こちらには
『Miss This Train』
のネタバレがあります。
本編見る!
波照間 紅
「待て! 説明しろ!
この子の中には、東雲さんがいるんじゃないのか!
殺したら彼女も失われてしまう!」

『彼』に駆け寄り、腕を掴む。
波照間 紅
最初からこいつは、彼女の存在など気にも留めていなかった。
僕は騙されたのか? 彼女を取り戻させる気など、最初からなかったというのか?
いや、いや! まだ三つ目があるはずだ!
波照間(?)
「ん……嫌? 今死ぬだけ、特に支障はないはず。
どうせその体では長く生きられないと思うし、苦しませずに殺す方が良いんじゃない?
万一捜索が来たら面倒だし……」
KP
『彼』は当然のことを提案しているのに、どうして反対されるのだろうとでもいうように訝しげに眉根を寄せた。
波照間 紅
「……お前は、彼女を取り戻したいならと言ったな。
彼女が死んでしまったら、彼女は失われる。取り戻せない」

ふつふつと怒りに似たものが浮かんでくるのを、拳を握って抑え込む。
恐らく、これは違う。こいつはまだ何か、僕に言っていないことが……ある。

もしも悪意でないなら。僕も東雲さんもこいつにとっては小さすぎて、言い落としていることがあるだけなんじゃないのか。

そう信じたいだけかもしれなかった。
波照間 紅
「ここで彼女が死んでしまっても、取り戻す方法があるというのか」
波照間(?)
「そう」
KP
『あなた』は、その程度のことも分からないのか、と言いたげに少し呆れたような声を上げた。
波照間(?)
「大したことじゃない。あなたにとってもそのひとにとっても。
私は嘘などつかない。人間と違って」
波照間 紅
「そうか。信用するぞ」
信用できるはずもなかった。
けれど現状、信用する以外の選択肢はなかった。
信じられないとすれば、彼女を取り戻せるということ自体が信じられなくなってしまう。

恐らく、恐らく。こいつにとっては、僕が手伝おうが手伝うまいが、大したことじゃないのだ。
ただ少し手間が省ける、その程度だ。
波照間 紅
恐ろしいくらいに無力だと思った。

殆ど感情が残っていないのが、幸いだった。
幸いではあっても、躊躇いは消えなかった。

拳銃を手に取る。
KP
拳銃はずしりと重い。
KP
不意に、あなたはどこかから隙間風のような音が聞こえることに気が付いた。
耳をすませば、それは少女の微かに動く唇から漏れている言葉だ。
彼女は目を閉じたまま、唇を震わせその隙間から掠れた声を上げている。
その声はあまりにもかすかで、東雲圓華が本来、どのようにあなたと話をしてきたのか、
それをあなたが思い出すことは叶わなかった。
KP
〈聞き耳〉
波照間 紅
1d100 73〈聞き耳〉
波照間 紅 - 今日 0:06
CCB<=73 〈聞き耳〉 (1D100<=73) > 72 > 成功
KP
「こんな……やり方……しかなくて……ごめん……なさい……
私のことは……わすれ……て……逃げ……て……」
見知らぬ少女の口から、そんな言葉が漏れていた。
波照間 紅
「……忘れられるものか」
思わず、少女の手を取った。
消えかけていた確信が湧いた。
覚えはなくとも、今ここにある事実だけで分かる。

このひとは、強いひとだ。
自らの身を盾にできるほどに。
“こんなやり方”を、取れるほどに。
波照間 紅
「ここで逃げたら、僕は一生後悔する」

その強さが、少しだけ確信を取り戻させてくれる。
KP
「こう……さ……ん……」
KP
少女の閉じた瞼から一筋涙がこぼれ落ちた。
それ以上彼女は言葉を発しない。あなたに運命を委ねることにしたのだろう。
彼女の命を終わらせるか、否か。
波照間 紅
ああ、その強い人が僕の名を呼ぶ。
その呼び名に感情が戻ってこないのが、今、ひどく惜しかった。
波照間 紅
「彼女は殺さない。
隠すのが得意な協力者がいる。彼女を連れ戻すのに協力した彼だ。
彼女は彼の所に託す。それで、僕らの手からは離れる。
お前に不都合はないはずだ。どうだ」
波照間(?)
「……そう。わざわざリスクを抱えることもないと思うけど」
KP
『あなた』はさほど興味もなさそうに、バスに取り付けられた機械を弄り続けている。
あなたを批難する気もなさそうだ。
波照間 紅
本当に関心がないらしい。
もしかすると、悪意を投げる程の関心すらもないのかもな。
波照間 紅
それならそれで、その方がやりやすい。
精々、腕の一振りで投げ飛ばされないようにしながら、隙を窺うだけだ。
波照間 紅
そうやって腹を立てずにいられるのも、あるべき感情が消えてしまったからかもしれなかった。
KP
あなたの腕の中で少女はじっとあなたのぬくもりに浴しているようだった。
KP
《治癒》使ってるから、足はないけどなんとか生きていける程度には回復しているかも……
さすがに状態が悪すぎて足までは戻らなかった。
波照間 紅
さすがに元の状態からして無理もない。
波照間 紅
「それで、三つ目は何をすればいい」
少女を抱き上げながら問う。

……三つ目。
これを終えたら、こいつは。世界を。
波照間(?)
「三つ目はこれが完成したら作動させること」
KP
チラと振り返ることもなく、見たこともないような機械を指先で弄びながら『あなた』は言う。
波照間 紅
「それを?」
思わず聞き返してしまう。思った以上に、呆気ない。

そうか、騒ぎになるというのも、困難も、この身体を連れ出すことだけに掛かっていたか。
波照間(?)
「そう。大丈夫。あなたにも使えるようにする。
まだ時間がかかるから、中で休んでいていい。
服に血がついているから、外にいると目立ってしまうし」
KP
あなたは言われて初めて、自分の服の袖に血がついているのに気づいた。
どうやら少女を病院から連れ出す時に付着したらしい。
波照間 紅
そういえば、と言われて気づく。
着替えを持ってくるべきだったか。
波照間 紅
「場所を借りる」
彼女を佐倉さんに託す必要がある。
「そいつ」に背を向け、服を裏返しに着直して誤魔化す。
波照間 紅
意味のないことをしているだけのような気が、してきた。
「大したことではない」というのは、どうせ生かした所ですぐに世界は滅ぶ、という意味だったのかも、しれない。
波照間 紅
「それを作動させると、『世界が滅ぶ』のか。
具体的には、何が起きる?」
波照間(?)
「爆発が起きる。大きな爆発」
KP
そうして『彼』は苛立ったように言った。
波照間(?)
「私は早くこれを完成させたい。私には時間がない」
KP
だから今は話しかけるな。そう言われた気がした。
波照間 紅
「そうか……」
あの事故よりも、もっと大きな爆発を起こそうというのか。

世界の滅びなるものが、突然実感を持った。
僕の手で、あの事故のような、もっと、遥かに大きな惨事が起きる。
波照間 紅
言った通りに彼女を託すため、ここを離れるべきだろうか。
それとも、最後まで隙を窺っているべきか?
波照間 紅
機械を弄ぶ姿と、電車の車内を後ろから観察する。
爆発との関係で分かることや、コントロールできそうなもの、気づくことはあるだろうか?
波照間 紅
なければ、少女の姿を観察する。
波照間 紅
それもなければ、佐倉さんに現状を共有するメッセージを送る。
それから、少女を佐倉さんの所に託しに行く。
KP
機械をいじり回す姿からは、何かが読み取れるようで何も読み取れないと感じた。
一体それが何をする装置なのか。
火薬にあたるものはなんなのか。
そういったことが一切分からない。

見つめていると気付くことがある。
遠くから近づいてくるサイレンがいくつか聞こえてくるのだ。
波照間 紅
まずい、捜索が来たか。
ここを嗅ぎつけられたら台無しだ。
少女を抱えて外へ出、電車から離れて車へ向かう。
KP
佐倉から返事は返ってこないが……
KP
【アイデア】
波照間 紅
1d100 85【アイデア】 Sasa 1d100→ 100→致命的失敗ファンブル
KP
サイレンは遠くで止まった。
別の案件に対する出動だったのだろうか?
不安が募る。
KP
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1
波照間 紅
1d100 28 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 100→致命的失敗ファンブル
波照間(?)
「行くの?」
KP
『あなた』は失望したような声をあなたに投げかける。
波照間(?)
「忠告してあげるけど。その子を少しでも長く生きているようにしておきたいなら、動かすのはお勧めしない」
波照間 紅
「そうか……。
忠告……、感謝する」
外へ出るのをやめ、少女を元の場所に寝かせる。
波照間 紅
彼女の寝顔を見下ろした。

迷いが過ぎる。
苦しませているだけなのだろうか。
世界が滅ぶまでの間、目の前で彼女の死を見たくないがために、無駄なことをしているだけなのだろうか。
波照間 紅
……まだ生きているのに、苦しませないために殺してやるなんて、どうしても呑めないんだ。
波照間 紅
SAN 28 → 27
波照間 紅
100ファン多いな。よっぽどショックだったか。

不定ですが、夜中を回っているので、どこかでリセットかかりませんか?
KP
あ、ですね。今回の減少前にリセットで構いません。
波照間 紅
では28でリセットで。
KP
二連100ファンかーぁ
波照間 紅
片方は《SANチェック》とはいえ、まさかの2連100ファン。

KP
あなたが少女を寝かせると、彼女はうっすらと目を開いた。
だがその視線は彷徨っていて目はほぼ見えないように見えた。
KP
「そこに……いる……? 紅さん……」
KP
ささやき声が、機械が唸る音の中に小さく聞こえた。
波照間 紅
「ああ、いる」
細い指先を伸ばす。
少女の小さな手を、掴む。
波照間 紅
「僕は、ここにいる。
ここに、いるよ」

無力感の中で、その手を掴んだ。
さぞかし愚かに見えるだろうと思った。
いま彼女に僕ができることは、それだけだった。
KP
「初めて会った……ときも……こんなだった……」
KP
少女はひとことひとことを噛みしめるように大事そうに口にした。
あなたが失った想い出をひとつひとつすくい上げるように。
波照間 紅
「覚えて……、くれて、いるんだな」
波照間 紅
「東雲さん」
KP
何度も出会い別れたこと。
無限の刻に囚われてあなたに救われたこと。
あなたが彼女の引っ越しを手伝ったという想い出。
世界の終わりを一緒に駆けた話。
青い蝶のピアスの話。
永遠かとも思えるような楽しい異世界での想い出。
KP
それはあまりにも美しく、繊細で、深い想いを感じさせる言葉だというのに、
あなたは何一つ覚えておらず、まるで遠いおとぎ話のように聞こえた。
波照間 紅
なんて、美しい思い出なんだろう。
なんて、美しい、強いひとなんだろう。
語られる物語は涙が出そうな程に美しくて、そのひとの美しさが、強さが一心に僕に向けられていることを喜ばしいとすら思うのに、僕は応えるべき感情を何も思い出せない。
波照間 紅
実感した。
そのひとは間違いなく、僕の大切なひとだ。
いまそこに語られる記憶だけで、僕がそのひとに心を傾けないはずがないことが分かる。
KP
ぽつり、ぽつり、と刻むような言葉が次第に途切れがちになる。
KP
「ごめんなさい……やっぱり……忘れて……ほしくない」
KP
思い出話のなかで、彼女はそう呟いた。

KP
「私のことを忘れて、あなたは生きて」、は『刻の牢獄』の時にも言おうとしてやっぱり失敗してる。
呪いになると分かっていても刻まずにいられないんだなぁ。
波照間 紅
そうか、あの時もそうでしたね。
刻まずにいられないんですね……。
東雲さんの記憶は忘れてしまっているけど、自分の性格は分かるので「自分だったら好きにならないはずがない」ってなる波照間。

波照間 紅
「僕もだ」
少女の小さな手を掴んだ。
波照間 紅
「僕も、忘れたくない。忘れたくなかった。忘れたくなんかない」
波照間 紅
「あなたを、失いたくない」
疲れた喉から出たのは小さな声だった。叫んだつもりでいた。
この人を失いたいはずがなかった。
KP
それから夜明け前まで彼女は話し続けた。
その間、サイレンが近づいてくることはなかったが、ついに佐倉からの連絡はなかった。
波照間 紅
意味不明な作業を続ける姿を何度も窺っては、そこから何かの情報を掴み取ろうとしたが、結局最後まで何も分からないままだった。

できたのは、少女の声に耳を澄ませ続けること。
僕が失った彼女を、受け取り続けることだけだった。
KP
言葉が途切れたある時、少女は、虫の音に溶けるような声で「おやすみなさい」と囁いた。
目を閉じ、小さく息をついて、眠りに落ちた。
波照間 紅
「ああ……、お休み」
彼女の頬にそっと手を寄せた。
KP
1d100 25
東雲 圓華 - 今日 23:30
CCB<=25 (1D100<=25) > 68 > 失敗
波照間 紅
東雲さんが何か判定してる……
KP
あなたはそれから少しでも眠っただろうか?
波照間 紅
それからは切り替えて、動かないCOMPを握って彼女の横で眠る。
せめて、睡眠を取って動けるようにしておきたい。

KP
あなたは短い夢を見た。

そこは、電車の中。
あなたは座席に座り、ガタガタとどこかへ進む電車に身を委ねている。
窓の外を見れば、そこには見たこともないような綺麗な夜空が広がっており、
あなたを乗せた電車はまるで夜空の中を飛んでいるかのようだった。

そして、あなたが座る座席の少し先。
そこには誰かの姿がある。
しかし、あなたにはそれが誰だかわからない。
それが誰だか、考えることもできない。

誰かは、口を開く。
しかしその声は、あなたには聞こえない。
ただ言葉としてあなたの脳裏に次々と映し出されるだけだった。


あなたが傷つきませんように
報われますように
どうか幸せに
私を忘れないで
……どうか……


波照間 紅
目を見張るような、美しい夜の海の中。
それが誰だかも分からないまま、僕に向けられる祈りを聞いていた。

祈りと願いの混じったような、綺麗で、とらえがたい祈りだった。

KP
あなたは、ゆっくりと瞼を開いた。
そこは、あなたが眠りについた電車の中だった。
いつの間にか外から入り込む光はオレンジ色を帯びており、
短い時間ながら深く眠っていたのだとわかる。

あなたが眠っていた座席の隣、そこに横たわる少女の姿を見つけた。
彼女の顔に血色はなく、その体はぴくりとも動かない。
素人目に見ても、彼女がすでに亡くなっているということは明白だった。


確かにあなたは昨日、病院に侵入し、患者である少女を連れ出した。
佐倉の力を借りて彼女を延命しようとした。
そしてここで殺害するよう命じられた。
しかし、目の前のこの少女が一体誰だったのか。それがあなたには全く思い出せない。
あなたが手を汚すことを拒んだのは、死なせないことを望んだのは、誰なのか、誰のためなのか。
ただ、目の前のこの人は、あなたにとって確かに大切なはずだった。
あなたに残った記憶はそれだけだ。
KP
SANチェック成功時減少 1d3失敗時減少 1d5
KP
リセットして良いです。
波照間 紅
波照間 紅 - 今日 0:11
CCB<=27 (1D100<=27) > 32 > 失敗

波照間 紅 - 今日 0:11
1d5 (1D5) > 1
SAN 27 → 26
波照間 紅
ああ。
ああ……。
両目を覆い、呻いた。

失った記憶を、受け取ったような気がした。
気がした、のに。
何もかも、またなくなっていた。
それだけじゃない。
呼ぶべきだった、
名前、まで。
波照間 紅
大切な人だったはずだ、という確信はひどく曖昧になって、確信でさえなくなっていた。
大切な人だったはずだ。失えば、一生後悔すると思ったんだ。
だというのに、もう失ってしまったよう、で。

どうして世界を滅ぼすなんてことに手を貸そうとしたのか、自分でも分からないんだ。
それが失ったせいだと分かるひどい喪失感が、まだ辛うじて大切『だった』ことに質感を与えてくれていた。

KP
改めて見ると某シナリオと流れが目茶苦茶似てるなぁ。
牧志に回したら二番煎じになるところだった。
波照間 紅
牧志はこういう時に思い切りが良すぎるのもあるし、今回は色々と波照間でちょうどよかったですね。
葛藤も面白いし男女なのも面白いし展開も面白い。

KP
車内前方でかつての『あなた』が、白いシャツの青年があなたを不思議そうな目でじっと見ていた。
波照間(?)
「おはよう。この体はもう限界だった。必然だったのに悲しいの?
どうしてそんなに気になるの?」
波照間 紅
「おはよう。
必然でも悲しいのが人間だ。僕らは感情が先にできているんだ」
怒りごと何もかも忘れてしまったせいか、妙に話をする気になっていた。
波照間(?)
「もうずいぶん忘れてしまったでしょ?
どうでも良くなってしまったなら、ここで逃げてしまっても……止めないけど」
波照間 紅
「僕が逃げたとしても、君はやるんだろう。
それなら結果は変わらない」
知らない所で世界を滅ぼされるより、ここにいた方がまだいい。
佐倉さんと同じ意見だ。
波照間(?)
「そう。それじゃ」
KP
あなたの言葉を聞くと、青年は頷いてあなたを車両の前の方へと導いた。
機械がぎっしりと詰まった車両に、笑えるほどにわかりやすいレバーが一つぽつんとついていた。
波照間(?)
「これを、今日の夜8時に作動させて。
今日の夜8時ぴったり、この電車を爆発させるのを皮切りに世界滅亡させるから」
KP
『あなた』の顔をしたそのひとは、相変わらず冷たい瞳にほんの少しの希望を宿しているように見えた。
波照間 紅
「……」
軽そうなそのレバーは、ずっしりと重く見えた。
迷いが過る。
僕が……、僕がここで止めれば。
波照間 紅
いや。もう僕は手を貸してしまった。
機械が完成した以上、こいつはやるだろう。
もう、後戻りはできない。
波照間 紅
「……分かった」
せめて対象が世界でなければ、まだもう少し、やりようがあった。
酷い事にそう思った。
波照間(?)
「時間は必ず8時ぴったり。もし何者かが邪魔しに来たとして、車両ごと自爆すればいいだけ。
それさえ従ってくれたらそれまでは好きにすごしてくれて構わない。
そうすれば、必ず元に戻してあげる」
KP
青年はまっすぐにあなたを見つめていた。ここでやるべき事は終わったのだろう。
KP
というわけで軽く質問タイム入れます。
波照間 紅
「分かった。
それまで、ここにいた方がいいか?
それとも、着替えに行っても?」
波照間 紅
昨夜、こいつが焦っているように見えたのを思い出す。

条件を聞いた時点で、全力で彼女の奪回を阻止するのが、唯一付け入る隙だったのかもしれないと気づいて、怖気がした。

止められないと諦めてしまっていた。
よく分からない確信などに振り回されていた。
諦めたくないなんて言いながら、諦めてしまっていなかったか。
波照間(?)
「約束さえ果たしてくれるならそれまで何をしていても構わない」
KP
『あなた』は窓から外を眺めた。
木々の隙間からあの病院が見える。
波照間(?)
「ここから見える範囲くらいは確実に爆破できる……
でも気にする必要はない。この時は滅ぶ。滅ぼす。
でもあなたと彼女と……あとあなたが望んだ人は戻れる」
波照間 紅
「……分かった」
つられるように、遠くに見える病院を眺めた。
波照間 紅
あの事件の時の佐倉さんも、こんな気持ちだったんだろうかと思った。
やっていることは、逆だが。
波照間 紅
「戻る?」
ふと、戻る、という言葉が気になった。
波照間 紅
「僕らは“元に戻る”にしろ、僕が望んだ人は、何に戻るんだ?」
波照間(?)
「戻る。それだけの意味だけど」
KP
ぴんとこない。むしろ ぴんとこないの?
というような顔をされた。
『あなた』には、あなたが理解できないことこそ理解できないのかもしれない。
波照間 紅
「君は、僕らが知らない事を随分と知っていそうだな。

知りすぎていて、僕が君と同じ前提を持たない事がぴんと来ないんだ」
何となく隣に並んだまま話す。
これは情報収集だろうか? 分からない。
波照間 紅
対話できないな→案外対話できそうかもしれない の流れを波照間が踏んでてちょっと面白い
波照間(?)
「どうして逃げないの?
あなたにはもう、ここに留まる理由なんてないはず。
どこにいたって世界は滅ぶのに」
波照間 紅
「……どこにいたって世界が滅ぶなら、逃げる意味もないんじゃないか?」
思わず素直に聞き返していた。
波照間(?)
「……そうなの?」
KP
『あなた』は本気で戸惑っているように見えた。
波照間(?)
「そう、かもしれないけど。そう」
波照間(?)
「それと、あの子を殺すことと殺さないこと、何が違うの? 結果は同じなのに。
……もう忘れたか」
波照間 紅
「ああ、結果で見ると、確かにそうだな」
波照間 紅
「まだ生きている彼女を、僕が勝手に殺したくはなかったんだ。それが一つ」
ぽつりと、木々の向こうに落ちる白い影を眺めながら呟いた。
波照間 紅
「最後には死ぬから同じだとしても、まだある時間を減らしたくなかったのが、もう一つだ」
波照間 紅
「今だって、逃げて何か得るものがあれば、結果は変わらなくてもそうしていた。

それよりも……、何だろうな。
僕は案外、話し好きだったのかもな。
単純に、心細いのかもしれない。
何となく、君と話す気になった」
波照間(?)
「……そう」
KP
『あなた』は不思議そうにあなたを見つめ、そして小首を傾げ、車体を埋め尽くす機械を見た。
波照間(?)
「あなたには一度死んでもらう。
でも大丈夫。あなたとあなたの大切な人は、ここではない別のところに行かせるから」
波照間 紅
「他の人達は、連れていけないのか?」
恐らく、答えは分かっているだろうことを聞く。
波照間(?)
「混乱するし……連れて行かない方が幸せなんじゃない?」
KP
『あなた』は肩をすくめた。
波照間 紅
「幸せかどうかは、僕や君が決めることじゃないな」
少し強調した。そこがどうやら、僕の考えらしい。
波照間 紅
「僕らが行くのは、どんな所なんだ?」
聞きながら、ちらりとスマートフォンの時計を見る。

今は何時だろうか?
牧志もここに連れてくる必要があるし、佐倉さんとも状況を突き合わせて話したい。

時間がないようなら、話を切り上げよう。
まだ大丈夫そうなら、もう少し話している。
波照間(?)
「そう……」
波照間(?)
「何も変わらない。通ってきた道を戻るだけ」
KP
現在時刻は昼くらいだ。時間にはまだ余裕がある。
波照間 紅
「一度通った道だというんだな。
僕らは、そこにいたことがあるのか?
それとも、同じように道を辿ったことがあるというのか?」
波照間(?)
「そう。全く同じ場所に戻るわけではないけれど、あなた達には同じことでしょう」
波照間 紅
「よく似た場所に戻る……、ようなものか。
それでも、他の人間は混乱するだろうというんだな」
波照間 紅
昼だな、と目が時間を認識すると、小さく腹が鳴った。可愛らしい音だった。
波照間 紅
「腹が減ったな。
君は何か食べたり、そういうものを必要とするのか?」
KP
目の前の青年の腹からも元気な音が鳴った。
波照間(?)
「……体って本当に不便……」
波照間 紅
「同じようなぼやきを、人間からも聞いたことがあるな。
僕も何か腹に入れておきたい、ついでに何か買ってこよう。

何がいい、好みはあるか?」

波照間 紅
言うか分からないけど、初期佐倉さんを想定しています。>同じようなぼやき
佐倉さんが言わないなら似たようなこと言う同僚がいたのかも。
KP
ああー。佐倉間違いなく言ってましたね。エネルギーバー持ってるのは『無駄なく栄養を摂るため』ですし。
波照間 紅
そうそう。
地獄はやさしいでシャドウと一緒に食事摂ってたシーンでも「食欲のわかない記憶」なんて話になってましたしね。

波照間(?)
「……えっ?」
KP
『あなた』は、あまりにも意外そうに目を見開いた。
波照間(?)
「……別に……ないけど……」
波照間 紅
「そうか? 
それなら僕の身体だし、僕が普段食べている物でいいかな」
意外そうな様子を不思議に思いながら、外へ出る。
KP
『あなた』は戸惑ったように頷いた。
KP
山を降りると、あちこちに警察車両が見かけられた。
波照間 紅
まずいな、見つかったか?
こんな所で捕まるわけにはいかない。
なるべく警察車両から離れて、佐倉さんと合流しようとする。
KP
佐倉が車を止めていたはずの場所に車はなかった。
移動してしまったのだろうか。
そういえばあれ以来佐倉からは一切連絡がなくなっていた。
しかしややあって牧志から連絡が来た。
佐倉は訳あって来られなくなってしまったが、手伝いに来てくれるとのことだ。
【KPからの牧志向け情報】

あなたは昨日までとあるトラブルによりここに来ることができませんでした。
なんとか動けるようになってすぐ、佐倉から波照間の事情についての説明と、警察に追われていて戻れそうにないので、可能なら波照間に助力して欲しいという連絡を受けています。
その際、大怪我をした少女がいるので、彼女を看てやって欲しいと頼まれています。

また、このあたりには通常・覆面・合わせて何台も警察車両が捜査中です。理由は公開はされていませんが、病院で侵入と誘拐が起きたためだと気付いて良いでしょう。
お知らせ
KP
一応お知らせしておくと、タイムリミットまでに電車内の探索を行えます。
波照間 紅
お、お知らせありがとうございます。そうか電車内の探索。
異様な機械の描写だけだったから、見てもわかるものはないのかと思ってた。
こういうのうっかり想定から抜けがち・思い込みがちなので助かります。
KP
そのために一日用意されてますね。
波照間 紅
なるほど。うっかりしがちなPLでお手数をおかけします。

波照間 紅
佐倉さんも、佐倉さんなりに動いているのかもしれない。
あの負荷で動けなくなったのかもしれない。
警察に追われているのかもしれない。
僕に『協力』するのをやめ、滅びを阻止しようとしているのかもしれない。
波照間 紅
無理もない。随分と助けられた。
牧志 浩太
随分物々しいことになってる間を抜けて、先輩の姿を探す。
どうにか『あれ』の影響を脱して戻ってきたら、何だか随分大変なことになっていた。

世界を滅ぼそうとしている奴がいる、らしい。
先輩はそれを阻止するどころか、大事な人と引き換えに手伝わされている。
でも、先輩が手伝わなくてもそいつはやる気で、ちょっとした手間の違いでしかない。
佐倉さんは、知らない所で事態が進むよりはと、先輩に協力することを決めた。
牧志 浩太
俺も同感。
滅ぶ前に最後の一日なんて柄じゃないし、それなら事態の近くにいた方がいい。
正直、先輩を敵だと思いたくないのも少しある。
牧志 浩太
大怪我した人がいるって聞いてるから、手当道具を家の救急箱から持ってきて、自分の車でここに来る。
牧志 浩太
先輩を探そう。
先輩を見つけて、合流することはできるだろうか?
KP
連絡を入れれば普通に通じるので、合流は可能だ。
買い物をするならそれも問題なくできるだろう。
ただ、病院近辺はやはり警察車両が多いので注意が必要だが。
また、波照間に協力するなら服を持って行ってくれと頼まれている。
牧志 浩太
病院近辺の警察車両の多さを見て、離れた所での合流を提案する。
牧志 浩太
食べ物を買いたいって言ってたから、コンビニで買って服と一緒に持っていこう。
先輩、食べ物の好みはあまり変わってないから、先輩の好みなら分かる。
牧志 浩太
二人分って言ってたのは、その子の分かな?
牧志 浩太
そう思って合流場所へ向かうと、そこにいた先輩は……、随分気落ちというか、しょんぼりして見えた。
牧志 浩太
「先輩、服と食べ物持ってきたよ。
車で来てるから、そこで食べよう」
波照間 紅
「ありがとう。
すまない、随分と世話をかけるな」
牧志 浩太
「今更だよ。
俺だって、何かできることがないかなって思ってるから、こうやって協力してるんだしさ。
佐倉さんも、きっとそう」
波照間 紅
「そうか……、僕は判断を誤ったかもしれないと、今朝から考えていたんだ」
波照間 紅
ぼそぼそと今までに起きたことを話しながら、牧志の車の中で牧志と一緒に食事をとる。
KP
あの時、彼女を病院から連れ出さなければ。
あの日、あの電車に乗らなければ、こんなことにはならなかったのだろうか。
そんな思いがよぎるかも知れない。

空は曇っているが、雨は降りそうにない。
波照間 紅
協力なんてしてもらうべきではなかったのかもしれない。
あの時が滅びを止める唯一のチャンスで、僕はあいつを全力で阻止するなり、あいつの手に渡る前に彼女を殺すなり、するべきだったのかもしれない。

そんな、言われても腹の立つだろう悔恨を、ぽつぽつと口から漏らした。
牧志は否定も、肯定もせずに、静かに聞いてくれていた。
牧志 浩太
「先輩が助けたい人って、どんな人だった?」
波照間 紅
「思い出せないんだ。忘れてしまった。
きっと大切だったんだろうと思うだけなんだ」
牧志 浩太
「やりづらいな、それ。
ちゃんと覚えてられれば、先輩、その人のためだって思えたのにな」
波照間 紅
泣き言を言う自分の声と、曇った空が何だか重なって見えた。
波照間 紅
ひとしきり牧志に泣き言を言ったら、服を着替え(着替え場所は牧志の車の中を借りよう)、あいつの分の食事を持って電車に戻ろう。
牧志にも顔を出してもらう。

KP
裏山に戻ると、例の車体の前で『あなた』が待っていた。
波照間(?)
「戻ってきたの」
KP
その声色が少し、意外そうに聞こえたかも知れない。
波照間(?)
「それがもうひとりか」
KP
牧志。見知らぬ男性がそう言ってあなたを見つめる。
同時、心臓が握られたかのような不快感が襲った。
ここにいるのはただの人間ではない。
人の理解を拒むなにものか、だ。
KP
ちょい役だしSAN消費はいいや。
※正確には佐倉もSAN値いくらか消費するはずだけど。
波照間 紅
はーい。
牧志 浩太
「……!」
心臓を強く握られたかのような感覚に、呻きが漏れる。
一人で世界を滅ぼそうとしていた相手。その言葉が実感をもって襲い掛かる。
先輩がさっき漏らした泣き言は事実で、俺達は唯一の、千載一遇のチャンスをふいにした後だった。
そう思わせる程の、理解しがたさだった。
波照間 紅
「ああ。彼が、もう一人だ。
僕の無二の友で、唯一の兄だ」
牧志 浩太
平然と喋っている先輩がちょっと信じられない。
いや、違うか。
こいつは俺と、先輩とで、態度を変えているんだ。
波照間(?)
「私はもう行く……準備をしないと」
KP
『あなた』はそう言った。
波照間(?)
「夜八時。忘れないで」
波照間 紅
「何をするんだ? どこへ行く? 聞いても分からないことか?
食事を買ってきたから、作業中に食べるといい」
買ってきた食べ物を渡す。
波照間(?)
「……へんなひと……」
KP
『あなた』は、今日一あっけにとられたような声を上げた。
そして渡された食べ物をじっと見つめ、視線を落としたままで呟くように言った。
波照間(?)
「ここで爆発が起きて、あなたは死ぬ。
だけど、それは陽動。
私は別のところでその間に世界を滅亡させる。

正直、世界を今日滅亡させ切ることができるとは思っていない。
でも世界に絶望の気配を覚えさせたい。
終わりがあることを示したい。
それが今回の目的。
最後に私は必ず達成してみせる。
それが私の存在証明だから。
そうしたら……」
KP
『あなた』は一度目をつむり、小さく息を漏らすと、廃車両の方を振り向いた。
波照間(?)
「私は、あの子が羨ましい」
波照間 紅
「羨ましい、か。解釈に困る事を言う」
波照間(?)
「さようなら。必ず約束は守る」
波照間 紅
「……さようなら。ああ、頼む」
溜息とともに、そいつを見送る。
対話
KP
波照間さんアイスブレイクした……
波照間 紅
結局名前は聞かなかったけど対話はするという、微妙な感じになる波照間。
KP
本当に最後まで名前訊かなかったな。
別に知らなくてもいいんですけど。
波照間 紅
聞きませんでしたね。そこははっきりと波照間の隔意です。
牧志は話すどころじゃなかったし。
KP
線を引かない波照間さんが線を引いたんだなぁ。
波照間 紅
ですねぇ。境界を持たない波照間が線を引き、はっきりと隔意を示した。
この話、態度とか、正しさに依ろうとする所とか、迷いとか葛藤の強さとか、本当に色々面白くて波照間でやってよかった。
KP
たまーにシナリオ回ってきたと思えば、なんか全体的に酷い展開ぶつけられがちですよね、波照間さん。
別にそんな意図はないんだけどなぁ……
波照間 紅
牧志や佐倉さんがぶつけられる酷い話とは傾向が違うんですよね。意図してそういうのを選んでいるわけではないのに不思議。
KP
割と理不尽&広範囲&基本的に手遅れな話になりがち。
波照間 紅
前の時も否応なしに佐倉さん達も何もかも失われていましたしね。
今回はそれに加えて選択権があるようでないし、片棒担がされるし。
牧志と佐倉さんの場合は意外とそういう話は多くなくて、個人がつらい話が多い。前回はともかく。

波照間&東雲さんには物悲しい話が似合いがちなのもある? >広範囲理不尽になりがち
でも今回は本当に偶然なんですよね。
KP
というかまた東雲さん死んだんだけど……
波照間 紅
本当に死に縁がありすぎでは???

コメント By.KP(佐倉)
協力者がいることを前提とした話ではないのですが、その方がスムーズに進みそうだったのと、
色々RPが厚くなりそうだったのと、
力を合わせてもどうにもならない感覚を出せそうで
それはそれでおいしいなと思ったので牧志もゲストに出てもらっています。

プレイ日:2025年6月24日 ~ 2025年12月15日

作者名: ミゴ太

配布・販売サイト: 【CoC】Miss This Train.

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!


【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」



TRPGリプレイ【置】 CoC『胎響の村』佐倉&牧志 1

「お前がどこにいるか分かったぞ。俺の腹の……中だ」

TRPGリプレイ インセイン『遺産』 1

くそう、揃ってゾロゾロと

TRPGリプレイ メタモルフォゼ『朝の歌』ユウ&アサヒ1

「きっと、ふたつの首がある竜になるんだよ。
片方の首はアサヒで、もう一つの首は、僕」
「ふふ……そうかぁ。一緒に神様になれたら寂しくないな」


送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!