こちらには
『けものシッターKPC』 のネタバレがあります。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
佐倉とは友人。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。
悪魔を召喚して戦う。契約中の仲魔はラミアとマカミ。
とある事件より、体中の痛みに悩まされているが、桜色の勾玉により少し改善した。
巻き込まれ体質らしい。
最近牧志への奇妙な執着に囚われているため、家を出ている。
牧志とは友人。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
本編見る!
CoCシナリオ「けものシッターKPC」
- 甘いもの市場 -
佐倉からは一切の連絡はない。
シローもふたりきりの生活に慣れて、少し寂しそうにすることはあるものの、佐倉のことを口にすることもそう多くはなくなっていた。
波照間からは「問題ない」とだけ聞かされている。
それ以上のことは伝えるなと言われているのだそうだ。
シローは随分と色んなことを一人でできるようになって、気づけば佐倉さんが欠けても、生活は普通に回っている。
あの日から閉ざされたままの部屋の扉を見ると、また話したいなと思ってしまう。
それなら、いつか戻る日のことを考えながら、いつも通りに過ごすだけだ。
こんなのじゃなくても、例えば留学とかで誰かが一年いないなんて、たまにあるしな。
ああ、そういえばアメリカに行ってるあいつ、今度帰ってくるんだっけ。マサチューセッツ州のどこか、って言ってたな。
なんだっけ、アーなんとか……
あれを見ていると、ああ今頃どこで何をやってるのかな、なんて思う。
その青は、生活の中に変わらず佐倉さんの気配があるような、そんな安心感を与えてくれた。
ただひとこと、
『たすけて』と。
その一言を見てどきりとする。
何だ、これは?
いたずらかもしれない。
もしかすると、俺を誘い出そうとしているのかもしれない。
この前にも、見知らぬ女性が助けを求めてきたと思ったら、実はなんて事件をニュースで聞いたばかりだ。
『助けて』なんて、無視できないだろ。
そのアカウントのプロフィールを確認してスパムっぽくないかチェックしながら、そう返す。
メッセージが来た。
そして直後に真っ黒な画像。
ぶれていてよく分からない。
プロフィールには何も書いていない。本当にできたてといった風情で、アカウント名はランダムに並べられた英数だ。
少なくとも、この誰かは、このアカウントが俺のだって知っている?
ただのスパムって可能性は減ってきたな。
新規アカウントで送ってきそうで、俺をそう呼びそうな人を、ひとり思い浮かべてしまった。
いやいや、違う。それはない。それなら俺じゃなくて先輩に助けを求めるはずだ。
いつもみたいに忙しくて対応できなかったってことがないように、悪いけど先輩も仕事、減らしてくれているんだし……。
もちろんシナリオ導入に差し支えがあったら「今回ばかりは外せない仕事があった」で大丈夫です!
波照間がいつものように「忙しくて対応できなかった」をやっている間に佐倉さんに何かあったら牧志がSAN0になってしまいそうなので、フレーバー的にそういうことにしました。
波照間さんには大変な目? に遭って貰おう……
近すぎて詳細がよく分からないが……
猫が何かみたいに見えるけど……。
とりあえず、画像の明るさを変えて何か出ないかやってみる。
その爪は犬か猫か、どんな獣のものに見えるだろうか?
また、画像には位置情報など何かついていないだろうか?
どちらかというと犬寄りだろうか。がっしりとした太い足に見える。
位置情報はないか、と見ていると、もう一枚写真が送られてきた。
あなたの家の近所の公園にある遊具が写っている。それと、画面のすみに鮮やかな青。
あの日から不思議と枯れることのない勿忘草の花弁が写り込んでいた。
はっ、と振り向く。その青は、窓辺にあるのと全く同じ青だった。
まさか。まさかまさか本当に、佐倉さん?
感激や何かよりも先に焦りが来た。
連絡を絶ったはずの佐倉さんが、あれだけ決意したはずの佐倉さんが、助けを求める? 先輩じゃなくて…… 俺に?
また留守番で悪いけど、一人になってから前より留守番の機会が増えてしまって、慣れたものだ。
急いで出かける準備を整え、先輩に一報を入れて、公園へ向かう。
誰かが犬に襲われている。
そんな声が聞こえた。
真っ黒な服を着た誰かが、何か一抱えほどのものにのし掛かられて顔を噛まれている。
ように見えた。
周囲には子供が数人、スマホを手にした大人が数人。
大丈夫ですかと声をかける者もある。
周囲の人に確認しながら、焦る心を抑え、他に周囲に犬がいないか確認する。
ジャケットを脱いで丸め、壁にしながら横から近づく。
「かわいいねぇ!」
指を指す女性。
よく見ると、黒い獣は黒服を着た青年の顔にのし掛かり、顔をひたすらなめ回していた。
聞き覚えのある弱々しい声が下から聞こえた。
……ああ、安堵するとその声を聞いて、色んな感情が湧きそうになる。
興奮させたらうっかり噛むかもしれない。
犬に穴だらけにされたのはもう結構前だが、あの経験を忘れたわけではないのだ。
抱え上げられそうなら、背中から抱え上げて佐倉さんを助ける。
あなたが抱えあげようと後ろから近づくと、黒い獣は佐倉の顔の上に座って振り向き、くりくりとした赤く丸い目であなたを見つめ、「ばうっ?」と吠えた。
その姿は犬のようであり狐のようであり、そのどれでもなかった。
あどけなく可愛らしい、保護欲を掻き立てるような大きな目、三角形だが大きな耳、ツンと尖っているが丸っこいつやつやとした鼻は、動物の赤ちゃんを思わせる。警戒心を失なわせ、そのふわふわとした毛並みを撫でたいと思わせる。
だがそれは地球上のいかなる動物とも違うものなのだと、あなたは感じた。
その可愛らしく見える何かは、予想したもの── 誰かの飼い犬、恐ろしい野犬、実は猫、そのどれとも異なっていた。
何だか分からないがサイズに似合わない可愛らしさを備えた何かは予想を裏切り、思考をバグらされたような不快感と、ぬいぐるみのようで可愛いという好感を同時に呼び起こす。
小さく見える。でも大きい。結構大きいぞ。どうするこれ。
一瞬迷った結果、それの眼を見据えたまま手足を伸ばして体を大きく見せつつにじり寄る、という行動に出た。
とにかくそこからどいてほしいのだ。あと背を向けたくない。
モフモフの生き物は小首をかしげる。口を開け、あなたを見つめる赤い目が期待に満ちている。ハッハッと息を吐きながら獣は微笑んで、佐倉の顔の上に伏せた。
抱えあげるしかないだろうか。
思い切って抱え上げる!
獣はあなたの手を飛び出してあなたの顔にのしかかってペロペロし始めた。
あたたかい。重い。もっふもふである。
近い! 近い! もふもふだ! でも近い! 近すぎて結構怖い!
佐倉さんを助けられたことに安堵しつつ、そいつを宥めようとする。
それからふわふわの生き物があなたから引き離された。
あなたの目の前に、黒い生き物を抱えて何とも言えず情けない顔をした、顔面びしょびしょの佐倉がいた。
と見る間に黒い獣は佐倉の肩を這い上がっている。
ハンカチで自分の顔を軽く拭いてから、ハンカチを佐倉さんに渡す。
ハンカチに手を伸ばすが、獣に邪魔されて手が届かない。
向き合えば、そこにいるのが佐倉さんだ、という実感がじわじわと昇ってくる。
獣の毛をよけて、ハンカチを取って佐倉さんの顔を拭く。
会えて嬉しい、などとは到底口に出せなかった。
本当なら、まだ戻るべきでも会うべきでもなかったはずだ。
でも、困ったことに、やはりどうしようもなく、会えて嬉しかった。
ひとまず、目の前のものに意識を移す。
佐倉さんの悪魔にしては話が通じなさそうだな。
子供たちの好奇の目、大人達の微笑ましそうな目。
ここはあまりにも……内緒話に向いていない。
部屋、そのままにしてあるよ。掃除だけたまに入ったけど、物には触ってない」
そいつが飼い犬や悪魔じゃなかったら、後で念のため病院行こう」
というわけで表でも出しました。
家に戻ったら、きちんと見てみよう。
その様子を見て、少し微笑ましく思ってしまいつつ苦笑を漏らす。
佐倉さんと仮称子犬、不思議な図だ。
その調子じゃ、『それ』どころじゃないだろ?」
頭を乗り越えようとしている黒い獣の脇腹捕まえて顔面を尻尾でピタピタ叩かれつつ、佐倉は返事をした。
佐倉の頭の上から黒い獣はあなたを見下ろして、満面の笑顔で「ばう!!」と高い声で吼えた。
※何も無ければ自宅に着きます。
※自宅に戻ります。
佐倉は疲れ切った顔で眩しそうに微笑んだ。
あれから過ぎた時間は、小さなシローにとってはきっと長いものだ。
シローが佐倉さんのことを忘れずに、そうやって名を呼んでくれたことが嬉しかった。
彼は何かを発音した。だがあなたたちにはそれは聞き取れなかった。
シローが何か言ったような気がしたが、聞き取れなかった。
シローは首をかしげつつ、佐倉に纏わり付いている黒い毛玉に興味津々だ。
彼は何度か聞いたこともないような発音の言葉で説明を試みたが、そのひとつとしてあなた方には理解不能だった。
佐倉は足を引きずるようにして家に入ると、ソファの横に持たれるように座り込んだ。
黒い生き物は佐倉の頭からソファに飛び乗ると、フンフンとにおいを嗅ぎ始めた。
言いながら、コーヒーを淹れる。
随分、随分久しぶりに嗅ぐコーヒーの香りに、涙が出そうになって一度顔を背けた。
室内に満ちる香りと、部屋の主の気配。
これが、これがこの家の本来の姿だ。そう思えてならなかった。
獣が邪魔になるようなら、獣を抱え上げて一旦どかし、マグはシローに渡してもらおう。
佐倉は力なく言ってコーヒーを受け取って啜ると、心底安らいだような声を上げ、
あなたに感謝の笑みを向けた。
ああ……、よかった。
会えたこともだけど、そんな状態になっている佐倉さんを助けられたことが何より嬉しい。
佐倉の膝を飛び越えては部屋の端から端へと駆け巡り、
今度は膝をくぐりを繰り返すのに夢中になっている。
シローはそのルートに手や足を出して獣が飛び越える様を楽しんでいた。
昨日波照間さんたちと行ったのがほぼ害のない異界で、
トラブルの原因はそことはあまり関係のないヤツだったからさっくり退治して、
さあ帰ろうかって話して出たところで、
フードを被った男に遭遇して、こいつらを押しつけられたんだ」
佐倉が見た先で黒い獣が軽々と佐倉の膝を飛び越える。
『一晩だけ預かってください』ってんだよ。
で、そいつに詳しく事情聞く前にいなくなっちまってさ」
異界に放しておいて、悪魔の力とか借りて隔離しとこうってことになったんだ」
その一匹漏れたってのが、こいつ?」
で、俺にはこれを逃がさないように面倒を見るようにって。
そもそもこいつ逃げないけどさ~」
想像した。春日さんならうまくいなしてくれそうだし、洞川さんは扱いがうまそうだ。
なんだかんだで先輩は頑張るだろうし、穂坂さんは手玉に取れそう。
あと体力の問題。
新規アカウントから来たメッセージを見せる。
一日だけここに置いてくれ!」
ここは佐倉さんの家だ。部屋も掃除してあるし、傷まないように個包装のやつにしたけど、コーヒーだって置いてある。
佐倉さんが困らないだけ居てよ。
俺は手伝うし、俺と顔を合わせるのが大変なら、俺は外へ行く。
ここは、佐倉さんの場所だよ」
閉ざされたままの部屋の扉に蜘蛛の巣などはない。
塵一つないわけではないが、いつでも帰れるようになっていることが窺われる。
その顔に黒い獣が突進してきてぺろぺろ舐める。
いや駄目、一人にしないでくれ!」
慰めようとしてくれてるのかな、でももうちょっと手加減が欲しい」
獣に〈心理学〉……できるだろうか!?
▼〈心理学〉/4+〈生物学〉
純粋な好意 と好奇心と「あそぼう!!」という気持ちを読み取った。
ぶんぶんと振り回される尾も、ぴんと立った耳も、にっこり笑った顔も、素直に全力で無邪気な子犬と変わりない!
佐倉のことはちょっぴり心配したかも知れないが、どっちかというと興味の方が強そうだ。
見えてしまった。その眼の奥の心が。
赤い眼を覗き込んで絶句する。
獣は吠えて、おまけに佐倉の顔を舐めた。
真っ白に燃え尽きた佐倉がされるがままになっていた……。
このちっちゃいのと一日過ごします。
一応シナリオに
・調べる
・ご飯
・あそぶ
・お風呂
と項目はありますが、これ以外のことをしてもいいです。
風呂入る? そいつは水大丈夫なのかな」
つーかこいつなんなんだ?」
▼〈目星〉をどうぞ
首輪でもついているのだろうか。
洗い方を考えながら獣を見ていると、ふと首の毛の間に凹みを見つけた。
飼い犬? みたいだし、首輪でもあるんだろうか。
首の毛を掻き分けて、そこを確認することはできるだろうか。
首を弄られるとくすぐったそうにぱたぱたと暴れた。
真っ黒な革の首輪がはまっており、ドッグタグがついていた。
犬の首輪に犬って書くようなのどうかと思う、いや違う、違う、これは何だ、いま俺の手の中にいるこれは。
これは何のための獣だ。
何かの扉がぐつぐつと頭の中で音を立てている。
俺は何の名前を思い出しかけた。
何の。
知識とは
理解してはいけないということを知っているから。
そりゃ40%だもんな。やっぱり魔きしに足を踏み入れかけているのでは。
何気なく〈図書館〉って言っているときに読んでいるはずですよ。
因果が過ぎて最高。牧志&佐倉さんの中には忌まわしい知識が正気を食い潰す程に詰まっている。
▼【アイデア】
それが明日この獣を引き取りに来る、ということか?
これがあれのための獣なら、いや、あれとは何だ、あれは?
あれは?
考えるべきではない。
獣の眼は赫い。
おれ、ふろ、いれる。しろーおふろはいろう」
ぎくしゃくした声で応えた。
シローは元気よく返事をして、風呂場のドアを開けた。
「ばう!!」
獣は体の割に太い前足であなたの痣をぺちぺちと叩いていた。
忘れ…… 忘れられる?
頭の中に埋め込まれた無数の知識がもう少しで点から線になりかけている。
いままで目にする度に少しずつ少しずつ脳の底に焼きついてしまったものが意識の奥で蠢いている。
意識の先で理性がひっきりなしに警告を発している。
ポンコツ佐倉
つまり牧志も
あとシローとこいつも。風呂にはもちろん俺も入る。
獣はあなたが気に入ったらしく、あなたの顔を舐め始めた。
なにかを思い出させる真っ赤な瞳の奥には不穏な物はひとつもない。
獣はおとなしくあなたの腕に収まっている。
苦笑いしてその背を撫で、柔らかい感触を楽しむ。
ひとまず「あれ」にも「これ」にも害意はない。
今の所。それでいいってことにしておこう。
疲れてるみたいだから、寝たり沈んじゃったりすると危ないからな」
あなたに撫でられて獣は気持ちよさそうに目を細めている。
温かくやわらかい手触りが、あなたの嫌な知識や想像をどんどん脳から追い出そうとしてくる。
こうやって触れてると本当に、ただの犬だな。
どう思っていいか分からずに、暫く目の前の温かさだけを楽しんでいた。
自分で浴槽に入る元気がなさそうなら、佐倉さんを抱えてお湯に入れる。
それからシローにかけ湯をさせてやって、入っていいぞと浴槽にゴーサイン。
そこまで済んだらとうとう犬洗いだ。
目の前で発生する惨事に、そんなこともまとめて頭から吹き飛ぶ。
佐倉さん、頭をぶつけたりしていないだろうか!?
痛そうだ! でも手元には犬!
犬を洗ったら佐倉さんの怪我を確認すると誓うが、まずは手元の犬だ。
おせわ
……ない?
しかも牧志は犬のお世話には慣れていないけど、重たいものを抱え上げて世話をするのには慣れている!
これ佐倉の仕事の筈なのに佐倉がポンコツ過ぎるwww
もっとポンコツになってもいいんですよ。>狂気ひけらかして
▼何らかの〈交渉技能〉を振ってください。
1d100 77 〈説得〉 Sasa 1d100→ 52→成功
ひとまず深呼吸。穏やかな声で語りかけながら、端から少しずつ濡らして毛と肌をもみほぐし、温かさを教えていく。
あなたの体にぴったりとくっついて、シャワーを疑い深そうに眺めているが、逃げ出しそうな気配はなくなった。
ヒンヒン、スンスンというようなか細い声を漏らしていた。
泡が見る間に汚くなってゆく。意外と汚れていたようだ。指をたててマッサージしてやるうち、体の震えが止まっていた。
みるみるうちに汚れていく泡。
洗っている! という実感が湧いて楽しい。
獣を洗うのにしばらく夢中になっていて、視線に気づくのが少し遅れた。
視線の来る方を見る。
何となく佐倉さんの頭と、犬の毛を交互に見た。
そして視線の意図を誤った。
洗うのは拒否された。
さっきぶつけた所と、あと怪我ないか後で見るよ」
何故か強固に拒否された。
でも怪我と疲労は心配なんだよな。
バグる距離感
余裕が出たおかげでうっかり「いいなぁ」と思ってしまった!
牧志は完全に洗う気だったしPLはそうかな~と思っていました。
佐倉さんのお世話が体にしみついてしまっている。
その時のことを佐倉は覚えていない。
黒い毛はツヤツヤと光り始める。
尻尾の先がぺったりとつぶれ、本当に耳が大きなイヌのようにも見える。
獣はあなたの手に軽く顔をこすりつける。すっかり落ち着いたようだ。
「かわいいねぇ!」
シローがニコニコして獣に手を出すと、獣はスンスン、と鼻を鳴らした。
先に出て拭くよ。自分の体洗うのは後でやる」
どうしようかと思ってたから助かる」
言って、すっかり洗い終わったのを確認し、獣を佐倉さんの手にあずける。
その間にシローと入浴しよう。
びちびちと勢いよく水が飛び散る。
シローがきゃあきゃあと騒いだ。
黒い獣はするっと佐倉の手から抜け出して居間の方へ走っていった。
シローと二人、すっかり慣れた距離だったけど、その間の空気はずっと違う。
嬉しい。佐倉さんが帰ってきてくれて嬉しいよ。
また行っちゃうかもしれないけど、でも、会えて嬉しい」
佐倉さんには言えなかった言葉を、呟くように言って、そっとシローの頭を抱きしめる。
シローは呟くと、あなたの背をぽんぽんと叩いた。
シローの手のやさしい肯定に、しばらく身をあずけていた。
身を取り巻く温かい水は、滲む涙を意識させずに済ませてくれる。
黒い獣は湿った毛をつやめかせ、部屋を走り回る。
そして部屋の隅に纏めてあったゴミ袋の山に突っ込んで崩し、ソファの上のクッションを蹴立ててすっ飛ばし、コップを倒しまくっている。
そして風呂を上がると、予想した通りの大惨事が涙を吹き飛ばした。
佐倉は慌てて落ちそうになった品物をキャッチする。
明らかに獣は右に左にと意図的に佐倉を振り回して楽しんでいた。
佐倉さん、交代する。風呂入ってきて」
コップや写真立てなどの危ない物を急いでキッチンに移動する。
真顔で言い、佐倉さんを見送る。
分かった分かった、こっちで遊ぼう」
獣を受け止めようと腕を広げる。
小さな前足があなたの胸に飛び込む。
想像以上の衝撃と痛みが走った。
前足に全体重が乗っているのだから、力が集中してしまい、見た目よりも痛い。それはすぐ想像がつくだろう。それにしてもあなたは獣を受け止めきれずによろめいた。
▼【CON】×5
変な声出た。
しまった、忘れていた。こいつは人間のための獣じゃない。
獣のきらきらした目がこちらを見上げてくる。
やっぱりやめよう、とは言えなかった。そうすれば待っているのは大破壊だ。
▼【CON】×5
※ここ実は処理【POW】です。
全力で向き合うつもりで身構える。
意外と痛い
※でもルールブックよく見ると、肉体的には神話生物より野生生物の方が意外と強いんですよね……
何でもない自然が一番の脅威だった。
というかクマ使おうと思ったら強すぎたからシナリオに合わせて弱めたんですよ。
そりゃ熊なんていたら神話生物いなくてもパニックホラーだもんなぁ……
まあクマは悪意を持って魔法撃ってきたりしませんしね……
物理的な力というより、あるべきではないもののおそろしさ。
それはそう。人間の体に種子植えたり脊髄にとりついたりしませんしね。
でもそれはさておいて寄生系神話生物はたの…… こわい。
獣は嬉しそうに吠えた。
何をする? と考えた。
犬といえばボール遊び?
だめだ。そんなことしたら今度こそこの家が危ない。ここは賃貸だ。
だめだ。猫の遊び方しか浮かばない!
東浪見に聞いておけばよかった!
また、何か遊んであげる内容があれば何でもどうぞ。
〈心理学〉といい、牧志…… 獣との親和性結構高い?
※東浪見んちには犬いそう いなくても東浪見の友人親戚のどこかには犬いそう
犬は「とってこい遊び」や「ひっぱりっこ」が好きだ。
ボールなどを投げて取ってこさせる遊び、
タオルを犬と人間で引っ張り合う遊びなどである。
いずれも最終的に人間が勝って遊びを終わらせることが、序列を重んじる犬のしつけには大事なところである……
真っ先にそう思った。
俺んちの犬じゃないし、しつけは「あれ」に任せよう。
大型犬飼ってる人とかどうしているんだろう。
今度誰かに聞いてみよう。
いぬのちしき
ボールなら部屋にあります。
この話、リアル子犬の記憶総動員だ。
リアルではPLも猫しか知らないんですよね。
それだと実感が出そうでいいなぁこの話。
この獣相手に室内でボール遊びやったら賃貸の危機になりそう。
「これ」を外に連れて行く気にはならなさそう、牧志。
弱ってる佐倉さんが心配なのもあるし、基本外には出ませんね。
長いタオルを持ってきて、端を獣の方にひらつかせる。
そして先っぽに噛み付いて引っ張り始めた!
▼【STR】 11 との対抗
あなたは何とか制御して程よく引っ張り合いになった。
獣は大喜びで時々首をひねったり唸ったりしながらタオルをぐいぐいと引っ張っている。
全力で引っ張る!
よかった、東浪見の全力より強くない!
一瞬でも気を緩めたら持っていかれる緊迫を覚えながら、獣と引っ張りあいを演じる。
東浪見
佐倉だとこんなの25%だからあっさり負けてずっこける。
普段は競技とトレーニング以外で全力ださなさそう、東浪見。
子供と遊ぶのも子犬と遊ぶのも慣れてますしね。>痛くないように
頭を拭きながら感嘆の声を上げる。
そちらに気を向けた瞬間に、うっかりひっくり返りそうになった。
「やりたい!!」
ひっくり返りかけたところでの加勢はありがたい!
シローとチームを組んで引っ張りあい続行だ。
獣はさすがに引っ張りきれず、前足を浮かせた。
そんな感じで暫く交代しながら引っ張り合いかな。
あなたともう一人なら確実に勝てるが、佐倉とシローチームだと勝てるかどうかは五分といった感じだった。
獣はソファに登って丸くなった。
「あれ、おわり?」
シローは獣の横に座ってその毛をなで始め、
佐倉はへろへろと座り込んだ。
命の危機がない時に、こんなに全力で力を振り絞ったのは久し振りかもしれない。
相手に害意がないって素晴らしい。
佐倉さんの横に疲れ果てて座り込むが、何だか爽やかな気分だ。
心地よい疲れのおかげで、丸くなっている獣も何だか可愛く感じる。
俺こんなんじゃなかったぞ……」
コップを受け取り、水がからからになった身体を潤すのを存分に味わう。
明らかに犬じゃないよな、もう」
さらっと口にし、苦笑。
1d100 31 〈クトゥルフ神話〉知識 Sasa 1d100→ 93→失敗
笑おうとしてしくじった。あ、と思う間に表情が崩れた。じわりと涙が滲んだ。
だいぶ良くはなったけど、もう少し様子を見るつもりだったんだ」
涙声で言う。会えて嬉しいという感情を呑み込もうとすると、形のない感慨になってしまって表情がめちゃくちゃになる。
こいつのことが片付いたらもう少し外泊してくる。
長居したら出られなくなりそうだ」
佐倉さんも、生きててよかった。顔が見られて安心した」
唇が何か動きそうになって、声にすることだけは堪えた。
アソンデ
遊び始める前、前足アタッククリア後の判定【POW】でした。数値的にはクリアしてた。
何が起きてたんだろう……
その目に魅了されて「遊んであげなきゃ!」となります。
あんまり関係なかった。
牧志の目がハートになるかどうかの違いだった。
▼【CON】×5 判定。(佐倉は×3)
失敗すると腹の虫が空腹を声高に叫んでしまいます。
1d100→ 7→成功
1d100→ 42→失敗
ぐきゅるるるる
……というか、押しつけるなら飼い方くらい教えていけよな、そいつも。
変な物あげて何かあったらどうするんだ」
▼とりあえず冷蔵庫を調べる 【幸運】
1d100 85 〈図書館〉 Sasa 1d100→ 48→成功
優秀なハンターで悪魔の化身は、真っ赤な目で愛らしく微笑んで元気に鳴いた。
改めて冷蔵庫をゴソゴソやってみよう。【幸運】?
ペット用の皿はないので、一切れほど適当な紙皿に乗せて獣の前に差し出してみる。
つい、恐々とした手つきになってしまう……。
小さな口ではむはむと食べ始める。
肉はあっという間に小さな口に消えていった。
「わう!!」
そんな声が聞こえた気がした。
どれくらい食べるか分からないので、多めに鶏肉を解凍する。
余った分は? 俺達が焼いて食べればいいかなって。
むしろ、俺達が食べられたりしなくてよかったまである。
聞くなり既に鶏肉を焼き始めている。腹が減った。目の前の肉が食べたい。
こっちの皿を出せばいいかな」
シローのは胡椒控えめにして、代わりに甘いソース。
シローがあいつを見ててくれるから助かる。
リクエスト聞きそびれたけど、まあ、何かあったら明日にでも聞けばいいか。
とシローが訊いてくる。
と佐倉はにべもない。膝に上ろうとする獣を追い払う。
▼【POW】×5判定。
視界から追い出すのに苦労している。
体に悪い!
変な癖がつく!
だいたいこれは俺の久しぶりのまともな飯で……!」
理性と欲と執着が、訳の分からない衝動と情に抵抗している。しかし放っておけば佐倉は自分のご飯をあげてしまいそうだ。
そして風呂のとあわせて治りかけてた狂気が再発するぅ
人向けに味付けされたものは、塩が多すぎるし、動物に毒になる物が入ってるかもしれない。
でも、動物はそんなの知らない。
それに、自然ではこうやっていつでもご飯が手に入るなんてことないから、あげたらあげただけ食べちゃうんだ。
だから、俺達が何を、いつ食べるか決めてあげないといけないんだよ」
そう、覚えているのだ。
家の猫に自分のご飯をあげようとして、誰かに同じことを言われたような、ぼんやりとした記憶。
ゆっくり言い聞かせて、伸ばされる手をそっと下ろして諭す。
諭したら……
シローだと思ったら、掴んでいるのが佐倉さんの手だった。
シローは素直に食事を始めた。
佐倉は涙目でぷるぷるしていた。
やっぱり戻ってくるの早かったんだよ、ここに来るべきじゃなかったんだ」
泣きながら手を握られた。
シローが素直に食事を始める傍ら、おろおろと両手で手を握る。
シローだと思っていた影響で包み込むようになってしまった。
自分の食事はしたから腹はくちくなっているし、遊びまくって眠いのだ。
しばしぼんやりと、重なったあなたの手と自分の手を見つめ……はっ、と息をのんだ。
ああ、悪い、食べよう。折角のが冷める」
慌てて手を引っ込める。
だな、食べてしまおう」
また欲しがられないうちに、と自分の食事に手をつける。
ので話を振ってみる。
互いにいいことないだろうし」
目を見てたら突然、だって?」
丸くなっている獣を見やる。
それ、佐倉さんが疲れてるからかと思ったけど、もしかして。
……魅了、ってあるよな。パーティ半壊しかけたやつ」
獣を見やる視線に、また少し恐れが宿る。
それに普通に無理だろ、あれ」
マカミが手玉に取られ、絡まって巨大な片結びになる姿が頭に浮かんだ。
それに。
ふっと唇を割りかけて、口に鶏肉を押し込んで止める。
鶏肉を噛みしめて促す。
出そうになる言葉を呑み込む。
繰り返し、繰り返し呑み込む。
喉が震えているのが分かる。
ずっと出そうになっている。
いつもなら追及しないであろうところを何気なく追う。
言葉の代わりに、ぼろ、と大粒の涙が突然こぼれ落ちた。
でも、でも、言ったら佐倉さん困らせちゃうだろ」
ぼろぼろと涙をこぼしながら、半分聞き取りにくいほどの涙声で訴える。
涙をこぼしていないと、代わりに言葉が出てしまうとでもいうように。
もういい、もういいから」
結局、食事を終えるまで泣きながら食べていた。
ままならない
牧志も会えて嬉しいって言いたいのに言えない。
描写見るに、シローは今寝るとき牧志の部屋ですよね。
獣が牧志にもなついちゃって、獣返却するまで一緒にいないと牧志に獣押しつけていく羽目になるとかで一緒にいてしまえばいいのでは。>寝るとき
獣的にはご飯が貰えて快適で一杯遊んで貰えるここを離れる理由がない。
獣はぱたぱたと尻尾を振って、シローがそれを追いかける。今度はシローが遊んで貰っているような雰囲気になっていた。
俺の部屋にこいつの寝床作る」
佐倉はダンボールか入れ物か何かを物色し始めた。
確かに、ソファで寝かせるのもな。粗相されても困るし」
タイミングがよければ、まだ捨てていない段ボールなどがあるだろう。
タイミングが悪ければ衣装ケースだ。
佐倉さんの部屋は、彼が出ていった時のままに保たれている。
生もの以外は放り出していったようなもの、使いかけのものも全て。
意識しているかしていないのか分からないが、そこにいた人の気配が必要なようだった。
虫湧くぞ。捨てろよ」
言いながら箱を開いてチェック。
虫も湧いていないし湿っていない、使えそうだ。
それからちょっとした飲み物と軽食(酒はやめておこう)を二人分準備して、リビングのテーブルに置く。
少し居心地が悪そうに目を反らしながら。
ようやく落ち着いたし、ちょっと話したくてさ。
あれから互いにどうしてたとか、そんな話でいいんだ」
困ったように苦笑する。
そうされると何を話していいのか分からなくなって、数度口を開いたり閉じたりする。
視線を手元に落として、ハーブティーを啜る。
会えて嬉しいし、助けて貰えて助かった。
帰ってきたいのは本当なんだ。ただ……
帰ってくるべきではないんだ。もう少しの間は」
困ってなんかないよ。それだけは間違ってない。
分かってる、分かってたはずなのにな。
こっちこそ、ごめん」
何度も何度も言葉を迷わせて、指先をカップの周囲でうろつかせて、ようやくそう返す。
食べた後ってことにしようかこの話。
ぽつりと呟く。
対処法も増える。心にも耐性がつく。
そう思っていたんだ」
だって、例えば後ろから襲われたことがあると、後ろから来る車が怖くなるだろ。
火傷したことがなければ、火は怖くない。
……闇の中に怖いものがいることを知らなければ、真っ暗闇にだって入っていける。
でも、真っ暗闇で何も見えなかったら、一番おそろしいものを想像してしまうから、やっぱり怖い。
綱引きなのかな、って思うよ。
知って怖くなるのと、知らなくて怖いの。
でも、」
どうしてだろう。
ふと、知らないうちに弱っていたらしい心の隙間から、言葉が滑り出た。
カップが皿に触れて、かちゃりと音が鳴る。
そうだな、そういうものなのか、ここに在るのは」
いや、より深く知れば、もっと強い力があれば……」
ぶつぶつと呪文のように呟いた。
ふと、不安に駆られて手を伸ばしそうになる。
触れそうになった所で、どうにか手を止めた。
これまで一度も言わなかった、待ってる、という言葉を口に上らせる。
さりげなく、何気なく言おうとして、それでも少し詰まった。
卓上の空になった皿などを静かに片付ける。
何となく視線を合わせられないまま、手元に目を落としながらコップを片付けた。
あいつは俺の部屋に入れとくから」
久しぶりに感じる気配が懐かしかった。
次の予定
『眼窩に祝福』が先の方がいいかも?(シナリオ確認しました)
佐倉さんが落ち着く助けになるかどうかは…… 展開による?
導入が平穏な日常ベースなので導入を触る必要はありますが、そのものはクローズドなので今の状態でも行けそうです。
あ、眼窩に祝福も結構《SANチェック》重いので、不定増えたらすみません。
いやでもこれ佐倉さんPCだとめちゃくちゃ良い感じに大変だし因縁なんですよね……
今回の執着は3ヶ月なんで、そろそろ終わってもいい筈なんだッッ!
あなたは自分のベッドに入って、眠りについた。
すぐに眠れただろうか。眠れなかっただろうか。
そんな真夜中に。
▼〈聞き耳〉
これは夜中に佐倉さんが出ていったかな。
▼再度〈聞き耳〉。
ベッドが狭い。
顔の横になんか暖かい物が乗っていて、なんとなく息苦しくて目が覚めたのだ。
あいつかな? 寝ぼけたままその何かを撫でる。
何となく気持ちいいし温かい。そのまま暫く撫でていよう。
あなたが撫でていたのと逆側で、あの獣が丸くなっていてその尾があなたの顔をふわふわと撫でている。
起こしてしまわなくてよかった。
そっと撫でていた手を下ろして、そのまま寝よう。
ポンコツ
「なんだ、そのまま寝よう」ではない。
これがポンコツイベントだ!!
最初の〈聞き耳〉成功していたら佐倉さん来たところで目を覚ましていた?
慌てて帰るところだった。
異様に鋭敏なはずの牧志が気づいた様子もなくすやすや寝ているの見て欲に負けちゃったかー。
起床は【CON】勝負するか。
【CON】×5で張り切ってどうぞ。
数度まばたきをして、たぶん同時に目が合った。
佐倉さん困るだろうから、先に起きたら寝たふりをしておこう、という思惑が盛大に外れた。
慌てて起き上がり、様子を確認する。
ああそうか帰ってたんだ……」
こっち来て寝てただけ」
佐倉はその獣をひっつかむと、あたふたと部屋を出て行った。
その様子を見送って、朝の光が射し込む部屋をなんとなく眺めた。
……ああ、昨日はいい一日だったな。
ちょっと名残惜しいけど、これくらいがいいんだろう、きっと。
シローが布団から起き上がってウキウキとリビングに向かう。
まるで『特別な日常』の始まりのように。
「佐倉さん、こちらにいらっしゃいますよね? うちの子がお世話になっているはずなのですが」
穏やかな声が聞こえる。だがその声は少し不安そうだった。
顔は影になっていてよく見えない。
その正体を覗こうという気は起きなかった。
たぶん覗かない方がいいやつなんじゃないか、という気がする。
今、連れてきますね。
そういえば、どうして突然佐倉さんにあの子を預けたんですか?」
それでもちょっと聞かずにいられなかった。
それで人に預けてみることにしたのですが、全く知らない相手にというのも不安でしたからね」
インターフォンから聞こえる声に、獣は耳と尾を立てて嬉しそうに鳴きながら玄関に向かった。
「飼い主さん、来たってさ。俺、こいつを返してくるよ。
シローは中にいて」
扉にチェーンがかかっていることを確認し、扉を少し開ける。
シローにはあまり会わせたくない、さっさと返してしまおう。
チェーンをかけて対応したはずなのに、神と自身を隔てるものはなかった。
全身ががたがたと震えた。ひれ伏したいような恐怖と腹の底から沸き起こる怒りと、どうしようもない無力感と絶望感が膝を折らせかけた。
そこにいるのが神であるとわかってしまった。
何だかんだで楽しかったし、礼を言っていいのか怒っていいのか分からないな、なんて、そんな風に思っていたことも吹っ飛んでしまった。
神は獣を抱き上げて撫でた。
「迎えに来たよ、テュフォン。寂しくはなかったか?」
「わう!!」
「そうかそうか」
楽しそうな獣の様子を見ると、神は獣の言いたいことを理解したのかうんうんと一人で頷いている。
「一晩他人に預けてみると変わるものですね。この子、一回りも二回りも成長したように感じます。
あ、これ、預かってくださったお礼です。お早めにどうぞ」
上機嫌の神は、手に持っていた植物で編まれたらしい袋をあなたに押しつけた。
呆然と袋を受け取る。
扉には確かにチェーンがかかっていた。
あなたが押しつけられた袋は一抱えほどのものだ。何か丸くて軽いものが入っているらしい。
佐倉が後ろで呟いた。
チェーンがかかっていることを確認し、鍵をかけ直して扉を閉じる。
へたりと扉にもたれて座り込んだ。
とにかく、扉の向こうに見えたものを頭から追い出したい。
変なもの入ってないよな? 恐る恐る中身を出してみる。
まるで収穫されたばかりのようにぴんと葉が伸び、
大きな茎(500円玉より大きい!)から白い汁がにじみ出ている。
見るからに新鮮で美味しそうだ。
※彼が「セト」であるということには気付いてよい。
さらに察するのは……〈神話〉知識次第かな?
だがその正体は分からない。
レタスを持ったまま振り向く。
強張った声で佐倉さんと目を合わせた。
何か、もらっちゃったけど」
ここにトラップってことはないと思うし……」
忘れよう。そうだ忘れよう。忘れたい!
たぶん無理だと感じながら、その明るい声に合わせた。
物語の終わり
これ朝飯にして何も起きないようなら、会話の雰囲気が被ってしまいそうだし、佐倉さんが帰った後まで飛ばした方が綺麗かな?
分け合う以外にも三個は多いし。
その足取りは随分と軽くなっていた。
またな、佐倉さん」
手を振って、笑ってその背を見送る。
またな、と素直に言えた。
「●▼■●とさくら、またくる?」
シローが少し残念そうに言った。
どれくらい後か分からないけど、絶対。
帰ってきたら、今度はどこに遊びに行こうか」
シローに声をかけ、室内に戻る。
扉が開けられたままの佐倉さんの部屋を、何となく眺める。
乱れた寝床や室内の温度に、人がいた気配がぼんやりと残っていた。
手の中にはレタスが二つ。
リビングルームの窓辺には青い花。
遠くに住んでいる友達が帰っていった後のような、素直な寂しさと痕跡が、そこには残されていた。
けものと佐倉シッター牧志
END
あわよくば回復する話だったのに。
こちらはちょうど最初の値に戻った。穏やかな終わりでしたね。
成長どうぞ。
この後獣に壊されたなんやかやの修理が待ってますしね!
【POW】の方は、獣の魅了に気づくきっかけということで〈オカルト〉でどうでしょう?
1d100 54〈機械修理〉 Sasa 1d100→ 75→失敗
1d10 Sasa 1d10→4
1d100 44 オカルト Sasa 1d100→ 2→決定的成功(クリティカル)!
1d100 77〈心理学〉 Sasa 1d100→ 22→成功
1d100 97〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 89→成功
〈機械修理〉54→59、SAN59で終了。
59! 結構成功率が見込める値になってきた。
本編の牧志には、まだ素直な未来へ進む希望があるんだ。ある…… あるかなぁ?(最大正気度59)
真相と改変
どうせ預けるなら信頼できて悪魔扱いに慣れてて、無碍に断ったりしないヤツがいいよね。
シナリオのセトさんもうちょっとえらそうだしお礼もくれません。
後単に手元にシナリオがないときに台詞書いて「あっ」てなったのもあり。
佐倉さんが「それどころじゃないッ!」って放り出しちゃったら話が進みませんもんね。
能力的に悪魔で実力行使すれば放り出せなくはない能力だし、佐倉さん【POW】高いし。
その結果アクシデント重なって牧志に頼るしかない事態に追い込まれた災難な佐倉さん。
帰ってくるって信じて待っているのにその佐倉さんが数千年説教コースは困る。狂気どころじゃなくなりそうだけど。
セトの好物なんだって。
なんでセトの好物とされたのか、ってところは検索してはいけない。
好物とされた理由も検索しちゃった☆
男三人の家にレタス三つ贈っても別に意味深なエールではない。
今回の佐倉はポンコツエピソード多かったなぁ。
・ひとりで結界の外に出てしまう
・仕事なのに、狂気のため距離を置いていたはずの牧志の手を借りる
・犬の世話牧志に任せる
・シローにご飯あげちゃダメって言った直後にあげそうになる
・牧志のベッドで寝る
結界の外に出たのは、犬ーズが結界作ってる悪魔に絡んで困らせた結果、混乱のどさくさでペッされた。
そのとき佐倉気に入って絡んでたヤツが一匹同時に追い出された。
異界組にも山積みレタスが届けられたと思う。悪魔にも。
後で神父とマスターが労ってくれたと思う。
異界組はチクタクとの縁が強い洞川さんと穂坂さんがいるし、波照間さんもロアさんと遭遇したことがあるし、だいたいみんな絡まれていると思います。
ご飯の所、あそこで牧志がクリティカルしたのも含めて鮮やかすぎる流れでしたね。牧志が犬に対して冷静ッ!
元シナリオでは犬一匹だけです。
他のメンバーの助けではなく牧志の所に転がり込む理由を作るために、預けられる犬が兄弟全部になりました。
そう、劇中で牧志も言っていた通り、普通なら波照間に頼ってしまう。
だからこそ牧志が最初超慌てた。
悪魔絡みだし明らかに地球上にいない何かだから、東浪見にも頼れませんしね。
ちょっと犬が元気すぎる。
真・女神転生のメンバーで一番体力ある筈なんだよなぁ佐倉。
牧志が犬に対して冷静過ぎるのと、佐倉さんが魅了に負けてるのがちょっと面白い。
解説このくらいかな?
牧志とシローもなんだかんだで助け合っているな、というのも見えましたしね。今回シローいなかったらもっとひどかったと思う。
シローは気負っているし頑張っていると思う。
ギャグシナリオやりたい! と思うタイミングが二人が弱っていたり大変だったりするタイミングが多いからなのでは。
(『スプーキィ・ポルカ』はそういうタイミングではなかったのに重大なことになったけど)
大変なことがあった後に来ること多いですからね。
いやほら、『ふえるKPC』とか……
これだけ経験積んでると「前に起きたアレと関係ある」は必然的に多くなりますが、それにしたって当たること多いなって。
『鬼面夜行』の時みたいにほぼ意図的にやることもありますけど。
※あれもちょうど「次これやりたい」が合ってた
ニャルの仕込みかな??
『眼窩に祝福』はどうなるのかなぁ……。KPに見えている所で「これどうなるのかなぁあああ」って要素は既に結構あるんですけど、どう転んじゃうのかなぁ。
次の予定
>今回の執着は3ヶ月なんで、そろそろ終わってもいい筈なんだッッ!
確か二ヶ月のはずッッ!
『眼窩に祝福』、狂気が終わって帰れて平穏な日常を味わえている所からスタートしても、狂気が残ったまま巻き込まれスタートでも、どっちでも大丈夫です。
(ただ残っていた方が面白大変そうな内容ではある……)
期間的にもさすがに抜けかけで、この回で狂気を抜けるのかな、とは思いますね。
別な不定になっちゃったらすみません。
おかしいな正気度は基本佐倉の方が高いはずなのに。
佐倉からのいきなりのSOSに慌てて駆けつけた牧志の目の前で、佐倉は恐ろしい黒い獣に襲われていた……
狂気のためかとにかくポンコツ化する佐倉。牧志はお世話をしなければならない!
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」