こちらはオリジナルシナリオです。


佐倉 光

サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。

とある事件以来、自分の中に別世界の人間の精神を抱え込んでいる。

牧志とは友人。


牧志 浩太

お人好しで温厚、だが意思は強い好青年。
とある事情で一年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。

佐倉とは友人。


こんばんは
佐倉 光
こんばんは
KP
こんばんはー!
佐倉 光
よーし休暇とるぞー!
KP
とるぞー! 旅行だー!
佐倉 光
旅行だー!
ちなみに怪我は体力回復してから《ディア》連発で治しました。
KP
荒業! でもメガテンでは何度か死んでたしそれくらいできるできる
佐倉 光
多分月齢とかで《ディア》簡単に使える期間と使えない期間があるんだろきっと。
ルナ・ヴァルガーって小説に、女性の月イチの物が来てるときしか魔法が使えない魔道士がいたなぁ……(普通は逆らしい)
KP
それは逆より期間が短くてそれはそれで大変そうだなぁ……
おっ、お時間だ。では始めてまいります。
佐倉 光
はーい! 宜しくお願いします!
KP
よろしくお願いします!

KP
「最近色々あって疲れたし、旅行でも行かないか?」
 友達の牧志浩太からの、そんな何気ない誘い。
 その手にあるのは、実家の知り合いがやっているという民宿の割引券だった。
 
 その町は冬、雪に閉ざされる。


CoC 6th
「風のさびしく、呼ぶ声」

──寒い雪道を歩いていって。



KP
あの事件から暫くして。
今度こそ入院したあなたは、ディア連発で怪我を治すという荒業を決めながらも、体力やMP、何よりひどく打ちのめされた精神が回復してくるまで、入院生活を強いられた。
波照間に回復魔法が使える悪魔を頼んだかもしれないが、「そもそも持ってない」という理由によりそれは叶わなかった。
佐倉 光
昔はPC弄れればそれなりに気が紛れたんだが……
早く外に行きたい。
マカミに頼んだら「紙みたいな顔してっから寝てろ」って言われたんだよな。
KP
マカミに紙と言われるとは、余程だったのだろう。
牧志はちょくちょくあなたの所に見舞いに来ては、着替えを引き取っていったり、一緒にパズルを解いたり、なんでもない話をしたりして帰っていった。
佐倉 光
暇すぎていつかの異界の時みたいな益体もないメールを牧志に投げまくってしまう。
牧志 浩太
益体もないメールに牧志はいちいち返事を返したし、あの時のように暗号文を返してきたりした。
佐倉 光
あと三日この状態が続いたら、でかい銀行のハッキングでもしてやろうか。
そんな気分になっていた。
たぶんわけわからん夢のせいではない。
牧志 浩太
前と違って突然個人情報が飛んできたりはしなかったが、あの時の話もしただろう。
KP
そういえば銀行のネットワークに大きなトラブルがあったらしい、なんてことがニュースで流れてきた。
佐倉 光
み○ほかな?
のぞきに行ってやろうかな。
ストレスのままにそんなことを思いついたりしている。

佐倉 光
「牧志ー、なんか面白いことないかなー。
オススメ映画とかさー。
まえ聞いたヤツ3回は観たし」
牧志 浩太
「映画か、こないだ観たやつが面白かったかな。二人の刑事が謎めいた土鍋強奪事件を追っていったら、実は……、っていうやつ。
出オチかと思ったら案外凄かった」
佐倉 光
「土鍋強盗? へぇー……土鍋が次々と消える怪事件……これか」
牧志 浩太
「そうそう。それが……、っていけない、ネタバレする所だったな」
佐倉 光
「はーー」
深い深いため息をつく。
「飽きた。病院にいるのつかれた」
牧志 浩太
「もう少しだよ。佐倉さんの顔色、あの時に比べると大分良くなってるしさ」
佐倉 光
「どっか行きたい。遠くへ。
波照間さんと沖縄行って以来旅行とかしてねぇな」
牧志 浩太
「ああ、あの時の」意図せぬ旅行。
佐倉は以前、波照間とともに異世界(ボルテクス界)に迷い込んでしまったことがある。詳しくはこちら
牧志 浩太
「……あ、それなら」あなたのその言葉を聞いて、彼は何かを思い出したらしい。
「沖縄の次は、東北の温泉でも行かないか? 民宿の割引券があるんだ」
佐倉 光
「東北?
民宿か、いいな」
牧志 浩太
「そうそう。渋いかもしれないけど、雪山に囲まれた温泉郷ってやつ」
佐倉 光
「でもまたなんでそんな物。
まさか今時町内会の旅行もないだろ?」
牧志 浩太
「うちの知り合いらしくてさ。前に帰ったときに、配っといでってくれたんだ」
佐倉 光
「ああ、そうか、実家絡みの」
牧志 浩太
「自分で使うなとは言われてないから、丁度いいかなって」
佐倉 光
「へー……」
何だか今無性に動きたい。旅行したい。どこか行きたい。
異界も悪くないけど、もう少しピリピリしなくて良いところだと尚いい。
そんな気分にはぴったりかも知れない。
牧志 浩太
彼が取り出したのは、つやつやした紙に刷られた二枚の券だ。湯けむりと雄大な雪山が描かれている。
他にも何枚か配ったそうだが、これは手元に残っていた分らしい。
佐倉 光
「おっ、結構引かれるんだな。
温泉かー、久しく入ってないな」
牧志 浩太
「そんなに有名な所じゃないから、アピールも含んでるんじゃないかな。銭湯は前に行ったけどな、猫の時」
佐倉 光
「まあな」
そういえばそんなこともあったっけ。
けどあれは温泉じゃなかったな。
「お前んちここから近かったりすんの? 北の方って言ってたよな」
牧志 浩太
「割と近いよ。結構すぐ」
佐倉 光
「へー。じゃあついでに里帰りできるじゃん」
牧志 浩太
「だな。旅行の後にでも行ってこようと思う。最近何だかドタバタしてて、顔出してなかったし」
佐倉 光
「最近特にバタバタしすぎなんだよ……
俺が旅行だの温泉だの行きたい気分になるの、そのせいで疲れてんじゃねぇのかって思うよ」
牧志 浩太
「本当にな。何かと起きすぎだし巻き込まれ過ぎだ。生きてるって奇跡だなって思うよ」
佐倉 光
「腹割かれるわ偽物に襲われるわ牧志に忘れられるわ変な屋敷に拉致られるわ記憶飛ぶわ。
お陰で幻影について精神科でも行こうかと思ってたのに、行く暇ないうちに治っちまった」
牧志 浩太
「こうやって並べると、本当に色々起きすぎだな。疲れるのも無理はない。……あ、治ったのか、あれ」苦笑していた口元が、少し、ほっとしたように和らいだ。
佐倉 光
「正直、今思えばあいつの痕跡が少しでも観られる機会だったんだと思うと、惜しい気がしないでもないけどな……
いや、精神衛生上は良くねぇから、やっぱ治って良かったのか」
牧志 浩太
「旅行中にあの幻影はちょっと合わないし、よかったんじゃないかな。治って」
佐倉 光
「牧志だって記憶飛んだり生贄に上げられかけたり吸い殺されかけたりしてんだし……
いい機会かもな」
牧志 浩太
「ああ、俺もさすがにちょっと疲れたかな、って気はしてる。ゆっくり羽を伸ばしたいな」
そう言って、うーん、と大きく伸びをする。
佐倉 光
「じゃあ、退院したら行こうぜ」
牧志 浩太
「だな」
KP
幸い、寝てばかりいる生活はあなたの意思に反して、それなりに消耗した精神と肉体を回復させてくれたらしい。

あなたがストレスで爆発する前に、なんとか退院できることになった。
気づけば周囲は随分と肌寒くなっていた。
佐倉 光
「思ったより早くて助かった」
牧志 浩太
「最後の方、爆発しそうだったもんな、佐倉さん……」
佐倉 光
退院日に合わせて日程を決め、すぐに出発できるようにしておいた。
「『旅行行ける』で何とか乗りきったよマジで。
今すぐ病院異界化しろって何度思ったか」
牧志 浩太
「異界化したら見舞いにも行けないから、それはちょっと」
佐倉 光
でも多分普通の人より随分早めに退院できたんじゃないかな。
佐倉のストレス耐性が低いだけだきっと。
KP
窮屈な病院から出てすぐに新幹線へと飛び乗る感覚は、あなたを爽やかな気分にさせてくれるだろう。
佐倉 光
「新幹線……乗るの初めてだ」
牧志 浩太
「そうなのか? 途中まで空路と迷ったんだけど、新幹線にしてよかった」
佐倉 光
窓の外で吹っ飛んで行く風景を物珍しそうに見ている。
「飛行機は前に沖縄行った……つか沖縄に飛ばされたときに乗ったんだけどさ。
考えてみりゃ遠出ってしないからさー」
KP
窓の外では風景が軽やかに飛んでいき、次第に山深くなってゆく。
佐倉 光
「牧志は……何度か里帰りしてんだもんな」
KP
行きに買ったなんでもないペットボトルのお茶が、なぜか窓の外の風景に映えて見えた。
佐倉 光
「クソ堅いアイスを食うのがお約束って新幹線だっけ?」
牧志 浩太
「うん。飛行機の方が安い時期は途中まで飛行機、ってこともあるけど。あ、そうそう。時間が短いと溶けなくて食べ損ねるやつな」
あ、売ってる売ってる、と車内販売を呼び止め、冬なのにアイスクリームを買う。
佐倉 光
アイスに駅弁にとはしゃぐ佐倉は子供の顔をしていた。
牧志 浩太
あなたよりもう少し穏やかな表情ではあったが、彼もあなたと向き合いながら、随分と楽しそうにしていた。
「こうやって人と旅行するの、俺は初めてかも」
佐倉 光
バス……
牧志 浩太
悲しいね……
バス……実は牧志は失った記憶の向こうで親しい人と旅行をしたことがある。
佐倉 光
「そうなのか。友達多いのに意外だなー。
東浪見と行ったりしないの?」
牧志 浩太
「近場で遊んだり、東浪見の遠征に付き合ったりはするんだけどさ。こういう、いかにも旅行って感じじゃなくて」
佐倉 光
「へー、そういうもんか。まー、行きたいとこって人によって違うもんだろうしな」
(なかなか『異界に遊びに行きたい』、で付き合ってくれる人はいなさそうだ)
牧志 浩太
「先輩なら付き合ってくれそう」彼はあなたの思ったことを見透かしたらしい。
佐倉 光
「付き合ってくれるというか、むしろ俺が巻き込まれるというか……
面白いからいいけど」
牧志 浩太
「まあ確かに、あの時は完全に佐倉さんを巻き込んだもんな」
佐倉 光
「やっぱりあれ魔界じゃないと思う」
牧志 浩太
「結局何だったんだろうな、あれ。あの時は絶対地底世界だ! って思ったけど、今思うとその発想にはツッコミ所があるし」
佐倉 光
「滅びた世界が地下にあって、それが遺跡として出てくるとかだいぶ面白いけどな。
…………」
一瞬、黙った。
牧志 浩太
「……佐倉さん?」問いながらも、なんとなく察しているようでもあった。
佐倉 光
「……いやいや、ないよな」
これから行くところでまた変なことや世界に巻き込まれるなんて。
そんなの……
「ないない。杞憂杞憂」
牧志 浩太
「フラグってやつかなー、それ。いやいや、ないない」
佐倉 光
ふたりしてフラグ立てをする丁寧な仕事
KP
ふふ
佐倉 光
「だよな! そろそろアイス食えるかなー」
牧志 浩太
「お、スプーンが入るようになってる」
温かいお茶のカップの横に置いたアイスを引き寄せる。
佐倉 光
スプーンでアイスをつつく。
「つめてー! このクソ寒いのにアイス食うとか正気の沙汰じゃねぇ」
お茶とアイス交互に口に入れてる。
牧志 浩太
「美味しい! でも冷たいな!」こちらもやっていることは同じようなものだ。
真冬のアイス
佐倉 光
割と真冬でもアイス食べるけども。
KP
同じく。
というかクリーミー系アイスは秋冬にこそ美味しいみたいな所がある気がしてます。
コンビニラインナップ見ててもそんな感じですし。
佐倉 光
アイス食べたいなぁ。持ってこようかなー
KP
こちらも描写してたら食べたくなってきた 墓穴
佐倉 光
くくく。バーベキュースナック食べてるから冷えすぎは問題ないぜ!
KP
ヌー! 雪の宿食べよう
佐倉 光
中の人は久しく新幹線に乗っていないな。

牧志 浩太
「温かい物飲まないと、すぐ舌が冷えてくるから勿体ないな」
佐倉 光
「お茶がもう一本要るな。買ってこよ」
牧志 浩太
「あ、じゃあ荷物見とくよ」
佐倉 光
「牧志も同じのでいい?」
牧志 浩太
「ああ、同じやつで大丈夫」
佐倉 光
車内販売を捜して旅に出よう。
KP
車内販売のワゴンを探してあなたは小さな旅に出る。静かであってもたまに揺れる車内、真っ直ぐに伸びる通路、並ぶ座席。めいめい眠ったり喋ったりしている人々の横を抜けていく。
佐倉 光
揺れる車内をバランスとりながら歩くの嫌いじゃないんだけど、新幹線って揺れるっけ? と思ったらもう思い出せなかった。
KP
基本的にはほとんど揺れないけどたまに揺れるような、特に連結部移動するときとか。
こちらもコロナ以後全然乗ってないですねー、新幹線
前は新幹線駅の近くに住んでたので、新幹線ワープと称して何かと時短に使ったりしてたんですけど、今住んでるところちょっと駅が不便で
佐倉 光
あらゆるものが新鮮だ。
訳もなく浮き浮きしてしまう。
連結部にしばらく立ってみたり。
ここで聞こえる音がなかなか楽しい。
しばらく車内散策を楽しんで、やっと思い出したようにお茶を買って戻る。
佐倉 光
連結部好きなんだよなー。
新幹線の連結部どうなってたか覚えてないけど。
KP
連結部いいですよねぇ。こちらも好き。
一応連結部はそんなに変わらなかったような。
牧志 浩太
牧志は楽しそうに、流れていく外の風景を眺めていた。
佐倉 光
「悪い、異界に迷い込んじゃってさー」
お茶を渡す。
「おち水」とかに化けてはいない。
牧志 浩太
「新幹線の車内うろうろするのって、結構楽しいよな。あ、ありがと」代金渡してお茶を受け取る。
「あとトイレが独特で、ちょっと宇宙船みたいだって思ったりしてさ」
佐倉 光
「おー、そうそう、さっき見た。びっくりしたな、あれ。
特殊な空間にあると、そういう普通の物でも全然違うの面白いなー!」
牧志 浩太
「だな。寝台列車とかもそうだったんだろうな、きっと」
佐倉 光
「寝台列車かー。
もう走ってないんだよな。面白そうなのに」
牧志 浩太
「外国にはまだある、って聞いた気もするけど。いつか行ってみたいな」
寝台車
KP
<日本にもあるぞ <サンライズはいいぞ
佐倉 光
あるぞ
乗ったことはないけど。
寝台車好きだったなー。
KP
最近乗ってないけど前はちょくちょく使ってました 東京オフで朝入りして一日たっぷり楽しむのに使ったり。
佐倉 光
修学旅行で何度か使ったくらいですけども。
飛行機使った方が安かったりするんだよなぁ。
KP
値段はどうしてもそうなんですよねぇ。サンライズも結構する。しかしながら楽しい。
混雑した朝の東京駅に寝たまま滑り込むのが好き。

佐倉 光
最後のアイスのカケラをお茶で溶かして。
「ああ、んで、これから行くとこって、どんなとこ?」
牧志 浩太
「あ、そうそう。ここなんだけど」
そう言って彼はスマートフォンを取り出す。
佐倉 光
のぞき込む。
牧志 浩太
小さな温泉郷ではあるが、冬には氷の張る湖、山のふもとにある城跡(跡だ。割と何もない)、この辺りにしかいない冬鳥など、地味な見どころがいくつかある。米と酒が美味しいらしい。
佐倉 光
「へぇー、聞いたことないな」
牧志 浩太
「地味だなーとは思うけど、その分ゆっくりできそうな気はするよ。嫌いじゃない」
佐倉 光
「あんま騒がしいとこは俺もそんなに好きじゃないし」
牧志 浩太
「有名なとこだと、その分混むしな」
佐倉 光
むしろ「五月蠅い今すぐ世界滅びろ」って思う(女神転生第一話参照)くらいには人が多いところ嫌い。
まあ今は前ほどじゃないかもしれんけど。

KP
そうこう言っているうちに目的の駅について、あまり本数のない在来線に乗り換える。
早くも雪に覆われた、白い山々が遠くに見えた。
佐倉 光
転がすスーツケースは偉大である。
KP
コロコロコロ。あなた達はスーツケースを引きながら、少しひんやりした空気の中を行く。
佐倉 光
「白い」
ついあまりにも当たり前すぎる感想を呟いてしまった。
牧志 浩太
「確かに」
佐倉 光
雪には馴染みがない。
雪、と思ってパッと思いついたのは、長い階段の果てで助けてくれた猫の姿だった。
「ユキさんの色か」
牧志 浩太
「ああ……、そうだな。安直な名前だと我ながら思うけど、雪みたいな白だった」少し目を細め、雲に煙る山々を眺める。
佐倉 光
「元気にやってるさ。あっちで」
牧志 浩太
「……そうだな。それに、夢の中でも元気にやってたみたいだし。俺の知ってるユキと、同じユキかどうかは分からないけど」
佐倉 光
「よろしくされたし関係はあるんだろ、きっと」
牧志 浩太
「だな。そう思っとく」
佐倉 光
「てか……空気が痛いんだけど」
牧志 浩太
「あ、それは分かる。電車に乗ったら暑いくらいに暖房かけてるから、もう少しの辛抱かな」
佐倉 光
「冷たいっていうより痛い。鼻の中痛い」
牧志 浩太
「最初来た時、喉まで痛かった」
佐倉 光
在来線か。ドアの所に開閉ボタンついてそう。
KP
普段乗っているのに比べると小さく見える電車は、言う通り少し暑いくらいの乾燥した空気に包まれていた。ドアにはもちろん開閉ボタンがついている。
牧志 浩太
彼は慣れた様子でボタンを押す。
開閉ボタン
KP
最近は割といろんなところの電車についてる開閉ボタン。
佐倉 光
実はあまり見たことがないなぁ。
KP
なんと。
佐倉 光
北海道で乗る電車は基本長距離のばかりですし、札幌のは地下鉄ばかり乗ってたからなぁ。
KP
ああー、なるほど。

佐倉 光
「この気温差、なかなかキツイもんがある。
というか上着もっとちゃんとしたヤツが要るなこれ」
周囲の人々のガチの上着やマフラー、耳当てなどを羨ましそうに見つめる。
どうやら俺は寒さに弱かったらしい。
牧志 浩太
「ああ、確かに……。あまり気にしてなかったな。寄れそうな場所がなくなる前に、途中でどこか寄って買おうか」
寒そうな様子を見て、時刻表を調べつつ提案する。
佐倉 光
「そうしたい……
つかそのボタン、なんで客が押すようになってんだ?」
牧志 浩太
「ああ、これ? 駅にいる間に開けとくと、暖房が逃げるし雪が入るからじゃないかな」
彼は律儀に閉じるボタンも押して、電車の扉を閉じる。
佐倉 光
「へぇー……なるほど、それほど乗り降りする客がいないなら理に適ってるんだな」
牧志 浩太
「そういうこと」
佐倉 光
compがキンキンに冷えて冷たい……
牧志 浩太
「うわ、冷た」うっかりCOMPに腕が触れたらしく、驚いた声を上げながらも笑う。
佐倉 光
「しまっとこうかな。貼り付いても嫌だし」
牧志 浩太
「それがいいかもしれないな。COMPで凍傷なんて普通に嫌だし」
佐倉 光
さすがに辟易したので腕輪をポーチにしまう。
これが役に立つような機会なんて、旅行中にあるわけないしな!
KP
あるわけないしね!
佐倉 光
どうせ役に立たないしね。

KP
そうして、途中で上着を買ったり、ちょっとしたものを食べたりして。
再びの列車旅のあと、電車を降りると、あなたの眼に映った風景は── 白かった。
点在する民家や旅館の塀に被った、重そうな白い雪。今は晴れており雪こそ降っていないが、雪除けをされている屋根や、道路を除いて、何もかもが白く覆われていた。
遠くには雪に白く染まり、雲に煙る高い山々。山と雪に囲まれて、ぽっかりと穴のように開いた集落だった。
佐倉 光
「空気まで白いぞ。
すげーな雪だるま作り放題じゃん」
しょうもなさすぎる感想を漏らしてしまった。
「うわ、滑る」
黒く見えるところを踏んだらずるっと滑った。
牧志 浩太
「うわっ、危ない」
佐倉 光
「ここ地面じゃないのかよ!」
牧志 浩太
「そういえば言い忘れてた……。割と凍ってるんだ、そういう所」
佐倉 光
「詐欺だ」
いいながら恐る恐る白い雪の上に避難する。
「マジで全部白いな」
牧志 浩太
「だな、真っ白だ」
佐倉 光
「道に迷いそうだ」
牧志 浩太
「道は雪除けしてあるから大丈夫だけど、夜なんかは外に出ない方がいいかもな。寒くて出る気も起きないだろうけど」
佐倉 光
「早く民宿にたどり着きたい」
KP
そうやって話していると、駅前のロータリーに、民宿の名を書いた車が滑り込んできた。
佐倉 光
「凍る」
牧志 浩太
「お、来た。この寒さだからさ、迎えに来てくれるっていうから頼んだんだ」
スーツケースを引いて、彼はその車に向かって凍った所を避けながら歩いていく。
佐倉 光
その後について歩く。
車に宿の名前書いてあるのかな。
なんて名前なんだろ。
KP
名前書いてあります。「雪の花」という、なんのひねりもない名前だ。
KP
なおKP、東北方言はぜんぜん分からないので共通語で参ります。
佐倉 光
はーい
私も分かんないよ。
東北弁で喋ってることになっているならそう言っていただければ佐倉が困惑します。

KP
『おお、よく来たね。いらっしゃい』車の扉ががらりと開き、運転手が顔を出す。
佐倉 光
「地獄に仏ってこういうのを言うんだなぁ」
牧志 浩太
「だな。お邪魔します」
KP
その言葉は普段聞くものよりも、だいぶんアクセントや響き、語彙が異なっていた。初老の男性が話す言葉には、少し、こもったような響きがあった。
※KPが東北方言分からないので共通語での描写となりますが、運転手は東北弁で喋っています。
佐倉 光
(正直何を言っているのかは良くわからないけど、たぶん歓迎されてる)
(これが噂の東北弁……!)
(ほぼ外国語に聞こえるな)
佐倉 光
でも考えてみれは佐倉〈日本語〉95持ってんだから、方言くらい余裕で分かりそうなんだよな。
知らない方が面白いから、勉強したことがないことにしよ。
KP
まあ語彙は知っていても使う機会がないとリスニングわかんないかもですし。
KP
『おお、牧志ん所のお坊ちゃんかい。久しぶりだねぇ。そっちは?』
牧志 浩太
「ああ、俺の友達です」
牧志が一瞬だけ困惑を唇に浮かべたのに、気づいたのはあなただけだろう。
聞きにくそうにしながらも、彼はなんとか言っていることが分かるようだ。
『そうかそうかい、ゆっくりして行きな。そら、乗った乗った』
佐倉 光
「よろしくお願いします」
言って車に乗る。
牧志 浩太
スーツケースを支え、車の荷物置き場に積み込む。彼も車に乗り込んだ。
KP
雪に覆われた野原をかき分けるようにして、車は細い道を走っていく。
佐倉 光
異世界に入り込んで行くような心地だ。
こんな場所の温泉か、気持ちよさそうだ。
KP
『今年はなんだか、積もるのが早くてなぁ』どうやら雪の話をしているらしいと、あなたがどこかで見た方言の書籍のことが、うっすら思い出された。
佐倉 光
ああー、こんな感じなのか。なるほど。

聞き取りは書で読むようには行かないなと思いつつ耳を傾ける。
その一方、さっき牧志が一瞬見せた表情のことが気になっていた。
やっぱり、一方的に知られている相手が多いんだろうな。
牧志 浩太
「そうなんですか?」
KP
『ああ、昨年一昨年は今の時期もうすこしましだったよ。坊ちゃんとこもそうだろ』
牧志 浩太
「ここ最近、あまり帰ってなくて。そうだったかな」
KP
『なんだ、そうなのかい。後で顔見せてやりな、あいつらも喜ぶだろ』
牧志 浩太
「そうします」
KP
どこか曖昧に会話する牧志の姿を見ていると、しばらくして車は、大きくはないながら立派な造りをした屋敷風の建物の前に着いた。
佐倉 光
「へぇー、ここかぁ」
KP
屋根の下に、民宿「雪の花」という、木製の看板がかかっている。
佐倉 光
「良い雰囲気だな」
牧志 浩太
「だな。結構立派だ」
KP
運転手はここの従業員らしく、あなた達に手を振ると、そのまま裏口から中に入っていった。
佐倉 光
置いてもらった荷物を手に、民宿に入ろう。
牧志 浩太
「よし、とにかく入ろう。寒いし」
KP
あなたたちは民宿の扉をくぐる。
佐倉 光
「ああ、何でもいい、暖かいモン飲みたい」
KP
乾燥した温かい空気が、ほっと安堵させるようにあなた達を出迎えた。ロビーにはよく磨かれた銘木の卓が置かれており、地元の新聞などが置かれている。その反対側に受付があった。
牧志 浩太
「同感。部屋に入ったらお茶とかあるかな」
佐倉 光
「ふー、あったけぇー。
受付あっちだな」
新聞持っていっていいなら持っていこうかな。
牧志 浩太
傍らに置かれたストーブで暖を取ってから、受付に向かう。
KP
新聞は有料だ。そこで読む分には自由だが、取っていくなら代金払えということらしい。
佐倉 光
なるほど、じゃあ一つ買っていくか。
KP
少し古風なフォントで題字が記された、見慣れない新聞だ。
「あらまあ、いらっしゃい。ようこそ、雪の花へ」
受付に向かうと、柔らかな雰囲気をまとった中年の女性があなた達を出迎える。

こちらは外の客を相手にする商売ゆえか、割と何を言っているか分かりやすい。
佐倉 光
部屋はシングル二つかな? ツインかな?
KP
どちらでも可。どっちを選んだ?
佐倉 光
ふむ。じゃあ牧志の懐事情加味してツインかな?
牧志 浩太
なるほど。確かに、それは懐事情的にありがたいかもしれない。先日の事件でかかった費用は佐倉さんと先輩がだいぶ持ってくれたとはいえ、そこまで潤沢な懐事情はしていない。
佐倉 光
そう、俺も結構支出でかかったし。
アッタのやつボりすぎなんだよ……
あとあの鏡な。
KP
百年以上前のものとはいえ、割と眼が飛び出そうな値段がした。それだけ、ではないのかもしれない。
佐倉 光
じゃあ、まとめて手続きとかやるかぁ。
こういうのやっぱ成人がやった方が面倒がなかったりすんのかね?
KP
それはあるかもしれない。
佐倉 光
よし、任せよう。
牧志 浩太
牧志がペンを手に取り、名前や住所を書く。
佐倉 光
その間、旅行中の天気とかチェックしていよう。
KP
晴れたり雪が降ったり、という塩梅ではあるが、幸い旅行中はそんなに荒れた天気にはならなさそうだ。
牧志 浩太
一通りの手続きを終えて、部屋の鍵を受け取る。鍵のうち一本を佐倉さんに渡す。
佐倉 光
もの珍しそうに鍵を見ている。
牧志 浩太
鍵にはよく磨かれた木のプレートがついていて、そこに部屋の名前が書かれていた。
佐倉 光
なんて部屋だろ。
牧志 浩太
「ふきのとう、だってさ」
佐倉 光
「なるほど、いかにもって感じ」
牧志 浩太
「だな」
佐倉 光
部屋行って茶でも飲みたい……
牧志 浩太
「温泉は離れで、朝から夜の10時まで。夕食は夜の6時から8時までの間で時間が選べるらしいけど、何時にしようか」
佐倉 光
「夕食は早めにしといて、あとはなんか適当にツマミでも食べるってのもありだけど」
このへんお店とかあるかな?
KP
民宿のそばに土産物屋などの他、スーパーがひとつだけあるのを来る時に見た。割と閉まる時間は早そうなので、先になにかしら仕入れておくべきだろう。
今の時間は16時くらい。
牧志 浩太
「ああ、それもいいな。そうする?」
佐倉 光
「よし、じゃあ部屋着いたらまず買い物に行こうぜ」
牧志 浩太
「賛成」
夕食の時間に6時、と書き入れる。
KP
ゆっくりしていってね、と、出迎えた時と比べ少し相好を崩した親しみのある表情で、女性はあなたたちを見送った。
佐倉 光
廊下歩きつつ訊いてみよう。
「そういや……野暮な話かもしんないんだけどさ」
牧志 浩太
「ん?」
佐倉 光
「家近いなら、お前はそこに泊まるって手もあったんじゃないの?」
牧志 浩太
「それもちょっとな。温泉旅行だし、折角なら俺も一緒に楽しみたいよ、旅行。温泉入る時だけ戻ってくるのも面倒だしさ」
佐倉 光
「ああ、そりゃそうか……」
牧志 浩太
「というか、温泉入ってから寒い中出歩きたくないかな」
佐倉 光
「言えてる」
牧志 浩太
「だろ」
佐倉 光
じぶんちじゃあ、旅行って感じにはならないな。
そりゃそうか……
そんな当たり前のことを変に納得する。
KP
こういうの、民宿やホテルなどの旅行! って体験ができる所に泊まっていい思いをするのも旅行に含まれてますしねわりと。(近所旅行好き司祭)
佐倉 光
割と旅行しなくても近所のホテルに泊まるだけで気分変わって楽しいっていいますしね。
KP
それは思います。自宅じゃないだけでもだいぶん気分変わる。

KP
和風の室内からは、大きな窓の向こうに雄大な山々が見渡せた。その向こうに湖があるらしいが、雪と氷に埋もれているのか、よく分からない。
佐倉 光
「おー、いい眺め!」
牧志 浩太
「だな!」
KP
室内には温かいお茶のポットと、素朴な茶菓子も用意してあった。
佐倉 光
さっさと荷物置いたらお茶セット出そう。
牧志 浩太
「こうやって部屋に落ち着くと、ああ旅行だなー、って感じがするな」上着を脱いでハンガーにかけ、卓に湯呑を置きながら言う。
佐倉 光
物珍しそうに、部屋に置いてあるであろう宿の案内や近所の名所案内なんかを見る。
KP
室内の案内と利用約款の書かれた冊子に、一緒に近所の名所案内が挟んである。
今回は関係ないかもしれないが、大きな宴会場も一つあるらしい。
佐倉 光
「荷物だけじゃなくて、色々降ろせたような気分になるな!」
和室かな。
洋室ならベッドの上、和室なら畳でゴロゴロする。
KP
畳の和室ですね。まだ布団は出されていないが、布団が入っているだろう押し入れもある。
床の間には花器があり、その上によく分からない掛け軸が掛けられている。
佐倉 光
ゴロゴロしつつ名所案内見よう。
KP
その横に古風なテレビが置かれているが、それは映らないらしく、その前に薄型の液晶テレビがひとつ。
佐倉 光
一時期あったな、そういうの。
「このテレビ分厚い」
牧志 浩太
「古そうだな、これ。電源抜いてあるようだけど」
KP
名所案内に書かれている内容は、スマートフォンで見た内容とあまり変わらなかった。湖、山のふもとにある城跡、この辺りにしかいない冬鳥。それからお土産ものの工芸品などの案内と、利便のためか件のスーパーの営業時間。
それから地元の日本酒や米の案内。おっと、あの受付のそばに小さな売店があるようだ。
佐倉 光
「買い物ここでやってもいいかもな」
寝転がったままでショップの記述を指し示す。
「それなら後回しでもいいし、まず風呂ってのもアリだな」
牧志 浩太
「へぇ、三月には人形祭りやるのか」横で名所案内の記述を見ていた彼が、ん? とそちらを覗き込む。
「ああ、確かに。そうする?」
佐倉 光
「なんだかんだ今日は疲れたしさー」
牧志 浩太
「それなら外出なくていいしな。賛成。
結構長旅だったしな、ここまでも」
佐倉 光
「結構長かったな。何時間かかったっけ……
出たの朝早かったから、少し眠い」
牧志 浩太
「出たのが朝だろ。途中で上着買うために一度降りて、電車の時間が合わなくて少し時間潰してもあったけど、それでも結構な時間がかかってるな」
佐倉 光
こういうの雰囲気会話なので、具体的な数字でなくても大丈夫ですよっ。
KP
計算にもたついたのがバレた! ありがとうございます
佐倉 光
「よし、これ以上床に寝てるとそのまま寝ちまいそうだし、出かけるかー」
牧志 浩太
「新幹線は速くても、そこから分け入るのに時間がかかるっていうか……、賛成。寝落ちは布団でしたい」
よいしょ、と重そうに身体を持ち上げ、立ち上がる。
「一度寝転んじゃうと重力を感じるな」
佐倉 光
名残惜しくもう一度転がって起き上がる。
「笑えるくらい体が重い」
牧志 浩太
「同感。錘でもついてる気がする」
佐倉 光
睡魔に抗って外に出よう。
KP
外に出るとたまに他の旅行客とすれ違うが、期待通りあまり客の数は多くない。雪が辺りの物音を吸い込むのか、それともひたすら白い風景のせいか、しんと静まり返って感じられた。
冷たく白く静かな風景を眺めながら、快適に温められた廊下を歩く。
牧志 浩太
「窓辺はちょっと冷えるな。こっち歩くか」
佐倉 光
「見た目だけなら綺麗なんだけどなー」
窓から離れる。
牧志 浩太
「なんだよな。冷たかったり重かったりしなければいいんだけど」
佐倉 光
「俺、北国で暮らすの無理かも」
牧志 浩太
「漏れなく雪かきがついてくるしな……」
そのなんとなく億劫そうな口調に、あなたは前に彼と波照間と酒を飲んだ時のことを思い出すかもしれない。
佐倉 光
「つか、これ雪かきって、この分厚い白いヤツを避けるんだろ?
考えるだけで嫌だな」
牧志 浩太
「そう。除けても次の日にはまた元に戻ってるおまけつき」
佐倉 光
「拷問じゃん……
スキーヤーにはいいかもしんないけど」
牧志 浩太
「他の所に住んで冬だけ来る方が楽そうだけどな、スキーヤー。どうなんだろうな?」
KP
売店はこじんまりとしたもので、受付の女性が店員を兼ねているようだ。小規模ながら工芸品、日本酒、飲み物、おつまみ、米、地元の漬物など一通りそろっている。パッケージだけ変えたどこにでもあるような土産菓子もある。
佐倉 光
「なげー謎生物がいる」
牧志 浩太
「ほんとだ。なんだこれ、ゆきおんーーーーな?」
佐倉 光
なに伸ばしてんの。
佐倉 光
「ろくろくーーーびって、胴体じゃなくて首を伸ばせよ。」
牧志 浩太
「胴体の方が長いろくろ首……」
佐倉 光
「てか字面じゃ首のびてんじゃねぇか。
突っ込みきれねぇ」
KP
「ああ、雪女のお話があるんですよ、この辺。浩太ちゃんも聞いたことあるでしょ」
受付の女性があなた達の声を聞きつけて話しかけてくる。
牧志 浩太
「えっ? そうだったかな。ちょっと覚えてなくて」
佐倉 光
「雪女?」
KP
「そうそう。あの向こうのお山に雪女が住んでいてね、偶に人が恋しくてこちらに降りてくるんですよ。
人を連れていってしまうから、夜中に誰かが戸を叩いても返事をしてはいけない、っていう」
あまり大きく取り上げられてはいないが、確かに名所案内の隅にもそんな話が書かれている。
ろくろ首は一緒に置いただけらしく、特に何も書いていない。
KP
デニムも桃太郎も伸びるし雪女も伸びるかもしれない。
おっと、そうこうしているうちに1時ですな。
たぶんあともう1回くらいは、こうやって旅行をエンジョイすることになると思います。
佐倉 光
「雪女か、たしかにそんなのがいても不思議じゃない。
けど文脈が完全ホラーだな」
牧志 浩太
「割とよくあるホラー話って感じだな。夜中に誰かが戸を叩くか……」何か思い出したらしい。
夜中の来客
佐倉 光
最近そんな事例があったばかりだ。
KP
まったくです。しかもド夜中。
佐倉 光
牧志はやった方もやられた方もカウントすると三度目くらいではないだろうか。
KP
そんな気がする。やったの1回されたの2回。もはや慣れっこでは。
そりゃ深夜四時の来客に扉も開ける。
佐倉 光
開けなかったこともそういえばあったけど。
夢では開けた。
KP
本当は開けなかったけど、夢ではうっかり飛び出した。
佐倉 光
夜中の来客結構あるな。

佐倉 光
「はは、お前つれてかれちゃうな。
毎回毎回夜中にドア開けてるしさ」
牧志 浩太
「実は、やった方も一回ある」
佐倉 光
「夜中に呼びつけられたことは一回あったな……
ほかになんかあったか?」
牧志 浩太
「世界が滅びかけた夜に、先輩の家のドアを叩いたんだ。あれ開けてもらえなかったら、うっかり世界が滅んだかもしれないな。
あの時先輩が寝てなくてよかったよ、ほんとに……」
佐倉 光
「世界がかかってたら開けざるを得ないな。
閉ざされたドアで世界が滅ぶってなんだよ」
牧志 浩太
「それ。うっかり寝てて世界が滅ぶ、一大事なのに字面が軽いな」
佐倉 光
「後で考えれば割と綱渡りなこともある気がする」
牧志 浩太
ふっと、生まれて溺れていく悪夢のことを微かに思い出した。
「あるというか、割と綱渡りだし運に恵まれたってことも多いよな」
佐倉 光
「牧志?」
牧志 浩太
「ん?」
佐倉 光
「いや……何かあったのかって思っただけ」
牧志 浩太
一瞬少し違う眼の色をしていた牧志は、振り返っていつもの牧志の表情に戻った。
佐倉 光
まあ、いいか。
深追いするのはやめる。
牧志 浩太
「ああ。生まれてすぐ死ぬ夢を見てさ、あの時。そうならなくてよかったな、って思ってたんだ」
佐倉 光
「そうか……
それは本当に良かったな」
牧志 浩太
「世界を滅ぼそうとしてる奴の愚痴を聞いて、それでそのまま、何もできなくて溺れ死ぬ。……本当にさ、そうならなくてよかった」
佐倉 光
少し前の悪夢ラッシュを思い出せば、本当に奇跡の連続で今があるのだと思えた。
牧志 浩太
生きてるって奇跡だなって思った。あなたが入院していた時、彼はあなたのベッドの傍らで呟いた。
その声には、ひどく実感が籠もっていた。
佐倉 光
「運命、どこでどう変わるかわかんねぇな……」
こちらも、実感がこもっていた。
牧志 浩太
「本当にな……。あの時だって、半田さんがいなかったら、俺がしくじってたら、ナイフが届かなかったら、あの蛇たちがもう少し頭が回ったら、佐倉さんが決断してくれなかったら、……あの水槽のガラスが、もう少し分厚かったら。
ここに、こうしていなかったかもしれない」
佐倉 光
「そうだな、本当に、そうだ。
奇跡の先にいるんだ。
たまに振り向くと不思議な気がする」
伸びた雪女を見つめて笑う。
「その奇跡の果てにいるわけだ、この雪女」
牧志 浩太
「奇跡の果てにいるのが、伸びた雪女か。いいな、買っていこうかな」先程少しだけ眼に乗っていた憂いの色を散らして、彼は楽しそうに笑う。
佐倉 光
部屋でそういう話をするのもいいかもしれないな、とふと思った。
KP
ふとすれ違った旅行客から、微かに湯の匂いを感じた。
温泉の煙があなた達を待っている。
佐倉 光
「よし、買い物後にして風呂行こうぜ風呂!」
牧志 浩太
「ああ!」
KP
あなた達は湯の匂いに誘われて、温泉へと向かうだろう。

KP
本日は、ここで以上!
佐倉 光
ありがとうございましたー!
牧志 浩太
ありがとうございました!
ひとこと
佐倉 光
最近色々ありすぎて疲れたし、温泉に行こう!
牧志の故郷にあるという温泉宿に二人で旅行。
のんびり話して、美味しいもの食べて、事件なんか起こるわけないさ!


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本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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