TRPGリプレイ【置】CoC『一蓮托生の紐の先』 佐倉&牧志 5

KP
うきうきとPC上のマップを見れば、居住スペースの各扉の前にも対侵入者用の設備があるようだ。
なるほど、研究員達も寝込みを襲われたくはないということだろう。
今はそれらの設備も、あなたの制御下にあるわけだが。
佐倉 光
折角だから塩胡椒、上手く行けばちゃんと焼けるキッチン確保のために居住設備襲おう。
居住設備に聞き耳立てる。
KP
〈聞き耳〉で判定。
佐倉 光
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 28→成功
KP
「先輩ー、あかないですよお、このまま私達餓死ですよお」
「くそっ、どうして開かないんだ」
向こうから、疲れたような人間の声が聞こえる。
どうやら、この扉の向こうに集まっているようだ。
KP
「リーダーのいってた被験体ちゃんが体当たりして壊しちゃったんですかねぇ?」
「アホか、体当たりなんかされたらすぐ気づくわ」
佐倉 光
電気銃って内側? 外側?
KP
外側。
居住スペースに立てこもることを想定しているのか、扉の前を電気銃が薙ぐようになっている。
もちろん、これも方向は制御できる。
佐倉 光
小声で囁く。
佐倉 光
「牧志、廊下の向こうふさいで、顔は手で隠して、爪振りかざして襲うぞって格好してて」
廊下の丁字路の方を指す。
そして電気銃の角度を調整……
牧志 浩太
「え、あっちか? あー、ああ、分かった」
牧志は顔を片方の手と尾を回して隠し、首を下げて獣の姿勢をとる。そして鉤爪を大きく振り上げて待機した。
佐倉 光
廊下の逆側に立ち、扉を開ける。
KP
「! 先輩、あきましたよお!」
「は? 開いた? アホかそんな訳……、開いた!」
勢いよく転がり出ようとする一人を残りが慌てて引き留め、居住スペースの中から様子を窺ってくる。
佐倉 光
じっとして機会を待つ。
電気銃が当たる角度になったら当てるぞ!
佐倉 光
「……」
出てこないかな?
KP
すぐに異変がない、と分かると、彼らはおずおずと一歩踏み出してきた。
そこで、彼らは廊下の向こうに、鉤爪を振り上げた牧志の姿をみとめてしまう。
「うわぁ!? 先輩、被験体ちゃん脱走してますよお!」
「は!? アホか、脱走…… うわ本当だ脱走してるじゃないか、早く制御室と連携を取れ!」
「制御室から応答ありません!」
「はぁ!?」

彼らは制御室へ向かおうと、今度こそわらわらと扉から出てくる。
そして、電気銃が当たる角度に入った!
佐倉 光
ハイご苦労さん!
電気銃を発動する。
KP
電気銃が発動し、一瞬辺りを青白い光が埋め尽くした。
思わず牧志は背を丸める。彼らの驚愕の声が一瞬後に途絶える。

光が晴れると、きれいに全員が伸びていた。
佐倉 光
残り人数によるが、交渉もアリだな。
KP
どうやら、居住スペースの中にも残りはいないようだ……。
佐倉 光
「牧志、適当な部屋に全員突っ込むから手伝って」
居住スペースのなかの、物があまりない部屋を探して纏めて押し込む。
佐倉 光
あ、あとあと面倒だから、元牧志の部屋にみんな突っ込んだ方がいいな。
そう変更していい?
KP
大丈夫です。>元牧志の部屋
佐倉 光
そしたらトイレもあるし水放り込めるし。
待遇が協力しただけっぽい奴らが悪くなるのは気の毒な気はするがまあ、運が悪かったと思って諦めてもらおう。
KP
……そんなことをした辺りで、あなたは我に返るだろう。
あなたの手の中には、まだ新鮮な生きのいい肉塊が収まっている。
佐倉 光
さあ焼くぞ、と確保していた肉塊を見下ろし……
佐倉 光
「……あれ? 肉は?」
牧志 浩太
「ああ、よかった、佐倉さん正気に戻ってくれた……。
佐倉さんそれ、腹減ったって俺の舌食べようとしてたんだよ。
焼けば行けるかもしれないけど、毒でもあったら困るし、やめた方がいいと思うな」

牧志は彼らを一通り部屋に押し込み終わり、我に返ったあなたを見て安堵の息をつく。
佐倉 光
「え? 俺はただ、美味しそうな肉を……」
佐倉 光
「なんでゴミ箱から拾ったんだっけ??」
顔をしかめて肉をつまんでゴミ箱に突っ込み、袋を閉めた。
佐倉 光
「まあ、いいや。これで休憩所もできたし、食料探そうぜ。腹減ったよ」
牧志 浩太
「そうだな。
俺の舌食うのはどうかと思うけど、正直腹減ったのはそうだし」
佐倉 光
押し込んだ部屋のドアをロックする。
水なしで二日閉じ込めたら生命の危機だっけ。まあいいや、後で考えよう。

佐倉 光
食料と、あとは倉庫。探ってみる。
KP
倉庫を探るとこまごまとした日用品や掃除道具などと、ロープなどの道具、それから食料の備蓄が見つかった。
それなりの期間を過ごせる量があり、冷凍庫には冷凍の野菜や肉類もある。

水はどこからか水道のようなものが来ているようだが、一体どこから水が引かれているのかはよくわからない。

あなたのCOMPはなかった。
KP
居住スペースには過ごしやすそうなソファや娯楽本、インターネットの通じるPCなどもあり、なるほど余暇の時間を過ごすに困らない場所だ。

小規模なキッチンもある。
佐倉 光
「くそ、どこにあるんだよ俺のCOMP」
とりあえず食事して休憩しよう……
あいつら身につけてたってことはないかな。
KP
彼らが身に着けてはいなかった。制御室でも見かけなかった。
一体、あなたのCOMPはどこにあるのだろうか?
佐倉 光
「やっぱ見つけないと怒られるよなぁ」
ため息をついた。
「後で訊いてみるか」
牧志 浩太
「そうしよう。せっかく壊れなくしてもらったCOMPなのに、こんなことで失くしたくないし」

佐倉 光
食事したら数時間仮眠取ろう。
KP
久しぶりに口に入れた水と食事は、あなたを人心地つかせるだろう。
牧志 浩太
化け物の身体のまま牧志はキッチンに立ち、肉と野菜を炒めた簡単な料理を作った。
牧志 浩太
「いただきます、鼻がまだだからあんまり美味しそうに感じないな……。
肉や野菜の匂いをあんまり感じないみたいだ、この鼻」
牧志 浩太
「……というか今の俺、肉や野菜って食べられるのか? 
胃袋は生きてるとはいえ元々俺の胃袋だから大丈夫だと思うんだけど、腸や肝臓が俺のじゃないしな、どうなんだろう」
肉と野菜を箸の先につまんで、牧志は少し考える。
佐倉 光
そうか、鼻がまだか。忘れてたなー
佐倉 光
「うーん。味覚が人間で、食べられる物があの虫だときつそうだけど」
佐倉 光
「いや、前もその状態で虫食ってたっけ?」
牧志 浩太
「いや、あの時は舌が先だったから。その時には鼻も入れ替えられてて、あの蟲の匂いを強く感じるようになってた。

嗅覚と味覚を入れ替えたら、食べられなかったものを喜んで食べるようになるのか、っていう実験だったかな……」
佐倉 光
「一応あの虫、探してみるか。ヘンに刺激するのもまずいかも知れないしな……」
KP
例の這いずるものは倉庫の一角、研究用の資材を詰めたスペースで見つかった。
微かに生臭いにおいのする、たくさんの脚をもった短い身体の蟲で、何だか釣り餌のようでもある。
佐倉 光
「うぇ、至近距離だとなかなか強烈だな」
生臭さは壁越しだと分からなかった。
牧志の鼻は戻っていないので、この臭いは分からないのが幸いとも言える。
問題は味覚と触覚か……
牧志 浩太
「うぇ、塩っぱいし変な苦みあるし、食べ物じゃないな。
美味そうな匂いはするんだけど」
牧志はそれを舌先でつついてみて苦笑する。
佐倉 光
「調理、してみるか」
牧志 浩太
「なるほど? それは手かもしれないな。釣り餌に似てるし、これ。
案外焼いたら食える味になるかも」
佐倉 光
味の半分は嗅覚でできてるっていうし、嗅覚がこれを美味しそうと判断するなら食感なんかを何とかすれば行けると思う。
足やぬめりをおとして、ゆでたり焼いたりして。
要は口を何とか通過させればいいはず。
佐倉 光
「やってみよう」
佐倉 光
「気晴らしになるかもしれないしさ」
調理開始だー!
足を折り取って、殻が剥けるかチャレンジしよう。手袋と、あればマスク着けて。
KP
手袋とマスクは倉庫から見つかる。
脚を折り取ろうとすると指を這い上がってきて不快この上ないが、擦り合わせるようにすれば脚が取れそうだ。

殻はないようで、剥こうとすると指の腹に絡んできてくすぐったい。体表を包む粘液は酸性のもので洗えば落ちるようだ。
そうして調理の工程を踏んでいれば、次第に動きは鈍くなってくる。
佐倉 光
思ったより小さかった。
牧志 浩太
「ああ、確かにこの感じ、料理だな。ちょっと楽しい」
手元からは強烈な生臭さが立ち上り、あなたは手袋に心底感謝するだろう。
佐倉 光
焼いたのと煮たのとでやってみるか。
最悪生でも足がなくなってれば食べやすくはあるだろう。
佐倉 光
くっせぇなぁ。
という感想は何とか飲み込む。正直飲み込みたくない、こんな食材。
フライパンいくつかあるといいな。換気扇つけよう、最強で。
ああでもにおいはむしろあった方がいいのか牧志にとっては。もうわけわからん。
KP
フライパンは二枚と、鍋がふたつ見つかった。ダクトに繋がった換気扇があり、出力を上げると音を立てて臭い空気を排出し始める。
それでも室内に籠もる臭いは如何ともしがたい。
牧志 浩太
「やっぱり臭いんだよな? 何だかごめん。何なら俺がやるよ」
顔をしかめる様子に、牧志は苦笑してフライパンを取ろうとする。
佐倉 光
「鼻戻さなくてよかったな」
これを食べるのが必要なら、鼻からの情報はもう暴力でしかない。
おとなしくフライパンを渡す。

この空気をあの独房に流してやりたい。
八つ当たりぎみにそう思った。
牧志 浩太
「あー、そうだな……。」
フライパンを受け取り、牧志は平気な様子でそれを焼き始める。
牧志 浩太
「意外な所が問題になっちゃったな。難しい」
KP
しばらくすれば「料理」は出来上がるだろう。
火を通したことで蟲の外見は和らぎ、ホカホカと湯気を立たせる、見た目的には成程こういう郷土料理がありそうなものだ、という程度のものにはなった。

相変わらず生臭いが。
佐倉 光
臭いだけなら大丈夫大丈夫。
佐倉 光
「問題は味か」
佐倉 光
「そういやあの舌って味とか感じられたのか?
俺に人工呼吸したときとか? 体内の味なんてなかなか知る機会はないよな」
思わず疑問をさらっと口にしてしまった。
牧志 浩太
「普通に感じられたな。
この蟲はそんなに強い味はなかったけど、微かに滋味があって美味しかった。

佐倉さんの体内は、ちょっと唾液と痰の味がしたくらいか?
風邪こじらせて、咳して痰が出た時みたいな味。

どっちかというと、舌で探る感触の方が斬新だったかな」
佐倉 光
「へぇ……そりゃそうか。って気持ち悪いこと思い出させてごめん」
佐倉 光
「食事にしようか」
内容はともかく、こうやって益体もない話ができるのが嬉しかった。
食べよう。そうしよう。
牧志 浩太
「ああ、食事にしよう」
居住スペースのソファに身体を横たえ、牧志は「食事」と向かい合う。
牧志 浩太
「いただきます」
一日一度入ってくる邪魔者は、もういない。
あなたとそうやって話しながら、久しぶりに人の食事のようなものを囲めることに、彼は嬉しそうだった。
枯れ枝の手で食器を扱い、彼はそれを掬って舌の上へと運ぶ。
牧志 浩太
「……」
口の中のものを噛んだ瞬間、まさに苦虫を噛んだような、大層辛そうな悲しそうな顔になってしまった。
牧志 浩太
「苦い。まずい。噛むと金属みたいな味がする。いい匂いなのにおいしくない。これ噛むやつじゃない」
彼はげほげほと咳き込みながら、それを水で飲み下す。
佐倉 光
「駄目かぁ……」
食事にならないようなら、中止して移植に戻ろうか。
佐倉 光
「半端だとストレスにしかならないな。早いとこ全部戻そう」
まあ、気分転換にはなったし。
牧志 浩太
「いや、呑めば大丈夫そう。
これの味が舌に触れる前に、調味料だけ味わって飲み下す感じかな」
牧志はあの時そうやっていたように、舌を使ってそれらを喉の奥へ送る。
胸から腹のあたりでもごもごと咀嚼する動きがあった。
佐倉 光
「そうか。噛む必要がないから意外に……」
ついつい腹のあたりを見つめてしまう。
佐倉 光
「変な癖が残らないといいな」
佐倉 光
牧志なら新しい状況にはすぐ慣れるし、戻ればまた順応するだろう。たぶん。
牧志 浩太
「変な癖残ったら困るな。
内臓戻したら、暫くよく噛んで食べよう」
腹の辺りでもぞもぞと何かが蠢いているのが、微かに見える……。
佐倉 光
いつ実験が始まるか、という無意識下の焦りがないだけで、随分と落ち着けるものだなと思った。
良かった、という気持ちがゆっくりと染み込んでくるようだ。
牧志 浩太
あなたの表情に穏やかな色が差しているのを見たのか、牧志はふっと笑った。
牧志 浩太
「まだ途中だけどさ、……よかった。上手くいって」
佐倉 光
「ああ、ちょっと休んだら続きしよう。
早く帰りたいよ……」
牧志 浩太
「そうだな……、早く帰りたい。
シローのことも心配だし、大学のことも気になるし、大学のみんなとも話したいし、それ以前に、早く家に帰ってのびのびと寝たい」
あなたの言葉につられるように、牧志の口からぽろぽろと言葉が出た。
今までずっと飲み込んできた言葉だ。
佐倉 光
牧志が思うままのことを自分の口で喋れることを、何より嬉しいと思った。
佐倉 光
「ああ、良かったよ、うまくいって」
佐倉 光
ふと気付いて首元に手をやり、手のひらで千切られた鎖を掬う。
佐倉 光
「そういえばこれも外さなきゃな。
俺も変な意味で慣れちゃったみたいだ」
牧志 浩太
「そういえば、付けっぱなしだったな。
色々気を取られて気づいてなかった。早く外そう」

佐倉 光
食事が終わったら制御室に行って、首輪を外す。
KP
制御室の装置に首輪を当て、装置を操作する。
ピッ、ピッ、ピッ、と何度か繰り返し音が鳴って……、あっさりと首輪が外れた。

一気に喉が緩む感覚があり、少し冷たい空気が肺に流れ込んでくる。
ずっと存在していた気道の異物感が消えてようやく、いままで束縛されていたのだ、と逆に実感する。
佐倉 光
今まで空気がちゃんと吸えていなかったのだ、と自覚する。
やっと自由になったのだ、という気がした。
佐倉 光
「空気がうめぇー!」
全身伸ばして深呼吸をした。
KP
全身を伸ばして深呼吸をすると、必要な空気があまさずあなたの喉に入ってくる。
とうとうあなた達は自分の身体と心の制御権を、完全に取り戻したのだ。

二人とも正気度 +1d3。
佐倉 光
1d3 Sasa 1d3→1
SAN 51 → 52
牧志 浩太
1d3 Sasa 1d3→2
SAN 36 → 38

佐倉 光
それじゃ適当な部屋で数時間休憩したら、続きをしよう。
鼻、それから内臓。
おっと、休憩に入る前に、ここの奴ら閉じ込めた部屋に水くらいは差し入れてやるか。
KP
外から水が差し入れられると、中から喜びの声や言い争う声などが聞こえてきたようだ。
あなた達はそれを尻目に、休憩に入ることだろう。

居住スペースで数時間休むと、随分と疲れが取れたように思う。
KP
実験室に戻れば、そこには最初に出た時と変わらず、悍ましい光景が広がっていた。
……そういえば、鼻を戻す前に舌を戻してしまったことをあなたは思い出す。

どうしようこの蟲まみれの鼻。
佐倉 光
やる前に突っ込んでくれよぉ……牧志。
牧志 浩太
「あ……」
どうやら牧志もすっかり失念していたらしい……。
牧志 浩太
「だ、大丈夫、内臓まだだし、行ける行ける……」
佐倉 光
いやとりあえず排除すれば良いだけで食う必要はないだろう別に……
さっきの寄生生物に関する情報の中に、この虫を排除する方法など載っていないだろうか。
KP
先程の資料を探し直すならば〈図書館〉で判定。
佐倉 光
1d100 75 〈図書館〉(オフライン) Sasa 1d100→ 35→成功
佐倉 光
資料を引っ張り出して、鼻に巣を作っている虫について調べる。
KP
それは人の屍をすする汚らわしき食屍鬼の領域にて彼らのおこぼれを啜る羽虫の幼生であるとも、あるいは〈這うもの〉と呼ばわれる蟲人間の一部であるとも言われる。

それらの習性について詳しいことは殆ど書かれていなかったが、後者の説によれば恐るべき妖術師の魂により使役されし墓場の蛆虫のなれ果てであるとも……

……有益な情報がない。

記載によれば人の皮膚に卵を産んだり、生きた肉を喰い破ったりするようなものではないらしいのが、まだ幸いだろうか。
そういえば、人の肉体に棲みつくようなものでもないらしいが、なぜ鼻を巣にされているのだろうか?
KP
最後のページに、〈虫の誘引の呪文〉という、嫌がらせか害虫捕獲に最適そうな呪文についての記載があった。

指でつまめる程度の大きさの物品に、人の腐肉を用いた儀式を行うことにより、その物品が害虫の類を引き寄せる力を持つようになるのだそうだ。

呪文そのものや儀式の詳細などは書かれておらず、これをこの場で使うことはできそうにない。
佐倉 光
がんばって取り除くしかないのか……

そうだなぁ。
纏めて放り込んである奴らに訊いてみるとか。
ついでにCOMPの場所も。
答えてくれて、その情報があたってたら食料あげるよ~とかで。
KP
では、ここで【アイデア】で判定。
佐倉 光
1d100 85【アイデア】 Sasa 1d100→ 10→成功
牧志 浩太
1d100 90【アイデア】 Sasa 1d100→ 36→成功
KP
あなた達は同時に、割と嫌な想像をしてしまった。
この蟲は本来、人の肉体を巣にするようなものではないらしい。
そして、ここには害虫を誘引する呪文について書かれている。

……この呪文を使われた物品が、既に存在するのではないか?

例えばいま蟲の巣になっている場所の中とかに。
牧志 浩太
「佐倉さん、俺、今すごく嫌な想像した……」
佐倉 光
「ああー。意外と簡単に片付くかなこれ」
鼻の中を覗いてみる。
牧志 浩太
「そう、それ。そういうことだろ、これ」
KP
無数の蟲が鼻孔の中を這い回っているさまは、見ているだけでむず痒く、本能的な怖気をもたらす。
それに耐えて鼻の中を覗くなら、【POW】×5で判定。牧志は+20%してよい。
佐倉 光
1d100 75 【POW】 Sasa 1d100→ 80→失敗
牧志 浩太
1d100 80 【POW】 Sasa 1d100→ 32→成功
佐倉 光
思わず自分の鼻を押さえた。
KP
鼻腔の小さな凹凸に無数の蟲が這いずり回っているさまは、背筋に怖気を走らせる!
どうしようもない嫌悪感と痒みのような感覚に襲われ、あなたは思わず視線をそらしてしまう。
牧志 浩太
「うわ、あった」
その横で牧志が顔をしかめながら、片方の鼻孔の奥を指さす。
よく見てみれば、何か小さな宝石のようなものが深い所に見える。
反対側から押し出す、器具で摘み出すなどすれば取り出せるだろう。
佐倉 光
ピンセットでつまみ出そう。そーっと。
KP
幸い角ばったものではないらしく、ピンセットを使えばスムーズに取り出せる。
取り出すと蟲は一匹残らず、それの方に引き寄せられていった。

後は、苦しそうにひくひくと鼻汁を垂らしている鼻を牧志に戻すだけだ。
佐倉 光
生食あったら洗ってティッシュで軽く拭き取ろう。
でもって戻そう。
KP
生理食塩水はちゃんとあった。ガーゼやティッシュもある。
鼻の中を軽く拭って、鼻を牧志に戻すと、牧志は激しいくしゃみを始めた。
牧志 浩太
「ぅえっ、くしゅっ、うぶっ」
何か残っているわけではなく、単に余韻が残っているようなものらしい。
佐倉 光
体から切り離されて酷使され続けたんだ、無理もない。

その発作のようなものが収まるまで少し次の準備をしながら待とう。
何しろ次は大手術だ。
治すだけではあるんだけど
KP
牧志なおし編、こちらは佐倉さんが色々やって下さって楽しいし過程がいろいろ楽しいけど、冗長だと思ったら巻いて下さっても構いませんのでっ
佐倉 光
はーい、大丈夫!
さすがに内臓はひとまとめにやってもいいかなと思ってたり!
KP
よかった!
ですねー、感覚器はなにかと過程が楽しいけど、内臓は一つ一つの外からの変化はそんなにないし、まとめてでもいいかな? とこちらも思います。
佐倉 光
一回開けたら一気に治さないとダメでしょうしね。
KP
ですね。内臓があんまり中途半端なことになったら生物としての整合性が取れなくなりそうだし。
あんまり何度も腹部あけたりしめたりしてたらさすがに血液のストックとかもろもろ大変そうだし。
佐倉 光
鼻の次は一気に臓器やって、また休憩イベント入れたら四肢かな。
その間に腕輪のこととか閉じ込めてる奴らに訊くイベント入れたりー
KP
ですね。二度目の休憩のあたりでコスト消費も二度目が発生する感じで。

佐倉 光
ふと、考える。
佐倉 光
「ちょっと待っててくれ」
牧志に言って、元牧志が閉じ込められていた方の部屋の扉に行く。

牧志の体を戻す前に確保したいものがある。
KP
言い争いの声が止み、室内から聞こえるのは無為に話し合う声や、隔壁の隙間を探そうとする音に変わっていた。
そこに突破できるような隙間がないのは、あなた達が証明済みだが。
KP
「そもそも被験体ちゃんどうやって脱出したんでしょうかー!?」
「リーダーが扉を開けたからですよ」
「でも、被験体ちゃんにここの設備どうにかするような知能はないんじゃないですかあー? だって、ここって協力者さんの」
「制御システムは我々のですよ……」
中から話し声が聞こえてくる……。
佐倉 光
「お腹すいてませんか? すいてますよね?」
声をかける。
KP
「すきましたーあー! あれっあなた誰ですか?」
「あの被験体の鍵ですよ……。ああ、そういう。あなたの方に対する下調べが足りていなかったと」
佐倉 光
「そう、もうひとりに無理矢理言うことを聞かせるために、
動物か何かみたいに首輪つけられて尊厳踏みにじられて、
変な改造されて苦しんでる親友の横で最悪の気分を味わっていた方の被検体ちゃんです」
佐倉 光
「……へーぇ、僕たちが普通に一般の、その辺にいる人間だと思っていてこういうことに使ったと。
その上で実験のことを知りながら協力していたと。つまりはそういうことですね?」
OKこいつらも同罪。遠慮は無用だな。
KP
「取引ですかあー?」
佐倉 光
「そうそう。取引。そこで死にたくはないですよね? さすがに」
KP
「そうなるな。何が望みだ。ここの設備か? 知識か? 外に出たければ好きに出るがいい」
「先輩開き直ってる場合じゃないですよおー。死にたくないでーす」
佐倉 光
「僕だって人の命を無闇に取りたいわけじゃないんです。平和主義者なんで」
まあどんな平和主義者でもあんな扱い受けたらぶっ殺したくなると思うけどね?
佐倉 光
「有益な情報をくれて、もしそれが本当に役に立ったら食料を入れてあげてもいいですよ」
あ、そういえば牧志にもいて貰えば良かったな……呼んでこよう。
佐倉 光
「少ししたらまた来ますんで~」
牧志の鼻水は治まっているだろうか。
ゆるさない
佐倉 光
こっちの二人? はそこまで知らない可能性も考えてたけど、扱い一緒でいいや。
いいかな? KPの想定と違ってないかな?
KP
大丈夫ですOKOK。KPの想定とずれてるということはありません。
少なくとも佐倉さんから見える範囲ではどう見ても同罪だし。
ここの研究員や研究所どうするか、については割と色々想定してあります。
佐倉 光
どうしようかは色々考え中ー。
用が済んだらムドね、がまあ簡単で安全な方法ではあるんだけどね。
普通に警察に突き出す気はないよ。
上位存在がどう関わってくるかにも寄るな。

牧志 浩太
戻ると、牧志はまだちょっと涙目だが、鼻水や涙は治まっているようだ。
牧志 浩太
「佐倉さん、何か調べに行ってた?」
佐倉 光
「ああ、情報集め。
俺のCOMPのことと、あっちの被検体室のことと……」
佐倉 光
「ここを観察しているヤツのことを訊いておこうと思ってさ。
で、食事を餌にするから大体答えて貰えるだろうとは思うけど、ヤケクソで嘘をつく可能性もあるから、
牧志にも聞いておいて欲しいんだよ。顔が見えねぇから難しいかもだけどさ」
佐倉 光
「そうだな、他に訊いておきたいことある?」
牧志 浩太
「ああ、そういうこと。
そうだな……」
牧志は人間の形に戻った顎に枯れ枝の手を当てて、少し考える。
牧志 浩太
「ここがどこにあるのかってことと、あれば交通手段。
出ても砂漠のど真ん中とかだと困るしさ。
あとは、どうやって俺達さらったのかと、攫われて何日経ってるのか、かな。

俺にくっつけられた奴のこととか、俺が何食べてたのかも気になるけど、それ聞いてたら日が暮れそうだ。

なんであいつに協力してるのか、は……、下手に聞かない方がいいかな、雑念が入るしさ……」
佐倉 光
「おっ、確かに。どうやって、ってのは気になってた。
逃走に使われても困るしなー」
佐倉 光
「その他の質問用に紙とボールペン……」
佐倉 光
「いや、やめとこう。余計な物を差し入れて、それでまた状況ひっくり返されても困るからな」

完全に抑えつけたように見えても油断は禁物だ。
だからこそ俺たちはこうやって自由を取り戻しているのだから。
佐倉 光
牧志連れてさっきの場所に戻り、何か話しているようなら暫く立ち聞きする。
役立ちそうな話がなければ質問を始めよう。
KP
便器を外そうとしているのか、トイレの辺りから物音がする。
役に立ちそうな話はしていないようだ。
牧志 浩太
牧志は扉の向こうに注意を向け、あなたが「取引」を始めるのを待っている。

佐倉 光
攫われて何日、現在値ってのはPCやスマホでわかんないかしら。
まあいっか訊こう。
KP
ああ、PCやスマホを見ればわかりますね。牧志が単純に失念しているということで。
佐倉 光
そういうの答えられるかも参考になるかも知んないし。

佐倉 光
「そろそろ質問いいですか?」
声をかける。
佐倉 光
「ここはどこか。交通手段はあるか。
それと僕たちをさらった方法。攫った日からどれくらい時間が経過しているか。
あとふたつの被検体室には何がどんな状態で入っているのか、と、
ここに連れてこられたときに僕が身につけていたはずの腕輪はどこにあるのか。
それとどうしてこの実験に協力しているのか、かな。
知りたいのはこれくらいですね」
佐倉 光
「というわけで、ここはどこ、から答えて貰えます?」
尋問は詳細やってもいいし、ざっとこんな結果だった、でも大丈夫です。
基本穏やかに訊いて、事実確認したら報酬(食料)払うよ。
KP
「むむむ……、」
「せんぱーい、おなかすきましたー! おなかすきましたよー!」
「ええい、うるさい、ちょっと黙りなさい!
……ここは長野県の山奥の地下だ。
上ってもまともな道路もない場所で、まず脱出はできない。諦めるんだな」
「でも先輩、外に」
「そういうことは聞かれてから言え!」
KP
「……他の被験体室には素体が入っている。
大いなる暗黒の従僕や、それらから採取した一部、それらの眷属がある。
……腕輪? リーダー、ご存知ですか?」
暫く、中で誰かと話しているような声。
「……被験体の血液に反応する兆候が見られたので、血液タンクの中で反応中だ」
KP
「協力している理由? 知識が得られるからだ。
知ることのできることを知らないままにしておくなど、到底看過できるものではない」
「事故で手がなくなっちゃったんですよおー。
でも戻してくれるっていうからここに来ましたー」
牧志 浩太
牧志は彼らの言葉をじっと聞き、声の調子、発話のタイミングに耳を澄ませている。
KP
牧志は〈心理学〉で判定する。
KP
Sasa 🎲 Secret Dice 🎲
佐倉 光
こちらも〈心理学〉します。
57ァー!
KP
Sasa 🎲 Secret Dice 🎲
牧志 浩太
「特に口止めされてる、ってことはないみたいだな。
悔しそうだけど、喋ろうとする時に恐怖がない。
喋りだす前に間が空くこともないし、対話に不自然さもない。
本当に知ってることを喋ってる……、ように聞こえる」
KP
あなたもほぼ同じ結論に至るだろう。
諦めるんだな、と口にした時にだけ、僅かな含みを感じた。
佐倉 光
「そうかー、じゃあ僕たちは外に出て迷子になっちゃうかもですけど、あなたたちも警察の人とかに助けて貰えないですねー」
佐倉 光
「大体のことは答えて貰えましたし、食料は持ってきてあげますよ。
何がいいですか?」
佐倉 光
「ちゃんと好み言わないと、僕の相棒が食わされてた虫になりますけど」
これくらいの嫌味は言ったっていいだろ?
KP
「あれおいしいんですかねー?」
「人間の味覚では不味いから、やめときなさい。
肉と野菜、それから保存食とサプリメントを頼むよ……」
佐倉 光
注文通りのを二人分。俺達に与えられていた分量通り水と一緒に入れよう。
脱出手段かー。
今訊いておいた方がいいんだろうか?
まあなにがあるかわかんねーしな。
佐倉 光
「ここからの移動方法について教えてくれるなら次回も食料持ってきますよ?」
KP
「ああー、それはき」
「……持ってきた時に話すよ」
「むうーむむむうー」
佐倉 光
リーダーには一切話しかける気はない。
あいつはもうこのまま放置でもいいや。
監視カメラ的なのがあれば、変なことしてないかたまに覗くかなぁ。
KP
PCの画面を確認すれば、部屋全体を記録するカメラがあるようだ。
……あなた達もこれで観測されていた、ということだろう。
手元がよく見える程の解像度はない。
佐倉 光
なるほどハッキングがバレなかったわけだ。
リーダーの情報……一応後で役に立つかも知れないし、殺すと面倒かも知れない。
リーダー突っ込んだ部屋の方にも次回にでもパンとサプリだけ放り込んでおこう。
KP
あっ、時間経過のこと、普通にKPが返答し落としてるな。失礼しました。
KP
「実験開始から13日目だ」
KP
です。また長期行方不明だよ。
佐倉 光
またぁ!
佐倉 光
「さすがにここまで長期って初めてだな……あ」
牧志の顔を見て付け加える。
佐倉 光
「現実の時間では」
牧志 浩太
「これも夢の中だったらいいのに、と今は心底思う。
大学どうするんだよこれ……」
佐倉 光
「俺も。仕事をすっぽかしすぎて誰も組んでくれなくなりそうだ。
夢か異界だったらなぁ」

佐倉 光
さーてと、知りたいことは大体分かったし、続きやろうか。
KP
手術室に戻る。
鼻まで元に戻った牧志は、まるきり化け物の胴体に牧志の顔がついているとしか言えない姿になっていた。

騒がしい二人組から離れると、辺りがずっと静かになったように感じる。
その静けさは、残った内臓や手や脚が、どんな目に遭わされていようと声を上げられないことによるものではあったが。

そういえば、唯一声を上げられる唇と舌は、臓物の丸みで塞がれていたのだ。
牧志 浩太
「次は内臓か。
内臓を戻して皮膚と四肢と尻尾だけこのままになっても、大きな問題はないはず……、だよな?

逆に、内臓は一気にやった方がよさそうだな。何度も腹を開けたり閉めたりするわけにいかないし」

先程順番問題でなにかと困ったからか、牧志は図を描いて少し慎重に確認する。
牧志 浩太
「……そういえば佐倉さんのCOMP、血液タンクの中って言ってたな……」
佐倉 光
「考えないようにしてたんだ」
佐倉 光
「それはどっちもに対して大丈夫なのか……
いくら牧志の血でもマグネタイトに直で反応はしないはずだし、
血が変質しちゃってるなんて事はないだろうけど」
佐倉 光
「俺のCOMP……」
牧志 浩太
「…………ごめん……」
佐倉 光
「なんでお前が謝るんだよ」
佐倉 光
「被検体部屋開けなくて済みそうだから助かった……と思っとこ。
絶対開けたくねーよ」
牧志 浩太
「まあ……、確かに。
今の俺の素体とかなんだろ、絶対会いたくないやつだ。
COMPは、うん、しっかり洗おう……」
佐倉 光
血液タンクチェックしよう。
KP
まだタンクの3/4ほどを占める液体は赤黒く、見ただけでは中に何か入っているのかどうかはよく分からない。
タンクの中身が消費されていけば、分かるだろうか。
佐倉 光
くそー。中にむやみと手をいれてかき回すのも良くないよな。
おとなしく臓器移植の準備にかかろう。
牧志 浩太
牧志の顔をした化け物は、天井に設置された鏡を見上げながら処置台の上に横たわる。
牧志 浩太
「胃袋と心臓だけは俺のなんだ。
それ以外は全部すげ替えられてる」
佐倉 光
「ああ、ほぼ全とっかえだな」
佐倉 光
処置台の横に、必要な臓器が入った箱、血液タンクを並べる。
佐倉 光
臓器の入れ替えを開始します。
大きく切り開いたら、一つずつ声を出しながら流れ作業で入れ替えてゆく。
入れる前には臓器を軽く触ったりして、変な物が入っていないか、変な物がついていないかはよくよく確認しながら。
佐倉 光
「ここからはスピード勝負で一気にやるぞ。手順の再確認したら始めよう」
牧志 浩太
牧志が決意の表情で頷く。
自らの腹に、大きく線を走らせた。
KP
あなたはその光景を、きっと予想してはいただろう。
それでも目の前に開かれたそれは、あなたに嫌悪をもたらした。

開いた中からこぼれ出たものが、生き物の内側であるということすら信じがたい。

大小さまざまな肉の塊、何ら統一感のない見た目と大きさをしたそれらが、死んでゆく脆弱なものどもの海に浸かって脈打っている。

歪められた胸郭の中を埋め尽くすのは、あなたを救った巨大な肺なのだろう、微かに空気に反応していた。
その下で、牙を備えた胃袋がしきりにのたうっては抗議の声を上げる。
腸は表面に鱗じみた質感を浮かび上がらせていた、それは長大な蛇にしか見えなかった。
人間と同じ臓物がないものもあった、代わりに暗闇を呼吸する臓器があった。
異常な高温を宿す臓器と低温を宿す臓器が隣り合い、怖気のする温みを生んでいた。
同じ臓物が二つも三つも置かれている下に、硬い楕円の球体が埋め込まれ、その中で光を嫌うものが息をしていた。

それは生き物の中身とすら思えず、しかし、いたずらに掻き回された生き物の中身だった。
何らの秩序もそこになかった。
よくこれで動けていたものだ、とすら思えた。

その中に人間の心臓が、触腕と何かの巣に張りつかれて微かに覗いていた。

その光景を脳があまさず捉えたとき、あなたの脳に呪文と作業の負荷が襲いかかる。
KP
▽佐倉さん 2【POW】(一時的)・4MP・1d4+1 SAN 消費
確認
佐倉 光
ここで発狂したらどうするんだw
あ、リセットはいりますか?
KP
あ、そうですね。それなりの時間休息したし、入ってもいいでしょう。
減少前の値で不定基準値リセットしてください。
佐倉 光
確定発狂ではないか。
KP
発狂したら、がんばれ。
佐倉 光
リセットしたから何とかっ
あとは最大値出さなきゃ大丈夫。
POW 13 → 11
そういえば、【POW】減少によるMP減少は考えなくても大丈夫でしょうか。
今更だけど。
KP
あっそうだ。
この【POW】減少は最大MPには影響しないものとしてください。
失礼しました、うっかり。
佐倉 光
はーい

佐倉 光
MP 11 → 7
1d4+1 Sasa 1d4+1→ 3+1→合計4
SAN値 52 → 48
佐倉 光
あぶな
KP
セーフセーフ

佐倉 光
ずっと壁越しに見ていた、とはいえ、やはり限界があった。
遠いし、角度的に見えないところも多かった。
悍ましい状態になっていると分かっていたし、その殆どを見たと確信していたのだが、
それが束になって襲いかかってきたとき一瞬目の前が真っ白になった。
そこは神秘の大宇宙とも呼ばれる人体ではなく、人間が触れてはならないものがひしめいていた。
生き物としての法則が違う物が、興味のままに身勝手に、だが怖気立つほど整然と合理的に詰め込まれて成立していた。
まるで子供が無邪気に遊ぶように、『似ているから』『使えそうから』『害はないから』というだけの理由で押し込まれたものたち。

酷い頭痛と吐き気がした。
ぱっと見て、これを元に戻せるとは思えなかった。
気が遠くなりかけた。
佐倉 光
牧志の顔を見下ろして、深呼吸をする。
大丈夫、いけるいける。顔の皮膚全とっかえまでやったんだ。
目玉もくりぬいて戻した。
舌も切って戻した。
常識で考えるな。一度移し替えた物は戻せる。
佐倉 光
よし、今こそ壁向こうで見ていた無為に思えた時間が役立つ時だぞ。
たまには役に立て、佐倉光!
自らの頬を叩いてヒランヤを握って気合いを入れる。
牧志 浩太
悍ましい混沌の上で、牧志の眼が決意を湛えて頷いた。
KP
対象が何であろうと、動き出してしまえば作業に過ぎない。
何度も打ち合わせた順番の通りに、牧志が切り、あなたが繋いでいく。
KP
何度も何度も見せられ続けた光景が、あなたに既視感をもたらした。
少しずつ少しずつ人体がすげ替えられ、秩序が破綻していく光景。

あれを見ていたからこそ、あれを逆回しにする方法が分かる。

呼吸が限界を迎え、詰めていた息をつく度に、少しずつ、少しずつ、目の前にあるものが、秩序を取り戻していく。

そうあるべき姿に立ち返っていく自信、実感。
何もかもこれで正しいのだ、と思えた。
KP
あなたはその作業の間、牧志とともに集中を保ち続けていなければならない。

二人とも【CON】×5で判定。
失敗した場合、HPに1d2のダメージを受けることで、作業を中断してしまうことを防げる。
佐倉 光
1d100 30 【CON】 Sasa 1d100→ 46→失敗
1d2 Sasa 1d2→1
HP 10 → 9
牧志 浩太
1d100 60 【CON】 Sasa 1d100→ 61→失敗
1d2 Sasa 1d2→2
HP 10 → 8

佐倉 光
疲労が手を重くし足を引くが、無理矢理気力で繋ぐ。
悍ましい生き物やその巣窟をゴミ箱に放り込んでゆく。
蠢く廃棄袋をきつくしめて牧志の臓器が突っ込まれていた展示台に積み上げる。
佐倉 光
「握力なくなってきた」
手がフワッフワの綿でできてでもいるかのような錯覚。
危険ないきものを刺激しないように注意深く光を遮断した箱に移してゆく。
牧志 浩太
「俺も」
牧志が弱々しい声で苦笑した、しかしその眼の光の強さは消えない。
KP
あってはならないものどもを取り出し、取り出し、追い出す。
気がつけば展示台の上には袋が山積みとなり、量の減った血液タンクの中から微かに見慣れた腕輪の銀色が覗いていた。

開かれた身体の中に横たわるのは、整然とした中身になっていた。
最後に肋骨を戻し、胸郭の位置をあるべきところへ押し込むと、蠢く皮膚と青白い脂肪の層の中に「人間」が出来上がっていた。
佐倉 光
牧志の中が次第に健康的で見慣れた色に戻ってゆく。
佐倉 光
ふー。まほうのちからってすげー。
こんなブロックみたいに簡単に戻るなんて。
いや全然簡単じゃねぇし死ぬほど疲れてるけど。
普通に考えれば絶対無理なことをやってるからな。
つぎはぎ
佐倉 光
これさぁー、死んではいないけど牧志の方が余程「継ぎ接ぎの肉」(某シナリオより)じゃん。
使う道具の差か。
KP
うーん、確かに。
無理やり(事故で)すり潰されたか、謎の器具パワーで一応は「手術」したかの違いかも。
佐倉 光
ああ、佐倉の場合は壊れた体そのものを作り直さなきゃならなかったわけですしね……
ちゃんと綺麗に取っといて貰えて良かったね!
 腕輪突っ込まれた血液や、内臓ペロペロさせられていた口や虫の巣ノーズその他からは目を逸らす

KP
牙のある胃袋は相変わらず、早く閉じろと鳴き声で不平を述べていた。
佐倉 光
ちんまりと我が物顔に居座る胃袋を見て考える。
キィッキーうるせぇなぁこいつはもー。
なんか言葉や感情が分かるような気がしてきちまうじゃねーか。
佐倉 光
「これさぁ、胃袋自体は牧志のなんだよな」
この寄生生物を追い出す手段を再確認しよう。
牧志 浩太
「……そう。
寄生してるわけじゃなくて、生きていないものや個別の生命がないものに命を宿らせる呪法だ、って話だった」
牧志は疲れた顔で、こめかみから汗を垂らす。
KP
喚き立てる胃袋には、引きつれた痣のような、判じがたい模様が刻まれていた。
胃袋自体が牧志のものである以上、他人のものと入れ替えでもするか、施された呪法を解くしかない。

しかし、呪法を解く方法は…… 見当たらない。
胃袋自体は牧志のものだ、というのなら、そのままでも問題はなさそう、ではある。
佐倉 光
「今回はここまでにしよう。で、あいつらに解呪について訊こう」
額の汗と良く分からない血だか粘液だかを拭い、息をつく。
佐倉 光
「俺もそろそろ限界だ」
牧志 浩太
「一気にやったもんな。
俺も、そろそろ目とか頭とか色々痛い。休もう」
牧志 浩太
「水くらい飲みたいけど、大丈夫かな」
傷跡もなく繋ぎ合わせられた腹を枯れ枝の指で撫で、呟く。

歪められていた胸郭や肋、背骨が人間の形に戻り、詰め込まれたもので所々膨れていた腹が戻ると、そこにいるのが「人型」のものだと認識できるようになってきた。
牧志 浩太
牧志は身体の様子を確かめながら、そっと上体を起こし、痛みや違和感がないことを確認していく。
牧志 浩太
「とりあえず大丈夫そう、だ。痛みや変な違和感はない。
ちょっと暫くバランス取るのが大変そうだし、内臓が動いてるか注意した方がいいと思うけど」
佐倉 光
「そうだな、一応確認はしたけど、実際に働いてくれないと意味がないし。
胃袋自体は元々お前のなんだし、食事や水は普通にとっていいんじゃないか……?」
牧志 浩太
「腸とか繋げたばっかり、って思っちゃうとどうしてもな。
まあ、でも口なんかも繋げた直後に飲み食いしたし、逆に何か不都合があったら食べてみれば分かるか」
佐倉 光
色々片付けて、血液タンクの中の腕輪COMPが回収できそうなら回収。
空になるまで触らない方が良さそうなら触れない。
KP
中に入っているのが血液であることを考えると、空になるまで開けるべきではないだろう。
これからまだ使うかもしれないし。
佐倉 光
とにもかくにも食事してまた仮眠取ろう……まだ大仕事が残っているんだ。

牧志 浩太
居住スペースのソファに身を預け、今度は牧志もあなたと同じものを食べた。

嬉しそうに鼻を鳴らし、歯と舌で存分に肉や野菜の食感を、滋味を味わった。
牧志 浩太
「美味しい」
そう笑うとき、ここに連れてこられてからのあらゆる瞬間で一番嬉しそうだった。
佐倉 光
「うん、美味しい」
こちらもここに来て初めての美味い食事だった。
ようやっと日常に帰れるのだという気がしてくる。
あとは牧志の手足……と尾、その他。何とかなるなら胃袋も。
まだ結構残っているのに、大分心が軽くなっていた。
佐倉 光
「少し休んだらまたあいつらに聞き込みに行くから、一緒に来てくれるか?」
牧志 浩太
「ああ、勿論」
牧志の笑顔に少し余裕が戻っていた。
諸々戻ったばかりでまだ慣れないのか、尾でバランスを取る癖こそ抜けていないが、立ち姿も人間の立ち方に近づきつつある。
牧志 浩太
胃袋は十分に咀嚼された食べ物がやってきたからか、ことさら動くことはないようだった。

一度だけ不平を言うように腹のあたりで鳴いたが、それからは何も言わなかった。
佐倉 光
水と食料を人数分持って行く。
まずは居住スペースにいた奴らがいる方をノック。
佐倉 光
「どーもー。
情報ちゃんとあってたし、今日も食事持ってきましたよー。
質問があるんだけど、答えてくれます?」
佐倉 光
「ここから移動するのに使える交通手段について。使うのに何か条件があるならその方法も。
あとは、胃袋に牙生えちゃってるやつの解呪方法について」
KP
交通手段について問われると、少し沈黙があり、それから悔しそうな声が応えた。
「……麓への行き来は我々の協力者が管理している。我々の一存でどうにかなるものじゃない」
「うーん、被験体ちゃんたち麓に出たいんですよね? 
協力者さんに言ってみたらどうです? 麓で実験続けますって。
ちょうど明日の夜来るはずですよー」
「それで通じるわけないでしょう……。
どうしても出たいなら、降りられるだけ降りて救助でも頼むんだな」
KP
解呪について聞かれると、室内で何事か話しているようだった。
あの男の声も微かに聞こえる。
しかし返事は、
「ない。少なくとも我々の知る所ではない」の一言だった。
佐倉 光
「あとは上司だか観察者だかにかけ合うしかねーってことかよ」

一応あの男にも直接問いかけてみるけど、何か答えは返ってくる?
KP
直接問いかけても、何も答えは返ってこなかった。
かりかりと微かな音がする……。
「リーダーは実験結果を服に書いてますよー。できる限り残しておくんですって」
佐倉 光
へー。こんな状況じゃなきゃ気が合いそうだけどね。
こんな状況だからよりムカつく。

水とパンと栄養剤だけ放り込む。

佐倉 光
「牧志。このままじゃ明日その上位存在と遭遇しそうだな。
ちょっと外の様子を見てくる」

というわけでエレベーター作動させて外に出てみる。
KP
……外に出ると、足元の暗闇と天上の光があなたを出迎えた。
月明かりの下、ぼんやりと浮かび上がる、群れなす木々。
頭上に輝く月をおいて光はなく、彼らが言ったように道もない。
〈目星〉-20%で判定。
佐倉 光
1d100 78 〈目星〉 Sasa 1d100→ 89→失敗
KP
ここにはただ、暗闇しかない……。

翌朝になれば再挑戦してもよい。
または、牧志をここに連れてきてもよいだろう。
佐倉 光
牧志連れてきてみようか。
牧志の方が俺より目がいいし。
牧志 浩太
「真っ暗だな……。
随分人里から遠いみたいだ」

牧志の腕が楽しげにも見えるリズムでゆらゆらと揺れだした。
今にも駆け出そうとする犬か何かのように、脚がそわそわと動いている。
KP
牧志も〈目星〉-20%で判定。
1d100 78 Sasa 1d100→ 42→成功
牧志 浩太
「! ……佐倉さん、あっちに何かある」
牧志は手足を躍らせながら、鬱蒼と木々が積み重なる一角を向いた。

見れば、そこには何かわだかまる塊がある。四角く背の低いそれは、何かの機械のように見える。
佐倉 光
近寄って調べてみる。
牧志 浩太
牧志が懐中電灯を点け、周囲を見回しながらあなたと共にそちらへ近寄る。
彼が懐中電灯を点けて辺りを照らした途端、腕や脚の揺れが収まる。
KP
それは古ぼけた作業車か何かだった。
研究所にあった機械などとは同じようには見えず、どうやら人の手によって投棄されたものなのか、周囲にがらくたが転がっていた。
投棄されたとはいっても本格的に壊れてはおらず、修理して燃料を入れれば走れそうに見える。

また、これは道路のない所を走破するためのもののようだ。
佐倉 光
「一応使える可能性はある……けど、心許ないな。
あいつらはこれを使って外出していたとは思えないけど。
倉庫に燃料がないか探してみるか」
佐倉 光
「明日には何か来るってんなら急がないと。
またあの部屋に逆戻りなんてかなわない」
急いで戻って少しだけ休憩しよう。
牧志 浩太
「ああ。今度戻されたら同じ手だって効かないだろうしな。
スマホ、圏外だったけど動くようだったから、時間見ておくよ」
佐倉 光
「そうだな、寝過ぎないように気をつけよう」
KP
休憩を取ると、疲労がずしりと肩にのしかかってくる。
このまま寝台に身を横たえてぐっすり眠りたい、そんな誘惑が目の奥で明滅した。
佐倉 光
ダメだ。ここで眠ったら、目覚めたときにまた視界が真っ白で
首輪はめられて目覚めることになるぞ。

体も瞼も重い……。
KP
ふっと一瞬、意識が途切れた。

コメント By.佐倉 光
後始末だけ、といえばそうなんだけど、これもまた互いに楽しければ長くやれてしまうのがオリジナルシナリオの利点。
行方不明期間最長更新だよ、もう……

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「勿論だよ」
「一度目も、二度目もね」

TRPGリプレイ【置】CoC『青白い馬』 波照間&東雲 1

「随分、静かな夜ですね」

TRPGリプレイ【置】CoC【タイマン限2】収録シナリオ『Look,LOOK Everyone!』 佐倉&牧志 1

「お、佐倉さん」
「よう、東浪……見るなっ」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


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