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こちらには『ワンナイト・ルバート』
のネタバレがあります。

本編見る!
KP
伸ばされる手を取って塔へと戻ると、真っ先に目に入るのは派手に散乱した本や品物だ。

あなたにとって大事な物や、重要な書物などはきちんと退避されているが、まるで何かが荒らし回ったかのようになっている。

片付けられたのか、楽器の山はない。
鎖に縛られたリュートだけが、牧志から少し離れた所に置かれている。
牧志 浩太
「お帰り佐倉さん、さっきはごめん」
牧志の髪がぼさぼさになっている。
佐倉 光
「ただい……」
佐倉 光
「ま。何があった」
リュートを一瞥して、部屋中見渡して、どうやらそれが終わった後なのだと知る。
佐倉 光
「何か入り込んだわけじゃないのか」
牧志 浩太
「大丈夫、何かに入られたわけじゃない。
あれから色々調べてたんだけど、うっかりまずいもの読んじゃってさ。

抑えが効かなくなって、色々呼んだりやったりしただけ。
ちょうど佐倉さんがいなくてよかった」
佐倉 光
「おう、そっか。良かった」
ズタズタに切り裂かれた大した価値のない本を袋に突っ込んだ。
KP
……偶にある。
この塔の中に、結界に守られたあなたの「部屋」があるのは、もちろん永遠の共同生活を適度な距離感で続けていくためもあるが、単純にあなたの安全のためもあるのだ。
佐倉 光
たまに居間で寝てしまう事もあるが、あれは時によっては命に関わる。
牧志が常に牧志のままでいられる保証はないし、なにかが忍び込んでくる可能性もある。
最近気が抜けすぎているかも知れない。ちゃんと『部屋』で寝ないと。
佐倉 光
「こっちは成果なし。そっちは?」
牧志 浩太
「こっちも大した成果はない。
気になることはいくつかあった。

まず。調べてたら、手の中にこんなものが落ちてきた」
牧志 浩太
牧志が差し出したのは、寓話やことわざについて書かれた子供向けの本だ。
この書庫に相応しい本とは思えないが、落ちてきたということは、『出現した』のだろう。何かを囁くために。

偶に、この書庫ではそういうことがある。
▽「身に過ぎた果報は災いの元」
分不相応の幸せは災難を招くことになりやすいから、気をつける必要があるということ。
また、自分に合う程度の幸せがよいという意味もある。

宝物をたくさん⼿に入れた猫が喜ぶ姿と、その後犬のおまわりさんに盗人だと思われて捕まる様が描かれている。
牧志 浩太
「それは誤認逮捕した方が悪いんじゃないかと思うが、きっと、代償のことなんだろうな、これは。

楽器なんて演奏できなかったはずの俺が、こうやって弾きこなしている。
これって、「技術を貰った」とも言えるだろ。

勝手に押しつけておいて勝手な話だけど、いつか代償を取りに来るのかもしれない。
例えば、これが十分に育ったら、とかさ」
佐倉 光
「なるほど。この技術を何のために与えたか、ってとこだな、気になるのは。
やっぱり『一緒に招く』ってやつか。
あの口ぶりだと、神音さんだろ、呼ばれてるの。
まあ、確かに人間業とは思えないような凄い演奏だったけどさ。
誰かが邪魔してんだよな、神音さんの演奏」
指先がひたすらに膝を叩く。
佐倉 光
「ああああもう気が散る! 今日一日これでまともに考えられねぇよ。くそ。弾きてぇ。叩きてぇ」
座った目でタンバリンを掴む。
佐倉 光
「もう無理。叩く」
牧志には悪いけど、体の内から溢れる音を表現せずにいられなかった。
そしてそんな話をされたばかりだというのに、牧志と一緒に音を楽しみたいという気持ちが止められなかった。

タンバリンを手に、演奏を行う。
今日の昼間のような調和もリズムもクソもない不協和音ではなく、音楽を。
牧志 浩太
「伴奏でも欲しがってるのかもな。
雑音で邪魔してくるって件について、ちょっと思うことが……、ああああ、無理。俺もやる」

牧志は鎖がかかったままのリュートを奪い取り、手をかける。
鎖がひとりでに解け、指先が急くようにメロディを奏で始めた。

音がリズムの間隙に鮮やかに嵌り、ひとつの音楽となる。
それは正しく、間違いなく、あなた達の音楽だった。
佐倉 光
何か言いかけてたな、とは思ったが、乗ってくれた事が嬉しくて叩き続けてしまう。
これは自分たちの命と魂の音だ。
昼間の『曲』なんかとは違う、響き合う事そのものへの喜びの音だ。
例え力が与えられた物だったとしても、そこにどんな意図が絡んでいようとも、
この曲は俺達のものだ。
牧志 浩太
躍動する指先から牧志の心が、跳ねる肩から牧志の命が迸り出て、あなたのそれと絡み合う。
とうの昔に『こちらのもの』であることをやめた彼の、確かに生きている人間の感触がそこにあった。

響き合う旋律に共鳴して、塔そのものが鼓動するように震えた。
──ここは彼の内側なのだ。
佐倉 光
塔の鼓動に触れ、我知らず笑い声を立てた。その振動を、その熱を、その生命を残らず浴びて踊った。今は全てがひとつだ。
佐倉 光
全身全霊を音として吐き出しきって、それでも尚止まらない。楽しい。いつまででも続けていたい。
佐倉 光
それでも終わりはなくてはならない。
名残惜しく思いながら、曲を終わりへと導く。
牧志 浩太
あなたが終わりを告げた時、彼は、あ、と少し呆気に取られたような声を出して苦笑した。
終わりがあるということを忘れかけていたらしかった。

佐倉 光
「そういえば、あの昼の騒音みたいな曲、あれには終わりがある気がしなかったな」
牧志 浩太
「あれか。確かに、神音さんもずっと書き続けていたしな。
そう、それで気になったことがあるんだ。

世界の中心に、ある神のための場所があって……、そこには神のための音楽が満ちているらしい。
連れていきたい場所って、そこなんじゃないかと思うんだよ。

で……、
それはもしかしたら、隻眼の俺がやり損じたっていう、あの場所なのかもしれない」
佐倉 光
「うわ」
佐倉 光
「その情報だけで心底行きたくねぇな」
KP
魔きしだから色々知ってしまっていてほしいなーと思い、キー情報(この世界がアザトースの夢であることとか)にはかからない範囲でチラ出ししております。
佐倉 光
はーい
佐倉 光
「大したことやってないのに疲れたな。
慣れてないことだからか」
のびをしながら、外の流れを見る。
佐倉 光
「珍しいな、こんなに安定しているなんて。
何かの意図を感じるくらいだ」
牧志 浩太
「ああ、こんなの普通じゃない。
たぶん、掴まれているんだ。俺達も。
そいつに」

牧志は予測するというよりは予言するように、あなたの見ているものを覗き込んだ。
KP
快い疲れと慣れない筋肉を使った強張りが、ほのかな眠気をもたらす。
ぼんやりと、柔らかく眠たい。
佐倉 光
軽く食事を取って寝よう。
今度はちゃんと部屋で。

隻眼の牧志、か。
俺たちの運命もあいつとそう遠くない。面白がってばかりではいられないな。
牧志 浩太
買い入れた食材を使って、牧志はさまざまな野菜の入ったシチューとサラダを作った。
瑞々しい葉の覗くサラダなどは、こんな時でもないとなかなか食べられない。
佐倉 光
ありがたくお相伴に預かろう。
佐倉 光
「ま、悪いことばかりじゃないな。セッションは楽しいし、いくらでもやっていたい。
外の飯を戦利品との兼ね合いなんか考えないでいくらでも持ち込める」
佐倉 光
「世界が滅びたりするのは勘弁だし、訳の分からんところに行くのも絶対嫌だけど、良い思いだけ目一杯した上で事件解決してーなー」
牧志 浩太
「分かるな。こんなに楽しい気持ちになるのは久しぶりだ。
正直、このままでいいんじゃないかって思いそうになる。

それが、怖ろしい」
さくりと音を立てて葉を噛み、頷く。
佐倉 光
「思っとけよ。必要なら止めるから」
牧志 浩太
「……」
あなたの言葉に牧志は一瞬声を詰まらせて、ありがとう、と小さく呟いた。
佐倉 光
食事を終えたら、風呂入って楽器持って部屋に入って寝る。
叩きたいのは我慢する。こういうのは境界を意識しないと危険なんだ。
牧志 浩太
「お休み」
あなたを見送る牧志の声が、部屋の扉の向こうに消える。

寝床に横たわる彼を、鎖が縛りつけてゆくのが見えた。自身を制御できない恐れのある時に、彼が偶にやるやつだ。
佐倉 光
「お休み」
声をかけて扉を閉める。隔てる。
個を守る場を作り出す。
息をついて寝台に横たわる。

なんならもう少し続いてくれてもいい。
佐倉 光
「俺だって思ってるよ」
ぽつりと呟いて目を閉じ力を抜く。
牧志 浩太
少し気配が動いて、しかし彼からの返答はなかった。

KP
闇に隔てられた自室という場で、ふと、視覚より先に聴覚が動いた。
どこからともなく、フルートと太鼓の音が聞こえてくる。
聞くに堪えない不協和音が、音楽の技を与えられた耳を突き刺す。

それは、あの時聴いた雑音によく似ていた。
佐倉 光
ああくそ、あの騒音か。
到底楽しいとは思えない、引きずられるような衝動と永遠を感じさせる振動の暴力。
意味はなさそうだと思いつつも耐えられず、耳をふさぐ。
KP
目を閉じたまま耳を塞いでも、耳の骨を這いながらやってくる振動は、音は全く減じない。

あなたはふと、自分がその音の源へと向けて歩いていることに気づく。
佐倉 光
喚ばれている。

ぞっとするような感覚を覚える。
だがこのまま進めば敵の正体が掴めるかもしれない。

そういえば神音や牧志は?
近くにいるだろうか。
牧志 浩太
雑音に紛れて、傍らに鎖の鳴る音が聞こえた。
牧志がいる。あなたの傍らで、引きずられるようにしてともに歩いている。
KP
近づけば近づく程、音は耳を塞いだ腕を震わせ、あなたの心臓を揺さぶって、そちらへ向かいたいという衝動を掘り起こす。

進めば正体が掴めるのではないか。
進まねばならない。
進みたい。
佐倉 光
だめだ。これ以上は、危険だ。
これ、以上は。
牧志の鎖に触れることができるなら、それを叩く。
俺たちは目覚めなくてはならない。
タンバリンのジングルを鳴らすように指先で何度も何度も。
KP
あなたが牧志の鎖を叩いた、その時。
KP
「その提案は飲みません。
僕は、こんな音を奏でたくない」
神音のはっきりとした声が、あなた達を自由にした。

KP
あなたは、目を開いていた。
変わらず自室の天井が見え、あれが夢であったのだと知らせる。
身体はびっしょりと汗をかき、鎖を叩いていた手はベッドのフレームに当てられていた。

あの音がまだ耳に残っていた。
疼くような衝動が、心臓を常に揺らしている。
何もかも忘れて音を奏でていたい。ともに。その欲が昨日よりも強くなっていた。
身体の中で血流が蠢くたびに、衝動が脳へと押し寄せる。
KP
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D2》。
〈音楽系技能〉に+1d10%する。
佐倉 光
1d100 62 Sasa 1d100→ 73→失敗
1d2 Sasa 1d2→2
SAN 62→60
1d10 Sasa 1d10→10
〈芸術:打楽器(タンバリン)〉 57 → 67
牧志 浩太
1d100 37 《SANチェック
Sasa 1d100→ 32→成功
1d10 Sasa 1d10→2
〈芸術:弦楽器(リュート)〉 51 → 53%
佐倉 光
叩きたい。叩きたい叩きたい叩きたい。
世界を満たす音の一部になりたい。
そうしたら永遠に届くじゃないか。
何を思うこともなく、快楽に溺れていられるじゃないか。
ひとつに溶け合うのは気持ち良かったじゃないか。
個にどれ程の価値がある。永遠に、永遠に、永遠に

牧志を止めるためだったはずの音は、自分の行く手をふさいで撹乱する。
塗りつぶされて自分の望みが分からなくなる。

目を見開いて寝台に横たわったまま、ずいぶん長いこと動けなかった。
KP
衝動に満たされたあなたの身に、部屋の外から微かに弦の音が響いた。
ああ、あれに応えなくては、あなたはそう思うだろう。
そう思って気づくと、遠く響いていたのは弦の音ではなく、鈴の音だった。
鈴の音かと思えば、それは鎖が揺れる音だった。
佐倉 光
やっとのことで呼吸をする。
今もどこから来るか分からない不快な『音楽』が体を通り抜けて出て行こうとしている。
それを奏でるだけのデバイスのひとつに成り下がろうとしている。
佐倉 光
「冗談じゃ、ねぇよ……」
ぎりぎりと歯を噛みしめ、衝動を何とか抑え、自分の音を取り戻そうとする。
遙かな宮殿ではなく、自らの内から溢れる音を聴く。
KP
わんわんと音を反響させていた耳が、少しずつ機能を取り戻してゆく。
鎖が揺れる音かと思ったそれは、言葉を伴う人の声だった。
牧志 浩太
「佐倉さん。佐倉さん、佐倉さん」
牧志 浩太
「佐倉さん」
KP
部屋の外からずっと牧志があなたを呼んでいた。
佐倉 光
そうしていたらやっと牧志の声が聞こえた。
いや、牧志の声が呼び戻してくれたのか。
佐倉 光
「悪い、起きた」
慎重に楽器に手を伸ばし、手に取って部屋を出る。
牧志 浩太
「よかった」
部屋を出ると、両腕を縛った牧志が、心底ほっとした表情であなたを迎えた。
牧志 浩太
「佐倉さん、呼んでも呼んでも応えなかったんだ。持っていかれるかと思った」
佐倉 光
「ああ、正直ちょっとヤバかったな」
正直に答える。
佐倉 光
「今日も変な夢を見た。俺とお前が変な音楽に引寄せられてて、神音さんが何者かの要求を拒否する夢だ。
そうしたら、あの変な騒音を……奏でなければいけない気が、してさ」
危うい佐倉
佐倉 光
SANチェック失敗の上最大値上昇だから、本当に危険な状態だったんだろうなー
KP
ですねぇ。まさかの最大値だもんな。
相当引っ張られていたんだ。
久しぶりに二人で心底楽しい経験をしたのが効いてしまったのかもしれない。
佐倉 光
今晩も機会があるならやるからね!!
あくまでもまずいのは「あの騒音」に対する衝動だと思っているから。
出る前に始めたら出るの忘れそうだから今朝はやらないけど! 
『止めてやる』って言った矢先にこれだもんなぁ。
KP
出目があまりにもあまりなんだ。
そういう危ういところ佐倉さんだなぁ。
佐倉 光
個をなくしてただの『曲』の一部にされるような運命なんて断固拒否したい筈なんだけどな。
KP
そのはずなんですけどね。
過ごしてきた日々の痛みが重すぎるのかもしれない。

牧志 浩太
「ああ、佐倉さんも……、同じ夢を見たんだな。
俺もだ。俺も、同じ夢を見た。

向こうで楽団が音楽を演奏していて、そっちに足が引き寄せられていく。

意味の分からない雑音なのに、もう少しで意味が分かってしまいそうな気がしてた。
鎖を叩かれて振り返った瞬間に、神音さんの声で目が覚めた」
佐倉 光
指先を見つめる。何故だか分からないが、昨日以上に上手く叩ける自信がある。
人の技術では叩きこなせないものにも手が届きそうな気がしている。
手を握って首を振る。
佐倉 光
「あれを叩くためなら、こんな技術は要らない」
牧志 浩太
「ああ、俺もだよ。
佐倉さんとのセッションは楽しいけど、あれの一部になるのは嫌だ」

縛られたままの手で拳を強く握り込み、彼は声を漏らした。
佐倉 光
「お互いまずそうだな。
捜査範囲を広げた方がいいような気がするんだ。
こんな目に遭っている人が他にもいそうだっただろ」

というわけで佐倉は今日は現地に出かけてみる。
牧志には……再チャレンジでも良いけど、ネット情報の調査お願いしようかなぁ。
牧志 浩太
「分かった、俺はこっちから探してみる。
佐倉さんは現地を頼む」
牧志 浩太
では、牧志はネットでの調査を受け持つ。
ネット調査しながらでも、カメラなどを繋いだままでいることは可能だ。
KP
佐倉さんは街に向かう、でよい?
佐倉 光
先に使用技能聞いて変えても良い、だっけ。技能聞いてもよろしい?
KP
OK。以下の通りだ。
現地調査:以下それぞれ1行ごとに別情報
〈オカルト〉または〈任意の交渉技能〉
〈聞き耳〉または〈任意の交渉技能〉
ネット調査:以下それぞれ1行ごとに別情報
〈図書館〉
〈オカルト〉または〈コンピューター〉
佐倉 光
若干ネット調査は佐倉向きかな? でも現地調査は牧志が行くのは無理だしね。
オカルトで頑張っていただこう。
KP
さすがに突然タブレットを向けて「あのー」ってのはちょっと現実的ではないですしね。
佐倉 光
牧志は再度本、佐倉はネットってのもまあアリと言えばアリか。
いや、新しい方向の情報を求めよう。
どの程度調査時間取れるかってのがなー。
今のところ有益情報出てないからな。
では最初の案で、佐倉は現地、牧志はネットで。
KP
OK。

KP
こんなに頻繁に外へと降り立ったことがあっただろうか。
帰って、また行けば昨日と同じ光景が広がっている。
電光掲示板の日付がちゃんと翌日を示していることは、あなたを何だか不思議な気分にさせるかもしれない。
佐倉 光
中で過ごした時間と同じ時間が流れている。早くも遅くもない。そんな『当たり前』が懐かしかった。
KP
だから、少し街の様子が違っていることに気づいた。
何だか騒がしい。しきりに噂を囁く人々の姿がある。
佐倉 光
ではまずは〈聞き耳〉を立ててみよう。
KP
どうやら、大きく分けて二つの噂が入り乱れているようだ。
〈聞き耳〉で判定。
佐倉 光
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 76→成功
佐倉 光
あぶない
KP
「なあなあ、知っとぉ~?」
「しらんしー」
「えぇー、しらんの、葬儀場で遺体が動き出したって話」
「えぇー、ほんとに?」
「ほんまほんま。実は仮死状態? って話題で持ち切りよ。
でもこれ、実はもっとすごくてさ」
「すごい?」
「死んでから二日は過ぎた遺体が動いた、って! そんなんあると思う? すごない?」

あなたの耳に、そんな話題が飛び込んできた。
音楽の事件とは、あまり関係がありそうに思えないが……。
KP
リアルタイム卓でちょくちょくやるNPCのワチャワチャ、そういえば置き卓ではあまりやってないなと思って、ちょこっと出してみました。
佐倉 光
なるほどw
佐倉 光
それはそれで大事件だが……
そういえば天使のラッパが鳴れば死者が蘇る、なんて話があるにはあるが……あまり関係はなさそうだな。
佐倉 光
「すんませーん。僕オカルトライターなんですけどぉ、ちょっと取材よろしいですか~」
声をかけます。
KP
「ワオ。オカルトライターってリアルでは初見」
「きゃっ、あっええもちろん」
カツオブシの乗ったタピオカドリンクを片手に喋っていた二人は振り返る。
佐倉 光
「へー、面白いの飲んでるんですねー! 僕はこっちが初見ですよぉ~」
などと言いつつ、彼女たちが噂していたことと、あとは突然音楽に目覚めちゃった人がいたりしないかって話を訊く。
〈オカルト〉で!!
KP
「ああー、ですよね! 意外と面白いかと思ったら特にシナジーなくて、正直持て余してるんですよ~」
KP
なるほど!! 〈任意の交渉技能〉または〈オカルト〉での判定もOKとします。同一情報。
ここは元々〈任意の交渉技能〉または〈オカルト〉での判定があると直前に示しているのですが、KPが誤って「でもOK」と言ってしまっています。
佐倉 光
1d100 75 Sasa 1d100→ 68→成功
確認は大事
佐倉 光
あ、これ二日必要なヤツだったのか。ありがとうございます!
という事は、今までのポイントもまだ掘れる情報あるって事かな?
KP
あ、情報項目としては一緒です。
ここ調査項目に軽く調整をかけた関係で、変な事になって失礼しました。
上述のKPの発言ミスにより混乱を招いてしまっています。
KP
ちょっと整理しますと、
 ・〈何らかの交渉技能〉または〈オカルト〉で判定すると、〈聞き耳〉で得た情報について深堀りしつつ、もう一つの情報についても出てきます。

最初に判定技能を出してた関係でややこしいことになりまして、失礼しました。
元々、ここは一つの項目で二つの判定ができます。
佐倉 光
はーい
佐倉 光
とりあえず〈オカルト〉判定成功してますが、これで追加情報が出るって解釈で大丈夫かな。
KP
おっとっと、しまった判定成功してるの見逃してた!
失礼しました、それで大丈夫です。
置き卓見逃しあるとデッドロックになっちゃいますね、失礼しました
佐倉 光
最近私が忙しくて返信遅かったりしたから尚更!
KP
いえいえ、お疲れ様です!
置き卓、描写長い時とかゆっくり書ける状況になってから返信することもありますし、うっかりデッドロックすると検知が難しいですね

「あれ?」って思った時は最後のレスポンス読み返すようにします。
佐倉 光
はーい

佐倉 光
メモをとりつつ、彼女らの話に耳を傾ける。
KP
「それが、自分も聞いた話なんすよ~。
火葬待ちだった遺体が突然なくなって、見つけた時には動いてるような姿で倒れてたって。

魔女に生き返りを願った人がいたんじゃないか、って噂にもなってますねー」
「は? 魔女? ってなに」
「しらん? 願いを叶えてくれる魔女の話」
「しらないって」
「そっかぁ。あ、願いを叶えてくれる魔女の噂があるんすよ。
魔女とか、女神とか、聖母とか、噂によってバラバラなんすけどね。
難題を出してきて、クリアしたら願いを叶えてくれるらしいー、って」
佐倉 光
「死者復活の願い? 魔女? うーん……なかなか面白いですね」
それはそれで大変な事ではあるが、音楽には関係なさそうだな。
そのうち悪魔使いが動く案件じゃないだろうか。
一応メモはとっておく。オカルト事件には違いない。
KP
「音楽かぁ、そういえば最近ブームっすよね~。もう動画とかバンバン上がってて。ウチでもバンド部できたんすよ。
すごいっすよねー、寝る間も惜しんで練習しちゃって」

彼女達はそんな話を聞かせてくれる。
佐倉 光
「動画? へぇー、そんなにですか。
僕の周囲でも流行ってるんですよね」
言いながら、ペンの先でリズムを刻んでいた。
自分たち以外にもやはり影響が出ている可能性がある。ネットでももっと見てみた方が良さそうだ……
KP
「お兄さんも音楽やるっすか?」
リズムを刻む様子が気になったらしい。
佐倉 光
「あ、ああ、僕ね、タンバリンやるんですよ」
荷物に入れてあった楽器を出してみせる。
少しだけ、叩く。やはり、指が昨日よりもなめらかに動く。
KP
「おおー、タンバリンやる人って初めて見たっす!
やっぱり奥深かったりするっすか?」
佐倉 光
「そうなんですよー。叩く位置で音階を作れたり。
僕おとといまでは音楽全然だったんですけどね。急に覚醒しちゃったっていうか!」
KP
「へえぇえ! そんなこともあるんすねー! 自分も始めてみよっかなぁ」
「おーい、バスの時間!」
「ゲッヤバ! あっ、そゆことなんで、ありがとごさいましたっすよー!」
二人はあわあわとその場を去っていく。

牧志 浩太
1d100 35 その間の牧志の調査(〈オカルト〉) Sasa 1d100→ 43→失敗
1d100 82 その間の牧志の調査(〈図書館〉) Sasa 1d100→ 78→成功
牧志 浩太
「願いを叶えてくれる魔女に、動く死体か……。随分色々起きてるんだな。
今の所、相互に関係はなさそうか?」
牧志が呟く。
佐倉 光
「俺からは何とも。今のところ関係なさそうに見えるな」
牧志 浩太
「だよな。
魔女にいくつも名がある、っていうのは……、何ってわけじゃないけど、少しひっかかるな。

こっちは、音楽に目覚めた人間の話を追ってた。
そうしたら、耳が聞こえない人が音楽に目覚めたっていう話があってさ。

現代のベートーヴェンだ、なんて話題になってたよ」
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンについて。
牧志 浩太
「困ったな。どうにも話が繋がらない……、くそ。
生ける音について、もっと直接的に当たるべきかもしれないな」
佐倉 光
もう一度チャンスがあるようなら、ネットワーク佐倉、蔵書牧志で調べたいところだけど……
KP
このシナリオ、実は二人だと全ての情報は出ないようになっています。(日数経過で一部の情報が変化するため)
それでもちゃんと進むので大丈夫です。
佐倉 光
「戻ったら本をもう一度洗ってみるか」
なんだか疲弊している。大したことをしていないはずなのだが。
佐倉 光
「帰るよ。開けておいてくれるか?」
牧志 浩太
「ああ。分かっ──」
牧志が返答しようとした時だった。
KP
不意に、ひやりとした空気があなたの頬を撫でた。
辺りを見回せばちょうど人通りが途切れ、あたりに人の姿はない。
嫌な気配、予感があなたの背を舐め上げる。
牧志 浩太
「佐倉さん。そっち、何かいるな?」
KP
〈聞き耳〉で判定。
佐倉 光
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 80→失敗
佐倉 光
うそぉ
佐倉 光
微かにうなずいて周囲に注意を払うが、リズミカルに叩く指先の音が、感覚が、周囲への注意力を鈍らせた。
牧志 浩太
1d100 97 牧志の〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 51→成功
牧志 浩太
「後ろ!」
その一瞬、牧志が警告の声を発した。
何者かの腕があなたの胸をかすめ、服に跡を残す。
佐倉 光
慌てて身構え、相手の姿をとらえようとする。
KP
そこには細身の人物が立っていた。
いや、細身なのではない。肉も脂も削げ落ちて、辛うじて骨に皮膚が張りついているのだ。

それだけなら不健康な人物で済んだかもしれない。
しかし、その人物の皮膚は劣化して裂け、所々骨を剥き出しにしていた。肌は生きた血の一滴すら残らない土気色をしていた。

落ち窪んだ眼窩の中、操り人形のような動きで白濁した眼球がこちらを向いた。

その人物は絶えず身体を振動させながら、あなたに向けて大きく顎を開いた。
それは動く死体である、としか見えなかった。

久しぶりに味わっていた平穏な日常の姿を、その有様が切り裂く。
どうしてこんな所に、こんなものが、いるのだ。
KP
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1》。
牧志 浩太
1d100 37 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 42→失敗
SAN 37 → 36
佐倉 光
1d100 62 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 7→成功
KP
ここで牧志にも《SANチェック》入っているのは、久しぶりに味わっていた日常に日常じゃないのがいたショックが大きい感じです。
佐倉 光
なるほどなるほど。
ふぅーむ、ゾンビ騒ぎとトルなんとかさん? いまいち繋がらないなぁ。
わざわざシロウトに音楽の才能与えてるのも謎だし。
佐倉 光
「うわ」
慌てて距離をとる。人気がないとはいえここは異界ではない。
たかがゾンビといえど生身で対応するのは避けたい。
佐倉 光
「きっと噂のヤツだ、ただのゾンビじゃない。この辺にゲートはない筈なんだ」
とっとと逃げるが得策だが……逃げられそうかな。いつかみたいに道がふさがっていたりする?
KP
見れば、道は塞がっても変質してもいない。
逃げることはできる。

逃げるなら、動く死体の【DEX】7と対抗ロール!
佐倉 光
1d100 60【DEX】 Sasa 1d100→ 65→失敗
KP
あなたは逃げようとしたが、咄嗟に反応できず足がもつれる。
足をもつれさせたあなたを、敵意を、害意を錯覚するような動きで乾ききった口がかちかちと狙う。
KP
このまま戦闘ターンに入る。
以降、あなたの手番を消費することで逃げようと試みることができる。
牧志はオンラインなので行動不可。

あなたの手番は逃げることで消費したため、
【DEX】7 動く死体
1d100 30 〈噛みつき〉 Sasa 1d100→ 31→失敗
KP
危ういところで、乾燥した歯があなたの腕を掠める。

KP
▽2ターン目
【DEX】9 佐倉さん
佐倉 光
悪魔使い達が集う場所へと誘導しつつ逃走継続だ!
1d100 60【DEX】 Sasa 1d100→ 41→成功
佐倉 光
ここはよくゲートが開く場所で、常に巡回されていたはず……
ここでなら放流してもそう問題ないだろう。
一気に距離を開けて逃げ出す。
KP
あなたは逃げ出そうと地を蹴る。
よたよたとした動きで動く死体が追いすがってくる。
KP
どん。
通行人だろうか、何者かの身体にぶつかった。

まずい、と思ったかもしれない。
あわやという所で、動いていた死体が膝をつき崩れ落ちた。
それはじたばたと地面に這いつくばり蠢いていたが、やがて電池が切れたおもちゃのように、そのまま動かなくなった。

その後に残ったのは、動いていない、引きつったように口を開いた誰かの遺体である。

戦闘終了。

KP
「こら、危ないではないか!
ご主人様のお召し物が汚れたらどうする!」

怒りを湛えて怒鳴ってくるのは、古めかしい衣装を着た少年だ。
その横には、全⾝黒い衣装に⾝を包んだ女性が立っている。
彼女は頭から黒いヴェールをかぶり、その表情は窺えない。
黒い⼿袋に覆われたたおやかな⼿には、蛇の意匠が施された杖が握られていた。
佐倉 光
「失礼しました、恐ろしいものに追われていて急いでいたもので」
ゾンビが動かなくなったのを確認して、自分がぶつかった相手を見る。
随分とユニークな見た目だな……まるで噂の魔女、のような。
この二人は何者だろう? 詫びを言いながら観察したい。〈目星〉〈心理学〉などで奇妙な点などに気づけないだろうか。
KP
なるほど。
では、〈歴史〉〈目星〉-20%で判定。それぞれ別情報。
〈心理学〉はこちらで振ります。
佐倉 光
〈心理学〉は57。
1d100 20 〈歴史〉(初期値) Sasa 1d100→ 91→失敗
1d100 78〈目星〉 Sasa 1d100→ 85→失敗
佐倉 光
えー!?
なんか二人とも調子悪いなぁ。
KP
Sasa 🎲 Secret Dice 🎲
KP
「恐ろしいもの? なんだあれか。そんなことで走るんじゃない。
ご主人様にぶつかったりでもしたらどうする、いやそんなことなど万に一つもありえないが! 必ずお守りしますので!

ああ、いつから日本はこんなに物騒な国になったのでしょう。
汚れてはいませんか?
ご主人様のお召し物がこのようなものの血で汚れるのは遺憾の意です。許せませんとも!」

女性と大して⾝⻑の変わらない少年はあなたから視線を外し、くるくると表情を変えながら、大げさな⾝振り⼿振りと共に一方的に女性に声をかけ始める。

「まったく、はた迷惑な神も顕現したようですし、今回の音楽祭が終わったら早々に日本を発ちましょう。
今度はウィーンなどいかがでしょう! 音楽の都として名高いらしいですよ!

ああでも神の勧誘が終われば気にすることはありませんか?
それもそうですね。では神が去った後でゆっくりと観光することにいたしましょう!
さあ参りましょう」
KP
その様子から、言葉から、あなたには如実に分かるだろう。

この少年はあなたのことを超どうでもいいと思っている。目の前で動いていた死体にも何らの驚きもなく、それどころか超どうでもいいと思っている。
何なら傍らの女性以外のものは、全て超どうでもいいと思っている。

そして、確実に、絶対、何かを知っている。
牧志 浩太
1d100 70 牧志の〈歴史〉 Sasa 1d100→ 100→致命的失敗ファンブル
1d100 78 牧志の〈目星〉 Sasa 1d100→ 21→成功
KP
おあ。
佐倉 光
ファンブったかー
KP
牧志の〈歴史〉ファンブル処理は後でやります。

牧志 浩太
「あの人、耳が聞こえないみたいだ」
イヤホンの向こうで牧志がぽつりと言う。
佐倉 光
「ちょ、ちょっと待ってください! 音楽祭? 勧誘?
音楽祭ってまさか、今まで音楽に無縁だった人間が急に音楽を弾き始めるのと関係ありますか?
あともしかしてですけど、お二人は死者復活に関係あったりします!?」
逃がしてなるものかと少年のほうに語りかけ……つつ、音声入力でスマホにも内容を表示させて女性に見せたい。
KP
あなたに話しかけられ、少年は眉を顰めて足を止め、こちらを向いた。
女性にスマホを見せようとすると、鬱陶しげに少年が視線を遮る。
KP
「何か用か。……あぁ、お前達、あれに目をつけられているな?
はっ、気の毒なことだ」
少年はカメラのついたあなたの胸元を一瞥する。
牧志 浩太
「……佐倉さん……、気をつけて、でも……、チャンスだ」

はく、はく、と牧志の唇が開いて閉じる音。
何か大いなるものを目にしたかのような、強い緊張を秘めた声が耳に届いた。
牧志 浩太
1d100 36 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 57→失敗
SAN 36 → 35
佐倉 光
彼女に骨伝導で話聞いてもらうって流れなのかなー。
そうはいっても、タンバリン叩くくらいしかないよな。
佐倉 光
深呼吸をひとつ。声色を整え、姿勢を正して二人に語りかける。
佐倉 光
「力ある方々とお見受けします。
どうか私の願いを聞き入れていただきたいのです」
KP
「はあああ~~!? ご主人様に願い事だと? なんと僭越な! 無礼な! 
全くご主人様の御威光が素晴らしすぎてすぐこういう輩が……やはり許せん、全員いなくなれば……

……んんっ、失礼しました。取り乱しました。
邪魔をする者は排除するなど紳士の風上にも置けなかったですね。反省します……」

彼女は一言も声を発していないが、少年と会話をしている…… のだろうか?
何か意思疎通の方法があるのかもしれない。
「ご主人様の寛大さに平伏せ。崇め奉れ。そして何か言いたければ言うがいい」
佐倉 光
迷わず地に伏せる。
相手が何者なのかは分からないが、その言葉と態度、牧志の反応から言って逆らって得な事などあるまい。
噂の魔女であるなら死者復活をするほどの力を持つものであり、女神でもあるということだろう。
佐倉 光
「ありがとうございます、寛大な御方よ、そのお心に心からの感謝を捧げます」
命運か一時的POWくらいなら楽勝で支払う心構えで切々と、だが言葉が届くよう大声で感謝と崇拝を口にする。
佐倉 光
「先ほどの話にありました『はた迷惑な神』の選定を、止める方法をご存知ないでしょうか」
KP
「知るか。仮に知っていたとしてなぜ僕らが教えねばならない?

……よいのですか? いえ、あなた様が仰るならば、何一つ文句などございません。僕はあなた様の僕なのですから。

……いいか、我が主の言葉をおまえ達に授けよう。
あれから逃れるための方法を人間が行うことは難しい。まあ……」
少年はあなたの胸元を鬱陶しげに見遣る。

「お前が連れているその本箱でも燃やせば、一時的に退けることはできるかもしれないがな。
音楽の才がある限り、またいずれ来るだろう。

唯一あれを退けられるとしたら、神がその音楽家に興味をなくすか、魔術的干渉を行うしかない」
KP
「死者復活? くだらぬことを。
あれは神の騒ぎによって死体が揺すられているだけだ」
KP
地に伏せるあなたを気にもせず言い捨てると、少年は女性の⼿を引き、再び歩き出す。
「そろそろ参りましょう。ご主人様、三日後の音楽祭が楽しみですね。

しかしご主人様もお優しい。
あなた様の心を揺さぶる音楽を奏でた者に褒美を与える……、だなんて。
ご主人様の力をもってすれば、ああ、神を退けることも簡単なのでしょうね!」

そう言いながら彼らは去って行く。
あなたが手を伸ばそうが、伸ばすまいが、彼らは街並みの中へ蒸発するように姿を消してしまう。
佐倉 光
おおなるほどー。なんてはた迷惑な。
それじゃあ問題が一気に二個解決するな。
二人が立ち去るまで頭は上げない。
佐倉 光
「……」
意図的なのかそうではないのかは不明だが、少年の姿をした尊大なものに感謝すべきだろう。
佐倉 光
やっと道が見えた~
KP
途中まではバラバラと断片的な情報が出てくるだけで、ここでようやく道が見えてくるんですよね。

佐倉 光
「牧志。俺達、どうしたって音楽やらなきゃならないみたいだぜ」
牧志 浩太
「ああ……、そうみたいだな。
彼女の気紛れがこっちを向いてくれてるみたいで、よかったよ。
まだ、燃えたくないからな」

牧志は彼らの気配が完全に消えてから、数度喘ぐように息を吸い、呻きを漏らして、それからようやくあなたの声に応えた。
佐倉 光
「燃える? 一体何が見えたんだ?
神クラスだろうなって事くらいしか分からなかった」
牧志 浩太
「俺にもちゃんとは分からないけど、彼女が魔女で間違いない。
とにかく掴みどころのない何かを従えて……、違うな、何かに従えられている。
三つに分かれた支配者とか、三姉妹とか、たぶん、そう言われる類のものだ。

ごめん、まとまってないな」
佐倉 光
「わかった。後で調べてみる。色々落ち着いたら」
牧志 浩太
「燃えるってのは、ああ。
あいつ、俺を燃やすくらいのことをすれば一時的に退散できるかも、って言ってただろ。

彼女に頼れなければ、そうするしかなかったってことだ。
さすがにここまで来て、魔術の贄になって死ぬのはまだ嫌だからさ」
佐倉 光
「ああ、そういう」
それは論外。あの騒音の一部になるか燃えるかの、どっちがましかって話だな。どっちも絶対に嫌だ。
牧志 浩太
「とにかく、ようやく道が見えてきたな。
その音楽祭とやらが何なのか調べて、後は……、音楽か」
牧志 浩太
「そんな場合じゃないけど、ちょっとわくわくするな」
佐倉 光
「実にシンプルだな」
佐倉 光
「問題は、人間のための曲でいいのか、あの騒音弾かなきゃならないのかって事くらいかな?
ウィーンに行くとか言っていたくらいだし、まともな曲でいい、と思いたいが」
牧志 浩太
「あの神のことを随分迷惑がっていたようだし、まともな曲でいい、と思いたいな」
佐倉 光
「さーて、今日はいい加減疲れたし、帰ろうかな。
もう抑えるのも辛くて」
リズミカルに震えている指先をタンバリンに乗せた。
牧志 浩太
「分かった」
牧志があなたに向かって手を伸ばす。
その手が少し急いていた。
佐倉 光
「もう抑える必要がないってのが嬉しいよ」
牧志 浩太
「佐倉さんもか。実は俺もそう。
やっていいんだって思ったらもうだめ。
戻ったら作戦会議しよう作戦会議。あと演奏」
佐倉 光
「よしっ」
差し出された手を取り境界を乗り越える。
喜びが抑えられない。
何しろ今日一日まともに演奏していないのだ!
隻眼牧志
佐倉 光
さらっと誤魔化してるけど、隻眼の牧志とこの佐倉は関係あるのかなぁ。
KP
そうそこ思ってて、本編牧志の続きが魔きしだとすると、隻眼牧志が分裂しちゃうんですよね。

個人的にはそこで時空がねじ曲がってくっついていて、あの時点で隻眼牧志は二カ所に同時に存在したのだ、というのもヨグ=ソトース様居そう感が強くて好きではあります。
佐倉 光
なるほど。円環が捻れて繋がっちゃった。
まああの場にあっちの佐倉は厳密にはいなかったみたいだからセーフ?
KP
そうそう。>繋がっちゃった
違う世界だと思ってたら未来だった。

KP
街の風景が掻き消え、見慣れた金色の書庫が目に入る。
境界を飛び越えた瞬間、あなたの身体を振動が揺さぶった。

果てなき螺旋、その全体が蠕動するようにしてリズムを奏でているのだ。
牧志の中に詰まった音楽が耐えきれずに漏れ出ているようだった。
塔そのものが躍動し、唄っていた。
あなたの全身を揺さぶるグルーヴは、あなたを包み込む心臓の鼓動そのものだった。
牧志 浩太
「お帰り!」
その中心で、満面の笑みを浮かべた牧志があなたを迎えた。
佐倉 光
「ただいま!」
こんなもの聴かされて黙っていられるか。
どこから来た技術だとか、何のために与えられた技術かなんてどうでもいい。
心の赴くまま内からあふれ出す音を、その空間に馴染ませるように溶け込ませるように叩き唄う。
牧志 浩太
牧志の腕は鎖に擦れて傷だらけになっていて、相当無理をして衝動を抑えていたのだろうと分かる。

あなたが歌い出すのと同時に牧志が楽器を机からひったくり、かき鳴らし始めた。
塔の中に詰め込まれた音が爆発する。溢れ出す。互いの全身を躍動させる。
佐倉 光
今日は最初からテンションマックスだ。
ほとんど目に捉えられないほどの連打に始まり、牧志の演奏に音程を合わせた低音。
徐々に自己主張を出しつつ、調和と変容を波のように繰り返す。
寄り添い、離れ、ふわりと撫でつけるような柔らかな音を奏でたかと思いきや
塔そのものを揺るがすように轟かせる。

そうやって精魂果てるまで随分長いこと奏で、唄い踊り続けた。
牧志 浩太
牧志が一瞬驚いて目を見開き、直後に背を丸め楽器を抱え込んで腕を走らせ始めた。
眼も、表情も必要なく、音ただひとつであらゆる意思を交わす。
あなたのリズムの上で音が踊り、舞い、跳ね、全身を音に変えて羽ばたく。

そうして腕が動かなくなるまで奏で続けていた。
身を縛る鎖からも螺旋の底からも、その時二人とも解き放たれていた。
牧志 浩太
「……楽しい」
全身から汗を滴らせ、その汗を拭うこともできないまま、彼は笑う。
塔の中に蒸し暑いほどの熱気が満ちていた。
佐倉 光
「はは、もう手動かねぇ……」
全てを出し切りすぎて、最後はもう酔っ払いがカラオケ屋で叩くみたいな叩き方になっていた。
佐倉 光
「手ぇ震えてんの、笑える」
佐倉はケラケラと笑った。
ねむい
佐倉 光
作戦会議でそろそろ援軍喚ぼうかな?
KP
お、いいタイミングですね。そうしようしよう。>援軍
佐倉 光
ここでこのまま一回寝ちゃうのはタイミング的に良くないかな?
体力回復してからあれこれして、会議して外出しようかと思うんだけど。
KP
タイミング的には問題ありません。
夢は見るけど。
佐倉 光
全身全霊使って放出しきったから寝ちゃおうかな!
KP
いいとおもいます!
佐倉 光
これからはちゃんと制御して戦わなきゃいけないからね!

佐倉 光
「風呂入って飯食ったら作戦会議しよう」
牧志 浩太
「賛成、しようしよう。
……はは、こんなに出し切ったの久しぶり。強烈に生きてる気がする。俺、生きてる。初めて自覚した。生きてる」
布切れのようにソファーにもたれて、生きてる、と何度も繰り返す。
佐倉 光
その隣に座って笑いながら、こちらも「生きてる」と繰り返す。
牧志の嬉しそうな声を聞き、楽の音の余韻に浸り、心地よい疲れと安堵と喜びに包まれ、いつしか眠りに落ちていった。
KP
生の喜びと音の余韻に包まれて、あなたは闇へと落ちていく。

コメント By.佐倉 光
音楽がしたくてしたくてたまらない! セッションしようぜ!

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「あんたが、……じゃない。あなたが、兄貴の、牧志浩太の友達か」

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この嬉しいという気持ちは大事にしたかった。

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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