こちらには
『俺の恋人が庭からボコボコ生えてくるんだが!?』 および佐倉と牧志が経験してきたシナリオ全体のネタバレがあります。
また、大きめの改変があります。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。とある事件より、体中の痛みに悩まされている。
基本悪魔を召喚して戦うが、悪魔との契約のカードを使ってその力を一時的に借りることもできる。
巻き込まれ体質らしい。
最近いきなり起きる不随意運動に悩まされている。牧志の心音を聴くと精神が安定するためか治まる。
牧志とは友人。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
現在、自らの目を見ることに激しい恐怖心を抱いており、無理に見続けると映るものを破壊しようとしてしまうため、サングラスをかけている。
佐倉とは友人。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
開始前
牧志を巨大化させます? 庭から牧志を生やします?
あれ気になるのでお願いします。
いつごろから始めましょう?
こちらの美術館挟もうかなと思ってたけど。
どっちにしても開始はいつでもok
途中の行動次第ですがスパッといけばだいぶん短いシナリオなので、こちらを先にやりましょうか。あれ読んだらだいぶ回したいパッションが上がってるし。
時間:1時間程度(オンラインでのボイスセッションを想定)
PL:1~2人
舞台:現代日本
発狂:ありえる
ロスト:低確率だが、ありえる
導入: 舞台は現代日本、季節は春頃。
探索者は街を歩いていると、新しく開店したというフラワーショップを見つけることになる。
活気のある雰囲気につられて、店へと入るのだった。
……それが、混沌の入口であるとも知らずに。
※別に恋人じゃなくてもよい。
Call of Cthulhu 6th
『俺の恋人が庭からボコボコ生えてくるんだが!?』
ひげさん 様
よろしくお願いします。
(あなた達は望むなら狂気治療のロールを振ってもよい。
この時点で佐倉さんが残3ヶ月、牧志が残1ヶ月である)
牧志はまだサングラスを手放せないが、サングラス越しなら人の目を見られないということもだいぶ減ってきた。
顔を上げて穏やかに笑う牧志の視線が、いつもの風景の中に戻り始めていた。
あなたは「神」と繋げられてしまったあの一件から、時折不意に、脳を電気信号で引っかかれるのにも似た、耐え難く不条理な衝動に苛まれるようになってしまった。
牧志の心音がなくては、あなたはそれを抑え込むことができない。
そんな何だか不安定な日常ではあるが、あなたはひとまず平穏な日々を過ごしていた。
そんなうららかな春のことだった。
あなたは牧志と共に、もうすっかり見慣れた街を歩いていた。
ちょっとした用事かもしれないし、どこかへ遊びに出たのかもしれない。
あなたは家の外に何かの用事があったが、激しい症状のせいで牧志についてきてもらわざるを得なかったのかもしれない。
理由は好きに決めてよい。
あ、シローはいてもいなくてもOK。
1d100 Sasa 1d100→54
1d100 Sasa 1d100→49
問題なし。
2d3 Sasa 2d3→2,2→合計4
4回復。
1d100 Sasa 1d100→13
1d100 Sasa 1d100→100→致命的失敗(ファンブル)
いつもの所に事情でかかれず、違う所へ行った所、大層相性の悪い医師に遭ってしまったようだ。
1d3 Sasa 1d3→3
1d6 Sasa 1d6→5
ひどいはなしだ
そういうときにたぶん佐倉は忙しかったり症状酷すぎで喋れなかったりしてフォローしてあげられなかったんだな。
あなたもそれを引き金に症状が悪化してしまい、牧志に声をかけることすらできなかった……。
どうにかその状況を脱したときには、シローがレトルトのお粥を温めて待ってくれていた。
飲まず食わずの状況を脱して口にする粥は、さまざまな意味で美味しかったことだろう。
牧志は粥を口にしながら、ぽろぽろと涙をこぼしていた。
あとシローは東浪見や波照間に世話してもらってるとはいえ、これだけ保護者が色々巻き込まれてたら自活力上がってそう。
病院に行ったんじゃなかったのか。
今すぐ何とかしなければならない。今すぐ何とかしなければ、悪い方向へ進む。
まず声をかけて、せめて、せめて……
動こうとした刹那襲ったのは痛みで、同時に混乱だった。
喉が痙攣し、まともに声が出ない。
いつものやつだ、落ち着いていれば治まるだろう。
しかしそんなのを待っていられる状況ではない、と思った。
早々に言葉は諦めてスマートフォンで字を打とうとした。
指がぴくぴくと痙攣していて細かい作業は無理だった。
それならPCを。それなら字を。
ことごとくが失敗した。
気持ちばかりが焦り、何一つ言うことを聞かない自分の体に怒りを覚えた。
そういう時は牧志の心臓の音を聴けば治まる。それは分かっていた。
しかしそういう意思表示をすることもままならず、
牧志がそれを察せる精神状態ではないことも見て取れた。
ようやく動けるようになって。
家の中のことができるようになって。
不意に症状に襲われることはあるものの、外に出られるようになって。
そうして不安定ながら穏やかな日々を取り戻して、あなた達は春の陽気をやさしく謳歌する街を歩いていた。
俺も牧志も随分弱っているから有り難い。
三人で買い物に出たんだったかな。
基本俺は好きな時間に好きなところへひとりで動くことが多かったが、
最近はシロー含め一緒に行動していることが多い。
互いに弱っていることを自覚していることと、
牧志がプライバシーなど要らない宣言をしたのが引っかかっていたのと、
なによりシローが気を遣ってくれるからだ。
シローはおもちゃを買ってもらって嬉しそうにしているし、牧志はそんなシローを楽しそうに見ていた。
道の脇を見てシローが声を上げた。
そちらを見れば、新しく開店したらしいフラワーショップがある。
このところ工事中だった建物で、どうやら今日から営業しているらしい。
華やかな看板には『ハッピーミント』と書いてある。
小洒落た建物の周囲には色とりどりの花々が飾られ、おや? 花に混じって花を象ったお菓子のブーケなども置いてある。
それが珍しいのか足を止める人も多く、一帯は活気のある雰囲気に包まれていた。
向いてから思いだしたように口を開いた。
シローも気になってるみたいだし、リビングにでも何か置くのもいいかもしれない」
その華やかな雰囲気に誘われたのか、牧志も頷く。
そういえば花のたぐいを置いていなかった部屋の窓には、あれから枯れることのない青い花がある。
どう見ても生花なのに枯れたり蟲に喰われたりしない。
水に入れなければどうなるのだろうと思って暫くそのまま置いてみたことはあるが、それでも変わらなかった。
それでも一応花だし、死なないとしても潤いは必要だろうと思い、コップに入れてたまに水を替えている。
隻眼の男の姿が浮かんだから、でもある。
面白い花瓶でもあれば買うのもいいかもしれない。
〈天文学〉で判定した場合、追加情報がある。
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 96→致命的失敗(ファンブル)
光は奇妙に心をざわめかせて、あなたは言いようもなく不安になる。
痛みチェックどうぞ。
サングラスが邪魔だったのかもしれない。
あなたが立ち止まったのに気づき、牧志は足を止める。
痛みの直前に少し、心をざわつかせるようなことが起きたと思うが……
牧志は顔を上げるが、その視線の先にもう先程の赤い星はなかった。
あなたはやはり、まだ不安定なのかもしれなかった。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》。
SAN 44 → 43
俺、割といつも冷静でいられるつもりだったんだけどな」
胸の辺りに手をやり、ヒランヤを握る。
ほんの少しずつ少しずつ、宵闇へと引きずり込まれてゆくような不気味な感覚。
魔界に降りて暮らそうか、などと面白半分で考えていた頃には感じられなかった、肌の下を這いまわる冷たく鈍い違和感と痛みと……恐怖。
あまりにも色々ありすぎるし」
何かの予徴かも知れない、そうじゃないかも知れない。
だけどいちいち気にしていたら何もできねぇよ」
牧志は微妙な言い方をすると、不思議そうにしているシローの手をつなぎ、花屋へと向かう。
そうだ、色彩や香りを楽しむために来たんじゃないか。
何もよりによって、記憶をぶっ飛ばした挙げ句牧志に殴り殺されかけた時のことなんか思い出さなくてもいい。
一度頭を振って、なんとなく店の中を見回しながら入る。
あの時のように重苦しくはない、爽やかな快い芳香が漂ってくる。
春の柔らかな緑が吊り下げられたポットから溢れ、プランターの白を見せないように飾られた鉢は室内を美しい森かのように見せる。
箱に入れられ虹色に染め上げられたプリザーブドフラワーのコーナーや、合わせて置かれているキャンディーのブーケが、いっそう華やかな雰囲気を室内に添えていた。
花を買う気はなかったのだが、つい目を奪われてしまう。
これなら部屋に少しくらい置いておいても……
俺が毎日決まった時間に水やれるわけねぇだろ。
疲れすぎて癒やしを求めちゃってんのか? 俺。
シローは巨大なユリの花に夢中だ!
まあ、プリザーブドなら世話も要らないし、一個くらいあってもいいかもしれねぇけど。
店内をゆっくり見る。
適当な一輪挿しねーかなー。
あなたがそんなことを思っていると、牧志が傍らで呟く。
同じことを考えたらしいが、懸念する内容が微妙に違う。
まあ、思うが言わない。植物だって命は命だしな。
放置して殺したら悪魔になるかも知んねーし。
鳥や動物の頭に花をぶっ刺す花瓶がある。何だかユニークだ。
そうやっていると、エプロンをつけた店員がにこやかに話しかけてきた。
名札に「御花」とある。似合う名字だ。
なんとなく頷いて返事をする。
彼女は嬉しそうに微笑んで、あなたを花瓶のコーナーに案内する。
そこにはガラス、プラスチック、陶磁器などさまざまな材質、形の一輪挿しがさりげない美を競っていた。
「お部屋にスペースのないあなたに!」と題された、ドアから吊すようなタイプもある。
傍らに、それらの花瓶に合うような切り花がたっぷりと飾られている。
たまにはこんなのも悪くないもんだ。
シンプルで倒れづらそうなのがあれば選ぼう。
あの花に似合うだろう。
「ありがとうございます。
こちら、開店記念のプレゼントです。
お一つどうですかぁ? 育てると綺麗なお花が咲きますよぉ。色は育ってのお楽しみ」
それを見て、あなたの足元に来ていたシローが「おはな! そだててみたい!」とぴょんぴょんジャンプを始める。
シローがちゃんと世話すんならな」
玄関近くかベランダならできるだろう。
近くにいるかな?
シロー、ちゃんと毎日お水やれるか? 花は動けないから、シローがお水やらなかったら喉が渇いて死んじゃうんだぞ」
鉢植え一つのことだし、シローの経験にもなると思ったのだろう。
植木鉢とポットを受け取る。
植木鉢とポット苗をあなたに渡すと、彼女は他の客の応対を始めた。
自分の部屋用にか、牧志も一輪挿しを一つ買ったらしい。
鉢のサイズってどのくらいかな。
置く場所にも困らないし問題ないだろう。
置かれた鉢を見て嬉しそうに水をやりだした。
そういえば訊き忘れてしまった。
苗のポットに説明は書いてある?
害虫や病気に強く、育てやすい花だそうだ。
花を育てるなんて初めてだ。
買ってきた一輪挿しに水をはって勿忘草をさす。
薔薇のような華やかな花を咲かせるそうだ。
早く見たいけど急いでも咲かないもんな。
あ、夕食何がいい?」
それなら割と手伝えるし。肉も野菜もとれるし。
そば入れる派? 入れない派?」
言っておいて両方食べたくなったらしく、そんな提案をしてホットプレートを取り出し始める。
シロー、キャベツ切れる?」
こっちもボウル出したりしよう。
切りたがるものの、それなりに手つきが危なっかしい。
やり方があまりにもまずいときだけ軽く声をかける。
そもそも俺自身がそんなに料理得意じゃないから最低限だ。
多少怪我した方が覚えるしさ。
「昔よく作ってもらったな、粉もの」
そんな機会もなかったし」
冷蔵庫にある物てきとうに入れて焼く、もっと雑な感じのやつだった」
ころんとキャベツのかけらが地面に落ちる。
シローはあわててキャッチしようとしたが、間に合わなかった。
お、ホットプレート温まってきた」
シローからキャベツを受け取り、油を引いたホットプレートに生地を流し始めると、辺りにいい香りが漂い始める。
二ヶ月前の事件までの半年くらいは気の休まる暇がなく、常に疲弊して自分が不確かで、常にもがき続けているようだった。
日常を楽しむどころか生きることで精一杯だった。
そんな時期と比べれば、今は長い休養期間のように感じられた。
終わった、とは思えなかった。
前にもここに引っ越してきてすぐの一年くらいは何も起きなかった。
楽しそうに肉を乗せて焼き上げていく背中に、変わらず薄く気を張ったような気配が引かれていた。
佐倉は抜くときは抜いてます。
牧志が常にそうすると決めたなら、牧志が見つけた異変に最大限の力で対処するのが仕事だってことにしようと決めたから。
たぶんシナリオ外の軽微な異変ならそれで何とかなってるんだ。
牧志が異変を見つけ、佐倉さんが力をもって対処するという組み合わせができてるんだなぁ。
シローには蕎麦ありと蕎麦なし両方を少しずつ、ハサミで蕎麦を切ってやる姿ももう慣れたものだ。
よし。我ながら大分効率的になった。箸を出して並べる。
動きに慣れたあなたのおかげで、後で大量の洗い物にうんざりする必要もない。
牧志が手を合わせて噛みしめるように笑った。
美味そうだなぁ!
声が揃う。
皆で作った料理は空きっ腹にしみる。
湯気に踊る鰹節を眺めて箸を入れて口に運んだ。
食べながらふと呟く。ベゴニアについては牧志とシローがやっていたので、そこまでよく見てはいないのだ。
室内でうまく冬を越させてやれば、来年も楽しめるらしい」
シローは鼻息荒い様子で苗を見ている。
おっと、ちょっと手元がお留守だ。
笑って軽く声をかけておく。
最初の花までは、言うほど期間はかからないかもしれない。
東浪見も誘おうか。忙しくなければ先輩達も」
最近心配させることも多すぎて、皆で集まって遊ぶこともなかったからな」
シロー預かってくれ、助けてくれ 以外の用件で連絡したいもんだ。本当に。
そう言って苦笑する。本当に頻繁に世話になっているのだ。
そういえば現地に旅行に行ってみるってのも忙しすぎて有耶無耶になってたな」
不思議なお花見で訪れた神社は、どうやら実在のもので、東北にあることは分かっているのだ。
今度の休みにでも行ってみよう。ゴールデンウィークは混んでそうだから、少し前か後がいいかな」
牧志の口調に、あなたはふと気づくだろう。
寒い所なら夏休みにでもと言ってもいい所、牧志は早いうちに予定を立てようとしている。
あー、里帰りとか?」
行けるかどうか分からないから、行けるうちに行っておこうと思って……」
あなたに言われて、牧志は初めて自覚したようだった。
牧志は苦笑して胸に手を当てる。
あったとしても帰ってこられれば問題ないって」
こういう時のお約束だ。先の不安を口にしてもいいことはない。
行けなくなったらなったで、また考えればいいし。
そんなの前提にしてもしょうがない、か」
最近色々ありすぎてぶっちゃけ金ないしさー」
車潰されたりしまくってるのに、精神異常きたしすぎてまともに稼げてないんだ……ここ半年。
正直、入院と通院だけで財布がまずい」
入院と通院とシローだ。金に困る要因しかない。
ちょくちょく行方不明になるせいで補習も増え、バイトも増やしづらい。つらい。
今問題があるとすれば、仕事中に突然声を上げたくなったり、
作戦会議などで喋れなくなってしまったりしてしまうことだ。
そんなピンポイントでまずいことが起きることはそんなにないし、
数分で治まるから今までは何とか……
何とかフォローして貰ったけど、場合によってはまずかったよなあれ。
少し前のことを思い出して苦笑する。
子供連れってのもあるし、丁度いいかもしれない」
浩司に変な誤解を与えかねない。
そうやって話しながら食事をしていると、皿の上は空になっている。
牧志はご馳走様、と呟いて箸を置く。
こちらも食事を終えて皿を片付ける。
片付けが終わったらゴロゴロして情報収集したり
牧志に新作パズルぶつけたり
シローにしょーもない面白動画見せたりしよー。
穏やかに光を放つPCのモニター。
何でもない春の日の夜。
コーヒーを新しく煎れて腰をすえて取りかかる。
牧志は温かいハーブティーを淹れ、楽しそうにあなたが差し出したパズルを解き始める。
遠くから微かに聞こえる車の音。
平和であることが嬉しい。
何も疑うことなく、悩むことなく、ただ好きなことに没頭できる時間が素晴らしい。
そうして夜更けまで(シローを寝かしつけたりしつつ)過ごした。
好きなことに夢中になって、幼子のように自由な時間。
そんな時間をあなたは、久しぶりに思うさま味わった。
そうして頭を思いっきり回転させて、ふっと気が抜けるとやってくるのは気持ちのよい眠気だ。
歯を磨きながらも考え続ける。
勢いよく宣言して自室に戻る。
あなたのそんな様子に、牧志は楽しそうに笑って手を振り、自室へと戻っていく。
なんだか思考が支離滅裂だ……
それは遠くから聞こえてくるような僅かな音で、あるいは現実なのかもしれなかったが、あなたには区別がつかなかった。
それは無数の胞に包まれた不定形の牧志が這いまわる音かもしれなかったし、神の従僕が地面をつつく翼を引きずる音かもしれなかった。
一瞬覚えた違和感はしかし身体を覚醒させるには至らず、あなたは再び眠りに吸い込まれてしまう。
前回偏執狂を発症していたようですけど。
目を見るのが怖いのままです。
とりあえず俺の目にもうつらないように目を閉じて、目を一つ一つ閉じさせて、落ち着くように語りかけて、ぬるつく表面を撫で付けていたら、いつのまにかふわふわとした暖かい獣の手触りになっていた。
現実の感覚と夢が交ざりあい、深みへ深みへと引き込まれて行く。
※本人起きたつもりだったけど夢だった。
客の姿がなくなった、深夜の花屋にて。
一人の女が、売上や在庫の集計をしていた。
今日はとても忙しい日だった、明日もきっと忙しくなるだろう。
そんなことを思いながら、彼女は疲れた体に鞭を打って業務をこなしていく。
そうしていると、ふと。
女は、それが常であるようにして、酷く間延びした声で独り言を言う。
「おかしいわねぇ。在庫が一つ、合わないわぁ」
多くの人がこの店に、そしてガーデニングに興味を持ってもらえるようにと企画した、開店記念のプレゼント。
明日もやるために、配る個数には制限をしていたのだが――在庫が一つ、計算よりも多いことに気づいたのだ。
女は数秒間たっぷり考えて、割と自堕落な結論を出した。
「私ったら、間違えちゃったかしら。まぁ、一つぐらい別にいいわよね」
この風景をあなたは見ていませんし、知りません。
3!
3d10 Sasa 3d10→9,2,1→合計12
3d10 Sasa 3d10→8,5,3→合計16
「さいた!」
咲いた? 花が?
確かにあの苗はもう小さなつぼみをつけていたとはいえ、まさか、わずか一晩で花が咲くものなのか?
寝ぼけ眼でシローの声がした方に目をやる。
嬉しそうな声を上げ、何かにお水をやろうとしているシローの姿。
しかし、あなたの目に入ったのは。
あの小さな苗でも、ベゴニアの花でもない。
まっぷたつに割れた植木鉢と、棚もテーブルも崩壊して荒れたリビング。
そして。
素っ裸で座り込んでいる牧志の姿だった。しかも三人。
なんだこれ。もしかして…… 牧志が生えた?
《SANチェック:成功時減少 1 / 失敗時減少 1D3》。
1d100 43 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 84→失敗
1d3
Sasa 1d3→1
SAN 43 → 42
寝直そ」
くるりときびすを返そうとする。
はえた?
一言貰えればちゃんと対処するので大丈夫です。
牧志の部屋の扉は開いておらず、どうやら彼も寝坊しているようだし。
シローはコップに水を汲んで、牧志たち(?)に渡しながら不思議そうにこちらを振り向く。
夢だからといって放置してはいけない。
今までの経験でそれは思い知っている。
この状況にシローを一人にするわけにも行かない。
頭をワシワシとかきむしる。
牧志たちに勢いよく向き直る。
気づくのが遅い。
そして。
牧志はなんだこの状態に《SANチェック:成功時減少 1 / 失敗時減少 1D6》。
SAN 51 → 50
出来上がった珈琲を啜る。
グラサンかけてるのが本物か?
バスタオルでも持ってきてやるか。
麦茶を四人分入れて三人に渡す。
麦茶飲みながらすーはーすーはーと深呼吸。
牧志のうちの一人、なんだか体格が滑らかだ。
伸びやかな腹から胸にかけてタオルを巻くと、布の圧迫で胸の丸みが強調されて…… ん?
女の子だ……。牧志だけど。
ちょっと見つめてしまってからつい視線が下に行きかけ
健康的な肉感のある太股の間はタオルの下でこそあるが、覗こうと思えば覗けてしまいそうな程度に隙がある。
柔らかい身体の牧志が混乱した様子で口を開く。
そういえば顔立ちも少し、丸みを帯びている。
あと佐倉さんは下の方に視線をやるなら、〈目星〉で判定してもよい。
本編見る!
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 40→成功
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 69→成功
なんだろうめしべ?
そして、タオルの下からちらちらとあなたを魅惑する下半身に思わず視線を向けてしまうと……。
ぬるぬるしていた。
えっ?
ぬるぬる?
このシナリオはえっちなやつだったのか?
いや、違う。
薄暗い空間を守るかのように、そこにはぬるついた無数の胞が蠢いていた。ちょこん、と覗いた明るい色の眼が、あなたの眼と合う。
何だか見覚えがある。
すごーく、見覚えがある。
ひきつったような声を上げ、目が離せなくなった。
なんか期た……想像していたやつと違う。
あなたの視線の行く先に気づいてしまい目を白黒させる牧志、女の子の自分がいることに気づいて驚く牧志、そんなに見たら悪いと言いたいが何だか押しの弱い牧志、そして困ったように辺りを見回す牧志……。
辺りはよく分からない混乱に包まれた。
あなたの視線の先で、見覚えのあるぬるぬるが肌の上を這うように蠢いている……。
チラ見えするのはそもそも精神衛生上良くないし。
見た目的には女牧志さんがショゴパンツはいてたみたいな。
その感じだと、佐倉さんは俺が知ってる佐倉さんじゃないんだな」
ようやく混乱を脱して、牧志? はあなたに渡されたバスタオルを身体に巻き、何やらかんやらがはみ出ないようにした。
それはそれで、体格が浮き出て何とも言い難い雰囲気を醸し出しているが……。
そういえば三人にはあの痣はついているんだろうか。
感覚が過敏な所があるのか、あまり床などに触れたがらないようだ。
この牧志は、少なくとも見た目の上ではあなたが知る牧志とそっくりだ。
俺が知ってる牧志はこいつ」
サングラスをした牧志の隣に行く。
開始前のKPコメントから言って単純な『ふえる』じゃなさそうだとは思ったけど……
一番先に落ち着いたのが女の子の牧志で、記憶を辿るようにこめかみに指をやる。
気がついたらここにいた、って感じでさ。
目が覚めたらリビングにいたのはいいとして、俺が他にもいたからびっくりした」
でも、俺は佐倉さんと普通に一緒に暮らしてたし、佐倉さんの知ってる俺は最初から女だよ。
また忘れちゃったのかと思ったけど、俺も何人もいるみたいだし、佐倉さんも俺の知ってる佐倉さんじゃ、ないのかと思ってさ」
そう言って、牧志の顔をした女はあなたにどこか寂しそうな視線を傾ける。
そういえば、その俺、サングラスかけてるんだな」
で、みんな俺と暮らしてたりするのか? シローは知ってるか?」
あ、こっちの俺? は浩太っていうんだ。
佐倉さんと一緒にこの家で暮らしてて、シローとも一緒」
でも俺の知ってる佐倉さんは、もうちょっと目つきが柔らかかった気がするな」
目つきの悪い牧志がそれに続く。
佐倉さんとシローと一緒に暮らしてて、俺が困った時によく助けてくれてる……」
気の弱そうな牧志が、か細い声でそれに続いた。
でも、佐倉さんも違うっていうのはよく分からないな」
あなたの傍らでサングラスの牧志が呟く。サングラスがあっても自身の顔を見るのは怖いのか、視線は少し下げ気味だ。
夢かと思ってたけど、佐倉さんも聞いたのか」
とりあえず牧志」
グラサンの牧志の腕に触れる。
今のところ問題ないけど、入れかわろうとされても困る」
牧志は部屋に戻り、ごそごそと衣装箱を探る。
……まさか、俺がミオみたいな目に遭うとは思わなかったな」
女の子の牧志が、小さく呟いて苦笑する。
気の弱そうな牧志は、あなたの視線を避けるようにタオルを被る。
佐倉さんのせいでもないけどさ」
目つきの悪い牧志が、そんな彼を心配するように言葉をかけた。
後で誰がどこまで知っているのか確認しないと……
ミオのことや腹痛で入院したときのこと覚えてりゃ察してくれると思うけど」
俺だって、自分でも知らない何かを抱えてるかもしれないんだしな」
そうじゃなくても、いきなり同じ人間が出てきたら、入れ替わろうとしてるんじゃないかって思うよな……」
こっちだって、じゃあ俺の知ってる佐倉さんはどこ行っちゃったんだよっていうのが気になってる所だし」
いやもしかしたら女佐倉と同居しているところに女子ミオが来て「服ダウト」ができなかったのか!?
放っておいても育つ強い植物は実は初心者向けとは言い切れなかったりします。
強すぎる生命力で、ちょっとしたきっかけで庭に混入し、そのまま庭を支配下においてしまったりするからです……
などと、関係あるようで全くないお話。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」