画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: netabare.png

こちらには
『迷い家は桜の先に』のネタバレがあります。
また、NPC入れ替えによる改変があります。


迷い家は桜の先に

甘夏党 様 作

KP
ある日の昼過ぎ、あなたと佐倉は夏空の下を歩いていた。
今日一日はシローは遊びに行っていて夕方まで帰ってこない日。
カウンセリングの帰りで、まだ時間に余裕がある。
かといってこの日差しの中でこれからどこかに行こうというほどの気力もなく、なんとなくぶらぶらと歩いていた。

たまには目的もない散歩というのも悪くはないかも知れない。
蝉の鳴き声が絶え間なく降り注ぐなか、
いつもは通らない小道を思いつくままに日差しを避けながら歩いていた。
牧志 浩太
かかってみれば病院も悪くなかった。

今の自分の状態にこういうものだと名前をつけてもらって、一緒に形にしていくことで、不安に振り回されて動いてしまう頻度が減った。

自覚していなかったひどい寝不足を薬で強制的に抜くことで、身体は随分と楽になった。
牧志 浩太
「最近、あんまり散歩ってしてなかったな。
前はシローを連れて、よくやってたのに」

ふと興味を惹かれた道に入ってみたり、何も考えずに話しながら歩いたり。
そういうの、好きだったな。

背中の後ろが怖くて、最近そんなこともできてなかった。

傍らの佐倉さんに話しかける。
今日の佐倉さんは、どんな記憶を持っているだろうか。
KP
今朝、座った目で「すみません、僕の家から出ていって貰えますか」とショットガン(危険なので弾は装填していない。弾丸はBARで預かってもらっている)を向けられたが、割とすぐに正気に戻っていて、今は大分落ち着いているように見える。
牧志 浩太
そんな記憶の齟齬を、最近は意識的に楽しむようにしていた。
嘘でもそうしていないと、また不安になって佐倉さんの腕を縛ったり、窓や扉の鍵を増やしたり、そんな行動を始めてしまうからだ。
牧志 浩太
今日はどんな佐倉さんだろう?
何を言ってくれるだろう?
どんな顔をするだろう?
どう言えば安心してくれるだろう?
そんな風に。
KP
最近の経験から言ってこういう時はまだどこかに不安定さを抱えていたりするので、突然妙なことを言い出すこともあるのだ。
佐倉 光
「ここ、どこだ?」
KP
そう、例えばこんな事などを。

佐倉 光
「こんな所に神社なんてあったかな」
KP
あなた方の目の前に、こぢんまりとした神社があった。
町の中にちょっとした異世界のようにある、木に囲まれた見覚えのない神社だった。
牧志 浩太
「いつもの通りからちょっと入った所のはずだけど。
いや、見覚えないな」
その小さな神社を覗き込む。
何か謂われや祭神など書かれていないだろうか。
KP
神社は二和ふたわ神社という名らしい。

神社の境内には、少年少女が三人賑やかにお喋りをしていた。少女の一人は和装で、もう一人は蛇の目をさしている。更に奇妙なことに、三人目は浅葱の袴を着て箒を持っているので祢宜に見えるが、どう見ても下に着ているのはレーシングスーツだ。
あなた方に気づく様子もなく楽しそうに談笑していた。
牧志 浩太
しのぶくんッッ!!
なんとふたわのまちにまよいこんじゃった
二和神社……『ゆうやけこやけ』のシリーズに出てくる、『二和』という町のもののけたち
猫の化身『ルーク』、雪んこの『雪花せっか』、バイクの付喪神の『しのぶ
実はそれぞれこの地にいた神様の欠片を抱えていたりする。
牧志 浩太
ここの子かな。
ぼんやりと長閑な光景を眺め、何となく神社にお参りをしてみたりする。
10円玉を持っていれば、賽銭箱に入れて手を合わせる。
佐倉 光
「そこまで新しい神社には見えないんだけどな」
KP
マップには何も書いていない。
引っ越しの時に周囲の神社はチェックしたのに、と佐倉が首をかしげる。
牧志 浩太
お喋りが一段落したら、ここのことについて聞いてみようかな。
牧志 浩太
袴姿の下にレーシングスーツという格好は奇妙には見えたが、後に予定でもあるのかもしれないし、あまり気にしなかった。
KP
袴姿の少年があなた方に気付いて人なつこい笑顔で声をかけてきた。
KP
「こんにちは! 本日はお忙しいところ、当社へようこそおいでくださいました。
当社は、栃木は高根沢の安住神社を本社とする社です。
どちらからおいでですか?」
牧志 浩太
マップを覗き込もうとした時、少年に声をかけられた。
牧志 浩太
「こんにちは。
俺達は少し行った辺りに住んでて、ここは散歩していて偶然見つけたんです。

ここは、どんな謂われのお社なんですか?」
汗を拭いて息をつき、いつもの日記帳とペンを取り出す。
KP
「ご存知のように、安住神社は日本で初めてバイク神社として認定された神社です。ご神体はボク……が最高に格好いいと思うNinja250に人間国宝の某という方に装飾を施していただいたものとなっており、特に蒔絵の部分には……」
少年は嬉しそうに蕩々と語る。筆記が追いつかないほどだ。
牧志 浩太
「えっえっ、えっ、あわ」
筆記が追いつかない! 仕方なく細かいところは端折る。
後でネットで調べてみよう、と決めた。
牧志 浩太
それにしても、バイクが御神体の神社なんてあるのか。初めて聞いたな。
KP
「おーい、ヨメ!」
声の方、本殿の方で白い髪の少女が手を振っていた。
「なんだ、信者ファンか?」
少女はじろじろとあなた方を見つめる。
牧志 浩太
「こんにちは、君もここの子?」
じろじろと見てくる少女に、軽く屈んで視線を合わせる。
何だか独特な喋り方の子だな。
KP
少女はふんふん、とあなたのにおいを嗅いだ。
「ここらの奴じゃない。
ヨメ、こいつら呼んだのか?」
「いや、ボクじゃないよ。タツミのお客様じゃないんだ?」
二人の視線は残り二人の、いつの間にかアイスを食べている少女たちに向いた。
少女たちは目を丸くして首をぷるぷると振る。
タツミ……続編『たびするゆうこや』で出てきた恐竜の少女。今はしのぶと一緒に二和神社の祭神(?)をしている。何故しのぶがヨメなのかは本編を読もう。
KP
「あっ」
和装の少女ルークがぽむ、と手を叩いた。その頭にぴこん、とふさふさした塊が飛び出す。
「さくらちゃんかもしれないのです」
牧志 浩太
「えっ? 佐倉さん?」
思わず傍らを振り返ってしまう。
佐倉 光
「え?」
佐倉が目をぱちくりさせた。
牧志 浩太
少女の頭に猫耳が見えたような…… 見間違いか服の飾りかな。
KP
「ルークちゃんルークちゃん」
傘を持った少女せっかにつつかれて、和装の少女ルークは自分の頭を素早く撫でた。
「でたらいけないやつ、せーふ! なのです」
猫耳に見えたのは彼女の髪が風に揺れた拍子にそう見えただけかも知れない。
横の傘の少女せっかが「よくやった」とでもいうように力強くうんうん、と頷いている。
KP
「さくらちゃんはさくらちゃんなのです」
少女ルークは境内の隅にある小さな木を指した。
それは少し広い空間に大事に植えられている若木だった。
牧志 浩太
「ああ、桜」
佐倉さんじゃなくて桜か。
牧志 浩太
さっきの会話…… まさかこの桜が俺達を呼んだ、なんてことはないよな?

この数年間色々ありすぎて、大概のことにはあるわけない、なんて言えなくなってきている。
牧志 浩太
花……
思わず少し身構えてしまう。
花には嫌な思い出を作ったばかりだ。
牧志 浩太
「この桜が、どうかしたのか?」
少女達に聞きながら、桜の若木を見てみる。
佐倉 光
「桜?」
KP
あなた方ふたりが振り向いて桜の木を見たその時。
夏の暑さが和らいだように思った。

桜の木の下にはいつの間にか、境内にいる少年少女たちよりもさらに幼い、小学生くらいの少女が立っていた。
少女はあなたの元へと歩いてきて、ぺこりとお辞儀をして微笑んだ。
牧志 浩太
ふっと、暑さが和らいだような、空気が変わったような感覚を覚えた。

あんな子は、さっきまでここにいただろうか。
牧志 浩太
「こんにちは。えっと、君は?」
会釈を返して、笑い返す。
KP
只野ただのさくらです!」
少女はあなたの手を握った。
「とってもとっても、疲れているみたいなので」
牧志 浩太
「見て分かるくらいか、それもそうだな」
子供に疲れてるって言われるくらいか、と苦笑する。
さくら
KP
※さ「千歳じゃない桜だよ!」
牧志 浩太
あの子ちとせじゃなかった!
KP
まだ千年生きてないもの。
生まれ変わってまだ10年もたってないから。
牧志 浩太
ああー、そっちか。確かに。
彼女が以前に二和の土地神だった『千歳桜』の『娘(生まれ変わり?)』である。

KP
「休んでいきませんか!」

少女さくらは空いている方の手で背後を指した。
今まで気付かなかったが、境内の木々の間に、アーチ状になった木で形作られた道がある。
佐倉 光
「なんだ、喫茶店でもあるのか?」
牧志 浩太
……ふと、警戒心だか不安だか分からないものが、頭をもたげた。
ついていったら食べられるなんてこと、ないよな?
牧志 浩太
「……休んでいける場所があるのかな。何があるの?」

〈心理学〉少女さくらがこちらに害意を抱いていないか確認します。
KP
〈心理学〉オープンでどうぞ。
牧志 浩太
1d100 77〈心理学〉 Sasa BOT 1d100→85→失敗
おっと、無意味な不安が邪魔をして正しく相手の思考を推し量れない。
佐倉 光
1d100 45 〈心理学〉 Sasa BOT 1d100→79→失敗
KP
少女さくらは害がなさそうに見える。が、確信はない……
他の少年少女たちはどうだろう?
牧志 浩太
「……」
一歩後ずさり、先程いた少年少女たちを見遣る。
彼らはどういう態度でいるだろうか。
KP
先ほどの白い髪の活発そうな少女タツミを加えて談笑している。
何故かアイスが増えている。
牧志 浩太
「なあ。君達は、この子を知っているのか?」
談笑している子供達に問いかける。その声に少し不安と警戒が滲んでいた。
KP
「さくらちゃんですか?」
和装の少女ルークは首をかしげた。
「はい、もちろんなのです。あまり出てこないけどとってもいい子なのです」
KP
「さくらちゃん、がんばってお客様をオモテナシしたいって言ってたよねー」
傘をさした少女せっかが言った。
KP
さくら、と呼ばれた少女はうんうん、と顔を上気させ頷いた。
佐倉 光
「客引きかな? それにしちゃ小さいけど。
家の人のお手伝いか?」
KP
アーチの向こうは見るからに涼しそうで、暑い最中を歩いて来たあなた方には、休憩できる場所は魅力的に思える。
ちょっとしたものを飲んだり食べたりできる場所があるなら、魅力的に感じるだろう。
KP
彼女らの言葉に嘘はないか確かめたいと思うなら、再度〈心理学〉どうぞ。
KP
桜のアーチにいきなりいる感じも考えたけど、それだときっと二人とも安らげないと思って~
牧志 浩太
いきなり飛ばされたら警戒して探索しちゃいますからね、この二人。
事前に許可を取った上で招いてくれて助かります。

しかも、
 ・牧志は不安に取りつかれている状態
 ・直前に花に関してイヤなことがありすぎた
という。
牧志 浩太
1d100 77 Sasa BOT 1d100→80→失敗
佐倉 光
1d100 45 Sasa BOT 1d100→80→失敗
KP
彼女らの言葉が真実であるとの確信は持てなかった。
見たままを信じるなら、彼女らは善人には違いない……
もしかしたら、子供を餌にしてボッたくられる可能性、なんてのもなくはないが?
わからないは怖い
牧志 浩太
普段なら相手の心情を推し量れるのに、不安によるノイズが邪魔でノイズと本当に気づいたことの区別がつかなくなっちゃってる……
相手の思っていることについて考えようとすると無限に不安が湧き始めてしまってちゃんと推し量れないんだろうな、今の牧志。>2連続失敗
KP
佐倉は別に不安に囚われてはいないから、疲れたから休む、と考えることに抵抗はない。
ぼったくりかな、は考えた。
牧志 浩太
そうそう、牧志がこんな状態でお手数をおかけします。
KP
佐倉も拉致られて、万一ここがどういう所か気付く判定失敗したら食事や風呂を愉しむどころじゃなくなりそうだし。
牧志 浩太
なくなりそうだし。安らげない!
助かります。

佐倉 光
「覗いてみる。疲れたし」
1d100 6 【CON】 Sasa BOT 1d100→17→失敗
佐倉 光
「もうしばらく歩きたくねぇ。暑いし」
KP
少女さくらはあなたを心配そうに見つめている。
牧志 浩太
「……」
一度躊躇い、佐倉さんの顔と少女さくらの顔を互いに見る。
迷った。これは本当に警戒しているのか、それとも、いつもの不安に襲われているだけなのか?

分からない。
頭の奥がずしりと痛んだ。そこから不安が湧き出してくるのを感じた。頭の奥が重く感じて、呻く。

休みたい、と不安を飛び越して肉体が訴える。
佐倉 光
「さっきからあいつらが食ってるアイスが無性に美味そうに見えてさぁ。
かき氷くらいあるだろ、茶屋なら」
牧志 浩太
「そう……、だな。大丈夫だよな、きっと」
大丈夫だった、という経験を重ねたかった。
この不安は無視しても大丈夫だった、そういう経験を重ねたい。

頷く。意識的に明るい声を出した。
KP
「アイス? 食べるー?」
傘を持った少女せっかが問いかけようとすると、禰宜姿の少年しのぶが慌てて止めた。
「折角のお客さんなんですから、先にアイスは駄目ですよ」
牧志 浩太
「そうだな、行ってみよう。
アイスいいな、俺も食べたい」
KP
「はい、じゃあどうぞー! ちっちゃいのにしとくね」
傘を持った少女せっかはどこからか小ぶりなアイスを二個取り出した。
ゴミが出ないタイプの、いわゆる「ピノ」みたいなアイスだ。
牧志 浩太
「いいのか? ありがとう」
目の前にすると素直に食べたい。美味しそうだ。
KP
少女せっかはあなたと佐倉の口に一個ずつアイスを入れてくれた。
爽やかな甘味が心地よい。そして冷たい。
まるで今まで冷蔵庫に入っていたかのようだ。
牧志 浩太
口の中に入ったものをしばらく味わう。冷気と甘味が気持ちいい。ゆっくりと口の中で溶かす。美味しい。
牧志 浩太
「……美味しい。ありがとう」
しばらく待っても何も起きなければ、ようやく少女せっかに笑いかけられるだろう。
牧志 浩太
「行ってみようか、涼しい所で休みたいしな。
ありがとう、お邪魔します」
ようやく、少し自然にそんな声が出た。
KP
緑色のワンピースを着た、さくらと呼ばれた少女は、嬉しそうに笑ってあなたの手を引き、木々の重なるアーチへと誘った。
牧志 浩太
引かれた手の感触がやさしくて、少し心が安らいだ。
安らぐのも大変な心理状態
KP
おっ。一時過ぎた。
なんと本編に入るのに二日かかった! けどまあ希によくあるか!
牧志 浩太
もっとスムーズに行こうかなとも思ったけど、これだけ不安にとりつかれている所に「花」が出てきたらまあ不安が頭をもたげてきちゃうよなと思って、お手数をおかけします。
KP
いえいえー
牧志 浩太
普段の牧志なら「警戒は残しつつ言葉には甘えてみる」ことができるんだけど、今の牧志はそこのバランスが崩壊している。
KP
初めてのお客様にドッキドキのさくらちゃん、がんばります!
牧志 浩太
ありがとうさくらちゃん! お邪魔します!
KP
というわけで招待する人(?)が子供になるので、ちょっぴり詳細が変わるかも知れません。
牧志 浩太
はーい。バックヤードでがんばるさくらちゃんを想像してニコニコします。
楽しみ。>ちょっと詳細かわる
KP
たぶん四人が手伝ってる。
牧志 浩太
ああー。かわいい。ルークつまみぐいしそう。
メニューに焼き魚かあんころもちがあると間違いなくルークはつまみぐいを敢行するので誰か止めてあげて。
KP
※たびするゆうこやからさらに少し時が過ぎて、訪れる参拝客の気に触れて、桜の木はみるみる元気になって霊力を取り戻し、霊格上げるために頑張っております。
凄く疲れた人をおもてなしする! と張り切ってお客様を呼んだら、もの凄く遠くの地の二人が引っかかりました。
おいでませ東北。
といったところでこの続きは明日に!
牧志 浩太
ですね、ありがとうございました!
なに牧志の因縁で引っ張っちゃった? >おいでませ
KP
もう季節超えるならシリーズ超えてもいいよねとか思ったけど、そうか、故郷が近いのだった。
牧志 浩太
そうそう。
KP
深山桜だったりしてなさくらちゃん。
牧志 浩太
桜の種類は明言されてませんでしたしね。土着の桜っぽいし、あり得る。
まあゆうこやとキルキルも世界を横断してますし。
同時期にやっていた『たびするゆうこや』で、『キルキルイキル(CoC)』のキャラクターが出演していた。
KP
ですねー。全く害のない怪異ってそれはつまりゆうこやの怪異ではないかね! ということで。
牧志 浩太
なるほど確かに! >害のない怪異
そんな所に不定の狂気してる牧志の警戒心ぶつけてごめんな。
KP
ゆうこやの皆なら辛抱強くほぐしてくれるよ……
元々「人間たちのちょっとしたお悩みを解決する」のが得意なルールのヒトたちだから。
牧志 浩太
確かに。ありがとう、安らいでいこうな。
SANも回復するし牧志の不定は二ヶ月だし、これをきっかけにゆっくり解されて、佐倉さんと話して、ゆうこやムードに包み込まれつつ自らの狂気を見つめて不安から脱していこう。
KP
そう、ゆっくりしてお行きなさい……
時間は止めておくから。

牧志 浩太
木々の重なるアーチを見上げながら、そこを潜り抜ける。
KP
あなたと佐倉がアーチに入ると、少女は嬉しそうに笑って、先に走っていった。
ゆったりしたカーブの先に、あなた方はすぐさま彼女の姿を見失った。

緑の木々はよく見れば全てが桜の木だった。
視界は一面の緑と茶色。空は重なり合う葉や枝でほとんど見えなかった。
日光を遮られた緑のトンネル内は涼しく、全身の汗がゆっくりと引いてゆく。
佐倉 光
「涼しー!
ここに立ってるだけでも気持ちいいな」
牧志 浩太
「だな、涼しい。
ここ、桜の時期に来たら見事だろうな」
気持ちいい。ゆっくりと冷えていく汗を拭く。
鬱蒼としているというのに、桜の明るい葉の色は圧迫感がなく、爽やかだ。
本編見る!
KP
突然視界が開けた。

二人とも
MP-1
SAN-1
牧志 浩太
SAN 43 → 42/43 不定 34
MP 12 → 11
佐倉 光
SAN 67→66/67 不定 53
MP 15→14
牧志 浩太
視界が開けた先を見る。
KP
目の前に桜の花びらが舞った。
涼しい風が吹き、ざわざわと木々が揺れる音がする。
そこは夏を謳歌する桜の木に囲まれた広場で、日本家屋が建っていた。
庭があり、綺麗な井戸もあるようだった。
不思議な事に、庭に一本ある、一際大きく若々しい桜の木だけが桃色の花を咲かせていた。
先に行ったはずの少女の姿はない。

日本家屋はよく手入れされている。表札などは見当たらないので、観光用の展示施設か何かなのかもしれない。
牧志 浩太
「あ……、」
目の前に広がった光景に息を呑む。

すべてがよく手入れされていて美しいそれは、旅館とか観光施設とかそういう、何の脅威もないちょっとした非日常に対する期待を湛えていた。
佐倉 光
「おー、すっげえ。
なんだろ、造花かな?」
牧志 浩太
「だな、これは見事だ。旅館とかかな、ここ」
誘われるように桜の木の下へ行って、その偉容を見上げる。
造花か、それとも生花だろうか。
KP
それは指先で触れると柔らかく、ほんのり湿気を帯びていた。
生花だ。
この夏の盛りに桜が咲いている。
佐倉もあなたの横で桜を見上げて、それが人工物である痕跡を探そうとしていたが、どう見てもそれは自然の木であり、穏やかにあなた方に降り注ぐ太陽の光を遮って揺れていた。

佐倉は首をかしげている。
佐倉 光
「桜に似てる……けど、別の種類なのか?」
KP
桜の木はたおやかな風情で咲き誇っている。
一瞬、それがとても巨大な樹齢何千年にも及ぶようなものに見えた。それは圧倒されるとともに、どこか満たされるような温かさも感じることだろう。

SAN値 回復 1d3
牧志 浩太
「すごいな……。若い木なのに、何だか圧倒されそうだ。

狂い咲き、っていうにはしっかり咲いてるよな。
別の種類なのかな?」

頬の横を吹き抜けていく涼しい風と、柔らかな桃色の色彩。
そこにいると、不思議と安心できるような気がした。
久しぶりに感じる安心という感情を、静かに味わう。
牧志 浩太
「いい所だな、ここ。……来てよかった」
1d3 Sasa BOT 1d3→1
SAN 42 → 43
佐倉 光
1d3 Sasa BOT 1d3→1
SAN 66→67
佐倉 光
「気温まで低い気がする。気のせい……だよな。
木が多いせい……か?」
不思議そうに見回す佐倉には、警戒の表情があまりなかった。
佐倉 光
「もしかしたら異界かも知れないなぁ、ここ」
牧志 浩太
「異界……、なのかな。
でも、その割にあまり警戒してないんだな、佐倉さん」

ふと不安がもたげて、それを頭の中で潰す。
今、俺の警戒や不安は、あまり当てにならない。俺は弱ってる。
佐倉 光
「ああ、たまにあるんだ。
害意のない悪魔が気まぐれにはってる異界。
仕事中に巻き込まれると、
探し出して解除させなきゃならないから面倒なんだけどさ」
KP
桜を見上げて見つめる。
佐倉 光
「空間をねじ曲げる奴らの思惑って色々でさ。
そういうのって大体異界そのものに影響するんだ。
こちらを喰ってやろうとする奴が作ったところはなんとなくおどろおどろしいとかさ」
牧志 浩太
「そうなのか。
そういえば、ここは何となく優しい雰囲気だ。

……本当に俺達を心配してくれてるか、招きたかったか、なんだろうな」
牧志 浩太
「なんだか悪かったな、あんな態度取っちゃって」
苦笑する。今になって、次第に酷くなってたってことを自覚してきているんだ。
なんとか周りの人を疑うことだけはせずにいられたけど、もうちょっと酷くなってたらまずかったかもしれない。
佐倉 光
「ここを出られたら礼を言えばいいんじゃないかな……」
KP
佐倉は振り向いて、自分たちが入ってきた方向を見る。
何も言わずに桜に視線を戻し、笑った。
佐倉 光
「慌てるのは危険になってからでいいさ」
牧志 浩太
「そうだな、そうかもしれない。
それでいいんだ……、きっと。

今までも、それで何とかなった、もんな」
確かめるように言って、気弱に笑う。
そんなことができていなかったのだと、今更に思い知る。
危険の肌触り
牧志 浩太
波照間は悪意はないけどまずいタイプの異界(取り込んでしまうとか)を踏み抜きまくるし、こちらに向いていない異界にまで踏み込んじゃうから知らなかったんだろうなぁ。>異界と相手の思惑

向こうのものであるかのように踏み込んでしまうから、「有害」「有害でない」というざっくりした観点で捉えられないのかもしれない。
KP
メターい話をすると、ゲームではダンジョン曲が流れたりしてプレイヤーにその時の雰囲気を何となく知らせてくれるけど、それは多分ゲームの登場人物にも伝わる情報なんじゃないかなと。
たまに平和な曲が流れて青空なのに危険なダンジョンもなくはないけどレアだし。
牧志 浩太
ああー、なるほど!
あれは登場人物が察知している危険や雰囲気だったんだ。その解釈面白い。
KP
ちなみに佐倉がこういう害意のない異界を愉しむ余裕ができたのも牧志と会ってからです。
それまでは「紛らわしい! 本命探す仕事の邪魔だうぜぇ! アホな理由で空間ほいほい曲げてんじゃねぇよクソ悪魔!」って思ってた。
牧志 浩太
佐倉さんに「その場を楽しむ」ことを与えたのは牧志なんですね……
その牧志がいま、佐倉さんから返してもらっているわけだ。
KP
さっきちらっと入ってきた方を見た佐倉は、出口がなくなったことに気付いたけど言わないことにした。
牧志 浩太
しれっと出口なくなっとる。まあ害のない異界だろうという話があったとはいえ、今の牧志が気づいたらそれどころじゃなくなっちゃいますしね。
KP
まあ異界なら出口ないとかよくあるし。

KP
日本家屋は扉を閉じていて、中の様子はうかがい知れない。
それでも得体の知れなさや不気味さなどは感じず、だだ暖かな静けさだけがそこにある。

また、庭には木で作られた井戸があり、釣瓶が降りている。
牧志 浩太
扉の正面から少し横に避けて、とんとん、と軽く扉をノックする。

こういう時に正面を避けてしまうのは、前からの癖だ。
実際、これでテンションの上がりきったシローの頭突きを避けたこともあるし。
KP
シローの頭突き回避!!
牧志 浩太
回避!!
回避したあとにちゃんと話を聞くから……
KP
あなたのノックに応じるように木の扉が横にスライドして開いた。
だがその向こうに人の姿はなく、敷居にもレールのようなものは見当たらない。

向こう側は明るく、土間になっており、奥には畳がしかれた部屋がある。
作りは完全に古民家なのに、まだ新しい木の匂いがした。
牧志 浩太
一度、中を覗き込む。新しい木のいい香りが鼻をくすぐった。
牧志 浩太
「お邪魔します」
中に声をかけて、敷居を跨ぐ。
KP
い草の香りに混じって、何とも食欲を刺激する香りが漂っている。
ぱっと見、かまどが並んでいる土間、上がってすぐの所にある居間が見える。
牧志 浩太
敷居を跨いですぐに、振り返る。
出られなくなっていないか、佐倉さんがついて来られるか。
牧志 浩太
何も異変がなければ、ふう、と息をつくだろう。
牧志 浩太
鼻をひくつかせてから、食欲を刺激する香りのせいだと気づく。
牧志 浩太
「……何だか、いい匂いがするな。
そういえば、かき氷とかあるかなって話してたっけ」
古民家のような佇まいの室内、その奥から流れてくる香りは、前に行った民宿の夕食を思い出させた。
KP
〈聞き耳〉をどうぞ。
牧志 浩太
1d100 97〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→77→成功
KP
すぐ近くの香りは、土間にある蓋をされたかまどからだ。ほんのり炊きたての米の香りがする。
そして、奥の居間からは出汁と醤油の香りがする。
佐倉 光
「何だよこれ、腹が減る香りだなぁ。
誰かいませんかー?」
KP
しかし屋敷内はひっそりとしていて、先ほどの案内人の少女の姿もない。
牧志 浩太
「だな。そういえば昼まだだっけ」

病院の待ち時間が少し長く、これからどこかで昼食にしようという話をしていたのだ、確か。
牧志 浩太
昼過ぎだし、昼食食べてると佐倉さんあたりはせっかくの食事が入らないかもだから、そういうことにしました。>昼食まだ
佐倉 光
「喫茶店……って感じでもないし、保存住宅って感じでもない。何だろうな」
佐倉も中に入った。
牧志 浩太
佐倉さんが敷居を跨いで入ってくるのを見て、無意識に詰めていた息を吐く。
牧志 浩太
「さっきの子もいないみたいだな。
あの様子なら人前に顔を出せないわけでもないだろうし、どうしたんだろう」

食事の支度をしている誰かがいないか、土間の方を覗いてみる。
KP
土間も無人だが、かまどに近づくと桜の葉が一枚その横に置いてあるのが見えた。
置いてある、と見えたのは、それがきちんとかまどの横にまっすぐに並べられていたからだ。
そしてその葉には、何か書かれているようだった。
牧志 浩太
「保存住宅なら、煮炊きはしないだろうしな。
そういう所を真似て作った異界なのかもしれないけど」

葉に書かれている内容を読んでみる。
KP
綺麗な毛筆で「おもてなしをさせていただきます
その後にクレヨンで笑顔の落書きと「さくら」という辿々しいサインがあった。
牧志 浩太
「……あ」
クレヨンで描かれた笑顔と辿々しいサインに、ふと笑顔が漏れた。
さっきの子だ。何だかシローを思い出して微笑ましくなる。
KP
ちなみに桜の葉の代筆は……真面目だし字が綺麗であろうしのぶ君だ。
今本人から設定okもらった!
牧志 浩太
なるほど! >しのぶ君
ご本人もありがとうございます
牧志 浩太
「佐倉さん、これ」
佐倉さんにその手紙を見せる。
牧志 浩太
「桜の葉が手紙って、何だか洒落てるな。旅館みたいだ」
佐倉 光
「へぇ、もしかしてさっきの子がホストなのか?」
同じくシローを思い出してくすりと笑う。
KP
かまどからは微かに美味しそうな白米の香りを乗せた湯気が漏れていた。
佐倉 光
「ここは涼しいな。季節を忘れてしまいそうだ」
牧志 浩太
「どうだろう、字が違うから他にも人はいそうだけど。

そういえば、随分涼しいな。空調が効いてるのかと思ったけど、外も結構涼しかった」
KP
上がり框(土間から部屋に入る部分の段差)にも同じような葉っぱがあるようだ。
そしてその周囲には桜の花びらが何枚も落ちている。
牧志 浩太
その葉っぱを拾い上げて、何か書かれてないか確認します。
KP
〈オカルト〉 または 【知識】/2
牧志 浩太
1d100 44 〈オカルト〉 Sasa BOT 1d100→7→成功
佐倉 光
1d100 75 〈オカルト〉 Sasa BOT 1d100→71→成功
KP
あなた方二人は、民話や伝承にある迷い家というものを思い出すだろう。
訪れた旅人に富をもたらすものとされる不思議な家。
そこでは食事や休息をとり、ひとつ品物を持ち帰っても良いとされる。
牧志 浩太
「あ……、そうか。そういうことか」
葉を持ったまま辺りを見回し、ぽつりと呟く。
佐倉 光
「こういうの、読んだことがある。
だけどこんな町中で出くわすなんてな。
異界だから、町もなにもないのか」
牧志 浩太
「あの話、ちょっと不思議だったんだよな。
何の害もないし、教訓話っていうには弱いし。
ただ、ふっとそこにあるだけ、って感じでさ」
佐倉 光
「疲れてるようだから休め、ってさ」
牧志 浩太
「疲れてるから休め、か。……そうだな、そういうことなら、甘えようかな」

大きく手を伸ばして、桜の香りに満たされた空気を一杯に吸い込んだ。
一緒に入ってくるい草の青い匂いが、どこか懐かしくなるような気持ちで、ずっと強ばっていた肩をゆっくりとほぐしていく。
牧志 浩太
「彼らは何がしたくて、人を招くんだろうな。
触れ合いたいのか、もてなすのが楽しいのか、それか」
牧志 浩太
「案外、料理が趣味だったりして」
久しぶりに冗談を言う余裕が出てきて、軽口を上らせた。
佐倉 光
「シローが作った折り紙やラクガキをくれようとしたりするのと同じで、
意外とそういう普通の理由なのかも知れない」
神社の境内にいた子供たちを思い出して頷いた。
KP
佐倉は上がり框に腰掛けた。
あなたの手にある葉っぱには、
ようこそおいでくださいました。ごゆっくりおくつろぎください。
そんな綺麗でほっそりした字の下に「ようそこ」とクレヨンの字。
牧志 浩太
「ああ……、確かに。
知らない相手だから不思議に思うだけで、そんなものなのかもな」
拾い上げた手の中の葉に刻まれた文字を、眩しそうに眺める。
KP
〈目星〉をどうぞ。
牧志 浩太
1d100 98〈目星〉 Sasa BOT 1d100→41→成功
佐倉 光
1d100 85〈目星〉 Sasa BOT 1d100→59→成功
KP
散らばっている花びらの中に、一枚だけ濃い色の花びらが落ちている。
その花びらを見つけた時、拙い拍手が聞こえた気がした。

二人とも桜ポイントに+1
牧志 浩太
「大学の友達にさ、ストレス溜まれば溜まるほど配る菓子の量が増える奴がいるんだ。
しかも、どんどん作るものが高度になっていく」
佐倉 光
「ストレスが溜まると好きなことをして発散するってことは、あるな」
牧志 浩太
「そうそう。手を動かすのがいいみたいでさ、その気持ちはちょっと分かる」
話しながら、何かを叩くような身振りをする。
佐倉 光
それができる時はまだ余裕があるって事なんだろうけど、と頭の中で付け加える。
牧志はそんな余裕も無かったように見えた。
その原因の一つになったのが、自分の変調だ。
牧志 浩太
鉛筆を立ててノートを真っ黒にして、いただろうか。
パズルにひたすら打ち込んで、いただろうか。
空っぽのものを見る眼であなたを眺めていた、あの時の牧志は。

形のない不安をどうにかすることに、思考のすべてを持っていかれていたあの時の牧志は。

そうではなかったように見えた。
好きということを選ぶ余裕すらなかったようだった。
牧志 浩太
牧志、好きなものが大体思考力寄りなのもストレス発散に向かないところで。
精々いろんなものひたすら分解するくらい。
ああ、でも前にひたすら規則正しくなることでストレス発散してた時はありましたね。
KP
ああー、あの時はまだしも少しは余裕があったのかな。SAN値もそこまで削られてないし不定も抱えてないし。
牧志 浩太
最終的にあの時はヘビ人間に怒りをぶつけることができたし、まだ怒りを抱くことができていたし、牧志の方にはまだ少しは余裕があったのかもしれません。
やっぱり、しんでなんかないよの時のダメージが牧志にとって重すぎた。
『しんでなんかないよ』ネタバレ
KP
年単位でゴリゴリ削られたら……
そもそもたぶん正気でいたら耐えられなかったし……
牧志 浩太
そうそれ 狂っていなければ耐えられなかった
あの生活を年単位で続けた上に、間に佐倉さん食わされたり最後にそれでも持っていかれかけたりしたし
その結果自分で狂気を呑んじゃったし。
KP
友達が溶ける様見せられ喰わされるの最悪すぎるし。
その後腐るのも見るし。
牧志 浩太
溶けるし腐るし一度も喋ってくれないし次第に感覚は奪われていくし、孤独が苦手な牧志がずーーーっと、ひとりだし。
KP
つくづく酷いイジメだったなぁあのシナリオ(褒め言葉)。
牧志 浩太
全くだ(賞賛)
牧志の弱点にもがっちりはまるし。


ひとこと
KP
たどり着いた不思議な神社で出逢った奇妙な子供達。
彼女らは牧志たちに「休んで行くように」と誘うのだった。

凝り固まって縮んでしまった牧志の心をゆっくりほぐして行くパート。
シナリオのひとよりずっと若い子が担当するので、サポートメンバーとして『ゆうやけこやけ』の皆様にお越しいただきました。
ちなみに猫耳少女ルークは牧志の中の人のキャラクターです。


【置】CoC【タイマン限2】収録シナリオ『デート or デッド』 佐倉&牧志 4

「さーて。鶴は機織りに行ってくるかな。決して覗いてはいけませんよ。フリじゃないからね、これ」

【置】CoC『満を持して今日も俺は眠れない』 佐倉&牧志 6

「アァァァァァァァァァァァ!」
「うわっ!? ちょ、佐倉さん!?」

【置】CoC『忌胎』 佐倉&牧志 6

これは諦めではないんだ。

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


CoC『HAL』牧志 浩太

「勿論だよ」
「一度目も、二度目もね」

インセイン 赤い糸 蘇芳&常盤 1

「うん。実は俺ものすごく興味ある。覚えてること全部教えて欲しい」
「お、面白がられてる……!?」

CoC『VOID』継続『やさしい朝をくださいね』ヴィキ&結城 1

「デートは、普通男の子からお誘いするものじゃないの?」