TRPGリプレイ【置】CoC『ド〜プ・アップ・チリ〜』 牧志&佐倉

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こちらには『ド〜プ・アップ・チリ〜』
のネタバレがあります。

牧志 浩太

お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。

少し前に狂気に冒され、自分が不定形の化け物であり、自分の心や意思も化け物の模倣ではないのかと恐れるようになった。

佐倉とは友人。


佐倉 光

サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。とある事件より、体中の痛みに悩まされている。
基本悪魔を召喚して戦うが、悪魔との契約のカードを使ってその力を一時的に借りることもできる。
最近、牧志そっくりの異星人……の記憶を保持する物体X六人との契約を行った。

巻き込まれ体質らしい。
最近いきなり起きる不随意運動に悩まされている。牧志の心音を聴くと精神が安定するためか治まる。

牧志とは友人。


とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。


少し前に現れた6人の異星人。佐倉と契約して彼の仲魔として存在している。
その正体は、何にでも変身して喰らい殖える不定形生物だったが、事故により『人間』としての意識を持ち、増殖を抑えてこの星での人間との共存を試みている。




ド~プ・アップ・チリ~
ぽんかん様 作


KP
夢を見ている。見ている、と言っても夢なんて自発的に見れるものではないし、ならば『夢を見る』なんて表現はきっと正しくなくて、恐らく今の状況をきっちり言葉にするのなら『夢を見せられている』という表現の方が正しい。素晴らしい! あなたは今、正しさを得た。正しいことは良いことである。少なくとも間違っていることよりはずっと良い。世間一般の感覚をあなたが持っているのならきっとそう思うはずだ。
では、誰に夢を見せられているのか? それは、嘘臭い催眠術師かもしれないし、夢を司る悪魔または神様なのかもしれないし、潜在意識の中に眠るもうひとりのあなた自身なのかもしれない。確かめようがないのだから、あなたがいくらこのことについて思考を巡らせたって正しさは得られない。残念!
次に、どんな夢を見せられているのか? 胸踊るような大冒険? ゾッとするようなホラー体験? 心ときめく甘い恋?

否。

闇。

音も何も聞こえない、ただ視界いっぱいに闇が広がっている。
時折てらてらと闇の一部が油っぽくつやめく。闇自体は動かないのに、まるでその様子は何かの生き物のように思えた。
憔悴したあなたに押し寄せるのは、夢心地の浮遊感ではなく、単なる不安の波だけだ。
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1d3
牧志 浩太
1d100 22 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 80→失敗
1d3 Sasa 1d3→2
SAN 22 → 20
牧志 浩太
闇。闇。まっくらやみだ。

なにもないはずなのになにもないかどうかも分からない。
動かないはずなのに無限に蠢いて見える。ゆらめく。ゆらめく。

間違っていないものなんて何一つなかった。
最近はそんな夢ばかりだ。

自分の意思も世界の形もぐちゃぐちゃだ。絶えず思考をかき混ぜる暗闇のせいで、何が間違っていないのかももう、分からない。

絶え間ない闇はおそろしい。
そこに何ができるのか、何一つ分からないからだ。
佐倉 光
1d100 43 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 26→成功
KP
宇宙の果てのような闇があなたを包んでいる。心を蝕む暗黒が、四方から手を伸ばしている。迫る悪夢から逃れられない。目の前の闇の手がスローモーションのごとくゆっくりと流れて──ああ早く終わればいいのに、なんて願ったところで意味はない。
牧志 浩太
闇にゆっくり、ゆっくりと少しずつ握り潰される感覚で目が覚めた。少しずつ宇宙が迫ってきて、ぷちゅん、と潰れて終わった。
KP
このシナリオなんか地の文が小気味いい。
ニャル様が早口で実況している感。
牧志 浩太
ああー。確かに。実況調ですよね。
またそれが正気度減りまくって不安定になってる牧志にも合うったら。
牧志 浩太
ワオ。ジェットコースターさせられそう。
KP
だいじょうぶだいじょうぶ、回復シナリオだから。結果的に。
牧志 浩太
結果的に。
やっぱりジェッコじゃーん!
不定残ったままコレ、なかなか異様。
KP
※折角なので佐倉の後遺症、このシナリオまでひきずることにしました。

KP
────あなたは目を覚ます。ベッドの上で寝ていたようだが、どうやら、いや残念ながらここはあなたの見知った場所ではない。
それにベッドが軋む音もあなたの分だけでは済まなかった。哀れな子羊は他にもいるらしい。
牧志 浩太
「あ、ああ、ああああ」
そんな弱々しい叫び声で目を覚ますことも珍しくなかった。
牧志 浩太
「佐倉さん?」
ベッドが軋む音に気づいて振り返る。そうやって叫び声から目を覚ましたあとは、いつもそう呼んでしまう。
横にいたのがシローでも、東浪見でも。
牧志 浩太
こんなんなってたらそろそろ日常生活でちょこちょこ挙動が怪しいんじゃないかと思っております。>「佐倉さん?」
佐倉 光
「牧志!?」
KP
隣のベッドで同時に佐倉が目覚めていた。
KP
本来ならばこんな状況に多少なりとも驚いたり、嫌悪感を抱いたりするだろう。精神が疲弊気味ならばよりストレスを感じて当然だ。
しかしそんな気持ちが嘘だったかのように。何故か、理由はわからないが、非常に不思議なことに──あなたの心は静かな湖畔の水面のように穏やかになった。いや、リラックスしていると言ってもいい。
探索者は直ちに【6d10】を回復させる。
牧志 浩太
→合計36
SAN 20 → 56
佐倉 光
→合計44
SAN 43 → 63
めっちゃ余った
牧志 浩太
「……あれ? 佐倉さん?」

ぱち、ぱち、と数度またたく。
その一瞬あと、まるで長い長い悪い夢から覚めたかのように、なにもかもが穏やかになっていた。

何が自分を打ちのめしたのか、一つ一つちゃんと覚えているのに、なんだか気持ちが楽なのだ。

腕は相変わらず半分溶けているし、視線は佐倉さんの後ろから俺を見ているけど、まあ佐倉さんも俺も結果的に生き延びたしいいか、なんて気分になっている。
佐倉 光
「あ、ああ。ここはどこだろう? 俺達……何をしていたっけ。
どうしてこんな所で寝ているんだ?」
KP
佐倉も何が何だか分からないという顔をしながらも落ち着いている。
KP
ここは古びたアンティーク調の部屋だ。なんの変哲もないベッドが二脚あるほかは、暗幕がかかった窓らしきもの、テーブル、絵、扉が見える。
牧志 浩太
「分からないけど、何だか真っ暗な夢を見てたのは覚えてるな。
真っ暗なのに何かいるようで、怖くて怖くてたまらなかった。

目が覚めてしまえば夢、って感じだけど。

ここ、どこだろうな。
何だか妙に落ち着く気がするんだけど、知らない場所だし」
牧志 浩太
「何だか、妙に気持ちが落ち着いてるんだ。
数ヶ月はゆっくり寝て、何もかも癒したような気分。
……ほんとに数ヶ月寝てないよな?」
牧志 浩太
直前に何をしていたか思い出そうとしてみる。
KP
何だか寝たのが随分前のような気もする。
分厚い夢を見た後のようだ。
そういえば、佐倉と一緒に検査のため病院に行った……気がするのだが。
KP
あ、記憶について【アイデア】をどうぞ。
牧志 浩太
1d100 90 【アイデア】 Sasa 1d100→ 34→成功
佐倉 光
1d100 85 【アイデア】 Sasa 1d100→ 22→成功
KP
病院に行って、帰ろうとしていたはず、ということは思い出せます。

牧志 浩太
「そういえば検査で病院に行って……、でもここ、どう見ても病院じゃないな」
自分の服装や持ち物、状態を確認する。
KP
目立った外傷は見当たらない。
服装は普段着だ。

荷物はベッドのすぐそばにまとめられていた。
スマホに日記帳にボールペン、鍵などが入ったバッグも横に置かれている。
普段はポケットの中に入れているようなものがあるなら、それらは荷物の隣に置かれている。
佐倉の荷物も同様にきちんと纏められているようだ。
牧志 浩太
「荷物は……、あるな。
佐倉さん、COMP動きそう?」
佐倉 光
「いや……圏外だな。ここはどこにあるんだ?」
佐倉 光
「COMPもエラー起こしてるな。いつも通りだ、くそ」
牧志 浩太
スマホの画面を覗いて、日付が最後の記憶と合っているか確認する。
メッセージなどは来ていないだろうか?
また、ネットは通じているだろうか?
KP
今は昼のようだ。最後の記憶から一日が経過している。
日記の記述からも間違いないようだ。
牧志 浩太
「そういえば……、病院に行って、帰ろうとしてた所だったよな。
で、目が覚めたらよく分からない場所にいて、丸一日過ぎてる、か。
まるきりいつものパターンだな」
牧志 浩太
「まあ、でも。
今度はちゃんと『佐倉さん』と一緒でよかったよ」
そう言って、ふっと微笑む。
佐倉 光
「……そうだな」
KP
佐倉は苦笑して腕輪を身につけ、お守りを首にかける。

前回の出来事(『禁獄ノ糸』ネタバレ)
KP
あなたはあの後、例の繭での出来事の詳細を彼に話しただろうか?
牧志 浩太
話した。
あの時の夢を見た朝、「よかった」「よかった」と泣きながら、バケツをひっくり返すように全部話した。

泣きじゃくりながら話すので、まったく要領を得ない話し方ではあったが、佐倉さんに言葉を解きほぐしながら聞いてくれる忍耐力があれば、一通り話し終えたことだろう。
牧志 浩太
佐倉さんが「雛」の餌にされながら、「雛」を守らされていたことも。
あの丁寧に棘を奪われた繭のことも。

半端な希望を掴んでは折られ続けたことも。
佐倉さんが佐倉さんでありながら何一つ共にいてくれなかったことが、一番心を打ちのめしたことも。
牧志 浩太
俺には何もできなかったという無力感の叫びと一緒に、全部出た。
佐倉 光
「……」
KP
ひとつひとつゆっくりと、要領を得ない話を整理して、ことばを加えて、時折簡素な相づちを打ちながら、佐倉はずいぶん長いことかけてあなたから言葉を引き出した。
それから、頭の中に溢れかえっているであろう無数の言葉の中から、
佐倉 光
「辛かったな。ごめん。ありがとう」
KP
と言って、あなたを抱きしめて背を撫でた。
佐倉 光
「牧志はまた俺を助けてくれたよ」
牧志 浩太
「そうだな。
佐倉さんも、俺を助けてくれた。助けてくれたんだ」
牧志 浩太
「……ありがとう」
牧志 浩太
「よかった」
噛み締めるように一言落として、心音で耳を覆うように、胸に顔をうずめ、背を撫でる手の感触を味わった。

ここにいる。
あの時感じた弱々しい鼓動よりも、ずっと佐倉さんだった。
牧志 浩太
全部吐き出したあと、変な悪夢の話がついでにぽろりと出た。
せめてそれくらい笑い飛ばしたくて。
佐倉 光
「えぇぇぇぇ……なにそれ怖。ないわ。いくらなんでもそれは」
KP
佐倉は言ってから暫く無言になった。ややあって何とも言えない顔になる。
佐倉 光
「……そういうことじゃねぇんだよ」
KP
どうやら佐倉も浩子関連のあれこれが脳裏をちらついてしまったらしい。
KP
あれの雛を宿す者は悪夢を見る。そのことはあなたも佐倉も今までの経験で知っているだろう。
佐倉 光
「例えば何かまかり間違ってそういう事態になったとしても! 俺が! そういう風に! なるわけねーだろ!! 無理!」
KP
当惑のせいか、わけの分からない感想が飛び出した。
牧志 浩太
「いや、うん、分かる、もしそういうことがあったとしても、佐倉さんはああいう感じにはならないと思う、もしそういうことに……」
牧志 浩太
「……」
牧志 浩太
「……子供、いないよな……?」
改めて口に出したせいで、変なリアリティが押し寄せてきた。
浩子さんと佐倉さんの子供……。どっちに似てるんだろう……。
佐倉 光
「知りたいような知りたくないような。
いや、別人なのは分かってるんだけど。
今度喚んだときに訊いて……」
佐倉 光
「いや、訊かない方がいいな。
いなければそれはそれでいいけど、いた場合はつまり、食われて、今はいない、ってことだろ。
つい、あいつらが見たままの存在じゃないこと忘れそうになるんだ。
召喚してるの、俺なのにな」
KP
佐倉は首を振った。
境界を意識するのを忘れたら、どちらにとっても良いことはないだろう。
牧志 浩太
「そうだな。そうだ。
浩子さんも、あっちの佐倉さんも、その子も、もういないんだ。

……ここまで何一つ差がない、っていうのも逆に怖いな。
俺も、たまに忘れそうになるよ。
実際あの時は、浩子さん達自身も忘れてしまっていたんだ」

俺は、どうなんだろう。
偶に、まだ手が溶けて見える。
ただの幻なのか、それとも。
……それとも。
佐倉 光
1d100 57〈心理学〉 Sasa 1d100→ 75→失敗
佐倉 光
「ああ。忘れないようにしよう」
牧志 浩太
「それに、いたらいたで、一緒に置いていっちゃったってことになるしな。
その意味でも、聞かない方がよさそうだ」
佐倉 光
「そうだな……」
KP
佐倉は小さく頷いた。

佐倉 光
「今の俺は自分では正気だと思ってるし、佐倉光だと思ってるよ」
KP
佐倉はゆっくりと答えた。
佐倉 光
「まあ、あくまで現時点での自認。そこ疑ってもきりがねぇけどな」
佐倉 光
「自分を素直に信じられないってのはなかなか、ここにクるもんがあるな」
KP
佐倉は無意識にか首の後ろに触れた。
牧志 浩太
「俺も、一度やらかしたしな。
そこは疑ってもしょうがない、か。そうだな。
今見えてるものを信じるしかないもんな」

確かめるように、自分の手を見下ろした。
ゆっくりと一度、強く握って、開く。
牧志 浩太
「少なくとも、俺から見ても今の佐倉さんはちゃんと佐倉さんだよ。
そうじゃない時を見たから分かる。逆に」
佐倉 光
「牧志も牧志だよ。間違いない」
KP
あなたの心中を知ってか知らずか、佐倉は笑って見せた。
牧志 浩太
「俺もちゃんと俺か。
よかった、そう言われると何だか安心する」
佐倉 光
「ま、そんなこと言ってても始まらないな。
まずはここはどこで、どういう状況かってことを考えよう。
いきなりベッドに寝かされているっていうと……
こっちを完全に捕捉していて、何か押しつけた奴がいるパターンだな。
……ちょっと互いに体をチェックした方がいいかもしれない」
佐倉 光
※寄生2回、吸血鬼事件2回、実験動物。
牧志 浩太
「賛成。妙に気分が落ち着いてるのも、思えば不思議だ」
佐倉さんに近寄り、首筋や腕などに異常がないか確認する。
KP
あなたと佐倉の腕に注射痕が残っている。
だが、何か身体に異常がある感覚はない。

異変といえばそれくらいだった。
牧志 浩太
「で、安心したのはいいけど。
きっちりあるな、注射跡」
変なもの注射されたり入れられたりしすぎだ。
思わず溜め息が漏れる。
牧志 浩太
「今の所変な感じはなくて、持ち物はある。
で、推定出口はある。
とはいえ変な注射はされてる。

ってことで、退路を確認しつつ、この現状についても調べたい」
佐倉 光
「賛成」
佐倉は言って立ち上がった。
牧志 浩太
宣言しつつ、まずは扉の向こうに物音がないか、扉の隙間から何か見えないか確認。
物音などがないようなら、扉が開くか確認する。
KP
鍵はかかっていないようで、簡単に開く。
外に出る?
牧志 浩太
「とりあえず、ここは繭じゃないみたいだな」
開くことを確認した後、室内に戻る。
佐倉 光
「注射されてるってのが気に食わないな」
KP
佐倉はあなたの腹の方をちらと見た。
牧志 浩太
「同感。
この状況、何だか俺と佐倉さんが最初に会った時を思い出すんだよな。
妙なファンシーさとか、そういうとこ……」
牧志 浩太
まずテーブルに何かないか確認する。
KP
ベッドとテイストを合わせたアンティーク調のテーブルだ。
カボチャをくり抜いた大きな入れ物の中に詰め込まれた、大量のお菓子とメッセージカードがある。
佐倉 光
「ハロウィンのつもりか?」
牧志 浩太
メッセージカードを読んでみる。
KP
カラフルなペンで文字が書いてある。
『ハロー! ここは最高にドープな展覧会!
元気な心で展示を楽しんでね! ハヴ・ア・グッド・チル!』
……という文言が書かれている。
佐倉 光
「ドープ……イケてるとでも言いたいのか?」
牧志 浩太
「俺、もうちょっと嬉しくない意味を思い出した。
ドープ。薬」
腕についた注射針の跡を押さえる。
佐倉 光
「トリップしてる感はねーけどな」
本編見る!
謎のメッセージカード、謎の菓子、ハロウィンのカボチャ……ジャック・オー・ランタンの絵。 全てにサインのようなイニシャルが書かれていた。
佐倉 光
「気持ち悪い絵だな……
理屈を無視してダイレクトに抉ってくる感じだ。
展示ってこれか?」
牧志 浩太
「ああ。勝手に身体が怖がってるような、嫌な感じがする。
目一杯って書いてあって、これだけ、とは思いにくいな」
牧志 浩太
メッセージは剥がせたりしないだろうか。
剥がせるようなものでなければ、額縁を裏返しに置いて、ベッドの下や布団の上を見てみる。
KP
ベッドの下を覗き込むと、ネズミが飛び出してきた。
布団の上には何もないようだ。
ベッドカバーにもカボチャの刺繍がある。
牧志 浩太
「うわっ、ネズミ」
驚いて避ける。普通の鼠?
KP
普通のネズミに見えます。
KP
※ベッドは探索場所ではないので気にしないでね!
牧志 浩太
「驚いた。……よし、開けてみるか。この暗幕」
牧志 浩太
窓の暗幕を開ける。
KP
窓はいくつもあるのだが、全て暗幕の上から鉄板が打ち付けてあり、開けることはできない。
また、この部屋はそのためとても暗い。

※シナリオ中、目を使う技能に-10%の補正がかかる。
KP
……という情報を先に出すべきだった。
KP
部屋の隅に埃が若干残っていたり、床や壁に亀裂が入っていたりする。
牧志 浩太
「うぇ……、」
窓を塞ぐ板を見て、思わず喉の奥から音が漏れた。
執念を感じる程に塞がれた……、繭。
優しさを感じる程に磨き上げられた、柔らかい、柔らかい束縛。

爪をかける隙すらない、指先に触れるあの柔らかい、丁寧な、丁寧な絶望を、思い出してしまった。
KP
佐倉は鉄板の間に手を突っ込んで窓を叩く。
佐倉 光
「駄目くせぇな。手応えが窓じゃねぇぞこれ……牧志?」
牧志 浩太
「あ、ああ? ごめん、何だって。
そうか、窓みたいに見えるけど、そもそも窓じゃないかもしれないのか?」
佐倉さんの声に、はっと意識が引き戻される。
振り向いた顔が驚いてしまっていたかもしれない。
佐倉 光
「……」
佐倉 光
「まだ扉がある。俺もいる。窓の一つや二つ塞がれていたってどうって事ないさ」
KP
窓から手を放し、牧志の方へ向き直る。
佐倉 光
「……大丈夫か?」
牧志 浩太
「ごめん、大丈夫。
今だって何か起きてる最中なんだし、思い出してる場合じゃないな」
ひどく暗い空間の中で、確かめるように佐倉さんの手に触れる。
皮膚を辿り、あのじくじくと体液を滲ませる傷がないことを確認する。
KP
あれからそれなりに時間が過ぎているし、魔法も使ってある。佐倉の肌はあの事件の痕跡もなく、少しひんやりとしていた。
牧志 浩太
「よし、大丈夫。今度こそ大丈夫」
自分に言い聞かせるように宣言して、扉を開ける。
あまりにも奇妙な感覚が襲った。
佐倉 光
自分の手の甲に指を食い込ませる。その硬さを確かめるように。
1d100 30 Sasa 1d100→ 31→失敗
HP 10 → 9
佐倉のはいつもの体の痛みロールです。
牧志 浩太
外へ出ようと扉を開くと、そこは暗闇だった。
暗闇。膨らみ、蠢く、内側に何かの気配を秘めた暗闇。

どろりと手が溶けた。脚が溶ける。
巨大な蟲の神がその内側に居て、一番最初のあの時そのままに、無力に震える自分に契約を強いてくる。
牧志 浩太
「あ……、ああ、」
腹がばくんと脈打ったような気がした。自分である部分が喰われてなくなっていくような恐ろしい不安。
確かめなくてはいけない。この腹の中に、あの白くどろどろとした蟲ではなく、自分の内臓がちゃんと詰まっていることを。
牧志 浩太
シャツを捲り上げ、爪を立てて腹を引っ掻く。引っ掻く。掻き傷がじくじくと痛んだ。内臓を見たくて繰り返し引っ掻いているうちに我に返った。
牧志 浩太
「っ、痛……、」
腹を見下ろすと蚯蚓腫れができていた。
KP
我に返ると、隣で佐倉が蹲って呻いていた。
佐倉 光
「ま……し」
KP
佐倉はやはりあなたと同じようにひっかき傷のある手を、あなたに伸ばしていたようだった。
佐倉 光
「ふ、くらん、で、ない、から……」
牧志 浩太
縋るようにその手を掴み、佐倉さんを引き寄せる。
胸に佐倉さんの頭を押しつける。
速まっているだろう心音を聴かせながら、その背を撫でる。

数度、ゆっくりと息を吸い、吐いて、心を落ち着けようとする。
牧志 浩太
「ごめん、大丈夫。……大丈夫。
佐倉さんもさっきの、見えたんだな。
どうしようもなく不安になって、確かめなきゃいけない気がしたんだ」
牧志 浩太
佐倉さんに〈応急手当〉を試みます。
KP
どうぞ
牧志 浩太
1d100 59 〈応急手当〉 Sasa 1d100→ 77→失敗
KP
ベッドに戻って落ち着いて処理するなら医学も使っていいよー
時間は経過する。とはいえこのシナリオ、時間経過によるゲーム的なデメリットはない。
一応物語的にはあったな、と後で思いました。まあよし。
牧志 浩太
佐倉さんに《ディア》を試みてもらって、それで失敗したら〈医学〉かな?
佐倉 光
1d100 53《ディア》 Sasa 1d100→ 88→失敗
牧志 浩太
では、一度ベッドに戻って落ち着いて処置する。
牧志 浩太
痛みに呻く身体を布団で包み、温めながら、痛みの強い箇所を探して、ゆっくりとその背をさする。
1d100 61 〈医学〉 Sasa 1d100→ 86→失敗
牧志 浩太
あかんかった。
KP
折角だから振ろう。
佐倉 光
1d100 24 〈医学〉 Sasa 1d100→ 66→失敗
KP
駄目だね!

KP
佐倉は身を縮めて痛みに耐えていた。
あなたの心音を聴くことで痙攣のような症状は治まったらしい。
とりあえずあなたの処置によって乱れた呼吸は収まり、顔色は少し良くなったように思う。
KP
冷や汗を拭いて、佐倉は起き上がった。
佐倉 光
「もう、行こう。発作は治まったから、大丈夫。動ける」
KP
佐倉はさっきあなたが引っ掻いた傷に手をかざした。
佐倉 光
1d100 53 雰囲気《ディア》 Sasa 1d100→ 20→成功
KP
腹に蠢く痛みが引いた気がする。
牧志 浩太
腹に蠢く痛みを柔らかく温め、和らげていく光に身を任せる。
先程感じた強烈な不安が、一緒に和らいでいく気がした。
牧志 浩太
「ありがとう、楽になった。
……だな、行こう。あんまり長居したくない」
牧志 浩太
改めて、部屋の外へ出る。

KP
部屋から出れば廊下に繋がっていた。
先程の部屋の中同様に埃が小さな塔の形を成していたり、天井にいる蜘蛛が壮大な紋様を編み広げていたり。
良く言えば雰囲気のある展覧会の会場、ストレートに言うならばハウスダストの温床、という感じだ。

改めてこの空間を見渡すと、向こう側の壁に扉が1枚、少し間隔を開けた左隣にも扉が1枚あることに気づく。
右側には壁があるだけの突き当たりだが、左奥、廊下が続く先にはまた扉があるようだ。
続けて視線を足元に向けると、今あなたが立っているところから左の扉の前の床に向かって白いペンキで矢印が引いてあり、そこから向こう側の扉に向かって矢印が伸びている。
さらにその場所からは左奥の扉に向かって赤い矢印が伸びていた。
佐倉 光
「あんまり魅力的な空間とは言えねぇな」
牧志 浩太
「さっきもそうだったけど、普通に汚いな。廃墟か? ここ」
牧志 浩太
「で……、何だろうなこれ。展示っていうなら順路か?」
佐倉 光
「こういうの逆らってみたくなるけどな」
牧志 浩太
「正直従いたくないけど、さっきのを思うと、どうにも誰かの手の内な気がするんだよな」
牧志 浩太
周囲を見回す。
ここには扉以外に、何か展示のようなものはあるだろうか?
KP
ここにある芸術と言えるものは繊細な蜘蛛の巣くらいのものだろうか?
せっせと虫をつかまえて吸いきったのであろう残骸がぶら下がっている。
牧志 浩太
右側の突き当たりの壁を見てみるが、気になるものはないだろうか?
KP
壁には細かいヒビと汚れがある程度だ。
牧志 浩太
左の扉に向かって一歩踏み出してみる。
特に何も起こらないようなら、床の感触を確かめながら左の扉の前まで行き、扉の向こうの様子を確認する。
KP
廊下に仕掛けなどはなかったらしく、コツコツと固い感触がある。
中から物音はしない。
左隣のドアは今しがた出てきた部屋の扉と変わらない見た目だ。鍵穴はある。
牧志 浩太
「順路に従ったら途中で落とし穴、みたいなことにはならないみたいだな。
とりあえず、ここは」
牧志 浩太
扉を開けようとする。
開くようなら、少し開けて中の様子を確認する。

KP
ドアノブはスムーズに回る。どうやら鍵はかかっていない。
ギィ、という古臭い音がして扉が開いた。部屋の中は廊下よりも暗く、一瞬、何も見えない、と思えた。
KP
しかし幾度か瞬きをして見つめていると目が慣れて、中の様子がおぼろげに見える。
そこには多くの絵画が展示されていた。
額縁に入ったものやイーゼルに乗せられたままのものなど、展示のされ方は様々だ。
佐倉 光
「いかにも展示室。ここからが本番ってワケか」
牧志 浩太
「ってことだな。正直、あんまり見たくないけど。
で、ちょっと物は試し。佐倉さん、その扉押さえててもらっていい?」
佐倉さんに扉を開いたまま保持してもらいつつ、先程と同様に床を確認しながら、矢印に従わずに赤い矢印が向かう先の扉に直接向かってみる。
佐倉 光
「オッケー。気をつけろよ」
KP
佐倉は扉に寄りかかるようにして背で押さえ、親指を立てて見せた。
牧志 浩太
親指を立てて応える。
KP
特に変わったことは起こらず、扉の前までゆくことができる。
見た感じは特に異変はない。
牧志 浩太
向こうに物音がないか耳をすませてから、扉を開けようとしてみる。開くだろうか?
KP
開かない。鍵でもかかっているのだろうか。
牧志 浩太
「……」
佐倉さんの所まで戻る。
牧志 浩太
「扉、開かなかった。
割と単純に、順路に従わないと開けてやらない、ってことかもしれないな。

この中に鍵でもあるのか、それか、誰かが俺達の様子を見てるのか。後者だと普通に嫌だけどさ」
佐倉 光
「芸術ってやつは見る方向からして制御したいってものらしいし、
順番飛ばされるのも嫌なもんなのかもな」
KP
佐倉は肩をすくめて見せた。
佐倉 光
「まあ、分からないでもない」
牧志 浩太
「分からなくもないけど、いきなり捕まえてきて見ろってのは横暴だ」
軽く肩をすくめる。
佐倉 光
「で、俺達に『芸術を見ろ』と言っているなら、作者は普通に見てるんじゃねぇのか?
大体芸術家って、ひり出したいだけの奴と、
作った物を賞賛されたい奴がいるだろ?
わざわざギャラリー捕まえてきて放置って事ないだろ。どっかで見てるよ」
牧志 浩太
「まあ……、それもそうか。
場合によっちゃ、見てる俺達まで含めて作品とか言い出しそう」
溜息をついて、それらの絵画に目を向ける。
KP
この部屋は暗く、目をこらさないと全体像は分からない。
展示パネルや絵画がある。
KP
よく見てみると、この部屋の中の絵画のどれもがジャック・オー・ランタンを描いているとわかる。
油絵、水彩画、デジタルアート。
写実的なものからデフォルメされたものまで表現手法はそれぞれ違うが、テーマだけがきっちりと揃っている。
KP
〈精神分析〉
〈クトゥルフ神話〉知識
別情報
牧志 浩太
1d100 3〈精神分析〉 Sasa 1d100→ 44→失敗
1d100 41 〈神話〉知識 Sasa 1d100→ 79→失敗
佐倉 光
1d100 43〈精神分析〉 Sasa 1d100→ 79→失敗
1d100 36 〈クトゥルフ〉 Sasa 1d100→ 93→失敗
牧志 浩太
「何だか、さっきからハロウィン尽くしだな。
ハロウィンっていうか、ジャックランタンばっかりだ」
正確に言うとジャックランタンではないが、そう言ってしまうのは癖だ。
佐倉 光
「こうカボチャだらけだと壮観だな。
どんだけハロウィン好きなんだよ」
KP
佐倉が呆れたように呟いた。
二人はその部屋で鍵を見つけ出す。

更に床で、奇妙なメモを発見するのだった。
19□□年□□□□
□の地の□くに民を狂わ□□□す恐ろし□□魔を封□□□
もしもこの場□に誤っ□□い込んで□ま□□□□ら、すぐにこ□□ら離□、遠くへ□□るべし。□かしな□を起こ□□に。
KP
途切れ途切れではあるがなんとか読めたのがこれだけだ。後は達筆すぎて無理だった。

佐倉はこの文面からとてつもなく嫌な予感を覚えてしまった。
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1
佐倉 光
1d100 63 《SANチェック》Sasa 1d100→ 59→成功
佐倉 光
「なんだ……? これは」
KP
その声には隠しようのない不安があった。
牧志 浩太
紙切れの裏を見てみる。
KP
紙きれの裏には何も書いていない。
牧志 浩太
「何だこれ……。芸術の一環、じゃないよな。雰囲気が違い過ぎる。
さっきから気になってたんだけど、ここ、妙にボロボロだよな。その割にあの額縁だけ新しかった。
元々、展覧会場でも何でもなかったのかもしれない、ここ。誰かが勝手に使ってるだけで」
牧志 浩太
並んでいる額縁やイーゼルは、部屋の古び具合に対して新しいものだろうか?
KP
この部屋も目覚めた部屋と同様、埃が積もり、壁はヒビだらけ。
随分と長いこと放置されていたように見える。
だが額縁やイーゼルはあなたの予想通り、
古くともよく磨かれて手入れされていたり、新しかったり、全体的に綺麗だ。

また、壁には綺麗なパネルが掛かっている。
絵の解説が書いてあるらしい。
牧志 浩太
パネルを懐中電灯で照らして読んでみる。
掛かっているパネルを外せるようなら、その裏を見てみる。
パネルにはジャック・オー・ランタンへの執着と言っていい芸術家の感情の吐露が書き記されていた。
牧志 浩太
「…………………………」
押しの強すぎる文章を目にして、ものすごくげんなりした。
狂気なのか、芸術なのか、その両方なのか、とにかく。
牧志 浩太
「押しが強い」
という感想しか出てこなかった。
佐倉 光
「つーか本物のジャックオーランタンって何者だよ」
1d100 75 〈オカルト〉 Sasa 1d100→ 26→成功
佐倉 光
「ジャックオーランタンってアレだろ、ヒーホー兄弟の奴ら。
生前に堕落してたやつが死後の世界入れなくてうろついてるやつだ。
つまりはただの幽霊だぞ?
そんな大袈裟なもんじゃない筈なんだけどな」
牧志 浩太
「ただの幽霊か、そうじゃなきゃ悪魔の方だよな。
珍しいわけでもないし、そんなに感激するようなもの……、じゃ……」

言いかけて、ん? と少し考えた。
牧志 浩太
「ちょっと思い至ったんだけどさ。
俺達の感覚、ずれてる? もしかして」
佐倉 光
「ずれてる?」
KP
佐倉は首をかしげた。

あなたは思い出すかもしれない。
佐倉は幼い頃から妖精属の姿はよく見ていて、悪魔も幽霊も割と日常だったのだ。
ランタンは妖精族である。
牧志 浩太
「そう。
いや、幽霊とか悪魔とかって、そんなに日常じゃないよな、って思った。
俺達は慣れてるけど」

俺にとってもランタンは魂の兄弟の仲間だし、そりゃ遭っても怖くないわけじゃ決してないけど、珍しがるようなものじゃない。

でも、まあ、普通そうじゃないよな、と思った。

怪談の話し甲斐がないと言われがちなのだ。最近。
幽霊の境遇の心配より先に幽霊怖がれよぉ、って何度言われたか。
佐倉 光
「……あー。そういうものだっけ。そうか」
KP
明らかにピンときていない。
幼い頃からの経験と、悪魔使いとしての経験と、怪異まみれのここ数年で完全に感覚がおかしい。
『普通』だったことはそもそもないのだ。
牧志 浩太
「たぶん」
その様子を見て、困ったように笑う。
波照間の幼少期の経験はそれに比べたらまだ日常に寄ってはいるが、それももう随分前の話だ。
牧志も牧志で、「彼よりは一般人の友達が多いから分かる」という程度のものでしかない。
牧志 浩太
「まあ、それにしてもオーバーだと思うけど」
ずれてる
牧志 浩太
魂のいとこ! くらいの位置付けかもしれない。>波照間とジャックランタン
あと牧志は怪談話されてもだいたい感想がズレる。
幽霊や怪異を「違う世界にいるだけのもの」または「そこにあるリアルな脅威」と受け取ってしまう人間の感想がズレないはずがない。
KP
「ずっと泣いている女の霊が」
何かあったんだろうか?

「子供の声が」
親御さん近くにいないのかな

みたいな
牧志 浩太
「彼が顔を洗っていると、背後から女の声が切々と」「え、話聞かないで逃げちゃったのか。でも驚いたなら仕方ないよな」
「心霊スポット巡りを始めた一団は」「えっ、領分侵しちゃったのか!?」

みたいなそういう

佐倉 光
「燕尾服のランタンなんて見たことねーな。
そいつ本当にランタンかな?」
牧志 浩太
「どうなんだろうな、俺達が知ってるあいつとも限らないし。
別のやつかもしれないし、違うやつがそういう見た目で出てきただけ、かもしれない」
KP
この部屋には他には何もないようだ。
無数のカボチャ頭がじっとあなた方を見つめてくる。
牧志 浩太
鍵を持って部屋の外に出よう。
矢印に従って、向こう側の扉へ行ってみる。
部屋を出ようとするとまたも奇妙な感覚が襲う。
先ほどよりも強く、抵抗しがたい。
佐倉 光
佐倉は自分の手に指を食い込ませ、引っ掻き始めた。
壁に拳をぶつけ、堅さを確かめている。
牧志 浩太
扉を開けると、廊下があるはずの場所がまっくらやみになっていた。

まっくらやみ。まっくらやみだ。
なにもない。内側で何かが蠢くような闇。
牧志 浩太
「……」
なにもない。
牧志 浩太
「……」
なにもない。
牧志 浩太
ゆらゆらと闇の中に手を伸ばしても、何も掴めない。
自分の身体に手を伸ばすと、辛うじて闇以外のものが見つかった。
闇以外のものを探したくて力を込める。力を強くする。
牧志 浩太
痛みに我に返って、口の中に手を入れて内側を爪で抉っていたことに気がついた。
牧志 浩太
「おぶ、おご、」
数度呻いてようやく手を抜き、涙目で振り返る。
佐倉 光
「大丈夫か、牧志?」
KP
こちらも今し方我に返ったらしい佐倉が問いかけてくる。
その視線は慎重に周囲を探っており、『見える』ということを確認しているかのようだった。
佐倉 光
「お前も見たんだな。さっきと同じ……さっきもか」
牧志 浩太
「ああ……、真っ暗闇だった。
見えないだけじゃない。
何もなくて、自分がそこにあるかどうかも分からなくなりそうで、唯一あるって分かるものを確かめずにいられなくなった」
牧志 浩太
「佐倉さんも……、見たんだな。
あれは、不味い。今はこの程度で済んでるけど、段々酷くなってる気がする」
牧志 浩太
佐倉さんの手を取り、擦りむいた所を手当てする。
KP
佐倉は手当に礼を言い、あなたの口に手をかざして魔法を使う。
どちらもとりあえずの止血はできたとしてよい。
佐倉 光
「ここに何かがいる……そんな気がする」
KP
佐倉は腕輪に触れたが、やはりエラーを起こして働かないようだ。
牧志 浩太
「『作者』なのか、そいつが見た奴なのか、それとも全然関係ない奴なのか。
どっちにしろ、いい気はしないな。

……次に部屋出る時は、一人ずつにしよう。片方は目を閉じて。
様子がおかしくなったら止める、ってことで」
佐倉 光
「Ok。今はこの程度でも、いつ致命的なのが来るか分からないからな……」
KP
佐倉は頷いた。
牧志 浩太
鍵を使い、矢印の先の扉を開ける。
そこにあったのは無惨な三体の「芸術品」だった。
菓子で飾り付けられた死体が待っていたのだ。
佐倉 光
「ぐ……」
佐倉が喉の奥を鳴らした。
牧志 浩太
「……」
喉から、げぼりと呻きが漏れた。

見たことがないわけじゃないそういうものを、しかし、しかし、目の前の光景はあまりにも不似合いで不釣り合いで、それが却って背筋を怖気立たせた。

弄ばれている。

可愛らしいなどという言葉とは対極の怒るべき悲しむべき惨劇が、真逆の感情を押しつけるようにしてそこに存在させられている。

犠牲者のあらゆる感情を嗤うような光景、最も意図せぬ姿に追いやる光景は、
いままで見たどんな惨劇よりも、嫌悪と、怒りを掻き立てた。
牧志 浩太
「くそ……、何だよ、これ。
芸術としては反則じゃないのか、こういうの」
“こういうの”。インスタントに人間の嫌悪を掻き立てる手段。
“作者” にとってはそんな嫌悪もの、何ら関係ないのかもしれないけど。
佐倉 光
「悪魔の仕業に見える。ごく希にこういうことをする奴がいる……」
KP
佐倉は顔を仕掛けて手を口に当て、近づいた。
彼は壁についている展示パネルを見て吐き捨てる。
佐倉 光
「これも『展示品』ってわけだな……くそ」
牧志 浩太
「悪魔の仕業、って聞くと、納得がいってしまうのが変な感じだ。
されてることは変わらないのにな。
そういうものだ、って思うからかもな……」
KP
それが死体だと分かれば当然それらが発するであろう臭いにも意識が向くだろうが、不思議なほどに感じない。
わずかな埃臭さと、菓子の甘いにおいだけが漂っている。
佐倉 光
「大丈夫、ゾンビとかじゃない。
そっちの方が随分マシだと思ったんだけどな」
KP
この部屋で目につく物は、テーブル、悪趣味な遺体がみっつ、それからパネルだ。
牧志 浩太
くそ、と呻いて、懐中電灯で照らしながら床を確認する。
さっきのように何か落ちていないか。“作者”の意図以外に残されたものはないか。
KP
床には何も落ちていない。
作品を最大限に引き立てるために綺麗に掃除してあるようだ。
KP
これは空間そのものが芸術なのである。
牧志 浩太
先程と違って、床はきれいに掃除されていた。
その空間そのものが統一の取れた『作品』として構成されているのに気づいて、また喉から呻きが漏れる。
牧志 浩太
「くそ」
この怒りすらもきっと“作者”の想定通りだ。
牧志 浩太
パネルを見る。
KP
パネルには丸っこくて可愛いらしさすら感じるフォントで以下のように書いてあった。
僕達はまずひたすらに彼を、ジャック・オー・ランタンを想い続けました。
そうする中で内側から沸き立つ力をキャンバスにぶつけ、彼の姿をこの手で描きあげるのです。
愛し求める方の姿を想い形づくるのは最もポピュラーな信仰の方法なのですから!
各々がクールでオーサムな彼を表現することで、互いに高め合うことにも繋がります。

一通りそれを経たら、次に全く別の新しい表現を試みました。
それが、この部屋で展示している作品です。
まさにドープ──そうとしか言えません。
ジャック・オー・ランタンの持つおぞましさと遊び心を、僕達ひとりひとりが解釈し作り上げた第1の創造物です!

第2、第3の創造物を共に手がける時、そこにあなたがいてほしいと僕達は願っています。
この下で待っていますから、是非返事をくださいね!

ハヴ・ア・グッド・チル・トゥギャザー!
佐倉 光
「『芸術家』は何人もいやがるのか。
そういえばサインは一つじゃなかったな」
ノリがいい
牧志 浩太
ところでこのシナリオの文章、声が聞こえてきそうで本当に好き。
KP
シナリオの文章そのまま使うことあまりないんですが、
このシナリオはそのまま使っていることが多いですね。
ノリが良くて楽しい。
というか読んでて気持ちいい文章だなと思います。
牧志 浩太
ですね。リズムがある。
これはボイセでやっても楽しいだろうなぁ。
KP
ああー、たのしそう。
牧志 浩太
そうそう。演技うまい人がKPして下さったらめっちゃくちゃ映えそう。
KP
文章そのものに気を払って作った物なのかなって気がする。
牧志 浩太
ですね。リズムまで気を使ってそう。
これはそのまま使いたい。

牧志 浩太
「やなサークルだな。
あと、これ見て一緒にいようって思うの無理。

他人巻き込むなよ、っていうのは今更だけどさ」
牧志 浩太
パネルを外して裏を見てみる。
何もなければ、げんなりしながらテーブルを確認する。
KP
パネルの裏には白だけがある。
テーブルの上には燭台とメッセージカードが置かれていた。
誰宛の?
無論あなた方宛だろう。
KP
『是非僕らのクールな作品に触れてみてね! 鍵は彼らの中のどこかにあるよ!』
……という悪趣味な文言が書かれていた。
KP
Sasa 🎲 Secret Dice 🎲
牧志 浩太
無言でカードを裏返し、裏を確認する。
燭台を持ち上げて、下や裏に何かないか確認する。
KP
カードの裏にはドクロの横にキャンディーが書き添えられたかわいらしさすら感じる落書きがあった。
燭台の下には何も無い。
佐倉 光
「くそ、付き合ってられるか……」
KP
佐倉がパネルに拳をぶつけた。
牧志 浩太
「現状付き合うしかなさそうなのが、一番腹が立つな。
今更死体なんて探りたくないとか言うつもりないけど、腹は立つ」

意識して冷静に聞こえるように声を出す。
佐倉さんが怒ってくれてる。俺までこいつらの意図通りに怒る必要はない。
牧志 浩太
頭をくり抜かれた死体に手を伸ばす。
中のお菓子を乱暴に出して、何か入っていないか、お菓子を出した後に何かないか確認する。
KP
あ、死体探りは佐倉が比較的慣れている自分がやろうかと提案してくる。
佐倉 光
「一応、俺の方がまだしも見慣れていると思うからさ……」
KP
また、死体をざっと見るなら
〈目星〉〈医学〉 別情報
牧志 浩太
「あ、いいのか?
佐倉さんだって、腹が立たないわけじゃないだろ。
大丈夫なら、確かに佐倉さんの方が慣れてるだろうから、頼むけど……」

言いながら、意図せずオブジェにされただろう、その死体を見る。
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 45→成功
牧志 浩太
1d100 61 〈医学〉 Sasa 1d100→ 18→成功
KP
左の遺体の後頭部、真ん中の遺体のリボン、右の遺体の手首にタグのようなものがつけられていた。
そのどれもに10人程度のサインが記されている。
そのタグはこれらを作品だと言い張っているようだった。
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1
また、どれも紛うことなく人間の死体であるとわかる。
手足の状態からして死後3ヶ月は経っているものと思われるが、きちんと死体防腐処理エンバーミングされているようだ。
牧志 浩太
1d100 52 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 36→成功
牧志 浩太
腐臭も崩壊もなかった時点で、保存されてるんだろうな、という気はしていた。
けど、改めて見てみて、精巧な人形のように留められたそれが生きていた人間であることを思い知る。
牧志 浩太
「……」
何を言っても怒りが出てきそうだ。
後頭部がふつふつと煮えるのを感じながら、無言でタグを裏返し、何か書かれていないか確認する。
KP
タグの裏は綺麗だ。何も書かれていない。
牧志 浩太
それらの遺体はどんな人間のものだろうか。
性別、年代、体格などに傾向はあるだろうか。
KP
遺体には特に特徴はないようだが、衣服は綺麗できちんと整えられている。
佐倉 光
「これはゾンビこれはゾンビこれはゾンビ」
KP
佐倉が呟きながら頭蓋の中の菓子を放り出してゆく。
それからハート型のジャムクッキー(やけに毒々しく赤いジャムだ)を引っこ抜いて、あっと声を上げる。
佐倉 光
「あった」
KP
それは目玉があるべき所に挟まれていた鍵で、キーヘッドには真っ赤で美味しそうなハートがついていた。
牧志 浩太
「よく考えられた悪趣味」呟く。
牧志 浩太
「一応他も見てみる」
あえて淡々と宣言すると、佐倉さんが何か言う前に動く。

平らに首を切られた遺体のリボンを抜き、断面に何かないか調べ、足元に落とされている肉片を懐中電灯で照らして、何か混じっていないか確認する。
KP
断面は丁寧に処理されている。
肉片の一つ一つまで腐らないように、かつ鮮やかな赤を保つように細心の注意を払って処理されているようだった。
正に芸術である。
KP
佐倉は隣の遺体の体内から無言で菓子を出していった。
やはりこちらにも何も無かったようだ。

そこには破壊され、最早芸術でも何でもない遺体が三つ置かれていた。
いや、この様とあなた方の顔こそが想定された芸術なのか。

SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1
折角だから佐倉も。
牧志 浩太
1d100 52 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 9→成功
佐倉 光
1d100 63 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 13→成功
牧志 浩太
「くそ。……行くか」
最後にもう一度、室内をぐるりと懐中電灯で照らして確認する。
KP
そこにはもう何もない。
陰鬱で楽しいパーティーはお開きの時間だ。
牧志 浩太
「またあれを見るのかと思うと嫌だけど、ここに居座りたい気はしないな、間違いなく。
先に扉を開けるから、目をつぶって手を握っててもらってていい? 何かあったら頼む」

牧志 浩太
佐倉さんに目をつぶって室内に居てもらい、手を握った状態で扉を開け、扉の外へ踏み出す。
自分は目を開けておく。
KP
あなたは【POW】25との対抗ロール
牧志 浩太
自動失敗ですね。
KP
夢で見たあの暗闇があなたの周りに立ち込める。
あなたはあなた自身であることを痛みをもって確かめなければならない。
牧志 浩太
扉を開けると真っ暗闇だった。真っ暗闇だ、ともう分かっているのに、自分が自分として存在することを確かめたいという、強烈な衝動に抗えない。

繋ぐ手が震えた。握りしめた手がどろりと溶け、感触を失って真っ暗闇に溶ける。
跳ねるように手を解いて自分の身体に伸ばした。爪を立てて胸を引っ掻こうとする。
胸だ。心臓。痣のついた心臓。それを抉り抜いて目の前に持ってくれば自分が存在することがわかる。
佐倉 光
「牧志!」
KP
後ろから腕を掴んで揺さぶられた。背を叩かれた。
あなたはふっと正気に戻る。
牧志 浩太
「……っ、!」
背を叩く感触と声が、はっと自分を正気に引き戻した。
抉れば分かる? 何を考えていたんだ。抉ったら死んでしまう。痛みなんかなくても、その声で自分の存在なら分かる。
牧志 浩太
「また、だ。またあの暗闇が来た。
佐倉さん、その様子だと大丈夫だったんだな。
よかった、この方法が使えそうだ」
胸に当てたままの手、少し速い鼓動を感じながら、やや早口に言う。
佐倉 光
「う……あ……」
KP
佐倉の声がぼんやりとしている。
佐倉はあなたを叩いた手を数秒見つめ、そして自分の胸の所に抱え込む。
爪を立てて首筋を引っ掻き始めていた。
牧志 浩太
「佐倉さん!」
首筋を掻こうとする手を掴み、肩を叩いて呼びかける。
先程佐倉さんが呼び戻してくれたように。
佐倉 光
「……っ!?」
KP
佐倉は鋭く息を吸って目をしばたいた。
佐倉 光
「またか。まただ。もう有無を言わせない感じになってる」
KP
掴まれた手を見てほっと息をついた。
佐倉 光
「ありがとう。ここに長居するとまずそうだな」
牧志 浩太
「ああ。急ごう。
幸い、今の所部屋を出る時って決まってる。
片方が目を閉じて室内で待ってれば、対処もできそうだ。
次も同じように行こう」

左奥の扉へと向かう。
KP
あなたが一歩進もうとしたとき。
【POW】×5
牧志 浩太
1d100 60【POW】 Sasa 1d100→ 48→成功
佐倉 光
1d100 75【POW】 Sasa 1d100→ 97→致命的失敗ファンブル
KP
あーあ。
牧志 浩太
佐倉さぁああん!
KP
一瞬、足元から強烈に嫌な気配を感じる。
それはあの暗闇と同じ雰囲気を纏っていた。
佐倉 光
「早く帰りてぇ……」
佐倉は無意識か、胸の所にあるヒランヤを爪でカチカチと叩き始めた。
……当人気付いていないのだろうか。地味に耳障りだ。
牧志 浩太
「!」
佐倉さんの腕を引き、咄嗟に飛び退こうとする。
佐倉 光
「……え!? なに!?」
KP
佐倉はあなたに腕を引かれてよろけ、目を丸くして戸惑っている。
それでもやはりヒランヤを叩き続けている。
牧志 浩太
その気配はまだ足下、あるいはどこかにいるだろうか?
KP
気配は感じない。
牧志 浩太
「ごめん。さっき、足下から嫌な感じがしたんだ。
あの暗闇と同じものが、すぐ下にいるような」
KP
佐倉は首を傾げていた。
佐倉 光
「いや、俺は何も感じなかったな」
牧志 浩太
「佐倉さん、それ、癖? じゃないよな?」
ヒランヤを叩き続ける指に、意識させるように指を添える。
佐倉 光
「ああ、これ。……発作だよ。ごめん」
牧志 浩太
「そうか。いや、それならいいんだ。
あの気配がした後だったから、不味いかと思ったんだ。

気のせい……、って気はしないな……。
結構、強烈だった」
牧志 浩太
落とし穴でも警戒するかのように、佐倉さんの手を強く握る。
KP
佐倉はあなたの脈に触れるように手首を握る。
不随意運動は首飾りを叩く動きだけであるらしく、移動に支障はなさそうだ。
牧志 浩太
「佐倉さん、それ、辛くないか?
大丈夫そうなら、次の展示場に着くまでは急ぎたいんだ」
佐倉 光
「ああ、大丈夫。この程度なら問題ないし、すぐ治まるよ」
牧志 浩太
「そうか、よかった」

KP
左奥にはやはり扉があり、鍵がかかっていたが、
ハートのキーヘッドの鍵にサイズが合っている。
使うことができそうだ。
牧志 浩太
扉を開け、向こうの様子を確認する。
KP
扉の先には下へと続く階段があった。
踊り場の壁には『2』という文字が刻まれている。どうやらここは2階だったらしい。
牧志 浩太
「階段だ……。
二階だったんだな、ここ」

懐中電灯を振り、階段の壁や行く先を照らす。
下に続く以外の階段や、途中に扉などはあるだろうか。床に何か落ちていたり、壁に何か書かれていないだろうか。
階段の先に何かいたり、あったりするだろうか。
KP
階段は簡素で、下に続いている。
一階についたが、階段は更に下へ続く。その先はより一層暗くなっておりよく見えない。
佐倉 光
「下から気配がしたってことは、この先に何かいるかも知れないんだな?」
KP
一階にもいくつか扉があるのが見え、さらにその奥に一等大きな扉があることに気づく。多分、あれが玄関扉なのだろう。

〈聞き耳〉
牧志 浩太
「……ああ、そうか。
下ってことは、そうなるな」
1d100 97〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 100→致命的失敗ファンブル
牧志 浩太
おふ
佐倉 光
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 81→失敗
牧志 浩太
めっちゃわからん
KP
あなた方は一階の扉を横目に階段を降りる。
降りてゆく。
そこにあなたの意思は介在したか? 良く分からない。
もしかしたらそこに本当の出口があると考えたのかもしれないし、まだ犠牲者がいる可能性を考慮したのかもしれないし、宇宙的な何かをあなたのアンテナが拾い上げたのかもしれない。
とにもかくにも、歩みを進める。
佐倉 光
「どこまで続くんだ? これ」
牧志 浩太
暗い暗い真っ暗な闇の底に、歩みを進めた。

どうしてだろう。一階ということは出口があるに違いないのに、足は気づけばその下へ進んでいた。

暗闇に呑み込まれるように。
もしかしたらただ、その下に何があるのか、知りたいと思ってしまったのかもしれない。
KP
階段はさっき2階から1階に降りてくるまでに要した長さよりももっと長いらしく、まだ先が見えない。
地下2階、いや地下3階程度まで一気に下るようになっているのかもしれなかった。
そうして、いつの間にか風の吹く音が耳から離れなくなっていた。
止まない風が地下から吹いているのか。

あなたは唐突に、自分の意思と関係なく階段を下り続けていることに気付いてしまった。
気付いてしまったのだ。
あなた方は何かに引きずられていると。
牧志のみ《SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1
牧志 浩太
1d100 Sasa 1d100→20
牧志 浩太
「……!!」気づいてしまった。

知りたいのではなかった。
理由があったのではなかった。
その時考えていたどんな理由も、足が動いたことに、脳が後からつけた理由だった!
牧志 浩太
「佐倉さん! 引きずられてる!」

意思でないものを意思と取り違えていたことに気づく瞬間こそ、おそろしい。
牧志 浩太
叫んで、佐倉さんの手を引き、階段を駆け上がろうとする。
脚が言うことを聞かないのなら、腕で手すりなり床なりにしがみつこうとする。
佐倉 光
「……えっ」
KP
佐倉が驚いたように足を止めた。

その時──すごい勢いで階段を駆け上ってくる靴音が下から聞こえた。
息を切らして走って来るのはひとりの痩せぎすな男だった。
焦りと恐怖を顔面に貼りつけていた彼だったが、あなたを認めると急に数段下で立ち止まり笑顔で話しかけてくる。

「あっ、やあお客さん! ここにいるってことは僕らの展示を見てくれたんですよね! それで、どうですか、僕らと一緒に彼を愛しませんか──」
佐倉 光
「てめぇ好き勝手……」
KP
抗議は届かなかった。
KP
──バキッ
男の言葉は途中で終わり、突如吹いた恐ろしく強い風によって彼は横の壁に叩きつけられた。
ぶつけてひしゃげた頭部などからだらだらと血を垂れ流し、階段の下へ下へと転げ落ちていく。
あまりにも突然の出来事だが、どう考えてもあれは死んだはずだ。
SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1d4
ふたりは死んだ男の向こうに恐ろしいものを見る。
KP
次はあなたの番かもしれない。当然のごとく浮かんだ予感は、あなたの足を強制的に動かした。
「パニックになって逃げ出す」
牧志 浩太
次は自分の番なのだ。あれは俺達を誘い込んでいた!
逃げないと逃げないと逃げないと早く早く早く、誘い込まれる前に、あれに喰われる前に!
逃げる逃げる逃げる逃げる、逃げるという言葉、概念、行動だけが頭の中を埋め尽くした。
牧志 浩太
佐倉さんの手を引いたまま上へと駆け出す。
佐倉 光
「うわ!? あ、ああそうだな? っておい足! 大丈夫か!?」
KP
佐倉は引きずられるようにあなたに続いた。

KP
長い長い階段を闇に追われて駆け上る。登り続けるうち、気持ちが段々落ち着いてくる。
一階まで戻る頃には、随分とまともに考えられるようになっていた。

一階はしんと静まり返っており、人の気配もどこにもない。
牧志 浩太
「あ、ああ、ああ……、」
がくがくと脚を震わせながら、一階の扉へ飛び込む。
ぜぇぜぇと息をして、背後を振り返る。
腕の先に佐倉さんがいることを確認する。
牧志 浩太
「なあ、やっぱりあれ……、あいつ、まずい場所を、借りてたんだ」
凍った声で呟いた。
佐倉 光
「そうみたいだな。なんだったんだあれは。よく見えなかった」
佐倉 光
「いや、闇によく見えなかったというのも変なんだけど」
牧志 浩太
「俺にも、見えなかった。
真っ暗だった。闇だ。でも、こっちを見てた。
気のせいじゃない、見てた……。

俺もよくわからない。
でも絶対にまずいやつだった」
言葉にできない。できるようなものではなかった。ただ思考がその闇をおそれていた。
佐倉 光
「COMPが不調なのはあれのせいか」
KP
佐倉は後ろを振り返る。
階段の下は暗く、何も見えなかった。
牧志 浩太
「かもしれない……。
また吸い込まれたら大変だ、もし行きそうになったら、全力で止めてほしい」
闇を恐れるように階段から目を背け、前を向く。
牧志 浩太
「……何かするならするで、まずいとこ勝手に借りないでほしい……」

呟いて、辺りを見回す。
ここにあの順路はあるだろうか。
KP
順路は見当たらず、いくつも扉があるだけだ。
佐倉 光
「なんだ……美術館はもう終わりか」
牧志 浩太
「そうみたいだな。ここはただの空き家なんだ。

一応、確認だけして行こう。
本当にただの空き家なら、さっさと出よう」

あの暗闇に階段のすぐ近くで襲われたくない。
一番近くの扉を避け、二つ目の扉を開けてみる。
中には踏み込まずに様子を確認する。
KP
人がいた形跡はあるが、肝心の人間はどこにも見当たらない。
人間はどこへ消えたのだろうか。
佐倉 光
「誰もいないみたいだな……」
牧志 浩太
「みたいだな……」
片っ端から扉を開け、生存者がいないかどうか確認していく。
中には踏み込まない。
KP
そこには生活感が残っていて、ちょっと席を外しているだけに見える。
食べかけの食事、読みかけの本、並べられたコップ。
だが人間は誰一人存在しなかった。
牧志 浩太
「誰も……、いないな」
確認するように呟く。
牧志 浩太
「全部食われたのかな……、あいつに」
きっとそうに違いない、そうかもしれない、という確信の正体は、きっと恐怖だ。

懐中電灯を向けて本の背表紙を確認する。
現状に関係のあるような本はあるだろうか。
KP
本は他愛のない雑誌のようだった。
そこに在ったのは突然途切れた日常だ。
牧志 浩太
他愛のない雑誌の表紙を目にした時、少し後悔した。
そこに誰かがいた。
誰かが暮らしていた。
そのことを実感してしまった。
牧志 浩太
踏み込むことはせずに、奥の玄関扉へ向かう。
外の物音を確認する。
KP
玄関の向こうに不審な物音はせず、木々の葉がぶつかる音がする。
牧志 浩太
「出よう」
自身に言い聞かせるように宣言して、扉を開ける。
佐倉 光
「ああ。帰ろう」
KP
何かを閉じ込めるためだったのだろうか。両開きの扉は重い。
だが二人がかりで力を加えればきしみを上げて開く。
外から差し込む太陽の光があなた方の眼を容赦なく灼いた。
光だ。
牧志 浩太
「光だ……!」
光。光だ。森がある。光に照らされている。

見える。分かる。理解できる。
まだ油断はならないと叫ぶ理性をよそに、それが何よりも自分を安堵させた。
KP
そこは深い森の中にぽつりと佇む洋館だった。
牧志 浩太
佐倉さんが出たら、背後の扉をしっかりと閉じる。
スマホの画面を覗き込む。もしかして、電波が戻っていたりはしないだろうか。
KP
電波は……戻っていなかった。
ここは純粋にド田舎なのだ。一体全体ここはどこだというのだ。

そして一体全体これはなんだったのだろうか。
牧志 浩太
「結局、何だったかよく分からなかったな」

きっと、まずいものに触れてしまっただけなのだ。
それ以外のことは……、考えないでおこう。

佐倉さんとそう言い合いながら歩けるだけで、それでよかった。
佐倉 光
「ま、お互い無事で良かったよ」
KP
佐倉はにっと笑って見せた。
牧志 浩太
「だな」
そう笑い返した。
KP
何一つ納得のいく答えを得られないまま、けれども五体はしっかり満足な状態で、あなたは一歩歩き出す。電波の通じる場所を探し求めて──。


END


生還報酬と成長……更に回復はしたし二人とも正気度は最大値まで回復したんだけど……
牧志 浩太
以上です。そうそう成長しない。〈神話〉知識は…… 増えちゃったけど。
KP
しまったなぁ。報酬チェックしてなかった。
牧志 浩太
どんどん牧志が魔きしに近づいてゆく。
牧志 浩太
こんな高い値のPCそうそう想定してないから、わりとさらっと増えますもんねぇ。〈神話〉知識。
KP
回復はしたねよかったね!!
牧志 浩太
したね!! ちゃんとMAXまで回復した!!
背景情報解説後
牧志 浩太
ハイ人笑った。
んもう! 迷惑! >まずい所オープン
でもうっかり牧志たちが洋館発見しなくてよかったですね。

カルト教団が黒幕じゃなくて、不幸な一般人ポジションになってるのが面白い。
牧志 浩太
他人巻き込む前にちゃんと物件調査はしてほしい。
KP
前にもこのパターンに巻き込まれてひっどい目にあった気がするぞ!
牧志 浩太
ひどいはなしである!!
美術館でひどい展示を味わうシナリオかと思ったらいきなり強制中断して暗黒ダストシュートに引きずり込まれるの、意外ィ。
KP
作品まだ在りそうな雰囲気出しつつ引きずり込みますからね。
【POW】対抗で一度でも勝利していれば地下に降りずに帰れます。
無理くない?
牧志 浩太
なんですよね。展示かなーと思ったらダストシュートだったとかひどいや。最高にわけのわからないきもちにさせられますね。

無理ィ!!
しかも途中まで文章もハロウィンムードだったのが、いきなり中断されてホラーですからね。驚きだぜ!!
文章がとにかく軽快で面白かった。
KP
もう少し変な展示見たかった気もする。
牧志 浩太
そう、それはある。もうちょっと展示見たかった。
カルト教団さんもちゃんと物件チェックしてほしい。作品にされるのは困るけど!!
案外作品が少なかったのはちょっとびっくり。
KP
開幕回復で削ってくって、なるほどそういうのもあるのか、ってすごく目から鱗。
牧志 浩太
ですねぇ。いきなりバンっと回復してそっから遠慮なく削っていくっていう。
KP
容赦なく酷いシナリオで「(結果的に)回復シナリオです」って言い張れるねやったね!
牧志 浩太
ですね!
発狂してズダボロになってるのに正気度は回復している!
KP
今度私もそういうの書いてみよ……
しかし舞台を渋谷にしているせいで、東京に危ない物件が増える増える。
牧志 浩太
そう増える増える。
そろそろ魔界化しない? 東京
KP
まあ元々「魔都東京」ってシナリオの登場人物だしね、佐倉……
牧志 浩太
そういえばそうだ。もうしていた!
KP
悪趣味美術館のフル版が見たいぞ!! と叫びつつ閉幕。
牧志 浩太
わかる!! フル版見たかった!! ありがとうございました!

コメント By.KP
あまりにも傷を受けすぎたので回復シナリオに行こう!
ということで、楽しく回復しようじゃありませんか! 『結果的に』。

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