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こちらには
『七匹の仔山羊からの脱出』のネタバレがあります。

本編見る!
こんばんは
佐倉 光
こんばんは!
完全なるすっぽかし申し訳ない!
KP
いえいえ!
元々本来の日程ではありませんでしたし お疲れ様です
佐倉 光
時間感覚が完全に狂っておりました。
KP
定期卓ない日だと割とどっかいくんですよね時間感覚。
本来の日程じゃない日なのに遊んでくれてありがとうございます
佐倉 光
ありがとうございます!
今晩晩ご飯がものっっっすごく遅かったので一時間くらい感覚ずれてました。
KP
ものっっっすごく!
お腹空くやつだ
佐倉 光
よろしくお願いします!
KP
では始めてまいります よろしくお願いしまーす!

KP
管理室。
室内は相変わらず薄暗く、埃っぽいが、他の部屋に比べて少し清潔な印象を受ける。

家具の配置などもゆったりとしていて、調度品も居間のものより高級そうだ。
扉から見た正面には大きめのベッドが1つあり、柔らかそうな羽毛布団に埃が積もっている。
白い灰が残った暖炉の上には趣味の物なのだろう、小さな抽象画が飾られている。
ひざ掛けがかかった木製のロッキングチェアは暖炉の方を向いて静かに佇んでいた。

扉がある壁際に本棚があり、その隣に鎮座する背の低い机の上は少し散らかった印象を受けるだろう。
佐倉 光
さてと……机と本棚のチェックだ。
まずは机かな。
KP
その机は、太腿あたりまでの高さの背の低いものだった。
引き出しのついたその机は白く塗られていて、可愛らしい薔薇の花の意匠が施されている。
机の上には使いかけの化粧品がたくさん置かれているようだ。

ふと、あなたは引き出しが半開きになっているのに気づくだろう。
中にはノートと…… 小さな鍵だろうか?
華やかなリボンが結ばれた、細長い金属製の何かが見える。

〈目星〉。牧志は1/2。
佐倉 光
1d100 85〈目星〉1D100) > 14
牧志 浩太
CCB<=98/2〈目星〉1D100<=49) > 43 > 成功
牧志 浩太
「これ、机っていうかチェストみたいな感じかな。少し洒落た作りになってる?」
牧志が机の外枠を手探りしながら言う。
佐倉 光
「ああ、母親の化粧台ってとこか?
鍵とノートがある。あとは……なんだ、これ?」
リボンが結ばれた物体を引っ張り出してみよう。
KP
それを出そうと引き出しを引いて、ふと顔を上げたあなたは、浴室の洗い場で見たのに似た跡に気づく。

鏡だ。
ここにも鏡を剥がした跡がある。
この机は、ドレッサーだったのではないだろうか。
牧志 浩太
「ここ、少し凹んでるな。何か平たいものが嵌ってた跡か?」
KP
あ、描写が紛らわしくて失礼しました。
リボンが結ばれている小さな金属製の何かが、鍵のことです。
佐倉 光
あ、そうなんだ
KP
ですです。
引き出しの中に入っていたのは鍵とノートです。
佐倉 光
凹んでるのはどこ?
KP
ドレッサーだったこの机から鏡を剥がした跡です。
色々紛らわしくなって失礼しました。
佐倉 光
ああー。なるほどっ!
佐倉 光
ではノートを開いてみよう。
KP
リボンが結ばれた鍵は、ごく小さなものだった。
本格的な鍵というには短く、南京錠か何かの鍵ではないかと思わせる。
そして、ノートは日記帳か何かのようだ。表紙が薔薇の絵柄で飾られている。
好きだったのだろうか、薔薇。
佐倉 光
「バラって雰囲気の家じゃねーけどな。
南京錠の鍵っぽいの見つけた。
子供部屋のヤツかも」
牧志 浩太
「本当にな。……じゃあ、その鍵で開けられるわけか、子供部屋。
気が重いな。だからって開けないつもりはないけどさ」
佐倉 光
「それから、日記帳臭いノートだ」
開ける。
牧志 浩太
「ここの『母親』の日記帳か……。
舞台装置かどうかは置いて、少なくとも何か状況が分かるといいな」
KP
あなたは、日記帳らしいノートを開く。
それは日毎にきっちり記されたものではなく。数日、一週間空いてはまた開かれたりしているもののようだ。
佐倉 光
声に出して読む。
KP
それは、孤児院を開いたという記述から始まっていた。
少しでも社会に貢献したい、という意気込みを最初のページに持ってきたことには、何らか意味があったのだろう。
それから最初の方は、細々とした入り用な物の記述、やることのリストといった内容が続く。

いかにも慌ただしそうな記述が過ぎると、しばらくして孤児院で受け入れた子供達との暮らしに記述は移り変わっていく。
子供達とのちょっとしたやりとり。成長の記録。
熱を出して大変だったとか、そんな内容。
可愛らしい、元気に育ってほしいという祈りとともに、筆跡はいささか疲れている。

独りで切り盛りするのは中々大変だったようで、肌荒れが気になる、なんて溜息のようなぼやき。
佐倉 光
「……まともに見えるな」
息をつく。
それだけに、『ここ』に置いてあるのが不気味だ。
牧志 浩太
「……大変そうだけど……。いい人に聞こえるな」重たげな声で言う。
KP
かくれんぼの最中に、子供が1人いなくなってしまったらしい。
外の森も探したし、街にも協力願いをしたけれど、どこにもいない。
心配で、食事が喉を通らない、と書かれている。
残った子供達の世話をしながら、いなくなった子供を探す生活は、ひどく大変なのだろう。こんな記述が見えた。
●月●日
きっとストレスね、抜け毛も、肌荒れも。子供たちの声も耳につく。
気晴らしに、先日買い出しに行った時、本屋で見つけた美容の本を読んでみよう。
少しは調子も戻るかも。

ああ、自分がこんなに弱い人間だったなんて。
牧志 浩太
「……そうだな、大変だよな。ずっと探し続けるだけでも、なのに、残された子供達の世話をしながら、なんて」
牧志がぽつりと呟く。
佐倉 光
「想像なんかできねぇけどな」
佐倉 光
狼が成り代わった、のではないのかもしれない……
KP
あなたは、その記述に嫌な予感を覚えていただろう。
いや、予感ではなく、確信だったのかもしれない。

あなたは日記帳のページをめくる。
そこに書かれていたのは悍ましい内容だった。
●月●日
買った覚えのない本が混ざっていたけれど、興味深くていつの間にか全て読んでしまった。
人間の女の子の皮膚を使う美容パックの作り方。気色の悪い内容。吐き気がする。

それなのに、頭から、離れない。どうして。
KP
筆跡が揺らぎ、乱れてゆく。
佐倉 光
「ああ……」
そこを読む前に一瞬躊躇った。
思い出してしまう。ここで見た異様なもの。
KP
洗い場のロープにひらめく赤黒い皮。

鍋の中で煮込まれた赤黒い皮。

無数の蠅にたかられた赤黒い肉。

暖炉の中に積もるたくさんの白い灰。
牧志 浩太
「……佐倉さん?」
あなたの気配が揺らいだのに気づき、牧志が問う。
佐倉 光
「どうしてそんなものが効くなんて思った……」

悪魔使いの知識の中には、かつて若い娘の血で若返ろうとした女の情報もある……
ありうること なのだ。残念ながら。
牧志 浩太
「何か、あったんだな?」
佐倉 光
「こっからちょっと刺激が強いぜ」
読む。
牧志 浩太
そのページをあなたが声に出し終えた後、
重たい沈黙が、その場に一度漂った。
KP
ふと、次のページが目に入ってしまうだろう。
それは数日後の日記だった。
●月●日
あれから眠れない。

試してみてもいいのかも。だって、肌がこんなに荒れているし、眠れないし、食事も喉を通らない。
こんなのじゃもっと醜くなってしまう。
五月蠅いあの子たちを黙らせるいい機会かもしれないし。

少しだけなら大丈夫よ。きっと、大丈夫。
佐倉 光
「越えるな。ちょっとってレベルじゃねぇだろうが」
牧志 浩太
「……やったんだな……。やったんだな、あれも、これも、全部」
佐倉 光
「狼が入れ替わった方がマシだった」
優しい『母親』が変貌して行く様を、子供達はどんな想いで見ていたというのか。
佐倉 光
「悪趣味だ」
吐き捨てる。
これがリアルでも、舞台装置でも、最悪だ。
牧志 浩太
「ああ……。最悪だ。
どう受け止めていいか分からない……。最悪だ」
牧志 浩太
「この人、おかしくなってたんじゃないかと思うんだよ。疲れて、追い詰められて。
でも、それでも、こんなの。こんなの、どうして」
牧志 浩太
「酷い」
牧志 浩太
整理されていない感情を、牧志は切れ切れに吐き出す。
佐倉 光
「だからいなくなった七匹目を探してる、ってことか」
牧志 浩太
「ああ……。六匹の仔山羊は、六人の子供達は……。探してるんだ。最後の材料を」
牧志 浩太
「そういうことなんだろ、くそ……」
KP
日記はまだ、続いている。
佐倉 光
読み進める。
KP
その次の日付は、随分と長い日にちが過ぎた後の日付だった。
筆跡は見る影もなく乱れ、あなたは乱れた文字を苦労しながら拾う。
●月●日
こんなに効果があるならもっと早く知りたかった。
『黒山羊のミルク』、聞き覚えがあったけれど、屋根裏にいくつか置いてあった。これはきっと神様の思し召し。

うちの施設が女の子専用でよかった。
KP
変わらず衝動に支配された文字は、何度も書き間違いをしては消し、乱れては戻りながら、偶にふっと判読できるようになる。
それは、衝動的でありながら知性的でもあるような、そんな怖気を感じさせた。
佐倉 光
「なんだ『黒山羊のミルク』?」
牧志 浩太
「ミルク?」
佐倉 光
「屋根裏にある、と書いてある」
牧志の頭を見つめる。
牧志 浩太
無機質な山羊の瞳と目が合う。
佐倉 光
まだ続きはあるかな。
●月●日
いう事を聞かない3番を流して、新しいものを仕入れる予定。
孤児は余っているからいくらでも調達できる。
それにしても、よく読み聞かせていた童話に準えて懲罰をするのはいいアイデアだった。
大分言う事を聞くし、静かになった。

今後も実行する。
KP
そこからまた間が空き、長い日にちが過ぎた後の日付になる。
●月●日
No.6:再生中。脱走未遂の為流し予定。
No.7:良好。相性◎。潤い成分が多い? 再生次第再度採取。

最近外から物音がする。私の美容とミルクを狙っているの。
絶対にそう。窓に板を打ち付けて、扉に閂を取り付けた。
子供はしっかり仕舞ったし、これで大丈夫。

もう盗られない。
佐倉 光
「俺子供部屋開けないで帰りたい。
嫌な予感しかしねぇ」
KP
その偏執的な文体には、少しだけ覚えがあった。
狂気に駆られ外から来るものに怯えて、同じように窓に有刺鉄線を張ろうとした男がいたのではなかったか。
佐倉 光
それについてはつとめて思い出さない。
越えてはならないものを越えた者に情けは必要ない。
牧志 浩太
「……俺だって正直開けたくないけど、でも、外のあれ、母親か狼か、それともその両方か? あれの前に出るのも怖いしな……」
●月●日
採取した皮を顔に付けたまま眠ってしまった。
『黒山羊のミルク』で剥がさなくちゃ。
貼るのにも剥がすのにも使えて便利。
まるで一体化している様な、柔らかな心地。甘いいい香り。
佐倉 光
「なるほど……屋根裏チェックしないと」
牧志 浩太
読み上げた記述に、牧志が僅かに息を呑む。
「もしかして、俺のこれも、そのミルクのせいなのか?」
佐倉 光
「かもな」
牧志 浩太
「そういうことだよな。屋根裏チェックしないと」
佐倉 光
「それで遊んでる奴がいるんだ、きっと」
牧志 浩太
「ああ……。きっと、前みたいに。それで遊んでる奴がいるんだ」
全部、全部。悪趣味な舞台装置なんじゃないのか、その声には少しそう願う響きがあった。
●月●日
7番が家事の合間に隠れて採取の時間に見つからない。出来る限り美容の時間はずらしたくないからやむを得ず5番を使う。流しにするには肌との相性がいい為惜しい。

1番が脱走未遂。最近多い。ゆるせない。私のミルクを盗んで逃げる気なのだろう。流し。誰にも渡さない。外にいる私にもあげられない。私は私だし私は私だから絶対に誰にも私は譲れないから私が早くどこかに行く事を私は願う。
●月●日
家の補強済。もう二度と外には出ない、出さない。
No.1:本日使用。脱走未遂の為流し予定。
No.2:再生中。肌の相性は良好だが、盗もうとしている?
No.3:再生中。信用できない。
No.4:再生中。再生が遅い。わざと?
No.5:再生済。相性は普通。仕方ないので明日使用。
No.6:仕入れ待ち
No.7:流し流し流し流し
KP
日記は……、この一言を最後に、唐突に途絶えていた。
●月●日
美しくなりたい。誰だってそうでしょう?
佐倉 光
「偏執的だ」
理屈も効率も何も無いんだ。
手段と目的がすり替わってしまった感。
牧志 浩太
「ああ……。おかしくなってる……。
きっと、それを守ることしか考えられなかったんだ、もう」
牧志 浩太
「……誰だってそう、なわけないだろ……。
そうまでして美しくなりたい、なんて」
佐倉 光
俺には解らん。<【APP】 8
KP
途切れたと思った日記は、少し続いていた。
KP
あとはもはや何を思っていたのかすら分からない、美容記録のような機械的文章が続いている。
その字もどんどん乱れていき、最後には全く判読不能になってしまった。

SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1》。
佐倉 光
CCB<=73 《SANチェック》 (1D100<=73) > 90 > 失敗
[ 佐倉 光 ]SAN 73 → 72
火かき棒を握りしめる。
牧志 浩太
CCB<=60 《SANチェック》 (1D100<=60) > 85 > 失敗
[ 牧志 浩太 ]SAN 60 → 59
佐倉 光
気持ち悪すぎる上に、そんなのが外にいるであろうこと、子供部屋に哀れな犠牲者が残されている可能性を考えれば、平気ではいられなかった。
万一の時はやるしかないな。
牧志 浩太
「……くそ……」
牧志もきっと、同じ気持ちだったのかもしれない。
重たく吐いた声は、喉を辛うじてこじ開けて絞り出したかのような、苦しげなものだった。
佐倉 光
最後のページまでぱらぱらとページを送る。
KP
後にはもはや、判別しがたい線とインクの塊があるだけだ。
牧志 浩太
牧志があなたの手を辿り、強く握る。
佐倉 光
スマホを置いて鍵を取り、ポケットに入れる。
「さっさと出ようぜ、こんな場所」
牧志 浩太
「そう……、だな。
なあ……。ここの子供達って、みんな孤児だったんだよな」
佐倉 光
「らしいな」
牧志 浩太
「じゃあ……、もし、子供部屋に何か、その子たちの物か何か、残ってたとして。
子供達を探してたり、消息を知りたい人は、きっといないんだよな……」
佐倉 光
「それが俺達にとって唯一の幸い、と言えるかもしれない」
彼女らにとってはこの上ない不幸かも知れないが。
牧志 浩太
「そう……、だな……。
この仮面とあいつを何とかして出る方法を探して、出よう。さっさと」
佐倉 光
「大事なのはこれがリアルかそうじゃないかじゃない……
頭おかしい女が外にいるらしい、そいつをなんとかして出なきゃならないって事だけだ」
その本を取り出してみる。
牧志 浩太
「そう、だな……。それだけだ。俺達がどうにかしてここから出て、帰る、それだけだ」
佐倉 光
本棚をチェックする。

KP
本棚の手前には、様々な美容関係の本がぎっしり詰まっていた。
奥の方に育児や子供の発達段階の本も仕舞われているが、長い間手に取っていないのだろう様子がよくわかる。
取り出しやすい位置に背表紙が真っ黒で、ボロボロの明らかに異色な本が収まっている。
KP
本を取り出すと、真っ黒な表紙には何も書かれていない。ひどく古びた本だ。
佐倉 光
「もしかしてこれが例の本か」
開いてチェックしてみる。
KP
本を開いてみると、中身はまったく見知らぬ言語だった。
漢字でもなければアルファベットでもなく、何となく見聞きしたことのあるどんな文字とも一致しない。規則性すら分からず、のたくる線の群れにしか見えない。
そうしてページを捲っていると、その手が止まらなくなる。ぺらりぺらりと次のページを開き、目で追ってしまう。

「女の子供の顔の皮を剥がし、黒山羊の乳を用いて対象に貼り付け、数分余り待つ、そして……」
牧志 浩太
「佐倉さん!」
不意に、横から衝撃を感じた。視界からページが消える。
牧志があなたの持つ本を払い落としたのだ。
佐倉 光
「何しやがるんだ!」
佐倉 光
叫んで、あまりの自分の剣幕に驚く。
牧志 浩太
「佐倉さんの声が変だったんだよ。それ、あの本なんだよな?
読み上げながら、少しずつ上擦っていってた。魅入られるみたいに」
佐倉 光
「あ、ああ、たぶんそうだ……
その頭を剥がす方法が書いてないかと思って」
牧志 浩太
「だよな。でも、ごめん。明らかに不味そうだったんだ、さっきの声。止めなきゃいけない気がした」
KP
我に返って、ようやく自覚するだろう。
あなたは、ページをめくる手を止められなくなっていた。
剥がす方法を探していた? いや、違う。

あの悍ましい内容に魅入られかけていたのだ。
KP
佐倉さんのみ《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1》。
佐倉 光
CCB<=72 《SANチェック》 (1D100<=72) > 72 > 成功
佐倉 光
「俺も深山みたいになれないかな、なんて思った……
そんなの、考えたこともなかったはず……なのに」
佐倉 光
「興味のあるなし関係なしに洗脳してくる……」
牧志 浩太
「読むだけで魅入られるのか……。くそ、なんて本だ」
佐倉 光
「くそ」
暖炉の灰に埋めとこう。
KP
本は白い灰の中に埋もれていった。
佐倉 光
今まで見た物を考えれば、研究する気にもなれない。
KP
その時、また── 玄関の方から、ドンドンドン! と激しいノックの音が響いた。
それが『母親』だとすれば。
何のために子供を探しているのか、あなた達は知ってしまった。
KP
「開けて頂戴。開けて頂戴。お母さんよ、お母さんよ」
佐倉 光
火かき棒を握りしめて意識を集中する。
KP
「開けて頂戴、開けて頂戴。お母さんよ、お母さんよ」
その声は不気味な程にやさしく、甘い。
ノックの激しい剣幕にまったく見合わず、語りかけるような穏やかな声。
佐倉 光
あんたは不幸だった。だけど越えちまったらもう終わりなんだ。
俺達は生き残らなきゃならない。
同情はしてやらない。
KP
「お母さんよ、お母さんよ、お母さんよ」
やさしく甘い声は、次第に上擦っていく。
佐倉 光
相手が狼ではなく狂っただけの母親なら、まだ勝ち目はある。こっちは男二人だ。
……一人は貧弱で、一人はマトモに目も見えやしないが。
KP
ドン、ドン、ドンドンドン!
佐倉 光
呼吸を殺し、嵐が去るのを待つ。
KP
ドンドンドン!
「お母さんよ、お母さんよ、開けて頂戴、開けて頂戴」

「開けて頂戴」
佐倉 光
誰が開けるか。
KP
「開けて頂戴」
佐倉 光
じっとしたまま、扉の破壊音が聞こえやしないか耳をそばだてる。
KP
扉が軋んだような気がしたのは、きっと気のせいだったのだろう。
……ドン! と強いノックの音を最後に、声は聞こえなくなった。
佐倉 光
「クソが……」
牧志の山羊頭さえ取れていれば、静かになった時に外の様子をうかがうのも可能かと思うのだが……
牧志 浩太
「なんとか去ったか……
そういえば、思ったんだ。さっき、窓を打ちつけたって話があっただろ」
佐倉 光
「ああ」
佐倉 光
窓ないんだよね。
牧志 浩太
「窓って、どこにあるんだろうな。なかっただろ、これまで」
KP
これまで見た所に窓はなかった。
この穏やかな雰囲気の部屋にも、窓はない。
佐倉 光
「子供部屋はまだ見てねぇが、そこだけあるってのも考えにくいしな」
牧志 浩太
「そうなんだよな」
佐倉 光
「舞台説を推すよ、俺は……」
そうであってくれ。
牧志 浩太
「俺もそう考えたい、不自然な舞台だって思いたいよ……」
佐倉 光
それならクソなのは脚本家だけだ。
佐倉 光
「そうだったとしたら、外にいるのが『母親のマネをした狼』って説も出てくるわけで……
それはそれで勝てなさそうで困る」
牧志 浩太
「だとすると、どうにかする手段があると思いたい」
佐倉 光
「これが『ゲーム』なら、そうだろうな」
牧志 浩太
「ああ……。ここでお終いになる方の悪趣味ってのは、ちょっと考えたくないからな。
そうだとしても、何とかする方法を探すけどさ」
KP
あなたの手の中にある火かき棒が、ひやりとした冷たい温度を伝えてきた。
佐倉 光
「子供部屋に、行ってみるか」
佐倉 光
「行きたくねぇなぁ……」
牧志 浩太
「ああ……。行ってみよう」
牧志 浩太
あなたの呟きに、牧志はあえて応えなかったようだった。
ただ、大いに渋みの走った声が、彼の返答を物語っていた。

KP
切りが悪くて盛大にはみ出てしまってすみません、本日は以上です。
ありがとうございました!
佐倉 光
はーい!
ありがとうございました!
強さ
佐倉 光
なかなか意外と珍しい正統派だ。
まだ良く分からんことも多いけどね。
KP
日記の所とか、リアクション頂きたくて割とゆっくり目に進めたりしているのでそれなりの尺になっていますが、さくさく進めるとさくさく進むお話でもあると思います。そう、正統派。
佐倉 光
読むだけで本格的にまずい本は久々に見た。
KP
そうそう。読むだけで本に魅了される所CoC感あって好きです。
佐倉 光
シロー君なんて美形だし、効果ありそうだねぇ……なんて考えたらもう精神的ダメージが。
KP
シローの皮はそれはそれは美しい皮になるでしょうねぇ……。
佐倉 光
考えたから本を置いて行くことにしたのかもね。
KP
かもしれませんね。本に魅入られて一瞬『考えて』しまったのだし。
大層恐ろしくて狂っていて悍ましい事が行われているけどPC達には直接は関係ない人の行為である、ってあたりとても正統派だなと思うんですが、シローがいたがためにダメージが飛び火しちゃうあたり大層味わい深いと思います。
佐倉 光
「うわキモ」で済みそうなところが割とひびいてしまう。
佐倉は大人になったのだ。
KP
そうそう。そこで響いちゃうのはなるほどなーってなりました。
佐倉さんはもう一段階大人になったんだなぁ。
前にも一度「佐倉さんは大人になった」って話題が出ましたけど、そこからもう一段階大人になった。
佐倉 光
何人子供が犠牲になろうと、過去なら関係ないことの筈だったからね……
KP
昔の佐倉さんと牧志が一緒に探索してたら、子供達のことを気にかけている牧志を見てどう思ったんでしょうね。
佐倉 光
「今の俺達に関係あるのは外に気が狂った女がいるらしいって事だけだ」
が言葉通りで、子供の肉や骨は気持ち悪い背景でしかなかったし、子供部屋にこれほど「入りたくない」と思うことはなかったでしょうね。

「哀れんでも生き返るわけでも過去が変わるって訳でもないんだ」
今でもこうは思っているけど、「牧志はいちいち気にしても仕方のないことを気にしているな」とは今は思わない。前ならそう思ったし言ったかも知れない。
KP
そうかぁ。もしそうだったら少し違ったやりとりになっていただろうなぁ……。それはそれでいい流れになっていただろうとは思うけど。
そこに姿の重なる少年がいるから、もうただの背景には見えなくなってしまったんだ。
佐倉 光
俺も弱くなったもんだな。
KP
随分気を取られる物が増えて、背負う物が増えてしまったものですね。
思えば牧志と出会ったせいなんだよなぁ、だいたい。
佐倉 光
弱くはなったが、楽しめることも増えたと思うよ
KP
背景だった世界が、随分と重さと色を増したのかもしれない。
佐倉 光
どっちが幸せかはさておいてね。
KP
どこかの世界には、牧志と出会わないまま世界を背景に生きている佐倉さんもいるわけですしね。
あちらの佐倉さんも他人のために運命を願ったけど。
佐倉 光
きっと誰とも会わなければ恐れる物もなく刹那的に生きて、あらゆる物を操る楽しみだけをともに生きていただろうね。
KP
例えその先に破滅があろうとも、そこに恐れはなかったんだろうなぁ。
佐倉 光
まあ、佐倉も蓋を開けてみりゃ土台はお人好しだったってわけだ。
本物のサイコパスではないからね。
KP
ですね。
牧志は牧志でたまに何かアカンものが見えかくれするけど。
佐倉 光
牧志こそ心配だよ俺は……

ひとこと
佐倉 光
様々な出来事が見え始めるが、なにひとつわからない。
歪なこの空間で、何を信じればいいのだろうか?


【置】CoC『ヒナドリ ・ イングレイヴド 』 牧志&佐倉 7

「俺さ、今……すっごく怒ってる」
「俺もだよ!」

【置】CoC『刻の牢獄』波照間 4

「私の事を覚えている? 波照間さん」

【置】CoC【タイマン限2】収録シナリオ『Look,LOOK Everyone!』 佐倉&牧志 4

「畜生、勝手に死んでんじゃねぇぞ!  畜生、畜生、畜生!」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


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