こちらには
『おばけのまち』
のネタバレがあります。
本編見る!
KP
右手に単線の線路が見える。少し進んだところに真四角で明るい木造の建物が見えた。
どうやらあれが駅のようだ。
牧志 浩太
「あ……!」
駅だ! 思わず声を上げる。
寒くて冷たくてさみしい街の中に浮かぶ駅は、あそこに行けば明るい電車が来てちゃんと帰れるんじゃないかっていう、そんな感じがした。
佐倉 光
「駅だね! あそこから帰れるかな!?」
KP
駅の名前は……何故か読めない。
見ようとすると目がかすむ。ぼやける。看板自体もかすれているように見える。
ただこれは僥倖か。駅は有人改札で、制服を着た人の姿が見えた。
牧志 浩太
「ここ、どこなんだろ……、読めないや」
牧志 浩太
「でも、駅員さんがいるみたいだ。あの人に聞いたらわかるかも。
それに、駅員さんがいるってことは、電車も来るんだよ! きっと帰れる!」
人の姿に安心した。ほっとした気持ちと期待で、頬が熱をもっていた。
牧志 浩太
改札に近づいていって、制服を着た人にここはどこですかと聞く。
KP
黒尽くめの制服は見たことのない形で、深く帽子を被った顔は表情が見えなかった。
路線図などは貼られていない、券売機もない。あるのは改札だけだった。
KP
「ここは駅です。
どちらへおいでですか」
KP
低い声は無表情で、どこか人の声のような温かみを感じなかった。
佐倉 光
「…………」
KP
光が縫いぐるみを抱く手に力を込めた。
牧志 浩太
深く被った帽子の下に闇が落ちるのを見て、ぞくりと怖くなった。

だ……、大丈夫。
駅のひとが怖いなんて気のせいだ。
牧志 浩太
「お、おれたちお家に帰りたいんです。
この街からお外に出たいんです」
ぐっと顔を上げて言う。
KP
「そうですか。どちらへおいでですか」
黒い駅員は平然と繰り返した。

駅員の横に料金表があり、

◇運賃
一定料金
おとな 200円
こども 100円

とある。
そのすぐ横に時計が設置されていて、四時半を指していた。
牧志 浩太
四時半。
もうすぐ夜明けだ。耳の横に冷や汗が落ちた。

あと一時間しかない。
あと二時間しかない。
あれ……、どっちだっけ。

牧志 浩太
※どっちだっけ
東北と沖縄だと約1時間のズレがある
KP
なるほど!!
季節が夏だともう明るくなり初めていてもおかしくない。
牧志 浩太
夏だとこまる!!
東北出身の牧志の記憶と、沖縄出身の波照間の記憶が混ざってしまっているのだ。

牧志 浩太
「ここからは、どこに行けますか。
どこに行く電車があるんですか」

聞きながら料金表を見る。
行き先はなんて書いてあるかな。
KP
「この路線には決まった行く先がございません。
どちらへおいでになるかお分かりですか」
料金表には行く先など書かれていない。
佐倉 光
「渋谷は……」
KP
「かしこまりました。
……しかしお客様、申し訳ございません。こちら行きの電車は現在運休しているようです」
駅員さんの声に人間味は感じなかったが、少し気の毒がられているような気はした。
牧志 浩太
「そうなの?
おれ、えっと、那覇市の……、じゃない、あれ?」
困惑しながら、東北の小さな温泉街の名前を言う。
牧志 浩太
「お外行きの電車、ありますか?」
KP
「そちらも運休ですね。
お客様が向かうべき場所はそちらではないようですよ」
駅員は穏やかに答えた。
佐倉 光
「なはし?」
牧志 浩太
「うん。おれのお家、そこにある気がしたの。
でもちがうんだよ。なんでだろ」
うー、と唸る。
浩太は行き先を告げた。
KP
「○○○○○○ですか。かしこまりました」
黒い駅員は手を出した。
KP
「おひとり100円頂戴します」
牧志 浩太
「えっ、○○○○○に行くの?」
びっくりして駅員と光の顔を交互に見る。
KP
「はい。こちらには商店街とありますので、
お客様が向かわれるべき場所はこちらかと思いますが」
駅員はチケットを見せてくれた。
あまり見たことのないような白いチケットに「100円 商店街」と書かれていた。
佐倉 光
「商店街? どこの?」
牧志 浩太
「商店街だ。
……行ってみようか、光。
もうすぐ夜が明けちゃうよ。
ここにいたら、おばけが来る」
佐倉 光
「うん、そうだね……」
光はポケットをゴソゴソと探って100円玉を取りだし、駅員さんの手に置いた。
佐倉 光
400円 → 300円
牧志 浩太
同じく、100円玉を取り出して駅員さんの手に置く。
牧志 浩太
700円→600円
KP
「では、どうぞ」
駅員さんは切符にぱちんぱちんと鋏を入れ、一枚ずつくれた。
KP
「車内でまた切符を拝見いたします。どうぞ」

駅員さんは改札の向こうを指し示す。
薄暗い、自販機すらない簡素な単線のホームがあった。
他のお客はいないようだ。
牧志 浩太
「うん……」
なくさないように、切符をポケットにしっかりしまう。
牧志 浩太
ページが落ちてないか見回しながら、ホームへ向かう。
ホームに時刻表はあるかな。
KP
時刻表もなく、ただベンチだけが設置してある。
牧志 浩太
ベンチの下にページが落ちてないかな……、と下に這い入って探す。
KP
ベンチの下には何も無かった。
佐倉 光
「ほんとに来るのかなぁ、電車」
KP
光が不安そうに囁いたとき、カタンカタンという響きが聞こえてきた。
牧志 浩太
「あ……、来た」
ベンチの下から出て、顔を上げて電車を見やる。
どんな電車かな。
KP
1両だけの古い見たこともないような型の丸っこい電車だ。
カタタンカタタンと軽い音を立てて走ってきて、ゆっくりと止まる。
行き先には『商店街』と書いてあった。

内装は古そうだが清潔で、ほかに乗客は居ない。
牧志 浩太
「だれもいないな……、商店街って、どこの商店街なんだろ。
この街なのかな……、おばけ、いないといいな……」

もう、夜明けが近いのに。
焦りを言葉に出しそうになって飲み込んだ。
牧志 浩太
光の手を引いて、電車に乗り込む。

KP
光もあなたに続いて乗り込む。
すると扉がシューッと音を立てて閉じた。
車輪がレールの継ぎ目を走る音が聞こえ始め、電車は走り出す。
KP
椅子は赤黒い起毛素材が貼られていて少し固いが座り心地がいい。
運転席にはカーテンが掛かっていた。
牧志 浩太
「あ、気持ちいい」
深い赤色の起毛素材は、古びているけどちょっとお洒落だ。

ぽふん、と席に座って感触を楽しんでから、車内をきょろきょろと見回す。
牧志 浩太
反対側まで行ってみるが、車掌さんはいるだろうか?
KP
車掌の姿はない。単行なこともあり、ワンマン電車なのではないだろうか。
佐倉 光
「これで家まで帰れるかな。商店街ってどこだろ……
ねえ、浩太はどこに住んでるの?」
牧志 浩太
「おれ、東北ってところに住んでるんだ。
なかでも山の中の、雪ばっかりになるとこ……、」
牧志 浩太
「あれ、沖縄……、だっけ?
海がすぐ近くにあって、陽射しが強くて、歩けないくらいに雪が積もって、みんな肌が真っ黒で……?」

あれ? と不思議そうに首をひねる。
佐倉 光
「東北と沖縄……って、近かったっけ?」
あれ? と不思議そうに首をひねる。
牧志 浩太
「ううん、近くない……、と思う。
おれ、引っ越ししたのかな……?」
佐倉 光
「ふぅん?」
地図にはまだ明るくない。
牧志 浩太
「光はどこに住んでるの? 
さっき言ってた、しぶや?」
佐倉 光
「うん、僕は渋谷。
ここ、あんまりビルないね。どのあたりなんだろ」
KP
窓の外を見て首を傾げる。
牧志 浩太
「渋谷かあ。渋谷って東京だろ? 都会だ。
光、すごいとこ住んでるんだな」
佐倉 光
「夢だ、って言ってたけど、だとしたらどうやったら目が覚めるんだろ」
牧志 浩太
「夢だったら、朝になって起きたら目が覚める……、よな?
でも、夢の中で朝でも、ほんとの朝じゃないよな。

どうしたらいいんだろ。
いつもなら、ユキが起こしてくれるんだけど」
佐倉 光
「ユキ? 妹?」
牧志 浩太
「ああ、うちの猫!
白くてふわふわなんだよ。かしこいんだ」
佐倉 光
「猫! 猫いいなぁ、うちペット禁止なんだ」
KP
そうしているうち、運転席のドアが開いた。
先ほど駅で見たのと同じような黒い制服の人が出てきて、こちらへ歩いてくる。
「切符を拝見いたします」

KP
・一律料金なのに確認される謎。
・ワンマンなのに走行中に運転士が確認に来る謎。
このへん……光はわかんないな。
牧志 浩太
一律料金なのに確認される謎はさすがに浩太もわかんないかなぁ。
電車に乗ったことはあるっぽいけど、故郷どっちも車社会ですしね。
KP
あっ。切符にはさみ入れる描写し忘れた!
シャキン。
只野浪漫だから別にいいんだけど後で入れよう。
牧志 浩太
ああっと!
浪漫、だいじ。
というわけで浪漫は入れました。多分この路線無人駅もあるから切符の確認に来るのでしょうね。

牧志 浩太
「あれ? うんてんしさん、運転はいいの?」
あれ? と運転席と運転士さんを見比べる。
KP
「はい、向かうべき場所に向かっておりますので」
運転士は手を差し出した。
佐倉 光
「……はい」
光は素直に切符を差し出した。
牧志 浩太
不思議そうにしつつも、切符を見せる。
牧志 浩太
「ここ、夢のなかなんですか?」
KP
「……夢、であるかもしれませんし、そうでないかもしれません。
いずれにせよ、今のお客様方にとってはここは現実なのでは?」
牧志 浩太
「むー……。そうだけど、そうじゃなくて」
KP
「……なるほど……」
運転士があなたの切符を確認したその時、電車はスピードを落とし始めてゆっくりと停車した。
牧志 浩太
「……あ、着いたみたいだ。ここ、商店街ですか?」
駅名標を見ようとしてみる。
KP
止まったのは駅ではない。
運転士はあなたがたのきっぷをしまい込んでしまう。
KP
「どうやらここまでのようです。
申し訳ありませんが、ここからは徒歩でお願いします。線路沿いに行けばたどり着けますので」
電車の扉が開いた。
本当に駅ではない。普通に線路の途中だ。
牧志 浩太
「えっ、歩くの」
びっくりして、電車の扉から下を見下ろす。
それなりの高さがあるだろうか? 特に子供にとっては。
KP
一応メンテナンス用であろうハシゴというかちょっとしたステップはあるが、それなりに高い。
牧志 浩太
「ひゃっ」
へんな声が出てしまう。た、高い!
のぼるのは楽しくても、降りるのはこわいものだ。しかも突然。
牧志 浩太
「こ、ここほんとに降りるんですか?」
佐倉 光
「降りなきゃだめ?」
KP
「はい、時には歩くことも必要ですよ」
当たり前のように運転士はいう。
電車が動く気配はない。
牧志 浩太
「だ、大丈夫! これくらい、おばけより怖くないもん!」
決意! 力強く宣言して、先んじて降りる!
佐倉 光
ステップにしがみつきながらそろそろと降りて、最後で尻餅をつく。
牧志 浩太
「光、大丈夫か!?」
ぺちぺちと尻の砂を払ってやる。
KP
二人が降りると電車は扉を閉めた。
線路脇には歩いて行けそうな獣道じみた道がある。
牧志 浩太
「歩けそうな道……、あるな。あそこ歩いていこう」
不安な気持ちになりながら、空を見上げる。
空はまだ暗いだろうか。月はどこにあるだろうか。
KP
行く手の空は少し明るくなってきている気がする。
ふと気付けば線路の上から電車が消え失せていた。
走り去る姿も見えず音も聞こえなかったのに。
KP
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1
牧志 浩太
1d100 43 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 63→失敗
SAN 43 → 42
佐倉 光
1d100 46 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 48→失敗
SAN 46 → 45
牧志 浩太
「電車……、なくなってる」
ふっと後ろを振り返れば、電車が消え失せていた。
少し明るくなってくる空と消えてしまった電車は、なんだか気味が悪かった。
牧志 浩太
「電車、おばけだったのか……?」
佐倉 光
「おばけ電車だったの?」
佐倉 光
「でもあのひと、おばけみたいに冷たくはなかったな」
牧志 浩太
「ああ、そうだな。
心配してくれてたもんな。いいおばけだったのかもしれない」
確かに、と頷く。
佐倉 光
「うん、そうだよ。きっとそうだよ。
いいおばけだっているよね」
牧志 浩太
「よし、行こう。夜が明ける前に行かなくちゃ」
光に手を差し伸べる。光と手をつないで、歩きだす。
KP
光はあなたの手を握って歩き出した。
牧志 浩太
「おれ、いいおばけに会ったことあるんだよ。
きっと、うちゅうじんだったんだと思う。一回だけだったけど」
歩きながらそんな話をする。

KP
気がついてみれば周りの風景に白っぽさはもうなく世界は鮮やかで、
深い闇と白い霧がよく見えるようになっていた。
KP
てくてくと歩いていると、遠くに黒々とした建物の群れと、明かりが見えてきた。
だが、霧も濃くなってきている……

【POW】判定。
佐倉 光
「僕が会うおばけもね、そんなにこわくないのがいっぱいいるんだよ。
蟲みたいな羽が生えてたり、雪だるまだったりするのはあんまり怖くないんだ」
牧志 浩太
「雪だるま? 雪だるまのおばけなの!?
いいなあ、おれも会ってみたい!」
牧志 浩太
そんな話をしながら歩いていくと、次第に霧が濃くなっていくような気がして、身を震わせた。
牧志 浩太
1d100 60 【POW】 Sasa 1d100→ 80→失敗
SAN 42 → 40
牧志 浩太
結構時間が経過してるっぽいですが、この間に不定リセットは入りませんか?
KP
あ、そうですね。電車に乗ったところでリセットしていいです。
牧志 浩太
はーい。では43でリセットですね。
佐倉 光
1d100 75 POW Sasa 1d100→ 96→致命的失敗ファンブル
SAN 45 → 43
KP
心細さのためか、白み始めた空への不安か、光がまた泣き始めた。
あなたにその不安と寂しさが伝わってくる。
牧志 浩太
「大丈夫……、大丈夫だよ、光。きっと帰れるよ」
手を握りしめて言う声は、か細かった。
白み始めた空の色で分かってしまう。もうすぐ朝が来るって。
何もなくても分かってしまう。そう言う言葉に、自信なんてちっともないって。
でも、もうだめだなんて言いたくなかった。
KP
Sasa 🎲 Secret Dice 🎲
KP
線路沿いの道は薄暗くて不気味ではあったが、
特に何かが出てくることもなく、ただただ静寂に包まれていた。
牧志 浩太
「大丈夫……、きっと大丈夫。電車で行った先だもん。
おばけだって、そこまで追いかけてこないよ」
祈るようにつぶやきながら、線路脇をぽつんとふたり、明かりに向かって歩いていく。
KP
そのうち、線路脇の建物が多くなり、行く手にホームが見えた。
どうやら無人駅で、『商店街』と書かれている。
駅に人気はなく、しんと静まり返っていた。
牧志 浩太
「あ……、駅だ」
駅のホームを見回す。
自動販売機があったり、床に何か落ちていたりはする? 駅舎などはある?
KP
駅舎のない簡素な駅で、自販機なども見当たらない。
床に落とし物などもない。

駅の外は商店街ではあるのだろうが、街灯は薄暗く、シャッターが降りていて、通りを車が走っていることもない。
牧志 浩太
「……」
薄暗い商店街は、いまにもそこからおばけが出てきそうで怖かった。
どうして駅員さんは、おれたちのことここに連れてきたんだろう。
牧志 浩太
「よし。誰かいないか探してみよう。もしかしたら、あっちにお家に帰る道があるかも」
駅の外へ踏み出して、商店街に足を踏み入れる。

KP
商店街はシャッターが降りていて真っ暗だ。開いている店など一つもない。
人も車も、猫の子一匹歩いていない、静かな通りだ。
色々な看板が闇に沈んでいて、昼間の賑わいを想像することもできないほどに寒々しかった。
佐倉 光
「ここが、『いくべきばしょ』? 渋谷じゃないな……」
牧志 浩太
「うん……。だれもいないな。おれのうちでもない。
ページ……、おちてないかな」
随分遠くまで来た。どこにもページなんて落ちてなかった。
ページなんてどこにも落ちてないんじゃないか、このまま夜が明けちゃうんじゃないか、そんな気持ちになりそうになる。

どうしたらいいんだろう。どうしたら、お家に帰れるんだろう。
光を、なんて言って元気づければいいんだろう。
佐倉 光
光はあなたの横をとぼとぼと歩いている。
牧志 浩太
あの公園みたいに、案内図ないかな。
案内図や、何か情報を得られるものがないか探す。
KP
シャッター街は延々と続いている。案内図などもなく、似たような風景が伸びている。
考えてみれば商店街ならいくらでもありそうな自販機もなく、横道もなく、ただのっぺりとした作り物じみた道が続いているだけだ。
どこまでもどこまでも続いているそれに不安を感じ始めた頃、少し向こうに明るい建物が見えた。

そこは古びた小さな映画館だ。
扉は開いていて、「営業中」の札がかかっている。
佐倉 光
「あ、ここになら人、いるかな……」
牧志 浩太
「あ……、」
久しぶりの明るい光を見た時、思わず声が漏れた。
牧志 浩太
「営業中だって……、きっと、映画館のひと、いるよ」
自然と、期待してしまう。
暗くてさみしくてどうしていいかわからなくて、
もう一も二もなく、明るくてあたたかいその中へ飛び込みたかった。
牧志 浩太
「あの……、お邪魔します……」
そんな気持ちをこらえて、扉の向こうをそっと覗き込む。
KP
中に入ると明かりは暗く、ひっそりとした室内だ。
受付に大柄の影のような男性がいるのが見えるが、客らしき人は誰もいない。
KP
【アイデア】をどうぞ。
牧志 浩太
1d100 90【アイデア】
Sasa 1d100→ 67→成功
KP
何だか最近、映画館に入ったな、という気がした。
それがいつのことか、どこの映画館なのかはよく思い出せないが……
牧志 浩太
(映画……、なんて、行ったっけ)
中が、なんだか暗い。それに静かだし、お客さんもいない。
映画……、やってないのかな。
KP
壁には見覚えのある絵が入ったポスターが貼られていた。
『おばけのまち』
そんな題名の下に、真っ青な闇に沈んだ街の中を、白いおばけが彷徨っている絵が。
そしてそのおばけから逃げている二人の人物の影が描かれている。
佐倉 光
「この映画、さっきの絵本のだね……」
牧志 浩太
「あの……、」
恐る恐る中に入って、受付の人に話しかける。
KP
「はい、ご観覧ですか。もうすぐ上映ですよ」
駅員と似たような風貌の、黒い影のような人物がいる。
どうやら受付にいるのだから店員なのだろう。
帽子をかぶっているようで顔が影で見えない。
店員らしき男は物腰柔らかな態度で対応してくれる。

彼の横には価格表が書いてある。
飲み物や食べ物が販売されている。
KP
む。元々そんなに効率良くない食べ物の回復量が強化の結果カスいなこれ。
牧志 浩太
おおっと。
KP
これでよし。
牧志 浩太
補正ありがとうございます。
KP
二人で食べたいじゃん!
牧志 浩太
それはある!!
光と分けたら回復量どうなりますかって聞こうとしてた。
回復量を倍にしたことで食べ物の利点がほぼなくなっていました。
回復量大きすぎな気はするけど……子供はオヤツで幸せになれるからこれはこれで!

牧志 浩太
『おばけのまち』のポスターのおばけに足はある?
KP
よくよく見ると黒で足が書かれているのが分かる。
ポスターをよく見た、ということでいいかな。
牧志 浩太
よく見たということでOKです。
KP
では主演に「佐倉 光 牧志 浩太」と名前があった。
牧志 浩太
「あれ……、これ、おれたち?」
ポスターを見上げる。
佐倉 光
「え? あ、ほんとだ? どうして?」
牧志 浩太
「うん……、なんで映画の中におれたちがいるんだろ?
やっぱりここ、夢のなかなのかな。
これ、おれの夢? 光も、おれの夢のなかのともだち?」
不思議に思って、手を握ったり開いたりしてみる。
KP
握って開くと、少しかじかんだ指の先がびりびりした。どうしたって現実にしか思えない。
佐倉 光
「さっきの絵本の破れたページ……ここで見られるかな」
牧志 浩太
「うん……、この映画のおばけ、あの絵本のおばけそっくりだもん。
もしかしたら、見られるかもしれない」
すっかりくじけていた元気が、ちょっとだけ湧いてきた。
そうだ、くじけてなんていられない。光と一緒に、お家に帰るんだ。

……夢から覚めても、光が消えちゃわないといいな。
牧志 浩太
「ポップコーンあるんだって、一緒に食べよう。
光、塩味が好き? キャラメル味が好き?」
佐倉 光
「えっとね、キャラメル! キャラメル食べたい!」
じゃあこっちが飲み物代二人分だそうか?
牧志 浩太
「じゃあキャラメル味な! おれもキャラメル好き!
あっ、ポップコーンのお金おれが出すよ。おれの方がおかねもちだもん」
佐倉 光
「じゃあねじゃあね、飲み物はー、僕はコーラ! 浩太は何飲む?」
KP
※のみたいソフトドリンクがあれば他にもあります。
牧志 浩太
「オレンジジュースがいい!」
牧志 浩太
こちらの方が所持金多いので、こちらがポップコーンと一人分のドリンク代を出します。
それで二人とも所持金200円になるはず。
KP
おっ、イイのかい? 奢られちゃうぞ。
牧志 浩太
ここは奢っちゃうぞ。お兄ちゃんだもん。
牧志 浩太
600円 → 200円
佐倉 光
300円 → 200円
KP
では、黒っぽいおじさんは山盛りのポップコーン(紙パッケージはおばけと逃げる子供たちのイラストが入った特別版だ!)と、オレンジジュースとコーラを渡してくれる。
光は嬉しそうにウキウキしている。まるでポップコーンを初めて見る宝物のようにキラキラした目で見つめていた。
牧志 浩太
光が元気になってよかった。
まだ何も変わってないけど、なんだか希望が出ただけでもうれしい。
それに、光が嬉しそうだと、一緒に嬉しくなる。
KP
「すぐに始まりますので、お早めにご着席下さい」
渡されたチケットの席番は、どうやらスクリーン前中央の特等席だ。
佐倉 光
「うわぁ、僕、映画館初めて……」
佐倉 光
「…………?」
光は首を傾げた。
佐倉 光
「前にもこんなことなかったっけ。サメが……」
牧志 浩太
「サメ? 
……なんでだろ、おれも、ついこないだ映画に行った気がするんだ。
映画なんて遠くて、めったに行けないのに」
牧志 浩太
不思議なきもちになりながら、早速ポップコーンを食べ、オレンジジュースをひとくち飲む。
KP
ポップコーンの表面はカリカリとして甘く、中はふわりと歯を受け止める。
香ばしさと少しのしょっぱさと甘さがバランス良く口の中で溶け合って、
とくにその甘さがずっしりと溜まっていたらしい疲労を溶かしてゆく。
甘酸っぱいオレンジジュースは爽やかに冷たく、こちらも疲労を吹き飛ばして、
何とかなる、という楽観的な気持ちを呼び戻してくれた。
KP
ではまず回復をどうぞ。
牧志 浩太
2d3+3 たべもの
Sasa 2d3+3→ 4[3,1]+3→合計7
2d3+2 のみもの
Sasa 2d3+2→ 4[1,3]+2→合計6
SAN 40 → 53 (MAX)
佐倉 光
2d3+3 ポプコン
Sasa 2d3+3→ 4[2,2]+3→合計7
2D3+2 コーラ
Sasa 2D3+2→ 6[3,3]+2→合計8
SAN 45 → 58(MAX)

佐倉 光
「美味しい! ……美味しい!!」
光は夢中で食べて飲んでいた。
牧志 浩太
「うん……、おいしい」
ポップコーンを口に入れると、ふわっと甘さがはじけて、塩気が舌に広がった。
いいにおいでしょっぱくてあまくて、おいしい。
くちゃくちゃになるまで舌の上で転がして、その味を味わった。

オレンジジュースは冷たくて甘酸っぱくて、宝物みたいにおいしかった。
冷たさが喉の奥に落ちていくと、じんわりと広がって感じた。
牧志 浩太
「おいしい! おいしいな! すっごくおいしい!」
夢中になって光と笑う。
最初に光と会ったときの、ひとりっきりじゃないって気持ちを思い出すみたいだった。
弱気が全部吹き飛んで、胸の奥が熱くなる。

さみしくない。怖くない。
大丈夫。きっとなんとかなる。なんとかするんだ。そう思えた。
佐倉 光
「コーラも美味しい!」
光はニコニコしていた。ここで会って、初めての力が抜けた笑顔だった。
KP
ブー、と開演のブザーが鳴る。
スクリーンの前にあなた方二人だけで、その映画はCMを挟むこともなく始まる。

KP
その映画の始まりの場面は、恋人繋ぎにされた二人の男の人の手のアップだった……
タイムオーバー!
KP
ここで正気度 リセットしつつ本日はここまで。
牧志 浩太
一時だった! ありがとうございましたー!
映画館と夢のなかで一瞬「ダオロス出る?」って思っちゃった。
KP
まあー、元シナリオの「削るぞ削るぞ!!!」って意思をかなり弱めて更に回復アップしてるんで、難易度は元シナリオと全然違うんだけど、許していただきたい。
削り倒して殺す、がメインの話ではないはずなので。
この流れだと観ることはできるんじゃないですかねーダオロス。
観たら終わるのでこう、うまいことフレームの外に。
牧志 浩太
ロスト率調整可能らしいですし、推奨通りの高SANを持っていないPC達に合わせた難易度調整ということで是非とも許していただきたい……。

SANPCでSANダメージが弱いと全然発狂しないしSAN減らないから、高SANなPCたちにもジャンジャン発狂してもらおうな感じなのかな。>削る意志
KP
成功しても1は持って行かれるとか、強制SAN減少とかバンバン飛んでくるし、おばけと遭遇するたびに実は1d5+1とか飛んでくる感じなので……
牧志 浩太
ワーオ……。この二人だと瞬く間になくなっちゃう。
1d5+1って、やっぱり発狂してくれ! ってダイスな気はしますね。
KP
結構「ちょっと怖いな」程度で《SANチェック》飛びまくるので、「流石にそれで正気を損なうことは……なくない?」ってとこ削ったりしてますね。
発狂すると強制で「逃走」になるので、普段そういうのに動じない人に悲鳴上げて走って欲しいのかなと思います。
ここの二人にそんなのぶつけたら死にますのよ。
牧志 浩太
ですね。高SAN環境でさっぱりSAN減らない・動じないPC達のいつもと違う顔を見たい! ってシナリオかな、って気がしますね。
90あるとほんっっとーに減らないし。
KP
シナリオ通りにやると移動するたびにほぼ80%の確率でおばけ出てくるしさー
牧志 浩太
ひえぇ。
KP
それへの対抗が〈隠れる〉しか用意されてないからなぁ。
難易度調整という所はもう今回かなーり弄くり倒しています。
あとは……片目牧志くんとオニさんに頑張っていただくとして……
牧志 浩太
ロスト率:中の記載といい、やっぱり高SANPCにジャンジャン発狂してくれ! いつもと違う顔が見たい! ってシナリオな気がするので、個人的には調整とても助かります。
いやシビアなギリギリの《SANチェック》やちゃんと正気度 ロストするPCが見たいんだ調整してくれるな、ってシナリオだったら調整可能とは書いてないでしょうしね。
KP
この時点で結構恐ろしいシナリオだなと思うんですけど、テストプレイの時は70~90の探索者が4回中2回両ロスする難易度だったらしく。
牧志 浩太
ワーオ。
この二人だとわりと最後まで行かずに吹き飛んでしまう……
これは間違いで、2ロストしかけた、だそうです。
KP
この正気度 というシステムの特性上、高SAN値向け削りシナリオは低SAN値にはロストへの片道切符でしかないんだよなぁ。
牧志 浩太
ですねぇ。システム的にそこはどうにもならない。
KP
ゆっくりおやつ食べて映画観ていってね。
……もう朝近いのに映画観てていいのかなぁ、なんて思うけど。
もうすぐ終わりそうって思うじゃん……?
牧志 浩太
難易度調整頂けたおかげで、いつもと違う二人の交流と探索、すごく楽しいし、いつもと違った顔が見られるので感謝しています。
このシチュエーションは本当に楽しい。ありがとうございます。
ゆっくりおやつたべて映画見ていこう。

>朝近いのに
まあPC的には「これしか希望が無い」状態ですし。
PL的には…… 思った。でも他に入れそうな場所なさそうだった。>この状況でゆっくり映画見るのは怖いが?

「寒い」「寒い」って言ってるから季節がきっと冬なんですよ……、きっと。まだもうちょっとある!
KP
そうそうふゆふゆ。夜明けは遠い。
牧志 浩太
国立天文台の「各地のこよみ」(日の出・日の入り時刻一覧)、
一覧ページが日本列島の形になってるのがちょっと面白い。
KP
ほんとだー。ひっそり凝ってる。
牧志 浩太
そうそう。凝ってるし、地理的条件が重要になる日の出・日の入り時刻だとこの方が直感的なのもいい所。

牧志 浩太
映画が始まったのに気づく。
少し身を乗り出して、見逃すまいとスクリーンを覗き込んだ。
KP
どうやら主役は黒髪の目つきの悪いお兄さんと、なんだか不安定で優しい赤茶の髪のお兄さんだった。
黒髪のお兄さんはどこか冷たく感じるような振る舞いをしていたが、なんだか不幸で、
瓶詰めになったり猫にされたり別の世界に飛ばされたりして、そのたび赤茶の髪のお兄さんが助けてあげていた。
黒髪のお兄さんは「佐倉」、赤茶の髪のお兄さんは「牧志」と呼ばれていた。
映画はダイジェストのようで、あまり詳しい話は分からなかったが、どことなく自分たちに似ている、と思うところもあったかも知れない。
「牧志」が「自分」を奪われて消滅しかかったとき、「佐倉」は借りを返すために命懸けで助けに行った。
佐倉 光
光は目を丸くして映画を観ていた。
牧志 浩太
「おとなのおれたち……?」
戸惑ったようにつぶやく。

「佐倉」お兄さんのつんつんした感じも、「牧志」のなんだか寄る辺ない感じも、おれたちとは思えなかった。

ふしぎなお話が次から次へと出てきて、目まぐるしい。
牧志 浩太
「あ、蛇のお姉さんだ」

でも、お兄さんの髪の色は、おれそっくりだった。
KP
2人の間に友情が芽生えたところで、映画の題名が表示された。


おばけのまち
~さみしい おばけ~


KP
それから二人は大変な目に遭いながらも互いを助け合いながら乗り越えていった。
最初はツンケンしていた「佐倉」がよく笑うようになり、自分を見失いがちで無力を悩む「牧志」に強さが宿り、二人は無二の親友になってゆく。
そんな中で、「佐倉」は昔病院にいたこと、「牧志」は記憶がほとんどないことなどが明かされてゆく。
KP
いくつもの世界を巻き込んだ大冒険で、あなたが持っている縫いぐるみとにている格好のお兄さんが出てきたりもした。
そのひとは「佐倉」の中に消えた。
KP
「佐倉」がひたすら悪夢に溺れているときにも「牧志」はその中に入ってまで助けようとしてくれていた。
「牧志」が凍り付いたとき、「佐倉」は「浩司」と一緒にヒントを探して雪女を追い払った。
二人が吸血鬼になったりもした。
「佐倉」は恐竜になったり、突然そっくりの人間と一緒に「牧志」が助けに来たり……
あるときなどは、「牧志」を狙った男に「佐倉」が悪魔を使って一人でとどめを刺したりもした。
そんな騒ぎの中で「佐倉」が子供になってしまったりした。
子供になった「佐倉」は態度こそ違え、光に見た目がそっくりだった。
牧志 浩太
それはびっくりするほど盛り沢山なおはなしだった。
いつのまにか手元のポップコーンのことも忘れて、画面に見入ってしまう。

「佐倉」はかっこいい悪魔使いだった。
「牧志」にはすごい力はなんにもないけど、画面の中でどんどん強く、諦めが悪くなっていく。
牧志 浩太
「あ、浩司だ。浩司もでっかい。何だかつんつんしてるのなんでだろ?」
佐倉 光
光は食い入るようにスクリーンを見つめている。
二人がピンチに、とりわけ「牧志」がピンチになるとき。
光は微かな声を漏らして席から立ち上がりそうになることもあった。
牧志 浩太
「牧志、ちがうよ! そっちじゃないよ!」
牧志 浩太
こわくて、はらはらして、でも夢中になってしまう。
「佐倉」は光とは全然違うのに、時々光そっくりに笑う。
牧志 浩太
「佐倉」が死にそうになった時、ひどい目にあってる時、思わず光って呼んじゃいそうになる。
「牧志」、何やってんだよ早く助けてやれよって、拳を握って画面の中に叫んだ。
牧志 浩太
浩太の方がちょっと観覧態度がうるさい。
KP
【アイデア】
牧志 浩太
1d100 90【アイデア】 Sasa 1d100→ 89→成功
KP
この映画の主役は二人で間違いない。
それなのにカメラは佐倉を追い続けていた。
まるで牧志の方にカメラがないみたいだ。
「佐倉」と「浩司」が一生懸命藁を編む場面を、あなたは「知らない」と思った。
どのシーンだって知らなくて当たり前なのに。
KP
そのうち二人は一緒に住み始めた。
それから程なくして、あのおばけ屋敷の変な椅子の場面が出てきた。
「佐倉」が酷い目に遭っている間、光は目を閉じてあなたの手を握っていた。

それから、今度は「牧志」が酷い目に遭う番だった。
違う「牧志」が来て「牧志」に酷いことをするのだ。
楽しそうなことも多かったが、二人はだんだん辛い出来事に押し潰されて、
様子がおかしくなったりしていった。

「牧志」が不安でおかしくなったり、「佐倉」が記憶をなくしたりした。
辛すぎる記憶を、旅行に行ったり洗い流したりして、ふたりはなんとかかんとか一緒に歩き続けていた。
牧志 浩太
仲のいい二人のおはなしなのに、段々雲行きが怪しくなってきた。
牧志 浩太
あの変な椅子の場面を見て、だから光はあの椅子や蛇をこわがってたんだと思った。
だからあんなにあの椅子が許せなかったんだと思った。
そこにいるのはおれでも、光でもないはずなのに。
牧志 浩太
二人が段々ぼろぼろになっていくみたいで、悲しい気持ちになった。
楽しい映画だと思ったのに、かなしい映画になっていく。

それでも、映画の中のふたりがずっと一緒に仲良しなことが、まだ救いに思えた。
牧志 浩太
この映画の主役は「佐倉さん」ひとりみたいだ。
今にもつらいおしまいが来そうで、こわくなりながら映画に見入った。
KP
色々酷い目に遭いながらも、ふたりは手を繋いで歩き続けていた。
しかし、あるシーンで二人は手を離す。
「牧志」の身代わりに実験室に入った「佐倉」は、彼の使い魔である蛇女と、奇妙な友人を唯一の話し相手として、外の世界と隔絶された。
そこは今までの波瀾万丈とは全く無縁の平穏で静かな世界だった。
長いこと、変化のない場面が続く。
「牧志」が外で何かと遭遇していても手を差し伸べることもできない。
「佐倉」は奇妙な友人と楽しそうに会話をしながら、その会話が途切れたときにふと、呟いた。

「あいつ、どうしてるかな」
その声は、どうしてか光が泣いたときの声を思い出させた。


そんな、あまりにも中途半端な場面で唐突に画面は暗転し、スタッフロールが流れ始めた。
……主演の名前はやはり、
『佐倉 光・牧志 浩太』とあった。
牧志 浩太
気づけばずっと見入っていた。
つらいおしまいはなかったけど、あまりに突然の終わりに、ぽんと放り出された気持ちになった。

おれ……、じゃないや、牧志は、佐倉とまた会えたのかな。
それとも、それっきり、「むかしのともだち」になっちゃったのかな。

それってなんだか、さみしい気がした。
牧志 浩太
「あれ?」
流れる文字を目で追いかけていて、はっと我に返った。
牧志 浩太
「なんで!? おばけ出てこなかった! 攻略法は!? 絵本は!?」
そんなのってないよ!
佐倉 光
「おばけは!?」
光も横で叫んでいた。
KP
原作と実写映画が違うってよくあることだからぁー
牧志 浩太
ちょっと違いすぎではぁー
KP
エンドロールが終わった後、今いる映画館とは違う、もっと広い映画館の客席が映った。
客席同士で向かい合っているような状態だ。
客席にいたのは離れて座っている二人だけ。
今までの映画に出ていた主演の二人だ。映画のラストシーンだろうか。
牧志 浩太
「あれ、まだ続い……、またおばけじゃない」
KP
〈目星〉/2
牧志 浩太
1d100 49 Sasa 1d100→ 35→成功
佐倉 光
1d100 49〈目星〉 Sasa 1d100→ 10→成功
KP
二人ともこちらを、

あなた方を見つめているように思える。
佐倉 光
「…………」
光は二人の姿に小さな声を上げた。
しかし続きを待とうとしているのか席から動かない。
牧志 浩太
「こっちみてる。
おーい、なにか言ってー。おれたちこまってるのー」
映画のスクリーンに向かって手を振る。
KP
「牧志」も「佐倉」も反応しない。
突然、「佐倉」の影が広がった。
みるみるそれはあのおばけの姿になって伸び上がり、「佐倉」を呑み込んだ。
おばけはそのまま天井まで伸び上がって上から「牧志」を呑み込み、空虚な目でこちらを見た。

見たのだ。

あなたは、スクリーンの向こうにいたはずのおばけに
「見つかってしまったのだ」と直感する。
佐倉 光
「っ!」
光が恐怖の声を漏らした。
KP
SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1d4+1
牧志 浩太
1d100 53 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 9→成功
SAN 53 → 52
佐倉 光
1d100 58 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 60→失敗
1d4+1 Sasa 1d4+1→ 2+1→合計3
SAN 58 → 55
牧志 浩太
「うわぁっ!?」

な、なんで!? 佐倉がおばけになっちゃった!?
牧志 浩太
「な、なんでなんで、なんでおばけになっちゃうんだよ、なんでおばけがこっちみるんだよ!
なんでなんでなんで!」

あわあわと慌てて席を立とうとする。
KP
【DEX】×6判定
牧志 浩太
1d100 48 【DEX】 Sasa 1d100→ 34→成功
佐倉 光
1d100 60 【DEX】 Sasa 1d100→ 56→成功
KP
ふたりとも咄嗟に席を立ち、大事な物を全部抱えて逃げ出すことができた。
背後のスクリーンから冷気と圧力が漏れ出してくる。
牧志 浩太
ぬいぐるみや鈴やいろんなものを抱えて、慌てて逃げ出す。
牧志 浩太
なんで。
なんでなんで。
おばけの攻略法があると思ったのに。
きっと大丈夫だって思ってたのに。
光と一緒にポップコーン食べて、楽しかったのに!
牧志 浩太
なんでおばけになっちゃうんだよ。
どうしたらいいんだよ。
光になんて言ったらいいんだよ。
食べられたくなんてないよ!
KP
映画館のもぎりの人の姿はない。
外に出ると、駅の方向は真っ白な霧に覆われていた。
牧志 浩太
「っ、えぐ、えう、」
目の奥があつい。頭がいたい。目のすぐ近くまで涙がぐうっと近づいてくる。

泣きそう。やだ。もうむり。
牧志 浩太
「っ、ううう」

でも光がいる。
佐倉 光
「にげ、ないとっ」
牧志 浩太
「っ、えう」
顔をくしゃくしゃに歪めて、逃げないとっていう光の声に頷いた。
牧志 浩太
駅、ううん、電車はここまでこられないって言ってた。
逃げられそうな方、ちょっとでも霧の薄い方、隠れられそうな物のある方向を探す。
遊ぶ? 逃げる?
牧志 浩太
佐倉さんのさみしさが何かに干渉されたかなぁ。
このおばけは佐倉さんなんだろうか。
とはいえ、このままのおばけはきけんみたいだしなぁ
KP
割とこのシナリオ、「子供の二人で遊んでね!」という意図が見えるんだけど、それにしては致死性の時間制限とおばけで追い立ててるんだよなぁー。
牧志 浩太
いくら子供でも、この状況で遊ぼう! ってなかなかならない。こわい。

でも他に何もできない(行けそうな場所が見当たらない)から飛び込まざるを得ないのは、神話と信仰同様、変な味があって楽しい。

その点では不条理デストラップはないよ! 時間経過は移動時だけだよ! って宣言下さったのは助かりました。

普通なら一度トラップ食らったらもう入る気にならないし、遊んで時間を無駄にしようとは思えないけど(※子供だから歩けなくなっちゃうのはアリ)、
PL視点それが明確だとPCを遊び場に追い込みつつ「じゃあ遊ぼう」ができる。
他に行くとこないっぽいな、というのは描写でわりと見えますしね。
KP
ぶっちゃけないと大っぴらに遊べないなこれ!
というかシナリオ進行すらままならないな!? って。
牧志 浩太
助かります!
厳密に一つ一つの行動が足を引っ張るタイプの時間制限シナリオならもうちょっと時間経過は明確に示されるだろう、この描写は他に行く所ないな、などとメタしていても、合ってる保証はないですしね。

子供でも、子供だからこそ、こわいものからはそりゃ一目散に逃げようとするし。
シビアそうな展開ならPLはPCが子供という条件とバランス取って理由をつけつつ最善の行動を取ろうとするし。
それでシナリオの面白いとこ・せっかく遊べたとこ楽しめないのは実にもったいないので、そういう所も含めてのバランス取りめっちゃ助かっております。

KP
ではふたりで【POW】×5するか!
牧志 浩太
1d100 60 【POW】 Sasa 1d100→ 50→成功
佐倉 光
1d100 75 佐倉の【POW】 Sasa 1d100→ 35→成功
KP
ではふたりともなんとか涙をこらえて走れる!
空はもう明るくなりかけている。夜明けが近いのだ。

さっきまでは全く変化がないように思えた商店街にアーチが見えて、そこを抜けると水族館に行き当たった。
水族館の入り口は開いていて、中が明るい。
この水族館はどこか、前に見たことがあるような気がした。
牧志 浩太
「うぇ、うぇえ、うぁあ」
もう泣くのをこらえることなんてできなかった。
わんわんと泣きながら走る。
佐倉 光
「うっ、ううっ」
KP
光はのどの奥で潰したような声を漏らしながらあなたに続いて走った。

コメント By.KP(佐倉)
どこへ行けばいい? 何を探せばいい?
二人は手を取り合ってなんとか歩き続ける。
確かな物は何もなく、時間もない……

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


TRPGリプレイ【置】 CoC『花ぐもり』佐倉(塔)&牧志(塔) 1

もうずっとずっと昔の話なのに、どうしてこんなに鮮明に思い出せるんだろう。

TRPGリプレイ CoC『VOID』継続『お、捨てKPCだ。可哀想に……』ヴィキ&結城 1

「……あれ? 俺の体、なんか……変じゃない?」

TRPGリプレイ CoC『meow!!』牧志&佐倉 1(秘匿オープン版)

猫とこっくりさんやっている奇妙な青年は、おおいに人目を集めたようだ。


送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!