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こちらには『blood red decadence』
ネタバレがあります。


本編見る!


3日目 夕方


KP
うーん。外に出ようかなぁー。
牧志 浩太
おっ、出ちゃう?
KP
一応探索しにではあるけど。
夜が近づくとちょっと迷うよね。
牧志 浩太
迷うよね。前回より派手に吸われることはもう確定事項だし。
KP
夜の真っ暗闇に真っ赤な目の殺気だった吸血鬼が現われたら、逃げるんじゃない? さすがに。
牧志 浩太
さすがにねぇ。相手が誰とか考える前に反射的に逃げちゃうよね。
KP
佐倉は焦っている。
あなたの鋭い感覚にはそれがはっきりと伝わってくる。
考えようにも情報と時間が足りない。
そのことに佐倉は焦って冷静さを失いつつあるように見えた。
佐倉 光
「くそ、まだ見てない部屋……風呂場くらいしか残ってねぇぞ」
KP
佐倉は少し考えて、呟く。
佐倉 光
「外、まだちゃんと見てねぇな……
俺、明るいうちに外を見てくるよ」
KP
ルール上は夕方探索内に含めるけど、佐倉の外出前に本を読んでも良い。
牧志 浩太
「ううん、風呂場か。置き忘れてるって可能性、なくはないけど……」
そう言いかけて、ふと気づいた。

「そういえば、俺達の服、風呂場に干したままだよな? 佐倉さん、あの時COMPも外したっけ?」

外、という言葉について考えようとすると、ふと心細くなる。迷いが出そうになる。
外。外に、出していいのか。本当に? 今のうちに縛って、違う、そんなことしない。違う。その迷いを打ち消すことに無限に留まりそうになって、一度首を振る。

結局、外を見てくる、という言葉にはうまく応えられなかった。
佐倉 光
「外したと思う。濡れてたから」
言いながら、腰にポーチを付け始める。

「陽が落ち始めてるし急がないとな。ついでに見ておいてくれるか?」
牧志 浩太
「なら、そこにあるかもしれないな。
本、読んだら、見てくるよ」

本は夕方探索時に一人で読みます。
KP
はーい
牧志 浩太
「佐倉さん、」
佐倉 光
「ああ、どうした?」
牧志 浩太
「待ってる」

ふと、言うつもりのなかった一言が口をついてしまった。たぶん、それは、堪えきれなくなって出てしまった、俺の弱音だった。
佐倉 光
「……ああ、なんか見つかるといいな」
KP
佐倉の目には、何か決意の色があったように思えた……
牧志 浩太
「……」
うまく言葉が継げなくて、そのまま本を開いて目を落とした。

KP
本はほとんどが読めない字のものだった。
見つめているだけで頭痛がしてきそうだ。

3冊目にかかったとき、不意に意味不明の文字が意味を持って視界に飛び込んでくる。
いつかと同じだ。
何者かが囁いてでもいるかのように、意味が分かる。
ニーオス・コルガイ
 彼らは宇宙の彼方から来た吸血種族である。
 ニーオス・コ ルガイは人間の生命力を食餌とする。全ての生命力を吸い取られた人間は一種の吸血鬼化ともいえる病気を発症する。
 吸血鬼化した犠牲者は新たな生命力を食餌にする必要がある。この食餌により新しい宿主にニーオス・コルガイは感染していく。
 この病気に対する唯一の治療法は、対象の太陽神経叢に鉛または銀の物体を打ち込むことである。対象は間違いなく死に、感染した犠牲者も全員死ぬが、それ以上の感染を防ぐことが出来る。
KP
恐ろしい宇宙吸血鬼の存在に触れ 《SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D5》SAN 値チェック 1/1d5
〈クトゥルフ神話〉技能 +1
牧志 浩太
1d100 70 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→19→成功
SAN 70 → 69
神話技能 22 → 23%(?)
KP
セーフ!
牧志 浩太
「……!」
また、だ。
何者かが囁いているかのように、意味不明のはずの内容が頭の中に注ぎ込まれる。

思わず、腹のあたりを押さえた。
宇宙吸血鬼。
字面だけだと何だかチープだけど、もしかして。

俺の現状、こいつのせいなのか。
「何かに取り憑かれてる」っていう見立ては、間違ってなかったんだ。

急いで読み進める手が、その次で止まってしまう。

……唯一の治療法。
そうか、唯一、か……

「そこは、記述が間違ってるといいんだけどな……」

KP
夕暮れの庭には、小さな菜園と庭具入れ、小さな明かりがいくつか、簡易ガレージなどがある。
目的もなく物を探すのはなかなか大変そうだ。
佐倉 光
ここにもう何もなかったら、あとは……また屋敷を総ざらいするしかないな。
俺の命、牧志の命のぎりぎりまで。
憂鬱な決意を固める。
もし、それでも駄目だったら。

KP
結局読める本はその一冊だけだった。
牧志 浩太
溜息をついて本を閉じる。
そうか、唯一、か。

……それしかないのなら、もう。
もう。
もう……。

諦めてもいいんじゃないか。
諦めて、あの男のようにあの獲物を飼って、呪いだけでも解く方法を探しながら暮らせばいい。
そのうち、何とかなるさ。

そんな考えが忍び込んで愕然とした。
違う。
そうと決まったわけじゃない。
そんなこと、したくない。しない。するわけがない。

立ち上がって風呂場へと向かう。
佐倉さんのCOMPだけでも、取り戻さないと。

取り戻して……。交換条件に、
違う。
壊して、

違う、
そうじゃない。
現状を打破するためだ。佐倉さんの大事な相棒を取り戻すためだ。

打ち消しても打ち消しても浮かんでくる異様な考えに首を振りながら、風呂場へと向かう。
KP
危うくなってきた。
壊さないで俺の一部!
牧志 浩太
・知っちゃったのはこんな絶望感溢れる情報だし
・佐倉さん外にいるし
・半分以上HP削れているし
のトリプルパンチ。

佐倉 光
菜園の植物をかき分ける。
道具を一つ一つ観察する。
門を調べる。

KP
風呂場を開けると、脱衣所に銀の腕輪が置きっぱなしになっているのが見えた。
これを置いてゆくとは、あの時佐倉は余程疲れていたのだろう。

洗面所の鏡には、前に立とうとも何もうつっていなかった。
奥に浴室に続く扉がある。
確かあの時、この中に干すようにと教えてもらってそうしたはずだ。
牧志 浩太
「!」銀の腕輪が目に入る。
それを見た瞬間、ぐちゃぐちゃに入り混じる感情が全部吹き飛んで、安心した。

ああ、……よかった……。
腕輪を抱く。佐倉さんには、これが必要だ。

ふと、浴室へ続く扉が目に入る。
俺達の服、そういえばあそこに干したままだよな。
腕輪の存在がわずかに何気ない思考を取り戻させてくれて、その扉に手をかける。
KP
中には、あなた方の服が干してあった。
すっかり乾いている。
見慣れたジャケットと黒いパーカーが並んでいた。
牧志 浩太
何か残ってないかな、とポケットの中を漁る。
KP
あなたの服からは袋が破れたエネルギーバーの残骸、佐倉の服からは小銭が出てきた。
ほか、何かのチケットやレシート、ハンカチやティッシュなど、突っ込むタチなら出てくるかも知れない。

牧志 浩太
うーん、ここで小銭の用途…… 思いつかないな。
白いシャツの上にいつものジャケットを羽織り、黒いパーカーを肩にかける。

腕輪は失くさないように、腕につけられるならつけておこう。
落としたくらいで壊れるとは思えないけど、壊れたら大変だし。

浴室の中と風呂場の中を見回して、他に何かないか確認する。
石鹸入れの上に何か入ってたりしないか。
自分の姿が映らない鏡を見ても何とも思わなかったのは、そろそろ夜が近いからかもしれなかった。
KP
更にしばらく捜し物をしてみたが、何も見つからなかった。
石鹸を割ってみても中に紋章付きの鍵が隠れているなどということもなく、そこはただの風呂場だった。

いつの間にか、時間は10時を回っていた。

KP
太陽は沈み、周囲はもうまっ暗だ。
佐倉 光
スマートフォンを懐中電灯代わりにして、隅々までよく調べる。
そういえば、下に続く道もあるんだったな。
道路の方に何か残っていないだろうか。
KP
道路に続くタイヤの跡がある。
この屋敷には車があったようだ。
ふたりはそれで立ち去ったのだろう。
梟の声が嘲笑っているように聞こえてきた。
佐倉 光
この道は、人間の世界に続いているんだな。
ちくしょう、ずるいぞ。
ここを下れば逃げられる、か。
なんとなく、山を下る道を見つめていた。
KP
カーテン開けたらこの姿見えてもいいよ。
我慢した牧志が死にかけたのが怖すぎて、積極的に逃げたい気分にならない……

牧志 浩太
割れた石鹸を手にしたまま、はあ、とついた溜息が大きかった。
何もない、か。あの書斎の鍵、あいつらが持っていっちゃったのかな。

……そういえば、佐倉さん遅いな。
ふとそんなことを思った時には、もうすっかり夜になっているのが分かった。

どうしているんだろう。
迷ってるのか? 野犬に襲われてるとか、ないよな?

風呂場を出て、姿を探そうとカーテンを開けた。
そこに……、

山を下る道を見つめている、後ろ姿があった。
KP
その姿がふらりと消えた。
ここからでは死角の方向。
道路の方だろうか。

KP
庭には小さなガレージがある。シャッターが開けっぱなしになっており、中は空だ。
佐倉 光
いい加減くじけそうだが、この中も調べてみよう。
何かあるかも知れないしな。
何か。
現状をひっくり返す何か。
都合のいい魔法とか。

そんなもんがあったら奴らが使ってるんじゃないかな……

ため息交じりに真っ暗な車庫に入ってゆく。

牧志 浩太
死角へと消えていく姿を見た瞬間……
視界が、真っ赤に染まった。

そうか。
そうか、そうだよな。こんな状況で、佐倉さんが俺にずっと付き合ってるはずがない。
俺は消耗してる。次に血を吸って、佐倉さんを殺してしまわない保証はない。
鍵になるような情報は、きっと見つからなかったんだろう。

佐倉さんは賢い。俺も佐倉さんも死んでお終いなら、自分だけでも生き残る道を選ぶのは、おかしくない。
それに、思考も吹き飛ぶくらいに痛いって言ってたじゃないか。気が狂う程の痛みなら、もう味わいたくないって思うに違いない。

そんな自棄のような思考が勝手に頭の中を流れていくのを、どうにか止めようとして、何度も何度も打ち消すのに、溢れ出る思考が止まってくれない。

違う。
俺があれだけ消耗してるのを見て、それでも駆け寄ってきてくれたじゃないか。
違う。
俺が死にかけているのを見て、あれだけ動揺してたじゃないか。あれだけ、あれだけ。

やめてくれ。そんなこと言わないでくれ。
悲嘆のような憎悪のような感情で泣き叫ぶ自分自身を、必死に止めようとして。

玄関へと足が向かっていることにも気づかなかった。
扉を、手が押し開けていた。


3日目 深夜


KP
夜風が木々を揺らし、何かの囁き声のようにざわめいた。
月明かりが煌々と庭を照らす。
虫の音が、獣の声が、鮮やかに飛び込んでくる。

そこに佐倉の姿はない。

さっき姿を見かけたのは、あなた方が入ってきた門とは逆側、下る道に面した方だ。
牧志 浩太
扉を開けた瞬間、煌々と輝く月がいっぱいに目に飛び込んできた。
──空が赤く染まったような、そんな気がした。

鋭い感覚は僅かな風の揺らぎさえ捉えていた。
あらゆる生き物の存在を、まるで蝙蝠か何かがそうするように、空間の中に点在する声として感じ取れた。

その瞬間自分がなにものか思い出した。

何か言っていた弱々しい声は今度こそ吹き飛ばされ、四肢も、牙も今度こそ自由だ。

獲物の姿は見当たらない。
ああ、佐倉さん、本当に逃げてしまったのかな。

逃げてしまったのなら、

朝が来る前に狩り立てよう。

分かるよ、佐倉さんは強いし機転が利くし、足だって俺よりちょっと速い。
いくら俺の感覚が鋭くたって、隠れたりこっそり歩いたりするのも得意だ。

でも、体力はそんなにないだろ。随分へばってたもんな。追いかけっこなら最後には俺が勝つんじゃないかな。

ああ、楽しみだ。楽しみで、憎い。
どうして逃げたりしたんだよ、佐倉さん。

俺の獲物なのに。
牧志 浩太
佐倉さんが積極的に逃げたい気分になってないのに、誤解と真夜中でうっかり暴走→反転する牧志
(牧志は最後まで佐倉さんを信じようとしていたんですが、今度は対抗しきる程の力が出なかった)
KP
スイッチ入っちゃった。
牧志 浩太
入っちゃった。

KP
ガレージの中は暗く、何も見えない。
しかし地面に微かに光るものがある。
佐倉 光
くそ、庭で時間かけすぎたな。
さっきここらで何か光ってた気がしたけど……
拾う。
KP
金属片のようだ。暗い場所ではそれが何なのか良くわからない。
佐倉 光
鍵か? そうだといいんだけど。
随分遅くなっちまった、牧志のヤツ大丈夫かな。
車庫から足早に出る。
KP
その時。
あなたの肌が殺気を感じ取る。
恐ろしい悪魔の気配がする。
KP
「ここに留まりますか? Yes/No」と出るレベルだ。
佐倉 光
本能と理性の両方が絶叫した。
逃げろ。死ぬぞ。
瞬時に従う。
悪魔なんかに殺されている場合ではない!
牧志 浩太
それはくすくすと笑う声だった。
楽しそうに、憎らしそうに、抑えきれない凶暴な感情を洩らして笑う声だった。

微かに牙の鳴る音が、耳に届いた。
壁の外、すぐ近い距離に恐ろしいものが存在していた。
佐倉 光
くそ、COMPがありゃいいのに。
声を上げて牧志を呼ぶか?
しかしまだ場所がバレていないならみすみす居場所を晒すことになるか。
なんとかここを脱出して、屋敷に戻らないと……
闇の中でじりじりと動く。
襲撃者の目を盗んで、庭へ。
嗅覚するどい
KP
まあ、匂いでバレバレなんだが……
屋敷の中で追いかけっこ?
それとも完全に外に逃げようかなー。
牧志 浩太
真っ暗な山の中で追いかけっこの方が雰囲気的には合いそう。
この状況で、なんと牧志の服装がいつものジャケットに戻っているという
KP
振り向けば正体が分かるね……
しかもCOMPつけてると。
牧志 浩太
そう。つけてると。
いつものジャケットに腕のCOMP、暗い中でも正体が分かっちゃう。

牧志 浩太
がさ、がさと、草をかき分け、踏む音。
あなたがいる車庫の外をゆったりと周り、あなたが飛び出してくるのを、今か今かと待っているような気配。
まるでそれは童話に出てくる、恐ろしい狼の影のようだった。
佐倉 光
屋敷に戻って扉を閉める。
牧志を呼んで対処する。
これしかないだろう。
入ってこられたら追い詰められる。

足音を忍ばせ、一瞬の隙を突いて外へ飛び出す。
牧志 浩太
「!」
ああ、間違いない。やっぱり間違いはなかった。
獲物を追う歓喜と逃げる獲物への憎悪がいっぱいに溢れて、その瞬間、一瞬だけ反応が遅れた。

飛び出した獲物を追い、地を蹴る。
佐倉 光
くそ、こいつ気配が読めるのかよ!

屋敷の方角から来てる。ひとまず道の方に逃げるしかないのか。
振り向いて正体を確認する余裕などない。
今までの経験が声高に叫んでいる。一瞬でも足を止めたら殺される。

低い塀を跳び越え、道の方へ。
牧志 浩太
逃げてゆく姿を追いかけ、塀を跳び越える。
獲物は開けた方向へ逃げていく。甘い香りが質量さえ伴って、その存在を、向ける足の方向を教えてくれる。
佐倉 光
あまり遠くへ行って迷っても困る。
隙を見て何とか屋敷へ戻らないと。
もう見つけられているんだ、もう助けを求めるしかないだろう。
「牧志! 助けてくれっ!」
屋敷から離れてしまっているが、聞こえるだろうか。
あいつ夜は耳が異様に良いみたいだから、聞こえる! といいんだが。
牧志 浩太
ああ。
響き渡った声に、ふっと足を止める。

まだ俺のこと、諦めないでいてくれたんだな。
腹が減りすぎて血迷ってたのは、俺の方だったらしい。

こんな状況でも、俺に助けを求めてくれている。
それなら。

一息に喰らってやったら、どんな顔をするかな。

笑みにひくつく唇を手で押さえて、姿を見せる。
ああ、いけない、いけない。
甘い香りが絶えず鼻腔から入り込んで、気を抜けば正気を失ってしまいそうだ。

殺してしまったら俺もお終いなんだから。落ち着いて味わわないと。
牧志 浩太
※正気は失ってる
佐倉 光
屋敷の方へ戻ろうと、何とか襲撃者と距離を開ける。
その姿が急に月明かりの中に出てきた。
見慣れたジャケットに、茶の髪。真っ赤な瞳。白い肌に歪んだ笑みの吸血鬼。
佐倉 光
「嘘だろ……」

この気配が牧志から発せられていることに、心の底から恐怖した。
駄目だ。
あいつは、駄目だ。
牧志だけど、違う。

唇を噛んで身を翻す。

今のあいつに捕まったら、まずい気がする。
道を走ったら体力差で終わり。こっちは白い服だ。森に逃げ込んでも目立つ。

どうしよう。どうしたらいい。逃げきればいいのか。
どれだけ逃げられるっていうんだよ。
もう胸のあたりが痛み始めているっていうのに!
KP
あなたの獲物はあなたの姿を見るなり逃げ出した。
森に飛び込もうとしているのか、ちらちらと伺っているように見える。
【DEX】勝負!  ×5で。
佐倉 光
1d100 45 DEX Sasa BOT 1d100→28→成功
FANBOX開設したで
牧志 浩太
1d100 40 DEX Sasa BOT 1d100→58→失敗
KP
佐倉は森に飛び込んで行った。
KP
しかし【DEX】で勝とうと、匂いで行き場所はバレるから身を隠すこともできないし、いずれ体力で負けるんだよな……
あ、適当なタイミングで捕まえていいですよ。
牧志 浩太
【CON】勝負に持ち込まれたらねぇ。
はーい!
いい感じのところでいい感じにしようと思います。

牧志 浩太
地を蹴り、森に飛び込む背中を追う。
遊ぶ余裕はない。
どれだけ離れても隠れても見つけられる自信はあるが、うっかり朝が来たらどうなるかなんて、考えたくもない。

期待で高鳴る胸を押さえ、走る。
KP
追跡者が追いにくいよう、木立の中を駆け、闇を縫い、急に方向を変える。
追いにくいかも知れない。
逃亡者に十分な体力があれば、の話だ。

すぐその動きが鈍くなってくる。簡単に追いつける速度まで。

獲物から金属のにおいがした。
牧志 浩太
それは酷く嫌な金属の匂いだった。
ああ、そうか。持って出たんだな、あれを。
それはそうか。置いていくはずがない。

ふっと笑みが漏れる。ここは森の中だ。
木立の影に身を隠す。
距離を取り、匂いを頼りに背後に回る。
KP
佐倉は肩で息をしながら拳銃に手をかけ、木の幹を背に足を止めていた。
もう限界が近いらしい。
不意に彼は声を上げた。
佐倉 光
「おい、牧志、俺が言ったこと、覚えてるだろうな?」
牧志 浩太
「なんだ、気づいてたのか」
荒い息が首筋に掛かりそうな近さで、吸血鬼の気配が蠢いた。
佐倉 光
「俺が死んだら、お前も死ぬんだぞ」
佐倉 光
くそ、もうあいつの射程圏内か。
俺拳銃なんて使ったことないからなぁ……
まいったな、勝ち目がない。
最終手段の口車くらいしか。
涙の泣き落としは、今の牧志には効かないだろうな。
牧志 浩太
「知ってるさ。殺しはしない。
佐倉さんが本当に逃げちゃったら、追いかけて飼ってやろうと思ってた」
酷く冷たく感じる手が、するりと近づいてくる。
佐倉 光
「俺、そういう趣味はないからさ」
拳銃を抜いて、吸血鬼に突きつけようと試みる。
弱点
KP
しかし弱点は知らない……よな確か。
ニーオス・コルガイの本、牧志一人で読んだから。
牧志 浩太
知らないはず。その情報は牧志が一人で読んでますからね。
KP
そうすると突きつけるとしたら心臓かな。
牧志 浩太
かな?
一応佐倉、殺すためではなく、交渉に持ち込むためにアクションしています。

牧志 浩太
この距離であれで撃たれたら、ただじゃ済まないという確信がある。
咄嗟に相手の腕を押さえ、押さえ込もうとする。
KP
あなたは知っている。彼はコンプレックスを抱くほどに非力だ。
尚更今のあなたに抵抗できるものではない。
軽く押さえただけで苦痛の声を上げて動かなくなった。
銃は彼の手に収まることなくベルトに挟まったままだ。

夜の力を得たあなたにできないことなどない。
彼が抵抗する気がなくなるまで痛めつけることも、有無を言わさず連れ戻すこともできる。
けいさん
KP
あっだめだ痛めつけたら死ぬw
牧志 浩太
「これ心臓撃って復活してきたらホラーだよな」と思いましたが、〈拳銃〉のダメージって1d10だから、牧志を吹き飛ばしきれないと佐倉さんが死んじゃうんですよねそれやると。
KP
あと、本番で接射しても40%だから、割と5発って怖いなぁとw
銀の杭見つけて20%で頑張る手もあるけども。
牧志 浩太
あ、そうか牧志が接射して50%だったのは〈拳銃〉技能が初期値じゃないからか。確かにそれはちょっと怖いですね。

KP
佐倉の瞳にはあなたの姿がうつっている。
その目は、強い恐怖と怒りをたたえ、見たこともないような暗い色をしていた。
牧志 浩太
獲物を得た獣がすることは、そのどちらでもない。
その首に噛みつくことだ。

見たこともないような暗い色が何かに刺さった気がしたが、それは無視できる程度の痛みだった。
佐倉 光
「あが……ぐ……」
KP
あなたの耳元で苦痛の声が漏れる。足が空を蹴り、手が何とかあなたに攻撃を加えようと暴れる。
彼が暴れる度、暖かい血潮があなたの口に流れ込んでくる。
牧志 浩太
雫が一滴流れ込んできた瞬間、それを貪ること以外は考えられなくなった。
いや、考える必要などない。この獲物を殺さずに保っておくこと、それだけに注意を払っておけばいい。

暴れる手足すら喜ばしく感じた。
手足を心臓をからからに干乾びさせていた欠乏が、急速に癒えていく。枯れ果てた心臓に血が巡り、指先が熱を取り戻す。
KP
殴る。押す。引き剥がそうとする。
そんな意思ある攻撃の動きは次第に消え、あなたが与える苦痛のままに震えるだけになっていった。
血の匂いは夜気に混ざって芳しく、ふくよかにあなたの感覚を包み込む。
獲物の口から漏れるのは、うわごとのような微かな言葉。
それもただ息が漏れるだけの雑音になっていった。
指先から力が抜け、目は見開いたまま何も映さなくなる。
力を失ってだらりと垂れた足は、もう地面を踏んでいない。

今夜はこの程度で留めておくべきかも知れない。
これ以上吸うと、死んでしまう可能性がある。
牧志 浩太
心地よい夜の温度を受け止める。
冴え冴えとした月の光に照らされて、全身が歓びに打ち震えていた。

あるべき時に、あるようにして、あるべきものを受け止めている。

口を離すのが酷く惜しく感じた、けれど死んでしまっては何にもならない。動かなくなった獲物を両腕で抱え上げ、屋敷への道を戻る。

いずれ朝が追いかけてくる。
その前に、安全な屋敷の中へ戻ろう。
KP
処理
牧志はHP全快 《SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D3
佐倉はHPに6ダメージ 《SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D3
牧志 浩太
HP 5 → 11
1d100 69 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→42→成功
SAN 69 → 68
佐倉 光
1d100 70 SAN Sasa BOT 1d100→67→成功
FANBOX開設したで
SAN 70→69
HP 10→4
牧志 浩太
だいぶんがっつりやられた。

KP
あなたは迷うことなく屋敷へと戻ることができた。
屋敷の扉は新たなる主たるあなたを静かに迎え入れる。
背後で重々しく扉が閉じた。
この小さな世界は外の世界と隔たる。
牧志 浩太
晴れやかな気分で獲物を抱え上げ、寝室へ戻る。
青ざめた獲物の身体をベッドに寝かせた。

ああそうだ。今度こそ逃げてしまわないよう、繋いでおこう。

放り出された首輪を獲物の首にかけ、重いベッドの支柱に繋ぐ。
身体に負担をかけないよう、それだけにしておいて、コップに水を汲むと鉄剤をサイドテーブルに置いた。
銃を取り上げ、手に取れない位置に移動する。

それだけの作業を終わらせると、ベッドに身を横たえて眠りについた。
※どちらも寝室のベッドで寝ています。
※佐倉さんから銃を取り上げ、首輪でベッドの支柱に繋いでいます。
KP
すがすがしいまでに曲がったな牧志。
朝人間の意識に傾いたらどうなっちゃうのよこれw
一日休まなきゃならないからちょうどいいネー!
牧志 浩太
ちゃんと朝になって人間の意識に傾いたら首輪はとりますヨー ただ牧志当人も佐倉さんの状態見て思い出したらめちゃくちゃショックだと思う。



4日目 朝


KP
牧志 HPに1d4ダメージ
佐倉 HPが1d2+1回復
牧志 浩太
1d4 Sasa BOT 1d4→4
HP 11 → 7
あらら、あれだけ吸ったのにまたでかいダメージ受けちゃった。
佐倉 光
デカァイ
1d2+1 Sasa BOT 1d2+1→2+1→合計3
HP 4→7

佐倉 光
長い悪夢から目覚めた気がした。
体が重く、頭痛がする。平衡感覚が狂っている。吐き気と寒気がする……
朝の音が聞こえる。
体が冷えている。寒い……

体を動かすと、ちゃり、と音がする。
首元に手をやると、堅い革の感触があった。
佐倉 光
ああ、なんだよ。夢じゃなかったのかよ。
飼ってやる、って? 冗談きついぜ……
額に手を当て、息を吐いた。

夜中に森で、恐ろしい悪魔に追われて、それが牧志で。
牧志ではないのに、牧志の顔と声で、牧志の記憶で話しかけてくる最悪の悪魔で……

横で眠っているのは、あの吸血鬼だ。
どうしよう。
目覚めたこいつが昨日の夜中みたいな人格だったらどうしよう。
折角手に入れたのに。
今すぐに起こして話をしなければならないのに、絶望的にそんな気分になれない。

ベッドサイドテーブルに置いてある鉄剤と水を見て、笑い出す。
本格的に生かさず殺さずで飼うつもりだ、こいつ。
いっそ死んでやろうかな。

途方に暮れてもう笑うしかなかった。
お泊まりバランス
KP
もう一晩お泊まりするか、今日で決着を付けるか……
ゆっくりしてくかな?
牧志 浩太
ここで牧志が昼探索すると、出目によっては戦闘が怖いHPになるんですよね。
ただ、こんなことになった次の日に我慢せず吸血する気になるかどうかというのもあって悩ましい。
KP
それはそう。
佐倉は牧志の態度次第ではあるけど付き合う気ではいる。
あと、客間で銀の杭取り損ねてるから、そっちも何とかしたいところだな。
ただそっちは牧志に頼むわけにはいかないからなぁ。
牧志 浩太
なんですよねぇ。
それ取るなら明日まで持ち込むしかない。
KP
今日の昼に書庫を探索、1ターンで本を読んでバトル……武器は拳銃のみ、HP的に二人とも割と危険。
今日の夕方に牧志だけ動いて書庫を探索、翌日なんか理由付けて佐倉が客間を探索している間に呪文ゲットしてバトル……安全だけど吸血どうしよう?

って感じですよね。
牧志 浩太
って感じですね。安全なのは後者。
書斎を探索した時点で「打開する手段がある」ことは分かるので、演出の範疇にはなりますが、牧志が本格的におかしくなる前に(真夜中になる前に)吸血させてもらうとか?
今の佐倉さんがそれを呑めるかというのはありますが。
KP
佐倉は正気の牧志が頼んでくるなら素直に応じるよ。
狂気の牧志が襲ってくるなら、正気の牧志を活かすために我慢するよ。
鍵がある、と言う時点で何らかの打開策がある可能性が生まれているから。
牧志 浩太
なるほど。


KP
牧志。あなたは隣で聞こえる笑い声で目覚めるだろう。
牧志 浩太
ふっ、と目が覚める。
数度、まだ曖昧な意識の中で、緩やかに瞬きをする。
KP
隣から聞こえる笑い声は、自虐的であり、破滅的であり、聞き覚えのある声なのに聞いたこともない暗い響きだった。
牧志 浩太
「あ、あ……、」
泣きたいくらいに記憶は連続していた。
恐ろしい熱に浮かされて笑ったことを、全部、全部覚えている。
痺れるような血の甘さと狂乱の余韻が、まだ掌に残っていた。

あの時自分が佐倉さんに何をしたか。
何を思ったか。
何を考えていたのか。

佐倉さんの眼に、何を、見て、いたのか。

「そうだ、佐倉さん……、ごめ、これ、取らないと、」
何を言っていいのか分からなかった。何も言えなかった。しどろもどろになりながら、駆け寄って首輪を取ろうとする。
佐倉 光
「近寄るな」
返されたのは拒絶の言葉だった。
牧志 浩太
「……」
伸ばしかけた手が止まる。

飢えは、一時満たされたはずなのに。
腹の奥ではなく、心臓がきりきりと痛んだ気がした。
佐倉 光
「分かってるよ。お前が今事情があっておかしくなってるってことは。
お前のせいじゃないって事は。
けど、まだ飲み込めてねぇんだよ。このままでいいから、しばらく放っておいてくれ」
佐倉はのどの奥が潰れたような声で言った。
その目はあなたをまっすぐに見ない。
牧志 浩太
「そうだな。ごめん」
静かに一歩下がってベッドから降り、距離を取って背を向ける。

「昨日、外を見に行っただろ。何か見つけた?
後でもいいから、それだけ教えてほしい。
俺からも、一つ伝えたいことがある」
KP
ベッドサイドテーブルに、何か小さい金属片が置かれた音がした。
牧志 浩太
そちらに目を向ける。
KP
泥に汚れた鍵だ。
佐倉 光
「車庫に落ちてた。俺は少し寝るから、頼む」
KP
佐倉は鎖を鳴らして布団を頭からかぶってしまった。
牧志 浩太
「そうか、あいつらが逃げた時に落としていったのか……。分かった、見てくる」

サイドテーブルに佐倉さんのCOMPを置いて、部屋の外へ出た。身体が重く、怠い。それ以上に泣きたい気持ちだった。佐倉さんはもっと泣きたい気持ちなのに違いなかった。
KP
この鍵、彼ら普通にポケットに入れたまま逃げようとしたけど、車の鍵出すときに落としちゃったんです。悪意も善意もない。偶然。
牧志 浩太
なるほどなぁ、っていう。
それで外の車庫だったんですね。全くの偶然だった。
KP
あと佐倉、COMP見つかって鍵見つからなかったら悪魔に扉破壊させようと思ってた!
だから牧志君が夜に演出ででも外に出たら一応見つかる可能性はあったんですよね。
シナリオにないからまあ牧志は出ないだろうと思ってた。
牧志 浩太
なるほどなぁ。夜の牧志はまあ全体的にあんまりそれどころじゃなかったですからね。
そしてそれがあるから佐倉さんが外に出る必要もあったわけですね。牧志が誤解してえらいことになったけど。
KP
想定通りの流れになってごめんなふたりとも!
追われて外に行くか、探索に行くかで見つかる予定でした。
牧志 浩太
ごめんな!
昼のうちに外を見直しておこうという話になっていればこうならなかったかもしれないのに。PLノリノリだったけど。



4日目 昼


KP
昼行動、どうしますか?
ゾーキングだけを宣言するなら、休息はできますよ。
牧志 浩太
鍵で開かなかったという扉が開けられるかどうかだけ確認して、昼は行動せず休息します。
牧志 浩太
ずるずると廊下の壁にもたれて座り込む。
ああ、身体が重い。怠い。この怠さにも慣れてきてしまっている。
夜が近づく程に身体に力が戻ってくる感覚にも、慣れてきてしまっている。
最初の日は、我慢しようとして閉じこもって、気づいたらああなっていた。
次の日は、拘束具の助けを借りて必死に我慢して、ああなってはいたけど、なんとか覚えていることができた。
昨日は……、その反動なのか、佐倉さんが山を下りる道を見てたのがショックだったのか、我慢する間もなく、

……誤解したこと、謝りたいな。
もし、謝ることができたらだけど。

少し、嫌な感覚がある。
この身体に意識が溶けて、馴染んでいくような、嫌な感覚。
こうなる前の感覚を、一つずつ忘れていくような、嫌な……、 感覚。

それをいつまで、俺は嫌だって思っていられるのか。

床に吸い込まれそうな身体を持ち上げて、扉の前へ行く。中を探りたいけど、これ以上動けそうにない。
せめて、鍵が合うかどうかだけでも、確認を……。
KP
鍵は鍵穴にぴったりと合った。
スムーズに回り、閉ざされていた扉が開く。
中から古い紙の香りがする。

扉の中には無数の本が並べられた書斎があった。
牧志 浩太
ああ、これだけ本があれば何かありそうだ、いや、あってほしい。
書斎の中に倒れ込んで、本を枕に眠り込む。
KP
暗い部屋の中、遠い昔を思い出す本の香りはあなたの気を落ち着けてくれたかも知れない。
牧志 浩太
「……」
本の香りに皺だらけの大きな手を思い出して、
また、泣きたくなった。


ひとこと
佐倉 光
探せども探せども見つかるのは絶望ばかり。
つのる焦燥、押し寄せる血への渇望。
ついに互いを思う気持ちが反転する。


CoC『meow!!』牧志&佐倉 1(秘匿オープン版)

猫とこっくりさんやっている奇妙な青年は、おおいに人目を集めたようだ。

CoC『静寂舞手』佐倉&牧志 2

「鏡よ鏡。世界で一番イケてる悪魔使いは誰。なんつってな」

CoC『AND/HAND』佐倉&牧志 1

「死んだ隙に、か? 大胆過ぎる手口だな」
「死んだとかさらっと言うじゃん」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


CoC『ペルソナ 勝利の塔』3-1

「ほう……埴輪のプリンスさま! か……」

【置】CoC『midnight pool』 佐倉&牧志 1

「僕の仕事、何だったんですか?」
「悪魔退治屋。報酬の多寡は分捕った金次第」
「え? 悪魔って言った? 退治? ぶんどるってそれ強盗では?」

【置】CoC『骨組みだけの宇宙』 佐倉&牧志 1

「……大丈夫だよ。手を握ってても大丈夫。だから、いつもみたいに話そうよ」
「ああ……努力する……」