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こちらには
『惑いの欠片』のネタバレがあります。

本編見る!
KP
香りが先程より薄らいだのに気づいて、あなたは目を開く。

辺りの風景ががらりと変わっていた。
いや、それとも、ここは見知らぬ部屋なのだろうか?
牧志 浩太
「え、どこだ……、ここ」
牧志の驚いた声が横から聞こえた。
KP
見ればあなた達の背後にあったはずの扉は忽然と消えており、代わりに、奥の壁と右側の壁に扉が一つずつ見える。
真っ暗闇だったはずなのに、どうして奥の扉が見えるのか。
そこはもはや暗闇ではなかった。

辺りには得体の知れない花が咲き誇り、その花が最初に嗅いだのと同じ香りを微かに放っている。
その花々の傍らに生えたヒカリゴケが、エメラルド色の光を放っているのだ。

辺りはぼんやりと霧がかって、奇妙に幻想的な光景を作りだしていた。
佐倉 光
「どうなってるんだ。
また移動でもさせられたのか、幻でも見てるのか……」
佐倉 光
「まあ……見やすくて調べやすくて助かるな」
ぐるりと部屋を見回して、何か奇妙なものはないか探そう。
佐倉 光
においは弱くなったということかな。
KP
弱くなっている、で合っています。
佐倉 光
なんだろ、過去の情景でも見せられてんのかなぁ。
佐倉 光
スマホはともかく、パソコンは持っていない方がいいかもしれませんね?  タッチタイプで最低限の会話できちゃう。
KP
ここは何もない部屋のようだ。
蔦が道を塞ぐようにみっしりと絡みついた奥の扉、それから古ぼけた右の扉くらいしか、目に入るものはない。

天井では、点いていない電灯が苔にまみれて揺れていた。

暗闇よりは随分ましだが、辺りを漂う乳白色の霧のせいで、周囲は少々見えづらい。
牧志 浩太
「……?」
牧志が何かを気にするように、耳の辺りを指で叩いたり、耳の穴に指を入れてほじったりしている。
佐倉 光
「割と最近使われていたような建物の廃墟か……
何なんだろうな、ここは……」
周囲を見回して、牧志の奇妙な様子に気付く。
佐倉 光
「どうした? 虫でも入った?」
牧志 浩太
「ああ。さっきから、音がこもって聞こえる気がしてさ。
この部屋が変なのかと思ったんだけど、佐倉さんの声もちょっと聞こえづらいみたいだ」
KP
その意味を考える前に、あなたは重大なことに気づく。

腰につけていたはずのポーチが、ない。
牧志の腰にあったベルトポーチもなくなっている。
ポケットに入れていただろうスマホの重さもない。

夏の暑い日だったため、あなた達は薄着だ。
ジャケットやパーカーのポケットなどに望みをかけることもできない。
正体を晒したがらないあなたは薄めのパーカーやフードつきのウィンドブレーカーなどを着ているかもしれないが、その貧弱なポケットには何も入っていない。

あるのは、直前に牧志が手に持っていた懐中電灯だけだ。
二段階とかやめてほしいものである。
佐倉 光
こちらのスマホはどうだろう、ダメで元々と腰に手をやり……
佐倉 光
「あぁぁぁ!?
後出しで没収とか止めてくんないかなぁ!?」
思わず腰の辺りを叩いて叫んでいた。
牧志 浩太
「えっ? ……俺のもだ。ハンカチまでない」
牧志もズボンのポケットを探るが、本当に何もないようだ。
牧志 浩太
「後出しは初めてのパターンだな……、こういうのもあるのか。困る。
懐中電灯、持っててよかった」
佐倉 光
「音がこもってる?
いや、俺の方はそんなことはないけど……
気圧か何かかな」
言って、手元を見た。
とても嫌な感じがした。
屋内なのに霧。
手元も何だか霞むような白。
佐倉 光
「なあ、牧志、この部屋に霧出てるか?」
牧志 浩太
「えっ、霧?
いや、出てないけど」
確かめるように辺りを見回し……、霧などない、と牧志は言った。
佐倉 光
「……」
どうしようもなく嫌な感じがする。
佐倉 光
「俺の視界には白い霧が出ているんだ。
いや、多分目がやられているんだな」
牧志 浩太
「……前の時と同じか、もしかして。
ってことは、俺の耳も、そうなのか」
KP
あなた達が自らの身に起きたことに気づいた時……。
ふと、辺りを漂う香りが少し強くなった気がした。

二人とも、【POW】×5で判定。
佐倉 光
1d100 75【POW】 Sasa BOT 1d100→18→成功
牧志 浩太
1d100 60【POW】 Sasa BOT 1d100→67→失敗
牧志 浩太
あなたの視界を漂う白い霧の中、牧志が微かに顔をしかめた気がした。
佐倉 光
「牧志?」
反射的に声をかけた。
牧志 浩太
「いや……、少し耳が詰まった気がして。やっぱり聞こえづらい。

この香りかな、耳に入ってくるような、変な感じがする」
牧志は心地悪そうに耳の中を掻く。
KP
ここでルールを開示。

ここでは時間が経過する毎に次第に、
・佐倉さんは目が見えにくく
・牧志は耳が聞こえにくく
なっていきます。
1部屋につき1回の【POW】ロールが発生。失敗すると〈目星〉or〈聞き耳〉が-10。
時間のかかる行動を取った場合、追加で【POW】ロールが発生。
【POW】ロールの倍率は次第に低く(【POW】×4→その次は【POW】×3……)なっていく。

〈目星〉or〈聞き耳〉が50を割った場合、
 ・〈目星〉が-10される毎に〈聞き耳〉+5
 ・〈聞き耳〉が-10される毎に〈目星〉+5

(ある感覚が塞がると、他の感覚が鋭敏になるため)
KP
現在の値は以下の通りです。
佐倉さん:〈目星〉 60
牧志:〈聞き耳〉50
佐倉 光
はーい

佐倉 光
「お前は耳、俺は目……
この差がどうしてかは分からないけど、異常が出てるんだな。
時間をかけるのはまずい、早いところ調べよう」
と、いう言葉も聞き取れなくなってしまう可能性がある。
牧志 浩太
「そうみたいだな。しかも悪化する」
佐倉 光
「俺の方は耳に異常は無いから、何かあったら声で教えてくれ。
俺は、身振り手振りで何とかしてみる。
とにかく、離れないで行こう。この状況で分断して感覚が死ぬとまずい」
牧志 浩太
「分かった、何かあったら言って伝える。
くそ、持ち物が何もないのが辛いところだな」
牧志 浩太
牧志は頷き、あなたの手を取る。

あなたの声に耳を向ける牧志の姿は、確かに聞き取りづらくなっているのだと感じさせた。
KP
奥の壁に蔦に覆われた扉が、右側に古ぼけた扉が見える。
佐倉 光
「まずはツタがない扉の方いってみよう。やられるのが視覚と聴覚だけとは限らない。少しでも感覚が残っている時間を長く保つなら、不審な植物からは離れたいんだ」
ゆっくり、大きめの声で言い、古い扉の方へ手を引く。
牧志 浩太
「だな。あの蔦、一瞬だけど動いて見えたような気がした。
あまり近寄りたくない」

牧志も普段より大きく頷いて、古ぼけた扉の方へ向かう。
自分自身にも聞こえづらいのか、牧志の声も少し大きかった。
KP
古ぼけた扉に、鍵の類は見当たらない。
佐倉 光
扉の向こうの気配を探って、扉を開けよう。
KP
気配を探るなら〈聞き耳〉をどうぞ。
佐倉 光
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→74→成功
KP
扉の向こうは静まり返っていて、動くものの気配も物音もしない。
佐倉 光
「気配はない」
わざと声に出して扉に手をかけ、開ける。

KP
あなたは扉を開ける。
草の緑臭い匂いが鼻をつく。

そこは初め、森か草原と見えた。
辛うじて書斎か何かだったと分かる室内は、すっかり花と蔦と苔に覆われ、緑に還ろうとしていた。

視界を漂う白い霧と、曖昧なエメラルド色の光のせいで、どこか水の底のようにも見えた。
牧志 浩太
「あれは……、佐倉さん、本棚がある」
KP
牧志が言う方をよく見れば、四角い大きな緑色の出っ張りの中に、確かに革の色をした背表紙らしきものが見える。

その前にある緑色の何かは、あれはかつて机と椅子だったものだろうか。
佐倉 光
「くそ、一面緑で見えづらいな。視界のせいもあるかも知れないけど。
本か……まだ読めるかな」
足元に気をつけながら机と椅子に近づいていこう。
KP
あなたは頼りなく霧がかる視界の中、床の凹凸を足先の感覚で辿りながら、机と椅子に近づく。
牧志 浩太
牧志があなたに手を貸し、あなたを導く。
「佐倉さん、そこ出っ張ってる。気をつけて」
佐倉 光
出っ張りに引っかかりかけて牧志の手に縋る。
「視界がぼやけてかすんでる。
自覚よりやられている気がするな。
視界は緑一色だし変に揺れててあまり頼りにならない」
KP
机はすっかり緑に埋もれており、そこには何も残されていないように見えた。

〈目星〉で判定。
KP
ここで補足。
 ・減少する〈目星〉は視覚
 ・減少する〈聞き耳〉は聴覚
を意味します。嗅覚など、視覚・聴覚でないものに対する判定は元の値となります。
逆に、視覚 or 聴覚に依存する技能は影響を受けます。(KPの任意でマイナス補正)
佐倉 光
1d100 60〈目星〉
Sasa BOT 1d100→21→成功
佐倉 光
頑張って目をこらした。
牧志 浩太
1d100 98〈目星〉 Sasa BOT 1d100→96→致命的失敗ファンブル
KP
ああっと
佐倉 光
わぁ
98あってちゃんと下回ってるのにファンブル
KP
では、ファンブった牧志だけ追加で【POW】ロール1回。
牧志 浩太
1d100 60【POW】 Sasa BOT 1d100→81→失敗
あ、×5のまま振っちゃった。まあ追加分だしってことで。
〈聞き耳〉 50 → 40〈目星〉 98 → 100
佐倉 光
〈目星〉がとうとう限界突破!
牧志 浩太
牧志はその一瞬、あなたの声に反応しなかった。
牧志 浩太
「ええと、佐倉さん、何か言ってる、よな? こもってよく聞こえない……」それから、心細そうに言う。
KP
頑張って眼をこらすと、ちらつく霧と一面の緑の合間に、微かにあれは紙だろうか? 何か薄いものが見える。
佐倉 光
「思ったより進行早ぇな」
大袈裟に首を振ってみせ、ぎりぎり見えた薄いものに手を伸ばして取り、牧志に渡す。
牧志 浩太
「みたいだ、参ったな……。
これ、紙か。メモか何かみたいだ」
牧志はメモを広げ、あなたにも近づけて見せる。
☆メモ
「化石化したその花は、麻薬などよりも危険で、官能的で、素晴らしく楽園を見せてくれる。
 しかし、楽園を壊すのもその花である。」
KP
苔の汁が付着したメモには、少し酸化したインクの筆跡で、そう書かれていた。

よく見るなら、再度〈目星〉
佐倉 光
「楽園……? 幻覚ってことか?」
牧志 浩太
「見せてくれる、ってことは、そういうのかもしれないな。
俺達、幻を見させられてるのか?
壊すのもその花……、その花をどうにかすればいいのか?」
佐倉 光
「楽園には見えない」
大袈裟に渋面を作って首を振った。
牧志 浩太
「だよな。ただ見づらくなったり聞こえづらくなったりするだけだ」
佐倉 光
1d100 60〈目星〉 Sasa BOT 1d100→2→決定的成功クリティカル)!
佐倉 光
あらあら?
KP
おお。では、佐倉さんはこの部屋で本来発生する【POW】ロールを1回免除。
牧志 浩太
1d100 99〈目星〉 Sasa BOT 1d100→31→成功
KP
温室にて栽培を試みる。
メモの末尾に小さくそう走り書きされていた。
KP
この辺りで【POW】×4で判定。
佐倉さんは免除のため、牧志のみ。

また、ここからPOWロールに成功しても、〈目星〉or〈聞き耳〉が-5されます。
佐倉 光
ゴリゴリやられるぅ
KP
なんだか牧志だけどんどん削れていく。
佐倉 光
ここは判定しない佐倉も〈目星〉減るんですかね?
KP
判定しない佐倉さんは減りません。
牧志 浩太
1d100 48【POW】 Sasa BOT 1d100→65→失敗
〈聞き耳〉 40 → 30
KP
ふと、辺りに漂う香りがまた強くなった。

周囲は花の薄くねっとりとした香りと、噎せ返る程の草いきれが入り混じり、動くものの気配などしないというのに、ひどく生命力だけを感じさせた。
佐倉 光
鼻をつまんでみせる。
きっとこの匂いのせいだ。
最初からこの匂いだけが強烈に感覚に割り込んでくる。
KP
鼻をつまんでも、鼻孔の隙間から開けた口から、いや開いた眼からすら、香りはあなたの中に忍び込む。香りが体内に積み重なり腹の奥でとぐろを巻くような気さえした。
佐倉 光
「本棚見てみようぜ」
と声をかけて反応をみる。
牧志 浩太
「うん、ああ。見てみよう」
牧志は頼りなげに頷き、本棚に顔を向ける。
KP
本棚は苔に覆われて緑色の突起と化していたが、その下から微かに背表紙の色が覗く。
すっかり朽ちているものがほとんどだが、中には無事そうなものもありそうだ。

探すなら、〈図書館〉で判定。
ただし、佐倉さんは-20%。
佐倉 光
1d100 65 弱体化〈図書館〉 Sasa BOT 1d100→68→失敗
牧志 浩太
1d100 82 〈図書館〉 Sasa BOT 1d100→75→成功
佐倉 光
目が霞む……そこに本があることは分かってもどれも同じにしか見えない。
KP
視界の中心に霧が居座って、文字を読もうと目を向けると霧もそこへ移動してくる。
あなたが文字を読もうとするのを妨害するかのように居座る霧が邪魔でたまらない。
1d2 Sasa BOT 1d2→2
牧志 浩太
「これ……、薬の作り方だ。目薬だって。
しかも、材料もついてる。
道具さえあれば作れそうだ」
佐倉 光
「目薬? この目、治るのかな」
牧志 浩太
「かもしれない。ただ、道具がないな。
どこかにあればいいんだけど」
KP
目薬の作り方と材料を手に入れた。
本棚にはまだ読めそうな本が残っている。
時間がかかるのを覚悟でなら、もう少し探していくことができるだろう。
(※再度本棚を探すことができますが、【POW】ロールが1回発生します)
佐倉 光
そりゃ探してみるよ。情報は力だ。
そして、情報を得られる時間は刻一刻と減っている。
KP
再度探すなら、〈図書館〉で判定。
ただし、佐倉さんは-20%。
佐倉 光
1d100 65 弱体化〈図書館〉 Sasa BOT 1d100→41→成功
牧志 浩太
1d100 82 〈図書館〉 Sasa BOT 1d100→71→成功
佐倉 光
内眼角を指先で押しながら必死に目をこらす。
KP
あなたは霧がかる視界で必死に目をこらし、文字の判読に向かない視界の周辺部で、どうにか意味を拾おうとする。

それは、誰かの手記のようだった。
あちらこちらへと乱れた筆跡は極めて読みづらく、現在の話のすぐ後に幼い頃の話が出てきたりする。

その中からどうにか拾えたのは、この程度の文章だった。
あの香りはわたしをまどわせtまらない、妖精がてをのばしてまきねわたし、うつくしいうるいわしらくえんが、わたしをyんで、夢とも異なる強力なまろぼし、捨てられぬ、あいしている、らくえんからはあの甘い抱擁からは、わらいごえからは逃れられnい、


 わたしはしあわせだ


KP
最後の一文にだけ不意に整った文字は、かえって不気味さを感じた。

SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D3》。
佐倉 光
1d100 75 《SANチェック
1d100→99→致命的失敗ファンブル
SAN 75→72
牧志 浩太
1d100 52 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→35→成功
SAN 52 → 51
佐倉 光
「……【HAPPY】?」
【HAPPY】……真・女神転生TRPGなどに存在する状態異常。強制的に幸福に包まれてしまい、まともにものが考えられなくなり確率で行動不能になる。
KP
あなたはどうしてかそのきもちがわかってしまうようなきがした。
佐倉 光
ソレは異常だ。異常だ。異常だと分かっているのに、自然にこころのなかにすべりこんでくる。
牧志 浩太
「……完全に駄目になってるな。
そう、【HAPPY】って感じだ。
この香りにそういう効果があるとか? 今の所そんな気は全然しないけどな…… 佐倉さん?」
佐倉 光
しあわせだ。なにをしあわせだとかんじている? ここにはなにもない。蝕まれている。それなのに?
KP
ふわふわと頭の中で香りが膨れ上がっていく感覚。その文章を必死に追うあなたにはどうしてか、その感覚が体験できてしまう。頭の奥からあの香りが放たれている。うつくしいうるわしいらくえんがわたしをよんでいる。
佐倉 光
「…………」
口元が笑っている。何も楽しくないのに?
KP
あまいかおりがする。
佐倉 光
きもちいい。しあわせだ。そんなはずはないと理解している。
あり得ない齟齬だ。気持ち悪い……
佐倉 光
「しあわせ過ぎて酔いそう」
牧志 浩太
「佐倉さん? ……佐倉さん!」
牧志がただならない気配を感じ、あなたの肩を掴んで呼びかける。
KP
視界が白く霧がかっていく。その霧からあまいかおりがするような感覚にとらわれる。気持ち悪い。侵されている。蝕まれている。何かきもちいいものに蝕まれていく。きもちわるい。うつくしい。
牧志 浩太
「どうしたんだ。佐倉さんまで【HAPPY】になっちゃったのか」
KP
では丁度いいところ、二人とも【POW】×3で判定、どうぞ。
佐倉 光
1d100 45 【POW】×3 Sasa BOT 1d100→77→失敗
〈目星〉 60→50
牧志 浩太
1d100 36 【POW】×3 Sasa BOT 1d100→32→成功
〈聞き耳〉 30 → 25
KP
香りが強くなる。あなたの視界を霧が侵していく。あまい香りのする霧だ。
佐倉 光
「う、あぁ……まずいな、これは……まるで」
視界が濁ってゆく。見えなくなる。
顔を覆って目玉を揉む。恐らく意味はないだろうと思ったが、そうせずにいられなかった。
牧志 浩太
「さくらさん、だめだ、しっかりして」
霧の中から腕がにゅっと出てきた。
牧志があなたの肩を掴んで揺さぶる。
どこか覚束ない声が、あなたの耳に届く。
KP
顔を覆い目を閉じれば視界から緑色や花や光が消え、脈打つ瞼の裏の風景に、あの乳白色の霧だけが漂っている。
佐倉 光
「大丈夫、大丈夫、まだ、見えてる……」
呟いて目を開ける。
それからこの声は届かないかも知れないのだと思い、
幻を祓うように頭を軽く振ってから大きく頷いて見せた。
牧志 浩太
「だいじょうぶ、まだ聞こえる。
自分の声が、歪んできこえるんだ。おれ、まだちゃんとしゃべれてる?」

牧志の声はどこか覚束なく不安そうで、それでもあなたにはきちんと届いた。
目を開け大きく頷くあなたの姿も、彼にはきちんと見えたらしい。
彼はそっと、あなたの肩から手を離す。
そして、一冊の小冊子をあなたに見せた。
佐倉 光
「大丈夫、聞こえる」
牧志の問いに大きく頷いて、口を大きめに動かして返事をする。
牧志 浩太
「さくらさん、よかった、我に返ったんだな。
イワクラの水とかもってないし、どうしようかとおもった。

これ。あの手記に、はさまってたんだ」
KP
それは英語で書かれた小冊子のようだった。ざらざらとした紙に刷られたそれには、表大きな字で『やさしい植物の育て方』とある。
佐倉 光
「植物の育て方……」
あの強い匂いがする花が心を壊してくる?
それを中和するにもあの花が必要、ということだろうか。
佐倉 光
「俺、大分目がやられてるんだ。よく見ておいてくれ……頼む」
喋りながら自分の目を指さし、指先でバツを描く。
それからぼんやり見える牧志の目を指して、両手を合わせて拝むようなアクション。
見える内からボディランゲージをしておけば、いざ見えなくなった時にも通じやすいだろう。
牧志 浩太
「そっか、……よかった」
あなたが大きな仕草で返答すると、牧志はあからさまに安堵したようだった。
大きく身振りをするあなたと同様、意識的に声に乗せる感情を強めているのが分かる。
牧志 浩太
牧志は霧に霞むあなたの視界の中で、自分の目を指して頷く。
牧志 浩太
小冊子を開くのが見えたが、中を見てすぐに「だめだな、中身も英語だ」と呟く。
牧志 浩太
「確かに観葉植物みたいな絵があって、育て方? のことが書いてあるらしいけど。

あ、でも、ここに咲いてる花の絵はないみたいだ」
牧志はあなたに、観葉植物と如雨露や、葉と霧吹き、鳥の絵などが描かれた紙面を示す。
KP
これを読むには〈英語〉で判定。
書き方が難解なため、【知識】等での代用は不可。

また、中身を見て〈クトゥルフ神話〉成功すると、何か直感することがある。
ただし、佐倉さんは-10%。
佐倉 光
1d100 14 弱体化〈クトゥルフ神話〉知識 Sasa BOT 1d100→95→失敗
佐倉 光
あぶな
〈英語〉は初期値だなぁ。初期値いくつだろ。
KP
〈ほかの言語〉は初期値1%ですね。
佐倉 光
判定不能!
KP
1d100 32 〈クトゥルフ神話〉 Sasa BOT 1d100→1→決定的成功クリティカル)!
クリティカル!?
KP
!?
佐倉 光
ワーオ
異常な状態で覚醒したか。初成功おめでとう。
おめでたくない。
これ通常の成長ルールの対象に……ならんよな?
KP
弊卓のハウスルール、「そうそう振らない〈神話〉知識でジャストクリファンしたらせっかくだから成長チェックしていいよ」って書いてるんですが、まさか適用者が出るとは
佐倉 光
なるんかーい
1d10 でかすぎん?
それはさすがに1パー上がるとかではないかと思うのですが。
KP
さすがにこれはちょっとアレなので、「成長ロールで失敗したら+1%」くらいにしときます。
通常通り上がったらでかすぎるな。〈神話〉知識+10%とかそうそうない出来事すぎる。
佐倉 光
天啓じみたもんで10上がったら軽く精神崩壊起こすわ。
KP
そりゃそうだ。ハウスルール修正してきました。
失礼しました。
佐倉 光
びっくりしたなぁもう。
KP
お騒がせしました。
〈神話〉知識でクリファンしたら成長チェック、成長ロール失敗で1%成長」はあくまでハウスルールです。
本来はそもそも成長対象になりません。

KP
その小冊子の書き方は無駄に小難しい。図は分かりづらく絵は下手だ。
あなたは内容が取れないながら、これ、素人の書いた冊子なのでは? と思うだろう。
牧志 浩太
「あれ?」
牧志が呟いた。小冊子を横に向け、それから反対に向ける。
牧志 浩太
「これ、違う。何か、べつのこと、書いてある。かくしてあるんだ」
分かる、と牧志は呟く。読めないはずなのに浮き上がって見えると。

そう言われれば、あなたにも納得するものがある。オカルトの世界に時折あるような、これは暗号と寓意で本来の内容を隠した書物なのだ。
KP
クリティカルした牧志は、英語は読めないはずなのに、なぜかこれが《天候を変える呪文:不完全版》を記した呪文書だと分かってしまう。

習得には〈英語〉で1週間かかる。
佐倉 光
「なるほど、変なところで改行してるし、字は下手なのに空白だけが変に一定だ。暗号っぽいな。
俺、英語そんなに読めないしな……」

ふと、牧志の様子に気づく。
佐倉 光
「……どうかした?」
牧志 浩太
牧志は数度眼を瞬き、紙面を見直す。
「いや、見まちがい……、だよな。だめだ、そうとしか読めなく、なってきた」
牧志 浩太
牧志は数度唸って、無意識にか首の痣を撫でる。
佐倉 光
「読めるのか?
この状況じゃ情報何でも役に立つ可能性があるし、教えてくれよ」
痣を撫でる動きになんとなく目をやりつつ問いかける。
牧志 浩太
「いや、ぜんぶじゃ、ない。何を書こうとしてるのか、分かる……、だけ」
牧志 浩太
「これ、天気の変え方だ」
佐倉 光
「天気の変え方?」
そういった魔法には嫌な思い出がある。
しかし今回はあの時とは状況が違う……
佐倉 光
ふと思い出されたのはさっき見た『温室』という言葉だ。
佐倉 光
「その魔法って範囲どのくらいなんだろうな」
両手でなにかを囲うようなアクションをしながら声に出す。

今の俺たちに役立つものとはあまり思えないが……
佐倉 光
メタ的にはただの背景だな!  と思うが、それはPCには区別つかん!
牧志 浩太
「そこまでは、わからないな……。
天気の変え方だ、ってわかるだけ、なんだ。直感、っていうのかな。

詳しいことが、わかるわけじゃない。英語、読めればよかったんだけど」
牧志は目元を揉んで唸る。
佐倉 光
「そうか、ひとまず置いとこう」
置いとく、とアクション。

この部屋まだ見られるものあったかな。
佐倉 光
「なんか一人でやベー植物育ててラリって自滅したやつに巻き込まれた気がするけど、喚ばれた理由は分かんないか」
牧志 浩太
「わからないな。そんな気はするけど」
KP
この部屋には、後は緑と花しかない。奥の方にぼんやりと二つ扉が見える。
佐倉 光
「扉が……あるな。あっちに行ってみよう」
扉の方を指差す。足元は……まだ一応見えるか。
KP
視界は覚束ないが、まだ足元を見て歩く分には支障はない。
地面の凹凸や距離が掴みにくくなってきてはいる。
奥の扉は、片方が来たものと同じような古ぼけた扉だ。
もう片方は、妙に綺麗に保たれている。
佐倉 光
「綺麗な方から行ってみるか。
人の手が入ってる方が情報ある可能性あるしな」
歩きながら綺麗な方の扉を指す。
このまま一生視界が閉ざされたら……というかすかな恐怖を振り払いながら。
牧志 浩太
「だな。きれいな方から、行ってみよう」
牧志は頷いてあなたの手を取る。

あなたの恐怖が伝わったのか彼自身の不安か、あなたの手を握る力は普段より少し強かった。
KP
小冊子は持っていきますか? 置いていく?
佐倉 光
折角の情報源だし、さっきの目薬の作り方と一緒に持っていこう。
KP
では、あなたは小冊子を目薬の作り方と併せて持っていく。

綺麗に保たれた扉に近づくなら、〈聞き耳〉で判定。
これは聴覚での判定(補正あり)です。
佐倉 光
とはいえ聴覚にまだ影響はない。
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→19→成功
牧志 浩太
1d100 25〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→73→失敗
KP
扉の向こうから、微かに人の声のようなものが聞こえたような気がした。
内容は分からない。
佐倉 光
ぐっ、と牧志の手を握り、扉の方を指さす。
そして手に『人』と文字を書く。
佐倉 光
後回しにするかなぁー。
普通は「やったぁ人だ話聞こう!」ってなるんだけどなぁ。
牧志 浩太
「ひと? で、あってる? ……こんなところに?」
牧志が警戒した様子で返す。
佐倉 光
「わからない」
ささやいて首を振る。聞こえなくても意図は伝わるだろう。
さてどうしたもんか。
見える内、聞こえる内に動いて話す物は見ておいた方がいいような気もするしな。
佐倉 光
よし、開けよう。
少し躊躇ってもう一方の扉と見比べた後、一歩踏み出る。
KP
あなたは扉を開けた。

視界に色彩が溢れた。
先ほどまでの荒れ果てた空間とは異なり、室内は穏やかな白い光に満ちていた。

どこまで広さがあるというのだろうか。
遠くに壁は見えない。どこまでも続く幻想的な色合いの草花が、思わず駆け寄って埋もれたくなるような草原の合間に揺れている。

辺りには甘くやさしい花の香りが漂い、雲ひとつない空は見惚れるほどに高い。

草花の合間から小さな翅を持つ美しい小人たちがおずおずと顔を覗かせて、悪戯っぽく微笑む。

気づけば、あなたの視界の霧は晴れている。
まさに物語の挿絵が描く楽園の風景が、あなたの前に広がっていた。

なんと美しいのだろう。

先程の人の声は、この妖精たちのささやく声だったのだ。
佐倉 光
「楽園だ……悪魔……妖精っぽいのもいる」
息をのんで思わず呟いた。
佐倉 光
「屋内じゃない、霧もない……もしかしてこれが、幻覚?
本当はここには何があるんだ」
佐倉 光
「なにが、みえる」
KP
あなたは振り返り、呼びかけるだろう。

……振り返った先には、人の大きさほどの霧の塊があった。
直後、霧は散り、そこにはただ何もなくなった。

あなたはたったひとり、思わず手を伸ばしたくなるような風景の中に佇んでいる。
KP
〈目星〉で判定。
佐倉 光
「……牧志?」
これは、おそらく幻だ。
俺は目を失っている。
あのおかしな文章を書いた何者か同様、非現実に取り込まれている……
1d100 50〈目星〉 Sasa BOT 1d100→15→成功
牧志 浩太
1d100 25〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→76→失敗
KP
鈴を鳴らす声で囁きながら、妖精たちはあなたに手を伸ばす。
どこか妖艶に微笑む唇に、あなたの視線は吸い寄せられ……

不意に気づいた。

あなたは落ち窪んだ枯れ木の虚を覗き込んでいる。皺だらけの皮膚が骨に貼りついた妖精の頭部には、眼球が無かった。

SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D3》。
佐倉 光
1d100 72 Sasa BOT 1d100→94→失敗
1d3 Sasa BOT 1d3→3
SAN 72→69
佐倉 光
「うわっ!?」
思わず声を上げる。
よく見ようとして近づきすぎていた。
迂闊だった。俺は武器を持っていないのに!

反射的にその頭をぶん殴って身構える。
相手は動くか? ゾンビか何かか?
牧志は無事か?
KP
妖精の頭を殴りつけた瞬間、風景が変わった。

そこは苔と緑に覆われた何もない部屋に過ぎなかった。
霧がかる視界に紛れ、奥の方から濃い花の香りが押し寄せてくる。

あなたは反射的に思うだろう、あれに近づいてはならないと。

あなたの傍らに、ぼんやりと笑いながら何もない所に手を伸ばそうとしている牧志がいた。
佐倉 光
「牧志!」
駄目だ、今は耳が鈍っているはずだし、俺と同様幻を見ているかも知れない!
目をこらして牧志の腕をつかんで引く。
力ずくで引いて……!

こういう時、俺が非力だって事が悔やまれるな!
佐倉 光
牧志の耳にわめき立てる。
佐倉 光
「目を覚ませ! 部屋を出るんだ!」
牧志 浩太
1d100 60 Sasa BOT 1d100→25→成功
牧志 浩太
「! えっ、あ!? うわ!?」
牧志ははっ、と振り返った。

まずあなたの顔を認識し、次に喚き立てるのがあなたの声であることに気づき、驚いて辺りを見回す。
KP
奥から甘く絡め取るような香りが押し寄せてくる。
足元から世界が、再び楽園に染まってゆく。
佐倉 光
そのまま来た方向へ下がる。
佐倉 光
「逃げないとまずい、出口、どっちだ!」
牧志 浩太
「こっちだ!」
牧志があなたの手を引く。

這い上がってくる楽園と霧が入り混じる中、入ってきた扉らしいものが辛うじて見えた!
佐倉 光
急いで扉を潜ろう。
KP
牧志が扉に体当たりするように押し開ける。

あなた達が扉を潜った直後、牧志の手が溢れ出す香りを押さえつけ、室内に封じ込める。

【POW】×3で判定。
KP
なお、牧志は先程の判定失敗により、妖精に見惚れてしまったことで【POW】を-1されています。
これはシナリオ終了時に回復します。
佐倉 光
1d100 45【POW】 Sasa BOT 1d100→84→失敗
佐倉 光
「やべぇ……あからさまにまずいじゃねぇか」
言いかけて、視覚の異常に気付く。
目の前で手をかざして握ったり開いたりしてみる。
佐倉 光
「こっちもやべぇな……」
KP
佐倉さん、〈聞き耳〉+5・〈目星〉-10。
牧志、〈目星〉+5・〈聞き耳〉-10。
佐倉 光
〈目星〉 50→40
〈聞き耳〉 79→84
牧志 浩太
1d100 33【POW】 Sasa BOT 1d100→48→失敗
〈聞き耳〉 25 → 15

ひとこと
佐倉 光
わぁい、〈クトゥルフ神話知識〉でクリティカルおめでとう!
それじゃあ1d10で成長の可能性が……
いやそれまずいでしょ。


【置】CoC『スペクト・ラム』 佐倉&牧志 6

「ダメだったら……何とかしてくれ」
「分かった、何とかするよ」

CoC『対の棲みか』『第二話 うたかた箱』牧志&佐倉 3

「そんなに守りたいものが増えたのですか?」

【置】CoC『レミングス・ドリーム』牧志&波照間&佐倉 2

「いい加減死ぬのにも慣れてきたけどな」
「……慣れたくないな、それは。俺も一度しか死んだことなんてないしさ」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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