧志 浩太
それが欲になっていることに気づいた時、はっと我に返った。
佐倉 光
「おぉぉぉぃ!?」
牧志 浩太
「あっ」
牧志 浩太
あ、あ、危ない所だったな!?
周囲の本棚がせり上がり、佐倉さんを呑もうとしていた。
牧志 浩太
「ご、ごめん」
こめかみを一筋汗が垂れる。
手の中の糸電話を見ると、効果を失っていた。
牧志 浩太
SAN 10 → 20
牧志 浩太
正気度 が10まで減少した所に、一気に正気度 が二倍になるほどの回復量を流し込まれたせいで、渇いた所に水を渡されたようになってうっかり我を忘れた
佐倉 光
「いやー、マジで呑まれるかと思った」
KP
佐倉の腕にびっしりと鳥肌が立ち、真っ青になっていた。
牧志 浩太
「ご、ごめ、ごめん!」
牧志 浩太
「本当にごめん……、危なかった」
慌てて佐倉さんから距離を取り、糸電話をテーブルに置いて両手をホールドアップ。
佐倉 光
「何だったんだ……?
急にクラッときて、そうしたら塔全体が震えて伸びたように思えて、押しつぶされるかと思った」
KP
佐倉はあなたの顔を覗き込む。
佐倉 光
「んー? なんか顔色良くなった?」
牧志 浩太
「その糸電話。精神を一時的に繋いで、伝える力があったみたいなんだよ。
より心が安定していて確かな方から、不安定な方へ。

俺は佐倉さんの心を繋げてもらって……、佐倉さんの心を直接味わって、癒されて、温められた。
でも、それがあんまりにも強烈過ぎて、我を忘れたみたいだ。
ごめん。危ない所だった」
佐倉 光
「…………」
佐倉 光
「便利だな。あまりやりすぎなきゃ役に立ちそうだ。
前に読んだ本に精神力移す系の術はあったけど、だいたい移したほうが死ぬか殺されるかするやつだしさ。
ちょっとだけ移せんの便利すぎない?
まだ使えるか?
あいつらこれどっから持ってきたんだ?
このサインが魔力の源か?」
KP
佐倉は糸電話をこねくり回し始めた。
KP
糸電話はそれこらはどんな使い方をしようとただの糸電話だった。
わぁ、よく聞こえるなぁ。

目の前だし肉声の方がよく聞こえる。
牧志 浩太
「そうなんだよな。
死んだり殺したり生きたまま干物にしたりしないで、少しだけ移せるなんて、気をつけて扱えば相当便利そうなんだけど。

でも、サインごと意味を失ったみたいだ。もう何の意味もなくなってる。
気まぐれは気まぐれでしかない、ってことだな。
今度あいつらが来たら詳しく聞いてみたいけど、少なくともこれには何の手掛かりも残ってなさそうだ」
片方のコップを手に持ち直して苦笑する。
佐倉 光
「あいつらの言葉わかんないしなー」
KP
加えてなんといっても彼らは気ままに振る舞っているだけの子供だ。
次に訪れた時、この糸電話のことを覚えているかすら怪しかった。
牧志 浩太
「こちら牧志。塔は今日もなんとか静かです、どうぞー」
それに何かの用途が残っていないか調べる試みは、途中から糸電話遊びになった。
紙コップを通したせいで、少しくぐもって聞こえる声が面白い。
佐倉 光
「それは何よりですねー!
なんか元気そうになって良かった。
俺はこの嵐の中でかけたくないし、しばらくゴロゴロしまーす」
KP
遊んでいたら突然ぷつん、と糸が切れた。
その瞬間、きぃん、というような高い共鳴音のような音が聞こえた。
牧志 浩太
「ぎゃ」
すっかり本質を忘れて糸電話で遊んでいたら、急に音をお見舞いされた!
そういえば道具としての効果がなくなっても、これを作っているのはあいつらの糸だった。
佐倉 光
「うわ!?」
KP
〈聞き耳〉
牧志 浩太
1d100 97〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 75→成功
KP
一瞬だが、聞き覚えのある声が聞こえた。
女性だった気がする。
牧志 浩太
「!」
一瞬だけ聞こえた声は、聞き覚えのあるものに聞こえた。
あれは、確か。
あの時手を伸ばすことをやめた世界が、頭の裏にふいと蘇る。
佐倉 光
「ちえー、壊れちゃったか」
牧志 浩太
「もしもし、もしもし!?」
コップを取って話しかけ、コップを耳につけて耳を澄ませる。
KP
ぷらんと垂れ下がった糸はもうどこにも繋がっていない。
この塔は嵐の中、孤独に佇むのみだった。
佐倉 光
「なんか聞こえたのか?」
牧志 浩太
「うん……。一瞬だけだけど、聞こえたんだ。女の人の声が。
あの蜘蛛たちと知り合った事件、あっただろ。
あの時、俺達と一緒にいた人。
別の世界の東浪見の姉さん。
気のせいかもしれないけど、あの人の声に聞こえた」
佐倉 光
「ふーん? 俺には聞こえなかったな。
縁は繋がってるって言っても、この【悪天候】じゃあ、外の声なんて……」
KP
佐倉は切れてしまった糸をつまみ上げた。
佐倉 光
「いや、悪天候だからこそ、なのかな?
こんな電話でもたまに話せれば気晴らしにもなるんだけどなぁ」
牧志 浩太
「嵐の間の気まぐれ、みたいなものかもな。
たまに話せればよかったんだけど。
あんまり話すとそれはそれで因果に影響しちゃいそうだし、難しいな」
佐倉 光
「みんな元気にやってるかな」
牧志 浩太
「どうだろうな……。元気にやってるといいな。
みんな元気にやってるんだ、って思いたいな」
切れた糸の端が、本棚を照らす黄金の光にきらめいた。
佐倉 光
「そんなはっきり話せそうな感じだったのか」
牧志 浩太
「いや、一瞬声らしいものが聞こえただけだったよ。
本当にあの人かどうかも、確信が持てないくらい」
佐倉 光
「元気でやってるから声聞こえたんだろうな」
牧志 浩太
「……そうだな。きっと、そうだ。元気でやってるから声が聞こえたんだ」
現在の彼女と繋がったかどうかも分からない。嵐に紛れて聞こえた、残滓かもしれない。
それでも、今ここの向こうに彼女がいて、元気にやってると思いたかった。
KP
あなたの様子を見て、佐倉は少しだけ考えるように口をつぐんだ。
佐倉 光
「つぎあいつらが来た時にまた持ってきて貰えないか訊いてみようぜ」
牧志 浩太
「だな。
あれそのものじゃなくても、似たような物とかさ」
佐倉 光
「あ、そうだ、風呂っていま入れる?」
牧志 浩太
「え、風呂? 入れるよ。湧かそうか」
突然変わった話に、『俺達の日常』が戻ってきたのを感じた。
少しだけ交わった世界の話はこれで終わり、ってことかな。
佐倉 光
「ああ、頼むよ」
佐倉 光
「さっき上片付けてたら汗かいちゃってさー」
牧志 浩太
話しながら、いつものように風呂場へ水鏡を引き寄せる。
おっと、今日は嵐のせいか水鏡も少し気が高ぶっているらしい。
出てきた水が温かい海水だった。しかも波立っている。
牧志 浩太
「佐倉さーん、普通の風呂と海水風呂どっちがいい?」
佐倉 光
「海水風呂ぉ!? いいじゃん。海水浴気分になれるかも」
佐倉 光
「あがるときに流すの忘れたらひどいことになりそうだけどな」

KP
あなたが風呂を安定させると、佐倉は礼を言って風呂に入ってゆく。

しばらくは楽しそうな鼻歌が聞こえていた。
……
…………
上がってこない。
牧志 浩太
あれ? 少し遅いな、と最初に思った。
少し待つ。まだ上がってこない。
……上がってこない。
牧志 浩太
「佐倉さん?」
声をかける。まさか、何かあったんじゃないだろうな。
ぞくりと恐怖が背を撫でた。
声をかけて返事がなければ、風呂場を覗いて様子を確認する。
KP
風呂場を覗いた途端、海水があふれ出した。
白い泡がぐるぐると渦を巻いて荒れ狂っている。
風呂場の壁が透けて大海原が見えていた。
そのはるか遠くで佐倉がぐるぐる回っていた。
佐倉 光
1d100 25 〈水泳〉 Sasa 1d100→ 94→失敗
KP
溺れているように……見えるが。
牧志 浩太
「佐倉さん!」
なんてことだ、暴走した!? 
すぐに水鏡を止めて水を退かせ、助けに入ろうとする。
KP
水鏡が歌っている。
あなたの制御を外れ、踊っている。
ざばざばと音を立てて泡立ちあなたに手を差し伸べ引きずり込む。
牧志 浩太
「佐倉さん!」
くそっ、制御が効かない、ここは俺の中なのに!
あらん限りの魔術で自分の周りに空気を引き寄せ、結ばれた髪の繋がりを手掛かりに、水へと飛び込んで佐倉さんに手を伸ばそうとする。
KP
水をかく。空気を引き寄せる。荒れ狂う海はあなたに手綱を掴まれて叫び声を上げた。
髪の毛の繋がりを手繰れば佐倉の姿が波間に上下し、どうやらぐったりとしているのが見えた。
随分長いこと悪戦苦闘して、ようやっと指先が佐倉の手を掴み……

背後から迫った大波が一気に上から砕けて降り注いだ。
あなたは作り上げた空気の球の中、何とか回収した佐倉を掴んだままでぐるぐると振り回され……
牧志 浩太
佐倉さん、佐倉さん。
必死に心の声で名を叫び続けることと、寄せ集めた空気に縋り続けることしかできなかった。



ラストバンケット

たなばやし 様 作



KP
では参加PLは全員1d100。
佐倉 光
1d100 佐倉 Sasa 1d100→94
牧志 浩太
1d100 魔きし Sasa 1d100→13
東浪見 海
1d100 東浪見 Sasa 1d100→52
牧志 浩太
データなし参加の浩子さんはあり? なし?
KP
振っときましょう
浩子
1d100 浩子さん Sasa 1d100→28

KP
牧志。あなたは唐突に目覚める。
あなたはどうやらシーツ一枚だけを纏ってベッドで眠っていたようだ。
そう。あなたをつなぐ鎖が、ない。
あなたは人間の体ひとつで横たわっていたのだ。

ほんの一瞬前、暴走した風呂に呑み込まれかけた佐倉を救おうと死に物狂いで集中していた筈だが、一体何があったのだろう。

そこは木目調の壁がぐるりと囲んでいる木造の部屋だ。ベッドが四つ置いてあり、
あなたの他に三人の人間がそこに横たわっているようだ。
導入
KP
※眠っているのは東浪見、浩子、佐倉です。さっきのダイスで小さな目が出た人ほど早く目覚めます。
全員すっぽんぽんにシーツ一枚巻いて寝てます。
KP
※導入、本当は風呂に入るだけなんだけど、牧志と佐倉が同時に塔にいる時に同じタイミングで風呂には入らないな、と思ったらなんか変にダイナミックになりました。
ほかの二人は風呂入ってる時にふっと意識が途切れて気付いたらここで寝てます。
牧志 浩太
なるほど、導入を盛って下さってた! ダイナミックな導入になっちゃって楽しいです。

風呂に入ってる時にそのまま巻き込まれて素っ裸スタートとはなんてこった。楽しい。
銭湯で異変に巻き込まれたらスマホを自然に奪えるな……、って話を確かはむさんと昔したのを思い出しました。
KP
そう、みんな素っ裸なのは風呂に入っていたからです。
なるほどスマホも奪えるな。
牧志 浩太
演奏ができる浩子さんということは魔きし世界の浩子さんだから、二対の翼と三本の尾のある悪魔スタイルのまま素っ裸で寝てる……?
(シナリオ背景的にそれでもよければ、その方がわけわからな楽しそう。海が起きるまでには人間形になります)
KP
牧志は……一応理由は考えているけど。裸です。

浩子さん当然悪魔スタイルの浩子さんですね。
彼女も多分風呂かでなければ水に接していたので裸です。
牧志 浩太
なるほどなるほど。
まさかの素っ裸での再会!

彼女も風呂に入りたいでしょうし、魔界って火山とかありそうだから、きっと温泉を見つけて入浴してたんでしょう。

海はダンス後に風呂に浸かって脚をマッサージなんかしたりして、ゆっくり凝りを解していたところで巻き込まれちゃったんだろうなぁ。

牧志 浩太
佐倉さん!
そう叫んで目が覚めた。
牧志 浩太
「はっ!?」
思わず近くにあった物を掴む。シーツだ。シーツ??
頭がついていかない。シーツ??
牧志 浩太
「佐倉さん? シーツ?」
混乱しながら辺りを見回す。
何だ? 何だこれ? えっ鎖がない?
牧志 浩太
「また夢か? いや、あの水鏡か糸に引きずり込まれた?」
ようやく鎖がないことを認識する。そうだ鎖がない。鎖が……。
牧志 浩太
久しぶりに感じる途方もない解放感だ! 
鎖がない、というか、服もない!
牧志 浩太
「佐倉さん」
そうだ佐倉さんは!?
いる! 佐倉さんも裸だ!

これは……もしかして、風呂に入る格好のまま連れ去られた!?

そんなのありか!? いやありだな、こういうのが俺達の生活を考慮してくれるはずがない、人間の狂信者や、人間のように物質に縛られる種族なら家を出てきた時を狙うけど、それ以外の理由なら
牧志 浩太
トイレに入ってる時じゃなくてよかったな。
牧志 浩太
えっと違う、佐倉さん、佐倉さん無事だよな!?

駆け寄ろうとして気づく。
牧志 浩太
誰かいる。
誰かじゃない、どっちも知ってる。
浩子さんと、それから、あの時一度だけ出会って、ずっと一緒に過ごしていた……。
牧志 浩太
「裸だ!?」
東浪見さんだ。でも裸だ!?
浩子
声に目を覚ますと、目の前にめちゃくちゃテンパっている牧志がいた。
鎖がない。しかも裸。
これは牧志も風呂に入ってる所をやられたかな。
塔の中から連れ出すなんて、やるな。

あ、佐倉さんもいる。それからもう一人……、あれは、ええと。誰だ? 女の人だな。
浩子
知らない男がいなくてよかったな。
まあ裸とか今更だけど。
浩子
「えっと……、意外な再会だな?」
苦笑して身を起こし、手を振る。あ、シーツがずれた。
牧志 浩太
※裸とか今更
魔界暮らしが長いと裸とか今更になりそう。
KP
すっかり悪魔に染まっちゃって……
KP
浩子。あなたは風呂に入っていた。
魔界じゃ回復施設は主に泉であり所により風呂だ。なにも珍しいものではない。
そして魔界において裸でいることも、そう珍しいことではない。魔界には実に様々な悪魔がおり、裸でいることが自然な者も多いからだ。
KP
回復の泉も種類が色々で、今回あなたが入っていたのは温水、風呂のタイプだった。
あふれる魔力が体に満ち、温水がじんわりと体を温める。
その温泉には即効性がないためか金を取る管理人がおらず、他に浸かっているのはウサギ耳の女くらいだった。
湯煙が濃く視界を覆い、ふっと意識が揺らいだ次の瞬間、ここに寝ていた。
全く記憶が繋がらない。
浩子
風呂はいいものだ。
魔界暮らしは何かと大変だけど、馴染んでみれば悪くない。
妖精たちと話しながら泉に浸かる時間は好きだし、それが温かければよりいい。
浩子
まさか入ってる最中に連れ去られるとは思わなかったけど。

牧志 浩太
「意外な再会だけど、浩子さん、シーツシーツ」
浩子
「ん? ああ」
シーツを引き上げて体に巻きつける。
牧志 浩太
シーツが浩子さんの身体に密着する。
柔らかい曲線と胸の丸みを逆に浮き上がらせて、その後ろから大きく張った翼が……、ああー、そうか、翼が邪魔で胸のあたりまでしか巻けてない!
顔を見ているとシーツの上から覗く胸元につい目がいってしまって、気まずくて目を逸らすしかない。

そんなことをしていると、寝ていた東浪見さんが身じろぎをした。
KP
東浪見。
あなたは自室の風呂に入っているところだった。
普通に脱衣して普通に体を洗って汗と汚れを流し、これまたごく普通に湯船で体を伸ばしていた。
ちゃぷん、と水が跳ねる音がしたと思ったら寝ていた。
まるで風呂に入っていたのが夢だったかのようだ。
簡素な部屋で綺麗なシーツに包まれ、当然のようにその下は一糸纏わぬ状態だった。
一体何があったというのだろう?
東浪見 海
えっと、何これ。
きつめの練習のあとで、もちろん疲れてはいたよ?
いたから、湯船の中でしっかり足をマッサージしてたし、寝ないように気をつけてたよ?

何これ。
東浪見 海
「あ、牧志く」
向こうで喋ってる人の姿を見つけた。
あ、懐かしいな。牧志くんだ。あの痣、あの時一緒に暮らしてた牧志くんだよね?

同じ人が別々にいる? なんて混乱するけど、目を覚ましたあとの牧志くんはあの事知らなかったから、本当に「違う牧志くん」だった、ってことなんだよね。
東浪見 海
「うわ」
って、風呂入ってた時の格好のままじゃん! 何これ!
慌ててシーツを巻きつけて身を引く。
ええー、シーツ以外に何かないの? 辺りを見回す。
KP
部屋は一つのランタンで照らされているのみで薄暗い。
そんな状況で男女裸でいる、というのはなんとも居心地が悪い思いをさせられるかもしれない。

部屋の隅はよく見ないとわからないが、ドア、窓、クローゼットがぼんやりと見える。また、ベッド脇にはサイドテーブルがあった。
東浪見 海
明るくなくてよかったけど、暗いのもそれはそれで変な雰囲気だなあ……。
あ、クローゼットがある。何か服とか入ってないかな。
クローゼットはここのすぐ近く? それとも遠く?
KP
部屋自体がそんなに広くないのでクローゼットは立って数歩歩けば届く。
KP
佐倉が身動ぎを始めた。覚醒しつつあるのだろうか。
浩子
「俺は泉に入ってて、気がついたらここで目が覚めたんだけど、牧志と……、えーと」
東浪見 海
「普通に話し始めるなあ。
あたし、東浪見。あなたは牧志くんのこと知って、うわ!?」

振り向いて、薄暗い明かりに揺らめく巨大な影が目に入った。
不完全にシーツを巻きつけた身体の後ろに、寝床の上をするすると這いずる三本の蛇と、その背をすっかりと覆うような曖昧な形のテント布が目に入った。
布は明らかに呼吸に……彼女のゆったりとした生命活動に追従していて、光を返して時折表面を覆う皮膚の細胞の緻密さをちらちらとこちらへ垣間見せた。

その巨大な飛翔器官は、人間の形をした彼女の一部として付属する器官であるということを、あからさまにこちらへ見せつけていた。
東浪見 海
「」
凍。
牧志 浩太
「あ」
浩子
「あー」
意図せぬ衝撃を与えてしまった気がする。
仕方ないだろ。魔界で風呂に入ってたら突然人間とコンニチワなんて想定外!
急いで翼と尾を誤魔化す。
東浪見 海
「竜族」は見ても、角以外割と人の形してたからさ……。
あとあくまで前世の話だったし。
KP
東浪見のみ 《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1d2
東浪見 海
1d100 76 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 56→成功
東浪見 海
凍。

ずっと昔に角のある人達に出会い、共にあった記憶が、どうにか「人」だ、と彼女を認識させてくれて。
それでどうにか、わめき出さないで済んだ。でも凍った。
角のある人達(ネタバレ)

佐倉 光
「うーん……?」
KP
佐倉が唸ってゴロゴロ転がって目を開けた。
そしてがばっと身を起こして身構えた。シーツが落ちる。
佐倉 光
「…………」
KP
異変! 悪魔の罠!? が先に立ってしまった。
牧志 浩太
そりゃそうだ。
浩子
「久しぶり。俺達何かわけのわからないことに巻き込まれてるみたいだ」
片手で手を振る。シーツが半分ずり落ちる。
東浪見 海
「あ、起きた」
どうにかフリーズを脱して、シーツと腕で体をブロック。落ち着かない。
佐倉 光
「……東浪見……さん?」
佐倉 光
「え、浩子さん? 何? うわ!?」
KP
慌てて壁の方を見る。
牧志 浩太
「えっと、佐倉さんが無事、無事? でよかったけど、割とわけのわからないことになってる」
壁に顔を向けながら言う。
佐倉 光
「あ、牧志。これ何。どうなってんの? 俺風呂で溺れて……いたような」
牧志 浩太
「お、俺も分からない。

水鏡が暴走して風呂が海になって佐倉さんが溺れて、俺も助けようとして巻き込まれたんだ、そこまでは分かる。

で、目覚めたらここにいて裸で、鎖がなかった。それ以上は分からない」
KP
ゆらゆらと揺れるカンテラの明かりの中、壁際に置かれたサイドテーブルの上でメッセージカードの影が踊った。
牧志 浩太
壁に目を向けているとサイドテーブルの上のメッセージカードが目に入った。
東浪見 海
「と、とりあえず。これじゃ話しにくいし、服探そうよ。
えっと……、浩子さん?
佐倉くんと牧志くんは壁の方向いてて」
と提案してクローゼットへ向かう。
牧志 浩太
「わ、分かった」
気まずすぎる、この状況!
見たいとかどうとか以前の問題で、見ていません! と示すように佐倉さんに顔を寄せ、壁と体で即席バリケードを作ってメッセージカードを確認する。
KP
そこには英語の走り書きがある。
『I hope you are calm and not against him.』
牧志 浩太
裏に何か書かれていないだろうか。
牧志 浩太
佐倉さんと意図せぬ密着。
風呂入ってた所だから、互いに汗臭さはまだましなのが幸いだな。
牧志 浩太
背後でごそごそするのが聞こえていて落ち着かない。
牧志 浩太
牧志はメッセージカードとサイドテーブルを確認。
東浪見 海
東浪見&浩子はクローゼットで服を探します。
KP
ではまず東浪見&浩子。あなた方はクローゼットを開けた。

そこには綺麗な服が掛かっている。
タキシードが数着、色とりどりのドレスが数着。スカートが長いものから短めのものまで。
どうやらあなた方が着られそうなサイズが用意されている。
KP
※正装が用意されています。好きな服を着て下さい。また、引き出しを開けると新しい下着も用意されています(……。)
浩子さん羽引っ込められる? もし無理なら背中が大きく開いたドレスが何着もあったことにして下さい。
牧志 浩太
前回もライブ時に引っ込める? って提案してましたし、引っ込められることにしましょう。

東浪見 海
「……サイズ合わせた服が用意されてる……。
肩幅も考えられてるじゃん、気持ち悪。いつ測ったんだよ」
下着まであるのを見て、思わず洩らす。
あたしこういう服は入りにくいんだよ、肩張ってるから。
いつ測ったんだよ。
浩子
「わざわざ裸で呼んどいて服用意してくるなら、最初から着せといてほしかったよな」
東浪見 海
「いや、それも嫌かな……。
誰かが勝手に着せたってことになるじゃない」
浩子
「あ、そうなるのか」
東浪見 海
「ま、ずっと裸のままよりよかったのはそうだけど。何着る?」
浩子
「じゃあこの……いや、このドレスにしてみようかな。
こういう女の子っぽい? 服ってあまり着たことなくてさ」
東浪見 海
「あたしも、衣装以外であんまりないな。この長いドレスにしてみようかな、黄色いやつ。
ビタミンカラーって感じでいいし」
東浪見 海
せっかくなので、普段着ない黄色の長いドレスと、レースをあしらった下着にしてみる。
浩子
翼と尾は引っ込められるけど、それはそれで背中が開いた短めのセクシーなドレスにしてみよう。黒を基調にしたつややかな生地だ。
KP
服には縫い目が一切ない。
布は上質なもので、不気味など体にしっくりときた。着心地も良い。
牧志 浩太
背後で会話が……。
己の想像力が。うう。
佐倉 光
「…………」
KP
佐倉も沈黙してしまっていた。耳をそばだてているわけではない。ないのだが。
KP
メッセージカードのインクは真新しいように見えた。
佐倉 光
「『彼に逆らうな、おとなしくしろ』……か。何をさせようっていうんだ」
佐倉 光
「まあいきなり拘束されているなんてことはないけど、わざわざ全員裸だってとこが気にくわねぇな」
牧志 浩太
「そういうことだよな。
わざわざ裸になる、持ち物も手放すタイミングを狙ってきてるのもたちが悪い。
慌てさせる、落ち着かなくさせる、その上に用意した服を着る以外の選択肢を奪う。
効率的すぎるだろ。

俺達の番の時、服に何か仕掛けられてないか確認しよう」

急に吹きつけてきた、人間くさい効率性を持った悪意に唸る。
『こういう』のも、あの夢の時以来だ。
佐倉 光
「意志を感じるよな……着ざるを得ないし」
KP
佐倉はくしゃみをした。確かに裸でいると肌寒い。
牧志 浩太
「ああ。肌寒いのを我慢できたとしても、こんな状況で『俺は裸でいる』なんて言えるか?
無理。確実に無理」
唸る。無理。浩子さんだけなら許してくれたとしても、東浪見さんまでいるんだぞ? 無理。
牧志 浩太
「あの『糸』の繋がりを辿られたんだとしたら、あいつらに悪意がなくても、もう少し要警戒だな。
まあ、まずは無事に戻ることからだけどさ。
東浪見さんの無事も含めて」
佐倉 光
「そうだな。こういう時は指示に従えば帰れることも多いし。
充分気をつけていこうぜ」
牧志 浩太
「大人しくしろ、なんて書き方からして望み薄だけどな。

ああ、気をつけていこう。
隙を見るにしても、ただ暴れても無意味だ。

着替えが終わったら、他のカードも内容が同じかどうか確認しよう。
それから、他のものの確認だ」
佐倉 光
「あの東浪見さん若いな。例の事件ん時に会った、別の東浪見さんか」
佐倉 光
なんとなく後ろを見たい気がしつつも何とか牧志との会話に集中する。
牧志 浩太
「ああ、だと思う。
糸を辿られたんじゃないかって思ったのも、それなんだ」
佐倉 光
「なるほど、糸か。確かにアレが影響している可能性はあるな」
KP
カードはテーブルに無造作に置かれている。
どうやらベッド二つの間にあるテーブルに一枚ずつ置いてあるようだ。
KP
そうこうするうち女性陣の着替えが終わったようだ。
随分と時間がかかっていたようだし、何だか楽しそうだったが……
東浪見 海
「ごめんごめん、終わったよ」
東浪見は普段とがらりと雰囲気を変えて、鮮やかな黄色の長いドレス。
露わな肩に盛り上がった筋肉と健康的な肌の色が眩しく、手の甲まで覆う手袋とのギャップが鮮やかだ。
浩子
「似合う? なんて言ってる場合じゃないな」
浩子は背中を大きく開けたセクシーなドレス。
黒い生地はランタンの明かりに艶めかしく輝き、短いスカートから覗く脚と絞られた腰が女性的な印象を強める。
絞られた腰は、結果として胸を強調していた。
牧志 浩太
「おあ」
変な声が出た。
東浪見さんはイメージをがらっと変える意外な格好で来たし、浩子さんに至っては「俺だけど女の子なのだ」と強烈に意識させられて頭が混乱する。
佐倉 光
「おおー」
思わず声が漏れた。
今これよくわからん場所でピンチかも知れないんだよな? ってことが頭からひらひらと逃げてゆくようだ。
牧志 浩太
「あの、楽しんでませんか。楽しんでる場合じゃないと思うなぁー?」
うっかり声が上ずった。
状況が改善したと思ったのに、妙に心臓に悪い!
浩子
「ごめんごめん。たくさん用意してあるのは罠だよな、ついつられた」
東浪見 海
「ああ、ごめん。話してたらつられちゃってさ。似合う?」
牧志 浩太
「意外だけどすごく似合います」
佐倉 光
「キレーだ」
としか言いようがなかった。
牧志 浩太
佐倉さんの呟く声に、思わずこくこくと頷いた。
そう、綺麗だ……。
佐倉 光
ようやく自分の格好を思い出して、慌ててベッドからシーツを取ってかぶった。
まずいだろ。色々。
牧志 浩太
男性陣はちゃんと警戒&探索しているのにこの二人ったら。

東浪見:二人ほど探索者慣れしてない&浩子につられた+牧志たちをうっかり幼馴染認識
浩子 :悪魔に染まっちゃってて色々気にしなくなってる+一般人と会ったの久しぶり過ぎて認識が抜けてる
佐倉 光
「そこ、男用の服もある?」
そういえば牧志がずっとドレスで過ごしていたことなんかを思い出した。
まさか女物しかないなんてことないだろうな!?
東浪見 海
「ふふ、ありがと。男物の服もちゃんとあったよ」
浩子
「だいたい正装だったな、タキシードとかそういうやつ。
こういう服も意外と楽しいな、古島が昔かわいい服着てはしゃいでたのがちょっと分かる」
佐倉 光
「まず服を着よう服!」
言ってそそくさとクローゼットの方へ向かう。
とにかくなにか着よう。何でもいい。
牧志 浩太
「賛成!」
この格好のまま話していると罪悪感がすごい。
その上に鎖がないと逆に落ち着かない。もう無理。

コメント By.KP(佐倉)
楽器演奏できるシナリオなんで、折角だから楽器演奏できる塔の二人と、二人に縁があって楽器弾けたり踊れたりする人たち呼ぼうぜ! で始めたシナリオ。
今回は男女四人で裸でわちゃわちゃしてるだけですが、如何わしいことは起きません。

プレイ日:2025年9月25日 ~ 2025年12月20日

作者名: たなばやし

配布・販売サイト: ラストバンケット

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【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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