こちらには『Good morning ALL』の
ネタバレがあります。
本編見る!
KP
そこはあなたが先ほど踊っていた泉だ。
木々はいつも以上にいつもより大きく「めぇーめぇー」と鳴いている。
のたうつ巨木のような胴体に、その太さに釣り合う山羊の足を持った異形だ。
肢体から伸びているのは、よく見ると枝ではなく、薄黒いねじれたロープのような触手という方が的確に見える。
KP
近づくにつれ、要の歩調が段々緩やかになってゆく。
ちょっと期待とは違う風景だったのだろうか。
要 紫苑
「何なんですかこれは……」
KP
顔をしかめて木を見上げ、身震いをする。
泉には黄色みがかった白の水がたたえられていて、黒い木々とのコントラストがとても綺麗だ。
思った以上にナイス異形だった! 異様でいい
「なにって、木と湖。
この辺にだけは木があるんだ、すごいだろ。
木は伸びたりして変わるんだ! 変化する!」
要 紫苑
「これが木……? 湖? 何が入っているんだ……」
KP
要は渋面で水面を覗き込む。
奥の方でぼこん、と音を立て水が湧いた。
ミルククラウンが華やかに広がる。
KP
ぐぅぅきゅるるる、と要の腹から奇怪な音がする。
「要の腹が鳴いてる、何かいるのか?
要の腹も生きものなのか? 喋るのか?」
音を鳴らす腹を撫でようとする。
要 紫苑
「…………!」
KP
あなたが触れようとすると要は大きく身を躱した。
要 紫苑
「空腹なだけです。
このあたりに食べられるものはありますか」
KP
あなた自身は食事をしない。
しかしここの水が飲めるし腹の足しになることは知っている。
「腹減ったのか! 要は腹減ると腹が喋るんだな?
なんて言ってるんだ?

ここの水なら飲めるし、腹の足しになる! はず。確か」
水を手ですくって要に差し出す。

避けられて不思議に思ったが、要が訴えた空腹に意識がそれる。
そうだ餌! 生きものは餌がないと死んじゃうんだ。
要が餌がなくて死ぬのはやだ。
他に何か食べられるものはないだろうか? 山羊の脚とか。
怪しすぎる。>異様な環境で胡乱すぎる少女? が差し出す怪しい水
KP
あなたの言葉と突きつけられた不透明の液体に、要はたじろいで一歩さがった。
要 紫苑
「……腹は喋らな……」
KP
何か言いかけて、額に手を押し当てた。
小さく呻いて首を振る。
要 紫苑
「不要です」
「いらないのか? 腹減ったんだろ?
餌がないと死んじゃうんじゃないのか?」
KP
「んめぇぇぇェー」
KP
木々がざわめいて要を捕まえようとするかのように、ロープに似た枝を伸ばす。
さすがにこれは固くて人の顎では食べられないかも知れない。
というか木が枝で要を打つか捕まえるかしようとしているように見えた。
要 紫苑
「なんだ、化け物!?」
「あ、そいつ固いぞ。食べられない」
要 紫苑
1d100 47 Sasa 1d100→ 57→失敗
1d10 Sasa 1d10→7
1d100 85【アイデア】 Sasa 1d100→ 53→成功
KP
発狂したか。症状何にしようかなー
異食症で白いの飲むか☆
いいね👍
KP
あなたが声を上げると木々はざわめくのをやめて静かになる。
だが要は目を見開いて唇をわななかせ、手足を縮めてがたがたと震えた。
要 紫苑
「あ、ああ、ああ……」
KP
不明瞭な音を口から漏らし、目を彷徨わせていた要は、突如あなたの手を掴み、じっと見つめる。
要 紫苑
「うぅ、ああ、いいぃ」
KP
突然顔を寄せて貪るように白い水を飲み始めた。
よかった、飲んでくれた!
ちょっと安心する。要が死んじゃうのやだもんな。
すごく腹が減ってるみたいだ。俺様この水を飲んだことない? ある? 忘れちゃったけど、どんな味か知らないんだよな。
うまいかな? うまいといいな。
KP
あなたの手に温かで柔らかいものが触れる。
まるで獣のように、要はあなたの掌に溜まる恵みを舌で舐め取っていた。
「ふふ、ふふふ、くすぐったい」
温かくて柔らかいものが触れる感覚は心地いい。
笑いを漏らしながら、水を零さないように掌に力を込める。
KP
あなたはこれを飲んだことがある。
ほんのり甘い味だ。美味しい、と思えるだろう。
KP
要はあなたの手に残る水滴まで舐め尽くした後、悲鳴を上げて倒れる。
自らの体を抑えるように両手の指をみずからの腕に食い込ませて熱い熱いと叫ぶ。
目には涙がにじみ声は悲痛に歪む。

あなたが飲んだ時はこんな事、起きなかったはずなのに。
要 紫苑
1d100 45 Sasa 1d100→ 4→決定的成功クリティカル)!
KP
うぇぇ!?
つよいな要……
おおー、強い!
要 紫苑
2d4 【STR】 Sasa 2d4→3,3→合計6
2d4 【SIZ】 Sasa 2d4→4,4→合計8
KP
苦しむ要の体が軋みながら膨れてゆく。
【STR】 20
【SIZ】 27
KP
要さん服着られないな。
めちゃくちゃ大きくなった!?
これは服着るの無理ですな。【SIZ】27て。
KP
ローブを腰布にするしかないなー
腰布一丁で巨人状態で怪しい少女と二人きり……。
えらいことだ。

「要!」
突然の出来事に目を見開く。
なんだ、どうしたんだ。
俺様飲んだときはこんなこと起きなかったぞ。
腹壊したのか!?
「要! 要、どうしたんだ!? 要!」
肩に手をかけて必死に名前を呼ぶ。どうしたらいいか分からない。
KP
意味のない叫び声を上げ続ける要の体はどんどん巨大化してゆく。
手足が伸び、腕は膨れ、巨人のようになっていった。
悲鳴を上げながら助けを求めるように指先で大地を掻き、頭を抑えて泣き叫ぶ。
その声が段々弱くなって途切れた。
気絶してしまったのだろうか。目を閉じたまま動かない。
「要! なあ、生きてるか!? 要!」

やだ、やだやだやだ。死んじゃうのか!? なんで!?
生きて動いてた、喋ってた、知らないことをいっぱいしてくれた。
知らないものをいっぱい見つけてくれた。

要が死んだら、要も壊れて、崩れて、面白くもない石ころになる。
俺様、また退屈になる!
そんなの、いや、嫌だ!
「要! なあ、要! 起きて!」
要の体をよじ登る。
閉じられた瞼を、叫びながらぺちぺちと叩く。
KP
見上げるほどに大きくなってしまった要はさながら壁。
体に巻き付いていた布は裂けて、だらりと垂れ下がっている。
あなたが瞼を叩くと顔がぴくぴくと動いた。
しかしまぶたの隙間から見える目は真っ白で、すぐに目を覚ましそうな様子はない。
半開きの口から乳白色の水がこぼれ落ちて大地を濡らしている。
幸い、呼吸ははっきりしており、胸もゆったり上下している。
目覚めるのを待つしかないだろうか。
「要……」
生きてるみたいだ、よかった。小さく安堵の息をつく。

なんで、気を失っちゃったんだ。
俺様が水を飲ませたせい? 要は俺様とは違うのか?
でも何も食べないと餌がなくて死んじゃう。
また……、目を覚まして、くれるよな?
喋って、くれるよな?
このまま死んじゃわないよな?
半開きになった口を服で拭う。
要の胸の上で、目を覚ますのをじっと待つ。
今までからしたらほんの少しの時間のはずなのに、ずうっと、ずうっと長く思える。
※今の天体について。
昼間 太陽の力が弱まっており、気温は昔ほど上がりません。
夜間 月が遠ざかっており、月があった場所には青く輝き表面が波打つ星があります。
 星座も随分変化してしまっており、土星が異様に近く、肉眼でもリングが見えるほどです。

変化について、あなたはかつてとの差を知っていても良いし意識していなくても良い。

KP
輝いていた水色の星と月がゆっくり沈んで、ぼんやりした陽がじりじりとのぼる。
要の顔がちょっとずつ陽に照らされていくのが、変な感じだった。
早く、早く目を覚ましてほしかった。
要は死なない、生きてる、目を覚ますって、早くわかりたかった。
KP
わずかに地表の温度が上がり始める頃、要がかすかに呻いた。
そして頭を押さえてうめき声を上げ、ゆっくりと目を開く。
「要!」
開かれていく眼を覗き込む。
要 紫苑
「う……」
要 紫苑
「……あ、……ああ。夢……」
「……夢じゃない。ないよ、要」
KP
落胆した声が聞こえる。
それから様々な混乱や失望やなんかが目の中に閃いて。
要 紫苑
「……おはよう……あー、名前……」
「おはよう! 要、起きた! 起きてよかった!」
思わず要の顔に飛びつく。
要 紫苑
「小さ!?」
KP
最後に目を見開いた時に彼は大いに混乱していた。
要 紫苑
1d100 42【アイデア】 Sasa 1d100→ 48→失敗
KP
要はあなたの倍以上はある巨体になっていて、かなりみっしりとした筋肉に覆われた体になっている。
しかしサイズと体格が変わっただけで基本的には変化がないようだ。
要 紫苑
「小さくなった!? 一体、ここはどこ……」
KP
起き上がる彼の様子は痛みや苦しみなどはなさそうで、ひとまず落ち着いているらしいことが分かる。
腹からの怪音も聞こえなくなっている。
要 紫苑
「昨日の……場所?」
KP
大いに困惑はしているようだ。
「うん。
要、いきなり苦しみだしたんだ。
要が死んじゃうかと思って驚いた。

俺様小さくなってないよ。要が大きくなったんだ。
要も成長するのか?」
ほら、と建造物や巨木を指指す。
KP
あなたの体の大きさ。
自分が纏っていたはずのローブが無惨に引き裂けていること。
昨日死体の所から持ってきた筆記具なども小さくなっていること。
そして木々の高さ。
様々なものと見比べて、ようやっと自分が大きくなってしまったということを呑み込んだようだった。
要 紫苑
「あれと同じ……これのせいで体が大きくなっている?」
KP
要は腹に手を当てる。
要 紫苑
「……一応は……」
KP
要まだまともに【不老不死サキ】ちゃんと話す気ないからなぁー。
自分が考えていることなんかを全然外に出してくれない。
これでも独り言多めになっているけど。

いつになったら向き合う気になるやら。
事態を飲み込んでからかな。

後で自分がここにいたいきさつとか話すつもり……ではいます。中の人は。
不老不死サキ】が胡散臭すぎるのがいけない。
ゆっくり事態を飲み込んでもらおう。
KP
ところであなたは知っている。
現在地から東に数ヶ月歩けば、海を超えた先に氷に閉ざされた都市が見える。
それは、かつて科学よりも魔術で文明を発展させた都市だったようだ。

更にそこから進路を変えて南へ数日進めば、2000年台には存在しなかった新大陸がある。
ムー大陸と呼ばれているその地には、科学文明を極めていた都市がいくつもあったようだ。しかし、今は住人から建造物に至るまでのほとんどが石になっている。
天を突く巨大なタコに似た邪神によって滅ぼされたように見えるが、その邪神も、自身が訪れた時には既に石になっていた。

もしかしたらあれらを見れば要の気も晴れるかも知れない。
「そうだ!
ここから太陽が出る方に歩いたとこに、町の凍ったやつ? があるんだ。
全部凍ってて生き物いないけど、行くか?」
要 紫苑
「…………」
KP
要は諦めたようなため息をついた。
要 紫苑
「案内をお願いできますか……」
「もちろん! 任せろ、俺様何度もあっちに歩いてったんだ」
とん、と自分の胸を叩く。
KP
佐倉よりかたくなだなこやつ。
状況的に仕方ないといえば仕方ない。
要 紫苑
「あの。名前がないとやりづらいのですが。
君、本当に名前がないのですか?」
「ない! 昔はあったかもしれないけど、忘れた」
要 紫苑
「…………」
要 紫苑
「では、サキと呼びます」
「サキ! わかった、俺様サキだな!
名前だ! 大事にする!
なあ、なんでサキ?」
要の肩によじ登りながら聞く。
KP
あなたに問われて要は言いづらそうに口を濁した。
要 紫苑
「先にいたから……ですけど」
サキ
「そっか、先にいたからサキか!
ふふ、ほんとにそうだ。サキだ。俺様ずーっと先にいたもんな」
KP
喜ぶあなたを見て、要は少し居心地悪そうな顔をした……が、あなたがそれに気付いたかどうか。
サキ
「?」
要が変な顔をした気がした。
腹はもう減ってないよな? なんだろ?
要 紫苑
「……そういえば君、日本語が上手ですね?」
サキ
「俺様いろんな言葉がわかるんだ! なんでかは忘れた!」
要 紫苑
「そう……ですか。君はイギリス人ですか?」
サキ
さて俺様なに人だっけ? 覚えているだろうか?
KP
あなたの人種はさすがに覚えていない。
人種などという概念が意味を成さなくなってあまりにも長い年月が流れてしまったのだ。
サキ
「忘れた!」
人種も国籍も、意味がなくなって久しい。
地面の上に引かれていた境界を主張する人間はもういないし、俺様の見た目をどうこう言う人間もいない。
KP
肩に登ると座るに丁度いい広さだった。
視界が広く高い!
サキ
すごい、見晴らしがいい!
何度も見た風景が別のものみたいだ!
KP
高い視界の中で、一際大きな木がロープのような枝……触肢を今度はそっと伸ばした。
KP
「めぇー。めぇぇー」
木はそうざわめきながらゆっさゆっさと幹を揺らす。あなた方を抱き上げようというように何本もの触肢を差し伸べてくる。
サキ
「おっ、どうした?」
要の肩の上から、ひょいと触肢に乗り移る。
KP
あなたには分かる。
この木はあなたがたに『乗れ』と言っている。
確かにこの木は大きい。歩幅も広い。
この木に乗ってゆけば東の大陸にも何ヶ月もかからず着けるに違いない。
サキ
「なあなあ、こいつが乗れって言ってくれてる。
俺様はいいけど、要は途中で腹減ったりするだろ? 乗っていく?」
触肢の上から要を手招きする。
KP
要はずいぶん疑い深そうな目で木を見上げていた。
要 紫苑
「『木』なんですよね?
歩くんですか?
そもそも動くとして、行きたい方向に行ってくれるんですか?
それが突然襲ってこないとどうして言えるんです?」
KP
あなたは、この木がちゃんと頼んだように動いてくれるし、襲ってくるなんてことはありえないことを知っている。
そもそも木は歩くものだ。
KP
……歩くものだった気がする。
サキ
「俺様何度も乗っけてもらってるけど、襲ってきたり? とかしないぞ?
要の知ってる木は歩かないのか?」
ちょこんと触肢の上に座る。
KP
要は誘うように自分を囲む触肢を見上げ、首を振った。
要 紫苑
「ここは本当に地球で、ゴーツウッドなんですか……?」
サキ
「俺様の知ってる範囲ではそう思ってる。
俺様実は勘違いとかしてないか? は、俺様にもわかんない」
要 紫苑
「…………」
KP
要は周囲を見回し、あなたを見て、諦めたように肩を落とした。
要 紫苑
「乗せてください」
KP
木は要とあなたを引っかけ巻き上げてそっと持ち上げ、かなり上の方にある太い枝に乗せた。
その周りはあのロープのような枝で網のように囲まれていて、よほどの事が無い限り落ちたりしないだろうと思われた。
サキ
「ありがとうなー」
触肢の肌を撫でる。
こいつらが俺様と喋ってくれることはないけど、なんとなく習慣? 習慣ってなんだろ。
KP
ゆっさゆっさ。木は枝を揺らす。
そういえばあなたが独りでいた時、『誰かに話しかけよう』とはしていなかったように思う。
木々が沈黙していたのはそのためなのだろうか?
サキ
「そっか、おまえたちも話したら答えてくれたんだな。
俺様、ずっとずっとひとりだと思ってた。話してくれるやつ、いないと思ってた。

ごめん」
木の触肢に身を寄せ、小さく親愛の口づけをする。
KP
木は「めぇぇー」と嬉しそうにざわめいた。
下の方で小柄な木たちが万歳をするように枝を上げて揺れている。
サキ
なんだ、俺様ひとりじゃなかった。
どうしてか目頭が熱くなる。
KP
遙か高みから見下ろす大地はやっぱり不毛で、このあたり以外に生命の気配がなかった。
要 紫苑
「……信じがたい」
KP
悪夢だ、と言うような口調で要が呻いた。
そして寒そうに身を縮める。
サキ
「寒いのか? かわ持ってくればよかった」
KP
べりべりべり、という何だか痛そうな音が聞こえた。
気がつけば、どうぞ……というように木がカワを差し出している。
今の要の体を覆えるくらいの広さだ。
サキ
「えっ……、いいのか?
おまえ、痛いのかわかんないけど、痛いだろ」
木の肌を撫でて、そっとカワを受け取る。

そっか、こいつら俺様の言ってることがわかるんだな。
たいくつたいくつばっかり言って悪かったな。
要がいてくれたおかげで分かったかもしれない。要はすごいな。
サキ
「要、こいつが皮くれた。
これがあれば寒くない」
要の体にカワを着せようとする。
要 紫苑
「いや……それは……」
KP
迷ったようだが、最後にはカワを受け取って被った。
あのローブはもう彼の股間まわりを覆える程度の広さでしかなかったし、確かに気温は低めだったからだろう。
要 紫苑
「食料と水……
君は何を食べて生きているんです?」
サキ
「俺様は腹減らない!」
要 紫苑
「本当に? この何も無いところで、君はただひとり、飲まず食わずで生きているというんですか?」
サキ
「うん。俺様ひとり。だってなんにもないけど俺様生きてる。
あっ、こいつらがいてくれてるけど」
要 紫苑
「これは動物、ではないのですか」
KP
カワに触れて要は首を傾げた。
サキ
「動物なのかな?
木だけど動物? 
俺様、木だと思ってた」
要 紫苑
「見た目は植物とも動物とも言い難く、この皮は植物じみてもいる、
しかし動きや反応は動物、それもある程度知性を持ったものに見えます。
そういった概念から外れたものとした方が筋が通る。
一体これは何なのか」
サキ
「じゃあ動物と植物両方だな」
要 紫苑
「食べ物も飲み物も、この調子では期待できませんね……
あの水は確かにエネルギーになってくれるようではありますが、
二度もあのようなことがあったとなると、持ってゆくのも……」
サキ
「だよな、どうしよう。
要、あれ飲んだあとに苦しくなってたもんな」

食べられるもの、食べられるもの。
退屈と不変に埋められて、ぼんやりと曖昧な記憶の中を探る。
食べられそうな物は他になかっただろうか。
要 紫苑
「あの水は……ええ、空腹は消えましたが、あまり……」
KP
ふと見ると木が皮を剥がしたところから濁った樹液が出ている。
一応あれも食料になる……かもしれない?
サキ
「あっ」
痛そうに剥がれた皮の下から滲む樹液が見えた。

あー……。
うーん。こいつらに悪い気もするけど、要が食べられるものが要るんだよな。
サキ
「なあなあ、その樹液ちょっと貰っていい?
要が食べるものがいるんだ」
触肢の間を這っていって、樹液の滲むあたりに話しかける。
KP
どうぞ。というようにそのあたりにあった触肢が道を空ける。
その傷の近くに巨大な歯が生えた口があって、どうやらざわめくごとに聞こえる声はここから発せられていたようだ。
KP
「めぇー」
サキ
「ありがとう」
そうか、こいつ口あったんだな。そんなことも知らなかった。
触肢を撫でて、滲む樹液に手を伸ばす。
KP
白濁した液体が染み出ている。しかしよく見ると黒い濁りがあり、よどんでいる。
KP
要は嫌そうに顔をしかめた。
要 紫苑
「酷い臭いだな……」
サキ
「食べられるかな? 」
白濁した液体をすくって口にしてみる。白い部分と黒い濁りの部分の両方を味見。
KP
湖の水ほど甘くなく、エグ味と苦さが舌に感じられた。
刺激的な味がする……
要 紫苑
「今は空腹じゃないから……要らない」
サキ
「まずかった。だな、これは飲めないかも」
口を離し、苦笑いを浮かべて首を振る。
KP
木は幹を伸ばし、よっこいしょ、と根を大地から引き抜くと、のっしのっしと歩き始めた。
KP
「めぇー」
湖の側に生えている他の木たちがわさわさと枝を振ってあなた方を見送る。
サキ
木たちに手を振り返す。またな!
触肢の上に陣取って前を向く。出発だ!
サキ
要さんとの会話をきっかけに、サキのテンションと感情がわりと正常化しつつある。
「会話ができる相手」の影響力は強いですね。
KP
これから2週間の移動があります。
その間に要の事情をつらつら語ろうかな。
サキ
なるほどなるほど。
その間に事情を聞いたり話したりできそうですね。
KP
愛くるしい巨木ちゃんのイラスト。
サキ
わーお。思った以上に口がでかい。
巨木とは??
周囲の風景に対するサキの認識(サキ視点の描写)と事実がズレズレで楽しい
シナリオには禍々しく美麗なイラストがついています。ここで表示しているのは私がざっと模写したものです。

要 紫苑
「これ、東に向かってるんですか?」
KP
要は天を見上げた。
要 紫苑
「随分太陽がぼんやりしている。雲もないのに……」
サキ
「太陽なら前っからこんなだ。要が知ってる太陽は違うのか?」
要 紫苑
「太陽はもっと明るくて暖かかったですよ。
これではまるで雲の向こうにあるようだ。道理で寒い」
KP
巨体を縮こまらせて、それでも遠くを見つめて何かを探すように視線を彷徨わせていた。
サキ
「そうなのか。
すごいな、要はすごい世界を見てきたんだ。
もっと暖かい太陽か。いいな、俺様も見てみたかった」
要 紫苑
「本当にここは地球なのですか。人間もいない?」
KP
何度目かの同じ問い。それは今までとは違い、どこか確認するような響きだった。
サキ
「うん。ここは地球、たぶん。
何度も何度も歩いたんだ。ここ俺様しかいないから、退屈で。
形が残ってたのが石ころになって、砂になるまで、ずうっと歩いたんだ。
でも、なんにもなかった。誰もいなかった。

……でも。
俺様ずっとずうっと歩いてたけど、要のこと見つけらんなかったから。
だから、ほんとにいないかどうか、分かんない」

遠く見える地面を見下ろしながら、ぽつりと呟いた。
要 紫苑
「そうですか……」
KP
要はそれ以上はもう何も喋らずに地平線を見つめていた。
あなたが何か語るなら、希に相槌を打って話を聞くだろう。
サキ
こんなに喋ったことなんてなかった。
ふっと沈黙が落ちて、手足に降る寒さを感じる。
これが、要が感じてる寒さなのかな。
サキ
次の言葉が出なくて、なんとなく地平線の向こうを見たまま黙る。
KP
要があまりにも自分の状況や心情口にしないからやり辛いったらない。

このシナリオなんか人気シナリオらしい? ですね。
なんか意外な感じします。シチュは人気ありそうだけど、結構開始前には見えない重病人のあれこれがでっかい。(要はクリティカル連発していてあれこれしてませんが)
サキ
サキが胡散臭すぎるせいもあってお手数をおかけしております……。
そう、そういえば重病人なんですよね。
要さん重病人っぽくないなと思ったらクリティカル連発! つよい!
KP
いや、それはクリティカルとは関係ないんですよね実は。
さっさと話さんかい。
話します。明日か明後日にでも。

KP
では二人はその日は沈黙したまま一日を終えることになるかも知れない。
夜が近くなると要は持ってきていた筆記用具を広げたが、その巨大化した指に鉛筆は持てはしなかった。
要は小さな吐息をついて、小さなふろしきにそのメモを放り込んでしまった。
サキ
あらゆる言語に精通しているが、文字を書くことはできるだろうか?
書けるなら、要のその様子を見て、「書こうか?」と言い出す。
KP
日本語は難易度が高くない。書くことは可能だ。
サキ
では、要が書きたいことを聞き、代わりに書く。
KP
では、要は少しの沈黙の後、あなたと出会ってからのことを簡潔に述べた。
目覚めたら体が大きくなっていたこと。
少女と出会ってサキと名付けたこと。
知人の死体を見つけたこと。
奇妙な言葉の入ったテープレコーダーを聴いたこと。
奇妙な泉の水を飲み、これまた奇妙な……(少し迷って)巨木に乗り、東を目指したこと。

あったことだけを淡々と。
サキ
記憶を辿って、背を丸めて文字を書き連ねていく。
文字。記録。不思議な感じだ。
今までもこうやって何か刻んでたら、俺様忘れなかったかな。
でも書いてても全部崩れちゃったか。だめだな。
KP
もしかしたらあなたは今までにも、戯れに何かを刻み残そうとしたことはあったのかもしれない。
意味のあるものを残そうと試みたことはあるのかもしれない。
しかしどれもが数万という時の流れの無慈悲さに押し流されていったのだ。
データは失われ、書物は腐り、言葉は語られなくなり、石板は摩滅した。
そうして何もかもが意味をなさなくなってしまったのだ、果てしない時の中で。
サキ
淡々とした文字はやっぱり、ちょっと淋しく見えた。
KP
木は疲れを知らないように不毛の大地をのしのしと歩き続ける。
その歩みは平地も山もお構いなしに踏破してゆく。
KP
陽が落ちると周囲は真の暗闇となった。
「めぇめめぇ」
巨木は鳴いて足を止めた。
休憩するらしい。
サキ
「ありがとな。
要、今日はここで休憩みたいだ。真っ暗だもんな」
巨木の表面を撫でて言う。
いつもは時間とか、朝とか夜とかあんまり気にしてなかった。
ただただ歩いてるだけだったけど、要と一緒だと、何だか「旅」をしてる気がした。
要 紫苑
「……君はこれと意思疎通ができるのですか?」
KP
暗くて表情は見えなかったが、また「信じがたい」と言いそうな顔をしているのだろう。
サキ
「たぶん」
たぶんだ。俺様だって今の今まで気づいてなかったし。
でも、できるって思った方が楽しいよな。
KP
やがて要の呼吸が深くゆっくりになってゆく。
眠ってしまったのかもしれない。
サキ
「お休み、要」
俺様のとこに来てくれてありがとう、ごめんな。
もっと賑やかで楽しいとこにいたかったよな。

要の頬を撫でて、肩の上で丸まってこちらも目を閉じる。
KP
要の肩に触れると冷え切っていた。
あなたが触れるとほっとしたような深い息をつく。
巨木もほんの少し外気よりは暖かかった。
満天の星空のもと、二人は静かに眠りについた。
KP
巨木さん寝るの? とか視覚に頼ってんの? 目あんの?? とか分かんないけど、多分生き物だから大地に刺さってるところからエネルギー吸収してたり寝てたりすんじゃないかな!!!
サキ
きっと寝る寝る!!
視覚使ってなかったとしても、植物? なら昼夜のサイクルがあるかもしれないし。

コメント By.KP(要 紫苑)
『彼女』は要と名乗る男からサキという名を貰う。
独りで生きてきた彼女にとっては全てが意味に溢れ素晴らしいことだったのだ。

要くんまたクリティカル。これはもはや意地か。

プレイ日:2025年11月1日 ~ 2025年12月15日

作者名: キメオール

配布・販売サイト: 【CoC】Good morning ALL

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TRPGリプレイ CoC『キルキルイキル』加須&烏座(終)

「たのむでファミリー」
「包丁のこと普通はファミリーって呼ばない」

TRPGリプレイ【置】 CoC『DAZEMAZE:IT』KP・牧志視点あり版 k_5(終)

これは舞台裏を赤裸々に記したログです。 KPがドタバタしている様のほか、KPC側の行動なども見えます。

TRPGリプレイ【置】CoC【タイマン限2】収録シナリオ『Look,LOOK Everyone!』 佐倉&牧志 2

「さーて、実験……じゃなかった、食事を始めよう」
「い、いただきます。佐倉さん、こぼさないように頼む」



本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」



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