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こちらには
『惑いの欠片』のネタバレがあります。

本編見る!
KP
どうにか扉を閉めると、溢れてくる香りは止まった。

しかし、辺りを漂う香りは随分と強くなってきていた。
実体のあるものが足元を這うかのような重さすら感じる。

あなたの視界には霧が立ち込め、牧志の表情が随分と見えづらくなってきている。

扉の向こうから、まだ微かに妖精の囁く声がする。
視覚が役に立たなくなりつつあることで、普段気にしていなかったような小さな音が随分と耳に届く。
牧志 浩太
「あ……、」
牧志が耳に手を当てて、不安そうな声を漏らした。
牧志 浩太
「ごめん、さくらさん、よく、きこえない。
なにが、まずい、って?」
佐倉 光
俺の視覚同様、牧志の耳も大分やられているみたいだ。
両手で花の形を作って、鼻をつまんでみせ、あの扉の方を見る。
佐倉 光
「あの花だ」
牧志 浩太
「みみなりが、ひどくて、」
佐倉 光
「俺もだ」
言って両手を目に当てる。

それから左腕に指を二本揃えて軽く叩く。腕時計のつもりだ。
佐倉 光
「時間がない」
牧志 浩太
「さくらさんも、か」
牧志 浩太
「じかんが、ない。か?」
あなたのその身振りの意味は分からなかったようだが、辛うじて、ない、だけ聞こえたのだろう。
佐倉 光
もう一方の扉が見えればそちらを指す。
牧志 浩太
「そうだな。急ごう」
分かったと言いたいのか、牧志は改めてあなたの手を取り、軽くその扉の方へ引く。
佐倉 光
頷いて見せる。
佐倉 光
そろそろ牧志の耳は限界が近いみたいだ。急がないと。
扉の前で立ち止まって、扉を指して耳に手を当て「音を聞いている」とジェスチャーする。
〈聞き耳〉する!
牧志 浩太
牧志は声を発さず、頷きながらあなたの肩を空いた腕で小さく一度叩く。
KP
〈聞き耳〉をどうぞ。
佐倉 光
1d100 84〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→34→成功
KP
扉の向こうに微かに、何かの気配、のようなものを感じた気がした。
それは何かの物音かもしれないし、気のせいかもしれなかった。

視界が閉ざされつつあるせいで、何だか過敏になっている。
佐倉 光
口元に指を当て、静かに、とアクションをする。
佐倉 光
『気配がある。何かいるかも』
指で扉の向こうを指して声を出さずに口の動きだけで伝える。
何かを感じ取ったことは分かって貰えるだろう。

しかし、さっきみたいに幻かも知れないんだよなぁ。
扉を開けるのは、ぱっと部屋の状況を確認できる牧志にやってもらった方が良さそうなんだけど。
牧志 浩太
牧志があなたの肩を軽く叩き、頷く。
開けようかということなのか、扉に向かって手を動かしたのが見えた。
佐倉 光
牧志の後ろから気配を探ろうと意識を集中する。
牧志 浩太
牧志がゆっくりと扉を開ける。

KP
……そこは小さな森のようになっていた。

大きなテーブルの上によく分からないガラス製の器具などが置かれたままになっていて、それらをもろとも背の高い雑草が呑み込んでいる。

雑草が塊になって濃い下生えを作っているあたりから、微かな物音が聞こえる……。
佐倉 光
牧志のいる方に手をかざしてから音が聞こえる方を指さす。
佐倉 光
『なにかいる』
声を出さずに口パクで伝えようとする。
牧志 浩太
あなたの手を取る牧志の手に、僅かに緊張が走る。
佐倉 光
牧志は何か見えないかな。
見えないようなら注意しつつ近づくしかないけど。
牧志 浩太
1d100 99〈目星〉 Sasa BOT 1d100→17→成功
牧志 浩太
「?」
ふと、牧志の手から緊張が抜けた。
あなたの手をゆっくりと、雑草の一角に向ける。

目を凝らせばその中に、動物のような灰色の毛皮が一瞬見えた。
牧志はその正体をあなたに伝えようとして、声を出さずに伝える方法が浮かばないのか困惑した顔をする。
佐倉 光
『どうぶつ?』
小さな動物、猫か何かを抱いて撫でるようなアクションをしてみせる。
さすがに動物の種類まで、ってのは難しいなぁ。
牧志 浩太
牧志は大きく頷いて、少し考えると両腕を頭の上に掲げた。……カニ?
佐倉 光
『カニ?』
首をかしげた。こんな所に?
佐倉 光
『……蜘蛛?』
いや動物じゃねぇか。
KP
そんなことをしている間に、雑草の合間からがさりと音がした。何か小さな動物が出てくる。

それは、灰色の背中に白くて長い耳の、ふくふくとした可愛らしいウサギだ。
佐倉 光
「……」
牧志、形態模写苦手なの?
軽くずっこける。

いや兔だからって安心もできないけどさ。首刈られるかも知れないし。
つーか、こんな所に動物住んでるの自体は……

植物が多いからおかしくはない……か?
壁に穴でも開いているのだろうか。
牧志 浩太
「……」
困ったような苦笑いをしているのが、なんとなく分かる。
KP
その小さな毛皮の塊はあなた達の姿を認めると、驚いてぴょんと立ち上がった。

後ろ脚。
いや、二本足で。
牧志 浩太
牧志の手にさっと緊張が走った。
KP
目の前で、みるみるうちに獣の体躯が膨れ上がる。

あなた達と同じくらいの背丈にまでなった時には、もはや兎ではなかった。
ぼさぼさの髪、極端に長い耳、赤い大きな目、齧歯類の特徴を持つ鋭い歯。
それは兎とも奇妙な獣とも人間ともつかない「何か」だった。
兎が一瞬にして変貌するのを見たあなた達は、《SANチェック》。

霧のせいで見えづらいあなたは《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D3》、
はっきりと目にしてしまった牧志は《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D4
牧志 浩太
1d100 51 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→20→成功
佐倉 光
1d100 69 SAN Sasa BOT 1d100→44→成功
佐倉 光
「悪魔!?」
逃げるかぁ?
佐倉 光
「牧志、逃げるぞ!」
声をかけて下がる。
こんな状態で戦えるか!
KP
あなた達は逃げようとするが、相手が逃げる方が速かった。

それは怯えたように一歩後ずさると、飛び跳ねるような足取りで背の高い雑草の向こうへ逃げていく。
そのうちその姿はまた小さくなり、雑草に埋もれた一角に消える。
牧志 浩太
後には、唖然とした牧志とあなたが残された。
佐倉 光
「なんだあれ?」
顔をしかめ思わず呟いていた。
佐倉 光
しばらくそのまま動かずに様子を見て気配を探る。
動きがないようならこの部屋の探索をしよう。
佐倉 光
「俺にはよく見えなかったんだけど、あいつ、まだここにいるのか?」
頭の上に耳の形を作って、この部屋、と足元を指さす。
佐倉 光
「元人間、なんてことはないだろうな」
KP
それが消えたあたりを暫く見つめていても、もう何か出てくることはないようだ。
牧志 浩太
「もう、何も、いないみたいだ」
佐倉 光
頷く。
佐倉 光
忙しいね!
KP
【POW】差とファンブルで牧志の聴覚の方が先にやられてきてるから、佐倉さんが色々伝えるのに苦心する羽目になってる。
佐倉 光
こちらの視覚がまだ生きてるからなんとかなってる!
KP
そうそう。佐倉さんの視覚がまだ生きてるのが強い。やりとりができるし情報も手に入る。
佐倉 光
「良く分からないけど、ひとまず気にしても仕方ないな」
ぐるりと周囲を見回してみる。
佐倉 光
「俺の目も大分効かなくなってきた」
自分の目を指さして指を振る。
佐倉 光
「頼んだぜ」
牧志の目を指す。

今はまだ良い。俺の目が生きているから少しは交換できる。完全に見えなくなったら、伝わったかどうかの確認がやりづらくなる……
それに、目が潰れたら次は耳、という可能性は無論ある。そうなってしまうと身動きが取れなくなるかも知れない。
あの花を何とかしないと、遅かれ早かれ俺達は幻に呑まれてあれと同じ運命だろう。

さっき幻影の部屋で見た死体を思い出し、少しぞっとした。
あの運命は確実に近づいている。
牧志 浩太
「ああ。そっちは、任せてくれ」
牧志は大きめに頷き、ぐるりと周囲を見回す。
KP
部屋全体を見回すなら、〈目星〉
佐倉 光
1d100 40〈目星〉 Sasa BOT 1d100→70→失敗
牧志 浩太
1d100 99〈目星〉 Sasa BOT 1d100→24→成功
佐倉 光
くそ、視界がぼけてまともに見えない。
KP
あなたの霧がかった視界の合間を、背の高い雑草が埋める。
生い茂った深い下生えが邪魔で、何があるのか掴みづらい。
牧志 浩太
「なにか、落ちてるな」
牧志は辺りを何度も見回しながら、あなたの手を引いて慎重にテーブルの傍らの草むらの中へ近づく。
草の中に屈み込むと、何かを拾い上げた。
KP
それは古ぼけたハンマーだった。金属製らしく、何かを叩いたり割ったりするのには問題なく役立ちそうだ。

武器として使うならば、以下のデータだ。
ハンマー〈杖〉・1d4+1+db
佐倉 光
目を近づけて、触れて、それが武器であることを理解する。
さっきみたいなのが襲ってきたら使えそうだ。後は……使い途は思いつかないが、破壊活動?
今のところ敵は異常な匂いなんだよなぁ。
佐倉 光
「持っててくれ」
牧志の方へ押す。
まあ言うまでもないけどな。俺よりは絶対役に立てられるはずだ。
牧志 浩太
「わかった、持っとく」
牧志は頷いてハンマーを受け取り、空いている方の手に持つ。
元々持っていた懐中電灯を、ズボンのポケットに挿した。
佐倉 光
テーブルの上や引き出しって何かあったりしないかな。あと、さっき兔がいた草の中に本落ちてたりとか……
屈んで調べてみるけど、視力落ちてるからなぁ。
牧志 浩太
あなたが草の中に屈むのを見て牧志も気づいたのだろう、草を掻き分けて何かないか探しだす。
その合間にも何度も背後を振り返り、辺りを見回している辺り、聞こえなくなってきているのが不安なのだろう。
佐倉 光
「大丈夫、音がしたら知らせる」
自分の耳を指して、
佐倉 光
それから牧志の腕を軽く叩いて見せる。
KP
兎がいた辺りを調べるなら、〈目星〉
佐倉 光
1d100 40〈目星〉 Sasa BOT 1d100→9→成功
KP
1d100 99 Sasa BOT 1d100→22→成功
佐倉 光
結構目が仕事してくれるな。
KP
それを先に見つけたのはあなただ。
草の中に、本が一冊落ちている。
佐倉 光
本を拾い上げて、牧志に渡そう。
牧志 浩太
牧志は本を受け取り、開く。さっと内容に目を走らせた。
牧志 浩太
「これ……、また薬のつくりかた、だ。材料も、ある。
耳の、薬だって。
ここにいたやつが、対策、してたのかな」
KP
それは難聴薬の作り方と、一回分の材料だ。道具さえあれば薬を作れるだろう。
ハンマーだけではちょっとしんどい。
牧志 浩太
「あのテーブルのうえ、器具とか、残ってる、みたいだ。
使えそうなもの、あるかも」
佐倉 光
「つくれる?」
テーブルを指す。
目がほぼ見えないんじゃ役には立たないかも知れないな。
佐倉 光
薬を作れたとして……すぐ使うのは正しいだろうか。
またすぐに冒されたのでは意味がない。
さっきの幻影は、ひとまず異常が無かった方の感覚まで冒されたのだ。
使用は慎重になるべきだろう……
牧志 浩太
「みて、みる」
牧志はテーブルに近づいて、苔に埋もれた器具を確かめる。
KP
テーブルの上の器具などを確認するなら、〈目星〉
佐倉 光
1d100 40〈目星〉 Sasa BOT 1d100→80→失敗
牧志 浩太
1d100 99〈目星〉 Sasa BOT 1d100→32→成功
佐倉 光
一面緑色で見分けがつかない。
KP
ぼんやりとした緑の固まりにしか見えない中に牧志が手を突っ込むと、カチャカチャとガラスの触れ合うような音がする。
あるのが透明な物のせいで、余計に見えづらいのだ。
牧志 浩太
「中も苔だらけ、だな。
でも、使えそう、ではある。
薬をつぶしたりするのも、あるみたいだ。
汚いとか、考えなければ、だけど」

牧志は緑色の中から容器らしいものを出して、あなたの前で振る。
草の葉でも入り込んでいるのか、微かにカサカサと鳴った。
KP
ここでは〈医学〉+30または〈薬学〉+30成功することで、目薬及び難聴薬を作れます。

時間がかかるため、1回(一人で試みるなら、どちらか片方の作成)を試みるごとに追加で【POW】ロールが1回発生します。

牧志からやり方を聞いて佐倉さんも試みることができますが、手元が見えづらいため、成功率が-15%されます。

目薬・難聴薬の生成に成功し、使用した場合、過去2回分の技能値の変化を元に戻すことができます。
佐倉 光
うーん。どちらもお持ちじゃないので素直に任せるべきだと思う。
牧志 浩太
「あと、こんなの、見つけた。除草剤だって」

牧志はあなたに、霧吹きか何かに入った、つんとくる刺激臭のする液体を見せる。
佐倉 光
「除草剤か。役に立つかな」
原因が植物なのは間違いないのだし、さっきの部屋や入り口の植物に覆われた部屋を何とかできるかもしれないな。
十分な量と効果があるといいんだが。
牧志 浩太
「あの、蔦の部屋とか、なんとかならないかな」
KP
身体の穴という穴から入り込んでくるような香りは、次第に強くなってくる……

この辺りで、【POW】×2で判定。
佐倉 光
1d100 30【POW】 Sasa BOT 1d100→45→失敗
〈目星〉 40→30
〈聞き耳〉 84→89
牧志 浩太
1d100 22【POW】 Sasa BOT 1d100→76→失敗
〈聞き耳〉 15 → 5
佐倉 光
耳がほぼ死んだぁぁ!
KP
視界を埋めてゆく霧はいよいよ深くなり、それが霧ではなく視界の欠損であることがはっきりと分かるようになってくる。

あなたの視界には乳白色の穴が開いている。
その合間から牧志の姿や、緑一色の周囲の風景がぼんやりと見える。
佐倉 光
時を追うごとに失われて行く視覚に焦りを感じる。
恐らくもう牧志の耳もほぼ聞こえていないだろう。声に反応がないことの方が多い。
周囲のことが分からない。情報が限られる。急激に力が失われて行く。
情報を元に考えることしか俺にはできないっていうのに!
牧志 浩太
あなたの顔に浮かんだ焦りを見たのだろうか、牧志が少し考えて言う。

「目薬、つくって、みようか。
すこし時間、かかるけど。
目、なおるかも、しれない」
牧志 浩太
もうほぼ聞こえていない、という推察は合っているのだろう。
牧志の言葉はゆっくりと辿るようなものだった。自分自身にも聞こえていないのだ。
佐倉 光
正直ー、ここで時間かけて作っても同程度失われるんだよなー。
ただ、二段階戻しで20%保証されると考えるとそれはそれで0よりはいいのかも知れない。
それに、今後こちらの耳が冒され始めた時、牧志の目が冒され始めた時に使えるかも知れない。

牧志に両方作ってもらっておこうか……
佐倉 光
「両方作っておこう」
耳と目を指さしてから、器材を指さす。
牧志 浩太
「わかった。やって、みる」
牧志は緩やかに頷いて、手元に二冊の本を広げ、テーブルへと向き合う。

しばらく容器の中の苔や葉を除いているらしいキュッ、キュッという音や、臼などが動くか試しているらしい石の擦れる音がする。
それから、何か乾燥した種のようなものがガラスの表面に当たる音。

曖昧な視界の中で、音が不思議と強く意識される。
音のする方向と質感で何となく、牧志が材料を容器にあけたり量ったりしている姿が見えるような気がした。
佐倉 光
視覚が白く霞んでぼやけて失われ、かわりに音がくっきりとした形を持って聞こえてくる。
細かい粉のような者が落ちる音、牧志の指先が滑る音、普段なら絶対に認識できないような音が鮮やかに脳裏に像を結ぶ。

まだ大丈夫。
視覚が失われても、別の情報がある。
これが全て失われないうちに帰るのだ。
牧志 浩太
牧志はこちらに背を向け、淡々と作業に没頭していた。
紙面を行きつ戻りつさせながら、慎重に工程を追う音が聞こえる。

やがて、こりこりという心地のよい削り音が彼の手元からしはじめた。

こんな状況だというのに、不思議と静かな時間だった。
佐倉 光
牧志に聞こえないであろう事をいいことに、ずっとここに来てから見たものや、想像されることなどをぽつぽつと呟いていた。
牧志が薬を作る音と、自分の声を耳で聞くと不思議と落ち着いてくる。
牧志 浩太
1d100 77 〈医学〉 Sasa BOT 1d100→68→成功
牧志 浩太
本を閉じる、ぱたんという音がした。
区切りをつけるように軽く伸びをして、牧志はこちらを振り返る。
KP
二人とも【POW】×1で判定。
牧志 浩太
1d100 11【POW】 Sasa BOT 1d100→3→決定的成功クリティカル)!
佐倉 光
おお
1d100 15【POW】 Sasa BOT 1d100→12→成功
佐倉 光
ぬお
KP
わお。牧志は次回の【POW】ロール免除。
あ、と思ったけどここで0になってしまうから、そもそも次回の【POW】ロール発生しないな。
今回のクリティカルボーナスは【POW】ロール免除ではなく、減少値なし、とします。
佐倉 光
はーい
佐倉 光
〈目星〉 30→25

佐倉 光
「できた?」
なるべく口を大きく動かし、単語は短く。
シローに語りかけるよりももっと単純に。
牧志 浩太
牧志はあなたの口をじっと見て、そこからあなたの意図を読み取ろうとしていた。

耳をそばだてるような素振りは、もうない。
牧志 浩太
「できた、たぶん」
牧志はあなたに小さな紙の包みを差し出す。柔らかい土のような手触りと、清涼感のある匂いがした。
牧志 浩太
「ぬる、って。目の下に。
さすんじゃなくて、よかった」
KP
また少し、辺りを漂う香りが強くなる。
牧志の姿を、白い霧が隠してゆく。
KP
目薬1回分ができました。
すぐ使うことも、後で好きなときに使うこともできます。
牧志 浩太
このまま難聴薬も作る?
佐倉 光
作っとこうか。ここで時間を一度潰した以上、作りきらないと多分意味がない。
幸いクリティカルしたしね。
佐倉 光
ドキドキいたしますねぇ。
このペースだと視覚も聴覚も死んでしまう。
薬は意味があるのかどうか。
KP
死んでしまう。でも佐倉さんの視覚がなかなか頑張ってるのがすごい。
佐倉 光
確かに、目の中にあまり入れたくはない。
霞む白のなかにいる牧志に笑いかける。
佐倉 光
「ありがとう」
佐倉 光
「耳のほうも」
自分の耳を指した。
佐倉 光
今はまだ、こちらの目が辛うじて機能しているから、牧志がこちらの意図を受け取れる状態か判別できる。
佐倉 光
しかし、これ以上視力が落ちるとそれも難しくなってくるだろう。
牧志に触れられる位置にいないと、確実に伝えられるものがなくなる。
佐倉 光
しかし余計なことは口に出さないことにする。
一度に伝える情報は絞らなければきっと伝わらない。
牧志 浩太
「うん」
霞む白の中で、牧志はあなたに笑い返す。
再びあなたに背を向けて、緑の上に並んだ器具に手を伸ばした。
佐倉 光
意識的に器具の音を聞いて、今起きていることを想像してみる。
牧志が材料を手に取る音。汚れを除く音。乳鉢に手を触れ、ずらした音。小さく息をついた。こちらを見た? いや、器具を確認したのか。

それが合っているかどうかなんて分からない。しかしそうやって聴覚から得られる情報に集中することで、より鋭敏になってゆく気がした。
自分の呼吸音を意識から除くのはなかなか難しいが、こうして少し意識しておけば少しクリアに聞こえるようになる気がする。
牧志 浩太
容器の中に蔦が這っていたのか、無意識に小さく声を発しながら蔦をちぎるぶちぶちという音。
嗅覚を塞ぐように立ち込める香りの中でも、ちぎれた瞬間に舞う草の匂いが何となくイメージできた。

うっかり乳鉢に手を当ててしまったのか、少し強くガチッと音が鳴る。
容器のガラスにひびの入る音がしたが、牧志はそれに気づいていないようで、作業を続ける手に驚きの気配がない。
佐倉 光
「今ガラスが……」
もう言っても聞こえないかな。
音のする方に近づいて机を拳で叩き、振動と動きで注意を引く。
佐倉 光
「ガラス」
言いながら手に持つ道具を叩くようなアクションをする。
牧志 浩太
集中していた所に突然振動が来たからか、牧志はびくりと体を震わせてこちらを振り返った。
身構えて辺りを見回し、それからあなたの手振りに気づいたのか小さく息を吐く。
牧志 浩太
「割れてたのか。気づいて、なかった。
ありがとう、助かった」

割れた容器を向こうに退けたのか、苔の上を硬いものが滑る微かな音がした。
佐倉 光
頷いて、机から手を離す。
気付いて貰えて良かった。
佐倉 光
何とかなるものだな。

視覚情報がないのは相変わらず不安だが、きっと牧志の目は見逃さない。
見えすぎて困るくらい見えるからな。
思わず少し笑った。
KP
あなたの微かな笑いが空気を揺らした。

この白い霧が完全に視界を閉ざしたら、あなたの世界はどうなってしまうのだろうか。
それでもあなたは彼の声を聴き取り、彼の眼はあなたの存在を捉えるだろう。

草を手が掻き分ける音が、今も聞こえる。
近くの草を引き抜きその先で臼に付着した粉をこそげる音、紙を折る微かな音。
牧志 浩太
1d100 77 〈医学〉 Sasa BOT 1d100→29→成功
牧志 浩太
ふう、と大きくついた息が空気を揺らした。
辺りをもったりと占める甘い香りが、空気の動きに従って揺れる。
KP
佐倉さんのみ、【POW】×1で判定。
佐倉 光
1d100 15【POW】 Sasa BOT 1d100→76→失敗
〈目星〉 25→15
〈聞き耳〉 84→89
佐倉 光
大分視界が白くなってきた。
牧志の表情を読むのもぎりぎりってとこだ。
この状態じゃ調べ物は無理だろうな。
佐倉 光
「終わったのか?」
牧志 浩太
「うん、終わった」
彼が頷く姿が、白い霧の向こうに見える。
白い霧の合間に彼の眼や口元などが覗くように見える視界は、世界が引き裂かれたようでもあった。
牧志 浩太
「これも、塗るやつ、みたいだ。
耳の中に塗る、って」

牧志はあなたの手に、小さな包みを乗せる。
かさりと紙が擦れる音がして、少し温かい塊の感触を包みの中に感じた。
佐倉 光
見下ろす。案の定、よく見えないな。
佐倉 光
「サンキュ」
佐倉 光
「持ってて。もう俺、ほとんど見えてねぇんだ」
小さく肩をすくめて薬を牧志に押しつける。
牧志 浩太
「そうか。俺も、ほとんど、聞こえてない。まずいな」
包みを受け取り、ポケットに入れた音がした。
佐倉 光
さて次はどこに行くべきか。
さっき幻影が見えた部屋は、手元にある除草剤で何とかなるレベルなんだろうか。
KP
幻影が見えた部屋は、奥から香りが吹きつけてきたことしか分からない。
幻影と霧が邪魔になって奥の様子は分からなかったし、あの時牧志は完全に取り込まれていた。
佐倉 光
「牧志、戻ってみよう」
今自分がどの方向を向いているのかも良く分からなくなっている。
佐倉 光
「分かるか、もどる、だ」
牧志 浩太
声が返ってくるまでに、少し間があった。
牧志 浩太
「さくらさん、そっち、壁だ。
次はどうしよう、って、話だよな?」
佐倉 光
頷く。
佐倉 光
「もどる」
佐倉 光
どう言えば伝わるかな。
佐倉 光
「くさ、とびら」
言いながら両手で何かを覆うジェスチャー、
それから手首を反らして覆われた状態を解放して扉を開ける動き。
さっきそんな話をしたし分かって貰えるとは思うが、
確実な意思疎通はどうしても必要だ。
牧志 浩太
「あ、……そうか。

あの、蔦の部屋の話、だよな。
ああ、戻ってみよう。
除草剤で、開けられる、かもしれない」

牧志はあなたの手を取る。
肩を貸すようにして、扉の方向らしい方にあなたを導く。
佐倉 光
大きく頷く。
牧志の肩を借りて歩いて行こう。
大体碌な目に遭わないけど、最近体に害が出ることが多い気がするな。
牧志 浩太
「そんな場合じゃ、ないけど。
少し、謎解き、みたいだ」

あなたに肩を貸して歩きながら、牧志がぽつりと言った。
佐倉 光
「暢気だなぁ」
思わず笑ってしまう。
最近俺の方がシリアスになりすぎだよな。
いつからだろうな、危険を無邪気に楽しめなくなったのは。
牧志 浩太
「暢気だって、言った?」
苦笑いしているような声が、白い霧の中で揺れる。
佐倉 光
《メギドラオン》の発動見ながら笑ってた佐倉はもういないんだ。
KP
危険を味わわされすぎて、失いたくない友達ができて、続いてほしいと思う日常ができてしまったんだなぁ。
佐倉 光
クリア目指そう、と親指を立ててみせる。
植物に覆われた扉を目指して歩こう。
牧志 浩太
「ああ。謎解きも、脱出も、クリアして、帰ろう」
KP
覚束ない足元を辿り、一歩一歩もと来た道を戻る。
見覚えのある扉の前で、牧志は足を止めた。
牧志 浩太
「少し、試してみる。待ってて」

牧志があなたの肩から腕を離す。
彼の体温と感触があなたの手から離れ、白い霧の中にあなたは置き去られる。
佐倉 光
白く喰われた視界にはまだぼんやりと牧志の背が見える。
牧志の息づかいが、聴き慣れた足音が聞こえる。
まだ、大丈夫。
KP
牧志が扉の前に屈み込む。
僅かな噴霧音。

直後、ぎしり、と蔦が軋んだ。
長いもので壁を何度も叩くような音がして、暫く待っていると静かになった。
牧志 浩太
「やれそうだ。随分、効く」
佐倉 光
音を聴くに、随分と暴力的な効き目の除草剤みたいだ。
うっかり吸わないようにした方が良さそうだな。
佐倉 光
「良かった。進めそうだな」
ここの植物は随分と危険な物が多そうだ。
できる限りむやみと近寄らない方がいいだろう。
牧志が戻ってくるまでは動かないようにしよう。
もう自分の視界は信頼できるレベルではない。
牧志 浩太
「ああ。終わったら、知らせる」
牧志 浩太
苔の上を踏む足音。
吹きつける音が先程より長く聞こえて、牧志はすぐさま走って逃げたらしい。
KP
びたんびたんと何度も壁を、床を叩く音。
蔦というよりも、何か長い生き物が暴れもがいているような音だった。
佐倉 光
「……それ植物?」
聞こえているかどうかはともかく、呟いてしまった。
ヘビか何かか。
KP
……次第に音が弱まり、静かになっていく。
すっかり音が途絶えた頃、牧志が恐る恐る前に踏み出した。
牧志 浩太
何か枯れたものを折ったり、剥がしたりする音が聞こえてくる所からすると、蔦で合っていたのだろう。
蔦とは思えない音だったが。そもそも蔦は自分で動きだしたりしないが。
牧志 浩太
「もう、動かない、みたいだ。
扉も、きれいになった」

牧志があなたの手を取り、再び肩を貸す。
佐倉 光
「サンキュ」
肩を借りて前へ進む。
これだけ足手まといなのも初めてかな?
いや、死体だったこともあるって言ってたっけ。
残り僅かな視力を駆使して、せめて転んだりしないようにしよう。
扉を潜る前に物音を聞くために立ち止まる。
KP
物音を聞こうとするなら、〈聞き耳〉で判定。
但し、これは元の値での判定とする。
佐倉 光
おや
1d100 79〈聞き耳〉元値 Sasa BOT 1d100→63→成功
牧志 浩太
1d100 97〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→25→成功
KP
あなた達は同時に気づくだろう。
扉の向こうから、辺りに重く立ち込めている香りをもっと濃くしたようなものが、微かに漏れ出ている。
それはあの楽園で嗅いだものより、なお濃い。
佐倉 光
「ここが元凶か?」
危険な気がする。
あの楽園より危険な匂いがする。

ここを何とかしてしまえばこの異常は治まるのだろうか?

さっきの楽園でやられかけたことを考えれば、中に入るのは危険ではないのかという気がするが……

足を止めて、眉根を寄せる。
佐倉 光
「牧志」
相談したい。
ここは動きを間違えるとまずいやつだ。
牧志 浩太
「ああ。どうするか、相談したいん、だな?」
扉の前で、牧志はあなたと共に足を止める。
佐倉 光
KP、扉の向こうから妖精の声は聞こえるかな。
KP
改めて〈聞き耳〉をどうぞ。こちらは補正込みの値。
佐倉 光
1d100 89〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→42→成功
牧志 浩太
1d100 5 Sasa BOT 1d100→87→失敗
佐倉 光
うーん。幻の影響を受けて上がる〈聞き耳〉でだけ聞こえる妖精の声?
ここにあるのがリアルの花?
KP
あなたはそれを耳にする。

あの妖精たちの笑いさざめく声が、扉の向こうからあなたを誘うように聞こえてくる。
佐倉 光
「おなじ こえ まぼろし」
扉の向こうを指して言う。
手を組み合わせてチョウチョのような動きをしながら「こえ」

なかなか判断が難しいなぁこれ。
とりあえず牧志に訊いてみよう。
佐倉 光
「まえの まぼろし」
今来た方と思われる方を指さして言う。
佐倉 光
「なにか みえた?」
両手を眼鏡のようにしてぐるりと見回すアクション。
多分これだけじゃ伝わらないな。
牧志 浩太
牧志はあなたの口をじっと見る。
牧志 浩太
「前の……?
他に、扉は、なかったんだ。
あの部屋の、奥は、わからない、けど。

いままで、通った、部屋と、ここ、しか、なさそうだ。
外に、出る、扉も、ない」
佐倉 光
ここでの問題はふたつ。
奇妙な植物に感覚と心を冒されてしまうこと、それから何処とも知れぬ場所であること。
後者は今のところどうしたらいいか皆目見当がつかない。
前者については、気候を弄って植物を枯らしてしまえばなんとかなる可能性がある。
あとはハンマーで温室を壊すか、だ。
しかし魔法書はそう簡単に理解できそうな代物ではなかった。
温室はこの扉の向こうである可能性があるが、多分無策で入るのは危険だ。
佐倉 光
外から壊せる場所がないか調べてみるか……?
佐倉 光
ここで意図を伝えるために薬を使うべきか悩むわね!
最初から幻を見せられている、と思うべきかなこれ。
そしてこの部屋に入るなら薬を使った方がいいだろうな。
佐倉 光
外出られないんだった、思い出した。
牧志 浩太
少し、考えるような沈黙が落ちる。
牧志 浩太
「この、匂いの、せい、だよな、きっと。
この中に、化石の花、が、あるのかな。
匂いを、なんとかできれば、いいんだけど」
佐倉 光
「化石か……」
ふと思いついて、両手で何かを持って振り上げ、振り下ろすような動作をする。
佐倉 光
「壊せないかな」
それが名称通りの石なのかどうかは良く分からないが……
牧志 浩太
「そうか、壊す?」
あなたに釣られて手振りをしかけたのか、牧志の腕が少し動きかける。
牧志 浩太
「薬の、部屋。
固いのを、つぶすやつも、あった」
牧志は考えながら、大きく口を開いて言う。
牧志 浩太
「あと、かんがえてた。
においなら、つつむ、とか、うめるとか」
佐倉 光
「つつむ、うめる……」
なるほど。小さい物ならそれも可能だろうな。

両手をぱっと広げる。
佐倉 光
「おおきいのそうぞうした」
そうだな。こんな広範囲に影響が出るのだから巨大なのだろうと思い込んでいた。
そうとも限らないよな。
牧志 浩太
「そうだな、大きかったら、無理だけど」
佐倉 光
さて、中の様子は見たいが無防備で入りたくはない。
佐倉 光
「はなに、つめる」
えーと、持ち物はなくなったんだったな。
鼻血を出した時のことを思い出しながら、鼻の穴に詰め物をする手振りをする。
佐倉 光
「つめられるもの」
牧志 浩太
「鼻に、つめるもの、か?」

牧志はしばらく沈黙した。
考えているというだけでなく、何となく躊躇いを含んだ沈黙だった。
牧志 浩太
「……苔なら、いっぱい、ある」
佐倉 光
「苔……」
なるほどな。
佐倉 光
「感覚器を冒してくる謎の臭気、においを感じるかどうか、が関係するかどうかは正直よく分からないところだ。
呼吸するだけで、粘膜に接触するだけで 影響が出ている可能性もおおいにある。
それでもやってみる価値はある。
それから薬だ。少しでも状態を回復させて不慮の事態にも少しでも正しい対応ができるチャンスを作るために薬を飲んでおくべきだろう」
自分の考えを一気に喋りきって、それから一呼吸。
牧志 浩太
「まって、速い……、」
牧志はそう言いかけて、あなたが伝えるつもりではなく、考えを纏めるために喋っていると気づいて口を閉じる。
佐倉 光
「くすり、こけ、くれ」
手を出す。
牧志 浩太
あなたの口の動きがスローダウンしたのに気づいたか、牧志の視線を口元に感じた。
佐倉 光
「潰すもの、掘るもの、包むもの、見た?」
つぶす、で掌に拳を当ててゴリゴリとこすり、
掘る、で、手をスコップのようにして掘り返す動作、
包む、で風呂敷を包むような動作をする。
佐倉 光
「あれば、さきに」
牧志 浩太
「潰すのは、あった。薬の、部屋だ。
重い。持ってくる、無理。
包むのは、」
牧志 浩太
牧志は数度辺りを見回したようだった。
何もいないことを確認して、自分の体に手を伸ばす。
牧志 浩太
「これで、なんとか」
着ていたシャツを脱ぎ、インナー一枚になる。
あなたの手に、汗臭い布の感触が触れた。
佐倉 光
「やっぱそうなるか」
言って自分も上着を脱ぐ。
またこれ犠牲になるかな。
纏めて持つ。

ひとこと
佐倉 光
少しずつ失われてゆく感覚。
意思疎通をするため、生き延びるため、二人は少しずつ探りながら進む。


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【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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