こちらには
『PYX』
のネタバレがあります。
本編見る!
佐倉 光
「……」
心は決まっている。しばらく、どう言おうか考える。
佐倉 光
「また、あっちからの旅人が来るようになりますよ。いずれ」
ここに留まることはできない。
KP
「そうか……、そうだな。すまない、勝手なことを言ったね。
では、せめて今晩だけでいい、この屋敷でともに語らってはくれないだろうか。

わたしはこの世界については、かなり詳しいつもりだよ。
知っていることでよければ、旅路の足しにしてくれたまえ。

夕食も、寝室も用意させよう。
それに、ささやかな蔵書ではあるが、書斎も見て行ってくれてかまわない」

あなたはこれを断ってもよいし、承諾してもよい。
佐倉 光
そうだなー、一度神の座を踏んだことがあるっていうし、そのへんの話は聞きたいな。
佐倉 光
話がうますぎる気がするのは気になるが……情報は欲しい。
佐倉 光
「私たちはあっちの都市にある図書館を見てみるつもりだったんですけど、あそこの蔵書ってどんな物があるんですか?」
KP
「ああ、そうだったのか。
あちらは他の街や王国と共同で管理しているものでね、神官たちに管理を任せているんだ。
ほとんどの魔術の書はあちらに収めているよ。
その他にも、望む知識や書物があるのなら、何でもあるのではないかな」
牧志 浩太
「何でもあるって言った」
佐倉 光
「何でも……」
佐倉 光
「……くそー。なんでいつもこうタイミング悪いんだ」
今回は知識人に聞く方を優先するべきだろうな。
佐倉 光
「つーか目的地がこっちの世界なら、ここで寝るわけには行かないかな?
いや、あっちであの王座をイメージして寝れば、直行できるのかな」
佐倉 光
「多分そうしろって意味でイメージ送ってきたんだろうな」
佐倉 光
「前回使った靴をもう一度作り出して、それでここから行くって手もあるけど、めちゃくちゃ疲れるからなぁ、あれ。
できれば万全の状態で行きたいからなー」
おとなしくここで話を聞いて、宿を借りるべきか。
牧志 浩太
「赤の女王がタイミング悪くしようと企んで……、いや、それはないか。
本当にタイミング悪いだけだな。
ここで話して、寝ないでセレファイスに戻って図書館行って、それからあっちで宿とって寝る、って手もあるけど。
俺、佐倉さんが寝ないならまだ寝ないで済みそうな気がしてるし」
KP
女王の記憶を辿ったあなたは、彼女が [未知なるカダス] と呼ばれる場所にいることが分かる。

レン高原の遥か北方。
ドリームランドの神々が座すという、凍てつく山脈の上だ。
そこにある神々の城の中に、彼女はいる。

あなたが眠り、望むならば、そこへ行くことができるだろう。
佐倉 光
そうか、前に行ったのとは違うところだ。
王が行ったのもそこかな。
それならなおさら話を聞く価値はある。
佐倉 光
そういや俺、寝なくても平気なんだった。
それならここで一晩クラネス王に話聞いて、街に戻るのも手だな。そうするか……

王には話を聞いたらたつ事にする、と伝えよう。
そういえば、ムノムクァと似たようなこと言ってくるやつ、いなかったなぁ。
KP
「ありがとう、短い間でも嬉しいよ。
どうか、ここを君達の家だと思って過ごしておくれ。

夕食は何にしようか。
魚は好きかい? 山の幸もあるよ。君達は酒を口にするだろうか?」
王はうきうきと言う。
佐倉 光
「魚かー。いいなぁ、ぜひいただきたいです。
お酒は、弱いんで寝ちゃっても困るし、遠慮しようかな」
万一酔っ払って、今のリアルのこと喋っちまうのも嫌だしな。
KP
「おいら、魚がいいなー」
ずっとその辺で好きにしていたナガグツが、不意にひょいと顔を出した。
佐倉 光
「おっ、どこにいたんだ?」
KP
「話長そうだし、あっちで遊んでたよ。
あれ、マキシが変形してる。すごい形になったなー」
牧志 浩太
「自由だな。まあ色々あってさ」
KP
「ふーん」
いつの間にかどこかへ行っていたらしいナガグツは再び、ちょこんとあなた達の横に座る。
佐倉 光
「連れなんですが、一緒にいいですか?」
とクラネス王にナガグツを紹介する。
KP
「おお、それはよかった。
では、ここで捕れた魚を御馳走しよう。
勿論だ、お連れも同席しておくれ」
王は嬉しそうに言うと、先程突っ込みを入れてきたメイドを呼び、夕食を用意するように指示する。
牧志 浩太
「そういえば、今の俺って何が食べられるんだ?
石じゃなさそうな気はするんだけど、魚は食べられるのかな」
夕食の話を聞いて、ふと牧志が言う。
佐倉 光
「とりあえず口は動いているようだし、食ってみれば?
奥歯が臼歯じゃないから、肉食かって気はするけどさ」
伸びをしてフランケンシュタインの本を出す。
佐倉 光
「イラストは人間になっているんだよなぁ」
佐倉 光
「夢見で人間の姿にしてみる? そうしたら色々食えるかも知れないし」

佐倉 光
【POW】消費して永続で人間の姿にするぞ! も一応可能ってことかねコレは。
KP
実は可能です。いきなり人間の姿にして、そのまま人間体で一緒に旅することもできちゃったりする。
佐倉 光
なーるほどなー。
生み出す方は考えてたけど、「変形させる」方は何となくぴんと来てなかった。
KP
自分達を変形させることもできちゃう、ってなかなか思いつきづらいですしね。
いろんな牧志で遊びたかったので、あえては言わなかった。

牧志 浩太
「ああー、なるほど? 
そうか、そういうのもできるんだな。
じゃあお願いしようかな、その方が席にもつきやすそうだし」
牧志 浩太
「そうか、そういうのもできるんだな。
全然思いつかなかったな……」
牧志はちょっと悔しそうに、うーんと唸る。
佐倉 光
「……まぁー、失敗したら怖ぇし」
無意識に肩越しに振り返る。
もうあの口はないが。

佐倉 光
ということにした!!
KP
しょっぱなファンブルしましたしね。
牧志を人間にしようとしてファンブったら、牧志がどうなっちゃうかわからない!
あと序盤の牧志は…… 結構便利だったし。
佐倉 光
乗って移動できたし。
KP
できましたしね。人間に戻していたら牧志に乗って移動はできなかった。
あと牧志の光で洞窟の奥を照らしたりもしてましたね。
あ、あれは覚醒世界か。
佐倉 光
そういえばそう。
KP
夢の中では人間の姿で、覚醒世界に戻ると突然結晶になるのもギャップすごそう。
佐倉 光
どっちが夢かわかんなくなりそう。
KP
なりそう。覚醒世界の方がよっぽど夢っぽい。
「夢の中でだけ人間に戻れる」のもなんだか切ないけど。

牧志 浩太
「……あー」
まあ確かに、と頷く。
ガーゴイルだが動くものになったことで、頷くという動作ができるようになり、頭部はだいぶん表情豊かになった。
KP
夕食の準備が整うまでには少し時間がある。
別に〈夢見〉で夕食を創るわけではないらしい。
牧志に〈夢見〉を使うなら、その間に試せるだろう。

牧志を人間の姿に戻すなら、牧志の元の【APP】×2=22のMP消費。
佐倉 光
MP 88 → 66
1d100 81 〈夢見〉 Sasa 1d100→ 29→成功

佐倉 光
牧志の体に触れ、人間の彼を思い浮かべる。
この形でなくてはならない。
無論内部構造もだ。
この形であるべきなのだ、と強く念じ続け、夢を呼び起こす。
KP
目の前で、牧志が光に包まれた。
どこかで見た音楽とエフェクトとともに(一緒にイメージしてしまったのか、『あなた』の差し金かは分からない)彼がリボンに包まれ、光の中で形を変えていく。
佐倉 光
「え」
あの時のことはよく覚えていないか、あの時と同じだと分かった。
牧志 浩太
その中で鳥じみた形だった胴体が伸び上がる。
腰が伸び、その中から太腿が姿を現す。
踵が縮み、鉤爪が縮む。
一対の翼から羽毛が消え、比率が変わって腕へと姿を変えていく。
佐倉 光
「えー。あー。こんなの想像してないけど」
最後に魔法少女姿の牧志が出てきたらどうしようと慌てつつも見守る。
夢見万能説
佐倉 光
今度来たときは牧志すっぽんぽんになっちゃうか。
と思ったけど、その辺もまとめて夢見したのかな。
KP
今回は衣装は含んでいませんね。
ので前のままの服を着てる。次回は裸になっちゃう。
佐倉 光
いかんいかん、作っておこう。
つまりズーラ姫を永続で生きている美女にすることも!
KP
可能かも!?
ズーラ姫のアレ呪いのせいなので、呪いとのPOWバトルになりそう。
佐倉 光
自分でかけた呪いとのバトル?
ズーラ姫のついでに死者の地を天国に書き換えてぇー
なんてのも可能か!
そうしたらドリームランド全体の死者がハッピーに!
どれだけMPが必要かわかんないけど。
KP
ズーラ姫を呪ったのはニャル様じゃなくて強力な魔術師ですね。
魔術師の愛だか妄執だか腹いせだかで死者を統治し愛するように呪われちゃった。

可能かも!
すごい量のMPがいりそう。

ニャル様の領域なんだし、ニャル佐倉さんがやろうと思えば死者の地を天国に置き換えることでもなんでもできそう。
ドリームランドに地球作るよりはまだスケール小さいし。
KP
そしてハッピーになった死者の国でズーラ姫とキャッキャウフフ生活したいと思えば……できる。
佐倉 光
HENTAIの仕業だったかぁ~。
それなら対抗勝てるかも?

でもズーラ姫の欲がおさまらなかったらあんまり幸せにはならなさそう。
KP
だったのです。それなら対抗勝てそう。
呪いなくなったら【POW】吸わんですむだろうから、佐倉さんの【CON】次第に……(?)(??)

牧志 浩太
「………佐倉さん」

光とリボンが消えると、そこに立っていたのは、マントと布を纏った、以前のままの人間の牧志だった。

彼は万感の思いを込めて、人の喉で名を呼んだ。
KP
「キー」
ついでに胃袋が聞き慣れた声で鳴いた。
佐倉 光
「牧志!」
二重の意味でほっとした。
牧志 浩太
「戻った! よな?」
牧志は嬉しそうにあなたの肩を抱く。
佐倉 光
「そっかー、やってみゃあ良かったな」
牧志 浩太
「できるものなんだな。
まあ、セレファイスでは意外な体験ができたし、いいんじゃないかな」
佐倉 光
「そうだな、あれはあれで面白かった」
手触りやかたさなど、あとは背中をチェック。
良かった、人間だ。
佐倉 光
「おっと、そうだ、服も出しておかないとな。何着る?」
自分で好きな服出した方がいいかも知れないなコレは。
牧志 浩太
「お、じゃあせっかくだし、ファンタジーらしい服にしようかな。
宝石飾りのついた金色のローブとか。

あー、でも動きやすい方がいいか。
木綿のシャツとズボンにマントで。
色は……、いつものジャケットみたいなのが一番合うかな」
KP
牧志の注文通りの服を作るなら、前と同じく5MP
あなたの好きな通りに見た目をいじって遊ぶなどしても、基本的には同一MPとする。
佐倉 光
宝石飾りの金のローブぅ?
鎖つき??
KP
鎖つきかも。
あの時の経験がふっとイメージするものに混じっちゃってる。
鎖付きのローブの着用者……塔で生きている牧志のこと。
佐倉 光
「お前そんなに派手好きだったっけ?」
笑いながら木綿のシャツにズボン、ただしちょっと見た目が凝った感じなヤツを出そう。
宝石に金が好きか。ならマントの装飾それにしてー、なんかジャラジャラしてるとかっこよさそうだからファンタジー鎖も付けるか。
伝説に出てくる系の上位悪魔の服を思い出して参考にしよう。
※鎖はほっっそい飾り用のやつです。
KP
なるほどなるほど。
では、装飾多めなので+1して、6MPで。
佐倉 光
MP 66 → 60
1d100 81 服 Sasa 1d100→ 90→失敗
佐倉 光
「……」
イメージがとっ散らかったせいか上手く行かなかった。
もっと具体的に……
と、あの時に出会った塔のあいつの姿を思い出した。
系統似てるかも。じゃあそれを土台にして……
佐倉 光
MP 60 → 54
1d100 81 服!!  Sasa 1d100→ 11→成功
佐倉 光
最初の想定より宝石が大粒になったり鎖多めになったりしたかも知れない。
牧志 浩太
「いや、ふっと思い浮かんでさ。
お、なんだか馴染むなこの服」

随分ファンタジックで派手になったマントを纏って、牧志は楽しそうに腕を広げたり、腰を捻ったりして身体と服の動きを確認する。
牧志 浩太
「できなくなったこともあるけど、やっぱり身体が動くっていいな。ありがとう」
KP
そうこうしていると、食堂の方から夕食の呼び声がかかる。
KP
「お二方と猫さん、お夕食ですよー」
親しみを感じる、温かみのある声だ。
佐倉 光
「折角のお招きだ、今晩くらい旅行を楽しもうぜ!」
食堂に向かう。
牧志 浩太
「ああ!」
牧志は笑って、食堂へ一歩を踏み出す。

KP
以前に高原で遭難しかけて招かれた洋館の食堂を思い出すような、それより少し牧歌的な雰囲気が漂うような、暖炉の柔らかな熱に温められた食堂。

にこにこと笑って来客を迎えるメイドと、あなた達と向かい合う席についた王。

清潔なテーブルクロスの上には皿が並べられ、生きているかのような弾力を感じさせる魚たちが、バターを纏って新鮮さを競っていた。

調理法はみな素朴なものながら、その素朴さが却って期待を掻き立てる。

食卓を飾る葉の緑は瑞々しく、焼けた小麦のよい香りが部屋中に満ちている。

中央に置かれた大きなパイの中には、きっと素晴らしくいいものが入っているのだろう。

猫のための皿にもちゃんと新鮮な魚が置かれ、ナガグツの目を感激でまん丸にした。
おいしそう
KP
夕食時にこういうものの資料を引くべきではありませんね(ぐー
佐倉 光
おいしそう……
KP
KPも食べたい。
コーニッシュ・パスティで検索すると検索結果が大変なことになります おなかすいた
佐倉 光
美味しそうだ!!
しかし焼き魚と豆腐とピータンと野菜炒め食べた私に怖いものはないな!!

美味しそうだなー。
KP
美味しそうなんですよねー。

佐倉 光
「うわぁ」
つい声を漏らしてしまった。
一気に空腹が押し寄せてくる。
美味しい食事は人を幸せにするのだ!
目移りする!

食事にたいする期待を膨らませながら席に着く。
牧志 浩太
「うわぁ……!
佐倉さん、俺久し振りに腹が減ってる!
腹一杯になれそうな気がしてる!

ありがとうございます、王様。嬉しいです。すごく美味しそうだ」

歓声を上げながら牧志も席につく。
酒の代わりに、食事に合わせた紅茶のいい香りがあなた達の鼻をくすぐる。
KP
「やあ、その様子だと君の口にも合いそうでよかった。

メイド長が少々張り切ってしまってね」
KP
「まあ、いやですよ王様。
一番張り切っていたのは王様じゃあありませんか。

この村はなんにもない所ですが、魚だけは美味しいんです。
楽しんで下さいまし」
KP
「話は後にしようか。
さあ、召し上がれ」
メイドが一歩下がると同時に、王はそう告げた。
佐倉 光
「いただきます!」
佐倉 光
あ、お祈りとかあるなら待つけどね。

挨拶したら遠慮なく食事に手を伸ばす。
KP
王は習慣として祈りを捧げるが、あなた達にそれを要求することはない。
KP
魚のソテーを口に含めば、口の中でコクの強いバターと魚の旨味が交じり合って弾けた。
緑の葉は爽やかな水分と食感となって口を潤し、陽光をいっぱいに吸った小麦の香りは口から鼻へ馥郁と抜ける。

中央に置かれたパイに王がナイフを入れれば、ほかほかと湯気を立てる肉と芋、野菜のフィリングが見えた。
パイ生地と中身を合わせて口に入れれば、じゅわりと滋味が溢れる。
牧志 浩太
「美味しい、美味しいです、ありがとうございます王様、夢みたいって夢だった! 覚めちゃう前に食べられたからセーフ!」
久しぶりの空腹と満足が人間の感覚とともに、牧志から語彙と知能を奪っている……。
佐倉 光
「うま!!」
まともな言葉にならない。
ふくよかな魚のソテーを、そのソースを吸い取らせたパンを口に運ぶ。
素朴でありながら確かな腕前で作られた料理は絶品だった。
スープの一滴も無駄にしないように味わい、パイのサックリとした歯触りと、もっちりとした具とのハーモニーを楽しむ。
佐倉 光
「美味しい!」
佐倉 光
「食べても目が覚めないって最高!」
牧志 浩太
「最高! ちゃんと味が分かるの最高!」
KP
「そんなに喜んでくれると、こちらも嬉しいね。
料理人たちにも伝えておこう、きっと喜ぶよ」
にこにこと微笑む王の目が、こころなしか若者を見る目になった。
牧志 浩太
この一度だけと分かっているからだろう、牧志も肉汁の一滴、肉のひとかけらまで味わうように料理を味わった。
二度訪れれば離れがたくなる、旅の身にとってこの村は、そんな雰囲気を宿している
佐倉 光
空腹、などというものは今の体には人間だった頃の幻想に過ぎないのに、食欲は止まらなかった。
ひと噛みごとに生命を感じた。人間を感じた。
終わるのが惜しいほどに噛みしめて満喫した。
佐倉 光
旅人として訪れるなら最高の場所なんだなぁ。
今後を考える
KP
牧志をここで人間体に戻してくれたおかげで、二人に人間を感じさせられてよかったなぁ。
なお戻ってなかったら生肉イタダキマスな予定でした。>ガーゴイルまきし
佐倉 光
Oh。それは治しておいて良かった。
豪快が過ぎる。
KP
料理食べてる佐倉さんの横で生肉の塊にかぶりつく。
佐倉 光
まあ食べられないよりはいいけどね。
最初のとこで焼き肉食べ損ねたし。
KP
食べ損ねましたしね。ガーゴイルでも牧志と一緒に食事はできる。
でも人間体に戻してくれたおかげで、「ともに人間の食を味わう」ことができる。
佐倉 光
このまま人間の世界に人間として帰るんだ!
KP
果たして佐倉さんは何を選ぶのかな。
佐倉 光
ぶっちゃけ分岐だし、好きにしていいよな……と思っている。
ここまで遠く旅立ってやはり青い鳥を求めるのか、純粋に欲を追うのか……
どういう道が待っているかによるなぁ。
そもそも人として還る道があるかどうかもわかんないしなー。
KP
ぶっちゃけたとこIFルートだし、ほんとに好きにしちゃっていいと思います。
このシナリオ選択できるエンドルートはいくつかあるんですが、「複数複合してもいいよ!」ってあるので、大体のお好きなことは複合エンディング(またはそれらのエンディングの一部改変)で実現できるのではないかと思います。

KP
永遠に続く夢でやがて饗宴が終わるのは、王がそこに「永遠ではないこと」を望んだからなのだろう。
夢見るだけで生み出せる料理を料理人たちがせっせと作るのも、きっとそういうことなのだ。

満足感が腹の奥から生まれて、あなた達を力強く満たした。
この瞬間、あなた達はふたりとも人間だった。
ちっぽけな人間の、喜ばしい要素だった。
洗う必要も感じぬほどに空になった器が下げられる。
佐倉 光
「ごちそうさまでした……!」
深いため息をついて幸せを噛みしめる。
こんな美味いもの、いつぶりに食べただろう。
心の底から感謝して頭を下げた。
牧志 浩太
「ご馳走様でした……ああ、本当に、美味しかったです」
牧志も静かに頭を下げ、声音と仕草も合わせて全身で感謝を伝えようとする。
KP
デザートとしてクリームを添えた小さなベリーのスコーンと、牛乳を入れた紅茶が供された。
それを前にして、王は静かに口を開く。
KP
「楽しんでくれてありがとう。わたしに聞きたいことはあるかな」
腹がほどよく満たされて落ち着き、ここからは歓談の時間らしい。
佐倉 光
「はい、是非知恵をお借りしたく」
これから行く神の座がどんなところか、どうやって行ったのかを訊こう。
佐倉 光
具体的な情報がなければ「語った」で大丈夫です!
KP
カダスの名を聞くと、王はうむ、と頷く。

「あれは神々の地だ。

旅をしてきたなら知っていようが、ここ夢の世界では覚醒の世界よりも、ずっと魔術と神秘が身近にある。

科学と物理法則の代わりに、神秘が支配する地。
あるべくしてあるのではなく、あるようにある、それがここドリームランドだ。

ここでは、神々もまた身近にある。
意思ある神々が各々の意図をもって存在し、人々はかれらに敬意を払う。

『神』ではなく『神々』だなどと、不思議に思うかもしれないな。
わたしには、どこかしっくり来たよ」
KP
「レン高原のはるか北方、凍てつく荒野の果て。
かの地には縞瑪瑙の城があり、大いなるものたちが座す。

ああ、懐かしいな。
かの地を一番最初に発見した夢見る人は、わが旧友ランドルフであったのだよ」
王は懐かしそうに目を細めた。
KP
「ああ、すまない、どうやって行くかだったね?

道が、続いているのだよ。
ずっと、ずっと……、ずっと、果てまで。

無限のような距離を越え、シャンタク鳥の巣を越え、荒野の歩哨たる彫像が立つ入り口を越え、永遠の夜の凍てつく荒野を歩き、名もなき巨大な獣のすみかを越え、……谷をずっとずっと歩いた先に、カダスはある」
牧志 浩太
「え、シャンタク鳥って、そんな所にいる奴なのか」
佐倉 光
ここも魔界みたいなものなんだな、と思いながら話を聞いていた。
佐倉 光
「思わぬ所で生息地が分かったな。
夢の世界の住人だったのか」
悪夢に食われるところだったってことか。

KP
シナリオにはここでカダスの具体的な情報は書かれてないんですが、クラネス王はランドルフ・カーターの旧友で、カダスを初めて発見した夢見る人はランドルフ・カーターだそうなんですね。

そりゃ王の口数も増えるよね、と盛りました。

佐倉 光
「随分遠いんだなぁ」
佐倉 光
「さすがにそんな長旅をしている場合じゃないだろうな。
例の空飛ぶ靴二人分作るのはわりかししんどいし。
それこそシャンタク鳥でも喚んでタクシーしてもいいけど、寒そうだしなぁ。
あれやこれやに襲われても面倒だし。
素直にワインワープするか……」
牧志 浩太
「だな。
いくらなんでも遠いし、みんなが待ちくたびれそうだ」
牧志 浩太
「……そういえば人間に戻ったし、俺、普通に眠くなるのかな?」
佐倉 光
「そうか、寝る時間ばらけたりしないかな。
まだ酒半分以上残ってるし、一緒に呑んでもいいと思う」
牧志 浩太
「そうするか。一度飲んでみたい気もするし」
佐倉 光
来なくなったってのはそのランドルフって人か。
寿命なのか、何らかの原因で夢を観なくなったのかな。
佐倉 光
あとは、二人の神が世界を作ったという神話について心当たりがあるか訊いてみる。
KP
「いや……」
王は記憶をたぐり、髭を撫でて小さく唸る。
KP
「聞き覚えがないな。
ここでは神話と事実の境は曖昧なものだが、そのような話は聞いたことがない」
牧志 浩太
「色々ご存知そうなのに、王様も知らないのか。
普通の神話、っていうのも変だけど、普通知られてるようなこととは違うのかもな」
佐倉 光
「そもそもその神話は実在するのかとは思うんだよな、聞いたことねぇし」
佐倉 光
「いやー、今の人間が知らない神話体系がまだあるってだけかもしんねぇけどさ。
唐突に次々と現れすぎじゃねぇかなって」
牧志 浩太
「あー、そもそも何もかもあいつの自作か、あいつしか知らない事だって可能性?
なんか……だとすると、俺達何に付き合わされてるんだって気になるな?」
佐倉 光
「……あ、そうか、王様キリスト教圏の方ですね」
だから『神々が身近』だと奇妙に感じるのか。
日本人にとっては割と神って身近だし、八百万もいるものだから、ぴんときてなかった。
KP
「ああ、そうか、君達は違うんだね。
東の果てから来たと言っていたものな。
もしかして、君達の所では、いまだ神々が近しかったりするのかい?」
佐倉 光
「私たちの国では、全ての者に神が宿るとされるアニミズムの影響を濃く受けているんです。
かといって神を深く信じている者が多いというほどでもなく……風土として根付いているといったところですかね。
クラネスさまには奇妙に聞こえるでしょうが」
悪魔使いのことには触れないのが無難だろうな。
KP
「いや……、何だか懐かしいよ。
わたしの故郷も、教化されて長いが、そういったものが色濃く残っていたんだ。
科学と機械の時代が来ても、そういうものは残り続けるんだね」
佐倉 光
俺の職業的には、科学と機械の時代だからこそさらに近くなった感。
佐倉 光
ほか、クラネス王に訊いておいた方が良いことがなければ、そろそろ発とうかな。
KP
ベリーの酸味は爽やかに口を潤し、饗宴の余韻を軽やかに彩った。
紅茶の最後の一滴が落ちてしまうと、今度こそ、やさしい夢のひとときは終わりを告げる。
KP
「もう行くのだね。
ありがとう、今宵は楽しかったよ。
どうか、君達の旅路に幸いがあるように」
佐倉 光
「はい、いろいろとありがとうございました。
本当に夢のような、楽しいひとときでした。
夢のような、というのも変な言い方ですけど。
また人としてここを訪れたいと思います」
深々と礼をする。
KP
「人として……、か。
今の君はそうではなく、いずれそうであるというんだね」
王は洞察の光を湛えた眼で、静かにあなたを見た。
KP
「ああ、その時は是非ともここを訪ねておくれ」
王とあなた達は、互いに礼を交わす。
佐倉 光
「そうありたい私が『人間』である気がしていますから」
ここから先何が待っているか、何も分からないが。
俺は俺でありたい。
それは必ずしも人である必要はないんだが、一番ふさわしいのは人間であることなのかも知れない。
KP
「おっと、ああ、そうそう。これも伝えなくては。
君達に必要はあるまいが、わたしのもとを訪れた人には、いつも伝えることなのだ」
KP
「永遠からの解放、つまり死を求めるならばアラン山に向かうといい。
その選択、つまり自発的に死を求めることは、この永遠の都市において、すべてに対して開かれている。
勿論、君達にも」
佐倉 光
「アラン山」
この都市を出るだけでは死を迎えることができないのかな。
わざわざ『死にに』行かなくては人生が終わらないのか、ここの住人は。
それはそれで、自分の生に疑問を感じてしまったら辛いことだな。
佐倉 光
「私たちは進まなければならないので、その山に登る事はないかと思いますが、ありがとうございます」
KP
「許しておくれ、王としての義務のようなものなのだ。
……さあ、よい旅を」
王の声とともに、食堂の出口の扉がひとりでに開く。
牧志 浩太
「ありがとうございました。
こんな時間を過ごせて……、楽しかったし、嬉しかったです。
行ってきます。王様」
行ってきます。あえてその言葉を使って、牧志は親愛の情を示した。
KP
「もう行くのかい?」
満足そうに毛づくろいをしていたナガグツが、尻尾を揺らして立ち上がる。
佐倉 光
「ああ、もう少しここで見ておきたいものがあるからね。
一緒に帰る?」
猫に問いかける。
KP
「図書館で調べものするんだっけ?
じゃあ、入り口まで案内するよ」
どうしたい
佐倉 光
一時ですな……
出立は明日にしよう。
ありがとうございました。
KP
おっとほんとだ。ありがとうございました!
女王問い詰めタイムはたっぷり発生しそうだけど、そろそろお話としては終盤です。
佐倉 光
だよなぁー。ここから先はおまけだし、この城で寝て向こうで寝直して殴り込んでもいいくらいだもんなー
いまだ打開策が見えないしそもそも打開すべきものなのかどうかも良く分からない。
あからさまにこっちの都合無視であれこれ押しつけてきているから、はねのけていいのかなとは思うんだけど、地球人類丸ごと人質だからなー。
自分がある程度の力を持って事態の解決をしなければならないのは確実であるからしてー。
こればっかりはもう行ってみないと分からん。
KP
ですよねぇ。
チラ出ししますと、打開というよりは、「神の力を得た佐倉さんが、どうしたいか選ぶ」の方が雰囲気的に近いです。
佐倉 光
そうなるよなー。
佐倉は佐倉であること、自分が知る世界や人を取り戻すこと、だけは決まっている。
自分が厳密に人間であり続けること、はそこまで重要じゃないな。
KP
牧志もそれは割と近い所ありますね。
「佐倉さんを失わない」「自分の知る人たちと、自分が滅ぼしてしまった人たちを取り戻す」。
互いに人間であるかどうかはそこまで重要じゃない。

KP
「にしても、柔らかくなったなー。背中乗っていい?」
猫は牧志を見上げる。
牧志 浩太
「いいよ。……はは、くすぐったい」
返事があるなり牧志の背中に飛び乗り、首筋に頬をすりつけている。
佐倉 光
いいなぁもふもふ。
温かい小動物に触りたい。
KP
昨日今日めちゃめちゃ寒いですしね。触りたい。
佐倉 光
「ああ、頼むよ」

佐倉 光
再度王に礼をしてからそこを出よう。
もう夜も遅いかな。明かりでも作ろうか。
KP
外へ出ると点々と道に沿って篝火が燃え、旅人を導いていた。
セレファイスまで戻るのに困難はない。
佐倉 光
ではかがり火を辿って戻ろう。
夜と昼の境目が見えるかも知れないな。
KP
穏やかな夜の中を、篝火に沿って歩く。
村の人々はみな寝静まり、聞こえるのは遠い葉擦れの音と、あなた達の足音と声だけ。
KP
「マキシって、なんだかご近所さんの匂いがするんだよなー」
猫は機嫌よく牧志の首に擦りついている。
佐倉 光
「牧志は波照間さんだったことがあるからかもしれないなぁ」
KP
「マキシがうちにいたのかい?
イトコってやつ?」
うーん、と猫は背中から牧志の顔を覗き込む。
牧志 浩太
牧志がくすぐったそうに笑う。
佐倉 光
「近い存在だった、ってくらいかな。
随分牧志は牧志になってるから、においが残ってるのも驚くほどだけどなー」

空を見上げながら歩いて行く。
KP
「ふーん?」
ナガグツは不思議そうな顔で、牧志の項の匂いを嗅いだ。
牧志 浩太
牧志が何気なく、猫の喉を撫でる。
KP
空を見上げて歩いていると、程なくして道の向こうに明るい場所が見えてきた。
セレファイスだ。
あっちは変わらず、昼のままらしい。
佐倉 光
昼と夜の境目に来たら暫く行ったり来たりしよう。
佐倉 光
「セレファイスの住人はここを通れないのかな?
わざわざ山に登らないと、永遠の存在であるという縛りは消えないんだろうか。
ここから出られて、しかも永遠の命を持っているなら、この世界を探検し尽くせそうで楽しそうだけどな」
佐倉 光
「まあ永遠の命の仕様次第だけどさ」
仕様によってはドジ踏んだときに永遠の命が永遠の苦しみになるもんな。
KP
昼と夜の境目を行き来すると、目に入る空の明るさも、辺りの風景の輝き方も変わる。
真ん中に立つと、空が緩やかなグラデーションを描いて夜から昼に変わっているのが見え、絵画のようで面白い。
佐倉 光
その不思議なグラデーションを思う存分堪能してから進む。
牧志 浩太
「どうなんだろうな。
『ここには』時間が無いって言い方からして、外に出れば普通に時間が過ぎるようにも聞こえるけど。

この世界を探検し尽くして嫌になった後とか、
単純に、そこへ行けば楽に死ねるってことなのかもしれないし。
それか、へたな死に方するとズーラに行っちゃうとか?」
牧志 浩太
「世界を探検し尽くすか。いいな、楽しそうだ、それ。
死んでズーラ行きは嫌だけどさ。
探検し尽くしてもいいし、それこそずっと何か作ったりしても凄いものができそう……、あー、それをやったのが王様なのかな?
例えば、狭い範囲で時間の無い街を作って、そこから居座って広げていったとか」
佐倉 光
「なるほど、ズーラ行きになるリスクなく安らかに逝く手段か。
外に出ないで一生を終えたいって奴もいるかも知れないしな」
佐倉 光
「想像したものを生み出せるから、ここドリームランドで暮らすのも楽しそうではあるんだよな。
パソコンはねーけど」
牧志 浩太
「なんでも作れるの楽しそうだよな。
俺も一度やったけど、佐倉さんほど安定してる気がしないんだ。

機械もないしな、ここ。
ああ、でも機械というか、ちょっとした装置みたいなのならなんとかなるかな?
そういうの弄ってても楽しそうだ」
佐倉 光
「『からくり』程度なら何とかなるかもな。
茶運び人形的なヤツとかさ。
ボルタ電池なら作れたりするかな……平賀源内の『えれきてる』とかさ」
牧志 浩太
「それいいな。
からくりを極めて人形師になるとか、それこそ人形で一杯の屋敷を作るとか……
おっと、夢を広げてる場合じゃないな」
佐倉 光
図書館を目指そう。

KP
セレファイスまで戻ると、あの穏やかな夜が嘘のように、賑やかな昼の街があなた達を出迎える。
ナガグツは市場で遊ぶ猫たちを眺めながら、あなた達を先導してトルコ石の神殿のそばへと向かう。

神殿の裏側へ回ると、地下への大きな入り口があった。
長い大理石の下り階段を、熱のないぼんやりとした明かりが奥へ照らしている。
KP
「ここが図書館の入り口なんだ。他の街とも繋がってて、本で満たされた廊下が五十二本あるんだって。
猫向きの場所じゃないから、おいら上で待ってるよ」
ナガグツはそう言うと、牧志の背中から飛び降りた。
佐倉 光
「おぉっ、お宝のにおい!
ティルヒアで作ったライトが役に立ったりするかもしれない。
火は使っていないから、本を傷めることもないだろうしな」
嬉々として地下へ踏み込む。
KP
階段は緩く地下へと下っていく。
どれほど歩いた頃か、見えてくるのは天井の高い円形の空間だ。

空間からは何本もの廊下が周囲に向かって放射状に伸び、周囲のあらゆる壁は本の詰まった書棚で埋め尽くされている。
それらの書棚の間を、火の代わりに熱のない光を宿した杖を掲げ、神官のような帽子とローブを身に着けた人影が見回っていた。
佐倉 光
「おおー! どんな本があるんだろうな!?
やっぱ向こうとは随分ラインナップ違うんだろうなぁ! 見てぇー!」
佐倉 光
とはいいつつも神々の地に関する本を探そうかなー。
どんなところなのか、誰がいるのか、みたいなのが分かれば。

『俺』は知っていることなんだろうけど、人間の俺は書物に触れたいぞ!
案内人とか、書架の管理人みたいな人はいないかなぁ。
牧志 浩太
「……すごい量だ。
天井まで本に埋め尽くされてるの、夢の中って感じがするな」

牧志が感嘆の息をつく。
彼が見上げる天井までも、書棚に埋め尽くされていた。

本の背表紙がこちらを向いているのに、
重力がそこだけ変えられているかのように、本が落ちてくることはない。

KP
KP注:ドリームランド大図書館についてはドリームランドサプリにもほとんど記述がないため、大捏造しています。
佐倉 光
※ありがとうございます! 佐倉がなんとなく満足すればいいだけなので、さらっと流して下さっていいですよ!
KP
※えっやだこんな浪漫空間ぜひ描写したい!
佐倉 光
異文明(しかも字は読める)の図書館なんて、背表紙眺めて軽くめくるだけでも絶対面白いヤツ!
KP
前に大量の知識を目にしたのに読めなかったこと、ありましたね……。
違う世界の文明の図書館、もう背表紙眺めるだけで面白すぎるやつだし異世界のハウツー本なんて読みた過ぎる

KP
案内人! と見回していると、廊下の間を見回っていた神官が足を止める。
白い光に照らされた深い皺の間から、彼は穏やかな眼でほほえんだ。
佐倉 光
「すみません、本を探しているんですが、書架の内容を書いた地図などありますか?」
声をかけて、場合によっては自分が探している本を伝える。
こっちにはどんなハウツー本や物語や伝記、知識や愚にもつかない自己主張があるんだろう、なんてのも気になり始めればきりがないが!
KP
彼はなかば眠るような目つきで頷いた。
どこへともなく杖を掲げると、両手に大量に本を抱え、背中にも本を背負った若者が廊下の間から姿を見せる。
若者はあなた達の姿をみとめると、すぐに口を開く。

「ここの廊下は歩む度に変じますので、地図は意をなしませんのでしてね。
現在はこちらの廊下が世界地理の書物、こちらが物語、こちらが伝説、こちら神秘の書物でこちらその他もろもろ。

お客様は覚醒の世界から? 
こちら出版という概念がございませんので、書物の当てになり具合は著者と写本士と神々次第です。ご注意を。
何せ書いたら書きっぱなし投げっぱなし、ツッコミ入れる者も写本士くらいですからね」
佐倉 光
「この世界のX(旧Twitter)程度に考えろって言われた気がした」
牧志 浩太
「……セレファイスの住人の永遠の命って、ここの本読むためにあるんじゃないかって気がしてきた」
牧志が呆気にとられて呟いた。
佐倉 光
「確かに、ここで本を読むための時間無限に欲しい」
周囲の背表紙をよくよく見てみたい気がした。
背表紙見るだけでも数日は退屈しなさそうだ。
牧志 浩太
「だろ。その他って何なのかも気になるし」
KP
「それから結構な頻度で罠が混じってますからね、お気をつけくださいね、人間食べたり本に変えたりしましてね、本になるのも結構愉快でございますけどね」
 
若者は早口で次々と述べながら、小脇に抱えた紙にそれらを記していく。
佐倉 光
「本になるのも愉快って、されたことあるんですか。
戻れるんですか?」
KP
「運次第でございますね!
私はもう慣れたものですが、本になったままここで一日ピーチクパーチク喋っているのもおりますよ。
まあ気にいらないようでしたら、その時は私にお声がけください」
佐倉 光
「本になってんのに喋るのか……声かけたら何とかしてもらえるのかな」
どこで発話してんだ。振動かな。
俺が本になったとして、何が書かれるんだ。
興味は尽きない。
佐倉 光
「ありがとうございます、まずは見てみます」
ローブの男に礼を言って、地理の本がある、と言われた方へ歩き出す。
KP
「ええ、それはもう!
私も本を相手して長いですからね、ポンと戻してご覧にいれます。

はぁい、お楽しみをー」
若者が機嫌よく笑って書棚の間に消える間にも、結局最初の神官はひとことも喋らなかった。
佐倉 光
「用が済んだら、ちょっと他の本も見てみようか」
牧志 浩太
「そうしよう。ちょっとだけ見ていこう。ちょっとだけ。
これは素通りできない」
佐倉 光
「そう、ちょっとだけなら大した時間もかからないって。
背表紙見るくらいならさ」
KP
大図書館、シナリオにはない舞台だけど楽しい。
佐倉さんならそんなの絶対寄りたいよなって思って出しちゃった。楽しい。
佐倉 光
そんなの寄りたいに決まっている!
なんなら軽く数日居座りたいに決まっている!
そんな場合じゃないだろ!!
KP
今更数日くらい誤差誤差って居座るも自由急ぐも自由。
KP
歩き出すと、廊下は何重にもぶれて見える。
数歩踏み出すとそれは収まるのだが、どうやら廊下が重なって存在しているらしい。
書棚から何かの声がしたような、何の声もしないように思えた。
佐倉 光
「おぉっ、ちょっと酔いそうだな。これがさっきのヤツが言っていた、時によって違うってやつか」
KP
背表紙には「オオス=ナルガイ渓谷の構造」「月の裏側を見る」「ティルヒア探検録」などの雑多なタイトルが並んでいる。
佐倉 光
「月の裏側って、要は地球が見える方だよなぁ」
思わず手に取って軽くめくる。
牧志 浩太
「そういえば、廊下が五十二本あるって言ってたもんな。
ほんとに数えたのかものの例えなのか分からないけど、重なってる分を含めて五十二本ってことなのかな?」

本をめくるあなたの横で、牧志は牧志で別の本を手に取っている。
KP
その本曰く、どうやらここには「月」があるらしい。

あやしげなレンの男どもの住処と噂されるそこは、覚醒世界の月同様に、こちらへいつも同じ側を向けて天を巡っている。

その裏側を知るのは彼らと猫ばかりだが、それを見たくてたまらなくなってしまった空想家が巨大な望遠鏡を作って観測を始めた。

その観測結果をひたすら集めた本だ。
たまに飽きたのか、月面の模様を色々なものに見立てて落書きをしている。
佐倉 光
この世界の話か。しかもここにも月があるのか。意識したことなかったな。
思わず上を見上げる。
KP
見上げても、ここで目に映るのは無数の本に埋め尽くされた天井だけだ。
佐倉 光
また猫か。どこにでもいるな、猫。
創造神に愛された生き物か何かなのか?
地球でも、別に働いてないのにやたら好かれていたし。
佐倉 光
どんな世界でも考えることは一緒か。
いやしかし夢ってことはここは地球の人間が作った場所?
いやそもそも夢の世界って何だ? 悪魔の夢でもあるのか?
それとも便宜上夢と呼ばれるだけで、大本の発生ではなく、夢を観ることで入り込む異世界……

あれこれと考えながら、早速本筋からずれているのを自覚して、慌ててこれから行く目的地についての本を探す。
佐倉 光
「信頼の基準は教えて貰ったけど、何なら信じられるか俺には分かんねーんだよなぁ」
牧志 浩太
「うーん、何冊か探して見比べたい所ではあるけど。手分けして探してみるか」
KP
未知なるカダスについての書物を探すと、それが地理ではなく、伝説の範疇にあるらしいことが分かる。

曰く神々が人間を見限って去った地である。
曰く実は北の果てではなく、南の果てにある(もしかすると同じ事なのかもしれない)、
曰く存在そのものが無貌の神の罠である、
曰くカダスを発見した冒険家がいるらしい、
曰く辿り着けばあらゆる願いが叶う、
曰く生きて帰った者はいない……。
牧志 浩太
「……もしかして、王様とランドルフさんってすごい人?」
本に書かれた伝説の散らかりぶりを見ながら、牧志が言う。
佐倉 光
「王様が凄い人だってことはもう疑うべくもないな。
ここに来る前はどんな人生を送った人だったんだろう」
牧志 浩太
「まだ青年の頃にここを作った、って言ってたよな。
それから夢の世界を冒険してたって」
牧志 浩太
「そんなことができちゃったら、夢中になるのも分かるな。
そんな場合じゃないけど、佐倉さんが色々作ってる時点で楽しいし」
佐倉 光
「結局何だか良く分からないけど、常人が気軽に行けるわけじゃないってことは分かるな。
この本は他の記述と食い違いすぎてるし、伝聞からの妄想とか勘違いって気がするなぁー」
佐倉 光
「そもそも帰った奴がいないんじゃ何も分かるわけないから、
王様から聞いたことが全てだと思った方が良さそうだ。
そうすると記述が一番事実に近そうなのはこの辺で……
それならこの筆者の本なら記述をある程度信じてもいいかもしれないな」

思わず分析を始めてしまっている!
牧志 浩太
「だな。
同じ筆者の本が……ああ、何冊かある。
この辺の本を起点に記述が近いものを探せば、足元を固めていけそうだ」

牧志はつられている!
佐倉 光
「赤の女王について書かれた本ねぇかなー。
あとは、夢見の原理とか、限界とか、そういやもう来なくなったっていう王様の友達の記録とか」
興味が広がってゆく!
佐倉 光
「あとは、地球の人たちが従事させられている作業について、とか、この世界の成り立ちとか……」
KP
そうやって探すなら、不思議なことに気づく。
世界の裏にある法則、原理、原則。
そういったものに関する本が驚くほど無いのだ。

ここの人間は、世界の果てを見たいとは望んでも、世界の謎を解き明かしたいとは望まないらしい。
KP
この世界の主たる『あなた』には、何となく分かる。

ここは夢。いかに整然として見えても、不条理めいた不思議の世界。

ここには覚醒の世界が失った謎と神秘があるべきで、そのように夢見られている世界なのだ。
佐倉 光
「なるほどなぁー、夢は夢、ってことか」
積み上げた書物を前にして、一応の結論を出す。
少し満足した。
佐倉 光
「ごめん、疲れてないか、牧志」
牧志 浩太
「大丈夫。今日はあといい宿でゆっくり寝るだけだろ?
俺も面白いし、ここ。

全部なんとかなったら、また来たいな。
意識してここに来たりできないのかな?
あんまり居座ると健康に悪そうだけどさ」
牧志は本の表紙を撫でで微笑む。
佐倉 光
「今あまり長居すると、俺が俺じゃなくなってきそうで、怖いんだ。
ここは『俺』の世界だから」
佐倉 光
「……そうか。俺は、怖がっているんだろうな。だからこんな寄り道をしているんだ。
どっちにしても俺じゃなくなる」
佐倉 光
「そろそろ、行こうか」
本をぱたりと閉じる。
佐倉 光
「また、互いに心配がないときにこられるといいな」
牧志 浩太
「そうだな……、行こうか。
また、何の心配もない時に来たいな。
全部取り戻して、そしたら先輩も一緒に来るんだ。
佐倉さんと、先輩と、俺でさ」

牧志は本を書棚に戻し、あなたの手を握る。
神に奪われようとしているあなたに、ただの人間の手は温かく無力だった。
佐倉 光
無力だろうと、それは今までずっと支えて、時に手を引いてくれたぬくもりだ。

KP
佐倉さん、怖くて寄り道してたんだなぁ……。
進む度に神として完成させられていくように思われるけど、こうやって遊んで過ごしている間は「佐倉さん」の時間ですもんね。
佐倉 光
そうかな、と今ふと思ったのです。
やっぱり何が起こるか分からないから、人間の牧志と楽しい時間が過ごせる時間をより長く味わいたいと願う、それは逃げかな、と。
KP
確かに。まだ時間があるらしいのをいいことに逃げていたんだなぁ。
自分も、牧志も、どうなってしまうか分からないから。
世界が終わる前日みたいな、そういう所がありますね。
わけのわからないものに立ち向かうか、少しでも逃げて最後の一日を味わうか。

佐倉 光
「折角だから、ぱーっといい宿とって寝ようぜ!
金は稼いであるんだしさ!」
佐倉 光
「今回使わなかったらこの金宿に置き去りになんのかな」
牧志 浩太
「夢で作ったものじゃないし、やっぱり置き去りじゃないか?

どうせ置き去りになるなら、ぱっと使うか!
せっかく佐倉さんが人間にしてくれたんだし、風呂にも入れるよな」
牧志は大きく背を伸ばす。
佐倉 光
「飯は食ってきちゃったし限度はあるけど」
おっと。まだ図書館の中だ。あまり大声を出すのも良くないな。
片付けて出よう。
KP
片付けて出ようとしたとき、〈目星〉で判定。
佐倉 光
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 22→成功
KP
物語の棚にある本に、何かが挟まっているのを見つける。
金色の縁取りの、見たことのある便箋だ。
赤の女王の便箋。
佐倉 光
「こいつは」
顔を険しくし、それを手に取る。
誰宛だ。
便箋ならもう開ければ内容が読めるのか。
佐倉 光
そして遊んでいたら赤の女王から督促状が来たか!?
KP
なるほど催促状だったのかこれ!
そんな意図はないけど、内容的にあながち間違ってないように読めるかもしれない。


その場にとどまるためには、全力で走り続けなくてはならない。


KP
真っ先に目に触れたのは、あなたの逃げを糾弾するかのような、もう見慣れた台詞だった。

その下に、こうある。
宛名のないメッセージが書かれている。
KP
本そのものは、覚醒の世界でも有名な物語だ。

『不思議の国のアリス』と、その続編である『鏡の国のアリス』が合冊になったものである。
『鏡の国のアリス』の方に先程の便箋が挟まっていた。

便箋に宛名はない。
佐倉 光
「俺宛……じゃないけど、アリスがどうこう書いてあるな。

この世界が夢? 神の夢だというのにも納得がいく。
アリスが俺だとすると、俺が赤の女王の思惑通りに動いた場合の話か。

それにしても、今までそれっぽい内容には仰々しい宛名があったのに、
何も書いていないのは気になる。
キティって赤の女王とは違うのか……?
この書きぶりだと、あいつだなという気はするんだけど……
あいつって『俺』じゃないのか?」

鏡の国のアリスってどんな話だっけ。
佐倉 光
鏡の国は読んだけどガチで忘れちゃった。
アリスシリーズ解説
牧志 浩太
「混沌たる夢……。ドリームランドのこと、じゃないな。

ああ、俺達がいた世界自体が夢で、アリスは雛じゃなくなったら新しい世界に行く、って言いたいんだよな、これ」
牧志 浩太
「この感じだと、キティは赤の女王で合ってそうだな」
牧志 浩太
「変な所捻るのやめてほしい」
佐倉 光
「わかんねーっつーの。
なんでもたとえ話持ち出して訳分からなくするの駄目なオタクムーブだぞ」
佐倉 光
「……俺がオタクだってのは……いまいち否定できねぇな」
牧志 浩太
「いや、これ訳わからなくするの楽しんでそうだ。

……何か、俺達の力になるものが見つかればよかったんだけどな。
結局訳が分からないままで、あいつの手の中のまま、か」
佐倉 光
「夢の世界」とクトゥルフ的な「この世界はアザトースの夢」が混ざっててよくわからんくなっとる!
KP
それ!
夢が二重構造になっとる。
女王さんったらよくわからん意味深好きなんだから。
佐倉 光
「俺を使って自分の中に波風立てて活性化。
主導権が俺にあれば勝ち目はある……
問題は、あいつの方が強そうだってとこだ」
佐倉 光
「行こうぜ、牧志。目立ちすぎの黒幕んとこへさ」
外に出る。
牧志 浩太
「そうだな、あとは心を決めるしかなさそうだ」
牧志はあなたの手を握る。
KP
外へ出れば、変わらない永遠の昼が穏やかに街を染めていた。
セレファイスの住人だって眠るのか、市場を賑わせる人々の顔ぶれは変わっている。
佐倉 光
牧志の、記憶のままに温かい手を取ってゆく。

佐倉 光
「あいつもう帰っちゃったかな。
ナガグツ~?」
声を上げる。
KP
「なんだーい?」
猫はあなた達の心も知らぬ様子で、ひょいと建物の屋根の上から降りてきた。
佐倉 光
「稼いだやつでぱーっとやるんだけど、一緒に行かないか?」
KP
「おっ、いいね!
景気いいじゃん、行く行く。
なになに、二人の送別会?」
佐倉 光
「景気づけかな!
お前も稼ぐの手伝ってくれたろ?
どうせ俺達この金残っても使えないし、行けるとこで一番いいとこ行こうぜ!」
図書館で結構時間使っちゃったし、また食べられるかも。
KP
「景気づけか!
いいね、楽しもう。

おいらニンゲンたちが噂してるすごい宿知ってるよ。
猫は泊まったことないけど、猫追い出すようなやつはここにいないから大丈夫さ」
佐倉 光
「よーし、じゃあそこ行ってみようぜ!」
ナガグツに案内して貰ってそこへレッツゴーだ!

KP
宿場街から一つ飛び出して存在するそれは、色とりどりの旗と絨毯が輝く豪勢な石造りの建物だった。

建物から繋がっている、きらびやかな宝石と大理石のタイルに彩られた大きなドーム状の施設が目立つ。
あなた達を歓迎するように、精緻な柄の編まれた絨毯が入り口へと続いている。

掲げられたランプにも石造りのテーブルにも、細やかな装飾が施されていた。
牧志 浩太
「うわお」
牧志 浩太
「何だか豪華も麻痺してきてたと思ったけど、佐倉さん、ここすごい。絶対高いやつだ」
佐倉 光
「おーすげー!
こんなとこ来るの初めてだ!」
絨毯の柔らかさを楽しみながら受付へ。
佐倉 光
「これで借りられる部屋と食事と風呂をお願いできますか。
大人二人と猫一匹で」
袋ごと置く。
余ったらチップにでもすりゃいいよな。
KP
こちらへどうぞと案内された部屋は心地よい薄暗さと、かぐわしい花と麝香の香りに満たされていた。

分厚い布が外の喧騒も明るさも遮断し、清潔なふかふかの寝床に横たわれば直ぐにでも眠りに落ちられるだろう。

しかし、今そうしてしまっては勿体ない。
知的労働で程よく腹はこなれ、身体は疲れたあなた達を、食事と風呂が待っているのだ。
食事は言えば整えてもらえるそうだ。
風呂はあのドーム状の建物がそうで、いつでも使うことができる。
牧志 浩太
牧志は恐る恐る絨毯を踏み、室内の匂いを嗅いでいる。
牧志 浩太
「踊り子さんが出てきそうな空間だ」
佐倉 光
「夢の世界で最高の贅沢か。二度とないぞこんなこと!」
ベッドでゴロゴロしたいのを我慢して、先に風呂入って、
その間に食事用意して貰おう。
風呂なんて久しぶりだ!
ドーム状の建物に行ってみる。
KP
猫は風呂にはついてこず、建物内の探検に出始めた。
稀にいる風呂好きの猫ではないらしい。

KP
ドーム状の建物に向かうと、装飾の施された開放的な広い天井に出会う。

中は男性用と女性用に壁で仕切られている。
脱衣所は石の椅子が設けられた広々とした空間だ。

水煙草やハーブティー、焼き菓子のサービスなどが自由に使えるようになっており、そこで入浴後らしい男たちが腰布一丁でそれらに興じながら語り合っている。

一種の社交場のような雰囲気だ。
巨大なガラスの塔にいくつもパイプのついた水煙草は、室内の照明に照らされて不思議な雰囲気を醸し出している。
牧志 浩太
「ここで身体を冷ましながらゆっくりするのか。
風呂が熱いのかな?」
牧志は珍しげに辺りを見回す。
佐倉 光
「湯じゃなくてサウナのやつか?」
物珍しそうにきょろきょろしてる。
水煙草もあとで試してみよう。

服を脱いで適当な棚に突っ込む。腰布に使えそうな布やなんかは置いてあるのかな。
なければ作るけど。
佐倉 光
「どこでも『なければ作る』って気軽に言えるの強い」
牧志 浩太
「確かに。準備いらずだな」
KP
腰布はもちろん準備されている。
奥から誰かが出てくると、むわりとした蒸気の気配が頬を撫でた。
想像する通り、中は蒸し風呂らしい。
佐倉 光
腰布を巻いて中に入る。
佐倉 光
「こういうのって木の枝で水振ったりするんだよなー」
などと言いつつ。
牧志 浩太
「ああ、フィンランドのやつだっけ? サウナの」

KP
中に入れば、むっとした蒸気が肌に触れ、一気に汗が吹き出した。
ドームの天井から射す光が蒸気に揺らめき、室内のタイルに反射して幻想的な光景が作り出されている。

よくあるサウナよりも温度は低く、じんわりと身体を温めてくれる。
牧志 浩太
「お、思ったより熱くないのに結構汗が出る。
風呂に浴槽がないのって、不思議な感じだ」
牧志は軽く目を細め、その幻想的な光を眺める。
KP
見ていると、水の出る泉はあるが身を浸すものではなく、出る前に汗と汚れを流していくもののようだ。

入る前に温めた湯で身を流し、蒸気の中で熱された石の椅子に身をもたれて身を温める。

垢すりとマッサージをやってくれる一角があるようで、身を温めたらそこへ行くらしい。
佐倉 光
じゃあ、湯で体流したら椅子に座って……
佐倉 光
「ここでうっかり寝たら終わりになっちゃうなー」
まあ、サウナで寝るのも良くないしな。

体をじっくり温めたらマッサージも受けとこう。
佐倉 光
「ここでマッサージ受けて、リアルに意味あんのかな?
まあいいか」
牧志 浩太
「どうなんだろ? あぁー、気持ちいい、気持ちいいからいいってことにしよう」
KP
温まった身体をゆっくりと揉まれながら解されるのは、大層気持ちがいい。

牧志の思考も途中からふにゃふにゃの声に化けた。
牧志 浩太
「俺達寝るわけにはいかないんで、寝そうだったら起こしてくださぁい」

ふやけた声で牧志がマッサージ師に訴える。
こんな贅の極致を中断させるわけにはいかないのだ。
佐倉 光
心地よい眠気に耐えながらマッサージを受ける。
佐倉 光
「寝ちゃだめだぞ牧志ーまだ寝るのは早」
佐倉 光
「……」
佐倉 光
「あぶねっ!」

そんな快楽なのか拷問なのか良くわからない時間を過ごしたりしつつ、しっかり体をほぐして、サウナを楽しむ。
たまに火照った体を水で冷やし汗を流しながら、余計なものを洗い流す。
さっぱりして風呂を出る頃には何もかもすっきりしていた。
KP
幸い、あなた達の努力のおかげで、食事を前にうっかり寝入って気づけば月面ということはなかった。

程よく血流の回った身体を、脱衣所の涼しい空気が迎える。
牧志 浩太
「さっぱりしたな。
何だか、心構えができた気分だ」
佐倉 光
これは、俺達として在り続けるための儀式だ。
人間の欲を満たし、エネルギーを得る。
言い訳だって? この上なく人間らしいじゃないか。
佐倉 光
涼しい風にあたり茶を飲む。
水煙草は口に合うかなぁ。
1d3 好き ふつう そうでもない Sasa 1d3→1
佐倉 光
「お、これ美味い」
初めての感覚に驚きの声を上げた。
牧志 浩太
1d4 好き 普通 そうでもない 過敏 Sasa 1d4→4
牧志 浩太
「え、えぇ、あれ?」

水煙草を味わうあなたの横で、牧志は変な声を上げながらその場に倒れ込んでいた。

どうやらニコチンにも過敏気味だ。
佐倉 光
「わ、おい、大丈夫か!?」

慌てて中断し、牧志を部屋まで連行だ。
寝るのは許さないがとりあえず寝台に転がしておこう!

で、しばらくそのままクールダウンする。
牧志 浩太
「だ、大丈夫……、
あれ吸ってたら最初は美味かったんだけど、突然ぐらっと来て、ありがとう」

牧志は寝台の上で目を回している。
人間の牧志を再現した結果、体質まで再現してしまったらしい。
佐倉 光
「正体、多少のものなら平気な筈なんだけどなー」
佐倉 光
「無駄に再現度高すぎたな」
牧志をぱたぱた扇ぐ。
まあ、俺が知ってるのは人間の牧志でしかないからな。
牧志 浩太
「それだけしっかり再現してくれたってことだな。
過敏なのがカフェインだけじゃないなんて初めて知った」
牧志は青い顔で苦笑する。

佐倉 光
あ、そうか。《治癒》使えばいいのか。
《治癒》で解毒したいです。
KP
お、確かに使えばいいですね。
元々知っている魔術なので、追加コストはありません。
佐倉 光
コストはMP12と正気度 1だ。
MP 66 → 54
SAN 34 → 33
2d6 回復に要する時間 Sasa 2d6→4,6→合計10
2分後か。けっこうかかったな。

佐倉 光
「……よし。暫くじっとしてな。すぐ治るから」
KP
あなたの手の下で、牧志の顔色が少しずつ、元の通り復元されていく。

治癒するというより、「復元する」が近い変化だった。
牧志 浩太
「あー……、楽になった。ありがとう、佐倉さん」
佐倉 光
「よかった、これを楽しめないんじゃもったいないからな!」
KP
牧志が何事もなかったかのように寝台から立ち上がる頃、食事が運ばれてくる。

鍋の中から、蒸気と香草の濃い香りが舞った。

見慣れない体躯をした鳥の肉と野菜の蒸し煮の傍らに、深い藍色の羽が飾られている。
鋭い串に刺してよく焼かれた串焼きは、何か四つ足の獣のものであろう匂いがする。

小さな器に入った灰色の何かは……、何だろうか?
肉のように見えるが、よく分からない。

シナモンと糖蜜の掛けられた柔らかいデザートを、少し刺激の強い乳の匂いが包みこんでいる。
牧志 浩太
食事の気配を感じて、牧志の腹で胃袋が盛んに鳴く。
KP
食事の気配を感じて戻ってきた猫には、刻まれた生肉の盛り合わせが供された。
所謂ガラ肉ではなく、食べやすく脂肪と赤身が程よく入り混じった肉である。
KP
「すごい、色々ある!
美味そうー」
猫は肉の匂いを嗅いで嬉しそうにする。
佐倉 光
「おおー、いい匂いだ。
王様のところで出たのとはまた随分違うなぁ。
なんだろこの鳥。鳥かな?」
ひとつひとつの見慣れない食材をしげしげと見つめる。
もし運んでくる人がいたりするなら、片っ端から『これは何か?』と訊く。
正体が分からないながらも食欲を刺激してくる音と香りを戸惑いながらも楽しんだ。

そして、皆の準備が整ったら手を合わせるのももどかしく、食べ始める。
こんな光景見せられたら、たとえ腹一杯でも別腹が吠えるね!
牧志 浩太
「だな。
あれは王様の思い出の料理で、こっちこそがドリームランドの街の料理なのかもしれない。

香草、どこで採れるんだろうな?」
KP
給仕の人に聞けば一つ一つ教えてくれる。

鮮やかな声で鳴く肉食鳥、集団で狩りをする鹿のような獣、瘤のあるラクダ、なんとここから随分北方で飼われている、珍しいヤクの肉……。

灰色の何かはなんと、食用の虫なのだという。
虫にしては随分な大きさで、てらてらとした肉は植物の油と香草をまぶされ、料理の雰囲気を纏っている。

セレファイスにはドリームランドで知られるあらゆるものが交易によって集まるのだ、と給仕は誇らしげだ。
牧志 浩太
「ラクダにヤクだって?
意外と、家畜は似てる?
いや、同じものとは限らないけど。
ニワトリいないの珍しいな」
佐倉 光
何食べても「うまい」しか言えない。
文明文化が違う、食べたこともない味、食感なのに、これほど美味く感じるのはやはり夢の中だからなのだろうか。
KP
頬張れば、口の中に動物の脂と肉の旨味が溢れた!

野趣あふれる獣の脂肪のにおいが香草でうまく和らげられ、腹の底から食欲に駆り立てる香りとなる。

鳥の肉は噛み締めれば、いつも口にしている鶏肉よりもずっと口の中で躍動した。
弾力と深い旨味が、歯の間で生命を訴えるかのようだ。
牧志 浩太
「お、この虫だっけ、コクがあって美味しい。
中はクリーム状なんだ」
佐倉 光
「ヤクなんて、普通なのもいるんだな」
日本じゃ全く一般的じゃねーけどな。
牧志 浩太
「だなぁ、人が生活できる場所があるって意外! 美味い!」
牧志は満面の笑みを浮かべて贅の限りを味わう。
KP
「おいらヤクなんて初めて食べるよ!
ありがとう、サクラ、マキシ」
ナガグツはそれを聞き、嬉しそうに肉をがっつく。
佐倉 光
そんな様子を見つつ、猫が「ウマウマ」言いながら飯を食う動画を観たことはあるが、ガチで「美味い美味い」言うのは初めて見たなぁ、なんてことを思って少し笑ってしまった。
KP
美味い美味いと肉に夢中になっている猫は、あなたの笑い声を聞いて「ん?」と片耳を動かしたが、目の前の肉の方が大事なので問い返すことはなかった。
佐倉 光
「物騒なものばかり見てきたからほんと意外だ。
人が食える動物もいるんだな、ここ」
牧志 浩太
「六王国とか交易とか言ってたし、俺達の運が悪かっただけで意外と人間の世界なんだなー、ドリームランド」
佐倉 光
「そういえば言葉にも不自由しないしな」
変な納得をしつつ舌鼓をうつ。
牧志 浩太
「そういえば言葉に困ったことないな。
そういうとこ、やっぱり都合よく夢の中なのかな?
物騒な大冒険も含めた夢?」
牧志 浩太
「もしかしたら、誰かが向こうからイメージ持ち込んだのかもな」
佐倉 光
「猫なんてその最たるものって気がしなくもない。
だけと犬は今のところ見当たらないな」
牧志 浩太
「そういえば、犬いないな?
猫好きの夢でも集まってできてるのかな、ここ」
佐倉 光
「冒険はいいけど、下手な死に方したら永遠の責め苦を受けるのは勘弁して欲しいよなぁ。
ズーラだけじゃないんだろ?
前回あのクソ蟲が見てた『地獄』なんかもそういう場所じゃないのか?」
牧志 浩太
「あの『地獄』もそうだな、きっと。

もしかして、こういういい夢だけじゃなくて、悪夢も入ってるのかもしれないな、ここ。

あの時だったかな、見た『夜』なんて、まさに悪夢だった」
佐倉 光
食事という場を通して、エネルギーを、気力を蓄える。
これからあるのはきっととんでもなく不条理ななにかだ。
全力で立ち向かえるように、考えられるように、体と心を整える。
牧志 浩太
「あ、このデザートも美味しい」
KP
人間としての快楽を思うさま貪れば、満足の後に人の眠気がひたひたとやってくる。

牧志と猫とともに過ごす贅沢なひと時は、これから行く眠りの先にあるものへの恐れを少しなりとも拭ってくれるかもしれないし、そうでないかもしれない。

けれど立ち向かうための力をきっと、人間のあなたにくれる。
佐倉 光
「ああ、もう食えない」
ベッドにごろっと横になる。
手足を伸ばして目を閉じて、幸せに浸る。
このベッドに眠る幸せは味わえないのは残念だが、そろそろ『夢の時間』は終わりだ。
佐倉 光
「牧志、準備良かったら教えてくれ」
牧志 浩太
「大丈夫。準備はできてる」
そして、あなたに頷いた。
佐倉 光
「ナガグツ、俺達帰るよ。色々ありがとうな」
波照間さんを取り戻しに行ってくるよ。
KP
「そっか、帰るんだな。
……なあ、おいら、ご近所さん達に会えて嬉しかったよ。

サクラ、マキシ、どうか元気でな。
あんた達、おいらの友達だ」

猫は先だけ白い尻尾をあなた達の手に擦りつけ、ミュ、と子猫のように鳴いた。
牧志 浩太
「俺も会えて嬉しかったよ、ナガグツ。
どうか、元気でな」

牧志は手足を伸ばして寝台に横たわり、傍らの猫の温かみに指を絡める。
佐倉 光
「また来たら遊んでくれ」
軽くその尾に触れるようにする。
佐倉 光
深く息を吐いて、訪れる眠気に身を任せる。
寝台に沈み込んでゆくように眠りに呑み込まれてゆく。
KP
「ああ、その時は一緒に遊ぼうな」
猫のやさしい声と体温が、幸せな眠りに溶け込んでいった。

コメント By.佐倉 光
満喫しすぎてシナリオと関係ないこと始める二人。
それも恐れがある故に。

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