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こちらには
『midnight pool』のネタバレがあります。

KP
そうやって話しながら歩いていると、気がつけば水族館の入口まで来ていた。
佐倉 光
水族館か、楽しみだ。
もちろん、変な噂のことなどとうに脳裏から追い出していた。
佐倉 光
展示について何か書いてあるかな?
KP
券売機でチケットを買って中に入ると、パンフレットを渡される。
順路が指定されていて、以下の順に回る構造となっているようだ。
▽順路・展示内容
[1F-A]
★大水槽(サンゴ礁をイメージした水槽。)
★日常のアクアリウム(近隣の海、淡水の生態、標本の展示。)
★みなも水族館のアイドル達(イルカ・アザラシ・カワウソ・ペンギン)
★休憩所・飲食スペース
[2F]
★冷たい海の生き物(寒流付近の生態や、深い海の生態。)
★季節の展示(※時期毎に展示内容が変わります。)
[1F-B]
★イベントプール
★ショップスペース・出口
KP
「これ!」
その一面に大きく書かれた案内を見て、シローが興奮した様子でパンフレットを見せてくる。
KP
☆引率付き・盛り沢山キッズツアー!

子供限定の水族館ツアーだ!
解説ありエサやりありバックヤード見学ありの楽しそうな内容で、パンフレットに整理券がついている。
今行けば申し込めそうだ。
牧志 浩太
「すごいなこれ。俺も行きたい」
KP
「むりー」
牧志 浩太
「知ってる知ってる」
佐倉 光
「楽しそうだなぁ。これ子供限定?」
いいなぁ、子供。
佐倉 光
「行ってきたらいいよ。後でなに見たか教えて」
申し込みに行こうか~。
KP
「うん! おしえる!」
シローは最近買ってもらったノートと鉛筆を持って意気込む。

楽しそうに手を振って、あなた達と別れてツアーに合流していった。
佐倉 光
「ネットにのってた大水槽ってこれ?」
日常と少し離れた空間に来るとワクワクする。
……日常の記憶がないのに「違う」と分かるのも不思議なものだな。
牧志 浩太
「みたいだな。
お、エイもいるってさ」
佐倉 光
「じゃあこっちは順路通りのんびり見に行きますか」
のんびりと観覧を始めよう。
佐倉 光
気を抜くといつもの佐倉口調になってしまうので、置きで良かったとか思っている今日この頃です。
KP
こうやって普段と違う状態とか状況をじっくりやるのに向いてますね、置き

KP
水族館の少しひんやりとした空気と重たい水の気配、明るく青い照明があなた達を出迎える。

一気に視界が開けると、目の前にガラス越しの海が広がっていた。

真っ白なきめの細かい砂が、青く明るい水の中で揺れている。
様々な色や形の珊瑚が複雑な岩場を形作り、その合間を極彩色の魚がひらひらと行き交う。

中央に作られた大きな魚礁は、遙か昔に滅んだ文明のようにも見えた。

天井が、高い。
遠く、空のような高さに水面がきらめく。
巨大なエイが、悠々と目の前を横切っていった。

紹介用のパネルには「白い砂と青い海をイメージした、南国のアクアリウム」と書かれている。


牧志 浩太
「……綺麗だな」
牧志が少し茫然としたように、目の前に広がる鮮やかな海を見上げる。
佐倉 光
「これは綺麗だなぁ」
思わず感嘆の声を上げる。
前に立って輝く魚たちを眺める。
全体を絵画のように見てもいいし、一匹一匹の魚の動きに注目しても面白い。
ガラスの向こうの異世界を夢中で眺めた。
牧志 浩太
「だな……。海の中にいるみたいだ」
眩しそうに目を細め、微かに笑って、何か懐かしいものを見るように牧志は魚の動きを目で追っていた。
佐倉 光
波の動きに反応して一斉に出たり引っ込んだりしているチンアナゴをじっくり見たり、エイの動きを目で追ったり、きらびやかな魚たちの群れを眺めたりして楽しんだら、次の所へ行こう。
佐倉 光
南国と言えば! 波照間さん!!
KP
Yes!!
市場の色鮮やかな魚とか故郷の海の色とか、そういうものを思い出してる。
佐倉 光
「そういえば、人魚がどうとか書いてましたよね。
いるならこういう海かな?」
牧志 浩太
「ん? ああ、ごめん。
確かに、あの珊瑚礁あたりに座ってたら似合いそうだ」
大きく丸い、ちょうど椅子のような形の珊瑚を示…… したところで、すうっとエイが近くに寄ってくる。

【幸運】で判定。
佐倉 光
1d100 75 【幸運】 Sasa BOT 1d100→88→失敗
KP
ほら、あれあれ、と笑う牧志の横に、ちょうどエイが並んだ。
エイの笑っているような表面と、牧志の笑顔が並ぶ。
そういえばあなたはスマートフォンを持っていた。シャッターチャンスかもしれない。
KP
※撮っても撮らなくてもよい。
佐倉 光
ちょっと面白い図だ。撮っておこう。
KP
〈写真術〉で判定。
本編見る!
佐倉 光
1d100 10〈写真術〉? そんなものはない!  Sasa BOT 1d100→52→失敗
佐倉 光
スマートフォンを素早く出して、撮影操作を……!
KP
牧志の笑顔と共に、背後のアクアリウムではなく、真っ黒な液体が満たされた写真が撮れた。

明るさのせいだろうか。
しかし、妙に不気味に思えて寒気がした。

SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1
佐倉 光
1d100 74 SAN Sasa BOT 1d100→3→決定的成功クリティカル)!
牧志 浩太
「おっ、撮れた?」
佐倉 光
失敗した、みたいで」
牧志 浩太
「ああー、動くし明るさの差があるもんな」
佐倉 光
反射のせい? ぶれた? 何だか変な失敗の仕方だ。
牧志には見せずに削除して閉じた。
そして不思議そうに背景の水槽を見ている。
牧志 浩太
「じゃあ、俺も挑戦…… エイ来ないな。あっちに行っちゃったか。

……佐倉さん、何かあった?」
佐倉 光
「うーん。
さっきの写真、水槽だけ真っ黒になってしまって。
光の加減、というには……」
追求すべきなのか? この違和感は。
放っておいた方がいいんじゃないのか。
佐倉 光
「実は偏光ガラス! とかですかね……」
牧志 浩太
「いや、そういう風にも見えないけど……」
牧志も写真を撮るが、やはり真っ黒な水が映る。
牧志 浩太
「こっちもだな。コーティングか素材か何かのせいなのかな……」

牧志は困ったように水槽の表面を撫でる。だからといって分かることがあるわけでもなく、困惑した顔をしている。
佐倉 光
首をひねった。
しかし、記録が残せないのはそれほど残念ではない気がした。
自分の目で見て、覚えておけばいい話だ……

今の自分は何一つ覚えていないのに?
大した自信だな。
けれど、ここを作った人がそう考えて、『記録に残す』ことをできなくした可能性……なくもないかも?
佐倉 光
「何か特殊処理がしてあるのかも知れないですね。
ここに来た人だけがこの場で唯一の時間を楽しめるように……とか」
牧志 浩太
「だとしたら面白いな。この場で唯一の時間か……。
確かに、それもいいかもな」
佐倉 光
そんな風に考えた方が『納得がいく』と思った。
どうやっているとか、ネットで写真が上がっていたかどうかとか、
そんなことを追求する気にはならなかった。
KP
真っ青な魚がひらりと鰭を靡かせて、あなた達の前を通り過ぎていく。
鮮やかな黄色いラインの入った魚が、強い陽射しを模した光に鱗をきらめかせる。

あなたの記憶にはないはずなのに、立っているだけで汗ばむ温度を、海の匂いがする風を感じた気がした。
佐倉 光
「ここでしか見られない風景、だけど本当に南の海みたいだ」
牧志から何も無ければ今度こそ先へ進むよ。
牧志 浩太
「ああ……、本当に、あの色だ。
これを作った人は、知ってるんだろうな」
溜息をつくように牧志はそう言って、あなたと共に順路をたどる。
佐倉 光
BGMがわりに『何かが起こりそうな曲』を流してます。
なにかがおこる?
KP
いいですよね、あの曲。
なにかがおこるかもしれないし、おこらないかもしれない。

KP
「日常のアクアリウム」
長い通路の両側に水槽が設けられたエリアには、そうある。
ここでは、水族館に隣接する海の生き物の生態についてまとめられているのが主だ。

ビル群の迫る海に生き物がいる、などとあまり意識しないものだが、展示や解説を見ていると、実に様々な生き物がいるものだと思うだろう。

通路を抜けた先のフロアには、食卓でよく見る魚や、メダカやコイ、ナマズといった有名な淡水魚もいる。
牧志 浩太
「あ、錦鯉だ。こんなに大きくなるんだな」
佐倉 光
「サンマの大群って見応えがあるなぁ」
きらきら輝く竜巻に圧倒され、小学校でもお馴染みの魚たちを眺め、のんびりと歩く。
牧志 浩太
「これだけ集まると、何だか一つの生き物みたいだよな」
佐倉 光
「牧志は南の方の出身なんですか?」
何度も聞いた話を問いかけたりしながら。
牧志 浩太
「ああ、俺? 半分だけそうかな。沖縄の、少し街中の方」
そんな話をしながら、フナの水槽を眺める。
佐倉 光
「へぇ……」
半分、ということは、ほんの小さい時にいた、とかだろうか。
佐倉 光
「そういえば、僕っていつも胸に何かつけてました?」
何となく所在なさそうに、何もつけていない左手を胸元にかざしている。
佐倉 光
「ことあるごとに何か、このへんに違和感があって」
牧志 浩太
「えっ? そういえば、朝……」
牧志はあなたの胸元を見て、驚いた顔をした。
牧志 浩太
「うわ、そうか、あの時気になってたのそれか。
ごめん、佐倉さん、言い忘れてた」
牧志 浩太
「佐倉さんはいつも、そこにお守り……、ヒランヤのペンダントと、勾玉をつけてるんだ。あと、左手には銀色の腕輪をつけてる。
どれも、佐倉さんにとっては大事な物なんだ」
佐倉 光
「腕輪に、ペンダントに、勾玉」
随分ととっちらかっているなぁ、と思った。
そういえばどれも枕元に置いてあった気がする。
佐倉 光
「そうだったんですか。
どう大事だったのかも……覚えてないな」
胸のあたりを見下ろし、ぽつりと呟いた。
牧志 浩太
「きっと、落ち着いたら思い出すよ。
もし思い出さなかったら、その時は俺が話す」

だから、大丈夫、と。
声にこそ出さなかったが、そう言っているように聞こえた。
佐倉 光
「……はい」
確かに大事なものであることには間違いなかったのだろうな、と思う。
『そこにあるべき物がない』事だけは分かるのだから。
KP
ここで、〈追跡〉でロール。
佐倉 光
そんなものは初期値です。
1d100 10 〈追跡〉初期値 Sasa BOT 1d100→23→失敗
KP
女の子が泣いている声が聞こえる。
迷子だろうか。はぐれてしまったのだろうか。

「どこー? なんでだれもいないのー?」

あなたはつられるようにして、ふと顔を上げる。
そこには……、誰もいなかった。

誰もいない、何もない、人の姿も、魚もいない。水槽もない、傍らにいたはずの牧志も、

突然、突然だった。
呼吸の仕方を忘れてしまったかのように、気道が痙攣する。

先程まで、あなたはどうやって息を吸って吐いていたのだろう。吸って、いや呼吸などしていたのだろうか、わからない、あなたはどうやって歩いて、この身体をどうやって動かして、わからない、無力な肉の塊が無意味な痙攣を繰り返す、その中であなたは静かに溺れる。
KP
【INT】×5でロール。
佐倉 光
「……!」
ふつりと体から切り離されたように。
突然深海から引き揚げられた魚のように。
胸にいつもあったはずのお守りの重みはなく、まぶたすら動かせない。

思考だけが暴れ、叫ぶ。
苦しい、死にたくない、消えたくない、助けてくれ!
1d100 85【INT】 Sasa BOT 1d100→98→致命的失敗ファンブル
佐倉 光
ここでバランス取るなぁぁぁ!
この直前に別卓で2連クリティカル出していた。
牧志 浩太
1d100 77 Sasa BOT 1d100→71→成功
KP
声が、出ない。
助けを求めたくとも、生を望みたくとも、声が出ない。息が出来ない。記憶を失ったあなたの肉体は、とうとう動き方を忘れてしまった。
KP
とん、とん……、とん。
あなたの胸の奥から湧き出るように、微かなリズムが聞こえてきた。

誰かが息を吸い、吐く音。あなたの胸に、誰かの息が当たる。誰かが指先で、あなたに呼吸のやり方を教えている。
佐倉 光
振動。振動。振動。
胸に響く誰かの音。
暴れるだけでは駄目だ。この振動に合わせて、動かなければ、動かさなければ。
牧志 浩太
「大丈夫」
誰かの声が聞こえた。
牧志 浩太
「大丈夫だよ」
深く暗い水の遥か上に、揺らめく誰かの影が見える。
佐倉 光
闇も光もないどこかで目茶苦茶にもがいていた体が、浮上する。思い出す。
誰かの言葉と姿に手を伸ばす。
肉塊などではない。自分は生きている。大丈夫。
牧志 浩太
「佐倉さんは、大丈夫」
息の出来ない水の底でもがくあなたに、ゆっくりと言い聞かせる声だった。

信じていると。
佐倉 光
覚束なく震えながらも肺に空気を送り込む。
大丈夫。生きている。
KP
その声を聞き、合わせていれば、あなたの身体は次第に動き方を思い出すだろう。
佐倉 光
「牧志……?」
怯えた目で周囲を見回す。
牧志 浩太
「よかった……」
辺りの光景が目に入ると、牧志があなたの手を握っていた。
水槽も魚も辺りの人々も、牧志もきちんと存在していて、あなたは息をしていた。
佐倉 光
「僕、また、突然……さっきと同じだ。さっきもこんな風に、溺れて」
また痛み始めた頭に手をやって冷や汗を拭った。
佐倉 光
「自分の体の中で、溺れるかと思いました。
ありがとう」
牧志 浩太
「そうか……。少し、不安定になってるのかもな。ゆっくり回ろうか」
KP
あなたはふと、少し不安になる。
また溺れてしまうのではないか。また、忘れてしまうのではないか。
また、なにもわからなくなってしまうのではないか。

SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1》。
佐倉 光
1d100 74 Sasa BOT 1d100→16→成功
佐倉 光
呼吸に引っかかりを感じた。
今空気を吸っていることが奇跡に思えた。

しかし、牧志の温かい手の体温が冷え切った指先を温めてくれていた。
この手を離さなければきっと、大丈夫なのではないかという気がした。
牧志が居る限り、きっと大丈夫だ、と。

そして、この手を離すのがなんだか恐ろしくなっていた。

だがそんな感覚も一瞬で消え去る。
これもきっと、記憶が不安定だからだ。
一時的なものだ。
佐倉 光
「ごめんなさい、大丈夫です」
牧志 浩太
「いいよ。行こうか」
牧志が自然と、あなたの手を引いたまま歩き出す。

KP
次のコーナーは「みなも水族館のアイドル達」
そこへ出るとぱっと視界が広がり、辺りが明るくなる。
外に面したコーナーにはイルカのいる水槽、アザラシが泳ぐ長い水槽、ペンギンやアシカのいる岩場など、子供達に大人気の動物たちが集まっている。

イベントやショーに登場する動物が主体のようだ。
ツアーに参加中のシローがペンギンのエサやりを今か今かと待っていて、あなた達に気づくと楽しそうに大きく手を振った。
佐倉 光
シローに手を振っていると、先ほどの体験はやはり夢だったのではないかと……
佐倉 光
思えるはずもなかった。
はっきりと、苦しかった。死ぬかと思ったのだ。
背を向けてもそれはなくならない。見なかったことにしても消えない。
体調が悪いのか。何かの病気なのか。
佐倉 光
行儀良く餌を待つペンギンたちを見ながら、
自分が失った記憶の向こうにあの苦しさの原因があるのだろうかと考えていた。
牧志 浩太
牧志はあなたの手を引いたまま、少し心配そうに、あなたの様子を見ていた。
KP
もうすぐアシカのショーがあるようだ。
また、アザラシエサやり体験の参加者を募集している。
おや? サメ肌なでなで体験なるものがある。
佐倉 光
中の人はどれもやりたい。
佐倉 光
「少し休みたいし、アシカショー見ていっていいですか」
牧志 浩太
「勿論」

KP
座席は円周上になっており、その中心にステージがある。まだアシカは姿を見せていないが、吊り輪やボールなど、ショーに使うのだろう道具が既にセッティングされている。

前の方の席には「水はね注意!」という字とともに、アシカの尾が勢いよく水をはねる絵が描かれた看板がある。大迫力の予感だ。
ゆっくり休みたいと望むなら、後ろの方はステージこそ見づらいが、客も少なく喧騒からも遠ざかれるだろう。
どの辺りに陣取る?
佐倉 光
後ろかな! 今は全力でショーに集中できる気がしない。
KP
あなた達は後ろの方の座席に座り、前の方で水に手を出そうとしている子供や、真ん中の辺りでけだるい会話をしているカップルなどをぼんやりと眺める。
KP
暫くすると二頭のアシカと一人の飼育員が出てきて、軽妙な前置きが始まる。

おっと、前置き中なのにアシカが飼育員の服にいたずらをしている。おおっと、ショーが始まっても全然いう事を聞かない。
「こらこら~」困った様子の飼育員と好き勝手に遊ぶアシカたち! 何だかコミカルな趣向のショーのようだ。
佐倉 光
楽しげなショーの様子を見ていると、少しずつ気分が上向いてきた。
佐倉 光
今の自分の異常は、自分の記憶喪失のせいだと思っている。
佐倉 光
なんとなくぼんやりとショーを眺め、アシカや飼育員が滑稽な行動をとる度に笑う。
佐倉 光
「それさっきもやってた」
素直な突っ込みを入れたりしている。
牧志 浩太
「やってたやってた。うわっ、こっち来た」
KP
プイッと飼育員に背を向けたアシカが、ボールをこちらに放り投げた。
ボールが子供の上をぽーんと通り過ぎ……
KP
【DEX】×5または〈回避〉+20%で判定。
佐倉 光
1d100 53 〈回避〉 Sasa BOT 1d100→38→成功
KP
あなたは飛んでくるボールを咄嗟に避けた。ボールはあなたのすぐ横に落ちて、ころころと楽しげな色を覗かせる。
「あーっ、ごめーん! ほら、お客さんに悪戯しちゃだめだろー!」
なんと、アシカがあなたのすぐ近くにまで寄ってきて、ボールを回収する。触れられそうな距離だ!
佐倉 光
「おっと」
危ない、顔でキャッチするところだった。
黒くつやつやとした海獣の肌が間近だ。さすがに勝手に触れるのは駄目だよな。
牧志 浩太
「……」
牧志も触りたそうな顔をしつつ我慢している。
指先がぷるぷるしている……。
KP
〈目星〉で判定。
佐倉 光
1d100 85〈目星〉 Sasa BOT 1d100→81→成功
KP
アシカが戻っていく通路を見ると、そこだけアシカの肌が傷つかないようにか、滑らかに仕上げてある。ついでにそこだけ階段ではなくスロープだ。
そもそも、そういう筋書きのショーらしい。
佐倉 光
なるほど。演出ってヤツだな。
ショーの後で触らせてもらいに行こう。

ほっそりした体がのたのたとユーモラスに揺れながら舞台へ戻って行くのを見送る。
KP
それから最後の一度だけ素直にキャッチボールを演じて、アシカたちはふれあいコーナーへ移動していく。
牧志 浩太
「さ、佐倉さん。行こう」
触りたくてたまらなそうにしていた子供達と一緒に、牧志もそわりと腰を上げた。
佐倉 光
頷いて少しワクワクしながら前に降りて行く。
堅いんだろうか。柔らかいんだろうか。
暖かいんだろうか。冷たいんだろうか。
握手はできるかな。
体験
佐倉 光
10年以上前にアシカさわったなぁ。
KP
おおー。ネコザメはさわったことがあるんですが、アシカはないなぁ。
佐倉 光
コミカルなショーの後に握手して触れるという、全く同じ流れだった。
で、アシカくんと一緒にポーズとったところを写真撮って売ってくれます。
KP
お、じゃあそのシーンも入れよう。
せっかくだから触った時の形容はお任せします。

KP
握手は子供達のものだったが、あなた達は今回のスターを取り囲む子供達の上からそっと手を伸ばし、その肌に触れることができる。
佐倉 光
手を伸ばして触れると、真っ黒で湿った肌は見た目よりは柔らかく少し弾力があって、思ったほど冷たくも暖かくもなかった。
分厚い脂肪に包まれた体は、地上に暮らす生き物のそれとは全く違う感覚だ。
おとなしくじっとしながらも、真っ黒で丸い目が周囲の人間達を見ていた。
佐倉 光
なかなか触れたことがないような感覚だ……興味深くてつい延々と撫でてしまう。
牧志 浩太
「あ……、ああー……、あー……」
横で牧志が、未知の感触を味わいながら言語を失っていた。
KP
興味深い感触につい時を忘れていると、横から不意に声が掛かった。
「はい、片手を上げてー!」
牧志 浩太
「うえぁ?」つられて牧志が片手を上げる。
佐倉 光
「はい?」こちらもあげてしまう。
KP
パシャッ! カメラのシャッター音がその場に響く。横でアシカが同じポーズをしていた。
KP
「かっこいいですよー!」
ポータブルプリンターの作動音がその場に響き、さっと写真が差し出される。
写真の中には、あなたと牧志が鰭を上げるアシカと同じポーズをして収まっていた。
牧志 浩太
「何だこれ、きれいに揃ってる」
それを見て、牧志がぷっと吹き出す。
KP
「いかがですか? なかなかない体験ですよ!
一枚1000円です」
吹き出した瞬間にさっと値札が示された。
佐倉 光
「商売上手ですねぇ」
あまりにも面白かったのと、その見事な流れに素直に感心してしまったのでお金を出すことにした。
なんだか最近似たような流れがあったような気がした……
KP
「ありがと! まいどー」
あなたの手の中に、どこかユーモラスな写真が収まった。
裏面にデータダウンロードURL(1回限り有効)のQRコードが印刷されている。
牧志 浩太
「佐倉さん。俺、サメも触ってみたいです」
海獣の肌の感触を味わったことで、牧志の好奇心に火がついてしまったらしい。
視線がサメふれあいコーナーの方を向いている。
佐倉 光
「僕も!
鮫肌って、山葵とか削るヤツですよね」
撫でたらもの凄くザラッザラしそうだ。
牧志 浩太
「そうそう! ザラザラしてるやつ」
KP
ふれあいコーナーに向かうと、岩肌をイメージしたブロックの中に浅い水槽が作ってあった。
水槽の中に、小さく平たいサメが泳いでいる、というより寝ているような風情でいた。

注意書きに従って近くの水道で手を洗い、そっと指先で触れれば、ざらついた重い感触が手に触れる。
生き物の肌というより作り物のようにも思える独特な手触りの奥に、生きた動物の気配が確かに存在していた。
佐倉 光
「おぉぉぉ、ヤスリみたい」
恐る恐る撫でてみる。指が摺り下ろされないように柔らかく。
佐倉 光
「岩盤とかその辺みたいでもあるけど、なんか柔らかい」
牧志 浩太
「こう、生きてなさそうなのに生きてるよな……」
KP
『サメさんは温まるのがきらいです さわるのは ちょっとだけにしてね!』という注意書きに従って、牧志は名残惜しそうに手を離す。
手を洗いながらも、まだ名残惜しそうだった。
佐倉 光
「サメ、好きなんですか?」
手を洗いながら今まで触っていた指先を見つめる。
表面摺り下ろされてないかな。
KP
幸いにして指先は無事だ。
佐倉 光
当たり前なんだけどほっとしてしまう。
牧志 浩太
「好きかどうかは考えたことなかったけど、気になって。触ってみたくてさ」
佐倉 光
「サメ、か……」
なんだろう。一般的なサメを思い浮かべた時、胸の奥が少しざわついた。
KP
元気よく泳ぎ回るサメを見たような、しかし楽しい思い出ではないような……。
牧志 浩太
「あー、そっちのサメはちょっと……」
牧志はあなたの表情を見て、何かに思い当たったらしい。
佐倉 光
「どっちのサメですか?」
聞きたいような。聞きたくないような。なんだかいい感じではなかった気もするのだ。
佐倉 光
「海で溺れかけたことがあるとか?
だからさっきからあんな錯覚をするのかも?」

アザラシのエサやりってどこでやってるのか探しながら訊いてみる。
牧志 浩太
「サメの形をした悪魔に、それはもう随分苦労させられたことがあるんだ」
牧志は小声で苦笑する。
佐倉 光
「サメの悪魔……」
空中泳いで襲ってくるのかな。地面泳ぐのかな。なるほど確かにそれは怖い。
佐倉 光
記憶を失っても動物は分かる状態なら、幼い頃から見ている妖精族、とくにピクシーやジャックフロストくらいなら「あっ、ピクシーだ」と思えるのかも知れない。
KP
確かに。
会わせてみたいけど、今回の話に異界は出てこない。

KP
アザラシ水槽の前でエサやり体験の募集をしている。
参加できるかどうか、【幸運】で判定。
佐倉 光
「あれかな?  アザラシ水槽」
1d100 75 【幸運】 Sasa BOT 1d100→44→成功
佐倉 光
「今ならあまり並んでない。
興味あります?  エサやり」
牧志 浩太
「やる!」
その言葉を聞いて、牧志は満面の笑みで答えた。
先程からの流れで、すっかり好奇心が優勢になっている。
KP
いそいそと並べば、水槽の上に開いた丸い穴の上に案内される。
用意された手袋をし、生の小魚を手渡される。
佐倉 光
生魚なんてあまり持つ機会がないからどう持っていいのか、手袋越しに伝わってくる微妙な柔らかさに戸惑う。
丸い穴を覗く。アザラシといえば、丸い目に膨らんだ鼻面でちょっと間抜けに見えるような海獣だったよな。
KP
ぬるり。

穴から小魚を差し出すと、不意に水面が揺らいだ。
何かが近寄ってくる気配がして、次の瞬間。

手に振動が伝わった。
その顔立ちからは想像できない速度で、飛び出した鼻先が二匹の小魚をさらっていく。
佐倉 光
「うわっ!?」
手から瞬時に魚が攫われていった感触に驚いて手を引っ込める。
一瞬悪魔に襲われたような気がした。
牧志 浩太
「うわっ」
牧志も驚いて声を上げる。
牧志 浩太
「は、速い」
KP
後ろで飼育員がニコニコしている。
あるあるな感想なのだろう。
佐倉 光
「なにか来るって思っててもこれだから、死角から襲われる魚はたまったもんじゃないなぁ」
けらけら笑いながらエサやりブースからはなれる。
牧志 浩太
「何が起きたか分からないだろうな」
手を数度握ったり開いたりして余韻を確かめながら、エサやりブースから離れる。

KP
二階へ上がる大きな階段の前に、休憩所を兼ねた飲食スペースがあるようだ。
ベンチやテーブルの他に、貝型のチップをあしらったソフトクリームや、海をイメージしたドリンクなどのある、小さなショップがある。
佐倉 光
ちょうどいい、水分が欲しくなってきたところだ。
佐倉 光
「あそこに寄ってもいいかな」
ショップを指す。
牧志 浩太
「お、丁度いいな。勿論」
KP
ショップに近寄れば、ドリンクのカップなどは「買ったお店に返してね!」方式らしい。
ここで飲み食いしていくのが面倒がないだろう。
佐倉 光
どんなのが売ってるかな?
ラインナップを見てみよう。
☆みなもソフト
水色と白の二色のソフトクリームだ。
星形のウェハースが差してある。
その綺麗なねじねじを見ていると、何かを思い出すような気もする。

☆青い海のレモネード
砂糖を入れて重くしたクリームを沈めて砂をかたどり、爽やかな青い色をつけたレモネードをその上に注いだ綺麗なドリンクだ。
貝型のチップが散りばめられていてかわいい。

☆みなもマドレーヌ
近くのケーキ店のマドレーヌにロゴを入れたもの。貝殻型なのでちょうどよかったのだろう。
佐倉 光
飲み物を買うつもりで来たのだが、ソフトクリームがなんだか気になる……
ソフトクリームを買おう。
KP
あなたの手に、水色と白の美しい色をしたソフトクリームが手渡される。美味しそうだ。
あなたの手に、ひんやりとした温度が伝わる。
牧志 浩太
牧志はその横で、レモネードを買う。
佐倉 光
ソフトクリームを食べる。
KP
おっと、あなたがそれを口に入れた時、【POW】×5で判定だ。
佐倉 光
おっと。
1d100 75【POW】×5 Sasa BOT 1d100→23→成功
KP
あなたがそれを口に入れた時、違和感を覚えた。
味がしない。ひんやりとした塊のはずなのに、その温度さえ感じない。まるで霞でも食べたかのようだ。
佐倉 光
「……あれ?」
想像していた冷たさが来なかったので面食らい、味のなさに面食らう。
佐倉 光
「なに、これ?」
牧志 浩太
「うわっ、酸っぱ」
よく混ぜて飲むドリンクだが、混ぜが足りなかったらしく、牧志がそんな声を上げる。
佐倉 光
もう一口食べてみる。
口の中に液体すら残らない?
それともただアイスの感覚がないだけ?
または自分の口中の感覚が全てない?
KP
相変わらず、何の味もしない。
手に持っているカップからは冷たさを感じるのに、食べると霞になってしまう。
何かを食べたという感覚も、液体も残らなかった。
KP
口の中に触れてみれば、感覚はある。
佐倉 光
「あの……牧志。
ちょっとこれ食べてみて貰える?」
ソフトクリームを差し出す。
佐倉 光
「あと、できればそっちのも一口分けて貰えると」
牧志 浩太
「これ?」
いいけど、とソフトクリームを一口。
牧志 浩太
「あ、ソーダ味だ」
佐倉 光
「えっ?」
牧志 浩太
「えっ?」
牧志 浩太
彼はレモネードを混ぜ直してあなたに差し出す。
佐倉 光
混乱しつつもレモネードを一口飲む。
佐倉 光
「それ食べても味もしないし冷たくもないし、というより何より、口の中に何も無くてまるで幻みたいな」
KP
相変わらず、レモネードは口元に入るなり、幻のように消えてしまった。
酸味も水分も、喉を滑り落ちる感触も、何も感じない。
佐倉 光
「これもだ、口に入れたら消える……」
おかしいのは自分か、世界か。
たぶん自分だ。そうに決まっている。
牧志 浩太
「えっ……?」
佐倉 光
そもそも記憶が消えたのも、自分がおかしいからじゃないのか。
もしかしたら僕は、何も無い部屋で夢を見ているんじゃないのか。
佐倉 光
ソフトクリームに指で触れてみる。冷たい?
KP
ソフトクリームはひやりと冷たく、指を濡らす。
牧志 浩太
「調子が悪い…… んじゃ、ないよな。
とにかく、食べたら次、行こうか」
佐倉 光
「よく、分からないけど……僕はやっぱりおかしいのかも」
佐倉 光
捨てるのも何なので、文字通り味気ないソフトクリームは口に押し込んだ。
温度もないので無茶な食べ方をしても何も気にならない。
不安を感じつつも、次の展示を見に行こう。
KP
ソフトクリームを押し込んでも、頭や腹が痛くなることもなかった。
KP
二階への階段。
可愛らしいデザインで彩られた階段に、あなたは一歩足をかける。
KP
「次は上だな」
誰かが階段の上を指さした。
あなたの傍にいる誰かが、遠くを指さして何かを言っている。

突然、全ての記憶が抜け落ちた。

それを何と呼んだのか。
向こうに何があるのか。
ここは何処なのか。
あなたは何と呼ばれていたのか。

あなたはどうやって歩いていたのか。
あなたはどうやって息をしていたのか。
あなたはどうやって、動いていたのか。

視界が歪む。誰かが何かを言っている。
誰かの名前を呼ぶ声が聞こえた気がして、あなたはそのまま、何もできずに倒れ込む。
佐倉 光
糸を切られた操り人形のように、すとん、と床に落ちる。
目を見開いたままで世界から切り離される。
誰かに助けを求めたくとも声も出ない。
なにものでもなく、本当に生きているものであったかどうかも定かでない。

歪む視界の向こうに何か見えるだろうか。

ひとこと
佐倉 光
佐倉は牧志と水族館見物を楽しむ。
時折起きる謎の体調不良は置いておいて、楽しくアシカショー見物だ。


【置】CoC『刻の牢獄』波照間 3

……見えてしまうから、下手に向こうの世界を知っているから。
未練がましく、なっているだけなのかもしれない。

【置】CoC『迷い家は桜の先に』 牧志&佐倉 1

不安と恐怖が、べったりと思考にこびりついていた。

CoC『欠落コディペンデント』牧志&佐倉 5

PLは超クリアリングしたいけど牧志がNOって言う

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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CoC『VOID』継続『迷い家は桜の先に』 結城&ヴィキ 1

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BEAST BIND トリニティ 第三話『仮面の家』1

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ダブルクロス 第七話『ウロボロスの卵』 1

「虐げられし者を解放し、我が傘下に加えるのだ」