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KP
「さくら、まきし、おか……、おおけが!?」
家の扉を開けると、眠そうなシローが出迎えた。
あなた達の様子を見てびっくりして、慌てて高い位置にある救急箱へ手を伸ばそうとする。
家の扉を開けると、眠そうなシローが出迎えた。
あなた達の様子を見てびっくりして、慌てて高い位置にある救急箱へ手を伸ばそうとする。
佐倉 光
「大丈夫、ちょっと開いて血が出ただけだから」
コンテナをテーブルに置く。
置いた、という感覚もなんだか頼りない。まるで夢の中を歩いているような心地だ。
コンテナをテーブルに置く。
置いた、という感覚もなんだか頼りない。まるで夢の中を歩いているような心地だ。
牧志 浩太
「あ、ああ大丈夫だから! 俺は怪我してないから、救急箱は自分で取るから!」
慌てて牧志が救急箱を回収に向かう。
慌てて牧志が救急箱を回収に向かう。
佐倉 光
「そうか、血は足りているかな。念のため治しておくか?」
手を見下ろして呟く。そういったこともとても簡単な、当たり前のことのような気がした。
少し魔力を込めてやれば再生など容易い。
自分の中で何かがぼろりと崩れ落ちた気がした。
手を見下ろして呟く。そういったこともとても簡単な、当たり前のことのような気がした。
少し魔力を込めてやれば再生など容易い。
自分の中で何かがぼろりと崩れ落ちた気がした。
牧志 浩太
「……佐倉さん」
牧志がふと、心細そうにあなたを呼んだ。
牧志がふと、心細そうにあなたを呼んだ。
牧志 浩太
「俺は大丈夫、血が足りない感じもしないし、怪我もないみたいだ。
昨日何があったのかは思い出せないし、さっきから耳鳴りはひどくなってきてるけど、それだけ。
佐倉さんこそ、大丈夫か?」
昨日何があったのかは思い出せないし、さっきから耳鳴りはひどくなってきてるけど、それだけ。
佐倉さんこそ、大丈夫か?」
佐倉 光
「……ああ、大丈夫」
話しかけられてふと、我に返ったような気がした。
話しかけられてふと、我に返ったような気がした。
牧志 浩太
「よかった」
彼はどこか、その言葉を信じきれないような様子で、心細そうに息をつく。
彼はどこか、その言葉を信じきれないような様子で、心細そうに息をつく。
佐倉 光
「通報されてもおかしくない格好なのに、ラッキーだったな。
さっさと着替えようぜ」
手を何度か握って開いて感覚を確かめ、胸元のお守りを握る。
何も問題はない。
さっさと着替えようぜ」
手を何度か握って開いて感覚を確かめ、胸元のお守りを握る。
何も問題はない。
牧志 浩太
「ああ、そうだな。シャワー浴びてくるよ」
彼は一度躊躇うように振り返り、あなたの顔を視界に引きずりながら、風呂場へ消える。
彼は一度躊躇うように振り返り、あなたの顔を視界に引きずりながら、風呂場へ消える。
KP
落ち着いた「佐倉光の日常」の空間に戻ってきたことにより、少しずつ掌の内側に人間の感覚が戻ってくる。
シローがパンのストックを探り、朝食の用意をしようとしているのが見えた。
シローがパンのストックを探り、朝食の用意をしようとしているのが見えた。
佐倉 光
クローゼットから新しい服を取って着る。
やっと帰ってきた。
そんな気がした。
しばらくそうしてから情報を纏める。
ミニパソコンに今まで起きたこと、思い出せる言動などを全て書き留める。
ネットの情報はスクリーンショットして全てを見渡せるようにする。
やっと帰ってきた。
そんな気がした。
しばらくそうしてから情報を纏める。
ミニパソコンに今まで起きたこと、思い出せる言動などを全て書き留める。
ネットの情報はスクリーンショットして全てを見渡せるようにする。
牧志 浩太
風呂から出てきた牧志は、そこに新しい服を着たあなたがいるのを見て、ほっと表情を緩めた。
牧志 浩太
「それは、今まで起きたこと?」
牧志は横から声をかけ、あなたが拒否しなければ、纏めた内容を一緒に見ようとする。
牧志は横から声をかけ、あなたが拒否しなければ、纏めた内容を一緒に見ようとする。
佐倉 光
「ああ、そう。俺が見た物全部」
佐倉 光
といっても、起点になっている『牧志が変異しかかっていたこと』は書いてないけどね。
佐倉 光
最終的にNPCと歩むことになるなら、やっぱり最終話あたりで牧志が変異した話もバレた方がいいのだろうかw
KP
最終話あたりでは(牧志が生き残っていたとしたら)割といろいろあるので、牧志が変異した話についてはその時次第ですね。
バレなくてもいろいろあるけど、最終話で一緒に歩むなら、確かに全部共有して歩いていけたら楽しいかもしれません。
※佐倉さんロストの危険もありますが、牧志ロストの危険も割とある話です
バレなくてもいろいろあるけど、最終話で一緒に歩むなら、確かに全部共有して歩いていけたら楽しいかもしれません。
※佐倉さんロストの危険もありますが、牧志ロストの危険も割とある話です
佐倉 光
牧志ロストの危機! 気をつけていかないとなぁ。
KP
第一話の出来事(平行世界のこと)も書いていますか?
佐倉 光
そこは一応関係しそうだから書いてる。
牧志 浩太
「……」
ミニPCの中に纏められた『全て』を、牧志はじっと睨む。
ここに何が起き、あなたがどうなったのか。
あなたが何であるのか。あなたが何になりかけたのか。
今のあなたが、どのような状態にあるのか。
牧志自身の身に何が起きたのか。
ミニPCの中に纏められた『全て』を、牧志はじっと睨む。
ここに何が起き、あなたがどうなったのか。
あなたが何であるのか。あなたが何になりかけたのか。
今のあなたが、どのような状態にあるのか。
牧志自身の身に何が起きたのか。
牧志 浩太
「あいつ……、別の世界の俺に、そんなことをした、のか。
それを、佐倉さんに止めさせて」
牧志は文章を追いながら、小さく呻いた。
拳がぎり、と微かに音を立てた。
怒りが外に溢れ出ないように、強く俯いて目元に皺を寄せていた。
それを、佐倉さんに止めさせて」
牧志は文章を追いながら、小さく呻いた。
拳がぎり、と微かに音を立てた。
怒りが外に溢れ出ないように、強く俯いて目元に皺を寄せていた。
牧志 浩太
「それに、取られるための世界、だって……。
……くそ、何だろうな、これ。
一番俺の意に添わないことばかり、させられてるような気がする。
いや、向こうの俺は騙されていたとはいえ、自分で決めたんだろうけどさ……、」
牧志は熱をもった息を、ふうと細く、長く吐く。煮え立つ感情を外へやり過ごそうとする息。
どうにか息を吐ききると、眉間を揉んで目を開いた。
……くそ、何だろうな、これ。
一番俺の意に添わないことばかり、させられてるような気がする。
いや、向こうの俺は騙されていたとはいえ、自分で決めたんだろうけどさ……、」
牧志は熱をもった息を、ふうと細く、長く吐く。煮え立つ感情を外へやり過ごそうとする息。
どうにか息を吐ききると、眉間を揉んで目を開いた。
佐倉 光
「……そうか。俺のことばかり考えていたけど、そういえばそうだな。
この異変、俺だけを狙った物に牧志が巻き込まれているんじゃなくて……」
それは、そうだろう。
最初にとられそうになったのは牧志なんだ。無関係なはずがなかった。
この異変、俺だけを狙った物に牧志が巻き込まれているんじゃなくて……」
それは、そうだろう。
最初にとられそうになったのは牧志なんだ。無関係なはずがなかった。
佐倉 光
「早速吸血鬼について最近騒ぎになっていたりしていないか、調べてみようと思って」
と、先ほどの検索結果のスクショを指す。
と、先ほどの検索結果のスクショを指す。
牧志 浩太
「あの妙な文章か。
賛成だ、あれだけ明らかに違和感があった。
何なんだろうな、あれ。
検索結果なのに、誰かに話しかけるような文章だった」
賛成だ、あれだけ明らかに違和感があった。
何なんだろうな、あれ。
検索結果なのに、誰かに話しかけるような文章だった」
佐倉 光
「誰かに……ああ」
そうか。あれは俺だ、と自然に思ってしまっていたな。
そうか。あれは俺だ、と自然に思ってしまっていたな。
牧志 浩太
「心当たり、あるのか?」
佐倉 光
「ああ……これ、あの、呪いの時に追い返したヤツの名前だろ」
佐倉 光
「これも『俺』。これは、俺へのメッセージだ」
牧志 浩太
「……トート。そうか、あいつ、そうだったな。
そうか、これは佐倉さんへの……『神の雛』への、メッセージなのか。
ああ。あの手紙、『あなたがた』って書いてあったんだよな。
複数形だ。
佐倉さんと……、俺のことなのかもしれない。
思惑通りになるのは癪だけど……、仕方ないな。
さっきから、耳鳴りが少しずつ強くなってきてるんだ。嫌な予感がする」
そうか、これは佐倉さんへの……『神の雛』への、メッセージなのか。
ああ。あの手紙、『あなたがた』って書いてあったんだよな。
複数形だ。
佐倉さんと……、俺のことなのかもしれない。
思惑通りになるのは癪だけど……、仕方ないな。
さっきから、耳鳴りが少しずつ強くなってきてるんだ。嫌な予感がする」
佐倉 光
「笛の音か。嫌な予感がする。『俺』はよく知っている気がする」
牧志 浩太
「ああ。横笛みたいな音なんだ。
気持ち悪い不協和音なのに、時々すごく気持ちいい音に聞こえる」
気持ち悪い不協和音なのに、時々すごく気持ちいい音に聞こえる」
佐倉 光
一度よく考えてみよう。その音について。笛の音について。
神の知識を探る。
神の知識を探る。
KP
〈クトゥルフ神話〉99%で判定。
また、正気度 1点を消費。
また、正気度 1点を消費。
佐倉 光
SAN 30 → 29
1d100 99 〈クトゥルフ神話〉知識 Sasa 1d100→ 75→成功
1d100 99 〈クトゥルフ神話〉知識 Sasa 1d100→ 75→成功
KP
不協和音のような横笛の音。
その言葉はあなたに、ぼんやりとした光景を思い起こさせる。
あなたには主人がいるのだ。
主人には魂がないがために、主人のための魂としてあなたが存在する。
世界の中心の途方もなくねじ曲がった宮廷では、主人の眠りを慰撫せんがため、さまざまな姿に歪められたものどもが、フルートの音に合わせて永遠に知性のない踊りを続けている。
フルートの音は、生き物の魂をその宮廷へと招く音だ。
招かれた魂はいずれ心を、形を、知性を何もかも忘れて、愚かしい永遠の踊りに加わる。
その時まで、永劫に宮廷の辺へ留まるだろう。
主人の名を、アザトースという。
その言葉はあなたに、ぼんやりとした光景を思い起こさせる。
あなたには主人がいるのだ。
主人には魂がないがために、主人のための魂としてあなたが存在する。
世界の中心の途方もなくねじ曲がった宮廷では、主人の眠りを慰撫せんがため、さまざまな姿に歪められたものどもが、フルートの音に合わせて永遠に知性のない踊りを続けている。
フルートの音は、生き物の魂をその宮廷へと招く音だ。
招かれた魂はいずれ心を、形を、知性を何もかも忘れて、愚かしい永遠の踊りに加わる。
その時まで、永劫に宮廷の辺へ留まるだろう。
主人の名を、アザトースという。
佐倉 光
「あ……あああ……」
思い出した。
いつか夢の世界を訪れたとき、その神の名を知り、片鱗に触れた。
思い出した。
いつか夢の世界を訪れたとき、その神の名を知り、片鱗に触れた。
佐倉 光
「あの時はたどり着けなくて……
違う、着く前に捕まえた」
違う、着く前に捕まえた」
佐倉 光
「その笛は、まずいな。
招かれているんだ。わざわざ行くまでもなく、連れて行かれる」
招かれているんだ。わざわざ行くまでもなく、連れて行かれる」
牧志 浩太
「招かれている……、だって?
まさか、あの時あいつが行こうとしていた……、あの場所なのか」
あなたの断片的な呟きに、意図するものを拾ったらしい。
牧志はこめかみの辺りを軽く押さえて言った。
まさか、あの時あいつが行こうとしていた……、あの場所なのか」
あなたの断片的な呟きに、意図するものを拾ったらしい。
牧志はこめかみの辺りを軽く押さえて言った。
牧志 浩太
「羽音は聞こえないな……、それに、怒りが消えていくような気もしない。
今度は、あいつじゃないのか」
今度は、あいつじゃないのか」
牧志 浩太
「くそ……、今度は何がしたいんだ。
でも、あの手紙にメッセージだ。
……きっと、ゲームなんだよな。飛びきり趣味の悪い」
耳朶の辺りに指先をずらし、牧志は振り払うように首を振る。
でも、あの手紙にメッセージだ。
……きっと、ゲームなんだよな。飛びきり趣味の悪い」
耳朶の辺りに指先をずらし、牧志は振り払うように首を振る。
牧志 浩太
「それならきっと、今度もクリア条件がある」
彼の声に確信の響きはなかった。
それでも彼は、深淵の宿るあなたの眼を、まだ信じて真っ直ぐに見ている。
彼の声に確信の響きはなかった。
それでも彼は、深淵の宿るあなたの眼を、まだ信じて真っ直ぐに見ている。
KP
彼を翻弄する何もかもが、『あなた』がしたことに違いないだろうというのに。
佐倉 光
「たぶん。
あの女は雛を育てる、と言っていた。
止まるな、も幾度か言われている。
ゴールはあると思う」
あの女は雛を育てる、と言っていた。
止まるな、も幾度か言われている。
ゴールはあると思う」
佐倉 光
「ゴールがどんなものか、って問題は、ある」
二人して神の世界にたどり着いて終わり、なんて可能性も、ある。
二人して神の世界にたどり着いて終わり、なんて可能性も、ある。
佐倉 光
「可能性とか分かりもしないこと考えてる場合じゃねぇな。
吸血鬼について調べよう」
吸血鬼について調べよう」
牧志 浩太
「ああ。手を着けられるところから行こう」
KP
牧志が頷いてタブレットを手に取った所で、
シローが「さくら、まきし、ごはんー」と、あなた達を呼びに来た。
パンにバターやジャムを塗って電子レンジで温めただけの簡素な朝食だが、それらが皿に乗せられた姿は、確かに朝食と言える風景だ。
シローが「さくら、まきし、ごはんー」と、あなた達を呼びに来た。
パンにバターやジャムを塗って電子レンジで温めただけの簡素な朝食だが、それらが皿に乗せられた姿は、確かに朝食と言える風景だ。
牧志 浩太
「あ……、シロー、用意してくれたのか。
ありがとう、嬉しいよ。助かった」
ありがとう、嬉しいよ。助かった」
佐倉 光
「サンキュ、シロー」
結局全部やらせてしまったことを少し反省しつつご相伴にあずかる。
結局全部やらせてしまったことを少し反省しつつご相伴にあずかる。
佐倉 光
少し迷ったが、調べ物は食事をしてからすることにする。
ほんの短い間でも、日常で、人間的なことを大事にした方がいいのではないかと思った。
ほんの短い間でも、日常で、人間的なことを大事にした方がいいのではないかと思った。
KP
いただきます、と嬉しそうなシローと、牧志と、あなたと。
空気をふんだんに含んだ柔らかい塊は、久し振りの日常の味がした。
鼻にバターの香りが抜けた。
空気をふんだんに含んだ柔らかい塊は、久し振りの日常の味がした。
鼻にバターの香りが抜けた。
牧志 浩太
「うん、美味しい」
互いの身体が生きて、ちゃんと動いているらしいことに、牧志は安堵の笑みを浮かべた。
互いの身体が生きて、ちゃんと動いているらしいことに、牧志は安堵の笑みを浮かべた。
佐倉 光
「うん、美味い」
あの一ヶ月の後だからというのもあるが、食事は本当に楽しい。
いつもそれほど気にしていなかった味に、嗅覚が想像以上に影響していて、複雑な要素が絡み合っている物なのだと思い知らされた。
食事が終わったら珈琲いれよう。
あの一ヶ月の後だからというのもあるが、食事は本当に楽しい。
いつもそれほど気にしていなかった味に、嗅覚が想像以上に影響していて、複雑な要素が絡み合っている物なのだと思い知らされた。
食事が終わったら珈琲いれよう。
KP
コーヒーマシンはまた湯沸かし器として活用されていた。
おかげで調子が悪いようなこともなく、久し振りに嗅ぐ珈琲の複雑に絡み合う香りを、あなたの鼻と口に届けてくれる。
おかげで調子が悪いようなこともなく、久し振りに嗅ぐ珈琲の複雑に絡み合う香りを、あなたの鼻と口に届けてくれる。
佐倉 光
日常を過ごしていると、先ほどまでのフワフワした感覚は何かの間違いだったように気すらしてくる。
佐倉 光
暫くそうやって日常に浸ったら、気を引き締めて調べ物に入ろう。
まずはPCで『吸血鬼』『ヴァンパイア』『赤い服の女』と『トート』について検索。
トートのことを知りたいというよりは、とりわけ話題に上がっていたりするかどうか。
まずはPCで『吸血鬼』『ヴァンパイア』『赤い服の女』と『トート』について検索。
トートのことを知りたいというよりは、とりわけ話題に上がっていたりするかどうか。
KP
『トート』については、特に話題に上がっていることはないようだ。
エジプト展がある度に話題に上がる人気の神だが、今はエジプト展はやっていない。
そういえば、トートは月と知識と魔術の神であり、太陽の光の届かない時間の支配権を月との賭けで手に入れたらしい。
彼は世界が終焉を迎えたのち、また新しい世界を生み出すために神々を目覚めさせる、あるいは自身で世界を創造するともされる。
また、彼と同一視されるギリシャ神話のヘルメスは、多面的な側面を持つ神々のメッセンジャーだ。
成る程、これはあなたかもしれない、と記述を読んでいて思うだろう。
エジプト展がある度に話題に上がる人気の神だが、今はエジプト展はやっていない。
そういえば、トートは月と知識と魔術の神であり、太陽の光の届かない時間の支配権を月との賭けで手に入れたらしい。
彼は世界が終焉を迎えたのち、また新しい世界を生み出すために神々を目覚めさせる、あるいは自身で世界を創造するともされる。
また、彼と同一視されるギリシャ神話のヘルメスは、多面的な側面を持つ神々のメッセンジャーだ。
成る程、これはあなたかもしれない、と記述を読んでいて思うだろう。
佐倉 光
知識だの夜だのといった言葉には割としっくりは来るものの、『俺』が多すぎて混乱するな。
この佐倉光もその一つに過ぎないって?
そうだっただろうか?
この佐倉光もその一つに過ぎないって?
そうだっただろうか?
KP
赤い服の女については話題に挙がっていない。
港近くの路地裏で大量の血痕が発見されたことが話題になっているのだが、その近辺でも目撃証言がないのだ。
港近くの路地裏で大量の血痕が発見されたことが話題になっているのだが、その近辺でも目撃証言がないのだ。
KP
『吸血鬼/ヴァンパイア』という調査対象はあまりに茫洋として人気の話題過ぎる。
少し前のハロウィンの話題から新作ゲームの話題、ホラー映画や恋愛漫画の話題……、
ただ、検索結果を拾っていると、幾つか気になることが目に留まる。
少し前のハロウィンの話題から新作ゲームの話題、ホラー映画や恋愛漫画の話題……、
ただ、検索結果を拾っていると、幾つか気になることが目に留まる。
KP
一つは、「世界の吸血鬼事典」という書物の刊行の話題だ。
雑多な分野に分かれがちであった「吸血鬼」という概念について、統合して纏めた巨大な書籍である。
メジャーなものからマイナーなものまで、吸血鬼と呼べる特徴を持つ伝承や、また吸血鬼と他の伝承の混交の系譜、創作作品上の「吸血鬼」のイメージの発展、「吸血鬼」という伝承が生じるに至る人類学的考察……
非ヨーロッパ・スラヴ圏の伝承までもが幅広く体系的に整理された、確かにこれは本として入手する価値があるだろうと思わせる一冊だ。
雑多な分野に分かれがちであった「吸血鬼」という概念について、統合して纏めた巨大な書籍である。
メジャーなものからマイナーなものまで、吸血鬼と呼べる特徴を持つ伝承や、また吸血鬼と他の伝承の混交の系譜、創作作品上の「吸血鬼」のイメージの発展、「吸血鬼」という伝承が生じるに至る人類学的考察……
非ヨーロッパ・スラヴ圏の伝承までもが幅広く体系的に整理された、確かにこれは本として入手する価値があるだろうと思わせる一冊だ。
KP
以前エジプト神話について調べに行った大学の図書館に、一冊収蔵されたらしい。
KP
またもう一つは、関連する話題だ。
何やらゾンビが話題になっている。
何やらゾンビが話題になっている。
牧志 浩太
「うーん、残っちゃったか血痕。
……ゾンビだって?」
……ゾンビだって?」
牧志 浩太
「ゾンビって……、まさか俺じゃないよな」
牧志がその言葉を目に留めた。
牧志がその言葉を目に留めた。
佐倉 光
そういえば自分が吸血鬼になった時にあの書庫でそんな本を随分と読みあさった記憶がある。
吸血鬼、と一言で言っても随分と色々いるものだった。
あの時はあくまで暇つぶしで読んだようなもので、あまり分析するような読み方はしなかったように思う。
吸血鬼、と一言で言っても随分と色々いるものだった。
あの時はあくまで暇つぶしで読んだようなもので、あまり分析するような読み方はしなかったように思う。
佐倉 光
「いつかみたいに血を食う生き物にでもなってりゃあ、血痕も残さずに移動できただろうけど」
牧志 浩太
「……あれはあれで困るな。
じゃあ、血痕が残ってて逆によかったって所か」
牧志は軽く言おうとして失敗したらしく、微妙な表情で苦笑いを浮かべた。
じゃあ、血痕が残ってて逆によかったって所か」
牧志は軽く言おうとして失敗したらしく、微妙な表情で苦笑いを浮かべた。
とある事件で佐倉は変質してしまい、床に落ちた牧志の血液を食いながら移動していたことがある。
とあることをやめると今でもその生き物に変質してしまう状態である。
とあることをやめると今でもその生き物に変質してしまう状態である。
佐倉 光
あの生き物になることは『今の俺』でもできるんだろうか?
KP
可能だ。正気度 1d3を消費することで、あの姿に変身することができる。
人間の形をしていようと、「あなた」は「神の雛」に過ぎないのだ。
人間の形をしていようと、「あなた」は「神の雛」に過ぎないのだ。
ここでKPは質問の意図を取り違えています。
その場で変身するのではなく、「あること」をしないでいれば今でもそうなれるのか、という意図ですね。
その場で変身するのではなく、「あること」をしないでいれば今でもそうなれるのか、という意図ですね。
佐倉 光
牧志が死んだところも、生返ったところも、見たのは俺一人の筈だ……いや、監視カメラなどがあったのか?
それとも、牧志と同じようなことが別の場所でも起きたのか?
それとも、牧志と同じようなことが別の場所でも起きたのか?
佐倉 光
本は後で借りに行ってみるとして、まずは『ゾンビ』についてもう少し詳しく調べる。
牧志が居たあたりに監視カメラがあったか?
目撃した人間はいたか?
それとも、臓器を抜かれるほどの大怪我をした人間が復活してくるようなことがあったのか?
牧志が居たあたりに監視カメラがあったか?
目撃した人間はいたか?
それとも、臓器を抜かれるほどの大怪我をした人間が復活してくるようなことがあったのか?
KP
見た所、それはあの路地裏とも牧志とも別の話題だ。
いくつかの出来事が重なって、話題を呼んでいるのだ。
街でゾンビを見かけたという奇妙な動画が話題を呼んでいるようだ。
内容は、干からびたような人間がふらふらと歩いている短い動画である。
どうやらそれは、昨日の夜に投稿されたものらしい。
映像が不鮮明で撮影場所はよく分からないが、東京のどこかだと匂わされている。
いくつかの出来事が重なって、話題を呼んでいるのだ。
街でゾンビを見かけたという奇妙な動画が話題を呼んでいるようだ。
内容は、干からびたような人間がふらふらと歩いている短い動画である。
どうやらそれは、昨日の夜に投稿されたものらしい。
映像が不鮮明で撮影場所はよく分からないが、東京のどこかだと匂わされている。
佐倉 光
「まさか」
その画像をじっと見る。
その画像をじっと見る。
KP
話題を呼んでいる理由は、「不死の真菌」なるものの噂が絡んでいるらしい。
そのゾンビが、「不死の真菌」の仕業なのではないかという噂が立っているようだ。
そのゾンビが、「不死の真菌」の仕業なのではないかという噂が立っているようだ。
KP
動画を紹介する記事の最後に、
「RT これ俺もさっき見たよ!
すごい特殊メイクだし、抱きしめるとゾンビになるっていう発想もいいね~ どんなスタッフがやってるんだろ?
これに限らずゾンビに関する情報なら24時間年中無休で受け付け中! スタッフ登用も!?」
という映画監督[稗田レイジ] のツイートが転載されている。
「RT これ俺もさっき見たよ!
すごい特殊メイクだし、抱きしめるとゾンビになるっていう発想もいいね~ どんなスタッフがやってるんだろ?
これに限らずゾンビに関する情報なら24時間年中無休で受け付け中! スタッフ登用も!?」
という映画監督[稗田レイジ] のツイートが転載されている。
牧志 浩太
「……昨日の夜か……、
丁度、何があったのか憶えてない時期だ」
牧志がぽつりと呟く。
ぼんやりとした映像の中にいるのは黒い服を着た何者かで、牧志とも赤い服の女とも一致しない。
丁度、何があったのか憶えてない時期だ」
牧志がぽつりと呟く。
ぼんやりとした映像の中にいるのは黒い服を着た何者かで、牧志とも赤い服の女とも一致しない。
佐倉 光
「ああ、でもお前じゃないみたいだ」
一応「不死の真菌」についても検索してみるけど、何か見つかるかな?
一応「不死の真菌」についても検索してみるけど、何か見つかるかな?
不死の真菌の噂について追うと、IWRIと呼ばれる新種の真菌が発見されたというニュースを見つける。
それは人間に感染し、接触感染で広がる。
重篤な症状の報告がないためにパニックは起きておらず、今分かっていることは精神的にやや不安定になる症状が出ることがあるらしい、程度だ。
どうやらその真菌について、少々不確実な内容を流布しがちなある医学博士が言及したらしい。
曰く、この菌は不老不死をもたらす特効薬になる可能性がある、であるとか、菌に感染した人物の怪我は即座に治る、であるとか。
そのために、「不死の真菌」「救済真菌」などと呼ばれ、少々噂になっている。
なお、こういうものの習いで、根拠についてはまったく記載がない。
それは人間に感染し、接触感染で広がる。
重篤な症状の報告がないためにパニックは起きておらず、今分かっていることは精神的にやや不安定になる症状が出ることがあるらしい、程度だ。
どうやらその真菌について、少々不確実な内容を流布しがちなある医学博士が言及したらしい。
曰く、この菌は不老不死をもたらす特効薬になる可能性がある、であるとか、菌に感染した人物の怪我は即座に治る、であるとか。
そのために、「不死の真菌」「救済真菌」などと呼ばれ、少々噂になっている。
なお、こういうものの習いで、根拠についてはまったく記載がない。
佐倉 光
「接触感染だから抱きつくと広がる、か。
わざわざ抱きついて感染した奴がいるのか?
詳しく話を聞いておきたいな」
わざわざ抱きついて感染した奴がいるのか?
詳しく話を聞いておきたいな」
牧志 浩太
「傷が治る……、だって? いや、まさか。
本当に俺だけじゃなくて、カビのせいでそんなことが起きてるなら、もっと話題になってるはず……、だよな」
本当に俺だけじゃなくて、カビのせいでそんなことが起きてるなら、もっと話題になってるはず……、だよな」
牧志 浩太
「まさか、それがこのゾンビで、怪我は治るけど魂は連れていかれるし、ゾンビになる、とか……。
いや、飛躍しすぎてるな」
いや、飛躍しすぎてるな」
佐倉 光
「精神的に不安定になる原因。
怪我が治る体になるのは少なからず異変だしおかしくはないけど」
怪我が治る体になるのは少なからず異変だしおかしくはないけど」
佐倉 光
「笛の音がきこえる、というのが原因である可能性もあるかな」
奇妙な物に関する知識に「不死の真菌」に似たものはないだろうか。
なければXだな。
奇妙な物に関する知識に「不死の真菌」に似たものはないだろうか。
なければXだな。
KP
不死の真菌。
人間を操る寄生体の類ならいくらでも思いつきそうであるし、神ならぬ「佐倉光」の経験の中にも、いくつかそういう寄生体の存在はある。
しかし、それだけでは今一つ特定できそうにはない。
人間を操る寄生体の類ならいくらでも思いつきそうであるし、神ならぬ「佐倉光」の経験の中にも、いくつかそういう寄生体の存在はある。
しかし、それだけでは今一つ特定できそうにはない。
KP
稗田レイジのXアカウントを見ると、B級ホラー映画を主に撮っている映画監督だと分かる。
軽はずみな発言が多くしょっちゅう炎上しているが、炎上で話題を取りに行っているような節もある。
現在は『ザ・ムーン -悪夢の生贄-』という映画を[スタジオKJK]というスタジオで撮影中らしい。
ダイレクトメッセージを送るか、スタジオに連絡を取れば話が聞けそうだ。
軽はずみな発言が多くしょっちゅう炎上しているが、炎上で話題を取りに行っているような節もある。
現在は『ザ・ムーン -悪夢の生贄-』という映画を[スタジオKJK]というスタジオで撮影中らしい。
ダイレクトメッセージを送るか、スタジオに連絡を取れば話が聞けそうだ。
佐倉 光
それなら時間はないことだし、スタジオに連絡だな。
悠長に返事を待っていられない。
悠長に返事を待っていられない。
佐倉 光
「いや、待てよ。ゾンビに関する情報か……
牧志、まず大学の図書館に行って本を借りよう。予約できるか?」
牧志、まず大学の図書館に行って本を借りよう。予約できるか?」
牧志 浩太
「ああ。確認を取ってみる」
牧志は大学の図書館に電話をかける。
暫くして、電話を切って振り返る。
牧志は大学の図書館に電話をかける。
暫くして、電話を切って振り返る。
牧志 浩太
「高価な書物だから貸し出しはできないらしい。
でも、閲覧の予約は取れた」
でも、閲覧の予約は取れた」
佐倉 光
「Okサンキュ」
それから……稗田レイジにDMだ。
【ゾンビについて、大変興味があります。
友人が、大きな怪我を負いながら治ったらしいのです。
今噂の真菌でしょうか。
どちらで目撃されたのかお話を伺いたいのですが。お時間いただけますでしょうか。】
それから……稗田レイジにDMだ。
【ゾンビについて、大変興味があります。
友人が、大きな怪我を負いながら治ったらしいのです。
今噂の真菌でしょうか。
どちらで目撃されたのかお話を伺いたいのですが。お時間いただけますでしょうか。】
KP
稗田レイジからは暫くして返事が来る。
「ええっ、ゾン…… じゃなくて、ほんとに怪我が治ったの!? マジ? すごいねー、いいよいいよ、ぜひ話を聞かせてよ。
今日はもうお客さんいっぱいだから、明日10時に [ スタジオKJK ] の入り口前まで来てくれるかな?」
「ええっ、ゾン…… じゃなくて、ほんとに怪我が治ったの!? マジ? すごいねー、いいよいいよ、ぜひ話を聞かせてよ。
今日はもうお客さんいっぱいだから、明日10時に [ スタジオKJK ] の入り口前まで来てくれるかな?」
佐倉 光
【是非お願いいたします。】
場所の確認を行う。
明日までにゾンビ関係の情報ももう少し得ておかないとな。
場所の確認を行う。
明日までにゾンビ関係の情報ももう少し得ておかないとな。
佐倉 光
よしっと。図書館の予約時間に間に合うように移動しよう。
KP
問題のスタジオは渋谷の中心部から少し外れた辺りにある。
佐倉 光
ところでゾンビ騒ぎっていつ頃から起きているんだろう?
KP
ゾンビ騒ぎは、どうやら昨夜の夜の動画が発端だ。
金曜の夜だったために夜更かししている人間が多かったことと、サッカーの試合でXを見ていた人間の多さが重なって、夜の間に一気に話題が広がったらしい。
金曜の夜だったために夜更かししている人間が多かったことと、サッカーの試合でXを見ていた人間の多さが重なって、夜の間に一気に話題が広がったらしい。
KP
あなた達は支度を整えて外出する。
色々態勢を整えたり調べ物をしていたせいで、もう昼だ。
予約は15時半だ。
移動をし、食事を取り、図書館に入ってもまだ少々、他の本を冷やかす程度の時間がある。
色々態勢を整えたり調べ物をしていたせいで、もう昼だ。
予約は15時半だ。
移動をし、食事を取り、図書館に入ってもまだ少々、他の本を冷やかす程度の時間がある。
牧志 浩太
「佐倉さんが神の雛、か。不思議な気分だ。
少しずつ実感が湧いてきてるのに、でも、ちゃんと佐倉さんだ」
牧志はよく晴れたいつもの空を見上げて、そう漏らした。
少しずつ実感が湧いてきてるのに、でも、ちゃんと佐倉さんだ」
牧志はよく晴れたいつもの空を見上げて、そう漏らした。
牧志 浩太
「もしゴールが神の世界だったら、それってどんな所なんだろうな。
無理やり連れていかれるのがそこなら、それは嫌だけどさ」
無理やり連れていかれるのがそこなら、それは嫌だけどさ」
佐倉 光
「俺が感じるとおりなら、碌な所じゃないと思う」
佐倉 光
「少なくとも、俺や牧志の趣味じゃないよ、カトゥリア以上に。
神の世界に人間の意思も心も存在しないんだ」
神の世界に人間の意思も心も存在しないんだ」
牧志 浩太
「それは……、嫌過ぎる」
牧志は小さく拳を握った。
牧志は小さく拳を握った。
牧志 浩太
「生温いことを考えてる場合じゃないってわけだ。
もしゴールが神の世界っていう落とし穴なら、どこかで全力で逃げなきゃならない」
もしゴールが神の世界っていう落とし穴なら、どこかで全力で逃げなきゃならない」
佐倉 光
「そうだな、そのためにも知識は必要だ。
ぎりぎりの所を見定めて、知るべき所まで知っておかないとな」
ぎりぎりの所を見定めて、知るべき所まで知っておかないとな」
カトゥリア……かつて二人でたどり着いたところ。穢れた魂では入れない約束の地。どうしても入りたければ『魂の汚れ』、すなわち記憶や経験などといったものを落とさなければならない。
佐倉 光
ニャルラトホテプが何のためにあちこちにちょっかいかけてるか、なんてのは今の佐倉には分かるんでしょうか。
それとも判定が必要かな。必要だったら人間の方で振ってみようかな。
それとも判定が必要かな。必要だったら人間の方で振ってみようかな。
KP
『あなた』が一体何を望んでそうしているのか、ひとつの化身に過ぎないあなたには、今分かること以上の想像はつかない。
数千年数億年の時間に跨る計略を張り巡らせる程に狡猾で、それ故に、矮小な存在からは「気まぐれ」とも映る『あなた』の意図は、あなたにすら理解しえないのだ。
あなたが化身のひとつたる「佐倉光」であることをやめ、あらゆる時間と空間に遍在する『あなた』に戻るならば、その意図も分かるのだろう。
数千年数億年の時間に跨る計略を張り巡らせる程に狡猾で、それ故に、矮小な存在からは「気まぐれ」とも映る『あなた』の意図は、あなたにすら理解しえないのだ。
あなたが化身のひとつたる「佐倉光」であることをやめ、あらゆる時間と空間に遍在する『あなた』に戻るならば、その意図も分かるのだろう。
KP
〈クトゥルフ神話〉99%で判定するなら、その一片くらいは覗き見ることができそうだ。
佐倉 光
俺が『俺』のことを知るのは、辛うじて残っている境界を越えることになる気がする。
俺はまだ佐倉光であることを捨てる気はない。
探るのは必要になってからの方がいいかも知れない。
俺はまだ佐倉光であることを捨てる気はない。
探るのは必要になってからの方がいいかも知れない。
佐倉 光
そっと伸しかけた手を引っ込める。
牧志 浩太
「佐倉さん……」
牧志はあなたの眼をちらりと見遣った。
牧志はあなたの眼をちらりと見遣った。
牧志 浩太
「何か、見てくれてるんだな。今」
佐倉 光
「好奇心は猫を殺すんだってさ」
佐倉 光
「割と今回は洒落にならねぇ。おとなしく人間らしいやり方でやろうぜ。
いつものようにさ」
いつものようにさ」
佐倉 光
「ついでに他の本見る時間もあるなぁ。
今までに出てきた言葉なんかも洗い直してみるか。
ゾンビとか、赤い服の女、トート、不死の真菌……」
今までに出てきた言葉なんかも洗い直してみるか。
ゾンビとか、赤い服の女、トート、不死の真菌……」
牧志 浩太
「他の本か、確かに。
他の場所へ行くほどの時間はないし、今分かることだけでも固めておきたいな」
他の場所へ行くほどの時間はないし、今分かることだけでも固めておきたいな」
佐倉 光
さーて調査調査。
まずは借りられた本を見に行こうか。
まずは借りられた本を見に行こうか。
KP
図書館へ向かうと、入り口でちょっとした騒ぎが起きている。
何かチラシを配っている人物がおり、図書館に入ろうとする人や前を通り過ぎる人々がその人物を嫌そうに避けているようだ。
見ればその人物は虚ろな目で絶えず薄笑いを浮かべ、服の襟ははだけ、足は裸足で土まみれになっている。
彼は行く人々の服を掴んでは無理やりチラシを押しつけ、何か言っているようだ。
あなた達はその人物を避けていくこともできるし、近寄ることもできる。
何かチラシを配っている人物がおり、図書館に入ろうとする人や前を通り過ぎる人々がその人物を嫌そうに避けているようだ。
見ればその人物は虚ろな目で絶えず薄笑いを浮かべ、服の襟ははだけ、足は裸足で土まみれになっている。
彼は行く人々の服を掴んでは無理やりチラシを押しつけ、何か言っているようだ。
あなた達はその人物を避けていくこともできるし、近寄ることもできる。
KP
【アイデア】で判定。技能値の基準値は人間だった頃の【INT】とする。
佐倉 光
1d100 85【アイデア】ー Sasa 1d100→ 79→成功
牧志 浩太
1d100 90【アイデア】 Sasa 1d100→ 23→成功
KP
背格好や服の色が何となくあのゾンビに似ている気がするが、確証はない。
佐倉 光
もしあいつがウイルス持ちだったら接触でうつるかも?
いやしかし、何を配っているかは気になるな。明日話を聞く材料になる可能性はある。
牧志に、チラシを配っている奴がゾンビに似ている気がすることを伝えて、ちょっと近寄ってみよう。
抱きつかれないように気をつけつつ……
いやしかし、何を配っているかは気になるな。明日話を聞く材料になる可能性はある。
牧志に、チラシを配っている奴がゾンビに似ている気がすることを伝えて、ちょっと近寄ってみよう。
抱きつかれないように気をつけつつ……
牧志 浩太
「そういえば、似てる気がするな。
……分かった、頼む」
牧志は身構える。何かあった時にあなたを助け出せるようにと、あなたの手を掴む。
……分かった、頼む」
牧志は身構える。何かあった時にあなたを助け出せるようにと、あなたの手を掴む。
KP
「ふふふ……、ふへへぇ……、ああ、あなたにも分かるんですね、神の救いが……」
あなたが近づくと、彼はどこも見ていないような目でにまりと笑った。
汗ばんだ手であなたにチラシを押しつける。
あなたが近づくと、彼はどこも見ていないような目でにまりと笑った。
汗ばんだ手であなたにチラシを押しつける。
KP
チラシを確認すると、【★救済真菌イヴリィの真実★】と書かれている。
ワードアプリ付属のイラストや目に痛い色彩のロゴが散りばめられた、一見して素人が作ったと分かるインクジェットプリントのものである。
ワードアプリ付属のイラストや目に痛い色彩のロゴが散りばめられた、一見して素人が作ったと分かるインクジェットプリントのものである。
【★救済真菌イヴリィの真実★】
~わが町は選ばれた~
新種の真菌IWRIと呼ばれているこの菌が、人類救済のために彼方から来たものであるということは、Iwriがヘブライ語で「彼方から」という意味であることからも明らかである。
わが町は彼方からの意思に選ばれたのだ。イヴリィは新世界の神である。
わたしたちの認識が幻覚と看做したものが真実であると理解せよ。
全てを理解したものだけが彼の夜の神トート様と共に彼方へと向かうことになるだろう。
~わが町は選ばれた~
新種の真菌IWRIと呼ばれているこの菌が、人類救済のために彼方から来たものであるということは、Iwriがヘブライ語で「彼方から」という意味であることからも明らかである。
わが町は彼方からの意思に選ばれたのだ。イヴリィは新世界の神である。
わたしたちの認識が幻覚と看做したものが真実であると理解せよ。
全てを理解したものだけが彼の夜の神トート様と共に彼方へと向かうことになるだろう。
牧志 浩太
「トート、だって?
この人……、何か知ってるのか?」
この人……、何か知ってるのか?」
佐倉 光
「単に『受信しちゃったヤツ』かもしれないが、気になるな」
佐倉 光
「……おい。お前」
男に少し威圧的に声をかける。
男に少し威圧的に声をかける。
佐倉 光
「このチラシにある情報、どこから手に入れたんだ。
イヴリィとは、トートとは何者だ」
イヴリィとは、トートとは何者だ」
KP
「うふふ」
彼は眼球を無意味に彷徨わせながら、大きく唇を歪めた。
もう慣れ親しんでしまった狂気の気配を湛えて、滔々と声が流れ出る。
彼は眼球を無意味に彷徨わせながら、大きく唇を歪めた。
もう慣れ親しんでしまった狂気の気配を湛えて、滔々と声が流れ出る。
佐倉 光
……
その焦点の合わない目で「トート様」と呼ばれたとき、何故か見られた気がして怖気が走った。
その焦点の合わない目で「トート様」と呼ばれたとき、何故か見られた気がして怖気が走った。
KP
「分かっているんでしょう? ふふ、へへ、わたしたちは新しい世界へ行く。
この小さな牢獄を捨てて行くんです。何者? トート様はトート様です。偉大なトート様。理由などいりません。
ああ、もしかしてあなたもあなたもあなたもトート様? 素晴らしい。一緒に行きましょう。明確です。幻に見えるものを見ればいい。
幻に見えるものが、幻に聞こえるものが、わたしに全てを教えてくれました。それだけです」
にたにたと笑う眼はあなたを見ていない。会話が成立しているようには思えなかった。
この小さな牢獄を捨てて行くんです。何者? トート様はトート様です。偉大なトート様。理由などいりません。
ああ、もしかしてあなたもあなたもあなたもトート様? 素晴らしい。一緒に行きましょう。明確です。幻に見えるものを見ればいい。
幻に見えるものが、幻に聞こえるものが、わたしに全てを教えてくれました。それだけです」
にたにたと笑う眼はあなたを見ていない。会話が成立しているようには思えなかった。
佐倉 光
無駄か。
佐倉 光
「行こう。時間がないんだ」
牧志に「もう行こう」と伝える。
牧志に「もう行こう」と伝える。
牧志 浩太
「ああ……、そうしようか」
病院などに連れていった方がいいのか、牧志は少し考えたようだった。
しかしすぐに躊躇いを振り切り、頷く。
病院などに連れていった方がいいのか、牧志は少し考えたようだった。
しかしすぐに躊躇いを振り切り、頷く。
佐倉 光
「幻に見えるもの……幻に聞こえるもの?」
なんとなくその言葉が引っかかった。
なんとなくその言葉が引っかかった。
KP
図書館の中に入ってしまえば、カーペットと紙のにおいがする空間は変わらず静謐だ。
『世界の吸血鬼事典』について楽しみだと話す青年達がいたり、相変わらず血走った目でレポートの論文を探す学生がいたりはするが、この場の静けさを崩すようなものではない。
図書館の窓から、裏庭に休憩用のベンチが置かれているのがちらりと見えた。
『世界の吸血鬼事典』について楽しみだと話す青年達がいたり、相変わらず血走った目でレポートの論文を探す学生がいたりはするが、この場の静けさを崩すようなものではない。
図書館の窓から、裏庭に休憩用のベンチが置かれているのがちらりと見えた。
牧志 浩太
「……あれ?」
牧志がその窓に目をやった。
牧志がその窓に目をやった。
佐倉 光
「どうした?」
その視線を追う。
その視線を追う。
牧志 浩太
「いや……、」
牧志は拳をこめかみに当て、少し考え込む。
牧志は拳をこめかみに当て、少し考え込む。
牧志 浩太
「あの裏庭、覚えがあるような気がする。
前に図書館に来た時、裏庭なんて行かなかったよな?」
前に図書館に来た時、裏庭なんて行かなかったよな?」
KP
あなたは以前牧志とここに来た時、裏庭には行かなかった。
休憩用のベンチが置かれているらしい以外、特に何がありそうな場所でもなかったからだ。
休憩用のベンチが置かれているらしい以外、特に何がありそうな場所でもなかったからだ。
佐倉 光
「デジャヴか」
佐倉 光
「しかし、そうだな、記憶が欠けているときに来たことがあるのかも知れないな」
予約時間までどれくらいある?
あまりないようなら本を先に、あるようなら中庭に足を運んでみる。
予約時間までどれくらいある?
あまりないようなら本を先に、あるようなら中庭に足を運んでみる。
KP
まだ時間はある。
裏庭へ足を運び、他の本を少し見るくらいはできるだろう。
裏庭へ足を運び、他の本を少し見るくらいはできるだろう。
佐倉 光
「ちょっと行ってみるか」
牧志 浩太
「ああ、そうしよう。気になる」
KP
裏庭は申し訳程度のベンチが置かれているだけの、殺風景な空間だった。
表にあった花壇も途切れている。
大学の外壁と図書館の建物に挟まれているだけの、ただの空間だ。
剥き出しの土とコンクリートの壁が、無意味な空間の印象を強める。
それをいいことにか、何者かがペンキで落書きを残している。
辛うじて円形のように見える無秩序な落書きの中に、何か文字が埋まっているようにも見える。
表にあった花壇も途切れている。
大学の外壁と図書館の建物に挟まれているだけの、ただの空間だ。
剥き出しの土とコンクリートの壁が、無意味な空間の印象を強める。
それをいいことにか、何者かがペンキで落書きを残している。
辛うじて円形のように見える無秩序な落書きの中に、何か文字が埋まっているようにも見える。
KP
あなたはその落書きと同じものを、どこかで見たような気がする……。
牧志 浩太
「ミスライムのカタコンベ……、だって?」
不意に、落書きを見て牧志が言った。
不意に、落書きを見て牧志が言った。
佐倉 光
「ミスライムのカタコンベっていやぁ、最初に行った世界で見たやつにも書いてあったな。
その世界の俺が攫われたときに通り抜けた壁……そこにもストリートアートが描いてあった。
呪文か魔方陣でも隠してあるのか?」
落書きをよくよく見てみる。
その世界の俺が攫われたときに通り抜けた壁……そこにもストリートアートが描いてあった。
呪文か魔方陣でも隠してあるのか?」
落書きをよくよく見てみる。
KP
落書きをよくよく見てみると、確かにそう書かれているように見える。
牧志 浩太
「そう、だったのか。……う、」
牧志 浩太
不意に牧志は顔をしかめ、頭を押さえる。
「そうだ、誰かに聞いた気がする……。これは [ 門 ] だって。
くそ、それ以外思い出せない……。俺は、ここにいたのか?」
「そうだ、誰かに聞いた気がする……。これは [ 門 ] だって。
くそ、それ以外思い出せない……。俺は、ここにいたのか?」
佐倉 光
「門を見た? 門を……通った?」
牧志 浩太
「分からない……、聞いたような気がするだけなんだ。
誰から聞いたのかも、思い出せない……」
牧志は悔しそうに唸る。
誰から聞いたのかも、思い出せない……」
牧志は悔しそうに唸る。
KP
その上から尋常な規則性をまったく感じさせず走るペンキの線が、
何か尋常ではない価値観に照らし合わせて見るのなら、呪文や魔法陣だということもあるのだろうか。
デビルバスターとしての知識に触れるものはないが、あるいは〈クトゥルフ神話〉の世界になら、心当たりを探せるかもしれない。
人間として得てしまった忌まわしい知識(41%)を頼るのならば正気度 消費なし、
神の知識に触れる(99%)ならば正気度 1点を消費。
何か尋常ではない価値観に照らし合わせて見るのなら、呪文や魔法陣だということもあるのだろうか。
デビルバスターとしての知識に触れるものはないが、あるいは〈クトゥルフ神話〉の世界になら、心当たりを探せるかもしれない。
人間として得てしまった忌まわしい知識(41%)を頼るのならば正気度 消費なし、
神の知識に触れる(99%)ならば正気度 1点を消費。
佐倉 光
ここは知識を探る必要があるのではないだろうか?
深く深く降りていって混沌の知識を探る。
SAN 29 → 28
1d100 99 〈クトゥルフ神話〉知識 Sasa 1d100→ 63→成功
深く深く降りていって混沌の知識を探る。
SAN 29 → 28
1d100 99 〈クトゥルフ神話〉知識 Sasa 1d100→ 63→成功
KP
改めてそれに目を向けると、それはありふれたものに見えた。
空間上の位置を移動するための『門』だ。
あなたであれば偶に世界を移動するのにも使うが、この『門』はそこまで遠くに繋がっているものではない。
この世界の月面に繋がっている程度のものだ。
しかしこの『門』はいま、活性化されていないようだ。活性化の条件は分からない。
空間上の位置を移動するための『門』だ。
あなたであれば偶に世界を移動するのにも使うが、この『門』はそこまで遠くに繋がっているものではない。
この世界の月面に繋がっている程度のものだ。
しかしこの『門』はいま、活性化されていないようだ。活性化の条件は分からない。
佐倉 光
「ワープゲート的なヤツか。せいぜい月までってとこだけど。
ただ、今は作動していないみたいだな」
ただ、今は作動していないみたいだな」
牧志 浩太
「月だって?
……前にアッタさんにやってもらったような、ああいうやつか?」
……前にアッタさんにやってもらったような、ああいうやつか?」
佐倉 光
うーん。月経由で夢と繋がってる?
KP
久しぶりの宇宙への門。今度は月に近づく方ですが。
今回、例によって序盤は何が起きているのかよくわからないことが多いです。
今回、例によって序盤は何が起きているのかよくわからないことが多いです。
佐倉 光
その近くは見回しても何も無いかな。
KP
お。見回すならば、気づくことがある。
落書きの前の地面に、微かに抉れた跡が残っている。
よく見ればそれは人が争ったような、複数人の足跡のようにも見える。
落書きの前の地面に、微かに抉れた跡が残っている。
よく見ればそれは人が争ったような、複数人の足跡のようにも見える。
佐倉 光
「これ……」
あの世界の俺と同じように、無理矢理連れ去られるようにしてここを通った奴がいる?
牧志がここを通ったんじゃないだろうな?
あの世界の俺と同じように、無理矢理連れ去られるようにしてここを通った奴がいる?
牧志がここを通ったんじゃないだろうな?
KP
詳しく見るなら〈目星〉で判定。
佐倉 光
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 13→成功
KP
その跡を構成するのは、二人の人物の足跡に見えた。
ひとつは男物の靴の足跡。ひとつはそれよりも少し小さい、ピンヒールのものと分かる特徴的な足跡だ。
ひとつは男物の靴の足跡。ひとつはそれよりも少し小さい、ピンヒールのものと分かる特徴的な足跡だ。
佐倉 光
「男と女か……
俺が『上書きされた』時にも、女に無理矢理連れ去られる形で門を通ったようだったな。
ここから誰かが連れ去られたか。
それとも、誰かが死んで上書きされたか」
俺が『上書きされた』時にも、女に無理矢理連れ去られる形で門を通ったようだったな。
ここから誰かが連れ去られたか。
それとも、誰かが死んで上書きされたか」
牧志 浩太
「連れ去られたか、それとも……、
まさか、俺は、生き返ったんじゃなくて、『上書きされた』……、のか?
わざわざ俺を『死なせて』おいて?」
牧志は一言ずつ呟きながら、心臓のあたりを小さく撫でた。
まさか、俺は、生き返ったんじゃなくて、『上書きされた』……、のか?
わざわざ俺を『死なせて』おいて?」
牧志は一言ずつ呟きながら、心臓のあたりを小さく撫でた。
牧志 浩太
「いや……、でも、それだと、ゾンビのこととかよく分からないな。
関係ない……、とも思えないし」
関係ない……、とも思えないし」
佐倉 光
「あくまでも可能性だ。連れ去られたのが女の方って可能性もあるわけだしな……」
佐倉 光
「活性化の方法が分からないから、今はどうしようもないな。
そうだな、ここでお前や赤い女が目撃されていないかくらい、訊いてみてもいいかもしれない」
そうだな、ここでお前や赤い女が目撃されていないかくらい、訊いてみてもいいかもしれない」
牧志 浩太
「ああ、確かに」
佐倉 光
他に何も無いようならカウンターに戻ろうかな。
折角だから『自由の牢獄』も借りてみようか。
折角だから『自由の牢獄』も借りてみようか。
KP
他に気になるものはないようだ。
KP
カウンターに戻れば、裏庭の殺風景ぶりが嘘のように文化的で快適な空間があなた達を出迎えるだろう。
『自由の牢獄』はドイツ文学の棚にある。
借りようと手を伸ばした時、その横にある本が目に留まった。
誰かが他の書架からここに置いていったのだろうか、
ドイツ文学ともミヒャエル・エンデの著作とも全く関係がなさそうな本が、一冊挟まっている。
『旧き神の齎したる英知の石板』と題されたそれは見慣れない素材で装丁された本で、
にもかかわらず、あなたに既視感のような奇妙な感覚をもたらした。
『自由の牢獄』はドイツ文学の棚にある。
借りようと手を伸ばした時、その横にある本が目に留まった。
誰かが他の書架からここに置いていったのだろうか、
ドイツ文学ともミヒャエル・エンデの著作とも全く関係がなさそうな本が、一冊挟まっている。
『旧き神の齎したる英知の石板』と題されたそれは見慣れない素材で装丁された本で、
にもかかわらず、あなたに既視感のような奇妙な感覚をもたらした。
佐倉 光
なんとなくその書物も纏めて引き出す。
読めそうだろうか?
読めそうだろうか?
KP
その本にはバーコードも、貸し出し用の分類シールもなかった。
一瞥すれば、あなたはそれを難なく読むことができる。
一瞥すれば、あなたはそれを難なく読むことができる。
牧志 浩太
牧志がその本を横から覗き込む。
【『旧き神の齎したる英知の石板』】
本書は、この世界は双子の神によって作り出された世界であるとする、古い伝承を扱っている。
双子の神は、かれらを凌駕する存在である旧き神から、自由で新しい世界を勝ち得るため、
旧き神の持つ、ありとあらゆる英知と魔力の込められた石板、『旧き鍵』を盗み出し、あまたの神々と共に自由のための戦争を起こした。
また、『旧き鍵』の魔術を用い、双子の神は、新世界を作り出すことに成功した。
最終的に双子の神はこの戦いに敗れ、旧き神は双子の神から知性を奪い、彼らの新世界と共に捨て置いた。
双子の神の知る全ての魔術、つまりこの世界に満ちるありとあらゆる全ての魔術は、全て『旧き鍵』の引き写しであり、
それを読み解いたものは、人の身の丈に合わぬあらゆる英知によってその身を亡ぼすことになるという。
本書は、この世界は双子の神によって作り出された世界であるとする、古い伝承を扱っている。
双子の神は、かれらを凌駕する存在である旧き神から、自由で新しい世界を勝ち得るため、
旧き神の持つ、ありとあらゆる英知と魔力の込められた石板、『旧き鍵』を盗み出し、あまたの神々と共に自由のための戦争を起こした。
また、『旧き鍵』の魔術を用い、双子の神は、新世界を作り出すことに成功した。
最終的に双子の神はこの戦いに敗れ、旧き神は双子の神から知性を奪い、彼らの新世界と共に捨て置いた。
双子の神の知る全ての魔術、つまりこの世界に満ちるありとあらゆる全ての魔術は、全て『旧き鍵』の引き写しであり、
それを読み解いたものは、人の身の丈に合わぬあらゆる英知によってその身を亡ぼすことになるという。
KP
あなたはその文章を読んだ時、微かに苛立ちのような感情を覚えた。
牧志 浩太
「その本は? ……何だか不思議な神話だな。
人間が何かをやらかしたとかじゃなくて、そもそも創造神が負けて、捨て置かれたのがこの世界だっていうのか。
まるで、この世界は無意味なものだって言ってるみたいだ」
人間が何かをやらかしたとかじゃなくて、そもそも創造神が負けて、捨て置かれたのがこの世界だっていうのか。
まるで、この世界は無意味なものだって言ってるみたいだ」
KP
牧志がそうこぼした時、
あなたが感じた苛立ちのような感情が、もう少しだけ強くなった。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
あなたが感じた苛立ちのような感情が、もう少しだけ強くなった。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
佐倉 光
1d100 29 Sasa 1d100→ 82→失敗
SAN 29 → 28
SAN 29 → 28
佐倉 光
「存在にそもそも『意味』なんてあるかよ。
意味なんてものは後で勝手に人間が見出すものだろ」
苛々と呟いた。
そして、自分の苛立ちの原因が言葉と食い違っていると思った。
意味なんてものは後で勝手に人間が見出すものだろ」
苛々と呟いた。
そして、自分の苛立ちの原因が言葉と食い違っていると思った。
佐倉 光
「いや……意味がない、と見做されているのが気に食わない……のか? 俺は」
牧志 浩太
「……佐倉さん?」
牧志があなたの存在を確かめるように、ひとこと名を呼ぶ。
牧志があなたの存在を確かめるように、ひとこと名を呼ぶ。
佐倉 光
「双子の神とは、誰だ。
カストールとポルックス? あれは神じゃねぇよな……」
カストールとポルックス? あれは神じゃねぇよな……」
牧志 浩太
「双頭の神ならいるけど、双子の神だよな。
一応、双子座も両方とも神、って説はあるって聞いたことはあるけど、こんな神話は聞いた事ないな。
エジプトの大地の神と天空の神は、双子じゃなくて夫婦だっけ」
一応、双子座も両方とも神、って説はあるって聞いたことはあるけど、こんな神話は聞いた事ないな。
エジプトの大地の神と天空の神は、双子じゃなくて夫婦だっけ」
佐倉 光
正確にはかたっぽだけが神だねぇ双子座。
なんか箱庭に佐倉って名前のニャルっぽいものが閉じ込められてるのかなぁ。
よくわかんなくなってきたな。
なんか箱庭に佐倉って名前のニャルっぽいものが閉じ込められてるのかなぁ。
よくわかんなくなってきたな。
KP
割とまた色々起きはするんですが、終盤になるまで最終的な意図はよくわからない話です。
赤い女王たちの意図がほんとに分かるのは第三話終盤かもしれない。
赤い女王たちの意図がほんとに分かるのは第三話終盤かもしれない。
佐倉 光
一瞬旧き鍵ってTRPGのルルブのことかと思ったw
KP
メタになっちゃうけど、TRPGのルルブだよなそれってちょっと思いました。
佐倉 光
「神については分からないな。
自分らが好きにできるゲームサーバ勝手に立てたら管理者が捕まって権限取られて、そのままメンテもなしに放置されてるって感じか」
それが俺となんの関係があるっていうんだ。
自分らが好きにできるゲームサーバ勝手に立てたら管理者が捕まって権限取られて、そのままメンテもなしに放置されてるって感じか」
それが俺となんの関係があるっていうんだ。
佐倉 光
「穴埋めのパーツ保護世界。棄てられた世界。神が二人。デュアル構成……さすがにそれはないか」
あの『天国』はコピーじゃなかったしな。
あの『天国』はコピーじゃなかったしな。
佐倉 光
「意味なんてものは時代や受けとる人間の環境によってコロコロ変わるもんだろう」
佐倉 光
「そこにいる人間が意味を見いだせばそこに意味はあるんだよ」
牧志 浩太
「それは同感かな。
そもそも世界に意味がなくたって、住んでる人間に意味があったりなくなったりするわけじゃないしな」
牧志はふっと声を緩めた。
そもそも世界に意味がなくたって、住んでる人間に意味があったりなくなったりするわけじゃないしな」
牧志はふっと声を緩めた。
佐倉 光
「分からないのに考えても仕方ないな。時間までついでに、そういう神話でもないか当たってみようぜ」
時間あるかな?
時間あるかな?
KP
そろそろ時間が近いが、神話の棚を当たることくらいはできそうだ。
類似の神話がないか神話の棚を当たってみるなら、〈図書館〉で判定。
類似の神話がないか神話の棚を当たってみるなら、〈図書館〉で判定。
佐倉 光
1d100 75 オフ〈図書館〉 Sasa 1d100→ 62→成功
KP
創造神ごと中心の外へ追いやるこの神話は、少し珍しい。
人が罪によって神の地から放逐された、あるいは神々の争いによって人が理想郷から追いやられたとうたう神話はあれど、世界そのものを複数仮定する神話は少ない。
これは、何か史実に基づいているのだろうか?
例えばある民族の反乱などは実際にあったことで、神と示される強力な指導者は実在したのかもしれない。
離島の神話であれば、海の向こうから来た支配者、征服者の類を異世界の神だとすることもありうるだろう。
……あるいはもしかして、本当に、なにもかも真実だというのだろうか?
人が罪によって神の地から放逐された、あるいは神々の争いによって人が理想郷から追いやられたとうたう神話はあれど、世界そのものを複数仮定する神話は少ない。
これは、何か史実に基づいているのだろうか?
例えばある民族の反乱などは実際にあったことで、神と示される強力な指導者は実在したのかもしれない。
離島の神話であれば、海の向こうから来た支配者、征服者の類を異世界の神だとすることもありうるだろう。
……あるいはもしかして、本当に、なにもかも真実だというのだろうか?
佐倉 光
「この本はただの小説だ、とするのが当たり前だと思うんだけどな」
佐倉 光
だとするとこの胸の奥にある苛立ちの正体は何なのだろう?
牧志 浩太
「一応、小説の棚にあったものだしな、元々」
佐倉 光
「それは、確かに。なんで俺こんなのに真面目になっちゃってるんだ」
牧志 浩太
「ただでさえ今はよく分からない調べ物をさせられたり、よく分からない意図で動かされたりしてるんだ。
何か関係があるかもしれないって思ってるのは、俺もそう。
ただ佐倉さん、妙に引っかかってる気はするな。
『神』に何か似たような嫌な経験があったとか、何かを思い出すとかなのかもしれないな」
何か関係があるかもしれないって思ってるのは、俺もそう。
ただ佐倉さん、妙に引っかかってる気はするな。
『神』に何か似たような嫌な経験があったとか、何かを思い出すとかなのかもしれないな」
佐倉 光
「俺にも分かっているようで分かっていないからな。
自分のことでも考えるとゴチャゴチャになるんだ。
随分前のお前の気持ちが少しだけ分かった気がするかもしれない。
自分が何者なのかはっきり分からないってのは落ち着かないな」
自分のことでも考えるとゴチャゴチャになるんだ。
随分前のお前の気持ちが少しだけ分かった気がするかもしれない。
自分が何者なのかはっきり分からないってのは落ち着かないな」
牧志 浩太
「それは厄介だな。
俺の場合、すげ替えられはしたけど同時に存在はしなかった。
佐倉さんの場合、佐倉さんが知ってる自分じゃないものの感情が同時にあるような感じ……、なのか?」
俺の場合、すげ替えられはしたけど同時に存在はしなかった。
佐倉さんの場合、佐倉さんが知ってる自分じゃないものの感情が同時にあるような感じ……、なのか?」
佐倉 光
「不定形のぼんやりした『神』の上に、人間の俺が辛うじて浮いてる感じ?
人間の俺の所は分かるんだけど、底の方が全然見えない」
人間の俺の所は分かるんだけど、底の方が全然見えない」
牧志 浩太
「辛うじて浮いてる感じ、か……。
化け物の上に作られていた『俺』と、似てはいるな。
もっと、途方もないものみたいだけど」
化け物の上に作られていた『俺』と、似てはいるな。
もっと、途方もないものみたいだけど」
コメント By.佐倉 光
佐倉を別の名で呼ぶ者の目的は何なのだろうか。
ふたりは記憶を元に調査を行う。
佐倉を別の名で呼ぶ者の目的は何なのだろうか。
ふたりは記憶を元に調査を行う。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」