こちらには『Good morning ALL』の
ネタバレがあります。
本編見る!
KP
それから二日ほど歩くことになった。
行く手には神の像だけではなく、都市のようなもの、それといまだ活動中の活火山がさらに先に見えた。
噴煙を噴き出すそれは、いまだこの星が完全に死に絶えたわけではないと示すかのようだ。

無数の岩に見えていたものが都市の残骸や砕けた像であることが分かってくる。
進むにつれ、建造物であったらしいものが視界に多く入るようになる。
人や動植物の形を残した像も散見されてくる。

更に進むと、完全な形を残した人や植物の像がぽつぽつと見えるようになった。
どうやらこの町は突然石化させられたようだ。
そのあたりにはまだ建物の形を保っているものもあり、それらは神殿のようだった。

不思議な事に、完全な形を残したもののなかには、青白い球体の光が上がり続けているものがある。
そういったものたちはじっと見つめていると、今にも動き出しそうな気さえするのだった。
サキ
「ここな、まるで人間がいるみたいなんだ」
要 紫苑
「すごいな、まるで生きているみたいだ」
サキ
「全部石だけど、うん。
俺様、ここで生きてるごっこしたことある」
サキ
「そうだ! 
ほんとに話してくれるやつ、いないかな。
なーあ、誰か話してくれるやついるー!?」
要の肩に乗って、呼びかけながら石像の間をゆく。

数百年も数万年も、何回繰り返しても、崩れていく以外の出来事なんてなかったけど。
要がいたら、何か変わるんじゃないかって思ったんだ。
要 紫苑
「まるで生きているような……もしほんとうに生きていたら?」
要 紫苑
「この石像に魂が残っているとしたら。
体が石化したことで話せないだけだとしたら」
サキ
「……あ……、」
要の言葉に、あ、と声が漏れた。
そんなことって。そんな、ことって、あるかもしれない。
ぜんぜん実感とかないけど、記憶の中に意味もなく溜まっている知識は。
そういうことが「ない」なんて言えないって、知っている。
サキ
「もしか、したら。ほんとに」
さっき読んだ、魔術書に。
そういうことに使えるかもしれない魔術が、書かれていたんじゃないか。
サキ
「俺様、そんなこと、考えたことなかった」
ただの石だなって、ずうっと思ってた。
要 紫苑
「話してみたくないですか?」
KP
要は自らを指し、言外に「依代に自分を使っても良い」という。
サキ
「話して……、みた、いけど。
で、でも。さっきのあいつみたいに悪意があったら、要が乗っ取られちゃうんだろ。
俺様、要が乗っ取られちゃうのはやだ」
ぶるぶると首を振る。

サキ
あ、そっちか。《銀の光線》かと。魔術的異常かどうか不明ですが。
《銀の光線》正気度コストがあるのでサキは使えないし、要さんが使うにもコストが高いのが難点。
KP
そう、正気度の問題があるんですよ光線。
サキ
なんですよね。要さんの正気度も有限だしな。
KP
ああ、《銀の光線》については使うことを想定されていないんだけど……
【アイデア】もしくは〈クトゥルフ神話〉知識で判定どうぞ。
サキ
1d100 99 〈神話〉知識 Sasa 1d100→ 15→成功

KP
この石化は魔術によるものではないようだ。
なにか想像を絶する強力な力によるものであるらしい。
《銀の光線》での解呪はできないだろう。

サキ
おっと明言が登場した! ありがとうございます。
大事な正気度を無駄にせずに済む。
その上、そもそも要さんは《銀の光線》覚えてなかったですね。うっかり。

要 紫苑
「そうだな……この人なんかは?」
KP
要は人の良さそうな顔をした若者を指した。
青白い球がふわりふわりと漂いながら空へと舞い昇っている。
要 紫苑
「もし話ができる人がいるなら、話した方がいいと思いますよ」
サキ
要以外の他者という概念を忘れて久しいので、人のよさそうな顔…… と人のよさが結びつかない。
ちょっと考えて、もしこいつが要を乗っ取っちゃったら、もう一回使って追い出そうと決めた。
要 紫苑
「食料庫などないか訊いてみてくれませんか」
サキ
数万年残ってる食べ物。あるのかな。
でも、「何か」はあるかもしれない。
食べる物がなかったら、要は死んじゃうんだ。
覚悟を決めて、そいつに向き直る。
サキ
魔術、なんてものがほんとにあるのか。
さっきの魔術書に書いてあった呪文が、ただの物語とかじゃなくて、ほんとのことなのか。
それに対する答えは、「ある」し、「ほんとのこと」だった。
俺様、それを「知ってる」。
サキ
その若者に向かって《魂の抽出》を使用し、魂を要に移す。
KP
8MP消費してください。
サキ
MP 14 → 6

KP
青年の像から青白い光が要に向かって流れ込み始める。
要は瞼を震わせ、そして目を開いた。
その口が開く。
KP
「うっっわ!? 高い!? 高い高い! ふわぁぁぁ、僕を動けるようにしてくれたのはあんたかい!?
うわぁ、動ける! はぁぁぁ、素敵だぁぁ! ああ、口貸してくれてありがとう。嬉しいなぁ、この中退屈なんてものじゃなくて、あああ」
KP
要は、否、青年はあなたの手を握ってブンブンと振った。
感謝の握手のつもりらしい……
サキ
「えっえっえっ、えっそう俺様だけどほんとに生きてた? 生きてた!?
すごいな生きてる!? いたたたた俺様小さいから程々にしてほしい!
生きてたのにずっと石だったのか! 俺様ただの石だと勘違いしてた! 
仲間の上で踊ったりしててごめんな!」

うっかり青年のテンションにつられて多弁になりつつ、大いにキャパオーバーする。
こんな速度で言葉を投げつけられたのは初めてだ。
言葉なんて聞いたの自体、要が目を覚ましてからだけど。
KP
「あーいいよいいよ、あんた随分前にも来てたろ? なんとなーーーく覚えがあるよ。
いやー生きてるっていいなぁ!」
KP
ハイテンションで喋った後、突然要の雰囲気が変わる。
要 紫苑
「……体、貸してるだけですからね」
KP
どうやら本来の体の主である要の主導権はそのままらしく、話すこともできるようだ。
サキ
「よかった、要もちゃんといるんだな」
要の声を聞いて、心底安堵した。
KP
「分かってるってぇ、ちょっと深呼吸させてくださいよ。はー、すーはーすーはー。ああ空気が美味しいちょっと埃っぽいけど。
お兄さん可愛いお連れさんだね、ニクいなぁこんな状況なのに爆発して? 火山爆発したかなあはは」
KP
要は心底げんなりしたような顔をした。
要 紫苑
「……サキ。対象変えましょう」
KP
「いーやー、そんな冷たいこと言わずに!」
サキ
「にくい? 何がにくいんだ? 火山??
あ、そうだ。要が腹空かせてて、俺様、要が食べられるもの探してるんだ。
何か残ってないか?」
にくいで肉を連想した。火山の爆発? は何の事なのか分からない。
こいつともっと話してみたいけど、それより食べ物だ。
KP
「食べ物かぁー。そこに商店があったし、あっちには食料庫があったはずだけど、ご覧の通り瓦礫になっちゃってるねー。それに随分時間が経っちゃっているから、食べられる物なんて残っていないんじゃないかなぁ」
青年は気の毒そうに言った。
サキ
「そっか……。そうだよな。俺様、そんな気はしてた」
当然の結論を話されて、すとん、と肩が落ちる。
俺様、何もかもが砂になったのを見てきた。
食べられる物なんて、残ってるはずがない。

……そしたら、要は。
KP
「折角生き残ってるんだからなんか食べたいよねぇ。うーん。神殿とかに残ってないかなー。
ごめん、良く分かんないんだなぁー。
分かるのはここが滅びた時の話ぐらいで……どう、どう、聞きたくない?」
サキ
肩を落としてたせいで、返すまでちょっと間があいた。
サキ
「話すの好きなんだな? 俺様も好き。
聞いてみたい。
他のみんなも生きてるのか? なんでこんななっちゃったんだ?
他にも、ほんとは生きてる人がいたのか?」
KP
「ああ、そのへんの光ってるやつ、大体生きてると思うよ。
そんな多くはないけど結構あるでしょ?」
サキ
「そうなのか。
生きてる人、いっぱいいたんだな。……俺様、知らなかった。
石ばっかり、じゃなかったんだ」
KP
「生きてはいるんだけど、全然動けないし、眠ることもできないし周りのことは良く分かんないし、
死ぬほど辛いんだよねー。
いや体貸してくれてほんとありがとうね! 一生感謝しちゃう」
要 紫苑
「……一生」
KP
「やーだなぁ、生きてんだって。あーでももうなんか満足。嬉しすぎて意識がふわーっとしてきた」
要 紫苑
「いや話。話聞かせて下さいよ」
KP
「あーはん、そうでした。
それは今から6万年ほど前のこと。新たな星が観測されるようになったわけよ。
それがなんか、一定の間隔で電波出してて、
それが光るようになってから天変地異だの変な病気だの流行り始めてね。
記録でしか読んだことないんだけど、それはそれは大変な大混乱になったみたいよ。
特に病気にかかったら悲惨で、苦痛で気が狂うほどで、実際数日で死んじゃうのに、その前に命を断つような人も多かったらしいねー。
そんな時代に生まれてなくて良かった。いや別の原因でこんなんなってるけどねー!」
サキ
「変な病気って、要のやつかな」
要 紫苑
「そうかも知れませんね」
サキ
「あれ? おまえがいたの、もっと後だったのか?
その病気、おまえがいた時にはもうなくなってたのか? なんでなくなったんだ?」
KP
「そうそう、それで一回滅びてんのよ。
その星みたいだったグロースって神様のせいでね。
その電波ってのがじつは歌だったってんだから驚きだよね。

その歌を聴いちゃった不運な星、地球は、その神様が近づいたことで目が覚めた神様たちや化け物でもうぐちゃぐちゃ。
その頃大体死んだらしいね。
だからさ、病気なくなったのは宿主になる人間がいなくなっちゃったからだよ」
要 紫苑
「……そう、ですか……」
サキ
「……そっか……、
それでみんな、いなくなっちゃったんだな。
神様がみんな、食べちゃったんだ」
KP
「あーそんでそんで、ここがこうなってるのはも一個別のアレがあってさー」
サキ
「別のあれ? あのタコのやつのせいか?
食べられなかったかわりに石になっちゃったのか?」
KP
「あーそうそう、そのもーちょっと前のことね。うちら随分長い間海底にいたんだけど大陸浮上しちゃってさ、その機会にどの国がどこの領土取るかとかそういうのでモメにモメたんだなぁ」
不定の狂気
KP
こんな謎テンションでさらっと語られる地球滅亡。
サキ
サクッと語られた。謎テンションな若者かわいいぞ。
KP
多分多弁症不定かなんか。
サキ
ということは石像になってる間、ずっと頭の中で多弁症していた可能性。
KP
可能性あります。
サキ
大変だ。
KP
サキが来るたびにウェイウェイしてたかもしれない。
サキ
この謎テンションで必死に話しかけていたけど、気づかれることもなかったんだなぁ。

KP
青年は蕩々と語る。

ムー大陸での争いは、中でも宗教戦争が大きな問題となった。
ムー大陸の墓所であるルルイエに眠る大いなるクトゥルフ等を崇拝する客人神信仰と、豊穣の女神シュブ=ニグラスを崇拝する土着神信仰で大きく二分された。
ゾス星と呼ばれる外銀河に属す星から飛来したとされるクトゥルフ(ゾス星系) の一行は、主神クトゥルフ、第一子ガタノソア、第二子イソグサ、第三子ゾス・オムモグの4柱おり、いずれも神というよりは特殊な能力を備えた異星人というのが科学的な見方だった。

中でも、クトゥルフの第一子とされるガタノソアは、細胞の動きを停止、硬化させる恐ろしい能力を有しているといわれ、かの生物を刺激しないように取り扱っていたのだ。

しかし、ガタノソアの脈動を抑えるという大義名分を得たゾス派の一団は、政治的にも大きな立場を獲得し、次第に既得権益を守る方向へシフトしていく。
要 紫苑
「一気に非現実的な話になったな。……今更ですけど」
サキ
「権力がいっぱいいてすごいな。
人間同士が喧嘩しだしたってことか?

……あれ? おまえたち、海の底に住んでたのか?
どうやったんだ? 息できなくないのか? 海の底に住める人間なのか?
俺様そっちが気になる」
KP
「あれあれ、お嬢さんムー帝国の科学力をご存知ない!?
海底で生きるなんてこともできちゃうわけですよ。はー、この科学力をもってしても滅びを回避できなかったわけで、神の力ってのはおっそろしいものなんだなぁ。

でね、そのゾス派ってーのがぶいぶいいわしてたわけなんだけど……」
KP
これらを抑えるために立ち上がったのが、シュブ=ニグラスを信仰する一団の神官だった。
ハイパーボリアの魔術と最新科学を合わせ、入念な準備の後、ガタノソアを討伐する作戦を実行する。

いざとなれば、彼らの主神であるシュブ=ニグラスに顕現いただく覚悟をしていた彼の成功を疑う者はいなかった。
しかし、シュブ=ニグラス派は失敗する。

時を同じくして、ムー大陸の天文学者達は、グロースの電波を受信してしまったのだ。
ガタノソアが眠る、死火山であるはずのヤディス=ゴー山は噴火し、かの神が目覚める。
原作リスペクト
サキ
クトゥルフって「世界の無意味さを定義する、圧倒的な神」的な存在と認識してたけど、「神というより地球外生物で、ニャル様やアザトースより下の存在とされている」(ただし人間からしたら……)とか、「ゾス星系から来た」のくだりは知らなかったなぁ。意外と神格周りもSF感強い。
白蛆の襲来といい、原作がかなり絡められててこの話面白い。
KP
原作ネタが色々鏤められてるみたいなんですよねー
サキ
エヴァグのくだりやムー大陸あたり、原作の舞台や人物と絡める楽しさありますね。
白蛆の襲来は読んでないのですが、ダニッチの怪は読んでるはずなのにその辺のくだりを覚えてないということは、ウィルバーに気を取られたか。
KP
白蛆の襲来折角だから読もうと思ったんだけど、「白蛆の襲来」だと本などが引っかからなかったんだよなー。
青空文庫なんかにあったりするかしら。

ちなみに先日の戦い、神話知識で思いついた「脇腹」は、実際にエヴァクがぶっ刺した場所だったりします。
サキ
https://www.amazon.co.jp/ク・リトル・リトル神話集-ドラキュラ叢書-第-5巻-H-P-ラヴクラフト/dp/4336025800
意外にも、1976年発行の一番最初の日本語版がKindle化されてるようです。>「白蛆の襲来」収録
ク・リトル・リトル神話集 (ドラキュラ叢書 第 5巻)
KP
ほーえー。読んでみようかな。
私が読んだコミック版なんかには出てきていないネタばっかりなんですよね、この話。
サキ
アルハザードのランプとか黄の印、イグの呪いなど、わりとTRPGから入った人向けによさげなラインナップが揃ってるんですよね。
青空文庫にあるのはぼんやり始まってぼんやり終わる意味深さが強い初期の作品が多いのに対して、こちらは知ってる名前がいっぱい出てくる感じ。
ラヴクラフト全集メインに読んでたのでこの辺あんまり読んでなく、さっそく買ってみました。
KPも買ったので後で読んでみよう。

KP
「その途端、ここら一帯全部が石になって、石になっても生き残っちゃった不運な僕みたいなのは、こうやって石の中で精神すり減らしながら生き続けてきたってわけよ。
生きて? はいないかな? そんなとこ。どう、面白かった?」
サキ
「俺様びっくりした! 
すごいけど、話がでかくて整理しきれない!」
要 紫苑
「シュブ=ニグラス?」
要 紫苑
「どこかで聞いた名前だな……」
サキ
「あれ? シュブ=ニグラスって森の黒山羊だよな?
あのテープのやつが言ってた!」
要 紫苑
「ああ、そういえば。山羊がどうの……生け贄がどうの、と」
KP
要は眉根を寄せた。
要 紫苑
「私はそれに捧げられるところだったのか……?」
サキ
「そうなるよな。
あれ? でも、じゃあなんで要、捧げられてないんだ?
それとも、捧げられてこうなったのか?」
KP
「そっかー、そうだなー、じゃあ、ルルイエ神殿に行ってみれば?」
KP
若者は手を叩くと、建造物が多く残っている方向を指さした。
そしてそれはあの巨大な半人半蛸の像がある方向だった。
KP
「ゾス教のひとたちって多分どんな事が起きるかある程度予想してたんじゃないかと思うんだよねー。
だからなんか残ってる可能性とかあるじゃん?」
サキ
「行ってみる! ありがとな、いいやつでよかった。
えっと、名前なんていうんだ?」
KP
「僕ねー、チャーチ。
あはは、解放してくれてありがとうねぇー」
サキ
「チャーチ! 俺様、サキ」
KP
「ああでもさぁ、最近また火山の活動が活発になってんだよね。
あれがまた噴火したら、そっから地球であちこち噴火が起きて、
そんでガタノソアがもっかい起きて、全部石にしちゃうって神官が言ってたー。
そうなる前には死んでおいた方が幸せなんじゃないかなぁ。
僕にはもう関係ないけどぉ」
サキ
「そうなのか? 教えてくれてありがとな。

んー、俺様死んでも死なないからなぁ」
サキ
「行ってる途中にムー大陸の話も聞きたい。俺様気になる! 動物いた? どんなやつがいた?」
サキ
「なあ、ムー大陸ってどんなとこだった? 海の底で息できる機械があるのか?
お米炊く機械あった?」

そんな話をしつつ、要(とチャーチ)と一緒に、教えられたルルイエ神殿の方へ向かう。
サキ
「なあなあ、海の底ではどんな風に暮らしてたんだ?
魚飼ってたんだろ? 何食べてたんだ? どんな遊びしてた? 動物いた?」
KP
ムー大陸には海底から浮上した直後には動物がいなかったらしいが、外来種が移り住んでそれなりに繁栄していたという。
要 紫苑
「動物! たとえばどのような?」
KP
「なんかー、黄色い鳥とか。茶色い猿とか」
要 紫苑
「黄色い鳥。嘴の太さなどは? 雄雌の違いは? 渡り鳥ですか、それとも特定の地域に住んでいましたか?」
KP
「そんな細かいことまで見てないなー」
要 紫苑
「細かくないです! 大雑把な特徴だけでも!」
KP
「そういうのってオタクくさくない?」
サキ
「魚飼ってた? チャーチは何か飼ってた?」
KP
「魚飼うのはブームだったね。なにしろ海底じゃ飼える動物限られてくるしさー」
サキ
「陸に出て、みんなびっくりしなかったか?
魚たちはどうしたんだ?」
KP
そんな話をしているうち、チャーチの返事が返ってくるのに時間がかかるようになってきた。
返答もどことなく要領を得ないフワフワしたものになってゆく。
サキ
「……チャーチ? どうしたんだ?
おーい、チャーチ?」
彼の前で手を振る。
KP
「あはー、もう幸せすぎて……開放感……」
要 紫苑
「チャーチ、どこへ行くんだ!?」
KP
「僕もう死んでるんでぇ……じゃあそろそろ……なるように……なるわー。
はー、もう……感激……。思い残すこと……ないわぁ……」
KP
要の体から、青白い光がふわりと浮いて空中に漂ってゆき、ぱちんと弾けた。
サキ
「……チャーチ……。
消えちゃった、のか」
要 紫苑
「……消えてしまったみたいだ」
サキ
「そっか……。

いいやつ、だったのにな。なんで消えちゃったんだろうな。
死んじゃったのかな」
青白い光が弾けたところを、少しの間見ていた。
サキ
「なんか、あんまり実感、ないな」

サキ
チャーチ……。
出会うけど別れる、そしてまた二人で歩いていくんだなぁ。
KP
強烈に眠くなってきたのと、明日いつもの仕事ほどじゃないけど早めなので、そろそろ失礼いたします。
チャーチ君が騒がしすぎた。
サキ
はーい、ありがとうございました!
チャーチ君いいキャラだ。かわいかったよ。

要 紫苑
「彼は生きているとも、もう死んでいるとも言っていましたね」
この光っている石像が、実はみんな生きている、と言ってたけど。
動けもしない、眠ることもできずにずっとここに? 想像を絶する。
もしかすると彼は、自由より終わりを望んでいたのかも知れませんね」
サキ
「俺様以上にたいくつだよな。
そっか……。退屈なの、やだったのか」
KP
見渡せば、動植物問わずそれなりに光を放っている石像はいくつもある。
サキ
……ここの石、みんなそうなんだな。
要の顔を見て、ちょっと迷った。

他のやつとも、話してみたい。
でも、悪意のある奴だったら困る。
要の食べ物も探さないと。
KP
あなたは疲労していて、同じ魔法を使うなら少し休憩したいと思うだろう。
サキ
「俺様疲れたし、ちょっと休むか。
それから神殿? 行ってみよう。
他のみんなとも話してみたいけど、要の食べるもの探さなきゃだしな」
要 紫苑
「そうですね」
要 紫苑
「チャーチが言っていたことはほとんど理解ができなかったけれど、
今度火山が噴火したら世界中が石化する、と彼が思っていたらしいことは理解できました。
あと、それに対抗していた集団があったらしいこと?」
KP
火山は噴煙を吐き続けていた。
要 紫苑
「神殿に何か残っていると良いのですが」
KP
あなたは神殿にも行ったことがある。あそこにあるのは本の残骸やがらくた、異形の巨像だけだ。
サキ
「俺様行った時は、なんにもなかったんだ。
でも、要が一緒だもんな」
サキ
MP回復のための休憩を取ってから、神殿へ向かいます。
KP
では湧き上がる光を見ながら少し座ったりうたた寝をして休むことができる。
火山が近いからだろうか、気温も随分暖かい。
サキ
「何があるか分かってた? んなら、食べ物あるかな?」
要 紫苑
「あるといいですね……」
KP
要は小さなため息をついた。
サキ
「そうなったら俺様も石?
石になっても、話せたらいいのにな」
……石になっても話せたら。
そしたら俺様、要とずっと生きられるかもしれないのに。
要 紫苑
「話せはしないんでしょうね。
話せたなら君も寂しい思いをせずに済んだでしょうし」
サキ
「……うん……。」

何となく落ちる沈黙。
ぼんやりと光を眺めてると、見慣れた光がいつもより綺麗に見えた。
俺様、疲れてんのかも。
KP
静かな廃墟でゆらゆらと立ち昇る光を見つめていると、なんだか語りかけられているような気がしてくるかもしれない。
遠く遠くで地鳴りのような音が微かに続いていた。
KP
MPを最大値まで回復して良い。
サキ
MP 14

サキ
「んー……、おはよう、要」
ゆらゆらと立ち昇る光と、響く音。
いつのまにか寝てたらしい。
KP
長いことここでとどまっているうち、要は近くの様子を見てきたようだ。
先ほどチャーチが言っていた商店や倉庫にもやはり何も残っていなかったらしい。
サキ
「んー、そっか。だよな」
大きく身を起こして立ち上がる。
休んだおかげで、重たい疲れは随分ましになっていた。
サキ
「行くか、神殿!」
要の肩に飛び乗る。
要 紫苑
「はい」
サキ
要と一緒の時間が、ちょっとずつ減っていく。そんな気がした。

……最高の日って、来たら来たでこわいんだな。
終わるのが、怖くなる。

KP
あなたはチャーチが言っていた神殿の場所を知っている。
歩けばすぐに到着するだろう。

崩壊しかけた外観に合わず、神殿の入口は堂々と存在している。
かつて、迷宮のように入り組んでいたとされるルルイエは区画整備され、荘厳な建造物に変わっていた。

ガタノソア、イソグサ、ゾス・オムモグ、そして名前が削り取られた女神の像が並ぶ屋外礼拝堂があり、奥には巨大な大理石の扉がある。
サキ
「この名前ないやつが、森の黒山羊かな?」
要 紫苑
「そうなのかもしれない。
だとしたら何故名前が削られているのでしょう。
勢力争いに負けたからなのか、それなら像も壊されそうな気もしますが」
サキ
「壊すの面倒だった?」
要 紫苑
「そうかもしれませんが」
サキ
「要は神様に祈ったりとか、したことある?」
要 紫苑
「試験の時期や何かあった時には神社に行って祈ってみたりしていましたね。
苦しい時だけの、というやつで、験担ぎのようなものです」
サキ
「験担ぎってなんだ?」
要 紫苑
「いいことが起こりやすくなるように、というお呪いのようなものですよ」
サキ
「こいつも生きてんのかな」
要 紫苑
「この像からは光が出ていないから、中身はいないのでは……
神も石化するのでしょうか?」
サキ
「俺様たち神様? 倒したし、石にもなるかもな?」
サキ
要に色々と話しかけながら、見たことのある場所を歩いた。
今度は、こっちが沈黙を埋めるみたいに。
KP
サキは以前立ち寄ったことがある。
この中で、あの巨大な像がはっきりと見られる場所がある。
今までの像と同様、この像も生きているかのような精細さを保っている。
このあたりでは屋根や近くの建造物に遮られて見えないが、中に入ると像の全体を見渡せる場所に出るのだ。
KP
【アイデア】
サキ
1d100 60【アイデア】 Sasa 1d100→ 8→成功
KP
この先にある像はあまりにも、生きているようで、迫力がある。
今までのことを考えれば、要は生きているような禍々しい像にもショックを受けるかも知れない。
サキ
「なあなあ、あそこの瓦礫、顔みたいだ」

そんな話をして要の注意を下に向けながら、自分だけ像をちらりと見る。
何か、前と違うことないかな?
KP
二人で一緒に入りつつ、要に下を向かせる?
サキ
「要がいることが鍵になるかもしれない」と思っているので、二人で入る。
その上で、要に下を向かせる。
サキ
「ここの像な、生きてるみたいなんだ。
すごい形した『神様』だから、要が見たら驚くし、こわい。見ない方がいい」
そう話しておいて、それから要の注意を下に向ける。
要 紫苑
「怖い? 怖がりな方ではないつもりだけど」
KP
言いながらも彼は言葉に従う。

KP
あなたはここを訪れて気付くことがある。
以前には気付かなかった他者の感情というもの。
50メートルほどもあるそれは怒りを抱いている。
憤怒の表情に顔は歪み、振り上げた腕は今にも大地を叩き割りそうだ。
以前訪れた時には「そういう顔をして格好をしている」としか感じなかったものだが。

それは間違いなく、生きた大きな存在が石化したものなのだ。
その者は怒りを抱いている。
サキ
「あ……、」
ぞくりと背筋が震えた。
最初に、体がそいつを怖いと感じた。
次に、怖いと感じたわけが分かった。

そいつを、他者だって感じたからだ。
地面だって割りそうなくらいに怒っている、誰かだと。
サキ
前は違った。
そいつ、ううん、それは、ただの風景だった。
ただの、そんな形をした石だった。
サキ
前は違った。
それは、そんな顔だった。
ただのそんな顔だった。

「誰かが怒っている」ことの意味なんて、覚えてなかった。
「誰かが自分に何かをする」ことなんて、覚えてなかった。
サキ
それは、地面と一緒に俺様たちを叩き割るかもしれない、誰かだ。
KP
要は居心地が悪そうに視線を彷徨わせている。
彼もその様相を見ずとも、なにかを感じているのだろうか。
KP
〈クトゥルフ神話〉技能。
サキ
1d100 99 〈神話〉知識 Sasa 1d100→ 6→成功
KP
『この神はクトゥルフだ』一瞬そう思った。
しかし何故だろうか、わずかに違和感がある。

そしてまた、あなたはこの石像が何か伝えようとしている気がする。
サキ
誰かだ。
そう思ったとき、そいつが何か言いたがってる気がした。
何だろう。聞ける気がした、今なら。
KP
【POW】×2から順に、×7まで、成功するまで振ることが可能だ。
判定は成功した時点で終わってよい。
サキ
1d100 28 【POW】 Sasa 1d100→ 61→失敗
1d100 42 【POW】 Sasa 1d100→ 91→失敗
1d100 56 【POW】 Sasa 1d100→ 54→成功
【POW】×4成功

KP
『我を復活させよ……
さもなくば、貴様達の未来は永久に閉ざされることになる。早くしろ。ほんとに』
と声がした。
KP
※まだ情報はありますが会話の中で出します。
サキ
はーい。
KP
いま7と6の情報が出た。
サキ
なるほど倍率によって出る情報がある。
サキ
「喋った! なあなあ、復活したら何かしてくれんのか?
とかいって俺様たちのこと食べちゃうつもりじゃないよな?」
怖いけど、それはそれで普通に返す。
KP
『疑っているな貴様? 言っとくけど、我はクトゥルフではない。
我が名はサニド 旧神の一柱にして、旧支配者を撃ち滅ぼす者。
旧何々とか分かりづらいかもしれんが、とにかく違うのだ!
クトゥルフと似ているのは奴とは双子だからだ。
目の色が違うからよく見て』
KP
像の瞳は灰色の石だ。色もへったくれもない。
サキ
んー、と伸びあがってそいつの眼をよく見る。
灰色だな。石だ。わかんない。
要 紫苑
「サキ? 何かあった?」
サキ
「すごく怒った顔の神様? がいるんだ。
いまは石像で、でもほんとは石じゃないんだって。
そいつが、自分復活させないと俺達の未来が閉ざされるって言ってる」
要 紫苑
「神様と話しているんですか……?」
サキ
「俺様、ちょっと前に優しそうなやつに実は騙されて食べられそうになったの。
永久に閉ざされる? って噴火してみんな石になるってこと?
サニド、そいつをなんとかできるのか?」
KP
『そうだ石だ! みんな石……今の我も石だ、証明できぬではないか!
頼む……ら……ことを……』
言葉はぼやけてゆく。そこにはただ焦りと怒りだけが漂っていた。
サキ
「あっ待って、どうやったら復活できんだ!?」
慌ててそれを聞こうとする。
KP
何か喚いている気配はあるのだが、もはや聞き取れない。
怒りの気配はぼんやりとして薄れていった。

サキ
医師シナリオよそで回そうと準備中のせいで毎回石が医師になりそうになる。
KP
あるある
サキ
サキが突然名前で呼ぶのは、名前が分かったら名前で呼ぶものと思っているからです。
ルリム・シャイコースとは単純に会話することがなかった。
KP
【POW】高くはないんだよなー。
知覚判定すると目撃する程ではないとはいえ《SANチェック》振って貰うけど。
サキ
【POW】10で【POW】×3だと30%かぁ。
要さんの残り正気度と《SANチェック》のことを考えると微妙な所。
これ以上情報が得られると期待できないので、要に振らせるのはやめました。

サキ
「聞こえなくなった」
かくかくしかじか、と要に何があったか説明する。
要 紫苑
「この神を復活させないと恐ろしいことが起きる、と言っていたのか。
これも人と同じようにその火山噴火で目覚める神に石にされたということですか」
要 紫苑
「話を聞く限り、これ以上状況は悪くなりようがない気もする」
要 紫苑
「しかしどうやって復活させればいいのか?
先ほどの魔法では無理でしょうか」
KP
これについては、人間の体に神の魂なんて入れたらまず壊れちゃうのでやめた方が良いと分かって良い。
サキ
「えっ入れるのか? たぶん無理、要の体に入らない」
爆発! の身振り。
要 紫苑
「そうか。……大きそうですからね」
KP
ぴんとは来ていないようだが、無理ということで納得したようだ。
要 紫苑
「なんにせよ復活させた方が良さそうですが」
サキ
「だよな。
ここに知ってる奴いたりとか、読めそうな本とかないかな。
俺様来た時は残骸だけだったんだけど、今は要がいるし」
サキ
ここは大理石の扉の中?
KP
そういえばこの神像の後ろあたりに扉があって、中に色々とガラクタがあったような気がした。
色々見てきた今ならば、それらに意味が見いだせるかも知れない。
サキ
「そうだ! あの扉の中に色々あったんだ。
いまなら要がいるだろ、何か見つかるかな」
要と一緒に扉の向こうへ行く。
物語が動くとき
KP
この手のやつ、「今まではどうして気にしていなかったのか?」
という理由が特にないことが多いんだよなぁ。
今回は要と会って「他者理解」が芽生えたことがトリガーで色々なものへの解像度が上がったということでご勘弁を。
サキ
ですね。それまでは何もかもが「ただの風景」に見えていたのかなーと思います。
他者の存在も認識していなかったし。

あと、今までは「どうせ何もない」と諦めていたけど、
「今日はいつもと違う日だから、要が出てきた」「要のおかげで色々変わった、要がいればきっと変化がある」と思っているから、調べる気になってるのもありますね。
サキ自身の他者理解によって見えてきたことも、サキは全部要のおかげで変化が起きていると思っている。
KP
人間らしさが戻ってきた!
サキ
そう戻ってきた! 実際初期に比べるとかなり色々取り戻している。


コメント By.KP(要 紫苑)
ここねー、確かに注釈が怖いですよね普通。
しかし「情報が不確かだから」って迷ってる場合じゃないんだよ! で押すKP(と要)であった。

プレイ日:2025年11月7日 ~ 2025年12月17日

作者名: キメオール

配布・販売サイト: 【CoC】Good morning ALL

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