これは、VOIDのHO2とHO1による
お、捨てKPCだ。可哀想に…です。
両方のネタバレがあります。
十分ご注意ください。

参加PC


KP
お越しいただきありがとうございます。
本日は竜原様作
『お、捨てKPCだ。可哀想に…』
をプレイいたします。
ヴィキ
はーい
KP
宜しくお願いします。
ヴィキ
よろしくお願いします
KP
推奨技能は〈目星〉だって。問題ないね。
ヴィキ
85あるね
KP
では、始めます……

KP
貴方は朝の町を歩いている。
そうだな、今日は休日。
一昨日は夜遅くまで仕事があったが、昨日今日は待ちに待ったリフレッシュ休暇だ。
VOIDとはいえ、エントロピー増大の法則には逆らえない。
多趣味(?)な貴方ならば尚更だ。
今日は燃えるゴミの日。
早く出してしまった方がいいだろう。
※ゴミ収集も自動化されたので、休日だろうが祝日だろうが収集日がちゃんとあるのは有り難いことだよね!
ヴィキ
「人よりも使うものは少なくて済むとは言っても、なんのかんので燃えるゴミって溜まるよね」
2つの大きな袋を下げて、ゴミ捨て場に向かう
KP
一人暮らしで二つか。それはなかなかのボリュームだ。
ヴィキ
「その分、時間に融通は効かなくなったって聞いたけど」
KP
そう、早く行かないと出し損ねてしまう。
ヴィキ
「いざとなれば収集車のポケットにぶん投げればいいけどね」
「VOIDでよかったこと、その72だよ」
正確無比なコントロールでの〈投擲〉
KP
多いなぁ
いいことだ

KP
いつものゴミ捨て場に到着。
※画面に出ているゴミ捨て場ほど汚くありません。
ヴィキ
「間に合った間に合った……よっと」
放り投げる
KP
あなたがゴミを放り投げると、何か、見慣れた物が視界にあった気がした。
ヴィキ
「ん」
KP
見覚えのある姿が、ゴミ捨て場の上にぐったりと横たわっている。
ヴィキ
「……あれ」
KP
あなたの相棒、結城晃そのひとだ。
ヴィキ
「……あれぇぇ?」
KP
白いシャツ一枚に簡素なズボン。
胸のところが大きくはだけられていて、セクシーと言えなくもないが、どうにも状況はセクシーとは言いがたい。
腕が見えない。
ヴィキ
「ちょっと あっくん、何やってんの、こんなとこで!」
生体スキャン
スキャンしつつ、駆け寄る
KP
結城はゴミの山の中に半ば埋まるように、仰向けに倒れている。
両腕は後ろに回っているようだ。
本編見る!
ヴィキ
脈拍や呼吸、脳波は?
KP
スキャン結果……
何もない。
ヴィキ
死んでる?
KP
さて。
少なくともセンサーには全く生命らしき反応はない。
ヴィキ
「ちょ、ちょっとちょっとちょっと」
慌てて、直接触れて確かめる
体温などは?
KP
センサーには反応がない……いや、若干周囲の気温よりは低いだろうか。
見た感じ、肌はなまめかしいと感じるほどに朝日の中で艶めいている。
近づいてみるならば、彼が靴も履いていないことが分かる。
ヴィキ
すぐにバックグラウンドで119を発信
外傷を確認しつつ、頭を揺らさないようにして、ゴミの山から引き上げる
KP
軽い。
まるで子供の体重だ。
見た感じはいつも通りの姿に……
ヴィキ
想定していたよりも軽く、勢いがついたまま抱え上げる
KP
抱え上げてみるなら、彼の腕が不自然に曲がっているのが分かるだろう。
後ろ手に縛られている。
足首には、ちぎられた縄とその痕がくっきりとついている。
ヴィキ
何で縛られている?
ロープやタイラップ、ダクトテープなど
KP
ごくごく一般的な縄だ。
随分と綺麗だが。
材質は、ナイロンだろうか。
ヴィキ
ニッパーを取り出し、それを切断
119にはつながりますか?
KP
つながる。
お決まりの、どこで、どういう状態で、と質問された後、現場に来てくれることを約束して貰えるだろう。
VOIDのヴィキならば、口頭でなくとも場所の通知はできるだろうが、それはそれとして口頭での連絡も求められたということで……
ヴィキ
警察無線にも一報入れておきます
『警視庁 ドロ課、識別番号4547335、ヴィキより発信。252発見。拘束の痕跡あり、当事者意識不明。生体データ感なし。なお、現場にあっては千代田区日比谷○丁目○号○番のゴミ集積場。救急には通報済み。通報コードxxxxxxx』
KP
スキャンしているなら、違和感はあるだろう。今更だが。
彼の体型が、微妙に変わっている。
見間違いだろうか。股間の部位などが、随分とスッキリしているような。
ヴィキ
とりあえず、発報しつつ体に触れて外傷の有無などを改めます
その際に触れてわかるかな
「あっくん、目を開けて……」
KP
外傷はないかと声をかけながら触れると、結城は身じろぎをした。
ヴィキ
「あっくん! 聞こえる? 聞こえたら手を握って!」
そっと彼の手に触れながら
結城 晃
「ん……」
「……ヴィキ……?」
ヴィキ
目を開けます?
結城 晃
「ヴィキ? あ、痛……」
貴方が後頭部に触れた時、わずかに顔をしかめた。
ヴィキ
「私だよ、あっくん! 自分の名前、言える?」
「腕は下げたまま!」
結城 晃
「俺、どうして……ここに」


ヴィキ
「無理に動かないで。今通報と救急入れたから!」
結城 晃
「!」
「そうだ、俺、たぶん昨日、帰る途中で」
ヴィキ
「うん。話し続けて」
結城 晃
「後ろから殴られて……」
ヴィキ
顔に緊張が走る
結城 晃
「……」
「目が覚めたら、目の前に……」
KP
結城はとても言いづらそうに一瞬言葉を詰まらせた。
ヴィキ
「大丈夫? 無理に思い出そうとしなくていいから、なんでもいいから話し続けて」
結城 晃
「油切った顔のおっさんがいて、俺の服を脱がせようとしてたから」
ヴィキ
「……」
「何それ」
結城 晃
「声を上げたらもっかいぶん殴られて」
「……ああ、随分と、喚いてたな……喚きたいのはこっちだよ……」
「で、君に起こされた……」
「悪夢が終わって良かったよ、本当に」
「……悪夢、だよな?」
KP
周囲を見回している。
ヴィキ
『識別番号4547335、ヴィキより、追補。当事者の意識回復。現在にあっては、意識は明瞭、対話にて聴取中。暴行傷害の可能性あり』
結城 晃
「……俺の服……は?」
ヴィキ
「着てるよ」
「実害は出てるみたいだから、そのまま寝てて」
結城 晃
「違う、これは俺のじゃない」
「荷物は? 財布は? スマホは? くそ……」
ヴィキ
「そうなの?」
「落ち着いて、あっくん」
「今はまず、体からだよ」
「後頭部以外で、体に異常は感じられない?」
結城 晃
「身体に異常?」
ヴィキ
とりあえず自分の上着を脱いで丸めたものを彼の頭の下に入れて、落ち着かせている状態
KP
では、結城は慌てて起き上がろうとした。
ヴィキ
それを抑えます
「ダメ。じっとしてて」
KP
がくん、と彼の体が震える。瞬間……
ヴィキ
「所轄と救急が間も無く現着するだろうから、安静にしてて」
KP
首が……落ちた。


ヴィキ
「………ほへぇ!?」
思わず声が出た
KP
首が転がり落ちる。
ヴィキ
「ああああああああっくん、あっくん!」
慌ててそれをキャッチ
結城 晃
「何だよ……うわ!?」
「どうなってるんだ?」
ヴィキ
構造スキャンと、断面をスキャン
「おおおおお落ち着いて」
KP
貴方はあまりの衝撃に……
SANC 1/1d4+1
ヴィキ
声は頭と体両方から出てるの?
KP
頭から出ている。
胴体はそのまま動かずにある。
ヴィキ
CCB<=94 SANチェック (1D100<=94) > 8 > スペシャル
冷静だった
KP
全然平気だった。
ヴィキ
とりあえず、おっことしたりしないように頭を胸に抱いて


結城 晃
「あれ、俺、転んだ?」
ヴィキ
「う、うんうんうん転んだ転んだ!」
「もう、安静にしてないといけないって言ったのに」
結城 晃
「体が動かない?」
ヴィキ
「ショック状態かも! ほら、何があるかわからないから、安静にしてて!」
結城 晃
「え? あ、ああ」
ヴィキ
彼の頭は彼の体が見えないように視界を注意しつつ
KP
断面は完全に人間のそれではない。
ヴィキ
VOIDのもの? >断面
KP
肌触りは素焼きの粘土のよう。陶器に触れたように冷たい。
そしてその目は、硝子で作られたドールアイであろうことがわかる。
そういえば、いつもの特徴的な緑がかった色よりも少し青みが強いような。
ヴィキ
構造分析
実際にセラミックなのかな
頭も?
断面から覗く体内は、がらんどう?
KP
中空になっている。
KP
※あんまりドール詳しくないから、間違ってたら勘弁
KP
結城晃は、人形になってしまったのだ!
SANC 0/1d2
ヴィキ
CCB<=94 SANチェック (1D100<=94) > 100 > 致命的失敗
KP
おやおや
ヴィキ
倍かな
KP
ファンブルは最大値固定にしよ。
ヴィキ
いつかの一件、そして先日の『朝』の一件
それらから、この世では〈オカルト〉や都市伝説として片づけられていたはずのものたちが、確かに実在するのだということを知った
『これ』ももしかしたら。
[ ヴィキ ] SAN : 94 → 92
KP
救急車のサイレンの音が響く。
ヴィキ
念のために確認するけれど
彼の頭や胴体から電磁波は出ていない?
KP
出てないね。
明らかにVOIDではない。
ヴィキ
頭部にスタックの挿入口も無しか
KP
どう見てもただの人形なのに、動いている。
結城 晃
「ヴィキ? いつまでその格好でいるんだよ?」
ヴィキ
すると、やはり
青木さんとレミさんに同時発信
してみていいかな
シナリオ的にはアウトな気がするけど、人体に詳しい人の助力は仰ぎたい
KP
二人も休暇中だろう。職場に連絡は繋がらない。
ヴィキ
そういえば、そうだった
春先輩と田尾さんに……
KP
田尾さんや春さんにも連絡は繋がらない。
本部に連絡するなら、リトが出てくれるだろうが……
ヴィキ
「あっくん、覚醒直後だと光の刺激も強いから、ちょっと、ごめんね」
言い、上着を脱ぐときに抜き取ったスカーフで彼に目隠し
結城 晃
「うわ!」
KP
悪い冗談としか思えない様相の彼に布を被せる。
田尾さんや春さんにも連絡は繋がらない。
それはそうと、救急車がそろそろ到着しそうだ。
ヴィキ
とりあえず、彼の頭を上着の上に置いて、彼の体を改めよう
KP
「きゃっ、死体!?」
近所の住人が通りがかって悲鳴を上げた。
「……じゃ、ない? 人形? やだぁ」
ヴィキ
「警察です。お騒がせして申し訳ありません」
ホログラムIDを表示
KP
「死体!?」
布の下で結城が慌てている。
ヴィキ
「ぐったりしてるからね」
KP
「何だ、俺のことか?」
ヴィキ
「端から見たらね。おおお落ち着いて」
体を改めるよー
KP
では、詳しく調べるならば、その体が驚くほど精巧に作られたドールそのものであることが分かる。
ヴィキ
どこか特徴とか、無いでしょうか
KP
先ほど変化を感じた……その、股間のあたり。
何もついていない、ということが分かる。
ヴィキ
そりゃまぁ人形だし
一瞬思わずはっとしてしまったが、そりゃそうか、と自分を落ち着かせる
KP
それから……首が落ちたことにより、うなじに「シグマドール」という焼き印がされているのがわかる。
ヴィキ
(シグマドール……)
バックグラウンドで検索開始
救急車のサイレンが近づいて来てるって感じですね
KP
【シグマドール】で検索をかければ、すぐに大量の情報が引っかかるだろう。
そうですね。もう来るね。ついでに言えば警察もね。
シグマドールとは男性人形作家「シグマ」によって作られた人形のシリーズである。
一部でカルト的人気を誇っており、一時期は製作を中止していたが、ここ5年ほどでまた作品が世に出回り始めた……ということは、多くの情報の中で共通しているので、信頼性が高いとみていいだろう。
更に詳しく調べるのならば
〈図書館〉で判定。
ヴィキ
1d100<=25 (1D100<=25) > 22 > 成功
出た
KP
えっらーい!
ドールマニアの情報サイトに、以下のような書き込みがあった。
彼の妻が5年前に亡くなっており、同時期にこの近所に引っ越してきているらしいこと。
ここ5年で出たシグマドールは非常に色気があり、本当に生きている人間と遜色ないような素晴らしい出来であること。
『この素晴らしいシグマドールシリーズ、唯一取り扱いがあるのは【アンティークショップ・イオタ】なんですよ』
『筆者はまだお目にかかったことはないんですよね。是非とも拝見したいものだなぁ』
ヴィキ
ΣとΙか
シグマという人物と、その妻について並行検索
その間に
視界内にオーバーレイするそれらの情報を隅に追いやりつつ
一つ、思いついて、彼の頭、首の部分を胴体にそっと差し込む
KP
問題なくはまる。
ヴィキ
「あっくん、手、動かせる?」
結城 晃
「ん?」
「あれ、動くようになった」
「おかしいな、さっきまで体が全然動かなくて」
「……あれ? 俺の体、なんか……」
「変じゃない?」
ヴィキ
「その話はあと」
「あっくん、とりあえず、これ」
電子キートークンを差し出す
KP
鍵ですか
ヴィキ
「私の家、わかるよね? そこに行ってて」
「所轄と救急を誤魔化したら、すぐに行くから」
結城 晃
「ああ……分かった」
「よく分からないけど、ありがとう、後は頼む」
ヴィキ
「いい? 入ったらソファに座って、大人しくしてること」
結城 晃
「分かった」
KP
遠目に見れば全く普通の人間と変わらない仕草で、彼は貴方の家へ向かった。
……裸足で。

KP
やがて救急と警察がすっ飛んできた。
警察は貴方の見知った顔の者だろう。
ヴィキ
「お疲れ様です」
頭を下げる
KP
「はい、通報されましたよね」
「事件性ありとのことでしたが」
ヴィキ
「申し訳ありません。救護者に逃げられてしまいまして」
KP
「逃げられた?」
ヴィキ
「意識を覚醒しましたところ、思い出したことがある、と告げてそのまま走って……」
「折り悪く、本日は非番のためにバディもおらず、アンドロイド法により強制制止もできず」
KP
VOID警官は困り顔だ。
「そうですか、お名前などは確認されていませんか」
ヴィキ
「ええ、名前などはまだ思い出していなかったようで」
KP
警察車両の中から「つっかえねぇなぁ空き缶警官」なんて悪口が聞こえた気がした。
「……申し訳ありません」
目の前のVOID警官が申し訳なさそうな顔をする。
ヴィキ

「……何か?」
PCの中を覗き込んで
パワーウィンドウに押し当てた手のひらで、ぐぐぐぐぐ、と窓を押し下げて顔を突っ込みつつ、だね
KP
知ってる顔だ。
『あの事件』の時に、捜査を邪魔してくれたポンコツだね。
ヴィキ
「あら、城山さん。お疲れ様です」
KP
「こら、わざわざ呼び出しておいて警邏の邪魔をするなVOID」
ヴィキ
「その後、『異動』されたと聞いておりましたが、遅ればせながら『ご栄転』おめでとうございます」
「大変ですね、『地道な警邏任務』ご苦労様です」
刑事課から交通課に飛ばされたんだろうな
KP
「嫌味かカラッポ野郎が」
男は不機嫌そうにハンドルをバシバシと叩いた。
ヴィキ
「とんでもない。その節は大変お世話になった方ですから」
「『あまりお顔も見なくなって』いましたので、寂しく思ってました」
KP
「あの、そのくらいで、どうか」
外に出ていたバディVOIDが貴方と城山の間に入ろうとする。
ヴィキ
窓から首を抜き、ぐぐぐぐぐ、とパワーウィンドウを戻して
KP
「あぁ!? ドロ課のくせにいい気になってんじゃねぇぞ!」
喚く声が閉る窓に遮られてくぐもる。
ヴィキ
「……大変ですね」
VOID警官に
KP
「まったく……」
VOID警官は小さなため息をついた。
「あんなのとセット扱いじゃたまったもんじゃないです。怒られるの、私なんですから……」
ヴィキ
「でも、元気なのは口だけですから。適当におだてて使い倒してやってください」
KP
「しかし、大丈夫ですか? 随分と緊急性がありそうでしたが」
ヴィキ
「そうですね……。一応、警邏中に見かけましたら保護してくださいますか」
「身体的特徴は、茶の短髪、Tシャツとデニム、白のスニーカーです」
「年齢は30代、男性」
「身長は約165cm、小太りです」
KP
「はい、了解です……」
「人間みたいな情報交換ですねぇ。いくらヴィキ巡査でも、休暇中に逐一記録は取ってないんですね、少し……ほっとしました」
ヴィキ
「すみません。何せ非番なもので、プライベートな部分の映像も記録されていましたので」
「最近、その辺りノーチェックだと、『色々』うるさいでしょう?」
KP
「そうですね、確かに」
「では、良い休日を」
ヴィキ
「はい。お疲れ様です。公務中、お騒がせをしました」
「世間の風向きも変わって来ていますし、お互い頑張りましょうね」
右手を差し出す
KP
VOID警官はにっこりと笑って、差し出された右手を握るだろう。
ヴィキ
軽くその手を振ってから、放すと敬礼を一つ
KP
車の中で「早くしろ」だの「ポンコツ」だの文句を言う声が聞こえていた。
ヴィキ
では、その小言に思わずこちらを見るかもしれない彼に苦笑と共に一つ肩をすくめ、走り去るPCを見送ってから
KP
びしりと敬礼し、VOID警官は去って行く。
ヒマではない救急車の方は、要救護者がいないと聞くと戻ってゆくだろう。
ヴィキ
真面目な彼が警察ネット経由で救急を解除してくれたことを確認しながら、家に急ぎ帰ります

ヴィキ
ドアが開くのももどかしく、家に駆け込んでバタバタとパンプスを脱ぎながら
「あっくん、いるー?」
KP
家では、所在なさげに結城が待っていた。
気配が……といってもいつものように脈拍や体温と言ったわかりやすいサインではなかったが、
不安そうな顔をしている。
結城 晃
「良かった、ヴィキ」
「俺の体がおかしい」
ヴィキ
「ごめんね、お待たせ」
「うんうん。大丈夫」
結城 晃
「何か、知っているのか?」
ヴィキ
自分でもそれが大丈夫、とはまだまだ思えないが、それでも安心させるために微笑んで、彼の横に腰掛けた
VOIDの体重にも耐えるスプリングの入ったソファだ
あ、そうだ
シグマと彼の妻のことについて、さっき調べると宣言したけど
何かわかったかな
KP
いや、それ以上の情報は出てこないな。
ヴィキ
姿くらいは出ないかな?
写真とか映像とか
KP
顔写真くらいはあるよ。
ヴィキ
OK
KP
白髪交じりの初老の男性だ。
恐らく五年以上前の写真は、なんとなく表情が柔らかい。
ヴィキ
油ぎった中年男性ではない?
KP
ではないね。
結城に確認するなら、「全然違う人だ」と答える。
ヴィキ
シグマの人形を買った人から、いきなり人形が動き出して逃げ出したとか、そういう噂とかネットに落ちてないかな
KP
そういう話はないみたい。
ただ『生きているかのように美しい』と噂されていることは分かる。
ヴィキ
なるほど
とりあえず、彼の体の構造スキャンして、耐久性とか調べられないかな
素焼きの陶器そのものじゃ脆すぎる
KP
脆そうだ。
さすがに等身大の人形である故か、少し丈夫には作られているようではある。
自重に耐えられないと壊れちゃうからね。
ヴィキ
ふむ
OK
では
横に腰掛けた彼の両手をとる
KP
ひんやりと冷たい。
ヴィキ
「あっくん」
結城 晃
「ああ」
ヴィキ
「私のこと、信じてくれる?」
結城 晃
「信じてるよ」
ヴィキ
「ん、ありがと」
「何が起きたとしても、私はあっくんの味方だし、必ず私が助けてあげるからね」
結城 晃
「ありがとう」
「正直、途方に暮れてるよ、俺は」
ヴィキ
「だよね」
「とりあえず、現状を整理して聞かせるから、私の目を見て、しっかり聞いて」
結城 晃
「ああ」
ヴィキ
「見て」
と彼の手を互いの視線の位置に持ち上げて
結城 晃
「まるで、作り物だな」
ヴィキ
頷き、
「もしかしたら、もう見て気づいているかもしれないけれど、今のあっくんは、人形になってる」
結城 晃
「やっぱり、そう見えるか……」
「けど、俺にはちゃんと感覚があるし、いつも通りのように思える」
ヴィキ
「体構造は、セラミック―――多分、一般的なビスクドールやアンティークドールのような、陶器のようなものになってる」
結城 晃
「ただ、自分の体に触ると冷たかったり硬かったりで、気持ち悪い」
ヴィキ
部屋に置かれたモニターに無線接続し、簡易的な成分分析のデータと、一般的なそれら人形の構造比を表示し、説明
結城 晃
「陶器……」
「壊れ物じゃないか」
ヴィキ
「そう、なんだよ」
結城 晃
「俺は動けるのに……陶器なのか」
ヴィキ
「だから、あっくんは今回ここで留守番ね」
結城 晃
言って彼は、自分の左腕を見る。
「いや……ちょっと待ってくれ」
「腕の動きがおかしい」
ヴィキ
「ん、そうなの?」
KP
彼の指が、軽く曲げた状態から、キリキリ、とかすかな音を立てて動いている。ほんの僅かずつ。
結城 晃
「さっきから握ろうとしているのに、動きが鈍い……」
ヴィキ
内部をスキャンできるかな?
KP
構造は先ほどまでと全く変わらない。
ヴィキ
中に何か入っていたりするわけでは無い?
KP
ないね。
ヴィキ
外傷であるとか、どこか異常は見られますか
結城 晃
「左手の指先に感覚がない……」
KP
ないよ。
強いて言うなら、先ほど取れた首の所と、殴られたという頭の所に傷が入っているかな。
ヴィキ
傷の周辺に何かあったりということも無し?
KP
ない。
ヴィキ
「うーん」
少し考えてから
「とりあえず、わかったよ」
「とりあえず現時点までにわかっていることだけ、共有しておくね」
シグマドールの情報と、シグマ自身の情報、妻のことについて、共有
結城 晃
「シグマドール。今の俺がそれなのか」
ヴィキ
「多分。頭のところに、刻印が入っていたから」
自分のその部分を指で指す
結城 晃
「本当に俺、人形になってしまうのかも知れないな……」
KP
結城は左手をじっと見ている。
ヴィキ
「そんなことはさせないよ」
「私が、解決してあげる」
結城 晃
「ありがとう、じゃあまずルートから洗うか」
KP
言って結城はすっと席を立った。
ヴィキ
「うん。……あ、でも」
それに続くように立ち上がり
「ダメだからね。あっくんは、ここで留守番」
「割れちゃったりしたら、困るもの」
結城 晃
「いや、俺も行く。証拠品はあった方がいいだろ?」
KP
証拠品、と言いながら自分を指した。
ヴィキ
「ううーん……」
ヴィキは少し、『壊れ物』である結城を家に置いて捜査した方がいいのではないかと迷う。
KPからはあまり推奨できないな、と伝えた。
※置いて行かれたら自分で追いかけるところだったけどね……
ヴィキ
しばし考え
「わかったよ……」
渋い顔で折れた
結城 晃
「心配してくれるのは分かるけど、ここでじっとしていることはできないよ。俺自身の問題なんだ」
ヴィキ
「でも、絶対に無茶はしないで」
「守れないなら、プチプチでぐるぐる巻きにしてでもおいてくから」
結城 晃
「それはちょっと勘弁して欲しい」
「今の俺多分呼吸していないだろうし、苦しくはなさそうだけど」
「……本当に、どういう状況なんだよ、これ……」
ヴィキ
「それなんだけど……」
「これは、推測ね」
いつものように、指を一本立てて
ヴィキの妄想劇場の構え
結城 晃
「うん」
ヴィキ
「多分、シグマドールの人形が、ネットで見られるような高い評価を受けている理由は、本当に『魂』が込められているから、なんじゃ無いかな」
結城 晃
「魂って、普通込めるのは本人のだよな」
ヴィキ
「そんなことはないよ」
「これは日本の人形師の人が言ってたことなんだけど」
「その人みたいに昔からそれを生業にしている人たちは、人形を作り出した最後の仕上げに『引導』を渡してあげるんだって」
結城 晃
「引導?」
「昔の映画なんかで殺す時に言う奴だな」
ヴィキ
「そうそう」
「『自分は魂のないただの人形なんだ』『人に遊んでもらうための存在なんだ』と言い聞かせてから世に送り出すんだって」
「そうしないと、人形は周りの魂を吸って、良くないものが憑いたり、良くないことを起こしたりするんだってさ」
「髪が伸びる人形、とか聞いたこと、ない?」
結城 晃
「変なこと知ってるなぁ」
「俺、オカルトにはあまり詳しくないんだよ」
CCB<=5 〈オカルト〉 (1D100<=5) > 95 > 失敗
無理。
ヴィキ
〈オカルト〉はヴィキも持ってないけど、まぁガンプラ繋がりで聞き齧ったことがあるんだろう
「ちょっと脇道に逸れたね」
「とにかく、それがシグマドールの人気の秘密だとして、今回はなぜかあっくんの魂が入っちゃった……とか」
結城 晃
「何故か、って、何だよ……」
ヴィキ
「それはわかんないけど」
「と、とにかく」
「それで、お人形にされちゃったあっくんは、晴れてお買い上げされたんだけど、そこで突然目を覚ましちゃったから、オーナーはびっくりして、思わずゴツン!」
「ちょっと気味が悪くなって、ポイ! ってところじゃないかな?」
結城の口から聞いた、聞くだけでおぞましい中年男性のことを思い出して、眉を顰めながら
結城 晃
「……なるほど」
「筋は通るな」
ヴィキ
「……で」
気を取り直すように
「そこなんだけど」
「あっくん、ちょっと服、脱いでみて」
結城 晃
「……」(気の進まない顔)
ヴィキ
「……? どうかした?」
結城 晃
「よりによってなぁ……」
KP
ため息をついて服を脱ぐ。
結城 晃
「どこまで脱げばいい?」
ヴィキ
「えっと、全部」
KP
どうしてこう、ツイてないんでしょうね可哀想に。
ヴィキ
憑いてるし問題ない
KP
だれうま。
KP
結城は全身の服を脱ぎ去った。
ヴィキ
さて、ボディは球体関節人形?
KP
そうだな、そう見える。
ヴィキ
女性型? 男性型?
KP
作りは男性のものだ。
ヴィキ
「ふーむ……」
頤に指を当てて、彼の陶器の裸体を周りを歩きながら観察
結城 晃
「楽しくない……」
ヴィキ
「我慢我慢。自分で言ったじゃない。大事な証拠だって」
刻印であるとか、特徴はありますか
KP
うなじにある「シグマドール」の印は、彼の髪で隠れている。
ほかには特に見当たらないが、左腕のあたりが少しツヤが強く出ている気がする。
ヴィキ
ツヤ?
KP
簡単に言うならば、ほんの僅かな弾力性なども失って、ただの磁器になりつつあるのであろう。
ヴィキ
なるほど
「あっくん、目が覚めた時、その……おじさんが喚いてた、って言ってたけど」
「どんなこと言ってたか、覚えてる?」
結城 晃
「そうだな……あまり覚えてないけど」
「『動いた!』とは言われた気がする」
ヴィキ
「なるほど」
そのほかに気づくことはない感じですかね? >体について
KP
特にない。
さきほどあった縛られた痕も、今はもう消えている。
ヴィキ
あまり時間はないのかも……そう考え、しかし口には出さず
「うん、ありがとう。服着てOKだよ」
結城 晃
「悪いけど、向こう向いてくれるかな。生身じゃなくてもなんか、気になる」
KP
言いながら、待つこともなくさっさと服を着る。
ヴィキ
「あ、あ、ごめん」
そこでようやく思い至り、慌てて後ろを向く
KP
左手の指先があまり動かないため、少し苦労はしているようだったか。
ヴィキ
「手伝おっか……?」
おずおずと背中越しに声をかける
結城 晃
「いや、いい。何とかなった」
「早く行こう」
ヴィキ
「ごめんね……」
振り返り、少ししょんぼりと詫びる
結城 晃
「いや、異常な状態だから、慎重になってくれているのは分かるよ」
「ただ……正直言うと不安で」
ヴィキ
「あっくん」
「必ず、助けるから」
結城 晃
「ああ……」
「あれ、前にこんなことあったっけ?」
ヴィキ
その言葉に『あの時』のことを思い出す
「私が、服脱がせたりとか? ないない!」
声音で塗りつぶして誤魔化すように、笑う
『あの時』……『やさしい朝をくださいね』を参照。
結城 晃
「だよなぁ」
「デジャヴュってやつか」
ヴィキ
「そうだよ~。私、そんなにえっちじゃないもん」
「ほら、早く行こ」
結城 晃
「ああ」
ヴィキ
彼のために、玄関でスニーカーを出してあげよう
「靴紐を緩めれば、なんとか……」
結城 晃
「きついけど、ぎりぎり何とか……」
ヴィキ
「ごめんね」
結城 晃
「……これ、カカト踏んじゃうな。サンダルとかないか?」
ヴィキ
「うーん……雪駄でもいい?」
結城 晃
「渋いな……」
ヴィキ
「楽なんだよ」
結城 晃
足の裏が盛大にはみ出て痛い。
まあしかし、合わない靴よりは……マシか?
ヴィキ
雪駄ってそうやって履くものだし問題ないない(かかと
つま先でちょいとしっかけて(江戸弁で突っかけて)、お尻の方はずって歩くのが粋なんだよ
KP
結城はよたよたしながら家を出る。
結城 晃
「どっかでスリッパかサンダルでも買おう……」
「コケて割れたら笑えない」
ヴィキ
「うーん……」

ヴィキ
というわけで、お店に向かおう
あ、そうだ
道すがら、店、というかシグマドールのことについて調べておこう
ラインナップやオーダーの仕方、価格など
KP
アンティークショップ・イオタ。
それは、近所の繁華街の外れにひっそりと建っている雑居ビルの半地下に店を構えており、うっかりすると見過ごしてしまいそうだ。
ラインナップ、と言えるほどの量はない。
先ほどのドールマニアのサイトでも読んだとおり、「いつ入荷するか分からない」ものなのだ。
ヴィキ
なるほど
オーダーしてどうこう、ではないのか
KP
完全予約制であるらしい。
随分納品期間にはばらつきがある。
ということも分かるだろう。
ヴィキ
あ、店に入る前に
少し離れたとこで結城をおんぶしていくよ
「あっくん、目は開けてていいけど、動かないように、人形のふりをしていてね」
結城 晃
「分かった」
「変な気分だな……」
ヴィキ
「まぁまぁ。ほら」
背中を向けて、少し屈む
KP
結城はヴィキの背に負ぶさった。
その体重は驚くほどに軽く、違和感がある。
ヴィキ
彼を背負ったまま、店の扉を開こう
KP
階段を降り、「OPEN」の札のかけられた扉を開けると、中には店頭に飾るためのキャラクターの置物や、園芸用の古い飾りなどが飾られており、更に進んで行くと古書や食器、懐かしのおもちゃなどが並べられている。
また、奥の棚にはリアルめのドールが多数飾られているのがわかるだろう。手のひらサイズのものから、子供サイズのものまで様々で、リアルな顔つきのものもあり、壮観だ。
レジには一人店長が座っており、あなたを見ると「いらっしゃいませ」と僅かに顔を上げる。
「おや……その人形は」
ヴィキ
それらを物珍しげに見ながら、奥へと進み
「あ、どうも。こんにちは」
KP
「その子に何か不備でもありましたか」
「……ご家族の方ですか……ああ、VOIDの方ですね」
ヴィキ
「ええ。そうなんです」
KP
「ご用件は何でしょう?」
カウンター奥にいた男は眼鏡のフレームを軽く押し上げて立ち上がり、カウンターから出てきた。
ヴィキ
何歳くらいの人?
シグマ関連の情報でその姿はヒットしたかな
KP
いや、写真はないかな?
店舗の写真くらいはドール好きの人が撮っていることもあるだろうけれど。
ヴィキ
そういえば、ドールの価格はいくらなんだろう
KP
高価だ。
大体ドールというものは高価な物ではあるが、その中でも頭一つ抜けて高価である。
それは、売り手の事情、というよりは、「いくら積んでも買いたい」と願う買い手が多い、ということのようだが。
オークションにかけられていたりすると、軽く家が買えるほどの金額が動くこともあるという。
これは、ここ5年のものに限られるが。
ヴィキ
「実は、自宅のすぐ近くに置かれていたのを見つけまして。シグマドールの刻印がありましたので、取扱店の情報を検索しまして、直接お持ちしました」
「高価な品ですし、オーナー様もお困りなのではと」
KP
「えぇっ、それはそれは。わざわざありがとうございます」
「盗難でしょうか、今お調べしますね」
ヴィキ
「はい。お願いします」
KP
かしゃり。
かすかな音が鳴る。
カウンターへと向かいかけた店長が、びくりとして立ち止まった。
「……ん?」
ヴィキ
音はどこから?
KP
あなたの背中だ。
ヴィキ
ふむ
「どうかしましたか?」
KP
「いや……気のせいかな」
「瞬いた気が」
ヴィキ
「瞬く?」
KP
店長は首をひねって、カウンターに戻っていった。
ヴィキ
今の反応に対して、〈心理学〉できますか
KP
してもいいよ。
心理いくつ?
ヴィキ
58
KP
SCCB<=58 〈心理学〉 (1D100<=58) > 13 > 成功
店長は純粋になにか驚くべきものを見てびっくりしたが、勘違いだったと思おう、としている。
そのように見える。
ヴィキ
ふむ
彼が調べている間、店の様子や彼の様子に〈目星〉できますか
KP
〈目星〉いいよ。
ヴィキ
CCB<=85 〈目星〉 (1D100<=85) > 88 > 失敗
KP
とても高そうな人形や家具が置いてあるな。
ヴィキ
別々?
振る前に聞けばよかったな
KP
別でイイヨ。
ヴィキ
じゃぁ店長に
CCB<=85 〈目星〉 (1D100<=85) > 2 > 決定的成功/スペシャル
KP
では、彼は興味を持っているように、貴方と、貴方が背負っている結城をチラチラと見ている。
純粋な好奇心であるようだ。
ヴィキ
ふむ
KP
また、「自分が売ったものに何か問題があっただろうか」と心配している雰囲気もあることが、先ほどの〈心理学〉もあわせて分かる。
今彼は、顧客名簿を調べているようだ。
ヴィキ
とりあえず、その対応を待とうか
KP
しばらくすると、彼はメモを持って現れる。
「その子を買ってくれたのは、○○株式会社の取締役社長ですよ。うちの子を良く買ってくれるんです」
「ずいぶんな愛好家でしてね、一年前から黒髪の青年の人形をご希望でして」
ヴィキ
その人物について検索かけたら、会社概要のところに写真とか載ってないかな
KP
「ようやく昨日入荷しましたので、昨日の昼に連絡を」
そうだな、写真はある。
当然脂ぎってもいないし、嫌らしい笑みも浮かべていない。
ヴィキ
その特徴自体は、結城の言っていた人物像にマッチしますか
KP
検索結果、自分だけで見てる?
ヴィキ
そうだな
一応、形式上持たされている携帯端末に表示して、背中の彼の視界に入るような角度で
結城 晃
「……!」
KP
そいつだ。声なき声が聞こえた気がした。
それは、僅かな目の動きだったかも知れないし、腕に入った力だったかも知れない。
店長が、ぽかんと口を開けた。
「動いた?」
「動いた!?」
「人形が、動いた!?」
ヴィキ
完全に見られた感じか
KP
店長は目を見開いて距離を取る。
「見間違いじゃなかったのか!」
店の売り物を蹴散らして、逃げだそうとする。
しかし、出口に向かう方の通路には貴方方が立っている。
結城 晃
「人形になってるっていうのに、動かずにいるのはなかなか大変なもんだな」
ヴィキ
「全くもう」
言いながら彼を店の床に下ろし
道を塞ぎます
KP
では、逃げ場を失った店長は、半泣きになりながら床に座り込んで頭を抱えてしまう。
「な、何なんだ、何だそれは!?」
ヴィキ
「警視庁 ドロ課 識別番号4547335、ヴィキです」
ホログラムIDを提示
KP
「け、警察!? 犯罪!?」
ヴィキ
「驚かせてしまい、申し訳ありません」
KP
「し、しかし、人形が、人形が動いて、喋って」
結城 晃
「ちょっと話が聞きたいだけです、落ち着いてください」
ヴィキ
「はい。本件は拉致・監禁・暴行傷害等の疑いがあり、捜査を行なっています」
KP
「拉致監禁!? いやいやいや、そんな、私はただ、人形を仕入れて販売しているだけです!」
ヴィキ
「ご協力願えますか?」
KP
「できる限りのご協力はしますから!」
ヴィキ
「ありがとうございます」
「まず、落ち着かれてください」
さ、どうぞ、と彼が座っていた椅子を勧める
KP
店長は這々の体で椅子に這い上がった。
がたがたと震えながら結城と貴方を交互に見つめている。
ヴィキ
「お尋ねします。なお、これからあなたがお話になる情報は、全て記録され、後に捜査資料として扱われることがあります」
KP
そんなお決まりの言葉にも、彼は涙目でがくがくと頷いている。
ヴィキ
「任意での聴取ですので、黙秘等はもちろんしていただいて構いませんが、虚偽の申告等と併せ、要らぬ嫌疑が及ぶこともあり得ることを申し上げておきます」
それでは、と続け
「こういった事態について、あなたは心当たりがありますか?」
KP
「い、いいえいいえ滅相もない!」
「人形が動くなんてあるはずがないじゃないですか!」
ヴィキ
あ、動くはずがない、のところに〈心理学〉できるかな
KP
できるよー
SCCB<=58 〈心理学〉 (1D100<=58) > 69 > 失敗
彼は、本当のことを言っているのだろうか。
涙でぐちゃぐちゃの表情からはいまいち読み取れなかった。
ヴィキ
ふむ
失敗したな
「ありがとうございます。シグマドールから商品が卸されている店舗は、こちらだけですか?」
KP
「ええ、専属で契約を取らせていただいておりますので」
ヴィキ
「その契約と、こちらでのお取り扱いはいつからですか?」
KP
契約自体はもうずっと昔からある。
販売も、人形作家「シグマ エータ」が人形を作ってそれなりに名が売れ始めた30年ほど前から継続的に行われている。
が、5年前から人形の量が減り、代わりに質がぐっと上がった。
それを期に、価格が上がったらしい。
店長は、驚くべき質の向上から、価格の上昇は妥当と判断していた。
「何しろ、生きているのかと思えるほどの質感と色気がありまして……」
言いながら、気味悪そうに結城を見る。
「いやいや、生きてはいないんです。人形なんですよ!」
「それでも、好事家、それも、ソッチ系の趣味の方に大変人気がありまして」
「二年先まで予約が埋まっている状態なんですよ」
ヴィキ
「ありがとうございます」
「ということは、シグマ氏とのお付き合いもそれなりにおありになる、ということですね」
KP
「付き合い、といっても、そこまで個人的なものではないのですが……」
「あくまで取引先というだけですので……」
ヴィキ
「なるほど」
「5年前から質が向上したということですが、その前後で氏に変わったところはありませんでしたか」
KP
「……そうですね、奥様が亡くなられたとか」
「あとは、随分と以前に比べ窶れられたなと」
「……あの、刑事さん」
ヴィキ
「なんでしょう」
KP
「最近、シグマ氏がお住まいの山にハイキングに行った方が行方不明になったそうなんです」
「クマに襲われたのだろう、と言われていましたが……」
店長は結城をちらと見た。
「まさか、人間が人形になっている、なんていうことは、ないでしょうね?」
「それを売ったら人身売買になってしまうんでしょうか」
ヴィキ
「それをご存知の上で、ということが無ければ、強く罪に問われることはないかと思います」
KP
「ああ、良かった……いや、良くはありませんけど……」
ヴィキ
「が」
「先ほども申し上げました通り、何か少しでも隠し立てされるようなことがありますと、我々としても要らぬ疑いを持たざるを得ません」
KP
「いえいえいえ、隠し事など! 一切!!」
店長は、ほっそりした腕をぶんぶんと振った。
ヴィキ
「それは結構です」
微笑む
「お互いに、要らぬ苦労は無いに越したことはありませんからね」
結城 晃
SCCB<=40 〈心理学〉 (1D100<=40) > 97 > 致命的失敗
「……」
「本当に何も知らないんですね?」
「何か隠してるんじゃ……」
KP
店長は、人形に迫られて引きつった顔で頷く。
ヴィキ
「あっく……結城さん。落ち着いてください」
結城 晃
「……分かったよ、左手がいよいよ動かなくなってきたから、焦ってるんだ」
「それだけだ、それだけ……」
ヴィキ
後ろ手に、彼の右手をそっと握る
KP
冷たい指が握り返してくる。
陶器にはあり得ないしなやかさを持って。
ヴィキ
それを、返すように握り返し
「……顧客名簿を拝見できますか」
KP
顧客名簿は借りることができる。
一般顧客に交じり、大物政治家や、大企業のSEOなど、名の知れた者のものもある。
ヴィキ
それらを静止画で取り込みつつ
KP
「しかし、私も初めて見ますよ、こんなものは」
「いくら生きているような人形だって、人形は人形なんですよ……」
「あなたもこの店に来た時には、人形にしか見えなかった……」
ヴィキ
「失礼ですが」
人形、人形、と繰り返す彼の言葉を、遮るように割り込み
「シグマ氏のお住まいは、どちらに?」
KP
「あ、ああ、行かれる……のですか?」
何故か、店長は口ごもる。
ヴィキ
「……何か?」
KP
「本当に、行かれるのですか?」
ヴィキ
「問題でも?」
KP
「ええ……先ほどもお話ししましたが」
「行方不明者が出た、と言う話の他に、ですね」
「昔からあの山には、『人食いの樹』と呼ばれている化け物の噂がありまして」
「一応、バスは出ていますから、シグマ氏のお屋敷の近くまでは行けますが、私もこちらから足を運ぶことはほぼないのですよ」
「一度行ったことはありますが……その、なんというか、あの山は不気味で」
「行かれるのでしたら、十分お気をつけて」
ヴィキ
「……ありがとうございます」
結城 晃
「化け物、か」
「今の俺がそんなようなもんだな。中身もないのに動いて喋って」
ヴィキ
「……」
結城の言葉には、ここでは何も答えず
顧客名簿の情報から、人形の姿などについての『受注内容』を抜き出し、シグマの山付近での事件記録、捜索願の情報から行方不明者の姿や身体的特徴について、マッチングしたい
KP
そうだな、マッチするね。
それを哀れな店長に知らせる?
ヴィキ
「これは、捜査と直接関わることではありませんので、あくまで個人的な申し出になりますが」
「もう、シグマ氏の人形を取り扱われるのは、おやめになった方が良いでしょうね」
KP
「そ、そうですね、まったくです、はい」
「人間かも知れないなんて、そんな気味が悪……いえ、はい」
言いかけた言葉を、結城をチラ見して飲み込む。
ヴィキ
携帯端末に、そのマッチング情報を表示して、見せるだけ
口には敢えてしない
KP
「……はい」
「この方々が動いたという話は、聞きません」
「……亡くなったということなのでしょうか……」
店長は、酷く落ち込んだ顔で呟いた。
店長にどぎついSANチェックが何度か発生したな、これ。
ヴィキ
「……それは、わかりません」
「ご協力、感謝いたします」
一礼
KP
「あの、本当に、お気をつけて」
ヴィキ
「ありがとうございます」
KP
「直ると、いいですね、その、お体」
結城 晃
「ご協力ありがとうございます……ついでと言っては何ですが」
「この左腕、本格的に動かなくなってきたんですが、こちらで何とかできますか」
KP
店長は彼の腕を見ていたが、力なく首を振る。
「非常に精巧に作られた等身大人形の修繕は我々プロでも非常に難しいものです。少しでもミスがあるとひび割れて壊れてしまうことだってあります」
「作られた方に修理を依頼するのが一番かと……思います」
結城 晃
「修理、ね。分かりました、ありがとう」
ヴィキ
彼の背にそっと触れて
店長にあらためて頭を下げて、店を後にしよう
結城 晃
「ヴィキ。左腕が、動かなくなった。感覚もない」
ヴィキ
「……うん」
「ね、あっくん」
「本当なら、バックアップを要請するなり、組織的な捜査に切り替えるべき段階だと思う」
結城 晃
「そうだな」
ヴィキ
「でも、それだと間に合わない」
「火砲の持ち出しもできないし、実動戦力は私1人だけ、になっちゃうけど……」
「信じてくれる?」
結城 晃
「いつだって信じてるよ」
ヴィキ
「……ありがとう」
結城 晃
「おまけに俺はこんな体だ、足手まといがいいとこだな。せいぜい邪魔にならないように立ち回るよ」
ヴィキ
「うん……」
「ね、あっくん」
結城 晃
「ああ」
ヴィキ
「あっくんは、化け物なんかじゃないよ。今も人間のままだし、必ず元の身体に戻してあげるから」
心を宿したVOIDだと彼が言ってくれた、その身体でそう告げた
結城 晃
「……そうだな、ありがとう」
「弱気になっている場合じゃないよな」
KP
ちょっと時間差入りますが
このままでは結城は本当に人形になってしまうかも知れない、そんな不安を覚えた。(SANC 0/1d2)
あ、ちなみに結城さんの左腕は完全に動かなくなりましたので、拳の威力と命中が大幅に減りました。
ヴィキ
CCB<=92 SANチェック (1D100<=92) > 5 > 決定的成功/スペシャル
信じてるからね
2人ならなんとかして来たし、なんとかするさ

ヴィキ
シグマの山はどこにあるんだろう
群馬とか栃木?
KP
あ、場所ちゃんと教えて貰える。
ここ東京なのかな?
ヴィキ
だと思うんだよね
特にヴィキは桜田門の近くに自宅あるだろうし
だからさっき、千代田区日比谷って言った
KP
なるほど
では神奈川の大山近くにあるらしい。
高速を使えば車で一時間強といったところか。
ヴィキ
なるほど
では、車で行くのが良さそうだな
KP
車は結城が持っている物が使えるだろう。
ヴィキ
「あっくん、確か車持ってたよね? なんだっけ、シタテニデルとかなんとか」
シトロエン
結城 晃
「シしか合ってないぞ」
ヴィキ
外車乗ってる! すげー!
KP
たぶん黒田さんの。
ヴィキ
なら個人的には2CVとか乗ってて欲しいところ
確か最近モデルチェンジされてたような
KP
黒田さんに似合いそうなのでそれで。(ググった)
ヴィキ
やったぜ
「万が一考えたらバイクってわけには行かないし、貸して!」
結城 晃
「ああ」
「……自動運転で使えよ?」
ヴィキ
2CVの自動運転モデル!?
黒田さんあまりこだわりないのかな
この時代の車、自動運転機能の設置は義務化されていると思うので……
イメージは映画AIとかデトロイトビカムヒューマン。
ヴィキ
「わ、わかってるよ!」
見透かされたように慌てて
結城 晃
「じゃあまず家だな。急ごう」
KP
電車で数駅。それから車で一時間。
ヴィキ
「あ、あっくん、一個だけ寄り道」
結城 晃
「ん?」
ヴィキ
「備えあれば憂いなし、ってね」
ウィンク一つ
というわけで、ホムセン寄っていきます
KP
ふむふむ。
ヴィキ
カゴに、コンロ用のガスボンベ3本パックをいくつかと、それ用のトーチノズルを放り込む
「木がなんとか、って言ってたでしょ」
結城 晃
「焼くのか」
ヴィキ
「本当にそんなの居るかわからないけど、備えておくに越したことはないでしょ」
結城 晃
「山火事にならないように注意しないと……」
ヴィキ
「竹みたいな、群生植物じゃないといいけど……」
結城 晃
「警察関係者が放火なんて、スキャンダルどころの話じゃない」
ヴィキ
自動運転のシートで、一緒に買った針金でボンベをまとめ、その内の一本にトーチノズルを装着したものを数セット作りながら
KP
彼は無意識のように右手の指先を見つめている。
ヴィキ
「……大丈夫だよ」
その様子を視界の隅に、即席の爆弾を作る
ゼリー状着火剤もチューブごと一緒にくくりつけとこう
即席ナパーム爆弾
KP
一応注意ですが
普通に休暇中だった貴方に装甲はありません。無茶をしないように。
ヴィキ
む、そうか
じゃぁホムセンで林業用の丈夫な作業服買っておこう
少しでも装甲付かないかな
ブレーサーと脛当て付きの
しばらくルールブックやシナリオとにらめっこして相談。
……うーん、でも普通に買えるレベルだし、現実的なお値段だしなぁ……
ヴィキ
林業用はチェーンソーや円ノコ使うし、鋭い木片なんかも防がなきゃ行かんから、普通にケブラーとかバリスティックナイロンとか使われてるぞ
KP
んじゃ前回のシナリオで使ったレベルの装甲を持った服なら手に入ることにしましょう。
ヴィキ
やったぜ
KP
リアルで買えちゃうんだから仕方ない。
ヴィキ
「はい、これ」
言って、野暮ったい作業服を渡す
KP
代金は結城さんが出してくれるよ。
結城 晃
「これ着てれば割れなく……はならないだろうな」
「ないよりはいいか」
ヴィキ
「あと、一応ね」
ついでに買ってきたエアキャップのロールを取り出し
結城の服や袖の隙間に詰め込む
結城 晃
「動きにくいなぁ」
ヴィキ
「関節のとこは開けといてあげるから……。だから油断はしないでね」
などと準備しながら、現地へ向かおう
あ、そうだついでに結城用の安全靴も買っておこうね
KP
OK。


CoC『VOID』28

CoC
VOID 21日目 close
……わたし達は道具だ。道具とはいえ、望みくらいは、持っている。意思を持たせておきながら、その意思を完全に無視してしまうのは―――わたし達自身の存在意義への侵襲に他ならない。

CoC『VOID』継続『AND/HAND』 ヴィキ&結城 3

「ヴィキ。命令する」

CoC『VOID』8 3日目(秘匿オープン版)

救助に邪魔なので一旦四肢を折りたたみましょう(ばきばき)



本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」