![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/netabare.png)
『PYX』
のネタバレがあります。
本編見る!
KP
猫の案内に従って通りを歩いていくと、トルコ石の神殿が見えてくる。
猫はその横を通り過ぎ、広場を中心に枝分かれした通りを、さらに奥へ進む。
すると目に飛び込むのは、生命を感じる瑞々しい緑だ。
夏の最中のように鮮やかな緑が、美しい英国風の庭園を飾っている。
綺麗に刈り込まれたそれにも時間が存在しないというのなら、その庭園は永遠に美しくあるのだろう。
その向こうに、薔薇色の水晶でできた高い塔が見える。
その一番上には、紋章のようなものが描かれた鮮やかな旗が翻っていた。
猫はその横を通り過ぎ、広場を中心に枝分かれした通りを、さらに奥へ進む。
すると目に飛び込むのは、生命を感じる瑞々しい緑だ。
夏の最中のように鮮やかな緑が、美しい英国風の庭園を飾っている。
綺麗に刈り込まれたそれにも時間が存在しないというのなら、その庭園は永遠に美しくあるのだろう。
その向こうに、薔薇色の水晶でできた高い塔が見える。
その一番上には、紋章のようなものが描かれた鮮やかな旗が翻っていた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_egao.png)
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「おおー、すげぇな!
永遠に変わらない城に庭園か、自分で望んだものなら、それはそれで幸せなのかもなー」
荘厳な景色に見惚れる。
永遠に変わらない城に庭園か、自分で望んだものなら、それはそれで幸せなのかもなー」
荘厳な景色に見惚れる。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
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(すごいな、あれ上の方の飾り全部皹水晶だ。
風化しないし壊れないから、夢だからこそ作れる建物か)
「あなたらしい」歓声に少し安堵した様子で、牧志は穏やかな声を漏らす。
風化しないし壊れないから、夢だからこそ作れる建物か)
「あなたらしい」歓声に少し安堵した様子で、牧志は穏やかな声を漏らす。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
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「なるほど……」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「永遠に変わらない建物は食えるのか、それとも食っても戻るのか」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「いやいや、やめとこう。ケンカ売ることになっても困る」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
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(やめようやめよう、それで危険生物扱いされても困る)
KP
庭園では優美な人々が、きらびやかな衣装の裾を引いてさざめくように談笑する。
旗に描かれた紋章は既存のどの紋章とも同一でないように見えたが、何となくイングランド風の雰囲気が漂うようにも見えた。
旗に描かれた紋章は既存のどの紋章とも同一でないように見えたが、何となくイングランド風の雰囲気が漂うようにも見えた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「街の雰囲気から言って、随分前からここにいるのかな」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
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(かな?
これだけのものを作るほどだし、この街もすっかり住んでる人達の間に馴染んでるみたいだしな。
一体、いつの人なんだろう)
これだけのものを作るほどだし、この街もすっかり住んでる人達の間に馴染んでるみたいだしな。
一体、いつの人なんだろう)
KP
「おいらあんまり入ったことないけど、謁見室まではあの人たちに言えば入れるんだって。
おーい、王に会いたいお客さんだってー、入れてー」
ナガグツが庭園で談笑する人々に声を掛けに行くと、彼らは微笑んで振り向いた。
おーい、王に会いたいお客さんだってー、入れてー」
ナガグツが庭園で談笑する人々に声を掛けに行くと、彼らは微笑んで振り向いた。
KP
「やあ、王に謁見したいのかい?」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「はい、覚醒の世界から来ました。
王もそういった出自の方だと聞き、お話をと思いまして」
ひとまず穏やかに応じる。
王もそういった出自の方だと聞き、お話をと思いまして」
ひとまず穏やかに応じる。
KP
「それは素晴らしい!」
彼らはわっと歓声を上げる。
彼らはわっと歓声を上げる。
KP
「王は目ざめの世界の話に飢えておいでなんだ。
それはそれは喜ばれることだろう」
それはそれは喜ばれることだろう」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
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「はい、是非お話をさせてください」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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『世界が滅びました』って話?
そんなん聞かされても喜ばねーよな、きっと。
そんなん聞かされても喜ばねーよな、きっと。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
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(覚醒の世界の話……、か。
王は知ってるのかな、あっちがどうなったのか。
ここの人達は、知らないみたいだ)
王は知ってるのかな、あっちがどうなったのか。
ここの人達は、知らないみたいだ)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「こっちのほうが長いなら問題はないんだろうけど、言わない方がいいかもしれないな。
やっぱ、ふるさとがなくなったってのはそんなに嬉しい知らせじゃないだろ」
小声で返す。
やっぱ、ふるさとがなくなったってのはそんなに嬉しい知らせじゃないだろ」
小声で返す。
KP
「さあどうぞ」
彼らはやさしく裾を引き、あなた達を先導して宮殿の門を示す。
確かにそこは開かれており、中から複雑に反射する薔薇色の光が漏れて地面に模様を描いていた。
彼らはやさしく裾を引き、あなた達を先導して宮殿の門を示す。
確かにそこは開かれており、中から複雑に反射する薔薇色の光が漏れて地面に模様を描いていた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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宮殿の威容を見上げながらあとに続く。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「とはいえ、ここがもし俺たちの目的地だったら、もう知らされている可能性もあるけどな」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
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(……だな)
KP
そうやって言い合いながら宮殿の門をくぐると、複雑にカットされた水晶が放つ輝かしい煌めきが、あなた達を包んだ。
その光は眼球の表面でさらに反射し、世界がやさしい明るさで燃えているかのような幻視を与える。
その光は眼球の表面でさらに反射し、世界がやさしい明るさで燃えているかのような幻視を与える。
今はなき世界
佐倉 光
目指す場所はここなのかどうか!
KP
覚醒の世界の地球は滅んじゃったというのに「覚醒の世界の話に飢えておいでだ」と来るのはなかなかの話。
佐倉 光
多分生きてた時代が違うからー、現在の話をしたらまあまあの分量に。
そして牧志が歴史の話もすればさらに!
最新ニュースは避けよう。
そして牧志が歴史の話もすればさらに!
最新ニュースは避けよう。
KP
避けようそうしよう。
目指す場所は……、今の所他に手掛かりないですしね。
果たしてその先に何が待つのかは、ですけども。
目指す場所は……、今の所他に手掛かりないですしね。
果たしてその先に何が待つのかは、ですけども。
佐倉 光
「すべてを」ってなー。
KP
女王の思惑vs佐倉さんになるのか、女王の思惑with佐倉さんになるのか。
佐倉 光
図書館行くの忘れないようにしないとなー
KP
「TODO:図書館行く」って牧志の背中に書いて貼る姿がなぜか浮かんだ
佐倉 光
牧志の手帳でいい筈なのに。
KP
なのに。胴体だけ透明ボード状態になってるからか。
KP
「この宮殿には、
それぞれ異なる喜びに捧げられた七十の部屋がある。
私達はそれゆえに、ここを七十の歓喜の宮殿と呼ぶ」
それぞれ異なる喜びに捧げられた七十の部屋がある。
私達はそれゆえに、ここを七十の歓喜の宮殿と呼ぶ」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「喜びって70もあんのか」
そんなにあるかなぁ、と考えてしまう。
細分化したら70じゃ足りない気もするし。
そんなにあるかなぁ、と考えてしまう。
細分化したら70じゃ足りない気もするし。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
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「ここならそれくらいないと退屈しちまうかもな」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
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(もしかしたら、寂しくてそうしたのかもな)
KP
あなた達を案内した人が、隅の上り階段を指す。
部屋に溶け込む素材で作られた階段には、きらびやかな絨毯が敷かれている。
あれを踏めば上の階へ運んでくれるそうだ。
部屋に溶け込む素材で作られた階段には、きらびやかな絨毯が敷かれている。
あれを踏めば上の階へ運んでくれるそうだ。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「おおー、エスカレーター」
KP
「よき謁見を」
彼らは上へは上がらず、庭園へ戻るらしい。
彼らは上へは上がらず、庭園へ戻るらしい。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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どうも、と頭を下げて階段の方へ進み、絨毯を踏む。
KP
絨毯を踏めば、絨毯はするすると階段を上がり、あなた達を上へ運ぶ。
香しい花の匂いが漂う黒水晶の部屋に着いて、絨毯は止まる。
お二階でございます、という幻聴が聞こえた気がした。
階段はまだ上へ続いている。
香しい花の匂いが漂う黒水晶の部屋に着いて、絨毯は止まる。
お二階でございます、という幻聴が聞こえた気がした。
階段はまだ上へ続いている。
佐倉 光
部屋の前にいるけど、その横を更に上に向かう階段がある、つまり分岐してるってことかしら。
KP
階段が部屋の中にあり、階段を上がると直接次の部屋に出る作りですね。
で、階段は更に上へ続いている。
で、階段は更に上へ続いている。
佐倉 光
では更に階段に足をかけて上へ。
どうせなら最上段まで連れて行ってくれてもいいのにな?
どうせなら最上段まで連れて行ってくれてもいいのにな?
KP
階段を上がっていくと、実に様々な「喜び」の姿が示された。
妙なる音楽。移り変わる躍動。
無限の色を湛える水晶洞の内部。
美しい生き物たちの奏でる寸劇……
それぞれ異なった種類の楽しみが、あなた達を歓迎する。
妙なる音楽。移り変わる躍動。
無限の色を湛える水晶洞の内部。
美しい生き物たちの奏でる寸劇……
それぞれ異なった種類の楽しみが、あなた達を歓迎する。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
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「おおー。足を止めてみられるようにあえて階段なんだなこれ」
美しいもの、楽しいもの、わくわくするもの、体の奥底に響く律動、
ひとつひとつを楽しみながらのぼる。
美しいもの、楽しいもの、わくわくするもの、体の奥底に響く律動、
ひとつひとつを楽しみながらのぼる。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「とはいえ、毎日ここを登りたくはないかも」
まあ、ただの人間だった頃より体力はあるんだけど。
まあ、ただの人間だった頃より体力はあるんだけど。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
(そういうことだな。
王はどうしてるんだろうな、専用エレベーターとかありそう)
王はどうしてるんだろうな、専用エレベーターとかありそう)
KP
「魚だ!
……なんだぁ、作りものかぁ」
宝石で作られた動物たちの像が並ぶ森で、ナガグツがアクアマリンの海に魚を見つけていた。
……なんだぁ、作りものかぁ」
宝石で作られた動物たちの像が並ぶ森で、ナガグツがアクアマリンの海に魚を見つけていた。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
(さっきのやつのせいで食べ物に見えてきた)
漂う香の匂いがちょっとスパイシーなせいで、宝石に囲まれて牧志がそわそわしている。
漂う香の匂いがちょっとスパイシーなせいで、宝石に囲まれて牧志がそわそわしている。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_egao.png)
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「今までのパターンで考えるなら、あれきっと魚の味がするんだろうなぁ」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
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(ああー、だろうな。
同じ石だけど、あっちのトカゲの背中のは違う味がするんだろうな)
同じ石だけど、あっちのトカゲの背中のは違う味がするんだろうな)
KP
あなた達が部屋を潜り抜けていくと、周囲の風景はいよいよ輝かしさを、神秘的な様相を増していく。
二人とも、人間だった時の【POW】×5で判定。
二人とも、人間だった時の【POW】×5で判定。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
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1d100 60 【POW】 Sasa 1d100→ 6→成功
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_egao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_egao.png)
1d100 75 【POW】 Sasa 1d100→ 7→成功
KP
ああ、確かにここはいい場所かもしれない。
あなた達はそう思っただけで、完全に足を止めてここに留まってしまいたいと思うことはなかった。
やがて三十番目の部屋に辿り着くが、この世ならぬ美しいきらめきに取り囲まれたその部屋に、王の姿はなかった。
曰く、一般の客人が入れるのは、ここまでなのだという。
そこからは王と、王に認められた客人のための部屋だ。
ここまででこんなに楽しいのだから、その先はどんなに素晴らしいのだろうと、あなたは好奇心が疼くかもしれない。
あなた達はそう思っただけで、完全に足を止めてここに留まってしまいたいと思うことはなかった。
やがて三十番目の部屋に辿り着くが、この世ならぬ美しいきらめきに取り囲まれたその部屋に、王の姿はなかった。
曰く、一般の客人が入れるのは、ここまでなのだという。
そこからは王と、王に認められた客人のための部屋だ。
ここまででこんなに楽しいのだから、その先はどんなに素晴らしいのだろうと、あなたは好奇心が疼くかもしれない。
KP
「ありゃ、王いないな、村の方かな?」
ひょこりと顔を出してナガグツが言う、
ひょこりと顔を出してナガグツが言う、
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「ここまで登ってきて不在かよー。
城の人間は王がいるかどうかも知らないのか?」
上に興味がなくもないが、おとなしく降りるか……面倒だな。
城の人間は王がいるかどうかも知らないのか?」
上に興味がなくもないが、おとなしく降りるか……面倒だな。
KP
「暢気だからなぁ、この街の人達。
時間がないんだから、焦る必要もないしさ。
いなかったらいなかったで、楽しい物見られてよかったーって感じなんじゃない?」
ナガグツはちょこんと反対側の絨毯に乗る。
と、絨毯は彼を乗せて下へと動いていく。
時間がないんだから、焦る必要もないしさ。
いなかったらいなかったで、楽しい物見られてよかったーって感じなんじゃない?」
ナガグツはちょこんと反対側の絨毯に乗る。
と、絨毯は彼を乗せて下へと動いていく。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
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(まあ、確かにいい物見たけど。
時間がなければ徒労もないし、無駄足だったって腹を立てることもないか、独特なノリだな)
時間がなければ徒労もないし、無駄足だったって腹を立てることもないか、独特なノリだな)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
「ここのテンポ合わねー」
言いながらナガグツを追う。
どんなに楽しい物があろうと、数日で飽きてしまいそうだと思った。
働きかけることのできない世界の何が楽しいんだ。
言いながらナガグツを追う。
どんなに楽しい物があろうと、数日で飽きてしまいそうだと思った。
働きかけることのできない世界の何が楽しいんだ。
KP
喜びが集められた宮殿を出て、今度は通りを東へ向かう。
市場を右手に、住宅街を左手に眺めながら猫を追って道を行けば、やがて象牙色の石でできた東門に辿り着く。
市場を右手に、住宅街を左手に眺めながら猫を追って道を行けば、やがて象牙色の石でできた東門に辿り着く。
KP
「この先に村があるんだ」
猫はそう言って、開かれた門を抜ける。
猫はそう言って、開かれた門を抜ける。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「どこからどこまでが王が作った場所なんだ?
村ってのが王の出身地だったりするのかな」
門をくぐり、更に後を追う。
村ってのが王の出身地だったりするのかな」
門をくぐり、更に後を追う。
KP
「この谷全部だって聞いたな、おいら」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
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(えっ、あの街だけじゃなくて、ここら辺全部ってことか!?
というか、谷なんだなここ?)
牧志が腰を捻って辺りを見回した。
というか、谷なんだなここ?)
牧志が腰を捻って辺りを見回した。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「その人、ここ作るのに一体何日、何年かけたんだろうな。
強靱な精神力持ってても相当だぜ……」
そういえば、牧志に俺の世界を託したことがあったな。
あの時の俺も相当キてたけど、その時は多分魔術とかいろいろこねくり回したと思う。
強靱な精神力持ってても相当だぜ……」
そういえば、牧志に俺の世界を託したことがあったな。
あの時の俺も相当キてたけど、その時は多分魔術とかいろいろこねくり回したと思う。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
(途方もないよな。
もはや執念だったんじゃないかって気がする)
もはや執念だったんじゃないかって気がする)
KP
セレファイスのきらびやかな東門を抜け、道を辿る。
素朴な道標が記された道を辿るごとに、輝かしいものから穏やかなものへと、辺りの雰囲気が変わっていく。
石畳は輝く縞瑪瑙から、少し古ぼけた灰色の石に変わっていた。
素朴な道標が記された道を辿るごとに、輝かしいものから穏やかなものへと、辺りの雰囲気が変わっていく。
石畳は輝く縞瑪瑙から、少し古ぼけた灰色の石に変わっていた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「ここは随分質素だな」
『支配地』として作られたのか?
いや、そんなもの理想の塊には必要ないものな。
『支配地』として作られたのか?
いや、そんなもの理想の塊には必要ないものな。
KP
「王の懐かしい場所はこういう所なんだってさ。
あ、見えてきた」
あ、見えてきた」
KP
遠くから、重々しい鐘の音が響いてきた。
どこからか、小さな漁船の鳴らす、かすかな汽笛の音が聞こえる。
道の向こうに見えてきたのは、人々が魚とりをして暮らす、穏やかな村だった。
その一角に、ノルマン様式の石造りの小さな僧院が立っており、傍らには墓地。
鐘の音はそこから響いているようだ。
小高い丘の上に、領主のものであろうかと思わせる、ゴシック風の邸宅がひとつ。
どこからか、小さな漁船の鳴らす、かすかな汽笛の音が聞こえる。
道の向こうに見えてきたのは、人々が魚とりをして暮らす、穏やかな村だった。
その一角に、ノルマン様式の石造りの小さな僧院が立っており、傍らには墓地。
鐘の音はそこから響いているようだ。
小高い丘の上に、領主のものであろうかと思わせる、ゴシック風の邸宅がひとつ。
KP
ここで〈歴史〉〈考古学〉または【知識】/2で判定。同一情報。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
1d100 47 【知識】/2 Sasa 1d100→ 71→失敗
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
1d100 79 〈歴史〉 Sasa 1d100→ 70→成功
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「ここは随分リアルっぽい気がする」
詳しくはよく分からないが、雰囲気がそんな感じだ。
鐘の音や漁船の音がなんとなく現実を感じさせて懐かしい気分になる。
詳しくはよく分からないが、雰囲気がそんな感じだ。
鐘の音や漁船の音がなんとなく現実を感じさせて懐かしい気分になる。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
(普通にありそうだもんな、こういう所)
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
(夢っぽくない。
あの月面より、よっぽど現実みたいだ)
あの月面より、よっぽど現実みたいだ)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「そういや、変化がない場所なのに、あるんだな、墓地。
新しい死人は出ないんだろうに」
新しい死人は出ないんだろうに」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
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(そういえば、そうだな。
懐かしい場所って話だし、そういう風景として作ったのかな)
懐かしい場所って話だし、そういう風景として作ったのかな)
KP
僧院に翻る旗も真新しくはなく、静かに古びていた。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
(あれ、あの旗)
牧志がその意匠に目をとめた。
牧志がその意匠に目をとめた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「どうかしたのか?」
視線を追う。
視線を追う。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
(ああ。あの旗、どこかで見たことあるなって思ってたんだ。
本かネットだったと思うけど)
牧志は指で、僧院に翻る旗を指す。
本かネットだったと思うけど)
牧志は指で、僧院に翻る旗を指す。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
(聖ピランの旗だ。確か……)
牧志曰く、ある守護聖人の旗であるその旗は、イングランドのある地方の象徴としても用いられている旗らしい。
コーンウォール。あるいは、ケルノウ。そう呼ばれる南西の半島。
牧志曰く、ある守護聖人の旗であるその旗は、イングランドのある地方の象徴としても用いられている旗らしい。
コーンウォール。あるいは、ケルノウ。そう呼ばれる南西の半島。
KP
「ああそうそう。ニューコーンウォールって呼ばれてたよ、ここ」
地名を聞いてナガグツが返す。
地名を聞いてナガグツが返す。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「やっぱここは現実の風景なのか。だから墓もあるんだな。
あんな荘厳な城を作っててもやっぱり、捨てきれないものなのか」
あんな荘厳な城を作っててもやっぱり、捨てきれないものなのか」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
「俺に帰りたい場所なんてずっとなかったのに、今はずるむけ荘に帰りたいと思うよ」
帰りたいから作るか、といえば、そうはしないけれど。
帰りたいから作るか、といえば、そうはしないけれど。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
(はは……、名前聞いたら思い出しちゃったな。
ずっとこんな気分なのかもしれないな、王様は)
牧志は力なく呟いた。
ずっとこんな気分なのかもしれないな、王様は)
牧志は力なく呟いた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「尚更地球がどうなったなんて言えねぇな。歴史でも語るか」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
(そうしよう。滅んだなんて言えないよ)
KP
辺りにはただただ、穏やかな漁村の風景が広がっている。
人々は穏やかに酒を酌み交わし、たまに喧嘩をしてはすぐに仲直りをする。
しかしながら、その風景はどこか書き割りのようで、画一的で寂しかった。
人々は穏やかに酒を酌み交わし、たまに喧嘩をしてはすぐに仲直りをする。
しかしながら、その風景はどこか書き割りのようで、画一的で寂しかった。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「変わらないふるさとの風景に、変わらない幸せな街か。まさに夢だな。
こんなところにいると最初は良くても幸せ中毒になって、幸せって何だか分からなくなりそうだ」
人間って欲深なものだからな、基本。
……そのはずだ。
穏やかな波の音を聞きながら砂を踏む。
こんなところにいると最初は良くても幸せ中毒になって、幸せって何だか分からなくなりそうだ」
人間って欲深なものだからな、基本。
……そのはずだ。
穏やかな波の音を聞きながら砂を踏む。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
(幸せ中毒か……、もしかしたら、それで分からなくなっちゃって、しょぼくれてるのかもな。
全部夢、夢の中か……)
全部夢、夢の中か……)
KP
ここには人間しかいない。昔のイングランド風の、漁村風の人々ばかりだ。驚くほど人々の様子は似通っている。
KP
あなた達は村の入り口に着く。
酒場や波止場を訪れてみてもいいし、僧院や領主の邸宅に向かってもいいだろう。
王がいるとすれば、あの邸宅だろうと思われる。
猫はあなた達の傍で魚の匂いに鼻を鳴らし、村人たちに魚をせびっている。
酒場や波止場を訪れてみてもいいし、僧院や領主の邸宅に向かってもいいだろう。
王がいるとすれば、あの邸宅だろうと思われる。
猫はあなた達の傍で魚の匂いに鼻を鳴らし、村人たちに魚をせびっている。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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まず酒場に立ち寄ってみよう。
こういう時はまず酒場が鉄板……って。いや、酒飲んでいくわけにも行かないか。
波止場にちょっと立ち寄ってみよう。折角の海だ。
しばらく海の雰囲気を楽しんだら領主の館に足を向けよう。
こういう時はまず酒場が鉄板……って。いや、酒飲んでいくわけにも行かないか。
波止場にちょっと立ち寄ってみよう。折角の海だ。
しばらく海の雰囲気を楽しんだら領主の館に足を向けよう。
KP
「おや、こんにちは」
海岸で漁具を引き上げていた男性が、あなたの姿を見つける。
海岸で漁具を引き上げていた男性が、あなたの姿を見つける。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
牧志は一歩下がり、服で顔を隠す。
俯くことができないので、腰を曲げて顔を下げている。ちょっと苦しそうだ。
俯くことができないので、腰を曲げて顔を下げている。ちょっと苦しそうだ。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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そうか、牧志の外見はここでは目立つかも知れない。
早いところ王の所へ行こう。
早いところ王の所へ行こう。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
(ごめん。王の所へ行って人の姿に戻れたら、帰りに色々見てみよう)
牧志はすまなそうに囁いた。
牧志はすまなそうに囁いた。
KP
彼は髭を整えつつ振り返る。
「見ない人だね。旅行かい?」彼の表情は柔らかく、あなたたちを歓迎して笑う。
「見ない人だね。旅行かい?」彼の表情は柔らかく、あなたたちを歓迎して笑う。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
「はい、ここはいいところですね。平和で」
不変の絵の世界だろうと、腐肉がしみ込んで尚蠢く墓地都市や、恐ろしい怪物が闊歩する地よりは過ごしやすい素晴らしい場所なのは確かだ。
好きに出入りできるなら旅行者には良い場所だな。
不変の絵の世界だろうと、腐肉がしみ込んで尚蠢く墓地都市や、恐ろしい怪物が闊歩する地よりは過ごしやすい素晴らしい場所なのは確かだ。
好きに出入りできるなら旅行者には良い場所だな。
KP
「そうだろう、そうだろう。
何もない所だが、ゆっくりしていくといい。
ああ、宿がないから、僧院にでも世話になってはどうかな」
頷く彼の眼には、故郷への誇りが滲んでいた。
何もない所だが、ゆっくりしていくといい。
ああ、宿がないから、僧院にでも世話になってはどうかな」
頷く彼の眼には、故郷への誇りが滲んでいた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「なるほど、宿を貸していただけるんですね。ありがとうございます」
KP
「いいよいいよ。不便な所ですまないね、旅行客もあまり来ないものだから。楽しんで」
KP
領主の館は、この村を静かに見下ろす位置にある。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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領主の館へ向かう。
KP
ナガグツはよく太った魚を咥えて、こちらへついてくる。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
(不便な所……、か。
あの人達は知ってるのかな、ここが夢の中の谷で、すぐ向こうに宝石の街があるって)
その場を離れてから、牧志が呟いた。
あの人達は知ってるのかな、ここが夢の中の谷で、すぐ向こうに宝石の街があるって)
その場を離れてから、牧志が呟いた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「この町の人は、変化を知らずに暮らしているのかも知れないな」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
(変化を知らないのかもしれない……、か。
確かに、そうかもしれないな。
例えば外に出るってことも、変化なのかもしれない)
確かに、そうかもしれないな。
例えば外に出るってことも、変化なのかもしれない)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「今までのパターンだと、チェックポイントだったら話がすぐ通じるだろうし、
そうじゃなかったら想い出話して図書館で情報収集するか」
そうじゃなかったら想い出話して図書館で情報収集するか」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
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「折角稼いだし、ぱーっとメシ食っていい宿で寝たいな」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
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(ああ、いいな。温泉とかあるのかな? ここ。
あっちの街だったら雰囲気的に湯船じゃなくて、大きな蒸し風呂とかだったりして)
あっちの街だったら雰囲気的に湯船じゃなくて、大きな蒸し風呂とかだったりして)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_warai.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_warai.png)
「風呂か! いいな、久しく入ってない気がする!」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
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(だろ。
発想渋いかもしれないけど、いい宿っていうと温泉が浮かぶ)
発想渋いかもしれないけど、いい宿っていうと温泉が浮かぶ)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_egao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_egao.png)
「温泉か。前に温泉旅行に行ったときは大変だったな」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
(あの時は……、大変だったな。
まさか、地元にそんな因縁があったなんて知らなかった。
佐倉さんと浩司のおかげで、助かったよ。
……俺の地元も、先輩の地元も、もうないんだな)
まさか、地元にそんな因縁があったなんて知らなかった。
佐倉さんと浩司のおかげで、助かったよ。
……俺の地元も、先輩の地元も、もうないんだな)
KP
小高い丘を上れば、領主の館はある。
そこから見下ろすと、この村があまり広くないことに気づく。
領主の館から見下ろせる範囲がこの村と海岸線の光景で埋まるように、村は作られている。
セレファイスにはなかった夕焼けの光が、僧院の屋根を染めている。
眼に涙を滲ませるような、眩くて暗い夕焼けの光だった。
そこから見下ろすと、この村があまり広くないことに気づく。
領主の館から見下ろせる範囲がこの村と海岸線の光景で埋まるように、村は作られている。
セレファイスにはなかった夕焼けの光が、僧院の屋根を染めている。
眼に涙を滲ませるような、眩くて暗い夕焼けの光だった。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「陽が落ちてる……やっぱ見る場所によって天体はあったりなかったりするのかもなぁ。
どこが境目なんだろう」
黄昏の中を歩く。
こんなに奇妙でも、住み慣れた世界を取り戻したいと、永遠に置いておきたいという気持ちは、理解はできるが、分からなかった。
俺が薄情者なだけかもしれない。
どこが境目なんだろう」
黄昏の中を歩く。
こんなに奇妙でも、住み慣れた世界を取り戻したいと、永遠に置いておきたいという気持ちは、理解はできるが、分からなかった。
俺が薄情者なだけかもしれない。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
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(夕焼けか……、)
牧志は沈んでゆく太陽を眺めながら、少し考える。
牧志は沈んでゆく太陽を眺めながら、少し考える。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
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(あ、あそこが境目だ)
牧志が指さしたのは、歩いてきた道がある方だ。
そちらを見ても、暗く落ちてゆく村の外の風景があるばかりのように見える。
牧志が指さしたのは、歩いてきた道がある方だ。
そちらを見ても、暗く落ちてゆく村の外の風景があるばかりのように見える。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「お、マジ?」
彼が示す方を見ようと目をこらす。
彼が示す方を見ようと目をこらす。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
(見づらいけど、途中から昼になってる場所が、ほんの少しある。
この村には夕焼けが来るようになってるんだ)
この村には夕焼けが来るようになってるんだ)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_egao.png)
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「へぇー。後で確かめてみよう」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「ここには昼夜って時間は存在するのかな?」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
(どうなんだろうな、
聞ける機会があったら、王様に聞いてみようかな)
聞ける機会があったら、王様に聞いてみようかな)
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
(……こうしてると何だか思い出しちゃうし、行こうか)
牧志は邸宅の方を向いた。木製の扉にはドアノッカーがある。
牧志は邸宅の方を向いた。木製の扉にはドアノッカーがある。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
「そうだな」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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ドアノッカーを掴んでノックをする。ゴンゴン
KP
ドアノッカーを鳴らせば、古めかしい服装の執事が扉を開けた。
「どのようなご用件でございましょうか」
「どのようなご用件でございましょうか」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「覚醒世界から参りました。
クラネス王にお話を伺いたいとお伝えいただけますか」
クラネス王にお話を伺いたいとお伝えいただけますか」
KP
「覚醒の世界から!」
執事は驚き、落ち着いた様相をはっと崩して喜んだ。
「なんと、それはそれは、稀有な!
もうこちらには、長らく覚醒の世界の旅人が訪れていないのでございます。
覚醒の世界に何か変化があったのでしょう、
こちらへ来る者は次第に減り、今では……、ああ、失礼致しました。
王は孤独に塞ぎ込んでおいでです、
是非とも、話し相手になって差し上げてくださいませ」
執事は驚き、落ち着いた様相をはっと崩して喜んだ。
「なんと、それはそれは、稀有な!
もうこちらには、長らく覚醒の世界の旅人が訪れていないのでございます。
覚醒の世界に何か変化があったのでしょう、
こちらへ来る者は次第に減り、今では……、ああ、失礼致しました。
王は孤独に塞ぎ込んでおいでです、
是非とも、話し相手になって差し上げてくださいませ」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「ああ……」
そういえば夢を見るような人がいなくなって随分と時間が経ったのだった。
そういえば夢を見るような人がいなくなって随分と時間が経ったのだった。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
「俺達にとってはほんの少ししかたっていないけど」
KP
執事はそう一礼し、あなた達を邸宅の中へと案内する。
ナガグツも追い払われたりすることはなく、堂々とあなた達と共に入室する。
ナガグツも追い払われたりすることはなく、堂々とあなた達と共に入室する。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「やっぱ猫って偉いんだな。
そういや前に夢がこっちに来たときも猫まみれになってたし。
よく寝てるからか? 猫」
ついてゆく。
そういや前に夢がこっちに来たときも猫まみれになってたし。
よく寝てるからか? 猫」
ついてゆく。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
(なるほど? 寝れば寝る程こっちで偉くなるか、ありそう)
KP
落ち着いた調度品や絵画に囲まれたゴシック風の邸宅は、ひとつひとつが精緻に作られた上等な品々でありながらも、それらを殊更にひけらかしてはいなかった。
今は焼失した絵画が飾られている。破損してしまった彫刻がある。
それらを穏やかな夕暮れの光が包み込み、どこか牧歌的な雰囲気を作り出していた。
あのセレファイスの宮殿とは対照的だった。
今は焼失した絵画が飾られている。破損してしまった彫刻がある。
それらを穏やかな夕暮れの光が包み込み、どこか牧歌的な雰囲気を作り出していた。
あのセレファイスの宮殿とは対照的だった。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「夢の中に美術館を作るのはいいな。
焼失したり破壊されたりスープぶっかけられたりせずにすむ」
焼失したり破壊されたりスープぶっかけられたりせずにすむ」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
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(確かに? 大事な本なんかの歴史的遺産も残しておけるわけか。
そう思うとすごい所だな、ドリームランドって)
そう思うとすごい所だな、ドリームランドって)
KP
あなた達は応接間に通される。
腰が動くようになったことで座れるようになった牧志は、あなたの横の席についた。
腰が動くようになったことで座れるようになった牧志は、あなたの横の席についた。
KP
「こちらをどうぞ」
メイドが銀の盆を持って現れ、あなたによい香りの紅茶を差し出す。
咲き誇る花々を描いた柄のポットには、蓋の把手に薔薇が形作られていた。
メイドが銀の盆を持って現れ、あなたによい香りの紅茶を差し出す。
咲き誇る花々を描いた柄のポットには、蓋の把手に薔薇が形作られていた。
KP
「そちらのお方は、何を口にされますか?」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
「あ、俺は何もなくて大丈夫です。さっき食べてきたので」
KP
「承知致しました」
KP
「王はすぐに参られます。こちらでお待ち下さいませ」
彼女はそう一礼して席を外す。
彼女はそう一礼して席を外す。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
紅茶には口を付ける。
今更、異世界の物を食べるのは嫌だ、なんて言っているような状況じゃないし。
今更、異世界の物を食べるのは嫌だ、なんて言っているような状況じゃないし。
KP
紅茶に口をつけると、ふわりと鼻に花の香りが抜けた。
茶葉の香りの延長線上にある、品の良い香りだ。
茶葉の香りの延長線上にある、品の良い香りだ。
KP
「やあ、今晩は、お客人。
覚醒の世界からいらっしゃったというのは、本当かね?」
やがて、ひとりの男性が姿を見せた。彼が王なのだろう。
彼は伸ばした髭を整え、どこか英国紳士然とした風貌をしている。
それでいて少し肩の力が抜けていて、人間味を感じさせる、
この田舎領主の館によく似合う人物だった。
彼はこちらに、うずうずとした期待に満ちた表情を向けている。やや早口で続けた。
覚醒の世界からいらっしゃったというのは、本当かね?」
やがて、ひとりの男性が姿を見せた。彼が王なのだろう。
彼は伸ばした髭を整え、どこか英国紳士然とした風貌をしている。
それでいて少し肩の力が抜けていて、人間味を感じさせる、
この田舎領主の館によく似合う人物だった。
彼はこちらに、うずうずとした期待に満ちた表情を向けている。やや早口で続けた。
KP
「もしや、もしやなのだが、君達がサクラさんかね」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
「はい、日本から来ました」
おおー、ファンタジーな領主様って感じだ。
おおー、ファンタジーな領主様って感じだ。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
半分予期していたことに、軽く声を上げる。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「ご存知なんですか? 私が佐倉ですけど」
KP
「先日、レディ・キティと名乗るご婦人がわたしを尋ねてきて、覚醒の世界から客人が来ると伝えていってね。
ああ、ああ、本当にか……。本当に君は、覚醒の世界から来たのか」
王は感動に天を振り仰ぎ、それから期待に満ちた目であなたを見る。
ああ、ああ、本当にか……。本当に君は、覚醒の世界から来たのか」
王は感動に天を振り仰ぎ、それから期待に満ちた目であなたを見る。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「キティ……? 子猫?」
知らない名前だな。
赤の女王の差し金か?
知らない名前だな。
赤の女王の差し金か?
KP
「君が構わなければ、覚醒の世界の話を、聞かせてくれないか。
わたしの覚醒の世界の肉体はもう喪われた。
覚醒の世界に帰りたいが、もはやそれは叶わない」
わたしの覚醒の世界の肉体はもう喪われた。
覚醒の世界に帰りたいが、もはやそれは叶わない」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「ああー、なるほど……」
魂だけがこの世界に来ている、ナガグツたちと同じか。
魂だけがこの世界に来ている、ナガグツたちと同じか。
KP
「隣の彼とはこちらで知り合ったのかい?
日本とはどのような場所なのだね。
ランドルフから名だけは聞いたが、わたしは訪れたことがないのだ」
王は前のめりにあなたに懇願する。
日本とはどのような場所なのだね。
ランドルフから名だけは聞いたが、わたしは訪れたことがないのだ」
王は前のめりにあなたに懇願する。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
「えっ、あ、はい、どこから話せば」
KP
「王。名乗りを忘れてございます」
KP
「あ、ああ、すまない。わたしはクラネスという。
ご存知のようだが、このオオス=ナルガイ一帯を治めている」
すっと横から現われた中年のメイドの鋭い突っ込みに、王は慌てて居住まいを正し一礼する。
ご存知のようだが、このオオス=ナルガイ一帯を治めている」
すっと横から現われた中年のメイドの鋭い突っ込みに、王は慌てて居住まいを正し一礼する。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「私は佐倉光、彼は……こんな姿になってしまっていますが、もとは人間です。
私の覚醒の世界での友人で、牧志浩太といいます。
よろしくお願いします」
挨拶をする。
私の覚醒の世界での友人で、牧志浩太といいます。
よろしくお願いします」
挨拶をする。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
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(初めまして、牧志浩太といいます。
あ、牧志が名字で、浩太が名前です。
佐倉さんの友人で、同じく日本から来ました)
牧志は腰を曲げて一礼する。
あ、牧志が名字で、浩太が名前です。
佐倉さんの友人で、同じく日本から来ました)
牧志は腰を曲げて一礼する。
KP
「そうだったか、それは失礼をした。
サクラさん、マキシさん、と呼んでよいかな。
よろしく頼む」
王は握手を交わすべく、手を差し出す。
サクラさん、マキシさん、と呼んでよいかな。
よろしく頼む」
王は握手を交わすべく、手を差し出す。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
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「はい。それで結構です」
手を差し出して握る。
ここの王ならあの都市にいるような不思議な生き物の事も知っているだろうし、牧志のことをとやかく言うまい。
手を差し出して握る。
ここの王ならあの都市にいるような不思議な生き物の事も知っているだろうし、牧志のことをとやかく言うまい。
KP
王はあなたと牧志と、穏やかな握手を交わす。
KP
「先程はすまなかった、気が逸ってしまってね。
そうだな……、日本から来た、と言ったね。
覚醒の世界のどこにある場所で、どんな暮らしを送っていたのか、聞いても構わないかな」
王は深く息を吸い、話を切り出す。
そうだな……、日本から来た、と言ったね。
覚醒の世界のどこにある場所で、どんな暮らしを送っていたのか、聞いても構わないかな」
王は深く息を吸い、話を切り出す。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「そうだな……クラネス様が覚醒の世界にいたのはいつ頃でしょう?」
彼がいつどこに生きていた人間なのかを訊いて、そこからどのくらい離れている場所で、どんな世界で……というのを話す。歴史は牧志の方が詳しいから、クラネス王が生きていた時代の日本の話、王が眠ってしまってからの現代の彼の国がどうなっているかなども語れるだろう。
彼がいつどこに生きていた人間なのかを訊いて、そこからどのくらい離れている場所で、どんな世界で……というのを話す。歴史は牧志の方が詳しいから、クラネス王が生きていた時代の日本の話、王が眠ってしまってからの現代の彼の国がどうなっているかなども語れるだろう。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「日本は東洋の島国です。中国はご存知ですか……」
KP
「ああ、知っているよ。
東の果ての、素晴らしい陶磁器の国だろう?
なんと、あれよりも東なのか……」
王はあなたの一言ごとに、驚嘆の声を漏らして話に聞き入る。
牧志がかつての日本と今の日本の話、
そして現代の英国がどうなっているかを語れば、王は夢の世界よりも夢のようだと呟いた。
東の果ての、素晴らしい陶磁器の国だろう?
なんと、あれよりも東なのか……」
王はあなたの一言ごとに、驚嘆の声を漏らして話に聞き入る。
牧志がかつての日本と今の日本の話、
そして現代の英国がどうなっているかを語れば、王は夢の世界よりも夢のようだと呟いた。
KP
クラネス王は裕福で壮健、聡明な人物でEDUも高いけど、ごく若い頃にドリームランドを発見し、それからずっと夢の世界の探求に夢中だったそうなので、覚醒の世界の知識はあまり幅広くないイメージで描写しています。>日本知らない
佐倉 光
はーい
KP
彼が覚醒の世界にいたのは19世紀の末、まだ青年の頃だった。
あの壮麗なるセレファイスは彼がごく若い頃に創り上げたもので、
それから彼はずっと、夢の世界の探求に夢中になってきたのだそうだ。
あの壮麗なるセレファイスは彼がごく若い頃に創り上げたもので、
それから彼はずっと、夢の世界の探求に夢中になってきたのだそうだ。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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夢は、夢に過ぎない。
という言葉は、ここにおいては意味を成さないだろう。
ここはある意味もうひとつの現実だ。
ただ、俺が住みたいのはここではない、というだけで。
という言葉は、ここにおいては意味を成さないだろう。
ここはある意味もうひとつの現実だ。
ただ、俺が住みたいのはここではない、というだけで。
KP
「わたしは覚醒の世界を忘れ、素晴らしい夢の世界を冒険し続けた。
南の果ての島にも行ったし、北の果てにも行った。
宇宙の彼方で、神の玉座を踏んだこともある。
楽しかったよ。同じく冒険家の旧友もいた。
薄情なことに、彼はいつしかこちらへ来なくなってしまったがね。
その末に覚醒の世界の肉体が死んでも、後悔はなかったんだ。
こちらの世界にこそわたしはいた。
……それが今になって、捨てたはずの故郷が懐かしくなってしまうとは、愚かなものだね」
彼は憂い気な溜息を膨らませ、ふうと吹いた。
南の果ての島にも行ったし、北の果てにも行った。
宇宙の彼方で、神の玉座を踏んだこともある。
楽しかったよ。同じく冒険家の旧友もいた。
薄情なことに、彼はいつしかこちらへ来なくなってしまったがね。
その末に覚醒の世界の肉体が死んでも、後悔はなかったんだ。
こちらの世界にこそわたしはいた。
……それが今になって、捨てたはずの故郷が懐かしくなってしまうとは、愚かなものだね」
彼は憂い気な溜息を膨らませ、ふうと吹いた。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
(えっ、宇宙の果ての神の玉座って、えっ)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
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「まさか、クソ……あいつが行こうとしていたあそこ?」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
「多分近づいたことはあります。よく無事で……」
KP
「君もあの場所に近づいたというのか。
そうか、君こそ無事でよかった」
そうか、君こそ無事でよかった」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「……ここがクラネス様のふるさとなんですね」
ここ、と、漁村を示すように振り向いた。
ここ、と、漁村を示すように振り向いた。
KP
「……ああ、そうだよ。ここが、我が故郷……、コーンウォール。
見ての通りの、半島の端の小さな村さ。
あの時は、なんてつまらない場所なのだろうと思っていたよ……。
いま、村はどうなっているのだろうね。
マキシさんが言うような自動車が通るようになったり、スマートフォンを皆が持っていたりするのかな。
それとも、わたしが知るこの村と、変わらぬままなのかな……」
見ての通りの、半島の端の小さな村さ。
あの時は、なんてつまらない場所なのだろうと思っていたよ……。
いま、村はどうなっているのだろうね。
マキシさんが言うような自動車が通るようになったり、スマートフォンを皆が持っていたりするのかな。
それとも、わたしが知るこの村と、変わらぬままなのかな……」
KP
彼はふとあなた達から視線を外し、窓の外を見やった。
夕暮れの太陽は、いまや西の果てに落ちようとしていた。
低い位置から射す黄金の光が、彼のまぶたに反射する。
探求を終えてしまったのだろう彼は、ひどく寂しげなただの人としてそこにいた。
夕暮れの太陽は、いまや西の果てに落ちようとしていた。
低い位置から射す黄金の光が、彼のまぶたに反射する。
探求を終えてしまったのだろう彼は、ひどく寂しげなただの人としてそこにいた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「すみません。多分そうなのではないかと思いますが、
さすがに海外の街の事情までは分からなくて」
これは嘘ではない。
さすがに海外の街の事情までは分からなくて」
これは嘘ではない。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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訊かれもしないのに現状を伝える必要はないだろう。
彼にとって、もはや関わりのないことなのだから。
彼にとって、もはや関わりのないことなのだから。
佐倉 光
もう帰れない場所だからなー。
それこそ感傷でしかない。
それこそ感傷でしかない。
KP
滅んだことを知ろうが知るまいが、王にとってはもう戻れない場所ですしね。
それなら思い出の中にあるままでもいい。
それなら思い出の中にあるままでもいい。
KP
「ああ、そうだね。
すまないね、話を聞くつもりが、わたしばかり語ってしまった。
君達の話を、もっと聞かせてくれるかい?」
すまないね、話を聞くつもりが、わたしばかり語ってしまった。
君達の話を、もっと聞かせてくれるかい?」
KP
それからあなた達は、まるで幼子のように目を輝かせて聞いてくる彼に、覚醒の世界の話を語る事になる。
故郷の話でも、何でもなかった日常の話でも、波乱に満ちていた日々の話でも、あなたの生業の話でも、それ以外の話でも。
彼は貪るように、二人の言葉に耳を傾ける。
故郷の話でも、何でもなかった日常の話でも、波乱に満ちていた日々の話でも、あなたの生業の話でも、それ以外の話でも。
彼は貪るように、二人の言葉に耳を傾ける。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_emi.png)
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何を語っても食いついてくれるし楽しそうに聞くので話すのも楽しい。
今はもうない、できれば取り戻したいものを口にしていると、忘れずにすむような気がして、求められるままに熱心に語った。
俺達はただ少し夢をみていて、目覚めればそこにいつもの現実があるのだと自分に錯覚させるかのように。
今はもうない、できれば取り戻したいものを口にしていると、忘れずにすむような気がして、求められるままに熱心に語った。
俺達はただ少し夢をみていて、目覚めればそこにいつもの現実があるのだと自分に錯覚させるかのように。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
そういえば最近似たようなことをしたなぁ。
あの人は結局、もう存在しない人だったんだろうか。
日本という名の異国の騎士を思い浮かべた。
あの人は結局、もう存在しない人だったんだろうか。
日本という名の異国の騎士を思い浮かべた。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_egao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_egao.png)
牧志もいつしか、楽しそうに語っていた。
遠い南の故郷のこと、雪の降りしきる地のこと、友達や先輩のこと、通っていた学校のこと。
相棒で友である隣の人と、ひとりの幼子との暮らしのこと。
表情のない眼に涙が光って見えたのは、材質のせいで見間違えたのだろう。
遠い南の故郷のこと、雪の降りしきる地のこと、友達や先輩のこと、通っていた学校のこと。
相棒で友である隣の人と、ひとりの幼子との暮らしのこと。
表情のない眼に涙が光って見えたのは、材質のせいで見間違えたのだろう。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
牧志の話は時に胸を締め付けるような痛みを伴った。
なぁに。全て取り戻せば問題ないさ。全部元通りだ。
なぁに。全て取り戻せば問題ないさ。全部元通りだ。
KP
ふっと言葉が途切れたとき、窓の外はすっかり暗くなっていた。
王は満足そうに息を吸い、言う。
「ありがとう、すっかり盛り上がってしまったね。
こちらの都合ばかり言って申し訳なかった、
君達は、わたしに用があったのだろう?
話を聞かせてくれた礼だ、ぜひとも叶えたい」
王は満足そうに息を吸い、言う。
「ありがとう、すっかり盛り上がってしまったね。
こちらの都合ばかり言って申し訳なかった、
君達は、わたしに用があったのだろう?
話を聞かせてくれた礼だ、ぜひとも叶えたい」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「用か……
私たちはこのメモを見て来たんですけど」
いつの間にか握っていた、「クラネス王に会え」という主旨が書かれたメモを見せる。
私たちはこのメモを見て来たんですけど」
いつの間にか握っていた、「クラネス王に会え」という主旨が書かれたメモを見せる。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「私たちがここに来ると言っていた人から、何か預かっていませんか?」
KP
「ああ、そうだ。
レディ・キティから、君に言伝られた贈り物があるんだった。
その……、かなり奇妙なものなのだが」
彼は首をひねりながら、あなた達を外に案内する。
レディ・キティから、君に言伝られた贈り物があるんだった。
その……、かなり奇妙なものなのだが」
彼は首をひねりながら、あなた達を外に案内する。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
案の定だ。例の本を取り出して手に持ったまま、王の後に続く。
KP
屋敷の外には、一体の彫像が置かれていた。
人ほどの大きさのそれは、怪物をかたどった石の彫像だ。
口を開けた人間の顔、肩には腕の代わりに一対の翼、鳥のような足には鉤爪。
あなたはそれを知っているかもしれない。ガーゴイルだ。
あなたのかつての生業では、異界の城郭内に居て、並ぶ彫像に紛れて動きだし襲い掛かってきたりした。
人ほどの大きさのそれは、怪物をかたどった石の彫像だ。
口を開けた人間の顔、肩には腕の代わりに一対の翼、鳥のような足には鉤爪。
あなたはそれを知っているかもしれない。ガーゴイルだ。
あなたのかつての生業では、異界の城郭内に居て、並ぶ彫像に紛れて動きだし襲い掛かってきたりした。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
思わず緊張する。
身構えて近づき、相手が動かないことを確認して、やっと体から力を抜く。
身構えて近づき、相手が動かないことを確認して、やっと体から力を抜く。
KP
「これはガーゴイルという。
教会の雨樋によく付けられる像でね、この口から水を吐くんだ。
伝統的なもので、水とともに罪を吐き出すともされている。
この奇妙な姿には、魔除けとしての意味もあるかもしれない」
教会の雨樋によく付けられる像でね、この口から水を吐くんだ。
伝統的なもので、水とともに罪を吐き出すともされている。
この奇妙な姿には、魔除けとしての意味もあるかもしれない」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
(あ、聞いた事あるな。
ガーゴイルの名前の由来は水のごぼごぼいう音で、本当は雨樋の機能がないものはそう呼ばないんだって)
ガーゴイルの名前の由来は水のごぼごぼいう音で、本当は雨樋の機能がないものはそう呼ばないんだって)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「へー、ネーミングの理由なんて初めて知ったな。
こいつら敵に回すと面倒なんだ。かてーし」
こいつら敵に回すと面倒なんだ。かてーし」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
(ああー、あるな。
弓と相性が悪すぎて困る、こいつら)
弓と相性が悪すぎて困る、こいつら)
佐倉 光
ガーゴイルが罪を吐くぅ!?
(ちらっと牧志を見る)
(ちらっと牧志を見る)
KP
牧志のお口が大変なことに……?
ここはとても意図しない整合性
ここはとても意図しない整合性
佐倉 光
絶対関係あるわけないんだけど。
KP
ないんだけどすごい整合性なんですよね。発端なんだもん。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
(……って、これが贈り物?
俺と同じくらいの大きさがあるし、重くて動かせそうには見えないんだけど、これ)
俺と同じくらいの大きさがあるし、重くて動かせそうには見えないんだけど、これ)
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「多分テイクアウトはできると思う。
それにしてもなんでガーゴイルなんだ。
罪を吐く、か」
牧志を見る。
それにしてもなんでガーゴイルなんだ。
罪を吐く、か」
牧志を見る。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
「俺の昔の本体である赤い宝石、罪を吐くガーゴイル、神の肉、幻影のバラ?
俺やっぱり神になれって言われている気がする。
バラはよくわかんねーけど」
言いながらガーゴイルに手を伸ばし、触れる。
今までに二つのものが贈られると同時に砕けている。きっとこれもそうだ。
俺やっぱり神になれって言われている気がする。
バラはよくわかんねーけど」
言いながらガーゴイルに手を伸ばし、触れる。
今までに二つのものが贈られると同時に砕けている。きっとこれもそうだ。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_ikari.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_ikari.png)
(罪を吐く……、だって)
王の言葉は解説と一緒に聞き流した牧志が、あなたにそう繰り返されて、ぎくりと腕を強張らせた。
指が、喉を絞めるように伸ばされる。
王の言葉は解説と一緒に聞き流した牧志が、あなたにそう繰り返されて、ぎくりと腕を強張らせた。
指が、喉を絞めるように伸ばされる。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
(大丈夫なのか……、これ。
いや、受け取らないと始まらない。分かってるんだ。
でも、また繰り返させるつもりじゃ、ないだろうな)
牧志は喉に手を伸ばし、硬い喉を割ろうとするかのように全力で握りしめる。
ぎりぎりと音を立てながら、あなたの手が彫像に触れるのを待った。
いや、受け取らないと始まらない。分かってるんだ。
でも、また繰り返させるつもりじゃ、ないだろうな)
牧志は喉に手を伸ばし、硬い喉を割ろうとするかのように全力で握りしめる。
ぎりぎりと音を立てながら、あなたの手が彫像に触れるのを待った。
KP
手が触れたそのとき、彫像は大きく翼を撓ませて身じろぎした。
それは牙の生え揃った口を大きく広げると、あなたに向かって飛びかかってきた!
それは牙の生え揃った口を大きく広げると、あなたに向かって飛びかかってきた!
佐倉 光
おっ、気を緩めて《肉体の保護》かけてないときに!
KP
街なかでしたからね
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
武器を呼び出して応戦しよう!
弓だとリロードが発生するから日本刀かそれに類するサーベル!
壊していいのか? これ。
弓だとリロードが発生するから日本刀かそれに類するサーベル!
壊していいのか? これ。
KP
距離が近い。
応戦しようと武器を呼ぶよりも、彫像の口があなたに触れる方が速かった。
彫像はあなたに触れると、あの薔薇が砕けたように、すうっと消えてしまった。
あなたは何となく、それを「受け取ったのだ」と感じた。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》。
応戦しようと武器を呼ぶよりも、彫像の口があなたに触れる方が速かった。
彫像はあなたに触れると、あの薔薇が砕けたように、すうっと消えてしまった。
あなたは何となく、それを「受け取ったのだ」と感じた。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》。
KP
同時に、手にしていた『フランケンシュタイン』の本が一瞬発光する。
佐倉 光
1d100 34 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 25→成功
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
「紛らわしいなぁ。脅かすなよ!」
ちょっと、びっくりした。
ちょっと、びっくりした。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
本の表紙を見る。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_bisyou.png)
見ると、表紙のイラストの[顔]の部分が牧志の顔に変化している。
生き生きとした彼の眼があなたを見つめて、長く見ていない彼の表情で笑っている。
生き生きとした彼の眼があなたを見つめて、長く見ていない彼の表情で笑っている。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「牧志!?」
この表紙、牧志だったのか!?
この表紙、牧志だったのか!?
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
牧志の方を見る。どう変化したんだ!? 人間に戻ったのか?
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
「えっ、俺になった? 佐倉さん? 俺、どうなった?」
真っ先に目に飛び込んでくるのは驚いた牧志の顔で、耳に飛び込むのは聞き慣れた声。
そこには長く見ていなかった、生きて動く牧志の顔があった。
真っ先に目に飛び込んでくるのは驚いた牧志の顔で、耳に飛び込むのは聞き慣れた声。
そこには長く見ていなかった、生きて動く牧志の顔があった。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_aseri.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_aseri.png)
「……!」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
「動いてる!?」
思わず顔をぺたぺた触る。
思わず顔をぺたぺた触る。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
「うわっぷ、ああ、佐倉さん! 触られてるのが分かる! 俺の顔が生きてる!」
ぺたぺたと触れられて牧志は驚きに叫ぶ。くすぐったそうに頬が、まぶたが動く。
ぺたぺたと触れられて牧志は驚きに叫ぶ。くすぐったそうに頬が、まぶたが動く。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
胸の辺りでキーキーと鳴く声がした。胃袋も動きだしているのだ。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
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首から下は? 胴体はどうなっているんだろう。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
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そして首から下に視線を移すと……、
拍動する赤い石とコンニチワした。
牧志の身体は、生きた人間の肌になっていた。
しかしその胸部、心臓の周囲だけが、穴を開けられたように変わらず透き通っている。
その中で握り拳ほどの大きさの透き通った赤い石が、赤い痣を絡ませながら、心臓のリズムで絶えず拍動していた。
拍動する赤い石とコンニチワした。
牧志の身体は、生きた人間の肌になっていた。
しかしその胸部、心臓の周囲だけが、穴を開けられたように変わらず透き通っている。
その中で握り拳ほどの大きさの透き通った赤い石が、赤い痣を絡ませながら、心臓のリズムで絶えず拍動していた。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
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首から下は、異様な形に変化していた。
せっかく取り戻した腕はなくなり、代わりに肉色をした一対の翼。
人間の足部分が大きく伸び、大腿部が胴体の中に消えて鳥に似た逆関節めいた形を描く。
長く伸びた足の指に、鋭い鉤爪が生える。
それは、肉の色をしていることを除けば、あの彫像によく似た姿だった。
せっかく取り戻した腕はなくなり、代わりに肉色をした一対の翼。
人間の足部分が大きく伸び、大腿部が胴体の中に消えて鳥に似た逆関節めいた形を描く。
長く伸びた足の指に、鋭い鉤爪が生える。
それは、肉の色をしていることを除けば、あの彫像によく似た姿だった。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
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そこまで見ると、分かることがもう一つ。
牧志の人の形をした口の奥に、臼歯の代わりに鋭い牙が見えた。
牧志の人の形をした口の奥に、臼歯の代わりに鋭い牙が見えた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「なるほどこう来たか。『フランケンシュタインの怪物』かー。なるほどなー。
うーーーん。フェイント予想してたけど、ちょっと予想外」
頭を抱えてため息をついた。
うーーーん。フェイント予想してたけど、ちょっと予想外」
頭を抱えてため息をついた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「どう解釈すべきかな、これは……」
わからん。本気で分からん。
わからん。本気で分からん。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「最初は『俺』の従者で、だんだん人間に近づいて、それからガーゴイル」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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ここからさらに変異して牧志ではなくなってしまうのは……やめてほしいぞ。
多分俺、盛大にへこむ。
そうなったら、フランケンシュタインと同じ末路なのかもしれない。
多分俺、盛大にへこむ。
そうなったら、フランケンシュタインと同じ末路なのかもしれない。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
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「えっ、俺どうなってるんだ?
声が出てるし、体温を感じるし生きてると思ったんだけど、そういえば腕が変な感じがするな?」
牧志は混乱して翼を羽ばたかせた。
尖った羽毛は石のそれではなく生きた羽だったが、鳥のそれよりも凶暴な棘を備えている。
それが風を打ち、あなたの髪を揺らす。
声が出てるし、体温を感じるし生きてると思ったんだけど、そういえば腕が変な感じがするな?」
牧志は混乱して翼を羽ばたかせた。
尖った羽毛は石のそれではなく生きた羽だったが、鳥のそれよりも凶暴な棘を備えている。
それが風を打ち、あなたの髪を揺らす。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
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持ってる鏡で姿を見せてやる。
クラネス王は特に動揺とかしていない?
クラネス王は特に動揺とかしていない?
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
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「うわ」牧志は自分の姿を目の当たりにし、声を上げた。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
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「えっ、吐かないよな、罪を吐いて『神』になったりしないよな、俺……?」
牧志は首に手を伸ばそうとして、羽毛で顎をモフモフした。
その胸で、赤い石の心臓が止まることなく拍動している。
牧志は首に手を伸ばそうとして、羽毛で顎をモフモフした。
その胸で、赤い石の心臓が止まることなく拍動している。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
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「心臓見えてるの落ち着かない」
KP
「これはまた、大きく姿を変えたものだね。
マキシさんがそういう生き物だという訳ではないのなら、これがレディ・キティの贈り物ということかな」
王はあまり動揺していなかった。不思議そうに顎髭を撫でる。
マキシさんがそういう生き物だという訳ではないのなら、これがレディ・キティの贈り物ということかな」
王はあまり動揺していなかった。不思議そうに顎髭を撫でる。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_hukigen.png)
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「俺が拒否したからって、牧志をもう一度変異させようとしてるんじゃないだろうな!?」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
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「そんなこと言われても困るな」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「まあ……中身は牧志のままみたいだし、良かったけど」
赤い石、ティルヒアで貰ったヤツと似ている?
赤い石、ティルヒアで貰ったヤツと似ている?
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
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「一応、俺はちゃんと牧志のつもりだよ」
牧志は彼の声で言うと、逆関節の脚で地面を掴んであなたに近寄り、翼でモフモフとあなたの腕を撫でた。
牧志は彼の声で言うと、逆関節の脚で地面を掴んであなたに近寄り、翼でモフモフとあなたの腕を撫でた。
KP
拍動する赤い石は、あの石に似ているような気もする。
湛えている色は、どろりとした血のような赤だ。
湛えている色は、どろりとした血のような赤だ。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
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「今まで受け取ったものが全部、牧志の体になっている?
いや、そういえば、照野さんからもらったヤツだけは毛色が違うな。
他のは全部粉々になってすぐなくなったけど、あれは箱に入ったまま……」
ピックスを取り出してみる。
中身はまだあるのだろうか。
いや、そういえば、照野さんからもらったヤツだけは毛色が違うな。
他のは全部粉々になってすぐなくなったけど、あれは箱に入ったまま……」
ピックスを取り出してみる。
中身はまだあるのだろうか。
KP
その中には変わらず、小さなパンの欠片が入っている。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「とすると、モノと変化には関連性がないのかな。
確か腕が肉になったの、これ貰ったときだし。
つーか、俺じゃなくて牧志が変わるのも意味が分からないな」
パンを食べてみることも考えたが……
そのまま蓋を閉めて背嚢に戻す。
確か腕が肉になったの、これ貰ったときだし。
つーか、俺じゃなくて牧志が変わるのも意味が分からないな」
パンを食べてみることも考えたが……
そのまま蓋を閉めて背嚢に戻す。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「もしかしたら、まだまだ先は長いのかも知れない。
何が起きてるのか全く分かんねーのは気に入らないけど」
何が起きてるのか全く分かんねーのは気に入らないけど」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
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「本当に思惑が分からないんだよな、俺をこうして何がしたいんだ?
今まで集めた物、薔薇、罪を吐くっていうガーゴイル、神の肉体の入れ物のピックス、それから『神』の昔の依代。
それだけ見れば、佐倉さんを神にしたいのかって思えるけど、じゃあ俺が何なのか全然分からないし」
今まで集めた物、薔薇、罪を吐くっていうガーゴイル、神の肉体の入れ物のピックス、それから『神』の昔の依代。
それだけ見れば、佐倉さんを神にしたいのかって思えるけど、じゃあ俺が何なのか全然分からないし」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「とりあえず生き物には戻ったように見えるな。
今のところはそれでヨシとするしかないか」
今のところはそれでヨシとするしかないか」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kushou.png)
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「……まあ、とりあえず声は出るようになったしな。
それに、この感じなら石じゃないものが食べられそうな気もする。
手足は一進一退だけど」
牧志は困ったように翼を羽ばたかせた。
それに、この感じなら石じゃないものが食べられそうな気もする。
手足は一進一退だけど」
牧志は困ったように翼を羽ばたかせた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「今までの流れだとここでしなきゃいけないことはこれで終わりか」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_magao.png)
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「そうなるな。クラネス王、他に何か言伝を聞いていませんか?
次はどこへ行け、とか」
次はどこへ行け、とか」
KP
「いや、言伝はこれで以上なのだ」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
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「へ。何もないのか。
いや、どうしろって言うんだよ、赤の女王。
まさか、レディ・キティは別人で、ここじゃなかったってことはないよな?」
いや、どうしろって言うんだよ、赤の女王。
まさか、レディ・キティは別人で、ここじゃなかったってことはないよな?」
KP
牧志が戸惑って言った時。
不意にあなたはまた、あの、自身がどこにでも居て、どこにでも居ないかのような感覚を覚えた。
あなたの眼に眩い光が吹きつけた。
あなたは……、あなたは壮麗なる城の中に立っていた。
あなたは知っている、そこは神々の領域だ。あなたは一度、牧志の夢の中でそこを訪れた。
あなたは赤いドレスを纏い、悠然と玉座に座る。
ほっそりとした手で、毛皮を金色にきらめかせる美しい黒猫を撫でていた。
未知なるカダスの地で、あなたは神の雛を待っていた。
幻視は一瞬で薄れ、あなたは佐倉光の姿でクラネス王の邸宅の庭に立っていた。
不意にあなたはまた、あの、自身がどこにでも居て、どこにでも居ないかのような感覚を覚えた。
あなたの眼に眩い光が吹きつけた。
あなたは……、あなたは壮麗なる城の中に立っていた。
あなたは知っている、そこは神々の領域だ。あなたは一度、牧志の夢の中でそこを訪れた。
あなたは赤いドレスを纏い、悠然と玉座に座る。
ほっそりとした手で、毛皮を金色にきらめかせる美しい黒猫を撫でていた。
未知なるカダスの地で、あなたは神の雛を待っていた。
幻視は一瞬で薄れ、あなたは佐倉光の姿でクラネス王の邸宅の庭に立っていた。
佐倉 光
『思い出そうとする』を今やるのは可能ですか?
KP
可能。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「今、『赤の女王』の干渉を受けた気がする」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_hukigen.png)
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「……来い、って言われた気がする。
たぶんこの世界の……牧志がクソ蟲にやられた時に向かってた、あそこに」
天を指す。
たぶんこの世界の……牧志がクソ蟲にやられた時に向かってた、あそこに」
天を指す。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_hukigen.png)
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「俺がアイツだっていうなら……俺にもわかるはず」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「分かる筈なんだ……」
怖がっている場合じゃない。あいつが何をさせようとしていて、何が起きようとしているのか。
何も分からなければ、立ち向かえない。
思い出す。
正気度 を1消費、神の〈クトゥルフ神話〉で判定。
怖がっている場合じゃない。あいつが何をさせようとしていて、何が起きようとしているのか。
何も分からなければ、立ち向かえない。
思い出す。
正気度 を1消費、神の〈クトゥルフ神話〉で判定。
KP
OK。正気度 消費と判定を。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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SAN 34 → 33
1d100 99 〈クトゥルフ神話〉 Sasa 1d100→ 42→成功
1d100 99 〈クトゥルフ神話〉 Sasa 1d100→ 42→成功
KP
あなたは赤の女王の奥底へと潜ってゆく。
「佐倉光」を外れ、あなたは赤の女王となる。
あなたは赤いドレスを纏い、ほっそりとしたその手で、金色の黒猫を撫でていた。
そうしながら、ずっとずっと昔、自身が人間だったころのことをゆったりと回想していた。
あなたはそこから進化を求め続けて、人間を捨て、神へとなった。
しかしあなたは、停滞に嵌ってしまった。
この世界が停滞に過ぎない事を知り、そして神々のメッセンジャーへと成った。
自由のない神の魂とは停滞に過ぎず、あなたが求める進化ではなかった。
「佐倉光」を外れ、あなたは赤の女王となる。
あなたは赤いドレスを纏い、ほっそりとしたその手で、金色の黒猫を撫でていた。
そうしながら、ずっとずっと昔、自身が人間だったころのことをゆったりと回想していた。
あなたはそこから進化を求め続けて、人間を捨て、神へとなった。
しかしあなたは、停滞に嵌ってしまった。
この世界が停滞に過ぎない事を知り、そして神々のメッセンジャーへと成った。
自由のない神の魂とは停滞に過ぎず、あなたが求める進化ではなかった。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
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人間……だった?
この女も俺と同じ立場だった、ということか?
この女も俺と同じ立場だった、ということか?
KP
だからあなたは、やり直そうと思ったのだ。
絶えてしまった可能性を開き直すために、神はもう一度生まれなくてはならなかった。
だから、人間を神に変えた。
目的は忘れてしまったが、古くからつくりあげていた依代がいたので、それに手を伸ばして回収した。
そうしたら、別の人間が契約を奪って神となった。
あなたにとって、それはどちらでも構わないことだった。
あなたは神の雛を得て、目覚めさせるために無人の天国へと招いた。
絶えてしまった可能性を開き直すために、神はもう一度生まれなくてはならなかった。
だから、人間を神に変えた。
目的は忘れてしまったが、古くからつくりあげていた依代がいたので、それに手を伸ばして回収した。
そうしたら、別の人間が契約を奪って神となった。
あなたにとって、それはどちらでも構わないことだった。
あなたは神の雛を得て、目覚めさせるために無人の天国へと招いた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_hukigen.png)
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つまり……人間を混ぜて、自分を作り直そうとした。
変わりたいがために。
で、俺たちは不運にも巻き込まれたってわけだ。
変わりたいがために。
で、俺たちは不運にも巻き込まれたってわけだ。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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いや、幸運にも、か?
こんな事件に何も知らずに巻き込まれて、人に運命を握られるよりは全然マシだな。
こんな事件に何も知らずに巻き込まれて、人に運命を握られるよりは全然マシだな。
KP
世界をもう一度生むために、世界は滅ばなくてはならなかった。
だから世界に滅びの種を落とし、ニーオス・コルガイを惑わして人間を滅ぼさせた。
神の雛に人間の儚さと痛みを刻むため、神の雛を滅びゆく世界でさまよわせた。
そして、神の雛が旧き鍵を手に取り、世界の限界を超えたいと望むように仕向けた。
だから世界に滅びの種を落とし、ニーオス・コルガイを惑わして人間を滅ぼさせた。
神の雛に人間の儚さと痛みを刻むため、神の雛を滅びゆく世界でさまよわせた。
そして、神の雛が旧き鍵を手に取り、世界の限界を超えたいと望むように仕向けた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
「馬ッ鹿じゃねーのか?」
思わず口に出していた。
思わず口に出していた。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
「うわっ、佐倉さん!?」
牧志が驚いた。
牧志が驚いた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
思惑通りに進む神の雛が神になったとして、それは結局想定された枠組みを超えられないものが生まれるだけだろ?
そんなもんが欲しくて、ああだこうだと俺達にお膳立てしてるのか?
そんなもんが欲しくて、ああだこうだと俺達にお膳立てしてるのか?
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_hukigen.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_hukigen.png)
それとも。こんな状況をクソだと思った俺達が、世界の枠組みごとあの女を、今の『俺』そのものをぶっ飛ばすことを期待してんのか?
KP
あなたの上げた声をよそに、記憶は続く。
KP
そうして準備を整えたあなたは、平行世界から取ってきた世界のパーツを、あなたの領域である夢の中に振り撒いた。
神の象徴とともに。
神の雛が世界再生の道を辿り直して、真に神となるように。
神の雛はあなたの試練を乗り越えた。
まもなく神の雛はすべての力を得て、自由なる心を携えたまま、あなたの元へやってくるだろう。
その時あなたは、「彼女」の力を借りて、神の雛とともに新たなる世界を創るのだ。
旧き神はそれを、あなたにゆるしてくれた。
神の象徴とともに。
神の雛が世界再生の道を辿り直して、真に神となるように。
神の雛はあなたの試練を乗り越えた。
まもなく神の雛はすべての力を得て、自由なる心を携えたまま、あなたの元へやってくるだろう。
その時あなたは、「彼女」の力を借りて、神の雛とともに新たなる世界を創るのだ。
旧き神はそれを、あなたにゆるしてくれた。
KP
……赤の女王は、旧き神があなたにそれをゆるしてくれたことを、強く確信していた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
へー。今回は赦しを貰ってんだ。
世界を作ったからって、今度は智を取り上げられて氷室に閉じ込められることはない?
本当に?
今回は旧き鍵をどうやって得たっていうんだ。
世界を作ったからって、今度は智を取り上げられて氷室に閉じ込められることはない?
本当に?
今回は旧き鍵をどうやって得たっていうんだ。
KP
彼女の穏やかな回想からは、それ以上のことは分からなかった。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
「とりあえずあの女があちこちにばら撒いた世界のパーツと神の象徴を回収させて俺を神にしたがっているのは分かったし、
そもそもそのために世界滅ぼしたり牧志食ったりしてたのは分かった。
牧志がそんな風になってる理由は分かんねー」
そもそもそのために世界滅ぼしたり牧志食ったりしてたのは分かった。
牧志がそんな風になってる理由は分かんねー」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_odoroki.png)
「あ、ああ。帰ってきたのか、お帰り佐倉さん。
戻ってきてくれてよかった」
戻ってきてくれてよかった」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
「二人の神が新しい世界を作ろうとした話があったろ?
アレをもう一回やろうとしているんだ」
アレをもう一回やろうとしているんだ」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kiri.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kiri.png)
「もう一回って……、
まさか、そのために俺をあんなにして、地球を滅ぼした……、のか?
世界を作らせるためには、滅ぼさなきゃいけないから……?」
牧志の声に、沸々と怒りが宿った。
牧志は大きく息を吸い、その怒りを流そうとする。
まさか、そのために俺をあんなにして、地球を滅ぼした……、のか?
世界を作らせるためには、滅ぼさなきゃいけないから……?」
牧志の声に、沸々と怒りが宿った。
牧志は大きく息を吸い、その怒りを流そうとする。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
「……それって、ニーオス・コルガイがやろうとしてたことだよな。
あの時とは何が違うんだろう」
あの時とは何が違うんだろう」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
「今度は許可があると思ってんだよ、あの女は。
んで、育ちきった俺を王座で待ってる。
まったく、何が違うっていうんだろうな」
んで、育ちきった俺を王座で待ってる。
まったく、何が違うっていうんだろうな」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kiri.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_kiri.png)
「今度は許可があると思ってる、か。
勝算があるのか、単に『自分なら大丈夫』とでも思ってるのか」
勝算があるのか、単に『自分なら大丈夫』とでも思ってるのか」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
凍てついた洞窟の中に横たわるものを思い出した。
未来の扉の中で何がおかしいのか分からないような笑みを浮かべる自分を思い出した。
あれが俺の未来の姿ではないと、どうして言える。
未来の扉の中で何がおかしいのか分からないような笑みを浮かべる自分を思い出した。
あれが俺の未来の姿ではないと、どうして言える。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_hukigen.png)
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「俺はあんなのはごめんだぜ……」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「大体俺が神になったら牧志がガーゴイルになるって、なんなんだよ。
悪魔合体でもする気か?」
牧志と合体、なんて悪い冗談だな。
今までに何度かそうなりかけたこともあるけど、俺達はあくまで個として隣に立つことを選んできた。
当然今回だってそうだ。
悪魔合体でもする気か?」
牧志と合体、なんて悪い冗談だな。
今までに何度かそうなりかけたこともあるけど、俺達はあくまで個として隣に立つことを選んできた。
当然今回だってそうだ。
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
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「佐倉さん、前さ……、俺が頭脳みそにされた時。
同じように戻して返してくれるなら、自分の物に何かされても腹が立たないか、って話、したよな。
今思った。無理そうだ。しっかり腹が立ってる」
牧志は胸を両翼で押さえながら呟いた。
同じように戻して返してくれるなら、自分の物に何かされても腹が立たないか、って話、したよな。
今思った。無理そうだ。しっかり腹が立ってる」
牧志は胸を両翼で押さえながら呟いた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ase.png)
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「ああ。ハナっから俺達を香辛料か何か程度に考えてるヤツの思うとおりになりたくねぇ」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「ただ、地球の人間達はあいつに握られてんだよな。クソが」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
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「……佐倉さんを『神』になんてしたくない。
思う通りにだって動きたくない。
だっていうのに、相変わらず地球のみんなの運命はあいつに握られたままか……。
せめて、会った時に思いっきり問い詰めてやるしかないな。
言いたいことなら、山のようにあるんだ」
思う通りにだって動きたくない。
だっていうのに、相変わらず地球のみんなの運命はあいつに握られたままか……。
せめて、会った時に思いっきり問い詰めてやるしかないな。
言いたいことなら、山のようにあるんだ」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_metoji.png)
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「あー気分悪。折角久々に人間らしい気分になってたのに」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_ikari.png)
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「口直しと情報集めしようぜ」
牧志 浩太![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/cocoki_maki_turai.png)
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「賛成。
折角だからあいつ待たせてやろう。
地球のみんなが困らない程度に」
折角だからあいつ待たせてやろう。
地球のみんなが困らない程度に」
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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お。クラネス王がいるの忘れてた。
佐倉 光![](https://wolfcall.sakura.ne.jp/wptrpg/wp-content/uploads/coc_sakura_magao.png)
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「間違いなく受け取りました。ありがとうございます」
KP
王は穏やかに微笑んだ。
「わたしには事情が窺い知れないが、君達は、何やら大変なものを抱えているようだね。
何だか、少し言いづらくなってしまったな。
もし君達が構わないのであれば、ここに滞在して、覚醒の世界についての話をずっと聞かせてくれないか……と、言おうと思っていたんだ。
ここは見ての通り、平穏な場所だ。
ずっと、ずっと平穏であるように、わたしが創った場所だ。
君達もその背負ったものを降ろして、平穏に過ごすことができるだろう。
セレファイスには旅人も来る。
谷の中には、冒険心を満たせる場所もある。
よければ、どうかな」
王は穏やかに手を広げた。
その眼に悪意はなく、ただひとときの友人を思う心と、刻まれた孤独のあるばかりだった。
「わたしには事情が窺い知れないが、君達は、何やら大変なものを抱えているようだね。
何だか、少し言いづらくなってしまったな。
もし君達が構わないのであれば、ここに滞在して、覚醒の世界についての話をずっと聞かせてくれないか……と、言おうと思っていたんだ。
ここは見ての通り、平穏な場所だ。
ずっと、ずっと平穏であるように、わたしが創った場所だ。
君達もその背負ったものを降ろして、平穏に過ごすことができるだろう。
セレファイスには旅人も来る。
谷の中には、冒険心を満たせる場所もある。
よければ、どうかな」
王は穏やかに手を広げた。
その眼に悪意はなく、ただひとときの友人を思う心と、刻まれた孤独のあるばかりだった。
MIDNIGHT DEJAVO
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TRPGリプレイとかゲーム関連
コメント By.佐倉 光
穏やかな時を満喫する二人。
これが最後だから、なんてことにはならないように。
穏やかな時を満喫する二人。
これが最後だから、なんてことにはならないように。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」
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