TRPGリプレイ【置】CoC『俺の恋人が庭からボコボコ生えてくるんだが!?』佐倉&牧志 5

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こちらには
『俺の恋人が庭からボコボコ生えてくるんだが!?』 のネタバレがあります。
また、大きめの改変があります。

本編見る!
女性の牧志
しばらく待っていると女牧志が戻ってきた。
あまり雰囲気の変わらないズボンにシャツ姿だが、なんとなく身体にフィットしたような印象がある。
女性の牧志
「服とジャケット、助かった。返すよ」
彼女は服屋の紙袋に服一式とジャケットをまとめて、牧志に渡す。
牧志 浩太
「ああ、ちょうど合う服が買えてよかった。
微妙に大きいみたいだったもんな」
目つきが悪い牧志
「……」
弱気な牧志
「……?」
目つきが悪い牧志
「あいつの為にも俺の為にも黙秘」
目つき悪い牧志は何か思ってしまったらしい。
かわいい。
佐倉 光
何か察したんだろうか。
KP
察したというより、身体にフィットした服を着た彼女を見て何か思ってしまったの方ですね。
佐倉 光
女性を感じてしまったのかな。よりによって『自分』に。
KP
YES。「自分見て結構可愛いって思ってしまった時に何て言えばいいんだよ」ですね。
メイドの時はそれどころじゃなかったし、「自分自身」視点だったからいいものを、他の人間として目の前にお出しされちゃったものだから。
佐倉 光
それはもうどうしていいか分からないな。
まあー、本人ではあるけど別人だし、思っちゃうくらいは許されると思うよ……
KP
素っ裸だった時はある意味非日常だった(あと当人もまだ動転してた)のが、日常空間の中に服を着て存在されて実感がやってきてしまいましたね……。

佐倉 光
ああ、似たような姿なのに随分雰囲気が変わるな。
体格の違いがモロに出てくる。
顔も体も思っていたより丸っこいし、声もあまり似ていなかったなというのが見えてくる。
化粧でもしたら一見して『牧志』だと分からなくなるんじゃないだろうか。
つーか普通に……
まじまじと見てしまう。
佐倉 光
「……」
佐倉 光
「複雑」
こちらも呟いた。牧志なんだけど牧志じゃないからなぁ……
目つきが悪い牧志
「…………」
あなたと目つき悪い牧志の間に、よくわからない沈黙が流れた……。
佐倉 光
文具屋に行こう文具屋。
正直色々見たし色々ありすぎて、どう受け取ったらいいのか良く分からないんだ、この感想は。
目つきが悪い牧志
「あー、うん。行こう行こう……」
女性の牧志
「?」
彼女は不思議そうにしていた。

佐倉 光
文具屋は上のフロアだ。
KP
春の文具屋は新学年の子供たちや学生、新生活を始める社会人向けの品々で華やかだ。

日記帳のシーズンは少し過ぎたが、それでも高価な革手帳からポップな見た目の安価なもの、ネットを賑わせる限定品まで、ところ狭しと並んでいる。
シローがカレンダー売り場の犬カレンダーに見入っている。
佐倉 光
「手帳とペンか。やっぱ書くの好きなのか?
デジタルでもアナログでも、何か文章を残したいもんなのか。
牧志って文字で考え事する方かな。割と俺もだけど」
弱気な牧志
「うん……。書くのは好き。
書いてると他のこと目に入らなくなって、感触に集中できて、少し落ち着けるんだ」
牧志 浩太
「あ、分かるな。無心になれるっていうか」
気弱な牧志の言葉に、うんうんと牧志が頷く。
女性の牧志
「分かる分かる。
パズル解くときも書き出す方だしさ。書くと集中できるし、一覧できるんだよな」
女牧志の指先が字を書くジェスチャーで動く。
目つきが悪い牧志
「あー、そういうのあるのか。
まあ、でも文字で考え事するのは俺も一緒だな。
何かしら書き出すと纏まるのも同じ。残すのはどうだろうな?」
牧志 浩太
「残すの意識しだしたのは、色々巻き込まれるせいかもしれないな。
こうなるより前の日記とか、残ってないしさ」
牧志が、売場に並ぶ日記帳の表紙に視線を落とした。
佐倉 光
「たしかにそういえば牧志の昔の日記って話は聞かないな。
そんなのがあれば最初の一年もう少し気が楽だったかも知れない」
牧志 浩太
「そんなのがあれば、互いにもうちょっと楽だったかもな。
まあ、でも。目の前に答えとして出されなくて、今はよかったような気もするよ」
佐倉 光
「俺は思考を纏めるために言葉は使うけど、記録を残す趣味なんか無いし、
今書くようになったのだって、万一俺の記憶がまた消えたときに馬鹿な行動を取らないようにするための指針だからな……」
佐倉 光
「まあ、牧志がそうやって色々書き残してくれるから、異変の時に状況把握ができることも多いよ」
なんとなく、前に牧志に贈ったボールペンの替え芯を買う。
牧志 浩太
「そっか、そうだな。なら丁度いい。
こいつがあるおかげで、助かったことも随分多いもんな」
牧志はいつも使っている小さな日記帳の予備を一冊買う。
弱気な牧志
そんなあなた達を見ながら気弱な牧志が手に取ったのは、春らしい桜色の日記帳と、同じ色のペンのセットだった。
佐倉 光
「へぇ……」
思わず声を漏らす。
佐倉 光
「東北の神社に花見に行ったことあったりする?」
弱気な牧志
気弱な牧志は緩やかに頷く。
「あると思う。
俺かどうか分からないけど、でも、あれがあると少し安心するんだ」
佐倉 光
「そうか。
自分の記憶じゃなかったとしても、ああいう場所のことを覚えているのはいいことなんじゃねぇかな。
つーかさ。あそこにいたのも害のない悪魔みたいなものだろ?
その辺でこっち見てるだけのヤツは、あんな感じの奴らだってことも意外と多いと思うぜ」
弱気な牧志
彼は桜色の日記帳を大事そうに持ちながら、小さく頷いた。
弱気な牧志
「そっか……。そう、か。怖く、ないかもしれないんだな」
ほっと少し力を抜いて、彼はノートコーナーの隅に目をやって微笑んだ。
……そこにもいるの?
佐倉 光
見えすぎるってのも大変だな。
気付かなければ無害だけど、気付けば襲ってくる奴も……
佐倉 光
あれ、前そんなのいなかったっけ?
KP
……いたような気がする。
なぜだろう、あまり深く考えない方がよいような気がした。
見えなければ害はないが見つけると襲ってくる……『レミングス・ドリーム』にて、佐倉と牧志はそういった存在に酷い目に遭わされている。
佐倉 光
まあ……いいか……
一応その一角にもちらと視線は送るが今度は《アナライズ》をせずにスルー。
KP
ノートコーナーの隅に気になるものは見えない……。
佐倉 光
しかし来たとき裸だったのに、ここで買った物は持ち帰れるんだろうか?
今考えても仕方がないか。

最後は電気屋だな。

KP
よく見るロゴを掲げた家電量販店は、青みがかった明るい照明とつい癖になるテーマソングであなた達を出迎える。

スマートフォンのコーナーには形状スペック様々な機種が並び、その一角に中古品のショーケースがある。
目つきが悪い牧志
目つき悪い牧志はPCパーツのコーナーについ目を惹かれながら、そちらへ向かう。
佐倉 光
流れ星は単に時期が似てて怪しいってだけだし、三人が帰れない可能性の方が高いし。
うちで三人、しかも女性込みで泊めるのは無理だ。
適当なホテルでもとるしかないか。

そんなことを考えつつ、自分もショップへ。
最近予備スマホの消耗が激しすぎる。俺も買おうかな。
KP
中古スマホのコーナーには最新機種の一つ前の高価なものから、片隅にひっそり置かれた数年前の機種までずらりと並んでいる。
シローが伸び上がって珍しそうに、照明にきらめくたくさんのスマホを見上げている。
目つきが悪い牧志
目つき悪い牧志は暫くショーケースを眺めると、一番端にある古い機種のプライスカードを拾い上げた。
本体の色が何となく、牧志の日記帳の色に似ている。
佐倉 光
使うツールがデジタルになっていてもそこはやっぱり牧志なんだなぁ。
くすりと笑みを漏らして適当なスマホを選ぶ。
セベクは一応避けようかな。
どんなのを買ったとしても必ず中覗いて脱獄はするんだけど、ここのは何が仕込んであるか分かったものじゃないからな。万一って事もある。
目つきが悪い牧志
目つき悪い牧志も思う所があるのか、セベクのスマホからは何となく目をそらしていた……。
異世界の記憶
佐倉 光
あ。マホロバについてはこっちの佐倉知らないわ。修正修正。
KP
あ、そうだそうだ。その辺たまにごっちゃになっちゃいますね。
佐倉 光
こっちのマホロバ製品はただひたむきな技術者が丹精込めて作った逸品かも知れませんし!!
KP
しれませんしね!!
マホロバ……電化製品を作っている会社。別の時間軸の佐倉がこの会社とあまり良くない関わり方をした。

佐倉 光
マホロバか……いつも無難なの出してる印象だな。面白くはないがこれにしてみようか。
マホロバの、ほとんどジャンクみたいな値で売っている旧型を買うことにした。

佐倉 光
店を巡ったらそれなりに時間経ってそうだな。
佐倉 光
「車使えるまでまだ時間あるし、飯食ってからいこう。
腹減ってる?」
KP
「すいたー!」
牧志たちよりも先に、シローが元気よく手を挙げる。
牧志 浩太
「程よく減ってるかな」
女性の牧志
「結構減ってきたかも。何にする?」
目つきが悪い牧志
「頭使ったからかな。それなりに減ってる」
弱気な牧志
「ごめん、腹減った……」
先程のプレイのせいか、一番腹を減らしているのは気弱な牧志らしい。
佐倉 光
「俺もー。このへんで美味そうなとこ探そう」
適当に検索かけて出てきた美味しそうな店に入ろう。
ご飯とか唐揚げとか(中の人が)食べたい。そういうのも出る和食寄りのレストランにしようかー
KP
適当に検索をかけると、昼にも夜にも何かと便利な和食ファミレスが出てきた。

焼き魚も唐揚げも味噌汁もあり、五人と子供で入っても座席が別々にならない。
佐倉 光
「ここどう? 俺米食べたい」
スマホに店の案内うつしてみんなに見せる。
牧志 浩太
「あー、米いいな。唐揚げ食べたい」
女性の牧志
「黒酢あんかけ美味そう」
弱気な牧志
「鯖の炭火焼き……」
目つきが悪い牧志
「鍋物あるのか、いいな。それなら食べられそうだ」
KP
なんだか見事に食べたいメニューが分かれているが、全員賛成らしい。
KP
「おむらいす!」
シローはキッズプレートのオムライスと、その上の旗に釘付けだ!
佐倉 光
「オッケーここにしよう」
店に向かうぞ。
昼にみんながあまり食べなかったのは何だったんだろうな?

KP
店に向かうとそれなりに賑わっていて、出汁と脂のいい香りが鼻をくすぐった。
幸いテーブル席は空いていて、すぐに入ることができる。
注文はタッチパネルで行うようになっていて、牧志が人数を入れる画面に大人5人子供1人と入力した。
佐倉 光
「そーいやさっきいたのがこっちの波照間さんなんだけど、そっちの波照間さんと印象違ったりする?」
女性の牧志
「先輩の印象は変わらないかな。東雲さんのこと本当に好きなんだなって所も含めて、いつもの先輩だ。
もちろん、俺のことどう思ってるとか、そういう所は違うんだろうけどさ」あなたの問いに、女牧志が切り出す。
目つきが悪い牧志
「印象自体はこっちも一緒だ。正直美人の彼女が一番驚き。UFOより優先する彼女がいるのか、そうか」
弱気な牧志
「俺も、先輩に彼女いるのはびっくりした……。
でも、なんでだろう、改めて名前を聞いたら、顔を見たことがあるような気がするんだ。世話になったことがあるような……。
やっぱり俺の記憶、混ざってるのかもしれない」
牧志 浩太
「ほとんど東雲さんの話だ。先輩はこっちと変わらないんだな」
佐倉 光
「正直いきなりあそこまで入れ込む人間の彼女ができたってのは俺も驚いたからさ。
ある日いきなり悪魔と結婚したとか言いだしても不思議はないと思ってたからなぁ」
目つきが悪い牧志
「分かる。彼女できるとしたら悪魔か宇宙人かなって思ってた。実感で」
佐倉 光
「波照間さんも牧志と別方向に危ういからなぁ……
東雲さんが居るようになって大分安定した気がするよ。
まあ、東雲さん自体も危なっかしいとこあるみたいだけどさ」
牧志 浩太
「そういう所がバランスいいんだろうな、って思うよ。
完全に地に足のついた人だったら、先輩と同じ位置で話せなさそうだ。
あ、佐倉さん何頼む?」
牧志がタッチパネルを取り上げて注文画面を出す。
佐倉 光
「俺はおろし唐揚げ定食にしよー」ポチポチ
佐倉 光
ふと、牧志の部屋で発見した、謎に唐揚げ食べてる口のアップばかりがうつされた不可解な写真集のことを思い出した。
意味が分からなくて少し怖かったなー、あれ。
牧志 浩太
「?」
視線に気づいて、不思議そうに牧志が振り返る。
KP
シローに発見されないためにか大層念入りに、何となく少し後ろめたさを感じるやり方で隠された、あれは一体なんだったのだろうか……。
佐倉 光
あんな写真集があること自体が謎だが、深く深く隠されていたのは何故だろうな。
なんとなく気まずくなりそうな予感がするので牧志にそれについて問いかけたことはない。
気にはなるけどな。
まあ、人には知られたくないことのひとつやふたつやみっつやよっつあるものだし。
いくら牧志でも。
女性の牧志
「あ、そういえば。こっちの先輩は『僕』って言うんだな」
タッチパネルを見遣りながら、思い出したように女牧志が呟いた。
佐倉 光
「え、そっちのは違うのか」
女性の牧志
「ああ。俺の所は『俺』だった」
女牧志は宣言通り、豚肉と蓮根の黒酢あんかけを注文する。
目つきが悪い牧志
「ああ、違和感あったのそれでか。俺が知ってる先輩も『俺』だな。それ以外の口調はあまり変わらなかったけど」
目つきの悪い牧志が鍋物のコーナーで少し迷い、根菜と豆の卵とじ煮を選んだ。
弱気な牧志
「俺の所も……」
気弱な牧志は鯖の炭火焼き定食をタップする。
佐倉 光
「へぇ……あまりイメージできないな。
……あ、もしかして一人称うつった?」
女性の牧志
「ああ、そうそう。元々なんて言ってたのかも分からなかったしさ、そのまま。
実家帰った時は随分驚かれたな」
箸を取り分けながら苦笑する。
佐倉 光
「そりゃあ……驚いただろうな。
こっち以上に。
記憶だけじゃなくて、そういえば自分の性別も良く分からなくなったって言ってたっけ。
本当に大変だったな、それは」
女性の牧志
「そりゃな。
幸い、幸い? 自分の部屋も実家の部屋もそんなに女の子だ……、って感じの部屋じゃなかったし、まだ戸惑いは少なかったけど。

それでも、初めて部屋に帰ったときは変に緊張して寝られなかったし。

一言喋るごとに驚かれたな、浩司にも父さんや母さんにも」
佐倉 光
「そっちにも浩司くんいるんだな」
彼女自身と家族の戸惑いは想像を絶する。こちらの牧志よりなお不可解だっただろうな。
女性の牧志
「ああ。こっちでも顔合わせてるんだっけ、旅行の時に」
混乱
KP
そういえばさっき温泉に入ってて思ったんですが、牧志の実家は温泉郷なわけで
初期の女牧志、温泉でめちゃくちゃ戸惑いそうだし大変なことになってそう
佐倉 光
そうなんですよ。いきなり性自認訳分からなくなるなんて大事件。
普通に外でトイレ入るのも大変だ。

記憶では男性だけど実際は女性なわけで、女の人の裸見てどう感じるかは彼女自身のもともとの性自認というか性的指向によるだろうけど、記憶では「見るべきではないもの」になってしまっているの盛大にわけが分からない。
KP
そう大事件。
外でトイレ入ろうとして間違えそうだし、裸見て冷静になれば何も思わなくても先に「うわぁっ」って思っちゃいそうだし、堅い波照間の記憶なもんだからそういうとこ「べきではない」が先に来ちゃいそうだし 大変
なんならその動揺を誤認しかけそうだし大変

佐倉 光
「当然のように男を再現するなら土台に使うのは男だと思っていたけど、そっちじゃそうじゃなかったのか」
女性の牧志
「そうみたいだ。
そう思うと、なんでわざわざ俺を選んだんだろうな」
不思議そうに彼女は束ねた髪を撫でつける。
佐倉 光
「それは……」
佐倉 光
「『牧志』だからなんじゃないかと、思う」
女性の牧志
「俺……『牧志』だから?」
佐倉 光
「ああ。
ここ二、三年の経験で言うと、牧志に会ってから悪魔絡みとは別に変な事件に遭遇することが多すぎるのと、
牧志自身が悪魔や何か魔法的な物を体に降ろして使う適性があること、
牧志の視力や聴力が、どうも人間の感知できる領域を越えているんじゃないかってこと……そのへんを考えると、
牧志自身にそういうものを引き寄せる何らかの原因があると思う。

みんな、波照間さんの記憶があるから、『阿久津さん』のこと覚えてるだろ?
あの子もそうだ。とんでもなく濃いマグネタイトで悪魔を引寄せていた。

牧志の場合はマグネタイトじゃないが、何か、そういう要因があるんだと思うよ。
そしてそれは、この世界の牧志だけじゃない。
だからこそ、並行世界の同一人物巻き込んでの悪魔召喚なんて事件にまきこまれたんだと思うんだ。
そもそもの最初の事件で被害者は他にもいたのに、波照間さんの複製体を作る土台として牧志が選ばれたのは、ただの偶然じゃなかったのかも知れない」
佐倉 光
「そしてそれは、この世界の牧志に限った話ではないと思う」
牧志 浩太
四人の牧志が、全員顎に手をやって沈黙を落とした。
牧志 浩太
「あの後からだけじゃなくて、最初から因縁があったってことか」
目つきの悪い牧志がううん、と唸る。
弱気な牧志
「……」
気弱な牧志が、不安そうに耳元を押さえる。
先程の様子を見るに、中では一番実感が湧くのだろう。
牧志 浩太
「そうだとしたら……、納得はいくな、困るけど。
最初から、俺が紅や、佐倉さんを巻き込んじゃったのかもしれないんだな」
女性の牧志
「生贄体質だな、なんて言ってたな、佐倉さんと」
KP
牧志と女牧志がそう言い合ったところで、料理が運ばれてきた。
つやつやとした唐揚げの脂が美味しそうだ。
佐倉 光
「ま、これはあくまで俺の印象。
たった二年見てきての感想に過ぎないよ」
佐倉 光
「なんだかんだ、俺は牧志と会ってからの色々、楽しいと思ってるけどね。
他の世界の人間に会うとか、悪魔使いやっててもそうそうないんだぜ」
佐倉 光
「お、美味そうー!」
ウキウキと箸を配る。
牧志 浩太
「そっか、……ありがと。
事件や生贄は困るけど、俺も日々楽しいよ」
女性の牧志
「友達だなぁ。お、来た来た。ありがと」
おのおの箸を受け取り、いただきます、と手を合わせて料理に箸をつけ始める。
佐倉 光
「うめー」
唐揚げを食べる。ご飯と大根おろしと大葉を合わせて更に梅も少し。
さっぱりと食べられるのがいい。
牧志 浩太
「あー、うまい」
牧志は唐揚げに付属の唐揚げスパイス(?)なるものをかけてそのままご飯に乗せている。
佐倉 光
牧志の唐揚げ本、何だったんだろうなぁ……
女性の牧志
「お、このあんかけ美味い。酢がまろやかだ」
目つきが悪い牧志
「……うまい」
目つきの悪い牧志は卵とじを蓮華にすくい、冷ましてから慎重に口に運ぶ。
弱気な牧志
「美味い……」
噛みしめるように呟いて、気弱な牧志が鯖をつつく。
KP
シローは目を輝かせてオムライスをすくい、一緒についているハンバーグとの間で視線を行き来させている。
佐倉 光
「まあ、そうだったとしても牧志が悪いわけじゃない。
俺達が『巻き込まれた』のはもともと悪魔に縁があったからだろうしな」
佐倉 光
「大体、俺が原因になった事件も結構あるだろ。
そういう時は助けて貰ってんだし、俺に関しちゃお互い様だ」
巻き込み発言にぽつりと応える。
牧志 浩太
「お互い様、か。前もそんな話したな、そういえば。……最近、忘れてた」
唐揚げを箸でつまむ。
佐倉 光
「色々あって忘れがちだからな。
事あるごとに言ってやるよ」
牧志 浩太
「ありがとう。その時は頼む」
佐倉 光
別の世界の牧志か。別の世界の俺、どんな奴なんだろうな。
ここで聞いた話によればあまり変わらないみたいだけど。
だったらそいつらも似たようなこと考えてるんじゃないかな。
嫌ならとっとと逃げ出すだろうしさ……
いや、女牧志のとこの俺は逃げ損ねたんだっけ?
佐倉 光
それから唐揚げを味わう。
佐倉 光
「なんか知らねぇけど最近唐揚げハマってんだよね」
牧志 浩太
「佐倉さんも? 俺も。東浪見が食ってるのよく見てたからかな」
佐倉 光
食事終わったら例の着弾地点? について行き方なんかを調べている。
佐倉 光
関係あんのかなーこれ……
KP
現場は住宅街の外れの空き地で、ここから少し車を走らせれば着けるだろう。
佐倉 光
それじゃ、そろそろ行ってみますか……

KP
食事を終えて店を出ると、それなりに辺りは暗くなっていた。
KP
車は全員乗れるものにする? 二台にして分乗する?
佐倉 光
全員乗れるように大きめなの借りたつもりだったよー
KP
六人乗れる車を確保するのには時間がかかったが、その甲斐あって過ごしやすそうなバンを借りることができた。
佐倉 光
時間かかったのそのせいだったんだな。
大きめの車は、仕事でバンを運転する機会がまれにあるので比較的慣れている。
KP
「さくら、このくるまでっかい! でっかい!」
シローが興奮した様子で車に向かって突撃する。
佐倉 光
「そっかー、このサイズの車乗ったことないか。転ぶなよー」
声をかけて車に乗る。
あの事故以来は基本何も言われなければ運転手することにしてるよ。
別に牧志の運転が危険だなんて思っているワケじゃないけどな。
牧志 浩太
牧志は運転を買って出てくれるあなたにことさらに礼を言うことも、遠慮することもなく、いつものように助手席に乗ろうとして。
女性の牧志
「わっ、ごめん」
目つきが悪い牧志
「あー、そうか」
弱気な牧志
「あっ、」
うっかり全員で団子になった。
KP
「まきし?」
後部座席のジュニアシートの上で、シローがひとり不思議そうにしていた。
佐倉 光
「一応ここはいつも通りにして貰おうかな」
微苦笑する。
見てる分には面白いけど、こいつらがいた元の世界じゃ俺や波照間さんが大騒ぎしてんだろうな。
女性の牧志
「ごめんごめん、癖でさ」
後部座席、シローの横に座る。
目つきが悪い牧志
「ごめん。後ろ行くよ」
目つきの悪い牧志と気弱な牧志が、一番後ろの席に乗り込む。
牧志 浩太
助手席には、いつも通りに牧志が座った。
佐倉 光
落ち着いたら発進するよ~
KP
そんな四人と二人を乗せて、車は軽快に発進する。
街中を抜けて、町外れの住宅街へ。
佐倉 光
「結構時間かかっちまったからな。何か残ってるといいんだけど」
佐倉 光
「前にもこんな事があったけど、そん時は蟲やらが乗ってたんだよなー」
予想
佐倉 光
中の人は、「擬態する生物」が乗っていたパターンを思いつきました。
土からなにから全てそっくり擬態して鉢に乗って何食わぬ顔で住環境に入り込み、近くの物食べてそこにいた人間そっくりになる……
まあ今回の話、発生がどうあろうと三人の牧志に悪意はなさそうに見えるし、普通に異世界人ってセンかなと思う。

でもってそれを佐倉が思いついた場合、「いやでも一日一緒にいたこいつらに悪意ないし」と思ったところで、前の異世界の牧志が害のない顔をして一日遊んでいたことを思い出すとなんか台無しなので、そこまでは思いつかないことにしました……
今回の真相ではなくなっていそうだけど、元々のネタとしては意思を持った侵略をするというよりは、危険を避けるために擬態する、程度のヤツだったりするのかなと。
KP
そうなんですよねぇ、牧志に悪意があったケースを経験しているからなぁ、佐倉さん。

女性の牧志
「ああ……、あったな。腹痛の時。
あれは……、酷かった。酷かった、で済む話じゃないけどさ」
女牧志が微かに呟くように息を吐いた。僅かに身じろぎしたような気配がした。
佐倉 光
「ああ……」
あの時の異世界からの来訪は『酷い』の一言で言い表せるようなものではなかった。
佐倉 光
「あの時とは違うさ」
佐倉 光
「何が起きたかくらい分かるといいけどな」
女性の牧志
「そうだな。せめて……」
彼女の言葉が途切れた。
後部座席で何か話していた二人も、黙りこくっていた。
佐倉 光
「そもそも何か関係があればいいなって話ではあるんだが」

佐倉 光
住宅街のどのあたりに落ちたんだろう。夜間に近づいても大丈夫ってことは、公園とかだろうか。
KP
前を見れば、空き地のような小規模な公園が道の脇に見える。
その公園は一見して異様な状態になっていた。
まるで何か、大きな丸いものを叩きつけたようなすり鉢状の跡が全体に残されているのが、車内からでも分かる。
佐倉 光
「あんまUFOって感じじゃないな」
車を公園の前に止めて降りる。スマホをひとつ録画モードにしてシローに渡す。
もう一つ自分でも録画にして持ったまま近づく。
こちらは補助だ。あくまで見るのがメイン。
KP
「ん」シローは真剣な顔でスマホを受け取り、その跡全体を画面に映す。
KP
近づくと、すり鉢状の穴の中に、砂が溶けたようなガラス質の跡が残っているのに気づく。
土が盛り上がった周辺部には何かが焼け焦げたような痕跡も残されており、これは何か高温の物体に接触したのだ……、と分かるだろう。

そう、例えば隕石のような。
KP
穴の隅には小さな立て札が置かれていた。そこでこちらに背を向け、何か作業している白衣姿の人間がいる。
佐倉 光
あの光、やっぱ隕石だったのか?
作業しているのは天文学者か誰かだろうか。
佐倉 光
「お仕事中すみません。お話お伺いしても?」
KP
「ん? ああ。UFOの噂でも聞いて来た人ですか?」
白衣姿の青年が振り返る。彼は胸にネームプレートをつけていた。
KP
ネームプレートには見たことのある大学名と、「班目研究室」という記載がある。

よく世話になる図書館がある、あの大学だ。
どうやらあの異星文明の権威(自称)、一応本当に教授ではあったらしい。
佐倉 光
「そうなんですよー。
昨日その流星っぽいの見たものでー、何か詳しいお話聞けないかなーとおもいまして!
例えばその流星?  UFO? に、異星人が乗っていたとか、異世界の門が開いちゃったとか、そんな予測は立てられます?」
KP
彼は大きく溜息をついた。
「はぁー……。教授のアレ見た方ですよね?
そういうのはうちの教授が大好きですから、直接どうぞ」

彼はどこかに電話をかける。
KP
「教授まだ居ます? はぁー、あー山に土掘りに行っちゃった。
分かりました、明日朝にいらした時に伝えて下さい。同じ趣味の方がえーっと」

彼は電話を保留にし、こちらを振り向く。
KP
「お名前は何とおっしゃいますか?」
KP
〈心理学〉するまでもなく、自分の研究室の教授の話をしているというのに、すっかり呆れた口調だと分かる。
佐倉 光
「あ、はい只野です」
連絡先を求められるならいつでも切れるサブスマホの連絡先を教える。
場合によっては波照間さんに託そう。意外に有益かもしれない。
KP
「只野さんって方がいらっしゃいます。あー、はい。朝9時半か昼の13時。はい。分かりました」
彼は電話を切り、あなたに名刺を一枚渡す。
KP
「明日朝の9時半か、13時でしたら空いているそうです。
こちらへどうぞ」
名刺には研究室の場所と大学の住所が記されている。
名刺を渡すと、彼は背を向けて作業に戻る。
佐倉 光
名刺はありがたくいただいておこう。
KP
〈聞き耳〉で判定。
佐倉 光
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 53→成功
KP
「はぁ、うちの教授おかしいからなぁ……。
あの趣味さえなければすごい人なんだけど」

そんなぼやきが耳に入った。
佐倉 光
「その様子だと、この辺ではなにも見つからなかったんですか?」
その人はなにか見つけてないかな。
KP
「ああ、確かに高温の物体が接触したようではあるので、天文研と地質研と共同調査中ではあるんです。
ただ肝心の物体がどこにも見つからないので、人為的なものではないかって線が有力ですね。
事故や悪戯の線については、自治体の方で当たって下さっているそうです」
佐倉 光
「へぇー、YouTuberのいたずらとか?
でも僕、落ちてくるところは見たなぁ」
そのへん良く見てみるけど、なにか気がつくようなことはあるかな。
KP
よく見ても、先程以上の何かを見つけることはできない。
巨大隕石が落ちたような痕跡だと思えるのに、破片すらそこには残っていない。
佐倉 光
専門家が見て何も見つけられないのに、素人が見てどうなるものじゃないか。
今日はおとなしく帰って、専門家の意見を聞くとするか。
一応牧志たちにも意見は聞くよ。
KP
意見を聞こうと振り返ると、三人の牧志たちが穴を見つめて立ち尽くしていた。
女性の牧志
「ここ……、見覚えがある」
目つきが悪い牧志
「俺も。間違いない、見たことがある」
弱気な牧志
「俺も……、俺もだ。見たことある。
どうして見たことがあるのか分からないんだけど、でも、見たことがある」
牧志 浩太
「俺は見たことなかったから、三人だけが見たことあるのか」
佐倉 光
「三人が現れたことと、ここに落ちてきたものには関係があるってことか」
牧志 浩太
「そういうことになるな。
落ちたことでゲートが開いてとか……、でも、それならなんで俺の部屋に出てきたのか、なんだよな。
他には何か」
目つきが悪い牧志
「いや、他には何も。でも、そうだ。ここに何かがあった気がする。
何か、くそ、何なのか思い出せない」
目つきの悪い牧志は記憶を辿ろうとするが、出てこないらしく、唸るばかりだ。
佐倉 光
この周囲の人に昨日何か見かけなかったか訊きたいな。
訊けそうな人はいる?
KP
周囲は閑散としていて、民家はあるが人通りはない。
周囲の家々から微かに、家族の楽しそうな声が聞こえる。
佐倉 光
「仕方ないな、一度帰ろうか。
思い出してもらえれば何か手も打てるかもしれないけど、今のところできることはなさそうだ。
帰ったら俺ももう少し調べてみるよ」
目つきが悪い牧志
「ごめん、頼む。
俺も後で動画見て思い出してみる」
女性の牧志
「ああ、後で全員で見直してみよう」
弱気な牧志
「ごめん……」
牧志 浩太
「まあ、ここが関係あるってことだけは分かったわけだしさ」
KP
シローはちょっと眠そうにしている。
佐倉 光
では、皆つれて一度戻りつつホテル探そうか。
今日はもうかえって寝ることにして、波照間さんの予定聞いて、来られそうな時間に合わせて教授のアポとろう。
KP
人数が多いので少々難航したが、部屋は無事に見つかった。
丁度よく、問題の大学にも近い。
波照間 紅
波照間からは手短に、朝なら大丈夫だと返ってきた。
KP
さて、部屋割りはどうしよう?

佐倉 光
六人全員じゃなくてシロー含む三人は普通に帰るつもりだった。
来訪者組は女部屋と男部屋で勘弁してもらおうかな!
皆で宿泊だとするとそこにもう一部屋足して宿泊になるかな。
KP
なるほど。
来訪者組だけホテルに泊まってもらって、佐倉さん達三人は普通に帰る?
佐倉 光
まあー、夜に何か起きる可能性もあるか?
パッと消えて騒ぎになってもこまるし、宿泊するか。
KP
消えたら…… 牧志に行方不明ないし泊まり逃げの嫌疑が!
ホテルは先払いだろうし泊まり逃げは大丈夫か。
佐倉 光
鉢植えとがらくただけを残して消えちゃう可能性もまああるからなー
KP
では、女部屋:女牧志、男部屋:目つき悪い牧志・気弱な牧志、
いつもの面子部屋:佐倉さん、牧志、シロー?
佐倉 光
それでいいと思います!
あ、それぞれに予備スマホ渡しておくよ。

KP
車を走らせ、大学近くのホテルに入る。
彼らは予備のスマホを受け取り、それらに先程の動画をコピーする。
目つきが悪い牧志
「助かる。何か思い出したら連絡するよ」
女性の牧志
「お休み。一応また明日、かな」
牧志 浩太
「ああ、お休み」
弱気な牧志
「何から何まで、本当にありがとう。お休み……、また明日」
KP
牧志と彼らは口々にそう言い合う。
佐倉 光
「お休み。
帰れるようになったらなったで帰っていいけど、なんかヒント残しといてくれよな」
冗談半分本気半分でそう言って別れる。
女性の牧志
「その時はちゃんと挨拶して帰りたいな。随分世話になったし」
目つきが悪い牧志
「それは同感。急にワープした時のために、ホテルのメモでも横に置いて寝ようかな」
弱気な牧志
「頑張る……」
三人はそれぞれ手を振り、部屋の扉の向こうへ消えた。
KP
特に用事がなければ、彼らは部屋に入っていく。
ビジネスホテルの一室に、あなたと牧志、シローという、いつもの三人が残された。
佐倉 光
明日のアポは9時半だから、朝を早めに食べて出かけよう。
佐倉 光
「たまにはホテルってのも気分が変わっていいよな」
シロー用に補助ベッド入れて貰って早めに休むかな。
牧志 浩太
「確かにな。旅行でもないのに近所のホテルって、割と新鮮」
いつもの三人だけが残った部屋で、ジャケットをハンガーにかけながら牧志が笑う。
KP
「おやすみー」シローはだいぶん眠いらしく、補助ベッドが来る前にもう寝そうになっている。
牧志 浩太
「歯磨きだけしような」
牧志がシローに歯磨きをさせ、その間に補助ベッドを入れてもらう。
佐倉 光
「専門家とは言ってもあまりあてになりそうな感じではなかったな。
そもそもが墜ちてきた物が見つからないんじゃ専門家だってどうしようもないだろうし。
何か少しでも情報が得られりゃいいんだけどなぁ」
欠伸をしながらこちらも歯磨き。
なんだかんだであちこち行って疲れてしまった。
牧志 浩太
「そうなんだよな。すっかり呆れられてたし、一体どんな人なんだろうな。

……このまま分からなかったら、それこそ本格的にBarに当たってもらうしかないか。
それで分かるか、っていうと分からないような気もするけど」
シローを寝かしつけて、牧志も大きく欠伸をする。
牧志 浩太
「何だかんだ楽しかったけど、結構疲れたな」
佐倉 光
「ああ、明日早めだし寝よう。お休み」
ベッドでゴロゴロして調べ物しつつ眠りに落ちる。
牧志 浩太
「ああ、お休み」
牧志も少し調べ物をしてから、同じようにベッドに身を横たえ、シローを挟んだ向こうで寝息を立てだした。
KP
よく、分からない一日だった。
牧志が増えて。女だったり目つき悪かったり気弱だったりして。
一緒に食事をして、遊んで。パズルゲームで優勝をもぎ取って。

よく、分からない一日だった。
KP
……あなたは疲れのままに、とろんと眠りに落ちてゆく。

KP
佐倉さんと牧志は〈聞き耳〉で判定。
また、佐倉さんは1d3+1を振ること。
KP
1d6 Sasa 1d6→5
牧志 浩太
1d100 97〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 60→成功
佐倉 光
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 48→成功
佐倉 光
1d3 Sasa 1d3→2
3です。
KP
3d10を3回どうぞ。
佐倉 光
3d10 Sasa 3d10→6,3,10→合計19
3d10 Sasa 3d10→6,3,2→合計11
3d10 Sasa 3d10→2,2,8→合計12

KP
……ずる……、ずる……、ずるずる、ずる……
……ずる……、ずる……、ずるずる、ずる……
……ずる……、ずる……、ずるずる、ずる……

這いまわるような、撫であげるような音を、眠りの内側であなたは聞く。
それは夢ではなかった、二度目だ。今度こそきちんと分かった。
昨日の夜に聞いた音は、この音だ。

今度こそあなたは、音に反応して目を覚ますことができる。
佐倉 光
なんだ……? あの時と同じ音だ。
目を開け、その音がどこから聞こえてくるのかを探る。
牧志 浩太
目を開くと、傍らで微かに気配が動いた。
牧志も目を覚まし、寝床の中で身構えているらしかった。
KP
音は壁の向こうから聞こえていた。
壁の向こう、女牧志が泊まっている部屋と、二人の牧志が泊まっている部屋とがある方だ。
そこから、何かが這いずる音がする。
佐倉 光
しまったぁぁぁ! これ弁償案件だ!
KP
そう弁償案件なのです! ゴメン!
佐倉 光
なんだ、何かがいる!
三人の部屋にコールする。
KP
スマホのコール音が部屋の向こうからむなしく数度響き、そして……、途絶えた。

応答は、ない。
牧志 浩太
「佐倉さん」
牧志が小さくあなたの名を呼んで身を起こした。
佐倉 光
「あいつらが来たときにも聞いた音だ。何か起きているんだ」
部屋を出て、三人の部屋の前へ行く。
ドアをノックして声をかける。
牧志 浩太
牧志は頷いて、シローを起こさぬようそっと身を起こす。
あなたと共に彼らの部屋へ向かう。
KP
どちらの部屋をノックする?
佐倉 光
まず男二人の方。
KP
部屋の中から、応える声はしなかった。
何かが這いずる音が一度、ひた、と止まり、あなたの存在に気づいたように、扉の方へ近づいてくる。
佐倉 光
なんだ? 這ってる?
身構え、腕輪に触れる。
佐倉 光
悪魔が、いるのか?
扉は開く?
KP
あなたのCOMPは通常通り、あなたの指先に反応を示す。
扉を開こうとすると、扉の向こうで微かな物音がし、ドアノブが鍵ごと消滅した。
KP
扉が微かな音を立てて開く。
目つきが悪い牧志
そこにいたのは悪魔ではなく、目つきの悪い牧志だった。
両眼をぽっかりと開き、ぼんやりと、目を開きながらにして眠っているようなうつろな眼で、地面に這いつくばってこちらを見上げていた。
弱気な牧志
その背後で、気弱な表情を浮かべていたはずの牧志が、同じように地面からこちらを見上げる。

室内は荒れ果てていた。
屑籠や布団が半分消滅し、預けたはずのスマートフォンもなくなっている。
佐倉 光
「うわあぁぁぁ!?」
叫んでCOMPを立ち上げ、《アナライズ》
牧志 浩太
「う、うわ、うわぁあああ!? 食べてる!?」
牧志が一瞬遅れて目の前の状況を認識し、悲鳴を上げる。
KP
《アナライズ》の結果は [ HUMAN ] [ 邪神 ] と一瞬表示されたが、それが [ 外道 ] に切り替わる。切り替わって、再び [ HUMAN ] [ 邪神 ] と表示される。それを不安定に繰り返す。
佐倉 光
「外道!? おい! 牧志! 牧志!」
二人に声をかける。
くそ、二人ともどうしたんだ!?
あの不定形は二人の体に見えるか?

佐倉 光
解決どころか昏迷を増す予感。だって+3? ですよね!
KP
ばれた。+3です。
KP
アイコン整えたはずがまたややこしいのが増えましたが、終盤なので!
佐倉 光
アーハーン。
このシナリオ専用のCSSとしましたので増えても問題ありません!
KP
ありがとうございます!

KP
彼らの足元ではあの不定形とも違う、何か形容しがたいようなものが蠢いていた。
不定形で、何の形でもなく、何の形でもあるような無限に変化する何か。
弱気な牧志
「あ……、れ、」
あなたの声に、ぴくり、と気弱な牧志の頭が動いた。
弱気な牧志
「あれ……、俺、なにして……、佐倉さん、牧志?」
目つきが悪い牧志
「牧志? 佐倉さん? 驚いてどうしたんだ?」
KP
虚ろに開かれていた眼に、ふっと光が戻った。
数度ぱち、ぱち、と瞬きして、状況を分かっていない様子でつぶやく。
先程一瞬見えた「もの」は、彼らの足元から消えていた。
佐倉 光
二人の意識はともかく、体は悪魔のものであるらしい。
すると、もう一人もか?
佐倉 光
「ちょ、ちょっと待てっ! 部屋!! 壊れ……」
慌ててもう一人の部屋の扉をノックノック
KP
ドアノブを失った部屋の扉が、ノックの勢いできいと音を立てて開いた。
ベッドが半分なくなった部屋の中で、女牧志が背を丸めて横たわっていた。
女性の牧志
「……佐倉さん……?」
ノックの音でようやく目を覚ましたといった風に、女牧志がぼんやりとあなたの名を呼ぶ。
佐倉 光
「わー。どうしよう牧志」
呆然と呟いた。
女牧志にもあの不定形とも違う何かは見える?
牧志 浩太
「ど、どうしようこれ、弁償、部屋が大惨事」牧志も動転している……。
KP
ぼんやりと振り返る彼女の足元に一瞬、あの不定形とも違う何かが見えた。
しかし、彼女の意識が目覚めていくと共に、それは見えなくなる。
佐倉 光
「こいつらが本当に牧志かどうかはさておいても、体は確実に悪魔だって事は分かっちゃったなー。
色々面倒なことに」
ため息をつく。
部屋の中になにか変わったものは見える?
KP
荒れ果てている以外、変わったものは見えない。
眠そうに身を起こした女牧志のシルエットがおかしい。腹がぼこぼこと膨らんでいる。
佐倉 光
「うわうわ、なんだそれ?」
慌てて部屋に踏み込む。
彼女の前にかがみ込んで腹を観察。
佐倉 光
「痛くないのか、それは!?」
女性の牧志
「これ? ……」
まだぼんやりとした眼で、彼女は重たい腹を支えるように脚を組み替える。
あなたの視線につられるように、自分の身体に視線を落とす。
女性の牧志
「え、」
その時初めて彼女は、その存在に気づいたようだった。
中に何かがいるかのように暴れ回る腹を、驚いて腕で押さえ込もうとする。
女性の牧志
「あ、ああ、え、何だこれ」
佐倉 光
とても嫌な想像をした。
寄生生物が腹を割いて飛び出す……そんなコズミックホラーの場面を。
佐倉 光
「まさか」
あとの二人はまだ部屋に寝転がっている? それとも一緒に来ている?
KP
あとの二人はまだ部屋で寝転がっている。
ぼんやりしていたので、ついてきてはいない。
KP
あなたの見る前で、自分の身体の異変に慌てる彼女の腹が瞬く間に膨れ上がり、そして、

ちぎれてもう一人の牧志になった。
女性の牧志
「へ……、」
目を白黒させる彼女の腹はつるりとした形に戻っており、怪我はないようだ。
佐倉 光
「は!?」
声を上げた。
増えた方は裸かな。
牧志 浩太
「え、ええ、俺が増えた、いや増えたけど、また増えた?」
牧志が混乱した様子でつぶやく。
ガタイがいい女牧志
「あれ、俺がもうひとりいる……」
立ち尽くす裸の牧志はこちらも女で、緩やかに瞬きをしながら状況の分かっていない調子で呟く。
女性の牧志
「え、ああ、と、とにかく何か着て」
ガタイがいい女牧志
「うわ」
女性の牧志
女牧志が慌てて牧志からジャケットを剥がして彼女(?)にかぶせる。
ガタイがいい女牧志
……ジャケットだけを着た彼女(?)の姿は、裸よりも問題があるような気がしなくもない。
佐倉 光
「増えんのかよ。ええー。いや。ある意味面白いけど」
新しく来た方も女性ってこと?
KP
新しく来た方も女性で、女牧志とそっくり……いや、全体的に筋肉に厚みがあり、いかにも力がありそうな身体つきをしている。
佐倉 光
「面白いけど、弁償……」
がっくりと膝をつく。
佐倉 光
「明日から異界探さないと……」
牧志 浩太
「えっ何これ一日ごとに俺が増えるってこと? 何かの特異点にでもなった……?」
弁償間違いなしな室内で、牧志が呆然と呟いた……。
佐倉 光
「また生贄に上げられようとしてて、そのために集められているとか……じゃないだろうな?」
頭かきむしる。
佐倉 光
「誰かを起点にして増えるのか?」
牧志 浩太
「さっきの感じだと、女の俺からまた俺が増えた感じだよな……? 前からこういうことあった?」
女性の牧志
「い、いやない。そんな一日毎に増えたりしない、しないはず、しない」
女牧志は混乱したように自分の腹をつついている。
ガタイがいい女牧志
「何言ってるんだ、俺が増えたって?」
KP
その時、慌てた様子でもう片方の部屋から気弱な牧志が歩いてきた。
弱気な牧志
「な、な、なあ、俺が、俺達が増えた」
KP
……どうやらあっちも増えてしまったらしい。
佐倉 光
「わぁ。どうしよう。俺逃げたい」
頭抱えて呻いた。
とりあえずふたりで宿泊していた部屋に集まって貰おう。
KP
唯一荒れずに済んだ部屋に集まると、牧志が実に総勢七人。
室内が、せまい。
女性の牧志
呆然と自分の腹をさすっている女牧志と。
目つきが悪い牧志
「起きたら部屋ぐちゃぐちゃだし、俺増えてるし、何だこれ」
大いに困惑している目つきの悪い牧志と。
弱気な牧志
「ご、ごめ、ごめん佐倉さん、牧志、」
すっかり縮こまっている気弱な牧志と。
ガタイがいい女牧志
「えっと……、俺がいまここで増えた、生まれたっていうのか?」
困惑している裸にジャケット姿の女牧志と。
弱気ガタイ良い牧志
「俺、俺が二人いる、二人、七人?」
混乱した様子でつぶやく、がっしりとした体格の割に気弱そうな裸の牧志と。
目つきが悪い牧志2
「…………何これ」
素裸なこと以外は、目つきの悪い牧志に体格までそっくりな牧志と。
牧志 浩太
「…………何だかごめん、佐倉さん」
自分の眼に囲まれて、視線を少し下げざるを得なくなっているサングラス姿の牧志。
KP
「??????」
そして、宇宙猫になっているシロー。
佐倉 光
多い。さすがに多過ぎ。
そしてどの牧志も割と人間らしく見える。
まずはみんなに《アナライズ》
KP
《アナライズ》すると、[ HUMAN ] [ 邪神 ] の反応が返る。
女の牧志二人だけ、 [ 外道 ] の反応が一緒についてくるが。

痣持ちが七人。それだけで何か起きそうだ。うーん。

KP
えらいことになっておりますが、このあと班目教授の所へ行くと、割とさらっと背景事情が判明します。
佐倉 光
さらっと!
新顔三人の事情は詳しく訊かない方がいいのかな?
KP
いや、聞いても大丈夫です。OK。何やっても大丈夫です。
えっこれここからどうなるんだ???? ってなってたら何なのでお知らせだけしておこうかと。
佐倉 光
あ、はーい。

佐倉 光
まいったな。収拾がつかないぞ。
とりあえず事情聴取だ。
佐倉 光
「俺は佐倉。で、こっちがこの世界の牧志。
あー、牧志、たちは、どこからどうやって来た?
突然この世界に現れたんだ」
新顔の三人に訊いてみる。
ガタイがいい女牧志
新しい方の女牧志は顎に手をやり、少し考える。
ガタイがいい女牧志
「いや……、増えた、であってるかもしれない。三人の俺達と一緒にいて、佐倉さん達におやすみって言った覚えがある。

俺、増えた方なのか?」
佐倉 光
「……え。えぇ。つまり? 異世界から来たわけじゃなくて、分裂した?」
佐倉 光
確かに実際に分裂したところは見たけど……
目つきが悪い牧志2
「いや、俺もそうなんだけど、突然現れたって? 俺が?」
目つきが悪い牧志
「現れたんだろ。俺はちゃんと服着て寝たし」
弱気ガタイ良い牧志
「お、俺が突然現れたって? 昨日、ちゃんとおやすみって言ってこの部屋で寝たのに」
弱気な牧志
「そ、それは俺だよ、俺がここで寝て、」
KP
……ごちゃごちゃだ。
佐倉 光
「ん?  最初の三人と事情が違うのか?
というかもしかして、最初の三人からして一人から分裂したのか。だから記憶がおかしなことになっていたんじゃないのか」
最初に現れた女性牧志の方を見る。
目つきが悪い牧志
「俺もさっきみたいに、突然どこかで分裂して生まれたって? ぞっとするな。
くそ、でも納得は行く」
目つきの悪い牧志(服を着ている方)が乱暴に髪を掻き回し、触覚に障ったのか、うー、と唸る。
佐倉 光
「まーそれはともかくだ。
そっちの三人は俺から見て普通に分裂して増えてる」
おおっ。もう服以外では見分けがつかないな!
佐倉 光
「覚えていることについて教えてくれないか。
紅だったことがあるなら、そこから。
なければそう言ってくれ」
というわけで最初の三人と同じように記憶の確認を行う。
内容ざっくりでもいいし、詳しくてもいい。
KP
彼らはめいめいに記憶を語り、服を着ている方の「元の」三人と頷きあう。

彼らが語る内容は、この部屋でお休みと言い交わすまで、ぴったりと同じだった。

『紅』のことも。
女牧志の身体のことも。
昨日のゲームのことも。
気弱な牧志が記憶が混乱している、と語ったその混乱した記憶までも。
牧志 浩太
「これだけ記憶をぽんぽん複製されると、わけがわからなくなってくるな」
牧志 浩太
「……また誰かがコピーしてるのか? 
でも、女の俺はちゃんと別の記憶、あるんだよな」
目つきが悪い牧志
「増えたんじゃなくて、経緯が全く同じ異世界から来た、とか。
……気の弱い俺の記憶が変なのも、俺の記憶が変なのも一緒なんだよな。ああもう」
佐倉 光
「前の三人、ばらばらの記憶ありそうだったし、その場で発生したとは考えにくい……とするとやっぱダウンロードの上分裂したかなぁ。記憶をごちゃ混ぜにして。ややっこしい。
あとこの調子で増えまくられたらさすがに面倒見きれない」
ホテルの部屋損壊なんて賠償いくらになるんだか考えたくもない。
佐倉 光
「うーーーん」
唸りながら考えを纏めがてら波照間さんに連絡を入れる。
ただの悪魔なら駆除して終わりだってのに、中身が牧志、しかも本物っぽいのが本当に始末に負えない。
ダウンロード説で、悪魔同様一度殺せば元の世界に戻るってんなら……
それでも牧志を殺すのはちょっと、いやだいぶ嫌すぎる。
佐倉 光
「最悪Barのみんなの力も借りないと。
だけどアッタの奴駆除しろとか言い出しそうだしなぁ」
佐倉 光
「とりあえず申告より多人数で泊まった上に部屋損壊はやべぇな。最悪裁判沙汰だぞ。
もういっそ悪魔のせいにするか。半分本当だし」
時刻、何時だろ。
とりあえず新規三人分の服を確保して、人数誤魔化さないと。
佐倉 光
「牧志、ほんと悪いけど……いやこの世界の牧志な!?
一度家に戻って服持ってきてくれないか。なるたけ見分けつきそうなやつを頼む」
俺はこの六人を眠らせないようにしつつ見張るか……
KP
ドタバタしているうちに、それなりにアポイントの時間が近づいている……。
牧志が服を持って戻ってきたら、すぐ出られるようにしておくべきだろう。
牧志 浩太
「あ、ああ、勿論!
そんなにないから、佐倉さんのも借りていいか」
牧志は部屋の時計をちらりと見て、言うなり飛び出していく。
KP
ばたばたと彼が飛び出していった後、その場にはあなたとシロー、そして六人の牧志たちが残された……。
弱気ガタイ良い牧志
「っくしゅ、」
裸の気弱そうな牧志が小さくくしゃみをして、ベッドの布団にくるまった。
他の二人もめいめいにタオルを巻いたり、布団を巻いたりする。
弱気ガタイ良い牧志
「俺達が、悪魔で……、分裂して……」
彼は布団にくるまりながら、心細そうに呟いた。
佐倉 光
「まーな、お前らは多分悪くないんだ。
いつも通り巻き込まれただけで」

しかし、早期解決が望めなかった場合は恐ろしいことになる。
色々な牧志が見られて面白いなぁ、なんて暢気なことを言っている場合ではない。
佐倉 光
「昼間は普通に牧志で、夜……寝るとか。時間帯によるものか、睡眠という行動をトリガーにしてかは分からないが、悪魔化するらしいな」
どうやら牧志たちが食べていたらしい家具の写真を見つめる。
佐倉 光
無機物だけ食うならまだいい。何とでもやりようはある。
しかし意思に関係なく生き物も食い散らすようだと……大変まずい。
いくら中身が牧志でも、人間として扱うのが難しくなってしまう……

新しく来た方の記憶、ここに来る前の話も昨日聞いた話と同じなのかな。
女性の牧志
「何だか……、悪いな。
本当に巻き込まれただけなのか、自信なくなってきたよ。
この数ヶ月、俺はどこで、何をしてたんだろう」
目つきが悪い牧志
「さっきから考えてたんだ。
俺が分裂したとしたら、昨日じゃなくて、あの時なのかもしれないって。
こっちの世界で、世界を跨いだ事件があったっていう時。
あの時、俺は女の俺から分裂したのかもしれない」
目つきが悪い牧志
「記憶なんだけど、完全に同じみたいだ。
ここに来る前も、この数ヶ月のことを覚えてないのも」
女性の牧志
「そう、びっくりするくらい一緒だった。

さっき、色々あった時の詳細とか普段どうするとか、まず話さないようなことまで聞いてみたんだ。
それも一緒だった」
KP
半分抉れた棚は、尻尾だけになったおもちゃと一緒に、写真の中で無惨な様子をさらしていた。
佐倉 光
「え?  もとはやっぱり一人だったんじゃないかってことか?
分岐じゃなくて……分裂?」
佐倉 光
「もとは一人なのにこんな、個性的になっているっていうのか?  性別まで変わって?」
佐倉 光
「いや、しかし引っ越したときに起きたことは違ったんじゃないのか?」
つまり、異世界から女の牧志が来る。そっから肉体的に分裂。意識を次々とダウンロード?
いや彼ら曰く分裂したのはもうずっと前の話で?
佐倉 光
「整理できなさすぎて頭痛がしてきた」
KP
一体何が起きているのだ。
あなたが混乱しだしてきた頃に、牧志が戻ってきた。
牧志 浩太
「ごめん、遅くなった! とりあえず残りある服全部持ってきた」

牧志が持ってきた服を見れば、あなたのシャツと替えのパーカー、昨日女牧志が途中まで着ていた服、そしてジャージの上下だった。

見た目のよしあしはともかく、なんとか区別はつきそうである。
佐倉 光
「よし、まず着替えて。
ドアがぶっ壊れているんだ、遅かれ早かれ騒ぎになる。
急いで」
交代交代で着替えてもらおう。
それからホテルに悪魔が出たと通報と同時、悪魔使い仲間に来てもらおう。
悪魔が出たんだから仕方ない。
で、賠償だのなんだのは後回しにしたいからそうやって少し時間を稼ごう。
佐倉 光
あーあー、また怒られる……
佐倉 光
とりあえずその場は任せて、まずは教授の話聞きに行こう。いっそ全員連れていくか。
弱気ガタイ良い牧志
「う、うん」
KP
急いで服を着る彼らと一緒に、あなた達はホテルを脱出する。
入れ替わりで悪魔使い達がホテルに向かうのが見えた。

KP
全員で向かう?
幸い、車を調達し直さなくても電車で二駅程度の距離だ。
徒歩で向かうこともできるだろう。
どちらにせよ、全員連れて行くなら通行人に二度見されるが。
佐倉 光
ぞろぞろ行こうもう。
こいつらだけ置いていったら何が起きるかわからんし。
昨日は昼間は問題なかったけど、今日は違うかもしれない。

徒歩でぞろぞろと向かう。
波照間さんには「予定が変わったので駅で落ち合いましょう」という一言と一緒に、ぞろぞろいる牧志の写真を送る。
波照間 紅
驚きのあまり手がすべったらしく、意味不明な文字列の後に「分かった」と送られてくる。

波照間 紅
ぞろぞろと最寄り駅に向かうと、あなた達を見て波照間がぽかんと立ち尽くしていた。
佐倉 光
「なかなか壮観でしょ?」
昨日、と言うか今朝の経緯を話す。
佐倉 光
「つーわけで、割と藁をもすがる心持ちになってんですよ」
波照間 紅
「あ、ああ、これは凄いな……」
波照間 紅
「しかし、そうか。
確かにそれは放っておけないな。
何か分かればいいが……」
それ以上続けず、波照間は口を噤んだ。
KP
何度も行った大学の門をくぐり、いつもの図書館へのルートよりも奥へと入る。

煉瓦作りの講堂や、立ち並ぶ校舎の間にずらりと停められた自転車。
独特な風景の間を総勢十人で抜け、一角にある研究室を目指す。
佐倉 光
例えば相手が良からぬ事を考えたとしてもこちらは10人。
そう簡単にどうこうすることはできないだろう。
堂々と進む。
佐倉 光
「昨日お願いした只野です」と告げる。
KP
あなたが告げれば、扉の向こうからは尊大な声で「入りたまえ」と返される。
佐倉 光
「失礼します。人数が多いのですが、ご容赦を」
頭下げてぞろぞろ入室。
波照間 紅
「失礼致します」
牧志 浩太
「「「お邪魔します」」」
波照間の声と、七人の牧志の声が揃う。
KP
扉を開けば、そこにはこざっぱりとした部屋がある。
巨大な本棚がある以外に、特に気になるものはない。
本棚には彼の研究テーマなのだろう、小難しい本が大量に詰まっている他、オカルト関連の書籍も数多くある。

その巨大な本棚の傍らに、芝居がかった仕草でチェアに腰かける教授の姿があった。
教授の姿が表示される。
佐倉 光
うわー、うさんくせー。
佐倉 光
「初めまして、只野です。よろしくお願いします」
KP
教授はあなたと波照間、シローの後ろから入ってくる牧志たちの姿をみとめると、伏せ気味の眼から薄く覗く瞳孔を大きく見開く。
KP
「ほう……
いや、皆まで語る必要などない。君はそれに困り果てているのだろう?
そうして真理の探索者たる私の所に来た。そうだろう、そうだろう」

自分でうんうんと頷いて、彼はサングラスをかけた牧志の顔を不躾に指さす。
佐倉 光
「困っているのは事実ですが、友人に無礼な態度をとられるのを容認する気はないです」
釘は刺す。
佐倉 光
「何かご存知なんですか」
KP
「フフ、フフフ。友人、友人か。そうか。
だが事実君はそれに困っているのだろう?
最初からその数だったのではなく、増殖してそうなったのではないかな?」
弱気な牧志
気弱な牧志が、後ろの方でびくりと身をすくませた。
佐倉 光
「……そうですね。増殖した、という言い方が正しいかどうかはともかく」
認める。事実は事実だ。
KP
「そうだろうそうだろう。君は今、まさしく怪奇現象の渦中にいる。

君を悩ませているものは、物体Xと呼ばれるクリーチャーだ。この星ではないどこか、きっと似たような惑星から来たのだろう。
宇宙には、我々の星と極めてよく似た経過を辿る惑星が三つはあるというからな」

汚らわしい、と隠す気もなく教授は悪し様に呟いた。
佐倉 光
「感想は置いておいて、詳しくお願いします」
正直この感想は牧志たちにも波照間さんにも訊かせたくない類いだ。
KP
「おそらくは、先日この街に墜落した UFO と思しきものに乗ってきたのだろう。
私が考えていた通りということだ。
偶然にか、それとも必然か⸺ ともかく奴らは、この惑星を狙っているのだ。間違いない」
KP
「奴らは自由に自分の姿を変えられるという特徴を持っている。あらゆるものを捕食し、吸収し、吸収したものの姿を奪い取るのだ。
その擬態は見た目だけにあらず、分子構造、神経細胞、記憶にまで及ぶ……。

更に、体積を増やすことによって、無性での生殖活動を可能にしている。
分かるかね? それは君の友人ではない。君の親しい人間の姿を取ることによって君に取り入ろうとしている、ただの汚らわしい侵略者だ」
佐倉 光
「……吸収したものの姿を奪い取る、って、僕の友人本人はここにいますけど」
サングラス牧志を見る。
佐倉 光
「姿を変えて取り入ろうとしている説は最初に僕も考えましたが、
ちょっと暢気すぎる気もしますね。
確かに僕は彼らを排除しようとは思えないけど、他の人間はそうじゃない。
それに、それなら僕にずっとついてこないで姿を眩ませて別の人間に化けるべきでしょう?
このやり方ではあまり効率がいいとは言えないな……」
佐倉 光
はてさて。普通にそんなものなかった幻オチなのかどうなのか。
佐倉は情に目を曇らされているだけなのかどうか。
KP
「フフ、フフフ、フフフフ」
教授は背を曲げてくつくつと笑う。
KP
「親しい人間の姿をしたものを破壊できると? 物体Xの存在すら知らない人々が、それを排除出来ると?

そうではあるまい。君達がそうやって暢気にしている間に、それは倍々に増えていく。
いずれは君達だってそれの餌となる運命だ。そうしてこの惑星はそれに埋め尽くされる……」
KP
「しかぁし!」
教授は突然叫ぶと、両手を広げて天を仰いだ。
咄嗟に身構え、COMPに手を伸ばしかけた波照間を牧志が制止する。
KP
「しかし幸運にも、私は、人類は奴らの弱点を知っている。ずばり、奴らは火や電気、酸といったものに対して非常に弱い。
火によって焼き尽くされたそれらは、その汚らわしい本性をすぐに露わにするだろう。

さぁ、共にその害虫どもを駆除しようではないか。害虫はすべからく根絶やしにせねばならないのだ!」

コメント By.佐倉 光
ごちゃごちゃだった事態が少し落ち着いたかと思いきや、そんなことはなかったぜ!

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