こちらには
『Look,LOOK Everyone!』のネタバレがあります。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。
とある事件より、覚えのない傷と体中の痛みに悩まされている。
巻き込まれ体質らしい。
牧志とは友人。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
佐倉とは友人。
最近の事件で佐倉の死体を延々と世話し続けるなどという凄まじい体験をしており、その後遺症が深く心に刻まれてしまっている。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
Call of Cthulhu 6th
シナリオ集
「タイマン限 Part.2」収録
「Look, LOOK Everyone!」
せばた様 作
気がつくと、KPCが探索者の服に入り込んでいた。
二人は元に戻るべく、一人と一枚で街の中を駆け回ることになる。
テーマ:ペアルック
プレイ人数:1人
想定プレイ時間:1時間~
推奨技能:なし
あの出来事について、あなたが覚えているのはその程度だ。
それから、気がついたら変な家にいたことくらいか。
あの時何があったのか、牧志は語らない。
きっと事故で生死の境を彷徨ったのだろうとくらいは思えたが、それにしても牧志はひどく憔悴していた。
暫くの入院と通院の後、牧志はようやく大学へ通えるようになったが、それでも一日に二度のメッセージが四度に増えている。
その事故のせいなのか、今もまだ時折身体の節々がひどく痛んだ。
開幕【CON】×5どうぞ。
あなたは今、牧志と一緒に自宅にいる所です。
あの日以来だ。消えない傷の影響か。
HP 10→9
あの湿布で何とかならないかなw
無理そうな気がします。
朝食を作りながら、牧志があなたに呼びかける。
そういえば牧志の口調も、あれから暫く変だった。
佐倉さん、朝は目玉焼きでいい?
佐倉さん、朝食にしようか。
佐倉さん、風呂沸かすから、沸いたら入ろうか。
佐倉さん、歯磨きしようか。
最近ようやく治ってきたが、あなたの意思を聞かない時があったのだ。
まるで何もできない病人にするように、やさしくあなたに宣言しようとする時が。
たまに襲ってくる酷い痛みと彼の言動を思えば、自分が余程異様な状態にあったのだろうと察せられた。
それにしたって変だけど。
だって3日だぞ? 牧志の態度がそれくらいでそんな変わったりするか?
彼の『気遣い』を否定はせずやんわりと断り続ける日々がしばらく続いた……。
なんでシローじゃなくて俺の世話焼くんだよ。ジジィになった気分だ。
そういえば、眠ろうとしてあなたの部屋に入ってきた日があった。
シローの分を忘れて二人分の食事を作る日があった。
うっかりソファで寝落ちた時、あなたをベッドまで運ぶ腕が妙に手慣れていた。
まるで、ずっとそうしてきたかのように。
玄関の扉を開けようとする時、いつもびくりと手を震わせるのはなぜだろうか。
それにしても玄関怖がったり一緒に寝ようとするのはよく分からないけど。徘徊防止かなんかか?
それに、これほどうっかりが起きるほどといえば、完全に習慣付いてたんだ。
やたら俺の心臓の音聴きたがるってのは……心音が異常だったってことか?
と、推理を重ねて何となく自分になにが起きて、牧志がどう過ごしていたかを察した。(さすがに自分が死んでいたとまでは思っていないけど)
それからは積極的に自分が元気にしているアピールをして、牧志に今まで以上に声をかけるように心がけた。
あなたの声を聴き、彼がそれに返す。他愛ないやりとりを何度も、何度も続ける。
そうして次第に、次第に、彼からあなたを動かないものとして扱おうとするような癖が抜けていった。
自宅にいる時彼が浮かべる、どこか透明な寂しそうな表情が、和らいでいくのと共に。
そんなある日のことだった。
仕事はつつがなく終わり、今は夕方。
仕事が終わったら牧志と合流して飯でも、という約束のため、あなたは街を歩いていた。
COMPが壊れないのは本当に助かる。
先日は悪魔に殴られそうになった時咄嗟に左腕を出したら盾みたいに弾いた。
……まあもう一回できる気はしないけど。俺体術とかやってないし。
今日の仕事はそんなに難しい物じゃなかった。むしろもっと刺激が欲しいくらいだ。
ああ、何か面白いことでも起きないだろうか。
欠伸をしながら歩いていた。
ガチャン。
閃光の中で何かが落ちる音がして。
光が収まると、そこに牧志はいなかった。
彼のジャケットとベルトポーチだけが、そこに落ちていた。
目の前で何かが落ちたのに驚いて立ち止まる。
牧志だったよな? 今の牧志だったよな?
荷物落ちてるし?
慌てて荷物を拾い上げる。
そちらの方向を見ても、誰もいない。
という理由によりパーカーになりました。
牧志の慌てたような声が聞こえる。
……あなたの胸のあたりから。
いきなり動き出した服に驚いてよろけて地面に手をつく。
胸んとこに何かがいて引っ張ってる?
何か?
いやどう考えても牧志の声だけど。
慌てて胸のあたりに目を落としつつ手で触る。
あなたの胸で、何かがもがくように動く。
胸のあたりに手を伸ばせば、無地のはずのパーカーに、何か薄く盛りあがったアップリケのような感触がある。
そして、そこに目を落とすと……、
そこには牧志の顔を描いた大きな柄があった。
その柄は口を動かし声を上げ、表情を変えては自分の張りついた布を引っ張っていた。
……何だこれ。
二人とも《SANチェック:成功時減少 1 / 失敗時減少 1D3》。
1d3 Sasa BOT 1d3→2
SAN 53 →51
SAN 75→74
色々すっ飛んでついそんな馬鹿なことを問いかけてしまった。
何だか生暖かいし、動けないし、ずっと心臓の音が聞こえてくるんだけど」
なんて説明したものか考えて、結局見たまんまを伝える。
牧志は驚いてまた辺りを見回そうとし、それから一拍たっぷり沈黙があって。
自分の足元を見下ろしたような気配があって。
呆然と呟いた。
なんといったものか。
また変なことになってる……
にしても、起きることの深刻度? 落差? 大きすぎだろ。
いや、今回のも充分色々深刻だけど。
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落ちてきた、っておかしくないか?
チラシが降ってくるようなチラシ撒いてる窓や、そんな物が上から降ってきそうな風は吹いていただろうか?
……が。
クリーニング店のチラシにうっすらと魔法陣のような模様が印刷されているのは、明らかに変だ。
というか…… 明らかに変な仕掛けされてないか?」
これはまた、俺達をこういう状況に突っ込んで愉しんでいる奴らからのヒントだろう、と思えた。
牧志の荷物を拾って一緒に肩にかける。
自分の服の裾を持って引っ張り、のぞき込む。
牧志の顔の所触ってみる。凹んだりしてる? 布地の穴の部分とかどうなってるんだ?
触れると牧志がくすぐったそうにする。
あなたが見ている前で、その顔の眼や口が動いた。
大きなアップリケを刺繍で縫い止めたつくりのもので、刺繍糸の部分は少し盛り上がっている。
布地の穴の部分には合わせて穴が開けられていて、牧志の顔に穴が開いているように見える。少し不気味だ。
……あなたはふと気づく。
このアップリケ、パーカーの真ん中を跨いでいる。
牧志の顔の真ん中にジッパーが走っているのだ。
まったく、これをつけた誰かはいまいちセンスが足りなかったらしい。
これ開けたらどうなっちゃうんだろう。
脱いだら?
あっ。試したい。
ジッパーに手をかけて、そーっと引き下ろす。頭のギリギリまで。
よーし待て。このまま開けたら牧志の顔は真っ二つなワケだろ?
だけど今はあくまで印刷されているだけなワケだし、布地に沿って穴だらけになってんだ。
今更ジッパー開いたからって別に印刷が傷ついたりしないわけだろ?
それなら開けたって多分物理的には問題ないよな。
……絶対大丈夫とは言い切れないけど。
そーっと、注意深く髪の毛の所まで降ろしてみる。頭に達しそうな所までは降ろさない。
降ろしつつ裏確認しよ。
ひぇ、頭の上がぞわぞわする」
開けてもたぶん物理的には大丈夫だから……
ちょっぴり降ろしてみる。
ジッパーが牧志の額に迫り、肌を割った。
血や悲鳴が迸るようなことはなかった。
牧志が呆気に取られたような、状況を理解しがたいような声を上げた。
慌ててジッパーを上げる。
もっかいそーっと降ろしてみる。
あれ、これ視界おかしくならない?
やがて、あなたのパーカーはいつものように二つに開いた。
佐倉さん、今、俺どうなってる?
視界が何だかずれて見えるんだけど……」
お前今、俺のパーカーのど真ん中に印刷されてる。
で、俺今パーカー開けた。
お前さ、俺のパーカーのど真ん中に印刷されてるから、顔の真ん中切れてんだよ。
あーだからつまり、分かるだろ? 布が垂れて左右ちょいずれてんだ、今」
牧志はゆっくりと片目を閉じて、
そして開いた。
それに、さっきから頭の中に風が入ってくるんだ。
真っ二つになって左右がずれてる、って言われたら、そんな感じだ。
佐倉さんのパーカーにくっついちゃってるんだな、今。本当に」
考えてみれば、物理的に問題なくても害があるかも知れなかったな。
ちょっと反省しつつオープンッ!
脱いだらまずいかなこれ。体とどこかくっついてたりすんのか?
つーか首から下どうなってんの?
裾持ってぺらぺらしつつ観察。
あなたの身体にどこかがくっついているということもなく、本当にただパーカーにアップリケが追加されただけのようにしか見えない。
顔って目茶苦茶リアルな感じなのかな。それともデフォルメされてる?
メタいことを言うと立ち絵のような感じ。
あなたのパーカーがアニメグッズかスカジャンにでもなってしまったようでもある。
下手に脱いでどこかに行かれても困るからな。
正直牧志には悪いが、ヘンだけど。
ジッパーを閉めて、さっきのチラシをよく見る。場所は近く?
やっぱり頭が開いている感触は落ち着かないらしい。
居抜き店舗を利用しているようで、外観は古びている。
そこに取って付けたような『洗うんだ村』の看板が胡散臭さを助長している。
そとから店をジロジロと観察する。
変な説明書いてないか、変な店員いないか?
「ダウンジャケット20%オフ!」
「ワイシャツお急ぎコース」
「スニーカーのお洗濯はいかがですか」などの広告が並んでいる。
カウンターに店員の姿は見当たらない。
牧志が身構えようとしたのか、パーカーの布地が少し張り詰める。
くそ、ふつうの店にしか見えねぇ。
中に入ってみよう。
次の瞬間、奥のSTAFF ONLYの扉が開き、そこから茶色い染みのついたヨレヨレの白衣を着た、ぼさぼさの白髪に白髭の老人が出てくる。
丸眼鏡を引っ掛けたその容貌は、ザ・博士といった趣だ。
「おお! おお! おお~!
やっと成功者第一号が来たか!
服をよく見せてくれ!
よしよし、きちんと転移できているな!
苦節140年、ようやく苦労が実ったわい!」
老人はあなたが反応する間もなく、カウンターの扉をゲシッと蹴り開けるとこちらに駆け寄り、あなたのパーカーを掴んで頬ずりをする。
パーカーの前の部分を守るように身をひねる。
あ、寿命かの?
魔術でチョチョイとこうしただけじゃ、気にするでない」
博士は『洗うんだ村』のロゴが入った薄っぺらいタオルをあなたに渡す。
座った目でたたみかける。
戻してくれたらむしろ聞かせろ研究について。
あとついでに寿命の延ばし方教えろ」
「む、ワシの助手になるかの? あれはワシ70才の時にようやく会得し……
おお、元に戻せとな? もったいないのう。そうじゃのう、それ着て実験してくれんか?
実験項目のリストを渡すから、全部やって結果を報告してくれたらそいつは外に出してやろう。
あ、他にも思いついた項目があれば実験大歓迎じゃぞ。結果はあればあるほどヨシじゃ。
日常的な着用に耐えうるかも確認したいんでの、その服を着たまま外出して実験してくれ。
方法は任せるぞい」
そう言って博士はあなたにリストを渡す。
・飲食できるか(生命の維持にかかわるので)
・水中に適応できるか(洗えないと服としてどうかと思うので)
・極端な寒暖差に適応できるか(どこにでも着ていけるか調べたいので)
・衝撃を受けた時どうなるか(すぐ死ぬと問題なので)
うーん、気の毒だな。
先程のあなたの『試したい』気持ち満載の声音を思い出したのか、牧志は引きつった声でそう言った……。
このシナリオは服になった牧志といろいろしてドタバタするのがメインのシナリオです。
これ以外にも何をやってもいいので、好きに楽しんでください。
実験し放題だ!
よぉぉぉぉし何からやろうかなー。
なお、どこで実験しろ、いつまでに実験しろ等の指定はない。自由だ。
そんなことをブツブツつぶやきながら、ひとまず家に戻るか。
今の時間帯を忘れていました。夕食にしようとしていた頃(19時頃かな)と思ってください。
水? いや水って布に吸い込まれるよな。飲めるのか?」
そうやって帰路についていると、
練習帰りなのか、スポーツバッグをかついだ東浪見と遭遇した。
そして顔w
慌てて腹に貼り付いてる顔を荷物で隠す。
東浪見は不思議そうに隠された所を覗き込む。
隙間から見慣れた感じの茶色の髪の毛が見えてるな。
荷物が落ちた。
東浪見は落ちた荷物に手を伸ばして拾ってくれようとする。
ちょっとエンブレムつきのでも作ろうかと思ったら、間違って牧志の顔のデータ送っちゃってさー!
い、意外と似てるだろ!?」
写真のデータ元にしてイラスト調にしてみたんだ」
悪魔会話のノリが戻ってきた。
いや、でもほんとに似てんなー。最近こんなん出来るんだな、うちのチームでもやろっかな」
へぇー、と面白そうに言いながら東浪見はあなたのパーカーに描かれた顔を見る。
なんだかぷるぷるしているのが伝わってくる。
荷物回収して慌てて立ち去ろうとする。
東浪見は手を振ってあなたを見送る。深入りしない男で助かった。
荷物で前を隠しつつ、すたこら走る。
自宅へ戻ると、シローがこちらへ駆け寄ってくる気配がする。
……どうしよう。一応隠しとこうか。
隠すなら、シローは少し不安そうにあなたを見上げる。
この前の三日間のことが、まだ少し後を引いているのだ。
うーん、見せちゃうか?
うちでやるなら見せることになるよな。
シローは不思議そうにあなたのパーカーを見ていたが、
どうしていいか分からないような声で、おずおずと牧志が声を発すると。
嬉しそうに笑って、シローはあなたの服に手を伸ばした。
牧志を服から出すために色々やってみなきゃいけないんだ」
思ったより普通に受け入れてしまったシローに安堵したような心配したような。
シローはぺたぺたと服に触れ、刺繍糸の感触を味わっている。
とりあえず見てて、牧志が変だと思ったら教えてくれ。苦しそうだとか、色々」
漠然とした指示だけど、こうとしか言いようがないな。
シローは頷いて、好奇心に眼をまん丸にしながらあなた達の様子をじっと見ている。
別にど根性じゃなくていつもの怪奇現象でパーカーにくっついてしまった牧志。
牧志の『後遺症』がなかなか深刻な回。
今回で泣いて笑ってケンカして癒されるといいね。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」
TRPGリプレイ ダブルクロス3rd 番外編
ダブルクロス
番外編 1
■前回ラストで子供たちがみんなでホラー映画鑑賞会していた裏で、大人たちは何をしていたのか……
女二人でひたすら呑んでました。
みたいな。