こちらには
『満を持して今日も俺は眠れない』と
『スペクト・ラム』と
『対の棲み家』のネタバレがあります。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。
以前にそうと知らずにドリームランドへ行ったことがある。
巻き込まれ体質らしい。
牧志とは友人。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
以前にそうと知らずにドリームランドへ行く佐倉と感覚を共有していたことがある。
佐倉とは友人。
Call of Cthulhu 6th
「満を持して今日も俺は眠れない Remake ver.」
トドノツマリ海峡 様
シナリオ構成:四話構成ミニキャンペーン
人数:2人~4人
時間:5時間~
推奨技能:〈目星〉、〈聞き耳〉、交渉系技能
システム:6版
本シナリオは2~4PLのシナリオですが、今回は牧志をKPCとし、タイマンで回させて頂きます。
第一夜「狭間の街」
ひとりの少年とともに日常へ帰還してから少し経ち、ようやく少年のいる日常を軌道に乗せた頃だ。
少年はすやすやと気持ちよさそうな寝息を立てて眠っているが、あなた達はどうにも眠れずにいた。
そう、眠れないのである。
明日もあなたは仕事、彼は大学の授業が1コマ目からあるというのに。
目を閉じて森の黒山羊を数えようが、温かいハーブティーを口にしようが、酒の力を借りようが、まぁ眠れないのである。
描写の都合だけなので、家の中ならどこでも大丈夫です。
ウダウダゴロゴロしてる牧志って、そりゃ普通にあると思うけど作中では割と珍しいかも。
シローくん
こっちの部屋で寝てるなら、起こさないように部屋でたのかもね。
佐倉さんがそれで困らないなら、より【POW】の高い佐倉さんの部屋かも。
ですね。起こさないように。
全然眠れない。
牧志も眠れないのか、リビングのソファの上に彼の姿が見えた。眠れないのに眠いような倦怠感を持て余しながらゴロゴロしている。
無理なもんは無理だ。
暇だからハッキングでもと思ったが、キーボード叩いてたらシローがモゾモゾし始めたのでやめた。
あきらめて水を飲みにリビングに出る。
少し眠たげな口調で彼は応える。辺りに牛乳の香りが残っている所からすると、温かいホットミルクはもう試したのだろう。
傍らに置かれたマグからハーブティーの香りに混じって少し、酒の香りがする。
冷たい水を飲んでリビングのテーブルにつき、あくびをしながら裁縫道具出して、破れた服を繕い始める。
仕事着はとても丈夫な『制服』なのでそんなに繕う機会は多くないのだが、変な事件に巻き込まれるようになってから私服を繕う機会が多い。
以前なら、破れたり汚れたら買えばいいや、と思っていたのだが……。
マッカのレートがクソ化した上、一人増えた分消費も増えているのだ。
牧志はそんなことを言いながら、服を繕うあなたの手元を眺めている。
牧志もアルバイトを何かしら増やしたとは聞いているが、あなたと入れ替わりでシローの様子を見るため、そこまで仕事を詰めすぎるわけにもいかないようだった。
あなたの悪魔退治に比べると稼ぎの時間効率が悪すぎる、というのもある。素直に。
その結果、彼が家の細々したことをやる機会が増えていた。
賢い少年は周囲のあらゆるものへの好奇心を疼かせながらも、聞き分けよく家の中に収まってくれていた。
牧志バイト何やってるんだろう。
俺はとりあえず、限界が来るまで起きてることにしてるけどね。
本当に必要になれば勝手にスイッチ切れるしさ。
切れてほしくない時はエナドリとかイワクラの水とかでどーにでもなるし」
まあイワクラの水はコストが高すぎるから、よほど大事な仕事の時でもないと使えないんだが。
それは『親』の経験どころか、まともな幼少期の経験や記憶がない自分たちにとっては有り難いことではあったが、彼への、そうと感じさせないほどの制約や抑圧を感じさせた。
などと無茶な事を言っているのは、やはり眠いからかもしれない。
子育ては大変
イワクラの水100マッカが10万円だったけど、レート下がったんだから1000円で買えてしまうということでは!?
二人とも育児された経験もした経験もないの割と大変よね。
なんとか生活安定させるまで日常生活どころではなかったんじゃ。
※家事をやってくれるありがたーーーい妖精さん
いてくれたら大層助かるけど、ずっと呼んでたら佐倉さんのマグネタイトが大変そう。
飴幽霊くらいしか浮かばないけど、悪魔に育児してもらったらシローくんがさらにこちらから離れていきそう
ただでさえイス語読めるというのに
そんな踏み越えたことを言いつつ、彼はスマートフォンを手に取った。ぼんやり眺めているだけであるらしい。
最近境が良くわからない」
サトミタダシオンラインショップのページを見ていたらしい。
ここ周囲空き部屋とはいえ、滑り台置いたら怒られるよなー、流石に」
多分周囲の子供たちの間では好き勝手噂されて、さらに来る住人が減っているに違いない。
シローみたいな人間が仮想とはいえ外に出られるなら、アリなんだけどな」
背景がクソすぎて肯定的にとらえるのは無理だ。
勝手に魂焼いてきたり現実に押し売りしてきたりしなきゃよかったんだけど……、ふぁ、」
つられるように、あなたの口からも欠伸が飛び出す。
手早く裁縫セットを片付けて手洗いに行く。
この機を逃すと面倒だ。さっさと寝るに限る。
寝ていいなら部屋に引っ込んで寝る。
部屋に戻ろうとすると、どこからともなく声が聞こえてくる。
「そこの貴方、眠れませんね!? せっかくなので少し協力してください!」
俺今から寝る……誰。」
あなた達の意識が暗転した。
そんな声にならない抗議。
あなたは、はっと目を開いた。
タイミングを逸して眠気こそ去ってしまったものの、変わらず仄かな気だるさがあなたの身体を包む。
辺りは…… リビングではなかった。
赤い色が目に飛び込む。
洋画で見るような、アメリカの片田舎風のダイナー。そのワンボックス席に、あなた達は向かい合わせで座っていた。
コカ・コーラの派手な看板が壁面に踊り、閉まったブラインドの側に埃っぽいダーツボード。
メニューに日本語が併記されている所から、日本国内ではあるらしい、と分かるが……。
席にもたれてうとうとしながら周囲を眺めていた牧志が、はっと身を起こして辺りを見回す。
これは、夢ではない。
時計を見れば、眠ろうとした時と同じ時刻だった。
この見知らぬ場所に、あなた達は一瞬にして移動してしまったのだ。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》。
最早慣れっこの余裕である。
眠気の尻尾は振り払って席を立ってその辺のもの見始める。
ほっとしたような心配なような。
前みたいなのは困る」
彼はあなた達が動き出したのに気づき、椅子を回転させて向き直る。
「いやー、急に呼び出してしまって申し訳ないっす。
でも眠れなくて暇を持て余してるなら丁度いいかなって思って……」
そう声をかけてくる男性には口が無かった。
いや、そもそも頭部が丸ごとない。
被っているフードの中には真っ暗な闇が広がっていて、奇妙にもその空間に雨が降っている。
まるで御伽噺の住人のような姿をした人物を、あなた達ははっきりと目にしてしまう。
《SANチェック:成功時減少 1 / 失敗時減少 1d3》
SAN 72 → 71
その程度で牧志は動じなかった。いや、一瞬「うわっ」とは言ったが、その後に流れるようなツッコミを入れた。
どうせ話聞かないんだろうなー、という諦めがその語尾から少し感じられた。
SAN 77→76
下らねぇ話なら寝るからな」
不機嫌を隠そうともせずに答えた。
彼は少しもったいぶるように少し間を開けた後、こう告げる。
「この街、潤田市を救ってほしいのです!」
ババーン!
本編見る!
眠気の中で考える。
知らないところだし。
彼はどこからともなくお手製のフリップを取り出す。
「ドリームランドってご存知っすよね?
いまこの街ではちょっと大変なことになってまして、そのドリームランドと覚醒の世界が繋がりかけてるっす」
なんか聞いたことがあるな。何だっけ。
市町村合併の話?」
前者は一回くらいしか聞いたことがないし、後者は聞いたことがない。
加えて寝ぼけているので分かるわけがない。
「じゃあ最初から説明を。
まず、二つの世界についてお教えします」
「覚醒の世界と夢の世界という二つの世界が存在します。この”覚醒の世界”っていうのがあなた達が普段暮らしている世界ですね」
「夢の世界……ドリームランドは、あなた達で言うところの異世界、夢の世界です。
行ってみたいと思……おっとっと、これ以上はいけない」
「通常二つの世界が直接繋がりあうことはありません。ですが二つの世界が繋がってしまうと大変なことになります。どうなるかと言うと、多くの生物の実存が揺るがされるんですね」
「わかりやすく言うと……、自分が今夢を見ているのか現実を見ているのかわからなくなって、正気を保てなくなるってことっすね」
そこで彼はドヤ顔しながら一旦言葉を切り、あなた達の反応を待つ。
手を打つ。
ドリームランド地誌。
あそこか。クソ虫追っかけてった夢の世界」
ほんの数年前のことなのに遥か昔に感じる。
確かにあんなのがリアルに漏れてきたら異界並みにうぜぇな」
眠いんだけど。
「僕たち門番は二つの世界の均衡が崩れないように管理するのが仕事っす。
現在我々がいるこの覚醒世界の潤田市という街がドリームランドと融合しつつあるということで、調査アンド解決のため派遣されて来たってわけです」
「お二人にはこの潤田市に迷い込んだドリームランドの生物を捕獲していただこうかと思ってます。そうすれば僕は原因の調査に専念できますしね」
「協力して……くれますよね?」
ねっ?
雨の降りしきるフードの中に、きゅるるん☆ という擬音とともに円い眼が見えた気がした。
特段かわいくはない。
質問に答えろよ。
なんでよりによってこれから寝ようとしていた時間帯に俺たち選んだんだよ。
素手でも戦える戦闘民族でも選べよ。
なんでよりによって一般人の俺らなわけ」
目が座っている。
半ばこの不条理に対する八つ当たりである。
この男が選んだというなら、正当な怒りだが。
男は左上の方を見ながら、フードの中の雨粒を泳がせる。
「ほらあれ、ドリームランドのこともご存知みたいでしたし? 丁度いい所にいたから、こう。あっ睨まないで」
「ほら、生物を捕まえるための道具も用意しましたから、一般人でも大丈夫! ねっ?」
彼はフードの闇から手のひらサイズの物を取り出す。
どうやら手鏡のようだが、鏡の部分が歪な形をしていて綺麗な楕円とは言い難い。
「これを向けて念じるだけですから! 簡単なお仕事なので!
時間はしょうがないんすよ~、ドリームランドの生き物は夜に活発になると分かったので、夜に来ていただくしかないっす」
正直、興味はある。
あと、さっさと終わらせればそれだけ早く帰って寝られるかも知れない。
大体こういう場合、相手の望みを叶えないと帰れないのだ。
全くもってクソだな。
「ドリームランドの生物の探し方は街を散策して手掛かりを見つけたり聞き込みをしたりっすね。見るからに変なんで分かると思うっす。
それでは今後の話をするんですが……」
そこで、金髪にロングヘアの少女が人数分のコップを持って現れ、あなた達に丁寧に配る。
彼女は何も告げない代わりに、丁寧にお辞儀をする。
「彼女はエマさん、貴方たちと同じ協力者っす。
彼女のご両親が運営しているこの店を拠点として使わせてもらってるっす」
牧志は一瞬だけそのコップに警戒の視線を向けた後、礼を言って受け取る。
思わず感想が漏れた。
今度こそ地獄の底から聞こえるような不機嫌ボイスになった。
コップは受け取るけど。
ド不機嫌ボイスを出したあなたを、エマと呼ばれた少女が遠慮がちに見上げる。
彼女はテーブルの上にノートを置いて、何かが書かれているページを見せてきた。
少女の手がペンを取る。そこから続く白紙のページに、さらさらと整った文字が書かれていく。
『私はこの街、潤田市で暮らしています。だんだんこの街がおかしくなって、困っています』
『このお店をやっている私の両親も、おかしくなってしまいました』
『どうか、助けてください』
【アイデア】または〈心理学〉(オープン)>。
FANBOX開設したで
なんで協力者が一般人の俺達や、喋れないような女の子なわけ。
もっと体力ありそうなやつ選べよ。
人選適当すぎだろ。解決する気あんの?」
男に不満をぶつける。
牧志が、少し困った顔であなたを見る。
文句くらい言わせろ」
その点あなた達はしっくり波長が合ったっす。なんででしょうね?」
さっさと片付けるぞ。
詳しく話せ」
もうぐうのねも出ないぜ!
夢だな! 帰ろう! ってガン無視して帰っちゃった誰かさんがいたんですよ多分。
男はよいこらせ、とカウンターの椅子から立ち上がる。
椅子に座っている状態ではわからなかったが、どうやら彼の身長はあなた達の二倍ほどもある。
彼はするりとあなた達のいるボックス席に座り、歪な形の手鏡をテーブルに置く。
「この手鏡を対象に向けて念じれば、鏡の奥のドリームランドに送れるっていう寸法っす」
「それから、お二人には夜にこっちに来て頂いて捕獲に当たって欲しいんすけど、日中にお仕事とかあった上で来て頂くのでまぁお疲れでしょう。
ということで、こちらのエナジードリンクを用意しました。気が利くなぁ~僕」
彼は懐から8本の試験管を取り出し、4 本ずつ渡す。
試験管の中身は微妙に発光している蛍光色の液体だ。黄緑色とピンク色、水色、黄色があって、それらはドロドロとしている。
怪しい試験管を持ってひっくり返す。
黄緑:探索系・POW 系ダイスロール判定自動成功
ピンク:戦闘系・STR 系ダイスロール判定自動成功
水色:知識系・DEX 系ダイスロール判定自動成功
黄色:交渉系・INT 系ダイスロール判定自動成功
それぞれ一人一本ずつある。
手鏡を対象に向け、呪文を使用することで捕獲することができる。
<呪文の手順>
①KP は 1d10 を振って 50 の一桁目を決定する。
②PL は 1d100 を振って①で決まった数字の±30以内の数字を出すことができれば成功。
③成功するまで②を繰り返す。
※神話生物にダメージを与えることで、1 のダメージごとに±5 範囲が広がる。
乗る気はある
佐倉文句は言ってるけど、面白そうだから興味は示してるよ。
まだ辛いわけじゃないし。
何恩着せがましく言ってきてんだ。
報酬が出るなら、まあ、いいけどさ。
猿の手は勘弁しろよ」
碌でもない予感しかしないぜ……」
見たのヤバすぎるラインナップだったからな。
瀝青の海で殺されかけた蜘蛛、墓場の汚いモンスター、蠢く死者……
この鏡が頼り、ってことだな……」
以前の出来事を思い出しているあなた達をよそに、彼は不意に声を上げた。
「最後に守ってほしいことがありまして、ぜっっったい猫を傷つけないでほしいんです!
ほんと大変なことになるんで!!」
あちらで会った猫といえば……
……ドリームランドと混ざりかけてるのなら、あいつにも会えたりするのかな?」
ともかく、猫を殺してはいけないっていう法律がドリームランドにはあってですね。
最悪死刑になります、はい」
まあ別に猫殺す必要は無いだろ」
エマが白紙のページにさらさらと文字を書いてゆく。
『せっかくいらっしゃって下さったので、お飲み物をどうぞ』
「よし! 説明はこんな感じでさっそく街に向かいましょう!
……の前に、何か夜食でも食べますか?
お代は僕が持ちましょう」
あなたがコップの中身に目を落とした時に、ちょうど男がそう声をかけた。
あなた達は何か食べていってもいいし、そのまま出てもいい。
オレンジジュースだけ少し舐めて変な味がしないことだけ確認したら飲んでおこう。
牧志はジュースを少しだけ飲んで、飲み干さずにテーブルに置いた。
ふと男の方を見れば、先ほどまでフードの中で降っていた雨の代わりに桜の花びらがひらりひらりと雪のように舞っている。
エマには軽く目礼だけしよう。
あっ、えっと、それじゃあ行きましょうか」
あなたにそれを見つけられたことに気づくと、男はなぜかちょっと慌てながら、あなた達を店の外に導いた。
ドリームランドの人?」
呼び名が必要ならナシュトって呼んでくれていいっすよ」
その軽い様子に〈心理学〉だァァァ! こいつ何か隠してねぇだろうなぁ!?
そわそわした様子。ひらひらと舞う花弁。
これは……
この少女に惚れちゃっているのではないか。
そんなことを察する必要はなかった。
しょうもないことを察してしまった。
呆れ声で言って、店の外へ。
ひとこと
懐かしのドリームランドの話題が出てきます。
【置】CoC『えっ? 手のひらから唐揚げ出せるんですか?』 佐倉&牧志(塔) 3
牧志は唐揚げにされた自分自身の手足を想像して、恐怖すると同時にどうしようもなく興奮してしまっている。
だめだ。戻ってきてほしい。戻ってきてくれない。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」
CoC『VOID』継続『靴下が履けない』結城&ヴィキ
『うん。ちょっと横断歩道渡れなくて困ってるお婆さんと、気分悪そうにしてるおじいさんと、風船取れなくて困ってる子がいて』
『……イベント起きすぎじゃない?』