牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
佐倉とは友人。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。とある事件より、体中の痛みに悩まされている。
基本悪魔を召喚して戦うが、悪魔との契約のカードを使ってその力を一時的に借りることもできる。
巻き込まれ体質らしい。
牧志とは友人。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。
古島と五人
少し前に現れた6人の異星人。佐倉と契約して彼の仲魔として存在している。
その正体は、何にでも変身して喰らい殖える不定形生物だったが、『人間』としての意識を持ち、この星での人間との共存を試みている。
古島は好奇心旺盛な性格で、それが事件を引き起こしてしまうことも。女性。
ある朝。あなたは夢現の中、なんだか懐かしい感触を味わっていた。
幼い頃、寝こけているあなたを、白い前足が優しく起こしてくれたものだ。
少し小さい弟と、随分年下の妹と一緒に遊んでいた夢。
遊び疲れて寝ると、夕ご飯の時間にはいつも起こしてくれる。
夢うつつの中に味わう、懐かしい感触。
ユキだっけ? ナガグツだっけ?
ああでも、ナガグツはいつも腹にぽーんと飛び込んでくるから、これはユキかな。
半分眠りの中で、声を漏らす。
ほっぺに柔らかい肉球が触れた気がした。
むにむに。何か小さな生き物があなたをユサユサしている。
うつらうつら。うつらうつら。
うとうと漂う眠りが気持ちよくて、目を開くのが惜しい。
柔らかく温かい感触は心地よいほどで、マッサージにも感じられる。
その小動物は何か鳴いているようだった。
それは猫の鳴き声のようにも聞こえたし、かすかな人の声にも感じられた。
ユキ、お腹がすいてるのかな。そうか、今日はユキにごはんをあげなきゃいけないんだっけ。
名残惜しい気持ちを押さえて、ゆっくりと眼を開く。
どっかで見たような。そうでもないような。
一度、二度、目をまたたく。まだ視界がぼんやりしている。
なんだか丸っこいものが見える。なんだっけ、ユキにしては黒いような……。
その丸い生き物は聞き覚えのあるような声で嘆いた。
もっちもちの肉球をもつ生き物は、ひどく聞き覚えのあるため息をついた。
ようやく頭がはっきりしてくる。
もう一度、その丸い生き物をよく見ると。
なんだか聞き覚えのある声と顔。
驚いて跳ね起きた。
その生き物はコロコロ転がってベットから飛び出た。
落ちた佐倉さん(?)を慌てて探す。
縫いぐるみじみた寸胴の丸い体、やたらとでっかい目、申し訳程度の鼻と口。
肉球かと思ったのは柔らかい手のひらだったらしい。
いつもの黒いパーカーもご丁寧に小さく、三頭身程度の体にちょうど合うような、ばかでかいフードの服になっていた。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
SAN 52 → 51
CoCシナリオ「7匹のもちもち神話」
下着堂本舗 様 作
目の前の何か(?)が佐倉さんだというのは分かる。
佐倉さんだ。うん、佐倉さんだ。
でも、これは何だ? 異変? 俺が夢を見てる? ええ?
佐倉さんには似合わないくらい、何というか、かわいい。
最近ちょくちょく見る、ゲームキャラのデフォルメフィギュアみたいな、ああいう感じだ。
佐倉さんの目つきや雰囲気のイメージをそのまま、うまーくデフォルメしたらこうなるんだろうなっていう……。
悪いけどそっち上げてもらえるか?
登るのマジ大変だったんだ」
縫いぐるみのようなそれは、どの程度の大きさなのだろうか。
抱える程なら腕で抱え、小さいなら掌ですくい、ベッドの上へと運ぶ。
腕も足も短くて丸っこく、やわらかあったかい。
いつもの目つきの悪さですら、かわいい、と思えてしまうようなキャラクターじみたデフォルメだった。
佐倉をできる限り可愛く縫いぐるみにしたらこんな感じだろう。
……どうやら手触りは多少モチモチして柔らかいものの、肌の感触、ちょっと固めの髪の感触、柔らかいポリエステルの黒いパーカー、生きて動いている人間の、ようだが。
……でも佐倉さんが縫いぐるみに変えられてしまったとかじゃなくて、生きてるみたいだ。
え、何だこれ??
かわいい好きの呪いか? どこかの悪魔に呪われた??
ベッドの上に運んだ佐倉さんと、潰さないように向き合う。
うち猫とかいなくてよかった。遊ばれる。
しゃべり方のテンポは間違いなく佐倉なのだが。
明日は仕事の関係で恐らく、いやまず確実に遅くなる。
あなたはもしかしたら起きていようとしたかも知れないが、昨日はちょっとハードだったので起きて待つのはちょっとしんどかった。
で、起きてみたらこれだ。
佐倉は自分の短い手足を見下ろして首を振った。
毎回起きて待っているなんて、土台無理な話だ。
それでもここ最近、あの一件のせいで何となく不安になって、毎回起きて待っていた。
で、その結果、寝不足になっていたのだ。
で、その結果、盛大に寝た。
それは困るな。姿はともかく、どう聞いても佐倉さんなんだけど」
どっちかと言うと、「いや確実に佐倉さんだと思うけど」という確認の意味が強い。
仕事中とか仕事の後とか、何か気になったことはなかったか?
仕事中に変な悪魔にちょっかい出されたとか」
なにしろ頭の大きさに対し手が短い。頬の辺りで限界だ。
佐倉は胸のあたりに手をやってため息をついた。
ちっちゃな星形のお守りは胸元にあり、それに触れることはできたようだが……
幻……、じゃないよな?」
佐倉さんの頬や身体を触って確認する。もちもち。
仕事が終わって帰る前にメッセージ入れたのは覚えてる。
で、帰ろうとして車に乗って……降りた、よな……確か」
短い指で唇のあたりを叩いている。
いつもなら思い出そうとする時にやっている、額を叩くアクションだと気付くだろう。
そういうの多過ぎて困る。また不安になりかねない。
左腕の腕輪も残ってはいる。えらく丸っこいが。
そういえば昨日は牧志sは夜の仕事なので喚んでいなかったのだった。
言葉と裏腹に困っているのが丸わかりである。
『今から帰る』
素っ気ない文章に、夜の街の写真がついていた。
赤ちゃんの肌を思わせるハリと柔らかさだ。体の大きさも感触も見た目通り。
どうやら見た目通りの存在になってしまっているようだ。
骨も相当細くなっているのではないかと考えられるが、
肉や肌の弾力は大分強く、強めに押しても跳ね返される。
そういえばさっき、サイズ比で言えば結構な高さから落ちただろうに、全く平気な顔をしている。
もっちもちだ。かわいい。
柔らかい……もちもちだ……。
つるつるの肌と相まって、ストレス解消用グッズみがある。
もちもちの触感につい夢中になっていた。
もっと触っていたい、かわいい、食べたら美味そう、そんな気持ちが込み上げてくるのをこらえて手を離す。
また、それはどこの写真だろうか?
まあ気になると言えばいつも通り、住所が分かるもの……今回の場合は信号が映り込んでいるが、
そんなの調べるまでもなく佐倉自身がどこで撮った写真なのかを解説してくれる。
池袋駅前、グリーン通りの東口五叉路で撮った写真らしい。
写真を撮ってから車で帰ってきたとのことだ。
車で30分程度の距離だ。深夜ならもっと早く戻れただろう。
車がちゃんと戻ってきてるか、後で確認しよう」
もちもちしてしまったのを誤魔化すように続ける。
確かその後……近くのコンビニに行った気がするな。飲み物欲しくて。
そのあたりから曖昧だ」
とりあえず、何か残ってないか車を調べてみるか。その後はコンビニだな」
自分に《アナライズ》はしてみた?」
ピコピコと玩具じみた音を立ててCOMPが展開したが、なんだかこれも丸っこい。
【HUMAN】と書いてあった。
ただ、身体能力の欄が明らかにおかしい。
「STR・VIT」が一桁になっていた。
佐倉さん、ポケットとか入れそう?」
衣装入れを探して、胸ポケットつきの白いシャツを取り出す。
佐倉さんの大きさとシャツのポケット、ジャケットのポケットの大きさを見比べる。
バランス的に少し不安は残る。
ジャケットのポケットなら問題なく入れるが、頭がほぼ埋まる上にぱっつぱつになりそうな感じはする。
バランス悪いと走らなきゃいけなくなった時に困るし、そうしよう。
エネルギーバーとハンカチでも下に重ねて、その上に乗ってもらうか」
ポケットの物を入れたり出したりして、佐倉さんが入れそうなスペースをジャケットのポケットにこしらえる。
シローが朝八時のヒーローアニメの真似でもしているのか、という雰囲気だったのだが、
なんだかキャッキャという楽しげな声があちこちから聞こえてきている。気がする。
一人の声ではないような気が……する。
シローが子供向け番組でも見てるのかな、と一瞬思ったが、それにしては妙に楽しそうな声がリアルだ。
でも、家の中にそうそう悪魔出ないよな。むしろ出たら困る」
何だか楽しげだけど、もしかしてこれも何かの異変じゃないのか。
佐倉さんに考えを共有して、聞く。
ふと、思う。
この謎の声と今の佐倉の声、なんか似てないか?
佐倉さんを利き腕と反対側のポケットに入れる。
今の佐倉さんの声と似ている……、やっぱり、この異変と何か関係しているんだろう。
勢い、緊張が高まる。
部屋の扉に隠れながら、そっと扉を少し開けてリビングの様子を窺う。
テレビのCMが賑やかに商品を売り出している。
いくつもの視線を感じる。
リビングのソファの上でコロコロしているシローが手を振る。
テレビを観ていたらしい。まあそれはいつも通りだ。
開いた本(ただし上下が逆だ)を覗き込んでいるモチモチ佐倉。
コーヒーマシンに乗っかっているモチモチ佐倉。周囲に粉が散らかっていていい香りがしている。
なんだか佐倉の部屋の方からも楽しげな声と、キーボードをガシャガシャ叩く音が聞こえる。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1d3》
1d3 Sasa 1d3→3
SAN 51 → 48
絶句した。
え、何だこれ、なにこれ??
佐倉さんがいっぱい??
もちもちの佐倉さんがいっぱいで、かわいいけど部屋がめちゃくちゃでめちゃくちゃだ!?
思わず、叫びながらポケットの中にいる佐倉さんを死守した。
そして逃げ出す!
佐倉の部屋からも物がひっくり返るような音が聞こえてきた。
開いていた窓から、ぽーんぽーんと飛び出す。
慌てて窓の外を覗く。
静かになった部屋で、シローがぽつりと呟く。
本編見る!
出目が動転してるけど成功!
コーヒーマシーン。本。冷蔵庫の側にはレンチンして食べるバーガー。佐倉の部屋からはキーボードの打鍵音。
どうやら彼らは佐倉が好む行動をしていた。
やはり佐倉だからだろうか。
そしてまた、彼らの知能は今ポケットで呆然としている佐倉よりも低いように見えた。
最初に見た一瞬、グレムリンか何かだと思ったんだ。間違っても佐倉さんじゃないと。
でも、これは……、やっぱり佐倉さんなのかもしれない?
佐倉さんは嫌がりそうだけど!
とにかくグレムリンだろうが佐倉さんだろうが、逃がすわけにはいかない!
いなければ、佐倉さんとともに逃げた六人? を探す。
▼〈目星〉
声を上げそうになるのをこらえて、布団の上からそーっとキャッチする。
〈忍び歩き〉または〈隠す〉【DEX】×5 のいずれか
1d100 40 DEX Sasa 1d100→ 99→致命的失敗(ファンブル)
いつもはこんな物落ちていないのに!
お布団の中の膨らみがモソモソモソモソとふちへ移動する。
派手に踏んづけた! 痛い!
窓を閉める、布団を抑える、その他何か好きなことをして良い!
マウスからちょっと嫌な音がしてポケットの佐倉が何やら物言いたげにしていたが、些事だ!
モソモソから飛び出した生き物は窓にビターンとはりついた。
危なかった! これ以上逃がすわけにはいかない。
ぷらーーーーんとぶら下がって、チビ佐倉は「ちっ」と舌打ちをした。
チビ佐倉さん(仮)を摘まんでぶら下げたまま、布団を剥がしてその板を見てみる。
月刊アヤカシのコラムが開いている。
オシリスの弟のセトは、オシリスから王位を奪おうと暗殺計画を企てていた。
一度は暗殺に成功し遺体を川に流すが、オシリスの妻イシスの尽力により遺体の奪還に成功する。
しかしそれを知ったセトはオシリスの遺体を「頭部」や「腕」など14の部位に切断してしまう。
そしてバラバラになったオシリスをエジプトじゅうにばらまいた。
(以下伝説の顛末が書き綴られている…)
その内容を見て、以前自分がバラバラにされた時のことを思い出した。
佐倉さんがバラバラにされてこうなったんじゃないか、って」
想像だけどさ。とにかく、そうでもそうでなくても、あいつら唯一の手掛かりだ。このまま逃がすわけにはいかない」
ちなみに頭じゃない佐倉(?)は逃げようとはしない。ここに置いていっても問題ない。
捕まえた方を鞄にタブレットと一緒に入れながら、佐倉さんに聞く。
力 1
体 2
知 いチ
当初の予定通り、鞄にタブレットと一緒に入れておこう。
外は車とか危ないから。ごめん、頼む」手早く頼んで、今度こそ外へ出よう。
おおっと急ブレーキ。
ごめん佐倉さん、俺焦ってるな」
胸に手を置いて、すーはー、すーはー。
随分いつもより小さな光の柱が……ちょんみりと出た。
甲高い声で叫んだのは、牧志の手のひらの上に出てきたちっちゃくてキャラクター的にぶっといラミアだった。
ラミアさんも小さくなった!
スライムにならなくてよかったけどちょっと意外だ。かわいい。
と、とにかく小さい同士なら効くかも」
ラミアはぷんぷんと怒り狂い……消えた。
悪魔でも外に出られるのに……
出ようか、牧志」
街に紛れられたら捕捉不能になる」
という思惑でした!
この状況を一番楽しみそうな一人と、受け入れてくれそうな一人の名を挙げた。
くるりと軽やかに宙返りして、小さな光の柱から古島が現われた。
……やっぱり小さいし、もちもちしている!
いや、俺が小さい? 小っちゃくて丸い。
えっ、佐倉さんも小っちゃい! 何これ?」
古島は楽しそうに丸っこい手足をぱたぱたと動かす。
よし、行くぞ!」
ビシィ、と玄関を指す。
移動しながら起きたことを古島に説明するよー
小さい古島はすぽんともう片方のポケットに落ち着く。
外へ!
佐倉たちが落ちたベランダ下には丸っこい物が落ちた痕跡はあるものの、そこに残っている佐倉はいないようだ。
ここからなら駐車場とコンビニが目の前である。
彼らは埃や土を落としたり、何か痕跡を残していないだろうか?
どこからだ?
どうやらすぐ近くのようだが……
駐車場方面から声がする。
車の下か中にでも入っているんだろうか。
佐倉さんの行動をなぞっていたようだから、車に乗ろうとしているのかもしれない。
駐車場に足を向ける。
そこに奇妙な物はなかったが、駐車場から外へ向かった先に何やらゴチャゴチャと落ちていた。
どうやら佐倉の荷物のようだ。声はそこから聞こえる気がする。
そいつは近くの物を手当たり次第に投げつけてくる!
一緒に行こう」
ぎこちなく笑い、警戒を解こうと試みる。
ポケットから古島が飛び出し、てんてんと丸く跳ねながら地面に着地して笑いかける。
捕まえる気はあっても乱暴する気がないのは本当だし。
Sasa 1d100→ 25→成功
そしてその場で地面にぐねぐねと井の字らしき物を描き始め、古島に挑戦的に棒きれを差し出す。
必勝法を使うなどという大人げないことはしない。受けて立つ!
古島は笑顔で棒きれを受け取る。
ぶん投げられた佐倉の荷物がそこかしこに散らばっている。
見た目は佐倉さんで、居場所も佐倉さんっぽいのに、行動だけ見てると佐倉さんには思えない」
佐倉さんが子供になった時のことを思い出して、思えないということもないかもな……、と思う。
が、当人の感情を慮って「思えない」ということにしておく。
そういえば最初、車見てみようって話してたよな」
また、荷物の中に見慣れない物などはないだろうか?
それか、他の佐倉さんが電話をかけて……、いや、誰かが佐倉さん攫って電話掛けてきたとかじゃないだろうな!?」
嫌な予感に襲われて、着信を取る。
写真だ。
いつも佐倉がやっているような、自分の場所が分かるような写真……ではあるのだが、
『コンビニの住所表示……を背景にした犬の糞』だったり、
『大きな有名スーパー……を背景にしたガムのくず』だったり、
『電話ボックスの識別プレート……を背景にしたドヤ顔の自撮り』だったりした。
その様子は、小さな子供がこちらの反応を窺って楽しげにしている様子を思わせた。
少なくとも、誰かが小さい佐倉さんを攫って……、ってわけじゃなさそうだ。
見るからに楽しげな様子と、佐倉さんの不満顔に苦笑する。
まあ、そりゃ自分の顔でこんなことされたら不満だよな。
記憶は共有していたりする…… んだろうか?
頭じゃないとすれば、身体が覚えてたりとか、そういう?
うーん。古島さんの件といい、あの時の佐倉さんといい、人間の核について考えさせられることが多いな。
今は考えてる場合じゃないけど。
本気で逃げる気がないなら、どうして佐倉さんがこうなったのかも気にした方がいいな」
散乱した荷物はひとまず車に戻し、スマホは回収。
荷物の中に、佐倉さんが何か書き残したりしている物はないだろうか?
▼〈目星〉
佐倉が持ち歩いているカードケースに、よく行く図書館の利用者カードが挟まっていない。
荷物を探っても、何か残してくれているようなものはない。
車内に押し込んで鍵を閉めようとした時、ふと違和感を覚えた。
ここにないみたいだ」
車のダッシュボードや座席、物入れなどを見てみるが、そこにもない?
そこにないってことは、誰かが意図的に持ち去ったとしか……」
そうでなければ、この事態に関係する誰かが持ち去ったか、だな。
図書館にも行ってみた方がよさそうだ」
頷く。
それを選んだ理由とか、こうなる前に寄ってた場所だとか……」
被写体はともかく、前にも写真送ったことあるだろ。人魚事件の時とかに。
こいつら、やっぱり俺の一部なのか。
俺の行動をなぞってる……?」
もちもち古島はにっこりと笑って手を取る。ともだち!
手を取って満足げだ。
遊んでいる二人(?)に声をかける。
こうやって自然に声をかければ、つられて一緒に来てくれないか、という思惑を少し込めた。
手を取って笑いかけ、古島は牧志の所へモチ佐倉さんを導く。
でも目を離してまたいなくなられたら困る。
回収する度に家に戻って閉じ込めておくのは手間だし、佐倉さんの部屋がこれ以上荒らされても困る。
それなら手元に置いておく方がいい…… ……と思う。
そういえば、家でもコーヒーメーカーとかPCとか、佐倉さんが使う物で遊んでた。
そういうことだな。
こいつらなりに、佐倉さんの行動をなぞろうとしてるんだ」
無理なら下からジャケットの裾を掴んで、牧志に乗せてコールだ。
短い手に低い体力ではよじ登るなど無理なのだ!
佐倉さんがやろうとしてたことが手掛かりに、ああああ分かった」
二人を掴み、肩の上に乗せてやる。
……やっぱりもちもちしてて気持ちいい。
モチ佐倉は肩に乗せられ、仏頂面でウキウキしている!
一応メールの方の行き先は写真を辿れば分かるな。
くそ、こんなに手が小さくなければ監視カメラ覗いて確認できるんだが」
図書館と写真。どちらもそれなりに距離があるため、行くなら車で移動した方が良さそうだ。
さすがに、タイムラグあるもんな」
地図調べて直接行った方がいいかも」
ああ、分かった。まずは写真から辿ってみよう。
その前に一応、最初に行ってたコンビニだけ確認する。
古島さん、その子と一緒に車で待ってて」
あまり期待できないが、店員さんがいれば佐倉さんが来なかったか、様子がおかしくなかったか、ということを聞く。
しかし夜の担当と朝の担当は別だ。
今ここにいる店員は佐倉の顔は知っているが、昨日来たかどうかまでは知らないようだ。
感謝して、飲み物とおやつを幾つか買い、車に戻る。
佐倉が小さなモチモチになって増えた!?
COMPまでなんだか調子がおかしいぞ!
ドタバタほのぼの大騒ぎ。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」