画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: netabare.png

こちらには
『Look,LOOK Everyone!』のネタバレがあります。

本編見る!
牧志 浩太
「うわぁあああぁ!」
KP
牧志は風に煽られながら、あなたから遠ざかっていく。

シローが牧志を追いかけようとする。道路に飛び出しかける、危ない!
佐倉 光
「シロー、前見ろ!」
慌ててシローを引き戻す。先に返すべきだろうか。
でも一人にするのも心配なんだよなぁ!

シローの手を握ったまま牧志を追いかけよう。
KP
あなたは牧志の姿を視界に捉え、息を切らせて追いかける。
しかしシローの手を引きながらのあなたの足取りは遅く、少しずつパーカーがあなたから遠ざかっていく。

目の前の道路を、巨大なトラックが通り過ぎた。

視界が晴れるとパーカーは遥か遠くへ離れてしまっており、どこかのビルの間へ落ちていくのが辛うじて見えた。
シローくん
KP
シロー、そろそろ誰かに預かってもらう(預かってくれそうな誰かを出す)か、連れたままかどっちが面白いかなぁ。
佐倉 光
預かってくれそうな誰かと遭遇したら、ダイナミックなことができる&その人に対して誤魔化すアクションをする のダブルで美味しいのだ
KP
なるほど! では出そう。
また東浪見か波照間かどっちが面白いかな。
いろいろ誤魔化す羽目になって面白そうなのは東浪見だけど。
佐倉 光
事の重大さが分かるのは波照間さんの方なので、それはそれで楽しいかと思う。
どちらでも楽しいと思う。
KP
では東浪見は一度出したし波照間にしよう。

佐倉 光
「あぁぁぁぁクソッ!」
シローを一人で帰らせるにはちょっと距離がありすぎる。
しかしシローを連れていては追い続けるのは辛い。
どうしよう。どうしたらいいんだ!
波照間 紅
「何かあったのか?」
KP
そこに、知った声がかけられた。

振り返れば、鞄にいつもの矢筒を入れた波照間の姿がある。
あなたの様子を気にとめて声をかけたらしい。
佐倉 光
「波照間さんっ!」
地獄に仏ってやつだ! 飛ばされたパーカーを指さして、喚く。
佐倉 光
「牧志が飛ばされたっ! 弓で……」
駄目だ、万一あのアップリケに当たったら死んでしまいかねない!
佐倉 光
「あああクソ、シロー頼む! 俺はあいつを追う!」
波照間 紅
「えっ? え、ああ!? わ、分かった!」
何だか分からない! 
とにかく牧志に何かあったのだろうということは分かる。
波照間 紅
波照間は頷き、シローの手を引いてくれる。
KP
「さくら?」
シローは心配そうにあなたを見上げる。
波照間 紅
「牧志に何かあったらしい。
佐倉さんが追ってくれるから、僕と家で待っていよう」
佐倉 光
詳しい説明はシローからしてもらってw
佐倉 光
シローを預けたら真っ直ぐにパーカーが落ちた方を目指す。
冗談じゃない、こんなことであいつが死んでたまるか!
ガードレール飛び越え、人を縫い、大声で呼び掛けながら、とにかくできる限りの早さで彼が落ちたと思われる方向へ!
KP
「きゃぁっ!?」
「うわぁ!?」
「危ないな!」
「おいテメェ!」

驚く女性、慌ててブレーキをかける自転車、ぶつかられて怒りの声を上げようとした男、その全てをすり抜け押しのけて、あなたは走る!

息が切れ、胸が激しい痛みを訴える。
手足が鉛の重さであなたを引き留めようとする。
それでも、あなたの脚は止まらない。
佐倉 光
「くそくそくそ、こんなの俺の」
俺の責任だろうがクソが!
ちょっと面白がった。
深刻さが見た目で薄れていた。
だから何となく慎重さに欠けていた!
身動きできなくて軽い、他の人間からは生命体に見えない体なんて、危険極まりないだろうが!

あっという間に切れる息、痛み始める心臓と頭、無情にも視界からあっさり消える黒いパーカーを、全身全霊をもって追う。視界が暗い。首に心臓が移動したみたいにやかましく脈動する。破裂しそうだ!
KP
そして、あなたはとうとう彼が落ちたと思われる場所に辿り着いた。
そこは閑散としたオフィス街の合間の、何でもない道路だった。

そこに彼の姿は……、 なかった。

〈目星〉
佐倉 光
1d100 85〈目星〉 Sasa BOT 1d100→13→成功
どこだ、どこにある? どこに行った?
佐倉 光
「牧志!」
叫んで周囲を見回す。
KP
「ミーちゃん、だめだよ、そんなの食べたら汚いよー」

あなたの目に、道端に落ちている何かに興味を示す犬と、犬を引っ張っていこうとしている少女の姿が映った。
KP
犬が足で踏んでいるのは…… 黒い何かだ。
佐倉 光
「ちょっと待って! 待ってくれ! それ俺の服!」
かじるなよ! かじるんじゃねぇぞ! こんな目の前で引き裂かれるとか冗談じゃねぇぞ!
駆け寄りながら叫ぶ。
KP
「きゃあっ」
少女が驚いて声を上げる。
少女に紐を引かれ、あなたの声に驚いた犬は、弄っていたそれを強く噛んだ。

「バウッ!」
続いて威嚇の声を上げた犬の口から、穴の開いたパーカーがひらりと落ちる。
佐倉 光
「牧志!」
慌ててパーカーを拾い上げようとする。
犬が威嚇してくるようなら犬を威嚇しながら、飼い主に頼む。
佐倉 光
「それ俺の大事な服なんだ。君の犬を退かせてくれ」
KP
少女はちょっと涙目になりながらも、犬に呼びかけて犬を退かせようとする。
KP
少女と共に犬を落ち着かせることができるか、〈任意の交渉技能+30%〉で判定!
佐倉 光
1d100 78〈言いくるめ〉 Sasa BOT 1d100→29→成功
佐倉 光
「よーしよし、そこ動くなよ。動かなければどうってことないからな……」
低い声で囁き続ける。
KP
しばらくあなたは犬と向き合う。
犬は劣勢を悟ったのか、少女の呼びかけに応えて一歩下がった。

「ごめんなさい……。行こう、ミーちゃん」
あなたが特段に呼び止めることがなければ、少女はすまなそうにあなたに頭を下げ、犬とともに去るだろう。

KP
あなたの足下には、犬の涎だらけになってぼろぼろの布と化したパーカーが落ちている。
佐倉 光
「ま、牧志?」
恐る恐る声をかけながらパーカーを拾い上げる。
濡れていてもいい、裂けていてもいい、ただ牧志のアップリケが無事なら!
KP
……白目を剥いて気絶した牧志の顔を描いたまま、アップリケは上下から二つに引き裂かれていた。
牧志の額に、頬に、犬の咬み痕が惨たらしく残され、無惨にも額に大きな穴が空いている。

……布は動かない。
声が、返らない。
佐倉 光
「……!」
声が出なかった。
佐倉 光
た、大変なことにぃぃぃ!
KP
大変なことになってしまいました。
佐倉 光
「牧志!  牧志おいっ!  返事しろ!」
叫んでパーカーを抱えて走り出す。呼び掛けながら、あの胡散臭い店へ!
このまま牧志が死んだら、俺のせいだ!
抵抗もできずに犬に齧られて死ぬなんて、そんなの、現代人の死に方じゃねぇだろ!?
こんな、冗談みたいな!
佐倉 光
「畜生、勝手に死んでんじゃねぇぞ!  畜生、畜生、畜生!」
黒い布を抱えて必死の形相でクリーニング屋に走る。
KP
あの店はちゃんと存在した。
存在したし、急いでベルを鳴らせば中からあの博士が出てきた。
KP
「おお、戻ってきたか! どうじゃったかの?」
佐倉 光
「おい爺さん! 今すぐここから牧志を出せ!」
台にパーカーを広げる。
KP
「おお、これはこれは派手にやったのぉ。どうじゃった? 結果を報告してくれんか」

ほうほう、と博士は感心した様子で穴だらけになったパーカーを眺める。
虫眼鏡を持ち出し矯めつ眇めつしている様子に、あなたはふと怖気を覚える。

この博士は、人間の生死如何になど、全く関心を持っていないのではないか。
佐倉 光
またこういうパターンかよ!
台を力一杯叩く。
佐倉 光
「見ての通りだ! 知りたきゃレポートでも書いてやる!
ただし、こいつを無事に返してくれたらだ!」
佐倉 光
「俺のこの精神状態でまともなレポートを期待する方が間違ってるぞ、ジジィ!
さっさと牧志を元に戻せ!」
KP
フーム、と博士は一度唸る。
「しかし約束じゃからの。まあいい、とりあえず生きとるか確認するか」と呟きながら、バケツを持ってきた。

博士は広げられたパーカーの頭上で水をぶちまける。あなたの服に水が散った。
牧志 浩太
「!!??!」

ぼろぼろになった絵の中で、かっと牧志の眼が開かれる。
二つに裂かれたまま、牧志は声にならない悲鳴を上げた。
KP
「ふむ、生きとる生きとる。理論通りじゃ」
佐倉 光
「生きてるっ!? こ、こんな状態で!?
牧志、おい、無事なのかよ! 裂けてんぞ!?」
慌てて布きれをのぞき込んで呼びかける。
牧志 浩太
「さ、佐倉さん!? 俺助かったのか!?」
アップリケが布を引っ張って右に左に動く。彼の眼はちゃんとあなたを見ていた。
佐倉 光
「おい、何だよ……なんだよ、生きてるのかよぉ……」
へなへなと台に崩れ落ちる。
佐倉 光
「死んだかと思っただろ、馬鹿野郎、紛らわしいことしてんじゃねぇよ!」
牧志 浩太
「ごめん……、完全に気を失ってたみたいだ」
あなたの手を取ろうとしてか、布がひらひらと動く。
牧志 浩太
「佐倉さん、ありがとう。俺のこと、見つけてくれたんだよな?」
佐倉 光
「ばっっっかやろ、お前って、もうほんと、ばっっっか野郎……!」
まともに声が出ない。それ以前に言葉が出ない。喉が痛い。
佐倉 光
「底抜けにも程があるだろうが……!」
安堵しすぎてもう全身の力が抜けてしまった。
牧志 浩太
牧志はへたり込むあなたに手を差し伸べようとしたらしい。
糸の出た布が、あなたの肩に微かに触れた。
佐倉 光
布を軽く握り返す。
佐倉 光
「おい、ジジィ。直せるんだろうなぁ」
唸るような声を上げて自称博士をにらみ付ける。
KP
「うむ、我を戻したようで何よりじゃ。
そいつは出してやるから、とっとと実験結果を教えてくれんか」
KP
博士はノートを手に実験結果を要求している。
KP
※かくかくしかじかでOKです。
佐倉 光
では先に文章としてまとめてある方を台に叩きつける。
佐倉 光
「残りは牧志を出してからだ馬鹿野郎!」
さっきも言ったとおり、精神状態荒れてたらちゃんとしたレポートなんか出ないぞ!
と威圧&説得。
KP
「しょうがないのぉ」
溜め息をつくと、博士は肩をすくめて近くの棚をゴソゴソとやりだす。
KP
「あ、先に繕っておいた方がいいぞい。
ミシンがあるから貸してやろう」
KP
おっと。なんと、あなたはこの場で牧志を繕う羽目になるようだ。
ミシンを使っても手縫いでもいい。
佐倉 光
これくらい手縫いでやるっての!
人の顔にミシンかけるなんてぞっとする。
佐倉 光
……えっ、ペルソナ?
ありましたね、そんなことも。
CoCペルソナ第二話でそんな事件があった。
KP
縫い道具を借りて、あなたは下洗いして涎を落とした牧志の顔を繕う。
牧志 浩太
「痛くないのは分かってるけど、針が刺さる感触は気持ち悪いな。
頭の中を刺されてるみたいだ」
KP
牧志の額に縫い目ができていくさまは、あなたの額にある縫い目のような痕を、何となく思い出させた。
佐倉 光
跡が残ったら嫌だから、表に縫い目が出ないやり方で縫い合わせるぞ。
佐倉 光
「なんとなく目が合うとやりづらいから、目を閉じててくれよ」
牧志 浩太
「それもそうか。頼む、佐倉さん」
牧志はあなたに身を預けるように、そっと目を閉じた。
対象は布でこそあるが、まるで牧志の頭そのものを縫い合わせているような感覚を覚えた。
佐倉 光
「俺の頭にできてる縫い目も、こんなふうにできたんじゃないだろうな?」
思わずブツブツと呟いていた。
いつもより幾分縫い目を細かく慎重に丁寧に、縫い合わせた。
KP
牧志の顔をどうにか縫い合わせ終わった頃、博士はアイロン台を用意していた。
博士はあなたからパーカーを受け取ると、アイロン台に乗せる。

……嫌な予感がする。
牧志は極地体験で寒さを感じていた。

では、熱は?
佐倉 光
「おいちょっと待」
手を伸ばして奪い取ろうとする。
KP
「む? どうした。こうせんと外には出られんぞ」
佐倉 光
「えぇぇぇ……マジかよ。
くそ、せめて当て布しろよ」
KP
「分かっとる分かっとる」
博士は熱と蒸気を噴き出すアイロンを手にすると、
牧志 浩太
「え、何か熱っうわぁあああ!?」
KP
牧志の顔の上に、

容赦なく、

シュウウウウーーーッ!
牧志 浩太
「アァアアアアーーーッ!?」
KP
室内に、牧志の断末魔の如き悲鳴が響き渡る。
今度こそあなたの背筋は凍りつくことだろう。

SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D4》。
佐倉 光
当て布しろって言っただろうが!!!
KP
※博士聞き流した
佐倉 光
1d100 74 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→47→成功
SAN 74→73
佐倉 光
「おい! それで本当に大丈夫なんだろうな!?」
悲鳴に戦きつつ問いかける。背筋がゾクゾクする!
KP
「大丈夫、待っとれ待っとれ」
平気な顔でアイロンをかけ続ける博士の下で、牧志の髪がみるみるうちに乾き、刺繍糸の焦げる臭いが漂いだす。

やがて一通りアイロンをかけ終わると、博士は「これで自由の身じゃよ」と服を持ち上げた。

すると、パーカーからヒラリと牧志がアイロン台に落ちる。
その姿はアップリケそのものであり、髪や服がプスプスと焦げていた。

彼の悲惨な姿を目の当たりにしてしまったあなたは、《SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D4》。
佐倉 光
1d100 73 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→73→成功
SAN 73→72
佐倉 光
「おいこのド下手くそがぁぁぁ! 焦げてるじゃねぇか! てめぇそれでも洗濯の専門家かクソボケ!」
喚いてアップリケに手を伸ばす。
牧志 浩太
「あ、ああ……、佐倉さん、俺、生きて……、る? 生きてる……?」
アップリケだけになった牧志は、辛うじて息を吐きながらあなたに向かって目を瞬いた。
佐倉 光
「生きてる生きてる! まだ布きれだけど生きてる! 丈夫だなお前!」
もうさっきから何度牧志が死んだと思ったことやら。
佐倉 光
「俺の寿命何年か縮んだ。確実に」
牧志 浩太
「俺もちょっと縮んだかも」
プスプスと焦げた髪から煙を出しながら、牧志はあなたの手に身を預けた。
KP
「で、実験結果はどうだったんじゃ。ほれ」博士がノートを手にあなたを急かす。
佐倉 光
「外に出てねぇだろうが!」
まあ、言わなきゃ出してくれないようなら適当にでも話すけど。
KP
「面倒臭いのぉ。店の中に機械があるから戻すなりなんなり好きにやれ」
博士は面倒臭そうに頭を掻くと、ほれ、と奥の扉を開けた。
佐倉 光
「お前らみたいのに何度も関わって思ったことがあるんだけどな。
効率良く実験したきゃ、相手の意志をガン無視するのはかえって良くないぜ。
効率が悪すぎる」
奥に入る。
KP
博士からの返答はなかった。

KP
あなたはアップリケだけになった牧志を手に、奥へと入る。
そこにはクリーニング店のバックヤードらしく、畳んだ服が大量に積まれていた。

物置棚には見慣れない洗剤や柔軟剤がぎっしりと詰まっている。
大量のパイプが有機的に絡み合った奇妙な機械が、中心部に捧げ持つようにして大きな槽を保持している。
古いハードカバーの本が詰められた本棚がある。
佐倉 光
「おい、この機械どう使うんだよ!」
言いながら本棚を見る。説明書らしき物はないのか?
KP
本棚にあるのはほとんどハードカバーの古書だが、クリアポケットファイルが一冊混じっている。

開いてみれば、家電の説明書が一部入っている。
表紙には「人間洗濯乾燥機 取扱説明書」というタイトルと、この室内にあるものに似た機械の絵が記載してある。
佐倉 光
「これか!」
抜き出してめくる。使い方は?
★人間洗濯乾燥機の説明書

・「人間洗濯乾燥機」とは、異常な状態になってしまった人間をキレイさっぱり元通りにするための機械である
・使用方法は一般の洗濯乾燥機と変わらない。基本コースとオプションを選びスタートを押すだけ
・ただし、使用には専用の洗剤が必要となる。また、オプションで「ふんわり仕上げ」を選ぶ場合は専用の柔軟剤も併せて必要
・思い通りの洗い上がりにならなかった場合は何度か試すこと
佐倉 光
「説明足りねぇじゃねぇかあのジジイ」
近くに洗剤や柔軟剤らしき物あるかな。
KP
物置棚に積まれている洗剤や柔軟剤を見ると、説明書に書かれている型番に対応しているようだ。
「対応互換品! 値段半額性能一致!」と洗剤のボトルに書かれている。
佐倉 光
「うっわ、不安」
牧志 浩太
「怖いなこれ……」
佐倉 光
とりあえず洗剤と柔軟剤、両方セットして、牧志に「とりあえず口と目をつむっとけ」と言って、得体の知れない機械に牧志を入れよう。
これ洗い上がりに何分くらいかかるんだ。
KP
あなたは中央の槽に牧志を入れ、扉を閉じる。

人間洗濯乾燥機には、
基本コース:「標準」「お急ぎ」
オプション:「ふんわり仕上げ」「ドライ」

計4つのボタンとスタートボタンが付いている。所要時間は標準なら合計1時間程度だ。
佐倉 光
どうなるんだろうw
いつもの洗濯考えてふんわり仕上げしてみてしまうよな。
KP
選んだコースによって結果が変わります。
思った仕上がりにならなかったらやり直してもOK。
佐倉 光
ドライとかどういう意味でドライなんだヨォォォ!
佐倉 光
洗剤と柔軟剤入れて、ふんわり仕上げをポチッとな。
佐倉 光
「……」
佐倉 光
「あれ、まずったかな」
KP
基本コースはどっちにしますか?
佐倉 光
標準かな。
佐倉 光
ていうか標準とドライ両立するの!?
二度洗いかな。
KP
基本コースは所要時間の問題、オプションはその他の問題なので両立します。実は。
佐倉 光
ドライは油で洗うとかそういう訳じゃないんだろうどうせ!
KP
ギュワァアアアン!!
壊れた乾燥機のような轟音を立て、槽が上下に左右に高速回転を始める。
やがて回転速度は目視すら困難な程に達し、あなたの目には雷を纏う球体があるようにしか見えなくなった。
佐倉 光
遠心分離されちまいそうだ。怖い。
しかし待つしかないのだ。
近くの本棚の本見たりしつつ変化が起きるまで見てよう。
KP
本棚には、見知らぬ言語で書かれた書物がみっしりと詰まっていた。
それらを眺めていると、次第に回転が遅くなってくる。

とぽとぽと柔軟剤が注がれる音がして、またも槽が回転を始めた。
佐倉 光
くそ、読めない。
仕方ない、暇つぶしにまだ出してない分の実験結果まとめとくか。

とにかく何かをしていないと気が落ち着かない。
この機械と向き合っていたくない。
もし牧志が布きれのままだったら、
いやもっと悪いことになっていたらと考えてしまう。
KP
槽はまたも球体と見紛う姿となり、さらに回転速度を上げ―― 

不意にあなたの視界から消滅した、ように見えた。
佐倉 光
「!」
慌てて機械に近寄る。
KP
きっとそれは見間違いだったのだろう。
槽はそこにあった。
次第に回転速度を減じ、やがて停止し……。

あなたが知っているままの、厚みのある人間の姿の、シャツとズボン姿の牧志を吐き出した。
牧志 浩太
「ふぎゃっ……」
ぐるぐると目を回しているのが見えるような様子で、牧志はへたりと床に倒れ込む。
佐倉 光
「おい、おい大丈夫か!? 体、変なところないか!?」
慌てて駆け寄って肩を貸そうとする。
牧志 浩太
牧志は肉体の感覚を取り戻そうと、数度床の上でばたばたと泳いだ。
それから手があることを見下ろして確認し、その手を数度、ゆっくりと握って、開いた。

それから脚で立ち上がり、あなたの肩に縋った。
牧志 浩太
「戻、れた……、みたいだ。
久しぶりで変な感じだけど、痛んだりとか、動かなかったりはない」
佐倉 光
おや、正解引いた?
佐倉 光
体に触れてみて、変なところはないかチェックする。
オプション、で余計なことして、本来の状態と変わってしまっていやしないかと心配だったのだが……
佐倉 光
「……良かった……本当に、死んだかと」
牧志 浩太
「ああ……、俺もあのとき、今度こそ死ぬかと思った。
死ななくても、戻れないかと。どこかへ飛ばされたまま飢え死にするかって思った」

牧志は自分の胸に手を当て、そこに自らの心音があることを確認する。
続いてあなたの胸に手を当て、あなたの心音を。
KP
あなたは彼の身体に触れる。
中身の詰まった人間の肌と肉の感触が、生きているものの温かみが感じられた。
怪我や奇妙な所はないようだ。
佐倉 光
「ほんと、ごめん。俺のせいだな。調子に乗った俺が悪いんだ……」
牧志の肩を両手で掴んで、しばらくその感触を確かめていた。
今更もし彼が死んでいたら、人間に戻れなかったらという不安に苛まれていたときの寒気が纏めて襲ってきた。
牧志 浩太
「……いいよ、それなら俺もだ。
あんなことになるかもしれないってこと、全然考えてなかった」

牧志は互いの心音を感じながら、笑った。
二人ともここに形を持って存在できていることを、確認するように。
佐倉 光
「つーかさぁ……」
ふと、大事なことを思い出した。
佐倉 光
「……それはそれとして、そもそもがあのジジイのせいだよなぁ!?」
KP
あなたが怒りを込めて振り返ると……
あの博士は消えていた。

煙のように。
あなたがまとめた残りのレポートごと。
佐倉 光
逃げやがった。
あいつにそんな意識があるかどうかはともかく。
くそ、まだ言い足りないのに! 

さらに振り向くと得体の知れない洗浄装置もなかったりするかな。
KP
振り返ると装置はそこにあるが、中央にあった槽だけが見当たらない。
最初から何もなかったかのように、ぽっかりと空間ができていた。
佐倉 光
「クソが。
牧志が元通りだからいいだろう、じゃねぇんだよ」
やり場のない怒りをもって意味のない言葉を叫ぶ。
叫び終わったら息を整え、
佐倉 光
「帰ろうぜ、馬鹿馬鹿しい」
と声をかける。
牧志 浩太
「賛成」
そう言って牧志は苦笑し、あなたの胸から恐る恐る手を離す。
佐倉 光
「シローは波照間さんに見てもらってるから大丈夫。波照間さんにも連絡しないとな」
牧志 浩太
「ああ、先輩が見てくれてるのか、よかった。
今回は佐倉さんにも随分世話になったけど、先輩にもまた世話になっちゃったな」
牧志はシャツの裾を整え、髪に手を伸ばす。
シャツの裾と髪が少し焦げていた。
牧志 浩太
「うわ、少し焦げてる。顔まで焦げなくてよかったな……」
佐倉 光
牧志の顔、焦げはもちろんだけど縫い目なんか残ってないだろうな?
思わずまじまじと見る。
牧志 浩太
「?」
牧志の顔に、あなたがあの時針を通した縫い目は残っていない。
佐倉 光
「あのド下手くそが!
弁償してけ、俺と牧志の服!」
最近支出が多すぎる。
いくらなんでも多すぎる。
怪異に関わると本当にろくなことがない。あいつらも殴り倒せば金持ってるのかなぁ、などと乱暴なことを考えてしまう。
牧志 浩太
「本当にな。俺のシャツもだけど、佐倉さんのパーカーも駄目になっちゃったし。
シローと一緒に科学館で遊び回ったのは、まあ、楽しかったけどさ」
牧志 浩太
「犬に全身を噛まれる経験はもうしたくないな……。
痛くなかったとはいえ、今思い出しても異様な感覚で怖気がする」
佐倉 光
「痛みがなくたってトラウマもんだろうが、そんなの」
いつかの呪いを思い出した。
佐倉 光
「臨死体験しすぎだよ、ったく」
牧志 浩太
「本当にな。死にそうな目に遭い過ぎだよ、互いに。
今でも頭に穴が開いてそうな気がする」
佐倉 光
ずーっと後の世で、牧志の日記帳は読んだものに正気度ダメージと〈クトゥルフ神話〉知識を与える書物になるんだろうなと思った。
KP
なりそう。探索者の手記。
時に乱れ時に穏やかに書き残された文章を読み解こうとする誰かがいるんだろうな。

佐倉 光
店を出よう。
で、波照間さんに連絡しよう。
怒りと興奮が収まってくると、恐怖心が今更ながら沸いてくる。今はそちらには目を向けたくない。
波照間 紅
「佐倉さんか。
電話をくれたってことは、何とかなったのか?」
波照間の声の後ろで、シローの声がした。
佐倉 光
「ああ、お陰さんで何とかなりましたよ。牧志も無事。
ほんと、助かりました。いつもありがとう、波照間さん。
事情話しがてら、飯おごりますから」
飯は今日でもいいし今度でもいい。

ほんと、シローを預けられて良かった。
ズタズタになった牧志なんて見せられないよ。
波照間 紅
「そうか、それはよかった。
それじゃ、夕食でも馳走になろうかな」

KP
「まきし! まきしだ!」
シローは牧志の姿を見ると、文字通り飛び上がって喜んだ。
牧志 浩太
「ごめんな、心配かけたよな」
牧志はシローの背を強く抱きしめ、体温を分け合うように目を閉じる。
彼の手が動くところを、久しぶりに見るような気さえする。
佐倉 光
そんなシーンを見ると心底ほっとした。
破れても平気な状態ってのは興味深い存在ではあるけど、やっぱりいつも通りがいいな。

波照間さんと一緒に事情説明がてら夕食食べに行こう。

佐倉 光
「……にしても今回、光る歯車に触れたとか、
そういう分かりやすいトリガーでもなかったから、回避のしようがねぇよ。
なるべく詳細に結果報告しといたから、あれで満足してくれてりゃいいんだが……」
波照間 紅
「そんな事になっていたのか……。
冗談みたいな割に洒落にならないな、それ。
動けないが、どれだけ傷を受けても死なないというのは、何だか考える所のある状態だな。

それにしても二人とも、本当に色々と巻き込まれるな」
牧志 浩太
「本当にな……。
もう家に閉じこもってるしかなさそうだけど、閉じこもってても何か起きる気がする」
三人で牛丼をつつきながら、牧志は溜息をついた。

牛丼は波照間のリクエストだ。
たぶん、あなた達の財布事情を考えてくれたのだろう、と何となく分かる。
佐倉 光
「もうなにかに巻き込まれないようにどうにかしようなんて無駄だよ無駄。巻き込まれたらどーにかするしかないって。そこはもう俺諦めた」
そもそもが悪魔使いになったきっかけの事件からしてそんな感じだったのだ。もうそういうものだと思うしかない。
牧志もだ。せめて一緒にいるときに巻き込まれるよう祈るしかないな。
牧志 浩太
「それはそうかもな。
どうにかするしかないんだ。今回みたいに、……前みたいに」
そう引きずる言葉にはまだ少し怖れと痛みがあって、それでも、その怖れから抜け出そうともがく力を感じた。
佐倉 光
「だからさー、波照間さんにもこれから仕事以外で迷惑かけまくると思うんだよ。できるだけ礼すはするしさ、うっかり深刻なことに巻き込まないように努力はするけど」
並盛の牛丼をつつく。
佐倉 光
「世界を巻き込むとか、そーゆー面倒なやつじゃなきゃいいよ、もう」
佐倉 光
そういうのは仕事だけでたくさんだ、と笑った。
波照間 紅
「世界を巻き込む、か。いや……」
波照間は何かを言いかけてやめたらしく、茶のコップを取って一口飲む。
波照間 紅
「全くだ。
そういうのは仕事くらいにしておいてもらわないと、たまったものじゃない」
佐倉 光
「?」
波照間さん何か言いかけたような?
まあ、今言いたくないことみたいだし、仕事の時にでも訊けばいいか。
佐倉 光
世界巻き込んだ異変か~。
KP
世界巻き込んだ異変に巻き込まれたのは波照間の方でしたね。
波照間さんは毎度毎度規模の大きな異変に遭遇している。
佐倉 光
無事に終われば笑い話だ。
牧志が服に張り付いてカレー食べてる録画なんかを見せて波照間さんの正気度下げたりしつつ、今回あったことなんかを話そう。
牧志が死んだかと思ったときのことなんかも。
笑い話にして人に話してしまえば、一人で抱え込まずに済むんだから。
波照間 紅
「うーん、動画で見ると何だか面白い図だが、こうなるのを想像すると何とも言えないな」
佐倉 光
牧志には改めて謝ろう。
俺が軽率なことをしなけりゃ、お互い怖い思いをしなくて済んだわけだからな。
とはいえ……
佐倉 光
「同じ体験をまたすることがある、なんて思えないけどさ」
牧志 浩太
「二度はさすがに困るな。本当に何もできないし、あの状態。
あと鼻に入ったラーメン出せなかったから、鼻から飲むのは凄くキツかった。
手で引っ張り出すこともできなかったし」
波照間 紅
「……それはきついな……」
佐倉 光
「えっ、そんなことになってたのか。
ごめん……」
見てなかったもんなぁ、あの時。

すさまじく申し訳ない気分になった。
同時に、自分のなかでまたそんなことがあったら注意することリストに書き加えたが……ねーよな。二度と。そんなこと。
牧志 浩太
「いや、あれは仕方ない。変な所に詰まったりしなくてよかった」
佐倉 光
すまない牧志ッ
KP
割と犬に噛まれて穴だらけになったの次くらいにキツい事態。
波照間 紅
「とにかく、迷惑というならお互い様だしな。僕だって、同じように迷惑をかけることくらいあるさ」
そうして波照間は席を立つ。
あなた達も店を出ることになるだろう。

KP
店を出ると、すっかり暗くなった空の中、わずかな星が光っていた。
佐倉 光
波照間さんに礼を言って別れ、家に戻ろう。
佐倉 光
「まーた休日が異変に潰された。
まあ今回は普通に遊んでいたと言えなくないけどさ」

空を見上げて、なんとなくプラネタリウムで聞いた星を探しながら帰ろう。
牧志 浩太
「今回は一日だけだったからまだマシ、って思うのは毒されてるかな」
佐倉 光
「立派に毒されてるね。
まあ最近、連休と言えば異変に潰されるなんて事が続いたからな、無理もないけど」
牧志 浩太
いくつかの惑星と大きな星を拾いながら、牧志はあなたと一緒に歩く。
ようやく自宅に戻ってくると、キッチンから酒の瓶と軽いつまみを持ち出してくる。
牧志 浩太
「少し話そうよ。せっかく体が戻ってきた記念も兼ねて」
佐倉 光
シロー寝かせて部屋から出たら飲む流れになってた。
佐倉 光
「まったく、昨日今日大変だったな」
笑いながらグラスを出して並べよう。
牧志 浩太
「ああ、本当にな。互いにお疲れ様」
グラスに酒を注ぎ、軽く打ち合わせる。
牧志 浩太
「毒されもするよ。あのキャンプも結局それで駄目になったしさ」
ふと、ずっと語らなかったあの三日間のことを、彼は言葉に上らせた。
佐倉 光
「ああ……あの時な」
車は廃車になるしパソコンもスマホも大破してるし、なんか牧志はおかしいし、随分衝撃ではあったんだが……
俺自身は『どうやら怪我をしていたらしい』ということしか分からず、いまいちピンときていない。
なにしろ、始まったと思ったらどうやら終わっていたのだ。
『後遺症』があまりにも辛いので、何かただならぬ事は起こっていたんだろうと思うが……
佐倉 光
「あの時はほんと大変だったな。
牧志も色々あったんだろ?」
牧志 浩太
「ああ、色々あった。
……佐倉さん、気にしてただろ。今まで何も言わなくてごめん。
口に出したら認めたことになりそうで、怖かったんだ」
牧志はひとこと呟いて、酒を舐めた。
佐倉 光
「そりゃ気になるよ。
俺が……っていうより、お前の様子がおかしかったからさ。
あからさまにおかしな状態に何日、何ヶ月もいたみたいだったからな」

この件については、興味があるというよりは純粋に心配だったのだ。
牧志の様子が異様すぎて。
彼が半分死んでしまったように見えて。
牧志 浩太
「ごめん、本当に心配かけたな。
……何日、何か月、か。実際、どれくらいあそこにいたんだろうな、俺。
もう、何年もあそこにいたような気がする。

でも、昨日今日色々あったからだろうな。
あれが何年ものことだったのか、何か月のことだったのか、
それとも一週間のことだったのか、少しずつ分からなくなってきてる」
佐倉 光
「何年?
異世界にでも行ってたのか?
一体どこで何をしてたんだ?
あの山小屋にいたんじゃなかったのか?」
つい、連続で問いかけてしまう。
佐倉 光
「認める、って、何を」
牧志 浩太
「……順番に話すよ。ようやく話しても大丈夫かもしれないって、そう思えてきた」
長い話をする気なのだろう、牧志は軽いつまみを持ってきた。

声が、少し震えていた。
佐倉 光
「大丈夫、終わったことなんだ。
俺は……まあ無事だし、お前も戻ってきてるんだ。
辛かったらやめていいからな」

〈精神分析〉スキル使って彼を落ち着かせよう。
佐倉 光
「話した方が楽になりそうなら教えてくれ」
牧志 浩太
「いいよ、話させてくれ。
認めてしまってそれでも大丈夫だったら、今度こそ大丈夫だって思えそうなんだ」
あなたに導かれ、彼はひとつ頷く。
そして、また一口酒を舐めた。
牧志 浩太
「あの時、俺達は事故に遭ったんだ。運転を誤った車がぶつかってきたんだ。
車を運転してたのは……、俺だった。

咄嗟に自分を守る方にハンドルを切ってしまった、のかもしれない。
俺は無事だったけど、……佐倉さんは潰されて、瀕死の怪我を負った」
そこで、彼は一度息をつき、己の中の恐怖を握り込もうとするように、拳を白くなるまで握って、開いた。
佐倉 光
「ああ。それはなんとなく分かる」
状況証拠がそう言っていた。
むしろどうやっていまだに無事であるのか、そこが分からない。
パソコンと同じ運命を辿っていてもおかしくなかった。
佐倉 光
「反射はしょーがねーだろ。
そういう風にできてんだ」
牧志 浩太
「ありがとう。
……佐倉さんはあの時、ほとんど死んでいた。いや、死んでたんだ。
死んでたとしか思えなかった。
視線が次第に腫れて、散って、息をしなくなるまで、俺は見てたんだ」

声が少しずつ急くようになり、吐き出すような調子に変わっていく。
開いた拳はまた、白くなるまで握り込まれていた。
牧志の眼が微かに震えて、視線が揺れていた。
佐倉 光
「え、俺死んだの?
いや、でも……道返しの玉なんて持ってなかったし、マカミも喚ばれてなかった筈で……?」
訝しげに顔をしかめる。
道返しの玉……復活アイテム
マカミ……佐倉の使い魔で復活魔法リカームの使い手
復活
佐倉 光
前々から、
もしCoCで死んで、しかもメガテン式の復活ができる状況だったら、生き返った佐倉は牧志のことを覚えていないしもう信頼したりしないんだろうなと思ってます。
変な邪神反応の出るアザもついてるし、悪魔だと思うんじゃないかな。
KP
そうかぁ、生き返った佐倉さんは牧志のこと覚えていないのか……
それはある意味死に別れるより辛いかもしれない。
佐倉 光
今まで忘れてもなんだかんだ彼の心に触れて思い出したり信用したりしていたけど、もう触れられなくなるんだろうなと。
KP
それは辛いなぁ。死に別れたとしても牧志はずっと記憶を抱き続けるけど、生きているのにもう触れられなくなるんだもんな。
その状態で波照間と連絡を取り続けていたら、事あるごとに佐倉さんのことに触れてしまって変な沈黙が降りそう。

そうなったら牧志はどうするかなと思ったけど、なんかかんか佐倉さんに取引を持ちかけて一緒にいようとしようとする気がしました。
佐倉 光
もう二度と一緒に妙なことに巻き込まれることはなくなるけれど。
きっと友人としてではなく、馴れ馴れしい悪魔として扱われるけど。
探索者の佐倉は死んでしまうからなぁ。ただのモブになるんだ。
KP
なるけれど。妙なことに巻き込まれた時、名を呼んで手を伸ばしても、もうその先には誰もいないけど。

自分の命をさらして得た知識を餌に、異界の知識を与える馴れ馴れしい悪魔として、佐倉さんの横にいようとするんじゃないかなぁ。

牧志 浩太
「死んでないよ。佐倉さんは死んでなかった。死にかけてただけだ」
言葉に縋るような力強さで牧志は言い切った。
そこに奇妙な危うさがあった。
牧志 浩太
「佐倉さんは、殆ど死にかけてた。
俺は……、佐倉さんが本当に死んだと思って。
でも、佐倉さんの身体はまだ保たれていた。佐倉さんの身体にとりついたものが時間を歪めて、佐倉さんを保ってくれていたらしい」
佐倉 光
「とりついた……」
ゾンビみたいな物かな。いや死んでないのか。
死んでなかったんだよな?
佐倉 光
「ああ、それで動かない俺を世話してくれてたんだな」
ほんとうに、それだけか?
牧志 浩太
「そうだよ。
俺は佐倉さんを、生きているものとして扱わなきゃいけなかったんだ。

小屋の外には死体を狙っている化け物がいて、死んだと認めたら、そいつが佐倉さんを奪いに来る。そんな状況だった」
佐倉 光
「……」
死体。
さっき生きてたって言ったぞ。どっちなんだよ。
いや生きてたんだよな? そうじゃないと俺今生きてるのおかしいって事になるよな?
佐倉 光
「そりゃ……大変だったな。
もしかして、だから、延々と話しかけてた?」
牧志 浩太
「そう。
おはようと挨拶して、風呂に入れて包帯を換えて、生きているように座らせて、食事を共にして歯磨きをして、少し話して寝るんだ。

外にいる奴の気配を感じながら、ずっと、ずっとそれを繰り返してた。
死んでなんかないって、ずっと言いながら。自分でも分かってたのに。ただ奪われたくなくて、いつまでこうしてればいいのか分からなかったけど、ずっと、ずっと、ずっと」
呼吸が浅く、速くなっていく。不安定に彼の背がゆらゆらと揺れる。
佐倉 光
「……」
やっぱり俺のこと死んだと思ってたんだよな。
佐倉 光
「そうか。辛かったな。そうやって俺をつなぎ止めて……」

恐ろしいことに気付いてしまった。
佐倉 光
「お前さっき、何年もって言った?」
牧志 浩太
「ああ、うん。
途中から時計も止まってたし、日記に書く気力もなくなってたから、正確には分からないんだけど。
歪められた時間に巻き込まれてた、んだろうな。たぶん」
牧志 浩太
「だから、話すのが怖かったんだ。

死んでなんてなかった。なかったってことにしないと、死んでたって認めたことを口に出してしまったら、今からでもあいつが奪いに来そうで」

牧志の視線が一瞬、玄関の扉に走った。
あの時、玄関の扉はロープで縛られていた。何巻きも、少しも動かないようにぎっちりと。

彼はもう何年、それを恐れ続けたのか。
佐倉 光
「壮絶すぎる」
なんだそりゃ。正直、想像を絶する。
佐倉 光
「意味分かんねーよ。死体と何年も? それも世話をして話しかけながら?
扉に縄をかけて閉じこもって?
っつーか世話って食事とか? 食えないだろ俺。
話しかけても返事しねーだろ。
狂うだろ普通。精神ぶっ壊れるだろう」

壊れていた。実際壊れていたのだ、牧志は。
何年もかけてそれを日常にして、狂気としていなかっただけで、壊れていた。
だから俺の言葉がたまに意識に届いていないようだったのか。
だから俺の心臓の音を聞きたがっていたのか。
佐倉 光
長いため息をついた。
佐倉 光
「俺を、守ってくれてたんだな。
こうしていつも通りになるまで」
佐倉 光
「大丈夫、終わったんだ。俺は生きてるし、お前も生きてるよ。
ありがとう。もう大丈夫、終わってるんだ」
牧志 浩太
牧志は脈を取ろうと、あなたの手に両手を伸ばす。
佐倉 光
腕を伸ばして手首を晒し、牧志の手に委ねる。
佐倉 光
「話してくれて良かった。辛かったな。

大丈夫、何かあったら俺が退治してやるって」
笑って冗談めかして言う。
牧志 浩太
「ああ……、本当だ。生きてる。佐倉さんも、俺も、生きてる」
少し苦しいほどの力が手首にかかった。手首を取って、牧志はあなたの脈動を確かめる。
牧志 浩太
「俺が服になってから、ずっと心音が響いてたんだ。
もうずっと聞いてなかった、忘れてた音が、頭の内側でずっとずっと響いてた。
一瞬それが何の音か分からなかったんだ。でもすぐに気づいた。佐倉さんの心音だ、って。

それを聞いてるうちに、ああ、生きてる、生きてるって思えてさ。
もしかしたら、大丈夫かもしれないって思えて……」
牧志 浩太
牧志の眼からぽろぽろと涙がこぼれた。
堰き止められていたものが溢れ出すような泣き方だった。
涙にひずんだ声で、そうだな頼む、と笑い返した。
後遺症
KP
※差し支えなければ、この流れにて次シナリオまでに前回の後遺症を脱する、とさせてください。
佐倉 光
いいと思います! 不思議な符合だ。
KP
ありがとうございます! そうあれの次が心音聴き放題になったの、不思議な符合だなって。
牧志はラストで佐倉さんの声を忘れてしまっていたけど、それ以前にあんな生活を数年送っていたら、心音の響きを先に忘れてしまうよなってなって表の流れになりました。
佐倉 光
それを聴き放題になるの、本当に狙ったみたいな流れだ。
KP
そんなつもりはなかったのにほんとに綺麗な流れになった。

佐倉 光
「大丈夫大丈夫。俺、運だけは強いから!
万一のことがあっても、悪魔にでもなって帰ってくるからさ。
今後ともヨロシク! つって」

死体と一緒に過ごしていたらしい牧志には、俺は死なない、とはもう言えなかった。
それでも、死んだからって終わる気はないのだと笑って見せた。
牧志 浩太
「ああ、いいなそれ!
そうなったら俺、先輩に師事して悪魔使いになろうかな」
茶化した言葉に、牧志は涙を浮かべたまま笑う。
佐倉 光
「地獄の底に降りたって、戻れることはあるんだろ?」

あの事故以来の痛みが体を襲う。かすかに指先がひきつったかもしれない。
これはいつか命取りになる痛みだ。
それでもこれは、牧志が守ってくれた命の痛みだろう。
牧志 浩太
「……そうだな、俺だって戻ってきた。それなら、きっと」

あんなこと、そう二度とはない出来事だ。分かっている。
あの俺は、あれだけもがいても、とうとう取り戻せなかった。
あの佐倉さんは、俺を止めることしかできなかった。

でも。

微かに跳ねたあなたの指先に、牧志は手を重ねる。
その痛みを和らげようとするように。
佐倉 光
日々悪魔と戦って、変な事件にも遭遇して、まあこんな事もあって当然ってやつだ。痛みを共有できる相手がいるだけ幸せかも知れないな。
KP
牧志が立ち直っていくためのすごくいい会話であると同時に、牧志を完全に諦められない呪いに縛りつけてしまう会話なあたり、業が深くていいなぁ
佐倉 光
「さっさと忘れちゃえよ、そんなあったかなかったかも分からないようなこと。
お前は運悪く死にかけてた俺を助けてくれた、それだけでいいだろ。
今の話は俺が覚えておくからさ」
佐倉 光
「人間、都合の悪いことは忘れてくもんだろ。忘れていいんだよ」
佐倉 光
さて、俺は今までに何度牧志に助けられたっけ。もう数える気にもならない。その時どう辛かったとか、そんなこといちいち覚えておく必要は無い。
それでもそのひとつひとつのありがたみを忘れたことなんかない。
きっとそれでいい。

今日引き裂かれた牧志を見て絶望しかけたことも、忘れてしまっていいんだ。ただ、次あんなことがあった時に、可能性を考えて、選択を誤らないように覚えておくだけで。
佐倉 光
……もう二度と無いよな? あんなことは。
牧志 浩太
「無茶言うよ。でも、そうだな」
そっと、牧志はあなたの手から手を離す。
牧志 浩太
「今なら、忘れていけそうだ」
あの時間が何年続いていたとしても、今の方が強い。
KP
ようやくなんでもなくなった日常の静けさが、今日という日を見下ろしていた。


「Look, LOOK Everyone!」

End.


佐倉 光
たぶん話してしまった方が一人で抱えるより楽だろうと思った。
さすがに「俺は死なない」はもう説得力ないからこんな言い方になっちゃったけど。
KP
話してしまえば吐き出せるものでもありますしね。ずっと内に抱えてしまうより、牧志にとってはその方がよさそう。
佐倉 光
ありがとうございました!
最初地味ーな遊び方しててごめんな!
報酬と成長
KP
☆生還報酬
SAN回復 佐倉さん: 1d6 牧志: 1d3
※牧志にラストの《SANチェック》入れるのを忘れてたため
佐倉 光
ラストの《SANチェック》って、襲われたことに関してかな。
KP
です。
佐倉 光
そりゃ痛くなくてもな、受けるよな……
KP
絶対《SANチェック》入るよなポイントなのに、自由行動箇所だったせいで入れ忘れました。
佐倉 光
1d6 Sasa BOT 1d6→2
SAN 72→74
牧志 浩太
1d3 Sasa BOT 1d3→1
SAN 51 → 52
佐倉 光
牧志くん基礎値低いとは言えだいぶやられてるなぁ。
KP
「しんでなんかないよ」のダメージのせいで初期値を割ったという、非常にらしい感じ。
あとは最大値がだいっぶん削れているのもありますね……。
まさかの最大正気度67。
佐倉 光
成長はナシか。

佐倉 光
きになることといえば!
やっぱりいつも通りシリアスになっちゃってて選べなかった選択肢周り!
仕上げの差ってどんな感じだったんでしょう。
KP
ふんわり仕上げナシだとぺったんこになったまま出てきます。
お急ぎコースだとSIZが半分になって出てきます。
ドライだとミイラみたいになります。
実はふんわり仕上げでジャスト正解だったんですね。
佐倉 光
そうだったのかー。
実はオプション自体がギャグトラップで、
骨抜きとかモフモフになって出てくるのかなと思ってた。
通常仕上げオプションなしが正解かなと思ってました!
KP
そうだったんです。
シナリオにはないけど、モフモフになって出てくる牧志も面白いなぁ。
佐倉 光
ドライはやっぱりそうか……w
KP
ドライだけ余計な《SANチェック》入ります。
佐倉 光
ドライってそういう意味じゃねーからッ!(クリーニング屋勤務経験者)
KP
全くだ! >そういう意味じゃねーから
佐倉 光
一回くらい不正解踏んでおこうと思ったら正解だったかぁー。
KP
だったんです。
どうしようかなと思ったけど、それまでの家でたっぷり遊ぶ編+シローと一緒にお外で遊ぶ編+ハプニング編の三段仕立てで十分楽しかったし、あそこはそのまま通しました。
最初地味に遊びまくって下さったおかげで三段構成みたいになってより楽しかったです、ありがとうございます!
佐倉 光
私も地味な遊びからダイナミックな大騒ぎまでできたし、シローとも遊べて楽しかったです。
これシナリオにないんだろーなーって思いながらやってたw
KP
そうそう、シローと初めてたっぷり遊べたのも楽しかった。
あ、シナリオなんですが、今回は描写台詞を盛り倒した+オープニングエンディングの会話以外、ほぼ改変はありません。

というのが、実験パートは「一例は示しておくけど、行動は好きに遊んでイイヨ!」ってシナリオなんですね。
佐倉 光
なるほどー
最後に犬に襲われるのってシナリオにあるのでしょーか。
KP
・実験リストに示された行動の結果(それ以外はKPが好きに決めてOK)
・一例としてこういうことができるよ、という提示
・実験パートがすぐ終わっちゃいそうな時のキーパーガイド
がシナリオにあって、あとは好きにしろー! っていう自由度の高いシナリオなんですね。楽しい。

犬に襲われるシーンはありません。
「切断されても痛くないし死なない」っていうのがシナリオにあって、じゃあどこかで布を切断したいな+うっかり布が飛ばされちゃうイベント面白いな、ということで生えました。
佐倉 光
なるほどなるほど、いい緩急で面白かった!
KP
着てるパーカーが切断されちゃうことそうそうないよな、と思ってた所にいい感じに生やせて、ほんとにいい緩急になってこちらも楽しかった!
佐倉 光
せいぜい吹っ飛んで泥だらけになっちゃうくらいを想像してて、車に一回くらいひかれる? とは思ってたけど、犬に引き裂かれていたから「そうきたかー!」ってなりました。
そんな大事件が起きたら駆け込む理由にもなるしいいタイミングだったし、ナイスでした!
KP
そうそう、車も考えたけどもうちょっとドタバタ感を上げたいなと思って犬が登場しました。
犬の名前がミーちゃんであることに理由は特にありません。
佐倉 光
ミーちゃんはウケました。佐倉それどころじゃなかったけど。
KP
やったぜ。>ウケた
佐倉 光
鼻にラーメン突っ込んじゃってごめんね牧志……
KP
仕方ないよあの状況で牧志にもちゃんとラーメン食べさせようとしてくれただけで佐倉さん優しいよ……。
一度入ると出てこないとかトイレいらないとかはシナリオになくて、その場で生やした設定ですね。
入ると出てこなくした理由は、トイレいらないのと同様「服状態でもどしたら酷いな」「あの状態で排泄必要だったら構図がひっっどいな」です。
佐倉 光
ピョン吉だってトイレは行かないからそれでいいと思うんだ……
佐倉 光
ラーメンはねー、一人で大盛り頼んで人が見てないときに食べさせた方が楽なんだけど、それだと簡単すぎてつまらな……もとい、箸と丼共有は嫌じゃろと思ったからですね! 変なところで真面目(?)な佐倉再び。
KP
変なところで真面目な佐倉さんありがとう面白かった。シローがいたことでよりドタバタ感アップしましたしね。
佐倉 光
また佐倉のパーカーが一着犠牲になった……
しかし本当に無敵状態だったんですねぇ。
シリアスにならないキャラクターで遠慮なしにドタバタするのも楽しそうだ。
そういえば、牧志が平面になっちゃったのあのチラシのせいなんですか?
KP
なのです。シリアスにならないPCでメッチャクチャするのも楽しそうだなぁ。
あとパーカーじゃなくて変なとこにくっついちゃうとか背中についちゃうとかも面白そう。

>チラシ
です。あのチラシに《逆転移(基本P.256)》の呪文(人間の臓器を外部へ転移させる呪文)を応用したオリジナル呪文《無機物に人間を宿す》が仕掛けられていました。

上から降ってきたのはシーン的にギャグっぽい、もとい、起動時の衝撃でチラシが舞い上がったからです。

最後のシーンでクリーニング店に積まれた服の山を調べると、人間の臓器だけがアップリケになってくっついた服が見つかって《SANチェック》なったりします。
佐倉 光
ピギャア
周囲調べるかなぁと思ったけどちょっとそれどころじゃなかった。
つまり細切れで転移させられる人間が今までに何人も居て、牧志でやっと全身転移できたと……
心臓だけ転移させて、でも抜かれた人がなんかつながってて無事なら、どこぞのラスボスみたいなコトできそうなんですけどね。
普通に抜かれて死んじゃうのかなー。
KP
そういうこと……
牧志が初めての成功例だったんです。
佐倉 光
こわいわ。
KP
ギャグシナリオでも狂信者は狂信者だった。
佐倉 光
ともあれ牧志くんが何年もかけて削られた心を癒やせるきっかけになったなら、この奇妙な事件も無駄じゃなかった……
KP
そう、ほんとに綺麗につながったなと思います、偶然にも。いきなりドタバタをぶつけられたおかげも、心音聴き放題だったおかげもあって、そう、無駄じゃなかった。
佐倉 光
本人も正確な時間分からなくなっちゃってるから、普通に何年も過ごした感覚とは違うんだろうけど、
やっぱり辛いものは辛いものなぁ。
KP
牧志の日常が「そういうもの」になってしまうほどの長さでしたからね。
オープニング時点ではまだ「壊れた」ままだった牧志が「いつもの牧志」に戻っていけるきっかけ、狂気を呑んでしまった牧志が「正気」に戻れるきっかけは間違いなく今回だった。
あの時佐倉さんが死体だったことをちゃんと話すことができましたからね、今回。
佐倉 光
あのドタバタシナリオらしからぬプラネタリウムは彼にとって大事な時間だったんだなー。
お帰り、牧志。

後で「あれ、結局俺どうやって生き返ったの??」ってなってそうな佐倉。
KP
そこは牧志もちゃんと知らない所だから結局謎のままなのだった。>どうやって生き返った

ひとこと
佐倉 光
牧志が飛ばされた挙げ句大変なことに!?
茶番シナリオなんだけど、やっぱり体験している本人にとってはジョークにならない事も多いのです。

しかし、思わぬ所から心が癒やされることもあるのだなぁ……


【置】CoC『俺の部屋のカーテン幅が足りないんだが』 佐倉&牧志 2

がりがり。
がりがり。

CoC『静寂舞手』佐倉&牧志 12

「ああ。俺達は戦友だ」

CoC『瓶の中の君』牧志&佐倉 2

「狭いところってのは落ち着くよな……」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


マモノスクランブル『アンラッキーランチ』

「ゴハンとってくのはわるいやつだよねェ」
「バチがあたってほしい? シかえししたい?」
「バッチバチにバチ当たればいいのシ!」