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こちらには
『Look,LOOK Everyone!』のネタバレがあります。

本編見る!
佐倉 光
ではまず、着たままで水を汲んできて、口元にコップを当ててみよう。
でも平面なんだよな。
牧志 浩太
布に描かれた顔にしか見えない平面にコップを近づける。
「口元まで水が近づいてきてる気がするな。触れさせてくれたら飲めそうな気がする」
佐倉 光
ではコップを口につけて傾けてみる。
KP
布が濡れるかと思われたが、染みは広がらなかった。
代わりに牧志の喉が微かに動いて、水が減っていく。

コップの水が全部なくなると、牧志はぷは、と小さく息を吐いた。
布は濡れていない。
牧志 浩太
「よかった、飲めるみたいだな。……内臓どうなってるんだ、これ?」
佐倉 光
「おおー、面白っ。マジックできそうだ」
つい素直な感想を吐いてしまった。
裏も確認して、布が濡れていないのを確認。
ついでに裏から触ったとき牧志に感覚があるのかも確認。
牧志 浩太
「微かに押されてる感じはあるな。頭を後ろから押されてる感じ」
裏側を確認しても濡れてはいない。
佐倉 光
「いつかみたいに別の人間の腹に収まってるなんてこたないだろうな?」
ぺらぺらさ加減があの時の比ではない。
牧志 浩太
「うーん、実は俺の身体なり内臓がよそにあって、ここには繋がってるだけ、ありそうだな」
佐倉 光
「飲むのいけるなら食べるのもいけそうだな。
何食べてみる?」
家に置いてあるラインナップが牧志からも見えるように、体ごと動いて見せる。
牧志 浩太
「布の顔が動いてる時点でマジックどころじゃないな。あ、じゃあカレー食べたいな」
彼は布地を動かしてレトルトカレーを指す。
佐倉 光
「……このままでトイレ行きたいとかないだろうな?」
牧志 浩太
「……それはなさそう、と思う。うん、大丈夫。
飲んだ物どこ行ってるんだ? 腹に溜まる感触はあるんだけどな」
佐倉 光
レトルトカレーを温める。
そういえば本当はこの後食事に行く予定だったんだっけ。
ちょうどシローもいることだし、カレー温めて皆で飯にしよう。
佐倉 光
「シローはハヤシでいいか? カレーに挑戦する?」
KP
シローはちょっと考えて、「カレー!」と手を挙げた。挑戦してみたいらしい。
佐倉 光
それじゃバー○ントの甘口でも出してやるか。
佐倉 光
「じゃあ牧志のは超激辛のやつにしてやろ。逃げ場ないもんな? そこ」
言いながら出すのは牧志がよく食べてる普通のカレーだけどね。パッケージは見せてあげない。
牧志 浩太
「え、そんなのありか」
KP
「げきから?」うっかりシローが興味を示した。
佐倉 光
「シローは尻から火が出るからダメー」
牧志には返事をせずにレトルトを温める。ご飯もレンチンでいいな。
佐倉 光
「それにしてもここ数日とは逆だな。
今度は俺が牧志の世話をしなきゃならないみたいだ」
茶化すように言う。
牧志 浩太
「……ああ、そうだな。ここ数日の分、返してもらおうかな」
一瞬、息の詰まるような沈黙があった。少し経ってから、ぎこちない軽口を言う。
佐倉 光
あー、ジョークにできるほどまだ軽くないか。しくじった。
もしかして俺ジジイになってた程度じゃなかった?
俺が思ってたより長期間だった?
後で聞き出したいけど、今は教えてくれないだろうな、これは。
佐倉 光
「考えてみりゃあ、それっぽいこと書いて提出するだけでも……」
いい気はする。実験しないで。いい気はするけど。
試したい。

結局それ以上口にはせず、カレーを温め続けることにした。
すまない牧志。気になるんだ。
佐倉 光
「ちゃんと食えればいいけど、カレーって服に残っちゃうと割と取り返しがつかないぞ。大丈夫かな」
ずっとカレーが顔に染みついてるってのもなかなか悲惨な気がするぞ。
佐倉 光
※カレーシミは日光に当てると消えるんだそうですよ、奥さん。佐倉がそんなの知ってるかどうかは……たぶん知らない。
あと、そうだとして日干しにされる牧志もわりかし気の毒。
牧志 浩太
「えっ、俺元に戻るまでカレー臭いままになるのか。
佐倉さん、落とし方調べよう落とし方」
1d100 77〈心理学〉 Sasa BOT 1d100→92→失敗
佐倉 光
「えーと漂白剤につけ込んで……」
佐倉 光
「……まずくね?」
牧志 浩太
「えっ俺真っ白になるのか」
佐倉 光
「それもあるけど、普通に飲み食いできるなら漂白剤も体に入ってくるだろ。
あんま良くないだろフツー」
牧志 浩太
「あっ、そうか。っていうか、洗ったら溺れる?」
色々まずいことに気づき始めたらしい。
KP
シローはそんなことには気づかぬままカレーを楽しみにしている。
佐倉 光
「溺れるようじゃ洗濯できねぇし。手洗い? 洗剤もまずいよな」
今後の実験に繋がる課題を書き留めつつ、カレーが温まるのを待つ。
牧志 浩太
「洗濯機は怖いな…… だな。やさしく頼む」
佐倉 光
自分の顔に手を当てられ洗われる想像をして、妙な気分になった。
もみ洗いとかどうなっちゃうんだ。自分の目で自分の顔を見るなんて希有な経験できちゃうのか? おもしれー。

レンジが軽快な音楽を鳴らしたのでまずシローのご飯を皿に出してカレーをかけてやる。
それから大人の分だ。
KP
シローはカレーを目の前に目を輝かせながら、あなた達の分ができるのをきちんと待っている。
佐倉 光
シローってなんでこんなに行儀がいいんだろう。あいつが躾けたとも思えないんだけどな。
お陰で助かってはいる。
KP
なんとなく、あなたはその行儀の良さの根底にあるものに気づくだろう。
彼は言葉と振る舞いこそ幼いが、年齢に比して賢かった。そして、あなた達への深い感謝の気持ちを抱いている。

今もまだどこかで、この暮らしは彼にとって当たり前のものではないのだ。
佐倉 光
シローはもう少しワガママになってもいいんだけどな。
そのへんはおいおいかな。
佐倉 光
※牧志って某ピ○ン吉くんみたいに服ごとダイナミックに動いたりできるんだろうか。というかいままでそういうアクションしてた?
KP
※パーカーが引っ張られていた感じからして、やろうと思えばできると分かるでしょう。
佐倉 光
出来上がったカレーを皿に盛り付けて、テーブルに持って行く。
佐倉 光
「さーて、実験……じゃなかった、食事を始めよう。
いただきます」
KP
「いただきます!」
シローの嬉しそうな声と。
牧志 浩太
「い、いただきます。佐倉さん、こぼさないように頼む」
牧志の色んな意味で覚悟したような声がその場に合わさった。
KP
この話PC佐倉さんでやってよかったな、と思います
佐倉 光
ギャグ補正で遠慮や警戒心が低めになっております。
KP
いいと思います。暴走寄りの佐倉さん楽しい。
ギャグ補正で無茶しても別に死なないので楽しんでいってください。
佐倉 光
「よし」
一応スマホで録画してっと。
佐倉 光
カレーをすくって自分の胸の部分に近づける。
水と違って何だか緊張感があるぞ。
だってデコボコしてるわけじゃないし、匙を口に突っ込めるわけじゃないからな……
いやそれとも食べるという意志があれば匙が入っていったりするのか。
どうなんだ。

興味津々である。
牧志 浩太
牧志はぎゅっと目を閉じ、身構えながら口を開けて匙を待つ。
KP
盛られたカレーが布に触れると、あなたの持つ匙に微かな振動が伝わる。
匙の上のカレーが減っていく。咀嚼するように口が動く。
布の中に匙が入っているわけではないのに、人に食べさせているという感覚があった。
佐倉 光
「おお、なんだこれ。空間が曲がってる?
不思議な事になってんな。
シロー、スマホとって、逆から撮ってくれよ」
牧志には悪いけど興味は止まらない。
あとカレーは激辛じゃないぞ、普通のだ。
KP
シローはあなたに仕事を頼まれたことが嬉しいようで、嬉しそうにスマホを取り撮影を始める。
牧志 浩太
「あ、普通のだカレー。なんだ冗談か」
ある程度食べてそう苦笑する。
佐倉 光
「本当に食べた奴どこ行ってんだ?
ここに全部圧縮されているのか転移してるのか……
あのジジィに詳しく訊かないとな」
質問事項のメモとってる。
牧志 浩太
「本当にな。何となく内臓が動いてるような感触もあるのに、尿意とかはないみたいだし。どうなってるんだこれ?」
佐倉 光
「アップリケ剥がしたらまずいのかな」
等と言いながら半分ほど食べたところで……
とうとううずうずが抑えきれなくなった。
佐倉 光
「悪いけどちょっと試させて!」
ジッパーを降ろして牧志を真っ二つにする。
佐倉 光
「この状態で食えるのか気になって気になって……!」
牧志 浩太
「え、ええ、この状態で!?」
牧志は落ち着きなく、はくはくと口を動かしている。
佐倉 光
カレーをひとすくい掬って、右側の『口』に近づける。
一応カレーが関係ないところに付着したりしないよう、パーカーの上の方を手でつまんで布が垂れないようにしている。
牧志 浩太
「口の片側にだけカレーが入ってくる……」

咀嚼する彼の口は両方とも連動して動いている。
これ、片側ずつに別な物を入れたらどうなるのだろう?
佐倉 光
それやってみたかったんだよね。
佐倉 光
片っぽにカレー入れつつ、もうかたっぽにそーっとそのへんにあったチョコレートを一欠………
KP
チョコレートが布に触れた途端、飲み込まれるような振動と共にあなたの手から消える。
牧志 浩太
牧志は突然来た甘味に目を白黒させる。
「え、甘い、チョコかこれ?
カレーにチョコって合うような合わないようなやっぱり合わないような」
佐倉 光
「あ、普通に混ざるんだ。
大丈夫大丈夫、隠し味でチョコ入れるじゃん?」
隠れてないけど。
牧志 浩太
「隠れてないな全然」
佐倉 光
「別れちゃってても普通に何でも食えそうだな。口の左右から突っ込まれる感じかぁ、なるほど」
真面目にメモを取る。
真面目だぞ。真面目に興味を持っているんだ。
何やったら面白いかなぁ、なんて考えてないぞ。
服のジッパーを元に戻す。

例えばだ。

カレーを食べ終わった後に、アイスキャンデーを取り出す。
で、口の前あたりに持っていく。
こう、どの程度近づけたら舐められるかって実験を……
佐倉 光
ああ、俺今、大村と大差ないかも。
ちら、と思った。
牧志 浩太
「……面白がってるな? いや、無理もないとは思うけど」
佐倉 光
「うん。悪いけど相当面白い」
つい真顔で答えてしまった。
牧志 浩太
「だと思った」
分かってた、とでも言わんばかりに苦笑する。
布に描かれた絵に見えるのに、それが遅れなく変形して牧志の表情を描く。
KP
どうやら彼が食べられるのは、布に触れた時らしい。
布は濡れていないのに、アイスキャンデーには舐めた痕跡が残る。
佐倉 光
「接触した部分だけが歪むというかなんというか……」
だいぶ大胆になってきた。口の所なら押しつけても汚れたり濡れたりすることなく牧志の口に届くみたいだ。
KP
そんなことをしているあなたを見て、シローまで好奇心を刺激されたらしい。
スマホを持ったまま、目を輝かせてチョコキャンデー(先日シローに買ってあげたものだ)を持ってきた。
牧志 浩太
「うわっ、シロー、汚れる、汚れるってば」
あっ、シローが牧志の頬を汚してしまった。
チョコレートの汚れがついた……。
佐倉 光
「あーあ」
反射的にティッシュを取って拭き取ってみようとする。
……手触りはやっぱり布地なんだろうな。
牧志 浩太
「わっぷ」
擦ったときの手触りはやっぱり布地だ。
パーカーを脱ぐ時にも違和感はなく、脱げば牧志の顔がついたままのパーカーがあなたの前にある。
牧志 浩太
「変な感じだ、身体の感覚はちゃんとあるのに、身体が軽くなって風に煽られそうな気がする」

牧志が動こうとしてみたのか、空中で布がひとりでにひらめく。
佐倉 光
「洗うしかねぇか……濡らすのは最後にしたかったんだけどな」
なにげに初めてのアクションなのでちょっと緊張するが……脱いでみる。
まあ大丈夫だろう、脱いだら生命供給たたれて死ぬ、とか言われてないし。
KP
ちなみにシローが服を汚したりしてるのはKPの誘導(進行)ではなく、シローもKPも好きに動いてるだけなので、気にしなくて大丈夫です。
佐倉 光
はーい。シローと遊べて楽しい。
KP
三人でわちゃわちゃできて楽しい。
佐倉 光
「じゃあとりあえず水につけてみるか……ってもしかしてこのまま飛べたり?」
ソファの上で手を離してみた。
牧志 浩太
「わっ」
牧志は布で羽ばたこうとしてみたようだったが、結局ソファの上にぽとりと落ちた。

ソファの上で布がもがくように動いている。ちょっと気持ち悪い。
佐倉 光
「うーん。動けることは動けるけど……って、顔だけでどう動いてんだ」
表に返す。
牧志 浩太
「俺からしたら、全身あるような感覚なんだ。
顔の下に体が繋がってるようなというか。
でも、手足を動かしたり頭を振ったりすると布の動きになるらしい」
牧志は少し考えて現状を説明する。
佐倉 光
「シロー、風呂の温め押してくれ」
声をかけて、服をソファの上に顔が上に来るように綺麗に広げる。
KP
「はーい」
シローは風呂場までてくてくと歩いていく。追い焚きを開始します、という音声が風呂場から聞こえた。
佐倉 光
「思い切り動いてみて」
どのくらいの高さはねられるとか、ずらす程度なのか、とか。
俺の体引っ張ったくらいだし、結構力があるんじゃないかな。
牧志 浩太
ソファの上でジャンプするように布が跳ねた。
それからしばらくソファの上でもがくと、布を手足の代わりに這いずるような格好で、ずるずると動き出した。
ソファから落ちそうになって慌てて停止する。案外動けるらしい。
牧志 浩太
立ち上がろうともしたようだが、そのままひらりと地面に突っ伏してしまった。
立ち上がることはできないようだ。
牧志 浩太
「……視界が上か下に向くからやりづらい」
佐倉 光
「なるほど……動けなくはないけど、自立するのは無理か。
ハンガーに吊っても自由に動けはしなさそうだしなー」

風呂が沸くまで別のことでもするか。
佐倉 光
「ちょっと畳んでみる。苦しかったら言ってくれよ」

顔を内側にしてくるくる巻いたり畳んだりしてみる。
こんな状態だと体感どんな感じになるんだろうなぁ。
牧志 浩太
「そういうことみた……わわわ」
くるくると畳まれていくと、牧志が驚いた声を上げる。
牧志 浩太
「変な感じだ。
苦しくはないんだけど、体全体が折り畳まれてるような気がする。あと何も見えない」
牧志もちょっと説明するのに慣れてきたような気がする。
佐倉 光
ところで……温度差実験どうしよう。
KP
さて温度差。どうしたものか。
ドライヤーの熱風やコインランドリーの乾燥機という手もあるし、氷を当ててみるなりという手もあるだろう。
そういえば近所の科学館で極地体験の催しをやっていた気もする。
もっと過激なこともできるだろうが……。
佐倉 光
極地体験……楽しそうだな。
KP
極地体験。マイナス30℃が体験できるという催しである。
普段の極地体験施設には風がないが、今回はそこに風を起こす設備を特別に設置しての体験ができるそうだ。ハードそうである。
地味すぎる。
佐倉 光
ひたすら地味な遊び方してるけどいいのかなぁこんなのでw
KP
ひたすら遊ぶシナリオなので面白ければいいと思いますイエーイ。
家の中でもここまで色々できるんだなぁ面白い、とKPは思っています。
KP
あ、でも博士いわく「日常的な着用に耐えうるかも知りたいから、着用したまま外出して実験してくれぃ」とは言ってますね。

つまり地味に遊び倒したあと外出「も」すればいいんじゃないでしょうか。強制ペア(になる)ルックで街を歩く羽目になるのもメインっぽいので。
佐倉 光
okok、洗うとかそういう自宅でやる必要があるの終わってテンション上がったらやりますね。
ペアルックってそういう事じゃない。
KP
全くそういうことじゃない。

佐倉 光
「布は布って事かぁ~」
軽く引っ張ってみる。アップリケならそんなに伸びたりしないよな。
KP
軽く引いてもアップリケの部分は材質上そんなに伸びないようだ。
佐倉 光
「『牧志』なのってアップリケのとこだけなのかな」
袖の、顔がついてないところを引っ張ったりしてみる。
佐倉 光
「ここなんか感じる?」
牧志 浩太
「いや、何も。そこは関係ないみたいだ」
佐倉 光
「なるほど、とりあえず顔の所だけってことか」
そこ以外切ったり、アップリケ剥がしても大丈夫なんじゃないかな、
などと思わなくもなかった。
やらないけど。着られなくなるし。

つまり実験するならこの部分だけでいいって事だ。
佐倉 光
「あと気になるのは衝撃実験かなー。
どういうの想定してんだ?
人とぶつかる? 壁にぶつかる? 悪魔に引っかかれる……はねーよなさすがに」
もはや衝撃でも何でもない。
牧志 浩太
「正直味わいたくないけど……。
服を思いきり絞るとか、洗濯機に放り込まれるとか?」
二番目は自分で言ってて嫌すぎる、と牧志が呟いた。
佐倉 光
「なるほど、衝撃というか耐性か。それは確かに服としては必要だな。
あ、シロー、体洗ってから入れよ」
言いながらメモを取る。
KP
「はーい」
KP
そんなことを言っていると、お風呂が沸いたという音声が聞こえてきた。
シローがあひるちゃんセット持参でお風呂を楽しみにしている。
佐倉 光
「お、風呂が沸いたな。
んじゃ洗濯?  風呂?  まあいいか。
洗濯板はねぇんだよなうち。
触覚はあるみたいだし、そういう扱いすると痛いんだろうな」
ぶつぶつ言いながら服を脱いで牧志持って風呂へGoだ。
KP
風呂は柔らかな温もりを湛えてあなたを歓迎してくれる。
KP
シローが言われた通りにシャンプーハットをかぶり、体を洗っている。
佐倉 光
「……」
一瞬考えて、実験の趣旨的には服として扱うべきだな、と判断した。
佐倉 光
洗面器に湯を張って、まずはそこに置いてみる。まずは服の部分に水が染み込み、それからアップリケに到達するはずだ。
佐倉 光
「まずは洗面器に浸けてみるから、何かあったら……言ってくれ」
何かあったら、言う、しか伝える手段がないの地味に危ういな。
佐倉 光
アップリケが濡れている間溺れ続けるなんてことはないだろうな?
牧志 浩太
「ああ、分かった。
あー、苦しかったら暴れるから、そうしたら引き上げてほしい」

痛かったら左手を上げてくださいってやつだ。
KP
吸水性が高くはないが防水でもないパーカーに、じわじわと水が染み込んでいく。

牧志の表情に緊張が張る。
口に水が入りそうになったのか、口が閉じられる。

やがて、ひたひたとパーカーが水を含みきった。

暫く沈黙がその場に落ちた。
黙っている牧志に苦しそうな様子や、暴れ出すような様子はない。
佐倉 光
そのまましばし待つ。
呼吸を止めているだけなら一分もしないうちに暴れるはずだよな。
洗面器の横にしゃがんでじーっと見ている。
合間にシローの状態チェック。首の後ろ追加で流して背中ゴシゴシして……
佐倉 光
「オケ、入っていいぞ」
KP
あなたに背中を流してもらったシローが喜んで湯に入る。ざぶん!
佐倉 光
おっと、目を離しすぎた。牧志は大丈夫かな。
牧志 浩太
牧志は暴れていたり苦しそうにしていたりすることはなく、水の動きに身を任せるように穏やかに目を閉じていた。
佐倉 光
軽く指先でアップリケを揺すってから湯から上げてみる。
佐倉 光
「呼吸平気?  温度とかは?」
牧志 浩太
「ぷは、お湯の温度は分かるみたいだ。
それから分かったのが、口を開けてると水が入ってくるけど、口を閉じてれば平気らしいってこと。
別に息苦しくなかったし、気も遠くならなかった」
佐倉 光
「それはなかなか面白……興味深……うん」
なにをどう言ったって繕えない。服だけに。
牧志 浩太
「面白そうでいいよ。俺も正直何だこれ? って思ってる」
どうにも繕えない様子に苦笑する。
佐倉 光
「本格的に洗濯しても大丈夫そうだな」
牧志 浩太
「……腹は減るのに呼吸はいらないとか、俺、本当にどうなってるんだ?」
佐倉 光
「腹は減るし食えるんだよな。生き物ではあるんだろうな。
しかし同時に布でもある……」

自分の体を洗って、今度は牧志のほっぺについた汚れを落としてみるか。
石鹸を汚れにゴシゴシつけて、普通にもみ洗いしてみる。
牧志 浩太
「そうみたいだ。わっ、……?」
石鹸をつけて洗われると、慌てて口を閉じつつ、不思議そうな顔をした。
洗われ終わると口を開く。
牧志 浩太
「何だか変な感じだ。まず、口を閉じてれば鼻に石鹸や水が入ったり沁みたりはしないみたいだ、っていうのが一つ。
で、そっちはいいとして、もう一つ変なことがある」
牧志 浩太
「触られてる感じはあるんだけど、結構強くされたのに痛みがないんだ。
今の俺、痛覚がないし、呼吸もしてないんじゃないんじゃないのかな」
牧志 浩太
そう言うと、牧志は口を開いて深呼吸するような仕草をした。
「やっぱり、そうだな。肺が膨らんでる感じがない。何だこれ?」
KP
そういえば、水中に泡も浮かんでいなかったし、牧志にカレーを食べさせた時にも手に呼気を感じなかったと気づくだろう。
牧志 浩太
「……痛覚ないのに、カレーの辛さは分かるんだな。やっぱりよく分からない」
佐倉 光
「口閉じてればバリアが張られる、みたいになるのかな。
呼吸もしてないのか。
……へぇー……洗濯機いけそうじゃん」

意外と丈夫そうだ。
服として扱うに都合のいい感覚が消されている? らしい。
となればもうちょっと大胆にやっても大丈夫そうだな。
牧志 浩太
「……ものすごく酔いそうだ、洗濯機。
このまま酔ったらどうなるんだ?」
佐倉 光
もう大丈夫だとは思うけど、そーっと目の所触ってみよう。
KP
目の所に触れても痛みはないようで、平気そうにしている。
あなたの手に触れるのは布の感触ばかりだ。
佐倉 光
それから手でねじって絞ってみる。
顔がねじられるってどんな感覚だろう。
どんな視界だろう。
体験してみたいなぁ。
それこそやたら丈夫な俺の制服にくっつけてもらえば無敵生物にならないか?
牧志 浩太
「わわわ、視界が回る。痛くないけど体を折り畳まれてる感じはある」
ねじって絞ると動きに合わせて視界が回るらしい。
KP
そんなことをやっていると、ふと寒さを感じた。
思わずくしゃみが出る。

そういえばあなたは裸だ。いくら風呂の中とはいえ湯にも入らず遊ん…… 実験していてはちょっと寒い。
佐倉 光
遊んでるわけじゃないからな!
一刻も早く牧志を救出するために必要な行動だ!
これは欺瞞である、と意識している場合も自己欺瞞と呼ぶのだろうか。
ただの言い訳だな。
佐倉 光
一緒に風呂に入れようかと思って思い出してしまった。
これこのまま風呂に入れるわけにはいかないよなー。
佐倉 光
「洗濯しないとなー。
普通にずーっと着てた奴だし、このパーカー」
佐倉 光
洗濯機の中をチェックしてー。
洗剤入れてー。
牧志の服の前チャックを閉じてー。
一応裏返して顔は内側に入れてー。
ネットに詰めてー。
牧志 浩太
「……このまま吐いたらどうなるんだろうな……」
もはや逃れ得ないと思ったか、牧志はどこか遠い目をしながら洗濯機に詰め込まれていった……。
佐倉 光
「幸運を祈る」
洗濯機に入れてスイッチを入れた。
牧志 浩太
「うぇえええあぁあああうぶぇ」
何ともいえない悲鳴のあと、えずくような声がひとこと、そして洗濯機の中からはいつも通りの動作音が聞こえるばかりとなった。
KP
「まきし? まきしー!? さくら、まきしがしんじゃう!」
悲鳴を聞いてシローが風呂から飛び出した。
体を濡らしたまま洗濯機の扉を叩いている。
よびな
KP
シローくんが二人をどう呼ぶか決めてなかったんですが、特に指定しなければこうなるかな、と名字呼びになりました。(たぶん東浪見も名字呼び)
他の呼び方がいい場合、呼び方指定すればちゃんと聞いて呼び変えると思います。
佐倉 光
互いを呼んでる呼び方を真似するんじゃないかなと思いますねー。
だから「まきし」「さくら」でいいんじゃないかな。
ひらがなで書くと可愛い……
KP
「まきし」「さくら」「とらみ」ですね。何だか平仮名で揃えるとかわいい。

佐倉 光
悲鳴が途切れた頃に慌てて一時停止して洗濯機開けてみる。
牧志 浩太
「ひえぇ……。」
すっかり目を回した牧志が出てきた。

幸いというか、洗濯機の中でもどして惨事、ということはないようだ。
佐倉 光
「生きて……るみたいだな。よし」
さすがに乱暴すぎたかと反省。
広げてみる。まだ洗濯が終わってないなー。
佐倉 光
「洗濯から乾燥までやると、テンテコマイ50回耐久みたいになるのか。それはさすがにしんどいな」
佐倉 光
「洗濯は手洗い、脱水だけ洗濯機、乾燥は陰干しが無難か……セーターと一緒だ」
ちょっとめんどくさい。クリーニングに出したい。出せるわけないな。
佐倉 光
「乾燥はコインランドリーのガス式ドラムならちょっとはマシなんじゃないか?」
こう、放り投げてふわっと落とされるのが連続するみたいなやつ。
佐倉 光
タライに湯を張って洗剤を溶かし入れ、牧志の服を表に戻し、つけ込んで風呂場に置く。
横で普通に入浴しよう。
佐倉 光
「後で5分くらい脱水はするから、覚悟しといて」
テンテコマイ2回分くらいだな。それなら何とかなるんじゃね?
牧志 浩太
「いきてる……」

牧志はすっかり目を回しながらあなたの言葉を繰り返した。
辛うじて頷いたのか、ひらひらと布が微かに動く。
KP
牧志がぼんやりと天井を見上げている横で、あなたはゆっくりと入浴する。
冷えた身体に湯の熱が気持ちいい。
シローは寒かったのか、また風呂に戻ってきた。
佐倉 光
「乾燥は風呂場でやればいいとして……アイロン……」
してみたほうがいいんだろうな、温度についても調べることになってるし。
アイロン、持ってはいるけど俺は滅多に使わないんだよなー。

風呂でぼんやりと考える。
体を洗って、シロー拭いてやって、牧志の洗浄に戻ろう。
おー、水が茶色っぽいな。
押し洗いをして、すすいで、できる限り絞って、洗濯機で3分程度脱水だ。
佐倉 光
「テンテコマイ1回分だから耐えろ」
頑張れ。

その間にシローの歯磨き見てやったり自分の体拭いたりあれこれと寝る準備をする。
牧志 浩太
「うぅうぅうううぅううう」
口を開けると水が入ると気づいたのか、脱水中の洗濯機から聞こえるのは必死に悲鳴を押し殺すような唸り声になった……。
KP
シローはちょっと心配そうにしているものの、歯磨きをしたりあなたに歯磨きを見てもらったりしていると寝る気分になってきたのか、寝る前に読んでもらう絵本を選び始めた。
くわしい
佐倉 光
※佐倉が洗濯やってる描写が多かったから、ある程度詳しい前提になってる……
仕事でよく汚すから、洗ったり繕ったりする機会が多いって話出てましたね、そういえば。
KP
ですね。それで勢い詳しくなったのかも。
血の汚れを特殊な薬液で落としてる描写もありましたし。
佐倉 光
絵本読んであげてるのかー。マメなことやってるなぁ。
何読んであげてるんだろうなー。
佐倉は割と童話好きだって言ったことあるし、色々マニアックなの持って来そう。
KP
シローは賢さに比して日本語が不得手なので、覚えられるように牧志は絵本を読んであげていますね。

勢いで勝手に描写しちゃったけど、佐倉さんが読んであげるかどうかはお任せします。

佐倉 光
洗濯機が静かになったら開ける。よし、脱水okだ。
佐倉 光
「大丈夫? 吐くとかしないんだな。気持ち悪いとかあるのか? 水飲む?」

リビングの鴨居やコートハンガーにハンガー引っかけるとかして、リビングに置いとこう。
で、寝る時間になったら風呂の乾燥つけて干しとけばいいな。
牧志 浩太
「ひえぇ、終わった……。
吐きそうって感じはないけどめちゃくちゃ目が回る、水は、飲む……」
息も絶え絶えになりながら、色々な意味でよれよれになった牧志はあなたの言葉に答えた。
牧志 浩太
「あと嬉しくないことが分かって、この体、一度飲んだものは外に出せ、ない、みたいだ……。口に入った水、そのまま飲む羽目になった……」
佐倉 光
「なるほど。
でもそれ、ただ服に吸収されているわけじゃ……ないな。
カレー食ったからって服にカレー浸みたりしなかったからな。
それじゃ洗濯機はあまり良くないか」
待遇はセーター並みにすべきと……
牧志 浩太
「その方が助かる……」
佐倉 光
「しかし吐いたりトイレ行ったりはないんだな。
体内どうなってんだろうなぁ……」
牧志 浩太
「なんだよな。自分でもどうなってるのか分からない」
佐倉 光
牧志に水を飲ませてやってから、シローに絵本読んでやって寝かせよう。何だか忙しいぞ。
今日は疲れたから、シローが寝たら軽くアルコール入れようかな。
KP
よく考えれば、二人でやっていたシローの世話があなた一人の腕に掛かっているのだ。
その上に夕食の支度やら風呂の準備もあなたの仕事で、その上に色々と遊ん…… 実験もしていた。
それは忙しくもなろうものだ。
佐倉 光
「牧志も飲む?」
牧志 浩太
「あ、じゃあ貰おうかな」
しっとり濡れてコートハンガーに掛けられた状態で、牧志はそう返す。
そういえば、服が濡れたせいか、絵の中の牧志の髪もぺったりと寝て、前髪が額に張りついている。
佐倉 光
酒の入れ物開けて、適当な動画とか映画とか流しつつ、
自分も片手で飲みながら口元に持って行ってやろう。
牧志 浩太
牧志は小さく喉を鳴らして、少しずつ酒を味わう。
今の彼が酒に酔うのかどうかは…… よく分からなかった。
元々、晩酌程度の量では全く顔に出ないのだ。
佐倉 光
「食事が人任せってのは不便だな。
それこそタンスの中にしまわれて、うっかり忘れられたら飢え死にしちまうんじゃないのか?」
髪の所に軽くドライヤー当ててみるか。
牧志 浩太
「そうなんだよな、何かと不便すぎる。
忘れられて飢え死になんてぞっとするな…… 幽霊になった時みたいだ」

ドライヤーを当てると、ぱらぱらと髪が風に煽られた。
佐倉 光
「イミフすぎる。なんだこれ」
しばらくドライヤーを当てて髪を乾かしてみる。
しかしさすがにドライヤーで服全部乾かすわけにはいかない。
KP
布が水分を失っていくのに合わせて、少しずつ絵の中の髪が乾いていく。
佐倉 光
「まー今回は実験したら直して貰えるみたいだしさ……」
だといいけどな。
佐倉 光
「ある程度指標見えてるだけ随分気楽だよ。
さっさと実験終わらせて戻して貰おうぜ。
不便で叶わないよ。面白いけど」
牧志 浩太
「確かに、見えてるだけ気楽ではある、か。
だな、変な癖がつく前に戻りたい」
佐倉 光
「変な癖、か……あんま無理すんなよ」
何に対して言った言葉だったか。
KP
それは何に対して言った言葉だったか。
牧志はその意図を汲み取れなかったようで、不思議そうな顔をしただけだった。
佐倉 光
しばらく飲んで、飲ませて、
牧志を風呂場のハンガーに掛けて、衣類乾燥のスイッチ入れて、しばらく様子を見る。
牧志 浩太
「ちょっと暑いけど、身体が冷えてきたから丁度いいな」
佐倉 光
「なんかあったら叫べよ」
んで一時間ほど置いて問題なさそうなら寝てしまおう。
佐倉 光
「もう少し起きてるなら、スマホで動画流すかなんかして置いとくけど」
牧志 浩太
「ああ、分かった。
いや、疲れたし俺ももう寝るよ。
お休み、お疲れ様」

牧志は風呂場の中から、ひらひらと布の端をはためかせてあなたに手? を振った。
佐倉 光
「明日は忙しくなりそうだし、早く寝よ……」
佐倉 光
「おやすみー」
こちらもひらひらと手を振って、風呂場の電気を消す。
よーし明日はシローと三人でお出かけだ!

ひとこと
佐倉 光
服はある程度丈夫である必要がある。
服は洗濯できなければならない。
佐倉は牧志を救うために実験を行うのだった。

間違っても遊んでいるわけじゃないからな!!


【置】CoC『嗚呼、素晴らしき偶像!』 佐倉&牧志 3

「駄目なヤツだったかー」
「駄目なヤツだったな……」

【置】CoC『midnight pool』 佐倉&牧志 2

この手を離さなければきっと、大丈夫なのではないかという気がした。
牧志が居る限り、きっと大丈夫だ、と。

【置】CoC『midnight pool』 佐倉&牧志 5

「行ってらっしゃい、佐倉さん」
「サンキュ、牧志!」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


マモノスクランブル『ミス・ミスフォーチュン』 1

「でもこの呪い痛くないやつだよ。よかったね~」
「じわじわ死ぬけどな」
「死にたくない。普通に」

CoC『誰がロックを殺すのか』 Heavy Howling 1

あなたにとって「ロック」とはなんですか?

ゆうやけこやけ 第八話『ふたりの娘』の一

はじまり