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こちらには
『回答者Xの報酬』および
『今昔 狼龍奇譚』
のネタバレがあります。

本編見る!
KP
あなた達が室内に入ると、また扉が閉まる。
室内にあったモニターが、青白く点灯する。
無機質な声が、モニターの表示と揃った。
「回答者はモニターの前にお立ち下さい」
KP
▼それぞれ1d15を振って下さい。
早浪
1d15 早浪の Sasa 1d15→2
佐倉 光
1d15 Sasa 1d15→1
佐倉 光
「また僕が先でもいいんですか?」
次も死なないという保証はないんですよ。
早浪
「構わない。どちらが先だろうと、お互い様だ」
佐倉 光
頷いてモニターの前に立つ。
KP
モニターの文字がじわりと滲み、質問が表示される。


川で 2 人がおぼれています。
一方は救助が間に合いそうです。どちらを助けますか?

A:大切な人
B:隣の人


佐倉 光
試すか? いや……この選択肢で賭けはできない。
少しでも確実な方を選ぶしかない。
水難は迷っているうちにふたりとも死ぬ。

たったさっき見た嵐の海を思い出して眉根を寄せ、首を振る。
佐倉 光
Aだ」

KP
答えた瞬間に風景が一転する。
そこはどこか、湖の中にある小島のような場所だった。

あなたの手には救命具がひとつある。
それぞれ反対側から、水を蹴立ててもがく音が聞こえてきた。
牧志 浩太
「……っ、ら……さん、……佐倉さん……!」
早浪
「只野……!」
KP
片側にいるのは牧志。
もう反対側にいるのは、早浪だった。
見れば牧志は脚を、早浪は腕を縛られており、満足にもがくこともできていない。
中央にいるあなたに向けて、必死に助けを求めている。

放っておけば程なくして、二人とも深い水の中へと沈むだろう。
湖は底も見えぬほど深く、おぞましく濁っている。

あなたの手には救命具が、ひとつだけある。
これを投げれば助けることができるだろう。
佐倉 光
迷う暇も理由もない。牧志の方へ走る。
沈めばもう二度と上がってくることはできまい。
佐倉 光
「掴め!」
手に持った救命具を溺れる牧志へ力一杯投げた。
牧志 浩太
彼は投げられた救命具に、自由な両腕でしがみつく。
人魚がそうするように、縛られた脚を必死にくねらせて、こちらへ近づいてくる。
どうにかあなたのいる小島へ辿り着くと、あなたに向かって片手を伸ばした。
佐倉 光
その手を取って全身で引っ張り上げる。
KP
あなたは牧志を強く引っ張り上げる。重い。
見れば、牧志の脚を縛るのは黒い革の拘束具で、彼の脚をぴったりと閉じさせたそれには、飾りのように重い鎖が結わえられている。
佐倉 光
牧志が安全圏に来たら、すぐさまきびすを返してもう一人の方へ向かう。
KP
彼を引っ張り上げ、反対側を向いたころには、そこには何もなくなっていた。
彼女の姿も。波も。泡も。
そこに何かがいたという痕跡は、何一つなくなっていた。
佐倉 光
「ごめん」
ため息をつくように囁いて、そちらに背を向けた。
佐倉 光
「大丈夫か、牧志。どうしてこんなことに」
すぐに体を温めてやらないと。
このあたりに火をおこせるものは? 体を拭けるものは?
見回しながら、自分はどうしてここにいるのだろう、と考えていた。
牧志 浩太
「……佐倉さん?」
反対側を向いたあなたを案じるように、牧志が聞いた。
その声を最後に、あなたの視界が暗転する。

KP
ざらりと鎖の音がした。
牧志の姿はなく、そこにいるのは早浪とあなただ。
早浪
足首に食い込む黒い革の拘束具によって、彼女の両足が鎖で繋がれている。
少し足を広げる程度のことはできるが、足を上げることも、先程のような蹴りを放つことも、もはや不可能だ。

腕を縛られ、足を繋がれたことによって、彼女は倒れないようによたよたと歩くことしかできない。
KP
▼早浪は《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D2》。
早浪
1d100 28 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 62→失敗
1d2 Sasa 1d2→2
SAN 28 → 26
早浪
「……本当に、大したことができなくなってきたな」
彼女は苦しそうに数度咳き込む。
空気を吸おうと胸を張ろうとしては、バランスを崩しかけて思いとどまる。
佐倉 光
支える。
佐倉 光
「あの幻で死のうとも死にはしない。ただ縛られるだけ」
佐倉 光
「ただ、縛られると不利益になる……大事なものを守れなくなる、か」
佐倉 光
生贄に相手を選べば枷が増える。自分を選べばやはり辛くなるようだ。
では、ここにいないもうひとりはどうなる。
もう一人を案じることで、互いを縛るのは得策と言えるのだろうか。

怖がっている時ではないのかもしれない。
早浪
「ありがとう。……恐れている場合では、ないのかもしれないな」
彼女はあなたに支えられ、一歩進み出る。
KP
じわりと、モニターに文章が浮かび上がった。


どちらかを救えると言われました。どちらを助けますか?

A:24時間以内に死ぬ大切な人
B:一生死ねない人生を歩む隣の人


佐倉 光
「『一生死ねない』ってそれつまり死んだら一生終わるわけで、別に『永遠の命』とか保証されてるわけじゃないな」
佐倉 光
「俺もう何回か死んでるし……ってそれさっき言ったか」
早浪
「……!」
彼女はその質問を見て、息を呑んだ。
早浪
「ま、さか……、いや……、違う。
幻だ。幻に過ぎない。
妖魅の術で私の心を読んだとしても、それが叶うはずが、ない」

彼女の声は、先程の決意を帯びた声が嘘のように震えていた。
質問の文句を何度も見て、視線がふたつの文字を行き来する。
佐倉 光
「どうかした……」
ああ。そうか。さっきから時折話に出ている『ヒナギ』という人は随分と訳ありのようだった。
この質問に何か強く感じるものがあるんだろう。

しかし例えばこの質問で俺が死なないことにされて、何かあるだろうか。
佐倉 光
お約束の、永遠の孤独とか?
それはそれで……まあ……嫌だけど。
早浪
「すまない……、すまない。
一度だけ、選んでみても、構わないだろうか。
きっと幻だ。騙されるだけなんだ。それでも。……それでも」
佐倉 光
「僕のことは気にしないで選んでください」
頷く。
どうせ何があったって、幻なんだ。
早浪
「……すまない……、」
早浪
「……Aだ」
彼女は掠れた声で呟いた。
モニターは僅かな声を聞き届け、あなたの眼に映る風景が変わる。
佐倉 光
後で詳しく聞いてみたいな。そのヒナギって人のこと。
思いながら意識は流される。
KP
そりゃ「24時間以内に死ぬ大切な人」ってったら、一日の命と引き換えに龍になった氷凪さんだよねぇ。
というわけで、このシーンは氷凪さんにご登場願おうと思います。
佐倉 光
はーい

KP
あなたの眼に、燃える街が映っていた。
和風のような中国風のような木造の街並みは、炎に巻かれてぱちぱちと、穏やかな焚火に似た音を上げていた。

あなたは動くことも声を発することもできず、その奇妙に静かな災厄を眺めていた。

そのただ中で、夜が明けようとしていた。
ゆっくりと白みはじめていく空を背景に、早浪と頭に角を持つ男が、静かに抱擁を交わしていた。
早浪
「龍としてのきみも、もう終わりか。少し、名残惜しいな」
彼女は男のたおやかな身体を抱きしめ、やさしく囁いた。
早浪
「この日より先、きみは人として生きてゆくのだな」
KP
というわけで、氷凪さんがあの一日が終わっても生きていけるifです。
理由は後述。
氷凪
「ああ、今となっては不思議な気分だよ。
私は、溶けることもなく、死ぬこともなく、きみとともに生きてゆけるのだね」
氷凪
「もう空は飛べなくなってしまうけれど、ともにどこまでも行ける……
そのことが、震えるほどに嬉しいんだ。……何故だろうな」
命の暖かさを宿した腕で早浪を強く抱きしめ、その髪に頬を埋める。
氷凪
「ありがとう、早浪」
早浪
「ああ……、そうだ。いままでの思い出話を、飽きる程にしよう。
あの囲炉裏の傍で、君と語らおう。
そうして、新しいものを見にゆこう。

不思議だ、狼であった時よりも、随分と力が強く感じるよ。
腹の底から喜びが漲って、どこまでもゆけそうに感じる」

早浪は男を抱きしめ、耳元でうたう。
男の頭から、角がぽろりと落ちた。
早浪
「ありがとう……、氷凪。ともに歩んでくれて。
この日からも、宜しく、頼む」
KP
二人の抱擁を見届けたあなたの身体が、ゆっくりと宙に浮かんでゆく。
脚が溶ける。腕が溶ける。頭の先から曖昧な形の角が生え、あなたの思考が溶けて、その角に吸い上げられていく。
佐倉 光
溶ける。俺の体が。俺の存在が。
佐倉 光
俺は、悪魔になる、のか?
KP
あなたはぐるぐると廻りながら宙に昇る。
黒い粘液のような不定形になり果てて、永遠に空中をさまようのだ。
読むことも、知ることも、考えることも、誰かとともに歩むことも、かなわぬまま。
哀れなその感情だけを抱えて。

それが、因縁を捨ててゆくあの二人の代わりに、あなたに押しつけられた因縁だった。
佐倉 光
溶ける。体が、脳が、目が、指が、俺の思考が、記憶が
奪うことも、得ることも、分け与えることも、なにひとつできない存在になる……
佐倉 光
いやだ。こんな命は要らない。なにもない命なんて価値がない!
無力を嘆いて自らを恨んで在り続けるだけのものになんて、もう二度となりたくない!
だれか、だれか……!

誰にも届かない悲痛な声をあげて、それは漂ってゆく。
KP
あなたの手を取る者はなかった。
あなたの声が届く者はなかった。
誰かが叫んで伸ばした手は、あなたに届かない。
触れかけた手が、あなたをすり抜けた。

あなたは宙へと浮かんでいく。
何の手も届かない、何も出来ない、なにもないところへ。

あなたは永遠に無力を嘆いて、潰えた因縁を抱えたまま、
無限にそこで漂っていた。
佐倉 光
知識も記憶もなく、ただ哀しむだけのものになり。
佐倉 光
そしてそれは長い刻を経て憎しみと化し。
佐倉 光
在るもの全てを呪うものと成り果てて尚、何を成すこともなかった。
KP
永遠に呪詛だけを抱えながら。
それは雨を降らせることすら、なかった。
KP
無限の時間を過ぎて世に滅びがおとずれるまで、あなたはそうしていた。
滅んだ時にようやく、視界がすうっと暗転して、部屋の中に戻っていた。

佐倉 光
刻まれるのかと思ったら強烈なトラウマを押しつけられたぁ
病院にいた頃は望めば知識を得たりできたけど……
KP
心臓なくなって無限に刻まれ続ける展開も考えたんですけど、刻む系は早浪さんがされたので、もうちょっとおぞましさ強めにしてみました。
爽やかな二人の横でトラウマぐりぐりしちゃってごめんな。
佐倉 光
せめて未来で魔王にでもなれりゃあねー
KP
なれればいいんですけどねー。本当になんもできないし、そこまで追いかけてくる牧志もいない世界。

KP
あなたの両足は、鎖で繋がれた堅い革の足枷に締めつけられていた。
KP
佐倉は《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D2》。
佐倉 光
1d100 61 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 89→失敗
1d2 Sasa 1d2→1
SAN 61 → 60
佐倉 光
「ぐ……うぅぅぅ」
自分のうなり声で目が覚めた。
足の重さで感覚を思い出した。

記憶の底にただひとつこびり付いたあの女の面影を、思い出した。
佐倉 光
「キサマ……」
しわがれたような自分の声を耳にして、疑問を覚える。
喋れるのか、おれは。

苦しみを、痛みを、現実を思い出した。
早浪
「……」
女は静かに俯いてうなだれていた。
佐倉 光
ここはどこだ。おれはだれだ。
KP
思考が、少しずつ回り出す。
ここが無限の宙の上ではなく、狭い室内であることを認識する。
目の前の女が独りであることを認識する。
両脚を繋ぐ鎖の重さを認識する。

そうして、詰め込まれた永劫の無力の嘆きが、少しずつ永さと現実感を失っていった。
早浪
「……すまない……。
あれが、現実の筈は、なかったな……」
佐倉 光
「……ああ……ああ。そうだ。そんなはず、ないんだ……」
佐倉 光
「あんなのが現実の筈は、ないんだ」
ふう、と息をつく。
自分が思い出しきれなくなりそうに思えて身震いをした。
KP
トラウマぐりぐりされた佐倉さんもつらいし、他人に因縁押しつけて幸せになる自分達を見てしまった&幸せな夢を見てしまった早浪もつらいし、早浪が自分で選んだのにダブルつらい。
佐倉 光
ま、まだわからないし!!
見えないところで氷凪の角がポロッしたかもしれないし!!
佐倉 光
「くそ、なんて悪夢だよ。俺達のトラウマ知り尽くしてやがるのか」
さあ、今度は何だ。
モニターを見る。
KP
二人とも〈目星〉で判定。
また、早浪は〈因縁を捨てる夢〉を見てしまった影響で人狼補正が消滅します。
佐倉 光
そんな副作用が! ゆめだけどゆめじゃなかった!!
早浪
1d100 75 早浪の〈目星〉 Sasa 1d100→ 73→成功
佐倉 光
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 43→成功

KP
モニターの表示が消える一瞬、文字が滲んで、文章を映した。
モニターには文章が表示されていた。
早浪
「……何が言いたい……」
佐倉 光
「手を汚す、ということは……隣の人を犠牲にする、ということか?」
佐倉 光
「まさか」
佐倉 光
隣の人間は、協力すべき相手ではなく、敵だとでもいうのか?
早浪
「まさか……、争え、とでも?
己の選択で相手を縛り、争えというのか……?」
KP
ピピッ、と電子音がした。
モニターの背後の壁が、空気の漏れる音を立てて開く。

扉の向こうには、暗い空間が広がっている。
佐倉 光
「ここ作った奴を七度ほどぶち殺したくなってきた」
ぼそりと呟いて、早浪に肩を貸す。
腕を使えるだけ、こちらのほうがまだましだ。
次の部屋に向かう。
早浪
「……奇遇だな、私もだ。すまない、ありがとう」
彼女はあなたに寄りかかり、よたよたと歩いて次の部屋へと向かう。

KP
あなた達が室内に入ると、また扉が閉まる。
室内にあったモニターが、ぼう、と青白くあなた達の顔を照らした。
無機質な声が告げる。
KP
「回答者はモニターの前にお立ち下さい」
佐倉 光
ふ、と立ち止まる。
そして早浪のほうをまっすぐに見る。
佐倉 光
「……改めて。自己紹介しとくよ、ハヤミさん」
佐倉 光
「俺は、佐倉光。悪魔使いだ。ハッカーの只野は……表の顔とでもいうかな。
前にも言ったとおり、俺達の世界でも妖魅は一般的なものじゃない。
それと関わる立場だということを明かすと面倒なことになることが多くてね」
佐倉 光
「といっても、商売道具が手元になくて、できることが変わるってワケじゃあないんだけどな」
早浪
彼女はあなたの肩を借りて、筋肉の力で身を起こす。
背筋を伸ばして、まっすぐにあなたを見返した。
早浪
「そうか、それが君の本来の姿か。
妖魅遣い、管狐飼い……、噂ばかりは聞いたことがある。まさか、異なる世に実在したとはな」
佐倉 光
「職業柄、基本的には自分の立場を明かすのは避けたいんだ。騙すつもりはなかった」
早浪
「そうだろうな。
知れれば面倒事も多そうだ。
……名を知られると、魂を取られたりするのか?」
佐倉 光
「たちの悪い相手だとそういうこともあるし、
名前をきっかけにして情報掘られて……まあ、呪われるみたいなもんかな。
俺たちの世界じゃ情報持ってる奴が強いんだ」
早浪
「情報か。千里を駆けるのだと言っていたな。
そう考えれば恐ろしいものだ。伝わってしまったものは戻せない」
佐倉 光
「それから、俺の相棒は牧志。
妖魅に好かれるたちで、しょっちゅう面倒ごとに巻き込まれている」
佐倉 光
「お人好しなのに強引で、よく人のために無理をするバカ野郎だ。
俺は、あいつに何度も命を救われている。同じくらい救ったような気もするし、どうでもいいけどな」
早浪
「お人好しか……、そうなのだろうな。
あの幻の中でも、あんなに辛そうな顔をしていた」
早浪
「氷凪は私の、無二の友だ。
かつて龍王と契約して心臓を捧げ、龍と呼ばれた一族のひとり。
私はあらゆる呪いを癒すという龍の心臓を求めて旅をし、彼と出会った。
最初は私が彼に襲い掛かったのだから、ひどい出会い方だったよ」
佐倉 光
「龍が友達なのか、羨ましいくらいだ」
早浪
「龍といっても、力を得たのはあの夜だけだよ。
それ以外は、角のあるだけのただの人だ」
佐倉 光
「……出会いがなんか壮絶だな」
早浪
「まあ、そうだな。
数奇な出会い方をしたものだと思うよ。
私に対しても龍族の友に対しても、真摯に思ってくれる男だった」
早浪
「にもかかわらず、彼は私を友と扱ってくれた。
なかば人、なかば獣として、呪いに苛まれ人と離れて久しかった私の心を、ゆっくりと溶かしてくれた。

……そうだな。あれも人が好いというのだろう、きっと。
最後には一族の皆を助けたいと、それからの生と引き換えに、一日だけまことの龍になったのだから」
佐倉 光
「俺はその人のことはほとんど見ていないけど、なんとなく底抜け……いい奴っぽいなとは思うよ」
佐倉 光
「そんなに強そうには見えなかったな」
佐倉 光
「龍ってまさか、生きることも死ぬこともできずにフワフワ漂ってるもののことじゃないよな?」
早浪
「ああ……うん、すまなかった。

氷凪が成ったのは力ある龍だったよ。白く輝いて空を舞い、炎を吐くものだ。

永劫に虐げられる立場に甘んじていた龍族を、氷凪は健やかに暮らすようにさせたいと望んだんだ」
佐倉 光
「力には制限があるのか。力が貰えても一日ぽっちじゃなぁ。
一日で敵対組織を潰すとかしたんですか」
早浪
「君が言う情報と同じだろうな。
君の世ほどではないが、私達の国でも噂は駆ける。

龍の偉容を見せつけて力を振るい、龍が如何に恐ろしいか、手を出すべきでないものか、氷凪は遍く人々に知らしめようとした」
佐倉 光
「だいたい……そういうことをすると人間は、脅威を排除しに行こうとするものだと思うけど……
まさに俺そんな職業だし」
佐倉 光
「いや、その力で人を救えば、神として崇めてもらえた可能性もあるのかな……」
佐倉 光
「ハヤミさん。俺はね。協力したいと思っている。
だけど、今のところどうしたらいいか全然見えないんだ」
佐倉 光
「俺達の心が弄ばれているだけならいい。
けどこの枷。とても嫌な感じがする。枷を増やしてはいけない気がする」
佐倉 光
「もうひとつの選択肢も試してみたいと思っているんだけど、質問がどうにも物騒なものばかりだ」

モニターの前に向かう。
早浪
「私もだよ。
思うままに流されたくはない。

枷を増やしてはいけない、か……。
争わせることが、牢獄の主の意図なのだとすれば……」
KP
▼おっと忘れてた。二人とも1d9を振って下さい。
早浪
1d9 早浪の Sasa 1d9→6
佐倉 光
1d9 Sasa 1d9→5
KP
モニターの前に立つと、文字がじわりと赤く滲んだ。


どちらかであれば回避できるようです。どちらを回避しますか?

A:大切な相手の視力がなくなる
B:隣の人の視力がなくなる



KP
ここ本来は違う番号ですが、どうも一周目と被りがちなので、違うのも見たいという理由で少し調整しています。
佐倉 光
はーい
最早決め打ちでも良いくらいだけど
KP
差し支えなければそれもありかも。
ダイス目を参考に一番おもしろそうなやつを選ばせて頂いてもいいですか?
佐倉 光
okですよー
KP
はーい、ありがとうございます!

佐倉 光
深呼吸。
今までのパターンから言ってロクなことにならない。
しかし試す必要はある。

許せよ、牧志。
変な幻みるだけで済んでくれ!
佐倉 光
B!」
KP
──ぞわり。
その選択をした瞬間、あなたの背筋を奇妙な寒気が走った。

胸騒ぎがする。どうしようもなく嫌な予感が胸を掻いた。

牧志は、無事なのだろうか?
──あなたは、誤った選択をしてしまったのではないだろうか?
KP
▼佐倉は《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D2》。
佐倉 光
1d100 60 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 1→決定的成功クリティカル)!
KP
おお、意志だ!

佐倉 光
これは必要なことだ。
あの悪趣味な幻は現実に影響しない!
KP
そう強く強く己の理性を信じる心さえも攫い、世界が変わってゆく。

KP
……あなたは世界に生まれ落ちたとき、目がみえなかった。
世界に生まれ落ちたとき、耳が聞こえなかった。
世界に生まれ落ちたとき、口をきかなかった。
世界に生まれ落ちたとき、鼻がきかなかった。
世界に生まれ落ちたとき、味を知らなかった。
世界に生まれ落ちたとき、ものに触れても何も感じとらなかった。

あなたは呪われた子どもとして、なにも持たずに生まれてきた。

あなたは世界というものが、あることを知らなかった。
あなたは小さな檻の中に暮らしており、それが檻の中であるということも知らなかった。
佐倉 光
ひとりぼっちで沈黙の中で、疑問を持つことなく在るだけのものとしてあった。
腹が減れば食い、渇けば飲むだけの動物。
それだけのことも満足にできない、生きるのもままならない存在。
KP
ふと、あなたの手に何かが触れた。
あなたはその時はじめて、触れるという感覚を得た。
世界に外があることを知った。

それは柔らかく少し骨ばった何かで、あなたの手をやさしく包んだ。
そこから触れているという感覚が広がった。
あなたの脚はひやりと冷たい地面に触れ、あなたの肌はぼろ布のような服に触れていた。

あなたの手を包み込むそれは、柔らかい温度であなたの傍らにいてくれた。
佐倉 光
その存在は『快』だった。それで『快』と『不快』を知った。
『暖かさ』を知って『冷たさ』を知った。
その存在が側にいることを望み、それが『喜び』で『願い』だということを知った。
これはなんだろう?

佐倉 光
どう流れていくんだこの話。
KP
ちょっと盛り気味にしております。
佐倉 光
たのしみー

KP
それはあなたの手を柔らかく辿って、何かを伝えようとしているようだった。
しかしあなたは言葉を持たなかったので、穏やかな意思を感じ取っただけだった。

それはあなたが初めて触れる、穏やかな意思だった。
KP
次に、何かねとねとしてざらついたものがあなたの頬に触れた。

あまり『快』を覚えるような感覚ではなかったが、その夜あなたは、いつものように口へと運ぶものが、また別の『快』を微かに呼び起こすことに気がついた。

あなたの舌は、味を感じるようになっていた。
鼻のきかないあなたに分かる味は単純なものだけだったが、それは食物を口に触れさせる行為に意味をもたらした。
佐倉 光
なにかがいる。
意味を持った動きというものに初めて触れた。
なにかがいて、なにかしようとしている。
それは『不快』だったり『快』だったり、色々な刺激をくれた。
食うことが大きな『快』になった。

なにかがいる。『じぶん』とは違うなにか。
次にそれが何をするのか、気にするようになった。
KP
それは少し、あなたの傍らを離れた。
次に戻ってきたとき、
あなたに、何か滋味のあるものを食べさせてくれた。

それは腹が減って口にするものよりも、深い『快』を呼び起こした。
佐倉 光
それがいなくなったとき、『不快』になった。
あげられるならわあわあと声を上げたかもしれない。

だから、帰ってきたときは大きな『快』に包まれた。
口の中に広がる『快』はとてつもなく大きくて、『幸せ』になった。
KP
それは不在を詫びるように、あなたの手をやさしく撫でた。

次に、あなたの鼻にこつんと何か尖ったものが当たった。
鼻の中を出入りしていただけの空気が、なまぐさい臭いを帯びた。

あなたは今や、鼻がきくようになっていた。
あなたがいる空間は黴臭くて少しなまぐさく、『快』とは言い難かった。

佐倉 光
これ視覚どころじゃなくさぁー
KP
ばれた。(サンプルにあるやつのような展開にはならないし、別方向にダメージ…… と思った結果盛られました)

佐倉 光
顔をしかめて声を上げ、『不快』をあらわす。
それから、側にいるもののにおいを嗅ぎ、自分の手でさぐってそれに触れようとした。
KP
あなたの意思をもって伸ばされた手が、それの形に触れた。
少し汗のにおいがした。

それには鼻や口といった凹凸があり、どうやらあなたに似た形をしているようだった。
それが纏う大振りの布が、あなたの手に触れた。
佐倉 光
それのかたちをたどり、自分のかたちをたどって、同じものかもしれないことを知った。
KP
それはあなたの『不快』を感じたのか、何かうつくしい匂いのする小さくたおやかなものを、あなたの鼻に触れさせた。
佐倉 光
鼻にあたったものを掴んで形を辿り、吸い込む。
KP
あまいうつくしい匂いがあなたの鼻を通じ、胸の奥に広がった。
あなたの口には何も入っていなかったのだが、あなたは何かを味わったような感覚をおぼえた。
佐倉 光
なにやらあたたかい気持ちになった。鼻を鳴らしてそのいい匂いがするものを夢中で吸い込んだ。
これはなんだろう。
これを持ってきたのは『だれ』だろう。
疑問が次々と浮かんだ。
KP
次々と浮かぶ疑問を、しかしあなたは形にする術を知らなかった。
疑問と感覚で頭の中が一杯になって弾けそうだった。
頭が破裂してしまいそうな感覚に喘いだとき、それの指先が、あなたの手に何かを書いた。

不意に、あなたの頭に『言葉』が流れ込んだ。
耳のきけないあなたは自らの声を聞くことはできなかったが、あなたの感覚や考えが、つぎつぎと頭の中で形を結んだ。
あなたはそれを、発することができるようになった。

あなたの手のひらを繰り返し辿っていた指先が伝えようとしていたことが、何もかもわかるようになった。
KP
『俺は旅の魔法使い。君は?』
KP
『触れているのは分かるか?』
KP
『ごめん、急にいなくなって驚いたよな』
KP
『肉を持ってきた。少ししかないんだけど』
KP
『西の方の花なんだ、香りが好きで』
KP
『好きなものはある?』
佐倉 光
急に目が開いたような心地がした。
頭の中に溢れかえっていた形を持たないものごとがあっという間に世界を構築して賑やかに騒ぎ始めた。
それは大きな喜びだった。
佐倉 光
『だれ?』
佐倉 光
『わからない』
佐倉 光
『わかる。あたたかい』
佐倉 光
『おどろく?』
佐倉 光
『にく。すき。おいしい』
佐倉 光
『にし? はな? かおり?』
佐倉 光
『『おれ』すき』
口元が緩んだ。
KP
それはあなたの手を柔らかく握り、やさしく気配を緩ませた。
『喜んでいる』と、何となく分かった。
佐倉 光
『おれ』だか『魔法使い』だかが『喜んでいる』と、自分も嬉しかった。
自分? 自分は何だろう?
ぽつりと抱いたこともない疑問が湧いた。

佐倉 光
文字通り闇雲に突き進んでるけど大丈夫かなw
KP
👍🏽

KP
触れる感覚が世界からあなたの形を明らかにし、傍らにいる『それ』が、『あなた』の存在を明確にする。

『あなた』は『何』なのだろうか。
その疑問を抱いたとき、あなたの耳に何か、形をもったひとかたまりの空気が吹き込まれた。

そのときあなたの耳に何かが入った。
静かだった世界が、一息に騒がしくなった。

それは音だった。
風の音。鳥か何かの鳴き声。傍らの『それ』が立てる微かな物音。あなたが発する声。心臓の鼓動。

音の中に『それ』と『あなた』が存在していた。
佐倉 光
世界はとてもうるさかったが、『不快』ではなかった。
思わず感嘆の声を上げ、自分の声を聞いた。
嬉しさのあまり声を上げ、物音を立て、楽しんだ。
KP
それは嬉しそうにあなたの手を握り、あなたの肩を抱いた。

そういえば、あれだけ色々なことを伝えようとしていたのに、それはあなたに何かを声で『言う』ことはなかった。

『それ』は口をきかないのだろうか。
佐倉 光
声を上げ、頭の中に渦巻くことばを真似た。
舌がもつれたような声を言葉に整える。
佐倉 光
「こえ ききたい」
KP
あなたは辿々しい声で訴える。
しかし、それは口を開くことはなかった。

それの周囲には沈黙だけがあり、指先で何かを伝えようとすることもなかった。

それの周囲の空気が少し翳ったような気がした。
それは、すまなそうにあなたの手を握るだけだった。
佐倉 光
かなしい と思った。
ことばを交したいと思った。
自分に色々なことを教えてくれた魔法使いのことが知りたかった。
多くのことを語りかけた。
KP
それは一度も応えなかった。
どうして応えないのだろうか。

あなたの『ことば』が悪いのだろうか。伝わっていないのだろうか。
それの動きから、指先から、知ろうとする気配が伝わってきた。
それでも、それは一度も応えない。
佐倉 光
かなしい と伝えた。
はなしたい と伝えた。
触れて、訴えて、手を取って。
何かをされ続けるのは嬉しかった。
今は何かをしたいのに、何も返ってこない。
KP
それはあなたの手を、静かに握るだけだった。
あなたは今や色々なことができるというのに、それは何も返してこない。
KP
ふと、あなたの眼にそれの指先が触れた。

久しぶりに、それが何かをしてくれた。
何を伝えたいのかは分からなかったが、やさしい気配を感じた。
KP
あなたの閉じられたまぶたの裏に、不意に光がさした。
佐倉 光
凄まじい光を感じて思わず叫んだ。
これはなんだろう。
目にちかちかしたものが飛び込んで痛みを感じた。
両手で目を覆い、ゆっくりと瞼を開く。
こわごわと手のひらをどけた。

佐倉 光
どうしてそこまでしたんだよぉ、魔法使いさん。

佐倉はホムンクルスか何かで、ここは実験施設か何かなのかねー
KP
詳細は決めていませんが、もしかしたらそれはあるかも。

KP
あなたが目を開くと、そこには茶色い髪の青年が、あなたの手を握っていた。

模様の描かれた裾の長い衣服を着た彼は、跪くようにしてあなたを見上げていた。

その眼は濁って、何も映していなかった。
傍らで音がしても身動ぎもせず、耳がきかないようだった。
彼の鼻に花弁がひとつ落ちていたが、何かを嗅ぐこともなかった。

彼は何も持たなかった。
以前のあなたのように。
佐倉 光
視覚を、得た。
今や色々なことが理解できていた。
この魔術師がかつての自分のように空であることも、自分が自由であることも。
立場が入れ替わったのだ。それだけのこと。
得た者は失った者を置いて立ち去ればいい。何も変わらない。

触覚を失ったはずなのにいまだ握り続けている手を見下ろす。
もともと持っていなかった自分は何も思うことはなかった。
全てを失ったこの男には今、何が残っているのだろう。
KP
彼の周囲に無数の紙が散らばっていた。
一枚一枚に、彼のものだろうことばが書かれていた。

『俺は牧志っていうんだ。君は名前がないみたいだ』
『ごめん。君が喋れるようになる頃には、俺はもう言葉がわからない』
『俺には渡すことしかできない』
『鍵はかかっていなかった。
目が見えるようになったら、ここから出ていける』
『名前が必要なら、持っていってもいい』

何枚も、何枚も。
あなたに話しかけ、あなたを案じることばばかりが、無数に書かれていた。
KP
その時はじめて、あなたは自分が与えられたものが何だったのか知った。
佐倉 光
散らばった紙きれを拾って、読んだ。
初めて見るのに理解できた。
『旅の魔法使い』という言葉は、自分にこうまでする理由が、普通に考えればないのだということも。
どうして彼はこうまでしたのだ。
疑問が湧いた。
しかしもうこの男は答えられない。
佐倉 光
「まきし……」
哀しみと怒りが涌いた。
話したかった。礼が言いたかった。何かしてやりたかった。
それは自分があらゆるものを得た喜びより強かった。
背景情報
KP
この話の牧志(魔きし)は明らかにやりすぎ。何かあったのかもしれないし、佐倉さんが応えてくれるのが嬉しかったのかもしれない。
佐倉 光
魔法使いさん余命僅かとかだったのかな。
もしくは生存するに厳しい条件持っていて、佐倉の方はもう少し生きてゆくのに有利な特質持ってたとか。
KP
余命わずかだったか正気がわずかだったか、そういうのはあるかも?

佐倉 光
その男を背負う。
自分にこんな哀しみを教えた男に、何とか復讐するのだ。
言葉を伝え、感情を伝え、その残酷さを知らしめてやるのだ。

そして名を持たない生き物は、人間として外への一歩を踏み出した。
KP
あなたは何も持たない彼を背負い、一歩を踏み出した。

もう背負われたことも分からないのか、彼は何もしなかったが、その口元は穏やかに笑んでいた。

外への扉の向こうに満ち溢れる光が、あなたの意識を静かにさらっていった。
KP
▼一連の流れに、《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D2》。
佐倉 光
1d100 60 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 11→成功

佐倉 光
こんな所で自己犠牲してんじゃねぇお前そういうとこやぞ!!!
というわけで「お前そういうとこだぞ!」って胸ぐら掴んで叫ぶために一緒に旅に出ます。

でも本人には関係ない幻!!!
KP
牧志が自己犠牲する話になっちゃった。

佐倉 光
「ばかやろう、ばかやろう、ばかやろう、意味がないんだよそれじゃあ!」
KP
自らの叫びが、意識を呼び覚ます。
あなたは、また暗い部屋の中にいた。
早浪
「……そう……、なのだな」
佐倉 光
「……」
早浪の顔を見て、頭が混乱する。
俺は誰だっけ?
佐倉 光
「俺は佐倉光! 牧志はここにいない!!」
口に出してから自分と早浪の体を確認する。
早浪
彼女の拘束は、増えていなかった。
自身の身体を確かめれば、あなたも、また。
佐倉 光
「凄まじく不安になったけど、それだけだ。見えている範囲なら」
佐倉 光
「……なんか凄まじいもん見た。疲れた……」
さすがに普段はないけど、俺が死にかけたときなんかにたまに自分のものを軽々に捨てようとするんだよな、あの底抜け。

見える範囲で済んでいるのかどうか、というのは結局分からずじまいだ。
早浪
「そう、か……。
もしかすれば、これが唯一、互いに拘束を増やさずに済む選択、なのだな」

ありがとう、と呟いて、彼女はあなたの背をさすろうとした。しかし、やはりそれは叶わない。
結局分からずじまいだ、そうあなたが思ったことに、彼女は気づいているようだった。
佐倉 光
「ある意味面白い幻だったよ。一本の映画を観たような気分だ。
真に迫りすぎている上に、目だけで済んでないのが詐欺くせぇけど」
早浪
「……それだけではなかったのか」
佐倉 光
「人間には五感ってものがありますよね。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。それで世界を認識する。
あいつが、その全部を俺に譲り渡して、俺の代わりに何もかもを失うって筋書きの話でした」
佐倉 光
「俺達と同じように、そんな幻を見ただけだったらいいんだけど」
早浪
「……それ、は……」
彼女は微かに絶句した。
早浪
「眼を失う、どころの話ではない。
……現実ではない。その筈だ……。
君の決断が、そんな結果になってたまるものか……」
早浪
彼女は願うように呟いて、モニターの前へと向かう。
KP
モニターの文字はじわりと揺らいで、質問を表示した。


暴走トロッコの先には枝分かれの道が、レバーを倒してどちらを助けますか?

A:大切な人を助ける
B:隣の相手を助ける


早浪
彼女は表示された質問を、随分長く睨みつけていた。
早浪
「そうだ……、氷凪は死んだ。私とともに死んだ。その筈、なんだ。
これ以上、どうにかなろう筈も、ないんだ……」
佐倉 光
腕組みをして目を閉じて回答を待つ。
早浪
「……Bだ……」
KP
彼女が回答を絞り出した時、風景が変わった。
早浪
1d100 26 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 34→失敗
1d2 Sasa 1d2→1
SAN 26 → 25
KP
ちょっと忙しくなりますが、せっかくなので氷凪さんもご登場ください。
佐倉 光
お、はーい

KP
佐倉。
そこは、荒涼とした風が吹き抜けるばかりの荒野だった。

あなたは黒い革の拘束具と鎖で、全身を柱に縛りつけられていた。

身動きどころか、視線を逸らすことすらできないあなたの視線の先に、勢いよく坂を下ってくる、荷を満載したトロッコが見えた。

あなたの前には短い線路があった。
そして、枝分かれがひとつ。
レバーの前に、早浪が立っている。

視線を向けることはできなかったが、もう一つの線路の先にも誰かが縛られているようだった。

あなたは理解する。
あなたの運命は、彼女に握られている。
あと数秒で、トロッコはあなたを挽き潰すだろう。
彼女の選択次第で。
佐倉 光
「うわぁぁぁ!」
瞬時に状況を理解した。
なんだこれトロッコ問題ってやつ!? 一時期変に流行ったよな!
人間には思考実験だけどAIには必要な……ってそれはどうでもよくて!!

どうして俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ!
自分には何もできない、もがくしかできない!
佐倉 光
「ハヤミさんっ! そのレバーだ!」
KP
氷凪。
そこは、荒涼とした風が吹き抜けるばかりの荒野だった。

あなたは黒い革の拘束具と鎖で、全身を柱に縛りつけられていた。

身動きどころか、視線を逸らすことすらできないあなたの視線の先に、勢いよく坂を下ってくる、荷を満載したトロッコが見えた。

あなたの前には短い線路があった。
そして、枝分かれがひとつ。
レバーの前に、早浪が立っている。

視線を向けることはできなかったが、もう一つの線路の先にも誰かが縛られているようだった。

あなたは理解する。
絶体絶命の窮地だ。
彼女がレバーを倒してくれさえすれば、あなたは助かる。
氷凪
「!」
ぴくりとも動かない体、奇妙な道に向こう側から走ってくる物騒なもの。
このままでは私は……死ぬのだろうか? さすがにこの死に方は痛そうだ。
氷凪
「早浪!」
声を上げて、それから気付いた。もう一方に誰かがいるようだ。
……それならば、不死である自分がひとまず犠牲になるべきではないだろうか。
氷凪
「……」
目を閉じてそれ以上言うのはやめる。
なに、私は死にはしないのだ。少し我慢していればいい……。
KP
そう目を閉じたとき、あなたの胸の奥から微かに、ゆっくりとした心音が聞こえてきた。

それは彼女に与えるはずだった心臓の音だ。
存在しなかったはずの死への恐怖感が、じわりと腹の奥から這い上がってくる。
氷凪
おっ。やろうとした流れを補強してくる!
氷凪
全身が怖気だった。
このままでは、私は死ぬ。それはいい。心臓を得たのはその覚悟の上だった。
だが、彼女もいずれ瞋恚に飲まれてしまう。
この心臓は、彼女を救うために得たものでもあるというのに!
氷凪
「早浪! 早浪! 心の臓が!」
これでは溶けて消えるのと、大差ないではないか!
早浪
レバーに手をかける彼女と目が合った。
氷凪
「早浪! わたしを」
私を選べ。それがきみが生き延びる道なのだ!
早浪
「……」
早浪
「すまない。氷凪……」

レバーが、倒された。

最後に彼女が、ひとこと落としたのが聞こえた。
あなたの名を呼んだあと、何と言おうとしたのかは分からなかった。

最期の刹那、何を思っただろうか。
迫り来るトロッコの姿を最後に閉じた世界に、苦痛を感じるいとまもなかったのは、幸いだったのかもしれない。
KP
トロッコが遠く走り去っても、あなたはにどと蘇ることはなかった。

佐倉 光
「たすかっ……」
もう一つの線路の先で誰かが挽きつぶされたのを見た。

それが何故か『氷凪』という名の、早浪の友であることが分かった。
佐倉 光
深く安堵しながらも、早浪の顔は見られなかった。
早浪
彼女は何かを見下ろしていた。
それは最期の表情を浮かべたままの、不思議ときれいな、氷凪の首だった。

KP
風景が薄れて暗い部屋に戻っても、彼女はうなだれたまま、何もない床を見下ろしていた。
早浪
「……氷凪は……」
彼女の唇から、軋むような声が微かに漏れた。
早浪
「己が助かりたいと、言わなかったんだ……。
私を助けるために、私に心臓を渡すために、あいつは、自分を選んでくれと……、そう言った……」
彼女の眼が、溢れ出さない涙で静かに潤んでいた。
佐倉 光
「……幻だよ。きっと。
俺達が知っている相棒のしそうなことだけをなぞって作られた、ただの幻なんだ……」
そうであってくれ、と願った。
佐倉 光
「大事なものを守るためには枷を増やすなと言っているように思える。
結局こうすることが、俺達の手で相棒を守るための道なのかも、しれない」
何もかもに確証がなくて吐き気がする。
早浪
「そうだな……、何も分からないんだ。何かを、信じるほかない……」
彼女は小さく鼻をすすり、涙を堪えた。
KP
▼それぞれ〈目星〉で判定。
早浪
1d100 75 早浪の Sasa 1d100→ 65→成功
佐倉 光
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 12→成功
モニターには文章が表示されていた。
KP
モニターの光が消える一瞬、そう滲み出た。
KP
ピピッ、と電子音がした。
モニターの背後の壁が、空気の漏れる音を立てて開く。

扉の向こうには、暗い空間が広がっている。
早浪
「これでいいと……、いうのか」
彼女は喉の奥で呻いた。
佐倉 光
「これはきっと、ゲームだ」
佐倉 光
「俺は、こうすることが『正解』だと信じる」
問題は、最後に争えと言われた場合だが……そういう時のためにハヤミと話をしていたのだ。
二人で突破口を見つけることもできるかもしれない。

次の部屋に進むべく、早浪に手を貸す。
早浪
「……ありがとう……。
そうだな……、そうだ。そうに違いない」
あなたの手を借り、彼女は一歩、一歩と地面を踏みしめ、歩く。

KP
あなた達が室内に入ると、また扉が閉まる。
室内にあったモニターが、ぼう、と青白くあなた達の顔を照らした。
モニターの光に照らされた彼女の顔は、明かりのせいか青ざめて見えた。
KP
▼二人とも1d7を振ってください。
早浪
1d7 早浪の Sasa 1d7→4
佐倉 光
1d7 Sasa 1d7→4
KP
あら重複。
そもそもダイスは参考なので、振り直ししなくても問題ありません。
佐倉 光
はーい
一応振ってみる?
KP
一応振ってもOK。
佐倉 光
1d7 Sasa 1d7→2
どう使うかはお任せするー
KP
はーい

KP
無機質な声が告げる。
「回答者はモニターの前にお立ち下さい」
佐倉 光
「ふーっ」
まだ続くんだな。
佐倉 光
「先に行きます」

モニターの前に立つ。
早浪
「ああ、頼む……、これで五つ目か。どれだけ続くんだ」
彼女は頷き、一歩下がる。
KP
モニターの文字がじわりと滲んで、質問が表示された。


どちらかが実行されてしまうようです。
実行された側の大切な人は心に深い傷を負うでしょう。
どちらが実行されたら困りますか?

A:あなたの大切な人を、あなたが裏切る
B:隣の人の大切な人を、隣の人が裏切る


佐倉 光
俺が牧志を裏切る、か。
きっと、理由があって、などではなく、本心で裏切るということなんだろうな。
佐倉 光
正直、想像しづらい。
佐倉 光
深く考えるな。きっと質問自体に意味はないんだ。
佐倉 光
B
KP
背筋に氷を差し込まれたような激しい不安が、あなたを苛んだ。
本当に、これでよいのだというのだろうか?
……本当に?
…………本当に?

佐倉さんは《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D2》。
佐倉 光
「……!」
牧志はここにいない。あいつに何が起きているか分からない。あいつに何か起きているかもしれない……
佐倉 光
くそ、迷うな。最終的にこれが牧志を守るかもしれないんだ。
1d100 60 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 60→成功

KP
風景が、変わる。
あなたは牧志と共に、手を取りあって無機質な廊下を駆けていた。
背後から、追っ手が何人も追いかけてきている。

あなた達は息を切らせながらも、それでも諦めることはなかった。
後はここから脱出するだけなのだ。出口は、もうすぐだ。
牧志 浩太
「佐倉さん!」
息が切れ、時折足をもつれさせるあなたを、牧志が支える。
大きく切りつけられた脚から血を流し、時折呻く彼を、あなたが支える。
佐倉 光
腕輪は手元になく、戦う手段はない。
この場をしのげるようなものもない。
牧志は怪我をしている。最悪だ。
背後から追い立てる気配から必死で逃げ続ける。
牧志 浩太
牧志はあなたの名を呼び、必死に手を引いて走る。
あなたは今にも切れそうな息を、弾けてしまいそうな心臓を支え、必死に牧志の手を引いて走る。

全身が、ばらばらに砕けてしまいそうだ!
KP
それでもあなたの横には、牧志がいる。
牧志の横には、あなたがいる。
この実験施設の中を互いに探し回って、ようやく合流したのだ。

出口はもう直ぐだ。
あなた達は、これくらいの窮地なら何度だって切り抜けてきたのだ。

ならば、きっと、今度だって!
佐倉 光
「いけるいける、もう少しだ、がんばれっ!」
佐倉 光
息が切れる。
しかし俺と牧志なら乗り越えられるはずだ。
牧志 浩太
「ああ!」
KP
駆ける、駆ける、駆ける。
漸く、廊下を上りきった所に僅かな光が見えてきた。

あそこが、出口だ!
しかし。
不意に、ばん、と大きな音がした。
牧志の足下に、大きな穴が開く。
牧志 浩太
「……!」

あなたは、すんでの所で手を伸ばした。
牧志があなたの手を掴む。彼は必死に這い上がろうとする。
KP
あなたが引き上げれば、まだ間に合う。
KP
※引き上げようとして構いません。
佐倉 光
当然、引き上げる!
佐倉 光
「掴まれっ!」
牧志にむかって手を伸ばす。
KP
引き上げようとしたとき、あなたは不意に分からなくなった。

あなたの胸の中に、理由もない悪意がじわりと満ちる。
──どうして一緒に走っていたんだっけ?

あなたの腕にしがみついてもがいている男が、不意に憎くなる。
わけもない嫌悪感が満ちる。

この男の運命が、あなたを巻き込んだ。
この男のせいで、あなたは何度も死地に追いやられた。
何度も助けられたのだって、この男が自ら巻きこんでおいて、助けたような顔をしているだけだ。
佐倉 光
どうしてこんな疫病神を親友だなんて思っていた?
こいつの異常に巻き込まれて、死にかけるわ、物は壊れるわ、平穏は奪われるわで碌な事がない。
新たなことを知れる? いつもそんな暇もなく命からがら逃れているだけだろうが。
KP
心臓の拍動とともに、憎しみが溢れ出る。
わけもない嫌悪感を、悪意を、あなたはどう考えても異常だと分かる。
憎むべき相手ではない。ないのだ。ずっと一緒に走ってきた友だ。巻き込んだわけでも、巻き込まれたわけでもない。この感情はおかしい。
憎しみが止まらない。違う。異常が起きている。違う!

違うんだ!
KP
あなたは異常な感情を振り払おうと、両腕で己の頭を掻く。
佐倉 光
……おかしいぞ。今更それを牧志のせいだなんて思っていない筈なのに。
俺が望んでここにいるだけだっていうのに。

ちがう、ちがうちがうちがうちがう!
思考が、動作が、混乱した。ほんの一瞬。
KP
あなたは一瞬、両腕で・・・頭を掻いていた。
牧志 浩太
「……あ、」

直後、あなたが見たのは。
振り払われ、まっさかさまに落ちていく彼の、驚愕の表情だった。
佐倉 光
「牧志ーッ!」
慌てて手を伸ばしたがもう遅かった。穴の奥底を覗き込む。
KP
穴はあなたを押しのけ、彼を呑み込んで呆気なく閉じた。
……追手が無数に追いかけてくる。
あなたは命からがら、ひとりでそこを脱出するほかなかった。
KP
※この幻はあともう少しだけ続きます。ひどいはなしだ。
佐倉 光
死ぬ んじゃなくて 傷つく んだもんなぁ。
KP
なんですよネ。

KP
それからあなたは、どうしただろうか。
手を離したことを悔やみながら、以前のようにひとりで暮らしただろうか。
それとも、態勢を整えて彼を奪還しに向かっただろうか。
佐倉 光
無論、牧志が死んだという確信を得られるまでは諦める気はない。
情報を集め、今度は武装を整えてできる限り早くそこへ向かった。
KP
あなたは情報を集め、一度は命からがら逃げだしたそこへと飛び込む。

……再び訪れたそこは様変わりしていた。
以前は半分程しか稼働していなかった機械はすべて稼働し、施設全体に力が満ちている。
そして、廊下の奥から、なにものかの泣き声のような声が送音管を伝って施設全体に送り届けられていた。
佐倉 光
その声に聞き覚えはあるだろうか?
KP
反響でひどく歪んでいるが、聞き覚えのある声のような気がした。
……この送音管を辿れば、彼のもとへ行けるだろう。
佐倉 光
あいつは生きている!
声を辿り、発生源へと向かう。
KP
発生源へとたどり着いたあなたは、彼の姿を見つけるだろう。
牧志 浩太
小さなガラス張りの容器の中に、椅子に縛られた彼の姿があった。
目元に食い込んだ黒革の目隠しの下から、絶えず涙が流れている。
手足も身体もひどく傷つけられており、彼がどれだけの苦痛を与えられたかを物語っていた。
牧志 浩太
両耳に被せられたヘッドフォンの中から彼の耳へと、彼を憎むあなたの声が、繰り返し注がれている。
容器の中へ反響する彼の泣き声が、送音管を伝って施設全体へと響いている。
ここに来れば聞こえる。彼は繰り返し繰り返し、傷だらけの喉を震わせながら、ずっと居もしないあなたに謝り続けていた。
KP
溢れる涙が床へと滴り落ちて回収されていく。
絶えることのない嘆きが、神への供物として施設に力を与えている。
彼は無限に傷つけられ、ただ嘆きを生むためのものとして、そこに生かされていた。
佐倉 光
牧志! 生きている!

その状態はあまりにも恐ろしく、怒りと恐怖で体が震えた。
しかし、あいつは生きている!

悪魔を喚んで守らせると同時、その機械に取り付いて調べる。
犠牲者を解放する。
KP
「動力室」の異常に気づいてやってきた連中は、全力のあなたが使役する悪魔の敵ではなかった。
あなたは彼をその恐ろしい椅子から解放し、目や耳を塞ぐ拘束を外すことができる。
佐倉 光
「牧志!」
椅子の忌々しい拷問具や拘束をむしり取って、牧志の体を解放する。
体の傷には魔法をかけて、治癒を行った。
佐倉 光
「牧志、しっかりしろ!」
牧志 浩太
「……」
目隠しを取られた彼は、ゆっくりと眼を開けた。
その眼はぼんやりと焦点を結ばず、目の前にいるはずのあなたを見ることはなかった。
ぽっかりと開いた眼が、あの時彼を捨てたあなたを糾弾しているようにも見えた。
牧志 浩太
「ごめん……」
彼の唇から、もう何に謝っているのかもわからないような、謝る声が漏れた。
その声は、助けてくれ、許してくれ、とあなたに乞うているようにも聞こえた。
佐倉 光
「牧志、おい、俺はここにいる。
謝ることはないんだよ。
謝らなきゃいけないのは俺だ」
祈るように手を握り、焦点の合わない目を覗いて呼びかける。
佐倉 光
「やめてくれ、俺はここだ! 牧志!」
もう行かなければと悪魔に促されるまでそうして牧志に呼びかけ続けていた。
牧志 浩太
あなたには分かってしまうだろう。
──彼の傷つけられ続けた心は、もう壊れてしまっているのだと。
佐倉 光
「俺が、あの時手を離さなければ、こんなことには」
牧志 浩太
彼があなたの手を握り返すことは、とうとうなかった。

KP
……風景が薄れ、暗い部屋の中に戻ってきたと分かっても。
温かいままの手の感触が、まだあなたの手の中に残っているような気がした。
佐倉 光
「ちく……しょう……」
呻いて手を握りしめた。
これがただの夢幻だったとしても、牧志が魔性に魅入られ続ける限り、いつか来てもおかしくはない未来だった。

首輪が喉を押さえつけ、痛みを増した。
早浪
彼女は怒りと痛みを眼に湛え、呻くあなたを見下ろしていた。
KP
「回答者はモニターの前にお立ち下さい」
無機質な声が、あなたの痛みに割り込んだ。
佐倉 光
「……」
そうだ。これはただの夢だ。幻。現実なんかじゃない。
現実にしないように、俺は……

座り込んでぶつぶつと呟いている。
佐倉 光
相棒に謝らなきゃならないのは佐倉の方のようだなぁ!
KP
エンディング後が謝りあいになる!
佐倉 光
これだけやられて何も分からないまま終わるの酷くない!?
KP
まったくひどいはなしだ!
早浪
彼女はふとモニターの前に向かうのをやめ、あなたの傍らに座り込んだ。
何があったと問うこともなく。
あなたを案じる眼で、ただ暫くあなたを見ていた。
佐倉 光
「こ、これだけ……殴ってくる……ってこと、は……
正しいことを……」
佐倉 光
「いや、分からない。俺には、何も。正しさなんて。
正しいものがあるか、どうかすら……」
呆然と呟く。
佐倉 光
「ごめん、早浪さん。俺のことは、いいから……」
早浪
「すまない……。大丈夫だ。君の決断に応えよう。
君は正しい事をした。現に、私達はまだ動いていられる。……その筈、なんだ」
早浪
彼女は躊躇いを振り切るように、よろけながらも一人でモニターの前へと進み出る。
KP
モニターの文字がじわりと滲み、質問が表示された。
佐倉 光
ぼんやりとモニターを見ている。


どちらかの現象は阻止できるようです。できるならどちらを阻止しますか?

A: 大切な人の記憶から自分が消える
B: 隣の相手が大切な相手の記憶から消える


早浪
「……Bだ」
彼女は縛られた腕で背筋を伸ばす。
首輪に喉を絞められて呻きながら、少しのためらいのあと、はっきりと宣言する。
早浪
「私は死んだ身だ。今になって消えたとて、正しい別れに過ぎない」
佐倉 光
きっとそんなことは関係なく、どんな経験を積んでいようとも、強制的に心に傷を負わせる幻を見せられるのだろう。
なんなら行動や感情までいじられて、都合の良い舞台に持って行かれるのだ。
俺達に抵抗する術などないんだ。
KP
……風が、吹き抜けた。
早浪
1d100 25 早浪の《SANチェック》。 Sasa 1d100→ 2→決定的成功クリティカル)!
KP
おや、強い。不定に入っていたら次の選択に影響が……、とも思いましたが、ぎりぎり不定に入らなかった。彼女の意思だなぁ。

KP
氷凪、あなたはたったひとりで雪山の頂上に立っていた。
雪山の上には、鳳佳がここを訪れた痕跡だけが残っている。
夕陽は急速に傾き、冷たい風だけが吹き抜けてゆく。

あなたには誰か、あなたに手を貸してくれる者がいたはずなのだ。
三百年の歳月を経て冷え切った身を温める、熱い意思と友情を抱いてくれた誰かが。
あなたにはそれが、誰だったのかわからない。
あなたの傍らにその姿はない。
三百年の無念を経て夢に見た、ただの幻だったのかもしれなかった。

吹き抜ける風が心臓に開いた穴を通り、泣きたくなるような喪失感だけを呼び起こした。
KP
早浪という名の騎士は、そこにいなかった。
どこか遠いところで彼女が宣言した言葉により、因果が組み変わったのだ。
消えてかまわぬと口にしたことにより、彼女は消えた。
ここに来る前に、何なら最初から、戦の焼け跡で幼子は野垂れ死んでいた。
氷凪
ああ。胸に空洞がある。
心の臓がないのは当たり前だというのに、ここには以前暖かい何かがあったはずだという想いが、どうしてもおさまらない。
私はほんのわずかな間とはいえ、誰かとともに歩んでいた。
誰かとともにここを訪れた。
誰かとともに笑いあい、信頼を育てたのだ。
氷凪
冷たい胸の空隙は、そんなものはないのだと、300年を無為に在ることを嘆き狂い、こうあれかしと望んだ私が抱いた幻であろうと嘲笑う。
あの熱い心が、優しくも厳格な信念が、全て私の妄想であると。
氷凪
わけもなくかなしかった。
恐らく死地へ向かった鳳華を想ってのかなしさだろうと思うのに。どうしようもないことであるのに。今まで諦めてきたことと同じに過ぎないのに。
そのかなしみは、胸の空隙に氷の楔のように突き刺さって永遠に溶けはしないのだと、どうしてか分かった。

氷凪
そしてその楔は彼に完全な絶望を許さず、消えることもないまま在り続けることを強いるのであった。なんてね。
KP
あーあ。楔だけが残ってしまった。

KP
そうして、その後起こったことは、大して変わらなかったのだ。

鳳佳は慈空という名の騎士と手を取り、天へと舞い上がった。
怒れる龍は人間の都を灰となるまで焼き尽くし、遍く人々に龍族の恐怖を刻んだという。

あなたはその夜限りで墜ちてしまった彼女を悲しみ、失ったような幻を悲しみながら、変わらず四百年目の無為を刻むだろう。

あなたは生き残った。
あなたの願いは、鳳佳が果たしてくれた。
永劫に虐げられてきた龍族たちも、もう少しましな道を歩むことができるようになるだろう。

在るということがさいわいならば、あなたを死へと誘うだろう「誰か」がここになかったことは、さいわいですらあったのかもしれない。
氷凪
人が妖魅を忘れ、異形を忘れ、神を忘れるにつれ、同胞が消えゆくのを眺め続ける100年。
神の力が衰えるのにつれ、僅かずつ存在そのものが薄まってゆく100年。
もはや世界に人ならざるものが生きる隙間もなく、ゆっくりと消えてゆくだけの100年。
最後の龍族として全てを見届けるのが、私の役目となるのだろう。

誰かに逢いたいという捉えどころのないふわふわとしたかなしみを胸に詰め込んだままで、なんとなくほどけて消えるまで、ずっと。
KP
逢いたかった誰かは、とうとうあなたがほどけて消えるまで、雪の上を踏むことはなかっただろう。

……幻がゆっくりと薄れていく。
氷凪さんは引き籠もる
佐倉 光
氷凪さん、鳳華みたいに外へ出て行くバイタリティもなかったみたいなので、山奥で釘で打ち込まれてる薄衣が繊維がほどけてばらばらになるまで在る、みたいなものになっちゃった。
KP
あーあー。
龍族の行く先がましになったことを喜べるでもなく、外へ出て行って生を謳歌するでもなく、ずっとそこに縫い止められたままになっちゃった。
佐倉 光
あの世界、結局龍族に待つのは滅びでしかないから……
はっ。神のために瞋恚の呪いをまき散らせばワンチャン?
ワンチャンが増える→それ食べて生きてる神様の力が増す→龍族長生き
因果関係を知っていればそんなことをする龍族もいたかも知れないなぁ。
KP
なるほどぉ!?
呪いのせいで人々も龍族を虐げている場合じゃなくなるしハッピー(人々にとってはアンハッピー)
それが龍族に手を出した報いであったのか。
佐倉 光
結局氷凪の問題は、ただただ山奥に引き籠もり続けていたことだと思うからなー。
龍族には外に出れば人に虐げられるという超強烈なデバフがかかっていたけど、
自分が何のために在るか分からない、という悩みについては、彼が鳳華のように外に出れば解消していた可能性はある。

これはあのシナリオのKPC2さんの悩みではなく、氷凪さん独自の問題。
(彼が無為に生きてきたことを嘆いて、大きな存在理由を欲しがっているのは追加された描写)
KP
ああー、確かに。
外に出て何かしら動きを得ていれば、無為にはならなかったのかもしれない。
もう少し積極的に、過去の因縁と現状について知るという方法もあったのかもしれない。
佐倉 光
外に出たい、出ても良い、という思いに至ったのは他ならぬ早浪に出会って話をしたおかげだからなぁ。
龍族の里が平和であり続けたおかげで、そこに一石を投じる存在がなかった。
唯一外と龍族の里を行き来していた鳳華がいなくなってしまっては、もうなにもない。
唯一人間で里の場所を知っていた慈空も死んでしまっただろうから。
KP
早浪はいない、鳳佳と慈空は死んだ、となると、本当に現状を動かすものがなにもなくなるんだなぁ。
佐倉 光
氷凪はただただ雪山を彷徨って、神に会うために、もはや滅びてしまった異形の者を探し続けるだけのものになるんだ。
KP
龍王が彼に言葉をくれることもない。
鳳佳が邪魔する者なく都を灰にしたなら、あの女も死ぬだろうから、呪いがもう一度もたらされることもない。

彼のいないところで事態は始まって、終わってしまうんだなぁ。

早浪
「……」
彼女は呆然と、モニターの前に立ち尽くしていた。
早浪
「……まさか……、いや、幻だ。幻のはずだ……。
真実因果が書き換わるなど、そんな……。

私は、彼の成したことを、三百年の願いを無に、無に帰してしまったのか」
早浪
「……」
彼女はあなたの姿を振り返り、拘束された自らの身と見比べた。
その眼には先程と違って、明らかな迷いと躊躇いが戻っていた。
佐倉 光
牧志は無事なのか。
彼女と向き合っていればただの幻なのだと思えるが、牧志の虚ろな瞳はあまりにも真実味を帯びていて、あれの一部でも牧志に反映されてしまっているのではないかという疑いが、どうしても纏わり付いて離れなかった。

ああ、モニターを、見ないと。
KP
▼それぞれ〈目星〉で判定。
佐倉 光
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 49→成功
早浪
1d100 75〈目星〉 Sasa 1d100→ 47→成功
モニターには文章が表示されていた。
KP
モニターはそんな文章を一瞬映し出して、蝋燭の炎を消すように、ふうっと表示を消した。
早浪
「……何が言いたい……。
迷わせるように、何度も、何度も……」
俯いたままの彼女が一瞬顔を上げて、奥歯から軋む音を漏らした。
佐倉 光
「しつこくしつこく、自己犠牲するな、枷を避けろ、と言ってきている……」
佐倉 光
「一応、今回に関しては俺達自身のクソみたいな経験と、相棒の安否が分からないという不安を代償に、枷は免れている」
佐倉 光
「これが正解なのか? 不正解だとどうなるんだ」
早浪
「……分から、ない……」
彼女はぽつりと呟いた。
佐倉 光
「まだ続くってのかよ」
次の部屋を見る。
KP
空気の漏れる音がし、モニターの背後の扉が開く。

扉の向こうに広がる暗い空間は、もううんざりするほど、先程までと全く変わらないように見えた。
佐倉 光
「畜生……」
早浪に手を貸して先へ進む。
早浪
彼女はあなたに肩を借り、室内に足を踏み入れる。

コメント By.佐倉 光
少しずつ飲み込めてくる流れ。
二人は必死で『正解』を探す。

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TRPGリプレイ CoC『キルキルイキル』海野と渡川『キルキルイキル』1

(ちなみにエロ本はどちらに)
拘りますな

BEAST BIND トリニティ キャラクターメイキング

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