こちらには『blood red decadence』の
ネタバレがあります。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。波照間は魔と人の区別をあまりしない。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
佐倉とは友人。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。悪魔召喚師として、人と魔の境界を強く意識する。
体力にはとにかく自信がない。
牧志とは友人。
これは二周目です。
前に佐倉が吸血鬼でこのシナリオを遊びましたが、逆の立場も見たいね! ということで、
・逆の立場でもう一周遊ぶ
・『レミングス・ドリーム』の時の夢の薬が余っていたはずなのでそれを使えばシナリオ終了後に『なかったこと』にしなくても良くなるよね!
ということで、今度はPC牧志、KPC佐倉で行きます!
一回遊んだシナリオをまた一度遊ぶのも、また楽しいものですよ!
前に佐倉が吸血鬼でこのシナリオを遊びましたが、逆の立場も見たいね! ということで、
・逆の立場でもう一周遊ぶ
・『レミングス・ドリーム』の時の夢の薬が余っていたはずなのでそれを使えばシナリオ終了後に『なかったこと』にしなくても良くなるよね!
ということで、今度はPC牧志、KPC佐倉で行きます!
一回遊んだシナリオをまた一度遊ぶのも、また楽しいものですよ!
KP
それは、ちょっとした思いつきから始まった。
連休一日目、あなたの家に遊びに来ていた佐倉が、棚に置いてあったピルケースに入った薬を発見したのだ。
連休一日目、あなたの家に遊びに来ていた佐倉が、棚に置いてあったピルケースに入った薬を発見したのだ。
佐倉 光
「おっ、これ俺が入院してたときのやつじゃん。
飲んだら同じ夢が見られるんだっけ?」
飲んだら同じ夢が見られるんだっけ?」
KP
そんなことを言った佐倉の目は、子供っぽいと思えるほどの興味に輝いていた。
牧志 浩太
「えっ?」
一瞬何のことか分からなくて目を瞬いた。
あの後それはもう色々ありすぎて、存在ごと忘れていたのだ。
一瞬何のことか分からなくて目を瞬いた。
あの後それはもう色々ありすぎて、存在ごと忘れていたのだ。
佐倉 光
「俺あの時のこと全然覚えてないんだよ。
四時間で目覚めて、夢を共有するってことは、
ずっとレム睡眠が続いているってことなのかな。
夢はどっちが主体になるんだろうな? すげー気になって」
四時間で目覚めて、夢を共有するってことは、
ずっとレム睡眠が続いているってことなのかな。
夢はどっちが主体になるんだろうな? すげー気になって」
KP
興味が暴走している。
あなたは今までの経験から察するだろう。
これは何らかのやり方で試してみよう、なんて話になる。
あなたは今までの経験から察するだろう。
これは何らかのやり方で試してみよう、なんて話になる。
牧志 浩太
「あ、これか。うん、俺が飲んだ時はそうだった。
あの時は色々あったからだとも思うけど、夢とは思えなくて、まるで現実で一緒に行動してるようだったな。
確かに四時間眠りはしたけど、夢を四時間ずっと見てたのかどうかは分からないな。夢の中って時間の体感が……」
そこまで律儀に答えて、あ、と気づく。
これは試してみたいって目だ。
まあ、俺もあの時のような影響のない、普通の夢を共有したらどうなるのかは気になる。
あの時は色々あったからだとも思うけど、夢とは思えなくて、まるで現実で一緒に行動してるようだったな。
確かに四時間眠りはしたけど、夢を四時間ずっと見てたのかどうかは分からないな。夢の中って時間の体感が……」
そこまで律儀に答えて、あ、と気づく。
これは試してみたいって目だ。
まあ、俺もあの時のような影響のない、普通の夢を共有したらどうなるのかは気になる。
佐倉 光
「悪魔と夢を共有したら何が見えるんだろうなぁ。どう思う?」
牧志 浩太
「悪魔か、思考形態が違うんだっけ? 俺っていうか、先輩の視点では案外近いようにも思えたけど。
そういえば、夢を見るどころか、夢の中に住んでるような悪魔もいるんだもんな。
どうなるんだろうな? 俺も気になってきた」
そう言われると、俺も色々気になってきた。目の前のピルケースの中の薬が、不思議な魅力を放って見えだす。
何せあの時は必死が過ぎて、夢を共有する体験を楽しむなんて余裕はなかったのだ。
そういえば、夢を見るどころか、夢の中に住んでるような悪魔もいるんだもんな。
どうなるんだろうな? 俺も気になってきた」
そう言われると、俺も色々気になってきた。目の前のピルケースの中の薬が、不思議な魅力を放って見えだす。
何せあの時は必死が過ぎて、夢を共有する体験を楽しむなんて余裕はなかったのだ。
佐倉 光
「話が分かるじゃん。
とはいってもいきなり悪魔ってのもさすがに危ないし、
まずは人間で試してみたいわけ。
試すっつってももう何回もやってるし、危険がないのは知ってるだろ?
まあ前回は色々あったみたいだけど、今回はただの夢だしさ」
とはいってもいきなり悪魔ってのもさすがに危ないし、
まずは人間で試してみたいわけ。
試すっつってももう何回もやってるし、危険がないのは知ってるだろ?
まあ前回は色々あったみたいだけど、今回はただの夢だしさ」
KP
あなたが興味を持ったと見るや、佐倉はたたみかけてくる。
佐倉 光
「つーわけで、はい」
KP
ピルケースの中から一粒取りだして、ケースをあなたに渡す。
今は午後2時頃。寝るにはちょっと早い時間に思えるが。
今は午後2時頃。寝るにはちょっと早い時間に思えるが。
佐倉 光
「四時間寝たら大体晩飯時になるだろ。
実験結果共有しつつ飯食いに行こうぜ」
実験結果共有しつつ飯食いに行こうぜ」
牧志 浩太
「いいな。ひと眠りして晩飯ってものも自堕落で悪くない。
さて、どんな夢を見るかな」
ケースを受け取りながら、ここ最近に見た夢で覚えているものを思い出したりしていた。
さて、どんな夢を見るかな」
ケースを受け取りながら、ここ最近に見た夢で覚えているものを思い出したりしていた。
牧志 浩太
あの夢以外だと、なんだっけな。俺が先輩になって弓で空を飛ぶ夢とか(なんだこれ?)
料理を作ろうとしてもしても豚肉に火が通らない夢とか…… うーん。
料理を作ろうとしてもしても豚肉に火が通らない夢とか…… うーん。
KP
二人は、休日の午後のちょっとした娯楽のつもりで薬を口にした。
それが終わりの見えない悪夢の始まりだということを、彼らはまだ、知らない。
それが終わりの見えない悪夢の始まりだということを、彼らはまだ、知らない。
Blood red decadence
大和様 作
赤の退廃は二度訪れる。
牧志 浩太
わーーーめちゃくちゃ熱いイントロ ありがとうございます
KP
「夢だったらいいのに」と「夢だと思ってたのに」のどっちが楽しいですかねー
夢を見ているつもりだったんだけど、明らかに感覚は現実だし目も覚めない、の方が楽しいかな?
どうかなー、現実の方がいいかな。
夢を見ているつもりだったんだけど、明らかに感覚は現実だし目も覚めない、の方が楽しいかな?
どうかなー、現実の方がいいかな。
牧志 浩太
本編中では夢を見ているという意識、はない方が楽しそうかなと思います。前回のことも忘れてるわけですしね。
夢を見ている意識があると、夢である可能性に縋っちゃいそうだし。
夢を見ている意識があると、夢である可能性に縋っちゃいそうだし。
KP
ああー、確かに。
じゃあすっぱり忘れちゃいましょう。
じゃあすっぱり忘れちゃいましょう。
KP
高原の風が爽やかに吹き抜ける。
佐倉がいつになく大声で「ヤッホー」なんて叫んでいる。
そう、あなた方は最近のいろいろな事件で受けたストレスの解消に
高原の町へ遊びに来ていた。
空気は美味しく、のどかで心地よい。
しばらく晴れが続くという予報だったので、ゴンドラに乗ってちょっとした山の頂上まで上がってきている。
何ともいい眺めだ。
手前は緑の深い森、中腹にはペンションらしき物が見え、
遠くにはのどかな牧場。絶景である。
佐倉がいつになく大声で「ヤッホー」なんて叫んでいる。
そう、あなた方は最近のいろいろな事件で受けたストレスの解消に
高原の町へ遊びに来ていた。
空気は美味しく、のどかで心地よい。
しばらく晴れが続くという予報だったので、ゴンドラに乗ってちょっとした山の頂上まで上がってきている。
何ともいい眺めだ。
手前は緑の深い森、中腹にはペンションらしき物が見え、
遠くにはのどかな牧場。絶景である。
牧志 浩太
(あれ?)
はた、と辺りを見回す。
どうしてか一瞬、なぜここにいるのか思い出せないような感覚に捉われた。
(ああ、そうか。最近色々あったから、旅行に行き直そうって)
そこに割り込む佐倉さんの声。
緑の香りが鼻を撫でた時、記憶が一気に追いついてきた。
うーん、疲れてたみたいだな。そのよく分からない錯覚を払って、軽く目を閉じる。
風が気持ちいい。
はた、と辺りを見回す。
どうしてか一瞬、なぜここにいるのか思い出せないような感覚に捉われた。
(ああ、そうか。最近色々あったから、旅行に行き直そうって)
そこに割り込む佐倉さんの声。
緑の香りが鼻を撫でた時、記憶が一気に追いついてきた。
うーん、疲れてたみたいだな。そのよく分からない錯覚を払って、軽く目を閉じる。
風が気持ちいい。
佐倉 光
「結構歩いたな。そろそろ戻ろうぜ? さすがに歩いて降りるのは辛いし。
下でなんか食おうぜ、腹減ったよ俺」
下でなんか食おうぜ、腹減ったよ俺」
KP
佐倉がはるか遠くのゴンドラ乗り場を指す。
登山道を下りながら色々見て歩いているうちに、結構な距離を下ってしまっていた。
それでもゴンドラ乗り場まで登り直した方が楽だろう。
なんだか涼しかった風が急速に冷たくなっている。一雨来るのかも知れない。
登山道を下りながら色々見て歩いているうちに、結構な距離を下ってしまっていた。
それでもゴンドラ乗り場まで登り直した方が楽だろう。
なんだか涼しかった風が急速に冷たくなっている。一雨来るのかも知れない。
牧志 浩太
「賛成。うわ、一雨来るかもな。ちょっと急ごう」
急激に辺りの気温が下がり始めている。穏やかに晴れていたはずの空を見上げれば灰色で、何かの影にでも入ったように地面は薄暗い。
そよ風だったはずの風が頬を叩く。
急激に辺りの気温が下がり始めている。穏やかに晴れていたはずの空を見上げれば灰色で、何かの影にでも入ったように地面は薄暗い。
そよ風だったはずの風が頬を叩く。
KP
風はみるみる強くなり、それに吹き寄せられるように暗雲が押し寄せてくる。
ごうごうと風がなり、遠雷がとどろく。
暗い空から大粒の雨が降り始めていた。
ごうごうと風がなり、遠雷がとどろく。
暗い空から大粒の雨が降り始めていた。
佐倉 光
「嘘だろ、予報晴れだったぞ!」
KP
佐倉が悲鳴のような声を上げる。
牧志 浩太
「うわっ、雨! まずいな、傘持ってないぞ」
登山道を見上げた。ここからゴンドラ乗り場まではまだ遠い。
下手しなくてもずぶ濡れになりそうだし、下手したら山道で滑って台無しだ。
どこか、雨宿りができる場所がないか咄嗟に探す。山の天気は変わりやすいっていうし、ちょっと待てば止んでくれないか。
登山道を見上げた。ここからゴンドラ乗り場まではまだ遠い。
下手しなくてもずぶ濡れになりそうだし、下手したら山道で滑って台無しだ。
どこか、雨宿りができる場所がないか咄嗟に探す。山の天気は変わりやすいっていうし、ちょっと待てば止んでくれないか。
KP
先ほど上から見た感じでは、ペンションか何かのような赤い屋根が森の中に見えていた。
見るとあなたの横に看板のない細道がある。
方角的にはこの道を降りれば、ゴンドラ乗り場よりは
あのペンションらしき建物に早く着きそうだ。
それにこの強風ではゴンドラは止まってしまっている可能性が高い。
見るとあなたの横に看板のない細道がある。
方角的にはこの道を降りれば、ゴンドラ乗り場よりは
あのペンションらしき建物に早く着きそうだ。
それにこの強風ではゴンドラは止まってしまっている可能性が高い。
牧志 浩太
「佐倉さん、あの道を行こう。脇道だけど、上から見たときに建物が見えたんだ」
急激に強まる風が髪を揺らすのを払いながら、辺りに目を凝らす。
脇道を指さす。
ゴンドラ乗り場の様子を思い出してみるが、満足な屋根はなかった気がする。
あの建物なら、軒先くらいはありそうだ。
急激に強まる風が髪を揺らすのを払いながら、辺りに目を凝らす。
脇道を指さす。
ゴンドラ乗り場の様子を思い出してみるが、満足な屋根はなかった気がする。
あの建物なら、軒先くらいはありそうだ。
KP
雨はもはやあなた方の背を押すように叩きつけていた。
辛うじて佐倉が返事してこちらへ向かうのが見える。
まともに目が開けていられないほどの雨だが、脇道に入ると木々に遮られてか雨が弱まったように感じられる。
この道をゆくならなんとか進めそうだ。
それに足元はしっかりした木道になっており、普段から人が歩く道になっているのだと分かる。
けっして希望的観測が見せた幻影ではないのだ。
佐倉もあなたの後に続く。
空には雷鳴が轟いていた。
辛うじて佐倉が返事してこちらへ向かうのが見える。
まともに目が開けていられないほどの雨だが、脇道に入ると木々に遮られてか雨が弱まったように感じられる。
この道をゆくならなんとか進めそうだ。
それに足元はしっかりした木道になっており、普段から人が歩く道になっているのだと分かる。
けっして希望的観測が見せた幻影ではないのだ。
佐倉もあなたの後に続く。
空には雷鳴が轟いていた。
牧志 浩太
「うっぷ……!」
激しく叩きつける雨の中を、どうにか見える脇道を目指して飛び込む。
しっかりとした木の感触が希望を与えてくれる。
激しく叩きつける雨の中を、どうにか見える脇道を目指して飛び込む。
しっかりとした木の感触が希望を与えてくれる。
KP
道を進むと、ほどなく森は開け、屋敷が見えてきた。
低い壁に囲われたささやかな庭、少し開けた道は広く、下りにも続いている。こちらは車が通るらしく広い。
いわゆる洋館というのだろうか。
低い壁に囲われたささやかな庭、少し開けた道は広く、下りにも続いている。こちらは車が通るらしく広い。
いわゆる洋館というのだろうか。
牧志 浩太
雷鳴から逃げるように歩けば、不意に森が開けた。
多分、もうずぶ濡れになっているだろう。
髪から雫が滴るのに不快感を覚えながら、酷い格好でその穏やかな風景と向き合う。
看板のたぐいが見えない所からすると、ペンションではなくて個人の家だったのだろうか。
多分、もうずぶ濡れになっているだろう。
髪から雫が滴るのに不快感を覚えながら、酷い格好でその穏やかな風景と向き合う。
看板のたぐいが見えない所からすると、ペンションではなくて個人の家だったのだろうか。
KP
正面の小さな門を今、白い肌の女性が傘をさして閉めようとしているところだった。
牧志 浩太
「すみません、雨に降られてしまって。軒先を、お借りしても構いませんか」
髪がぺったりと顔に張りついているのを払い、絶え絶えの息でどうにか口にする。
髪がぺったりと顔に張りついているのを払い、絶え絶えの息でどうにか口にする。
KP
「あら、まさか本当に」
女性はほっそりした手を口元に当てた。
その顔が少し青ざめて見えたのは、雷鳴のせいだろうか。
だが、女性は一度目を閉じ、微笑んだ。
「お困りでしょう、さあ、お早く中へどうぞ。風邪を引いてしまいますよ」
女性はほっそりした手を口元に当てた。
その顔が少し青ざめて見えたのは、雷鳴のせいだろうか。
だが、女性は一度目を閉じ、微笑んだ。
「お困りでしょう、さあ、お早く中へどうぞ。風邪を引いてしまいますよ」
佐倉 光
「ラッキー! ありがとうございます!」
KP
佐倉は勢いよくお辞儀をした。
牧志 浩太
「えっ、ありがとうございます」
遠慮する気持ちはあったが、その間にも滝のような雨が服の中を滑り落ちていく。
ぞくぞくと寒気が這い上る。このままじゃ間違いなく風邪を引くというのは、もはや予感じゃなくて確信だ。
深く礼をして、雫を払いながら館の中へ入る。
遠慮する気持ちはあったが、その間にも滝のような雨が服の中を滑り落ちていく。
ぞくぞくと寒気が這い上る。このままじゃ間違いなく風邪を引くというのは、もはや予感じゃなくて確信だ。
深く礼をして、雫を払いながら館の中へ入る。
KP
女性はあなた方二人を招き入れると門を閉じ、館の中へと案内してくれた。
背後で錠の下りる音が、雨音の中にあってもはっきりと聞こえた気がした。
背後で錠の下りる音が、雨音の中にあってもはっきりと聞こえた気がした。
本編見る!
牧志 浩太
どうしてか、錠の降りる音がはっきりと聞こえた気がして、一度振り返った。
KP
門は小さな物でそんなに大きな音がするようにも思えなかった。
突然の豪雨で神経質になっているのかも知れない。
門から女性が戻ってくる。
なんだかその体は屋内で見ても白く、細い体は不安定に揺らめいており、
今にも強風に吹き飛ばされてしまいそうに見えた。
〈医学〉で判定。
突然の豪雨で神経質になっているのかも知れない。
門から女性が戻ってくる。
なんだかその体は屋内で見ても白く、細い体は不安定に揺らめいており、
今にも強風に吹き飛ばされてしまいそうに見えた。
〈医学〉で判定。
牧志 浩太
振り返っても何かあったようにも見えない。
突然の豪雨で、きっと少し参っているんだろう。
雨に降られたのはついてないけど、入れてもらえてよかった。
突然の豪雨で、きっと少し参っているんだろう。
雨に降られたのはついてないけど、入れてもらえてよかった。
牧志 浩太
小さくくしゃみをする。
軒先で十分なつもりだったけど、屋内に入ってみると、随分と身体が濡れているのを自覚する。あのまま外にいたら、間違いなく風邪を引いてただろう。
1d100 34〈医学〉 Sasa BOT 1d100→9→成功
軒先で十分なつもりだったけど、屋内に入ってみると、随分と身体が濡れているのを自覚する。あのまま外にいたら、間違いなく風邪を引いてただろう。
1d100 34〈医学〉 Sasa BOT 1d100→9→成功
KP
女性にはひどい貧血の症状が見えた。
今すぐに治療をした方が良いと思えるほどの。
今すぐに治療をした方が良いと思えるほどの。
佐倉 光
「助かりましたよー。
僕たち雨が止んだらすぐお暇しますので、玄関で結構ですから」
僕たち雨が止んだらすぐお暇しますので、玄関で結構ですから」
KP
佐倉が言うと、女性はゆっくりと首を振った。
「いえ、こうなるとしばらく止みませんし、休んでゆかれてください。
全身濡れていますでしょう。
よろしかったらお風呂場をお使いになりませんか?」
「いえ、こうなるとしばらく止みませんし、休んでゆかれてください。
全身濡れていますでしょう。
よろしかったらお風呂場をお使いになりませんか?」
佐倉 光
「いやぁ、さすがにそこまでは……」
KP
言いながら外に向けて絞った佐倉の服からは大量の水が流れ出した。
牧志 浩太
その肌の青白さは、雷鳴に照らされたせいじゃなかった。
室内の明かりに照らされてなお、白い。
室内の明かりに照らされてなお、白い。
牧志 浩太
一瞬驚いてしまいそうになったところへ、服から大量の水が流れ出す音が割り込んだ。
「あー……、っぷし!」
ついでに自分の派手なくしゃみも。
「っぷ、すみません」
「あー……、っぷし!」
ついでに自分の派手なくしゃみも。
「っぷ、すみません」
KP
「ほら、お風邪を引いてしまいますよ。
濡れた服は乾かしておきますから、どうぞ」
女性は笑って風呂場の場所を教えてくれる。
風呂場を借りることにしても借りないことにしても、
男物の白いシャツとズボンを一着ずつ出してくれる。
しばらくこれを着ておくと良い、とのことだ。
濡れた服は乾かしておきますから、どうぞ」
女性は笑って風呂場の場所を教えてくれる。
風呂場を借りることにしても借りないことにしても、
男物の白いシャツとズボンを一着ずつ出してくれる。
しばらくこれを着ておくと良い、とのことだ。
牧志 浩太
「すみません、ありがとうございます、お借りします……」
彼女の様子が気になった。ここで風邪を引いたら伝染してしまうかもしれない。
それに、佐倉さんのことも心配だ。彼女の好意に礼を言って、風呂場を借りることにする。
男物の服があるってことは、ここには男性もいるらしい。それにしても、知らない人に家の風呂場まで貸してくれるなんて、随分優しいな。その優しさが今は助かる。
彼女の様子が気になった。ここで風邪を引いたら伝染してしまうかもしれない。
それに、佐倉さんのことも心配だ。彼女の好意に礼を言って、風呂場を借りることにする。
男物の服があるってことは、ここには男性もいるらしい。それにしても、知らない人に家の風呂場まで貸してくれるなんて、随分優しいな。その優しさが今は助かる。
佐倉 光
「けど……」
KP
遠慮しかけた佐倉は盛大にくしゃみをぶちかまして身震いし、服を借りることにしたようだった。
「気にされなくて大丈夫ですよ……大丈夫、大丈夫ですから」
女性は細い声で呟いた。
「落ち着いたらあちらの部屋にいらしてくださいね……
折角おいでいただいたんですもの」
「気にされなくて大丈夫ですよ……大丈夫、大丈夫ですから」
女性は細い声で呟いた。
「落ち着いたらあちらの部屋にいらしてくださいね……
折角おいでいただいたんですもの」
佐倉 光
1d100 60〈心理学〉 Sasa BOT 1d100→89→失敗
「さっっむ。着替えよ……」
「さっっむ。着替えよ……」
KP
佐倉は脱衣所でさっさと着替え始めた。
牧志 浩太
「……?」
ふと、か細い声に含まれた何かが気になった。
それは何らかの警戒かもしれなかったし、単純に、吹けば飛ぶように見える女性のことを心配に思ったのかもしれなかった。
〈心理学〉、こちらも振れますか?
ふと、か細い声に含まれた何かが気になった。
それは何らかの警戒かもしれなかったし、単純に、吹けば飛ぶように見える女性のことを心配に思ったのかもしれなかった。
〈心理学〉、こちらも振れますか?
KP
ふれますよ
牧志 浩太
1d100 77〈心理学〉 Sasa BOT 1d100→40→成功
KP
女性の言葉はわずかに震え、目線は彷徨っていた。
彼女には何か気がかりなこと、心配なことがあるのかも知れない、と思った。
彼女には何か気がかりなこと、心配なことがあるのかも知れない、と思った。
牧志 浩太
何だろう。男二人を警戒して、という感じでもなさそうだ。だとすれば、風呂場まで貸してはくれないと思う。
その気がかりが心配になり、風呂を出たら何か助けを申し出ようか、と思った。
さっきから彼女以外の姿を見ていない。他に誰かいるにしても、何かと不便があるんじゃないだろうか。
ひとまず俺が風邪を引いちゃ何にもならない。
さっさと風呂場を借りて、着替えることにする。
その気がかりが心配になり、風呂を出たら何か助けを申し出ようか、と思った。
さっきから彼女以外の姿を見ていない。他に誰かいるにしても、何かと不便があるんじゃないだろうか。
ひとまず俺が風邪を引いちゃ何にもならない。
さっさと風呂場を借りて、着替えることにする。
KP
乾いた服に着替えると随分と体が温まった気がした。
やはり濡れた服は体力を奪ってゆくものだ。
濡れた服は浴室に干しておいて良いという。
やはり濡れた服は体力を奪ってゆくものだ。
濡れた服は浴室に干しておいて良いという。
佐倉 光
「つい服まで借りちゃったけど、ただの民家だよな」
KP
佐倉が白い服を着ているのを見たのはもしかすると初めてかも知れない。
佐倉 光
「腹減ったなぁ、さっきからいい匂いがしてさぁ……早く帰りたいよ俺」
KP
先ほどから、肉の焼ける匂い、パンの香ばしい香りが漂っている。ちょうど夕食時なのだろう。
牧志 浩太
「はぁ……、生き返る……」
それだけで体の隅々まで熱が蘇ってゆく気がして、思わず深い息をつく。
「だな。俺も同感、エネルギーバー残ってな…… ……びしょ濡れ……」濡れた服のポケットを探ったところ、袋が破れていてぐちゃぐちゃになったエネルギーバーが出てきた。嘆息。
それだけで体の隅々まで熱が蘇ってゆく気がして、思わず深い息をつく。
「だな。俺も同感、エネルギーバー残ってな…… ……びしょ濡れ……」濡れた服のポケットを探ったところ、袋が破れていてぐちゃぐちゃになったエネルギーバーが出てきた。嘆息。
佐倉 光
「あーあ、俺のも大分前に食っちゃったからな……下手すりゃ明日までお預けだ」
KP
佐倉も深いため息をついた。
KP
濡れたまま食事ってわけにも行かないし、
着替えさせればすぐ逃げづらいよね……
着替えさせればすぐ逃げづらいよね……
牧志 浩太
そういえばそう。>濡れたまま食事
エリザさんの態度といい、細かいアレンジがあって楽しい
エリザさんの態度といい、細かいアレンジがあって楽しい
KP
みんな知ってるからちょっと露骨にしてもいいかなって
牧志 浩太
わーい
また新鮮に楽しめて楽しい
また新鮮に楽しめて楽しい
KP
風呂場を出ると、丁度通りかかったらしく、さっきの女性がいた。
「こちらへどうぞ、温まりますよ」
彼女はダイニングルームらしき部屋へと二人を導く。
ふかふかの絨毯、煌めく大きなシャンデリア、10人がけのテーブル、上品な調度品、まるで映画のワンシーンのような空間がそこにあり、奥の上座には男性が一人腰掛けていた。
「こちらへどうぞ、温まりますよ」
彼女はダイニングルームらしき部屋へと二人を導く。
ふかふかの絨毯、煌めく大きなシャンデリア、10人がけのテーブル、上品な調度品、まるで映画のワンシーンのような空間がそこにあり、奥の上座には男性が一人腰掛けていた。
牧志 浩太
さっきから腹が鳴ってたまらなかった。
どうしようもなく空腹を刺激する香りに、何か分けて貰えないかな、なんて全く考えなかったと言ったら嘘になる。
一瞬浮かんでしまった、あまりにも図々しい思考を慌てて打ち消す。
本能って、思った以上に人を狂わせるな。
どうしようもなく空腹を刺激する香りに、何か分けて貰えないかな、なんて全く考えなかったと言ったら嘘になる。
一瞬浮かんでしまった、あまりにも図々しい思考を慌てて打ち消す。
本能って、思った以上に人を狂わせるな。
牧志 浩太
そんな思考も、目の前に広がった光景に奪われる。
まるきり、映画のワンシーンにしか見えなかった。
こういう空間に人がいる所を、本当に見るなんて思わなかった。
まるきり、映画のワンシーンにしか見えなかった。
こういう空間に人がいる所を、本当に見るなんて思わなかった。
KP
「主人のラヴァルです。
あなた、この雨でいらっしゃった方々ですよ」
女性はあなたがたをその男性に紹介した。
「ああ、私の服は着られたようだね、良かった。
この雨は明日まで止まないだろうし、ゆっくりしてゆかれるといい」
細面の男性は、柔和に微笑んだ。
あなた、この雨でいらっしゃった方々ですよ」
女性はあなたがたをその男性に紹介した。
「ああ、私の服は着られたようだね、良かった。
この雨は明日まで止まないだろうし、ゆっくりしてゆかれるといい」
細面の男性は、柔和に微笑んだ。
牧志 浩太
「あ……、初めまして、牧志といいます。急な雨に降られてしまい困っていた所に、ここまでして頂いて、感謝しています。
俺達でよければ、何か手伝えることはないでしょうか」
俺達でよければ、何か手伝えることはないでしょうか」
KP
「ははは、でしたら、来るはずだった客が食べてくれるはずだった料理を、代わりに食べてやってくれませんか。
折角エリザが……ああ、妻ですよ」
彼の言葉に、女性はふわりと微笑む。
「エリザが作ってくれた料理が無駄になってしまうのでね」
二人とも【CON】判定。
折角エリザが……ああ、妻ですよ」
彼の言葉に、女性はふわりと微笑む。
「エリザが作ってくれた料理が無駄になってしまうのでね」
二人とも【CON】判定。
牧志 浩太
×5? >【CON】
KP
はーい。
いや、3で。
いや、3で。
牧志 浩太
1d100 36 Sasa BOT 1d100→79→失敗
めちゃくちゃ腹が減っている。無理だ。
めちゃくちゃ腹が減っている。無理だ。
佐倉 光
1d100 18 Sasa BOT 1d100→22→失敗
KP
期待からか。
二人の腹が揃って切なく鳴いた。
二人の腹が揃って切なく鳴いた。
牧志 浩太
「えっ、でも、そこまでして頂くのは、さすがに」
言いかけた所で腹が派手に鳴った。思わずしどろもどろになってしまう。
言いかけた所で腹が派手に鳴った。思わずしどろもどろになってしまう。
佐倉 光
「そこまでしていただくわけには」
KP
二人の声と腹の虫が揃ってユニゾンを奏でた。
「はは、お若いですからね、遠慮せずに食べていってください。
私の弟家族が来るはずだったのに急に来られなくなってしまいましてね。
その分の料理が余ってしまって困っていたところだったのですよ。
さあ、どうぞ」
男性は二人にグラスが置かれた席を勧めた。
「はは、お若いですからね、遠慮せずに食べていってください。
私の弟家族が来るはずだったのに急に来られなくなってしまいましてね。
その分の料理が余ってしまって困っていたところだったのですよ。
さあ、どうぞ」
男性は二人にグラスが置かれた席を勧めた。
牧志 浩太
「うう、すみません……」
腹が鳴って恥ずかしいなんて、久しくない経験だ。今は心底恥ずかしい。恥ずかしいと思う間にも腹が余計に減る。もう目が回りそうだ。
腹が鳴って恥ずかしいなんて、久しくない経験だ。今は心底恥ずかしい。恥ずかしいと思う間にも腹が余計に減る。もう目が回りそうだ。
佐倉 光
「じゃあ遠慮なく!」
KP
佐倉が着席した。
エリザと呼ばれた女性が隣室に行き、飲み物と料理を運んできてくれる。
ローストチキンに色とりどりの温野菜、ポタージュスープ。
どれも暖かく、冷えた体に浸みた。
「肉は好きなだけ取ってくださいね。
若い人の食べる量は私たちには分かりませんから」
佐倉は嬉しそうにチキンをナイフで切り分けて少量皿に乗せた。
エリザと呼ばれた女性が隣室に行き、飲み物と料理を運んできてくれる。
ローストチキンに色とりどりの温野菜、ポタージュスープ。
どれも暖かく、冷えた体に浸みた。
「肉は好きなだけ取ってくださいね。
若い人の食べる量は私たちには分かりませんから」
佐倉は嬉しそうにチキンをナイフで切り分けて少量皿に乗せた。
牧志 浩太
「ありがとうございます、頂きます」
一礼して、少しずつ料理に口をつける。
一口舌の上に乗せた瞬間、口の中全体に滋味が広がったようにすら感じられた。大事に嚙み含めて腹の中に落とせば、腹の底から熱が広がっていくように感じられた。
「生き返る……」
そうなるともう止まらなかった。遠慮が少しずつ剥げて、急くようにチキンを、温野菜を、柔らかい熱を湛えたスープを、口の中へ、腹の中へと導いていく。
美味しい。
腹の底から舌先までひとつになったように、美味しい、と感じていた。
そういえば佐倉さん、随分がっついてるな。やっぱり堪えてたんだろうな、と、歓びに震える本能の傍らで思った。
一礼して、少しずつ料理に口をつける。
一口舌の上に乗せた瞬間、口の中全体に滋味が広がったようにすら感じられた。大事に嚙み含めて腹の中に落とせば、腹の底から熱が広がっていくように感じられた。
「生き返る……」
そうなるともう止まらなかった。遠慮が少しずつ剥げて、急くようにチキンを、温野菜を、柔らかい熱を湛えたスープを、口の中へ、腹の中へと導いていく。
美味しい。
腹の底から舌先までひとつになったように、美味しい、と感じていた。
そういえば佐倉さん、随分がっついてるな。やっぱり堪えてたんだろうな、と、歓びに震える本能の傍らで思った。
KP
佐倉はいつになくよく食べていた。
……といってもあくまでいつもより、程度ではあったが。
まさに夢のような時間だった。
満腹になるまでの間、ラヴァルとエリザは、
彼らがエリザの療養のためにここに移り住んだという話や、
今日彼らの弟一家が来るはずだったが急に来られなくなってしまったこと、
そのため客間が開いているので、一晩ここに宿泊しても構わないということなど言ってくれた。
……といってもあくまでいつもより、程度ではあったが。
まさに夢のような時間だった。
満腹になるまでの間、ラヴァルとエリザは、
彼らがエリザの療養のためにここに移り住んだという話や、
今日彼らの弟一家が来るはずだったが急に来られなくなってしまったこと、
そのため客間が開いているので、一晩ここに宿泊しても構わないということなど言ってくれた。
牧志 浩太
まさに夢のようだった。もう夢でもいい。ああ、でも夢だったらこの味は覚えておきたい。こんなに美味しい料理、初めて食べた。
本能が満たされて少しだけ思考が戻ってくると、ようやくラヴァルさん達と話ができるようになってきた。
療養と聞いて少し納得が行った。きっと血液疾患か何かで、酷い貧血もそのためなんだろう。
本能が満たされて少しだけ思考が戻ってくると、ようやくラヴァルさん達と話ができるようになってきた。
療養と聞いて少し納得が行った。きっと血液疾患か何かで、酷い貧血もそのためなんだろう。
KP
外からは滝のような豪雨の音が聞こえ続けている。
とても外に出られる状態ではなさそうだ。
とても外に出られる状態ではなさそうだ。
牧志 浩太
いくらなんでも泊めてまでもらうわけにはいかないと言おうとして……
牧志 浩太
外の様子に愕然とする。
さっきより酷くなってないか、あれ。
しかも今は夜だ。高原の施設もやっていない。車まで戻るしかないが、夜にこの雨、下手すると道に迷いそうだ。
さっきより酷くなってないか、あれ。
しかも今は夜だ。高原の施設もやっていない。車まで戻るしかないが、夜にこの雨、下手すると道に迷いそうだ。
KP
「明日になればきっと雨も止むでしょう。
さて……デザートにしましょうか。
エリザ、頼むよ」
ラヴァルは言いながら腰を上げ、あなた方が食べた食器を集め始めた。
さて……デザートにしましょうか。
エリザ、頼むよ」
ラヴァルは言いながら腰を上げ、あなた方が食べた食器を集め始めた。
牧志 浩太
警戒心、というものはなかったように思う。
夢のような一時に夢中になっていた。美味しい食事の後のデザートは、どんなに美味しいんだろうと楽しみだった。
夢のような一時に夢中になっていた。美味しい食事の後のデザートは、どんなに美味しいんだろうと楽しみだった。
牧志 浩太
「あっ。自分でやります」
すっかり気が抜けていた身体を起こし、慌てて食器を持ち上げる。
……周辺から中央に綺麗なレリーフの施された、透き通る白磁の皿だった。え、これ高いやつだよな? 一瞬固まる。
すっかり気が抜けていた身体を起こし、慌てて食器を持ち上げる。
……周辺から中央に綺麗なレリーフの施された、透き通る白磁の皿だった。え、これ高いやつだよな? 一瞬固まる。
KP
その繊細な皿は間違って傷でも付けたら大変なことになりそうだった。
「ああ、そのままでどうぞ。お客様方なんですから」
ラヴァルがやんわりと言い、さっさとあなたたちの後ろから皿とカトラリーを回収してゆく。
佐倉は幸せそうにため息をついていた。
ラヴァルがあなたの後ろに通りかかったその時、突如手の甲に衝撃と痛みが走った。同時にテーブルに手が打ち付けられる。
「ああ、そのままでどうぞ。お客様方なんですから」
ラヴァルがやんわりと言い、さっさとあなたたちの後ろから皿とカトラリーを回収してゆく。
佐倉は幸せそうにため息をついていた。
ラヴァルがあなたの後ろに通りかかったその時、突如手の甲に衝撃と痛みが走った。同時にテーブルに手が打ち付けられる。
牧志 浩太
「あ、ああ、すみませ……、」
言いかけて皿を置いた、ほぼ次の瞬間だったように思えた。
言いかけて皿を置いた、ほぼ次の瞬間だったように思えた。
牧志 浩太
不意に走った灼熱感と衝撃。
すっかり気の抜けていた思考がついてくるのが、数瞬は遅れた。
それを痛みだと理解するのも、遅れた。
すっかり気の抜けていた思考がついてくるのが、数瞬は遅れた。
それを痛みだと理解するのも、遅れた。
佐倉 光
「牧志!」
佐倉が叫んで席から腰を浮かせた。
佐倉が叫んで席から腰を浮かせた。
牧志 浩太
「え、」
その結果、間の抜けた声しか出なかった。
のろのろと、自らの手に起きた出来事を確認する。
その結果、間の抜けた声しか出なかった。
のろのろと、自らの手に起きた出来事を確認する。
KP
あなたの手の甲に、食事用のナイフが突き立てられていた。
そのナイフを握っていたのは、先ほどまでの温厚さとはかけ離れた鬼の形相をしているラヴァルだった。
彼は何事か呟いている。
あなたは1D4ダメージ。
そのナイフを握っていたのは、先ほどまでの温厚さとはかけ離れた鬼の形相をしているラヴァルだった。
彼は何事か呟いている。
あなたは1D4ダメージ。
牧志 浩太
1d4 Sasa BOT 1d4→2
HP 11 → 9
「え……、」
何だこれ、何だ、何だこれ。何が起きたんだ。
手からナイフが生えて、違う、刺された?
刺された?
この人に?
名を呼んだ声につられるように、助けを求めて佐倉さんの方を見る。それからようやく、やめさせようとナイフを握る手に手をかける。
HP 11 → 9
「え……、」
何だこれ、何だ、何だこれ。何が起きたんだ。
手からナイフが生えて、違う、刺された?
刺された?
この人に?
名を呼んだ声につられるように、助けを求めて佐倉さんの方を見る。それからようやく、やめさせようとナイフを握る手に手をかける。
佐倉 光
「この野郎、何してるんだ!」
KP
佐倉が叫んでラヴァルを引き離そうとしているが、ラヴァルの手は微動だにしない。
【POW】×1判定をどうぞ。
【POW】×1判定をどうぞ。
牧志 浩太
1d100 12 POW Sasa BOT 1d100→51→失敗
KP
1d6のSAN値減少。
牧志 浩太
1d6 Sasa BOT 1d6→2
SAN 74 → 72
SAN 74 → 72
KP
逃れようともがいたその時、
心臓が一つ、大きく打った。
心臓が一つ、大きく打った。
佐倉 光
「くそ、やめろ、やめろっ!」
KP
佐倉の声が何故か歪んで聞こえた。
いつの間にか佐倉を押さえようとしているエリザが視界の端に見えた。
が、それも急速に遠くなってゆく。
いつの間にか佐倉を押さえようとしているエリザが視界の端に見えた。
が、それも急速に遠くなってゆく。
牧志 浩太
くらりと世界が遠くなった。
視界が歪み、聴覚がひずみ、沈む。
視界が歪み、聴覚がひずみ、沈む。
KP
あなたの耳にはラヴァルが呟く何語か分からない言葉だけがわんわんと響く。
牧志 浩太
「あ、」
だめだ。意識が。
遠くなっていく意識の中に、渦を巻く言葉だけが注ぎ込まれる。
意識を手放すまいと握りしめようとした手の感覚すら、遠くなる。
だめだ。意識が。
遠くなっていく意識の中に、渦を巻く言葉だけが注ぎ込まれる。
意識を手放すまいと握りしめようとした手の感覚すら、遠くなる。
KP
ずる。
あなたの手にナイフが突き刺さったとは異質な痛みが潜り込んでくる。
それは血管の内部をこすり上げ、心臓へと這い上ってくる。
あなたの手にナイフが突き刺さったとは異質な痛みが潜り込んでくる。
それは血管の内部をこすり上げ、心臓へと這い上ってくる。
牧志 浩太
そのとき、異様な感覚がそこに割り込んだ。
「え、あ、ああ、」
「え、あ、ああ、」
牧志 浩太
腕を割り開かれ血管の内側を擦り上げられる。
のたくり這うように心臓目指して這い上ってくる。
鮮烈な不快感が背筋から駆け上がってくる。
自分という肉体の境界を無理矢理にこじ開けられる。
「あ、あ、ああああああ!!!」
叫ぶ。叫べているかどうか分からない。とにかくそれを排除したくて声を絞り出す。それを排除しようとする肉体の本能が身体をわななかせる。
のたくり這うように心臓目指して這い上ってくる。
鮮烈な不快感が背筋から駆け上がってくる。
自分という肉体の境界を無理矢理にこじ開けられる。
「あ、あ、ああああああ!!!」
叫ぶ。叫べているかどうか分からない。とにかくそれを排除したくて声を絞り出す。それを排除しようとする肉体の本能が身体をわななかせる。
KP
体の内部を割り開き、押し広げ、それはあなたの中心に入り込む。
蠢く。そして一気に全身に広がってゆく。細い血管の先まで根を伸ばし、無遠慮にこすり、探る。足先から頭まで覆い尽くす。
蠢く。そして一気に全身に広がってゆく。細い血管の先まで根を伸ばし、無遠慮にこすり、探る。足先から頭まで覆い尽くす。
牧志 浩太
爪先から頭の天辺から眼球の内側から心臓の奥まで。
ありとあらゆる血管を臓器を可動部を筋肉を脳を探られ這い回られる悍ましさに喉が痙攣する。
涙でも嘔吐でも声でも何でもよかった、とにかくそれを排除したい。それなのに指先の僅かな動きさえ自由にならない。
文字通り全身を握られていた。
網目のように広がる血管を無理矢理に意識させられていた。
ありとあらゆる血管を臓器を可動部を筋肉を脳を探られ這い回られる悍ましさに喉が痙攣する。
涙でも嘔吐でも声でも何でもよかった、とにかくそれを排除したい。それなのに指先の僅かな動きさえ自由にならない。
文字通り全身を握られていた。
網目のように広がる血管を無理矢理に意識させられていた。
KP
そしてついに『それ』は目的の場所を見つけたようだった。
急激にそれは寄り集まり、あなたの鳩尾へと移動してゆく。侵蝕する。
途端、胃袋が靴下か何かのようにぐるりとひっくり返った。
それは恐らく錯覚だったのだろう。
だがその感覚には強烈な吐き気を伴った。
視界が赤くなる。
気が遠くなる。
急激にそれは寄り集まり、あなたの鳩尾へと移動してゆく。侵蝕する。
途端、胃袋が靴下か何かのようにぐるりとひっくり返った。
それは恐らく錯覚だったのだろう。
だがその感覚には強烈な吐き気を伴った。
視界が赤くなる。
気が遠くなる。
牧志 浩太
全ての血液が鳩尾へと集められていく感覚の中、ぐるりと全てが反転し、強烈な吐き気を覚える。
視界が赤く染まって闇が下りていった。
視界が赤く染まって闇が下りていった。
KP
脱力して椅子から落ちるあなたの目に、ナイフが手の甲から抜け落ちたのが見えた。
ナイフは、急速に治ってゆく傷口から押しだされたように見えた……
ナイフは、急速に治ってゆく傷口から押しだされたように見えた……
KP
佐倉。あなたの目の前で牧志は椅子から崩れ落ちた。
白目を剥いており、明らかに異常な状態だ。
ラヴァルとエリザはその状態を確認すると、部屋から足早に出て行ってしまう。
白目を剥いており、明らかに異常な状態だ。
ラヴァルとエリザはその状態を確認すると、部屋から足早に出て行ってしまう。
佐倉 光
くそ、あいつら何しやがった! 罠だったのか?
歯がみしながら牧志を揺する。
「おい、牧志! 大丈夫か! 何をされた?」
歯がみしながら牧志を揺する。
「おい、牧志! 大丈夫か! 何をされた?」
KP
牧志は呼吸をしていなかった。
全身が細かく震え、引きつったような声を漏らし、
肌は青ざめてゆき、見開いた目が急速に血走ってゆく。
全身が細かく震え、引きつったような声を漏らし、
肌は青ざめてゆき、見開いた目が急速に血走ってゆく。
佐倉 光
おいまさか、死んじまうなんてことはないだろうな!?
まず気道確保だ。
喉をそらせるような姿勢を取らせるため、彼の頭に手を当てようとする。
まず気道確保だ。
喉をそらせるような姿勢を取らせるため、彼の頭に手を当てようとする。
KP
その手を牧志が掴んだ。
それはとても冷たく感じられた。
牧志が身を起こす。呼吸が戻る。
僅かな間とは言え呼吸が止まっていたためか、彼の呼吸音は深く早かった。
それはとても冷たく感じられた。
牧志が身を起こす。呼吸が戻る。
僅かな間とは言え呼吸が止まっていたためか、彼の呼吸音は深く早かった。
佐倉 光
「良かった、生きて……て……」
KP
言いかけたあなたは突然力強く抱きすくめられる。
牧志の腕があなたの腰を抱き、もう片方の手が後ろから頭を包んでいる。
牧志は陶然とした目であなたを見つめていた。
いつもとは違う、何か甘やかで、そして危険な。
牧志の腕があなたの腰を抱き、もう片方の手が後ろから頭を包んでいる。
牧志は陶然とした目であなたを見つめていた。
いつもとは違う、何か甘やかで、そして危険な。
佐倉 光
「え、ちょっと何」
どう転ぶにしても嫌な予感がしてならない。慌てて逃れようともがく。
どう考えても今の牧志は正気じゃない。
どう転ぶにしても嫌な予感がしてならない。慌てて逃れようともがく。
どう考えても今の牧志は正気じゃない。
KP
牧志の腕はあなたを抱きしめたまま全く動かない。
頭を包んだ手は、否応もなくあなたの顔と首とを反らせる。
あなたより少し背の低い青年は、あなたの顔に頬を寄せた。
剥き出しの首筋に軽く息がかかる。
牧志が口を開けた気配がする。
頭を包んだ手は、否応もなくあなたの顔と首とを反らせる。
あなたより少し背の低い青年は、あなたの顔に頬を寄せた。
剥き出しの首筋に軽く息がかかる。
牧志が口を開けた気配がする。
佐倉 光
「牧志! おい牧志! やめろ!」
KP
叫びながらあなたは冷たい絶望とともに知るだろう。
それは抱擁などではない。
捕食者の爪と牙だ。
ぶつ、と皮膚が裂ける音がした。
首に鋭い痛み。そしてそこから広がる重く鈍い痛み。
牧志の喉がごくりと動く。
声を上げたくとも、動きたくとも、一切体はいうことをきかない。
体は痺れたように重くなり、ただ鮮烈な痛みだけを伝えてくる。
自分の心臓の音がひっきりなしに耳の奥で鳴り続け、
そしてまたごくり、という飲み込まれる感覚とともに身をよじりたくなるような激痛がはしる。
思考は痛みと混乱に押し流されて曲がりうねる。
それは抱擁などではない。
捕食者の爪と牙だ。
ぶつ、と皮膚が裂ける音がした。
首に鋭い痛み。そしてそこから広がる重く鈍い痛み。
牧志の喉がごくりと動く。
声を上げたくとも、動きたくとも、一切体はいうことをきかない。
体は痺れたように重くなり、ただ鮮烈な痛みだけを伝えてくる。
自分の心臓の音がひっきりなしに耳の奥で鳴り続け、
そしてまたごくり、という飲み込まれる感覚とともに身をよじりたくなるような激痛がはしる。
思考は痛みと混乱に押し流されて曲がりうねる。
佐倉 光
牧志が、俺の血を吸ってる?
どうして、そんな馬鹿な……!
どうして、そんな馬鹿な……!
KP
いくら否定しようとも、あなたを捕まえているのは牧志の腕であり、
あなたの首筋に食い込んでいるのは牧志の口から生えている牙だった。
急速に、強引に、命と熱が奪われてゆく。
指先から冷気が這い上り、それは後頭部から視界を覆う。
あなたの首筋に食い込んでいるのは牧志の口から生えている牙だった。
急速に、強引に、命と熱が奪われてゆく。
指先から冷気が這い上り、それは後頭部から視界を覆う。
佐倉 光
死ぬ? 俺が死ぬ? 冗談じゃない、俺は
KP
あなたが世界を認識できたのはそこまでだった。
あなたは痛みと絶望に溺れてゆく。
正常に考えることもできないまま、深い無意識の底へと小石のように沈んでゆく……
あなたは痛みと絶望に溺れてゆく。
正常に考えることもできないまま、深い無意識の底へと小石のように沈んでゆく……
佐倉 光
1d3 Sasa BOT 1d3→2
KP
佐倉
SAN 74→72
HP 10→8
牧志
HP 9→11
SAN 74→72
HP 10→8
牧志
HP 9→11
牧志 浩太
リアルタイム一方その頃だ! ありがとうございます!
佐倉さんの「冗談じゃない」への重さが今後の展開を期待させていいですね……!
ぞくぞくするような描写で、リアルタイムでこのシーンを見られるの二周目ならではで楽しい。
佐倉さんの「冗談じゃない」への重さが今後の展開を期待させていいですね……!
ぞくぞくするような描写で、リアルタイムでこのシーンを見られるの二周目ならではで楽しい。
KP
ガンガン挟むぞー!
コメント By.KP
あの時もし、吸血鬼になったのが牧志だったらどうなっていただろう?
このシナリオ遊ぶとき、誰が吸血鬼になった方が楽しいかものすごく悩んだのです。
最終的に佐倉が吸血鬼、生餌が牧志で遊びましたが、終わってみるとやはり逆バージョンも見たい! と意見が一致しました。
奇妙な生活はまだ続きます。
そうこれはただの夢。
……ほんとうに、夢?
あの時もし、吸血鬼になったのが牧志だったらどうなっていただろう?
このシナリオ遊ぶとき、誰が吸血鬼になった方が楽しいかものすごく悩んだのです。
最終的に佐倉が吸血鬼、生餌が牧志で遊びましたが、終わってみるとやはり逆バージョンも見たい! と意見が一致しました。
奇妙な生活はまだ続きます。
そうこれはただの夢。
……ほんとうに、夢?
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」